(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024132062
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】水素含有パウダー及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
A61K 8/19 20060101AFI20240920BHJP
A61K 8/02 20060101ALI20240920BHJP
A61K 8/97 20170101ALI20240920BHJP
A61K 8/98 20060101ALI20240920BHJP
A61K 8/23 20060101ALI20240920BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20240920BHJP
A61Q 5/00 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
A61K8/19
A61K8/02
A61K8/97
A61K8/98
A61K8/23
A61Q19/00
A61Q5/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023042704
(22)【出願日】2023-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】500101298
【氏名又は名称】有限会社 アクアサイエンス
(71)【出願人】
【識別番号】517432880
【氏名又は名称】嶝 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100180415
【弁理士】
【氏名又は名称】荒井 滋人
(72)【発明者】
【氏名】大河内 正一
(72)【発明者】
【氏名】嶝 公一
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AA071
4C083AA072
4C083AA111
4C083AA112
4C083AB151
4C083AB271
4C083AB272
4C083AB312
4C083AB351
4C083AB352
4C083AC472
4C083AD211
4C083AD212
4C083AD251
4C083AD252
4C083AD412
4C083AD532
4C083AD602
4C083BB51
4C083CC02
4C083CC31
4C083DD17
4C083EE12
4C083EE29
4C083FF05
(57)【要約】
【課題】使用時に水との混合のみでも美容成分及び水素を肌上で発生させることができ、人体に確実にこれらを取り込むことができる水素含有パウダー及びその製造方法を提供する。
【解決手段】水素含有パウダーは、粉状の水素化ホウ素化合物と、植物由来又は動物由来の美容成分が吸着されている粉状の硫酸ナトリウムとを含む。粉状の水素化ホウ素化合物が含有されているため、液体と混合して使用することで初めて水素が発生し、したがって水素を肌上で発生させることができる。このため、人体に確実にこれを取り込むことができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉状の水素化ホウ素化合物と、
植物由来又は動物由来の美容成分が吸着されている粉状の硫酸ナトリウムとを含むことを特徴とする水素含有パウダー。
【請求項2】
粉状の硫酸ナトリウムに液状の植物由来又は動物由来の美容成分を浸潤させて美容浸潤体を形成する浸潤工程と、
前記美容浸潤体を乾燥させて美容乾燥体を形成する乾燥工程と、
前記美容乾燥体を粉砕して微粒化させて美容粉状体を形成する粉砕工程と、
前記美容粉状体に粉状の水素化ホウ素化合物を40%以下の湿度環境下で加えて撹拌する水素化ホウ素化合物混合工程とを備えたことを特徴とする水素含有パウダーの製造方法。
【請求項3】
前記粉砕工程の後、前記美容粉状体に粉状のシクロデキストリン及び粉状のマルトースを撹拌混合させて第1の中間混合物を形成する第1の混合工程と、
該第1の混合工程の後、前記第1の中間混合物を常温環境下で炭酸水素ナトリウムを混合して第2の中間混合物を形成する第2の混合工程とをさらに備え、
前記水素化ホウ素化合物混合工程は、前記美容粉状体を含む前記第2の中間混合物に対して行われることを特徴とする請求項1に記載の水素含有パウダーの製造方法。
【請求項4】
前記水素化ホウ素化合物は、水素化ホウ素ナトリウムであることを特徴とする請求項2に記載の水素含有パウダーの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水と混合するだけで水素を効率よく発生することができる水素含有パウダー及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水素の美容効果に関しては、肌に対する美容効果や髪の毛に対する美容効果が知られている。水素は常温下においては気体であり、分子量が小さいためペットボトル容器やガラス容器では簡単にその容器を透過し拡散してしまう。このため、その持ち運びに関してもボンベ等によるといった非常に扱いの不便なものである。
【0003】
そこで、発明者等はこれまでも水素発生物質(例えば水素化ホウ素ナトリウム)を利用することにより、人体の肌に触れる前に気体化せず、水素が肌の上で直接水素を発生できるように水素発生シート・水素クリームを開発してきた(例えば特許文献1及び2参照)。
【0004】
このような水素発生物質は水と反応して水素を発生しやすいという特性があるため、あらかじめ、化粧水や乳液に添加することはできない。すなわち、シートやクリーム中で水素発生物質をそのまま保持して肌上で水素を発生させることはできるが、一方で、化粧水等の液体とともに使用して肌上で水素を発生させることができる粉体状の水素パウダーが所望されている。そして、このような水素パウダーの開発も進められている(例えば特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019-104641号公報
【特許文献2】特開2022-187415号公報
【特許文献3】特開2014-9175号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、水素パウダー自体に美容成分を配合して、水素以外の美容成分も同時に肌に取り込むことができれば便利である。その際、化粧水や乳液等と同時に水素パウダーを用いればよいが、水素パウダー自体に美容成分が配合されて入れば、水との混合のみでも美容成分を取り込むことができ、便利である。また、この美容成分を確実に粉状として保持しておくことが肝要となる。
【0007】
本発明は、上記従来技術を考慮したものであり、使用時に水との混合のみでも美容成分及び水素を肌上で発生させることができ、人体に確実にこれらを取り込むことができる水素含有パウダー及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するため、本発明では、粉状の水素化ホウ素化合物と、植物由来又は動物由来の美容成分が吸着されている粉状の硫酸ナトリウムとを含むことを特徴とする水素含有パウダーを提供する。
【0009】
また、本発明では、粉状の硫酸ナトリウムに液状の植物由来又は動物由来の美容成分を浸潤させて美容浸潤体を形成する浸潤工程と、前記美容浸潤体を乾燥させて美容乾燥体を形成する乾燥工程と、前記美容乾燥体を粉砕して微粒化させて美容粉状体を形成する粉砕工程と、前記美容粉状体に粉状の水素化ホウ素化合物を40%以下の湿度環境下で加えて撹拌する水素化ホウ素化合物混合工程とを備えたことを特徴とする水素含有パウダーの製造方法を提供する。
【0010】
好ましくは、前記粉砕工程の後、前記美容粉状体に粉状のシクロデキストリン及び粉状のマルトースを撹拌混合させて第1の中間混合物を形成する第1の混合工程と、該第1の混合工程の後、前記第1の中間混合物を常温環境下で炭酸水素ナトリウムを混合して第2の中間混合物を形成する第2の混合工程とをさらに備え、前記水素化ホウ素化合物混合工程は、前記美容粉状体を含む前記第2の中間混合物に対して行われる。
【0011】
好ましくは、前記水素化ホウ素化合物は、水素化ホウ素ナトリウムである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、粉状の水素化ホウ素化合物が含有されているため、液体と混合して使用することで初めて水素が発生し、したがって水素を肌上で発生させることができる。このため、人体に確実にこれを取り込むことができる。そして、植物由来又は動物由来の美容成分が吸着されている硫酸ナトリウムも含有されているため、水素と同時に美容成分が液体とともに流れ出すので、この美容成分も肌上に提供することができ、確実に人体に取り込むことができる。
【0013】
さらに、本発明によれば、浸潤工程にて液状の植物由来又は動物由来の美容成分を一旦硫酸ナトリウムに含浸させ、乾燥工程及び粉砕工程にて確実に美容成分を取り込んだ粉状の硫酸ナトリウムを形成することができる。このため、液体と組み合わせて使用するまでこれらの美容成分が外部に漏出してしまうことを防止し、確実に使用時に美容成分を利用者に提供することができる。また、水素化ホウ素化合物混合工程では、水素化ホウ素化合物の添加を40%以下の湿度環境下で行うので、水素化ホウ素化合物中の水素が空気中の水蒸気と反応して発生してしまうことを防止し、確実にパウダー内に水素発生物質(水素化ホウ素化合物)を収めることができる。
【0014】
また、第1の混合工程及び第2の混合工程にてシクロデキストリン及びマルトース、さらには炭酸水素ナトリウムを混合することにより、これらは水に溶けやすいので、パウダー使用時の水素発生を妨げることなく効率的に水素を利用者に提供することができる。
【0015】
また、水素化ホウ素化合物として水素化ホウ素ナトリウムを用いれば、パウダーの基材となっている硫酸ナトリウム、シクロデキストリン、マルトース、炭酸水素ナトリウムも水素化ホウ素ナトリウムと同様比較的比重が重い原料であるため、水素化ホウ素ナトリウムを基材中で効率よく分散させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明に係る水素含有パウダーの製造方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明に係る水素含有パウダーは、粉状の水素化ホウ素化合物と、植物由来又は動物由来の美容成分が吸着されている粉状の硫酸ナトリウムとを含んでいる。この水素化ホウ素化合物は、例えば水素化ホウ素ナトリウムである。ただし、水素化ホウ素化合物としては、水素化ホウ素カリウムや水素化ホウ素マグネシウム、水素化ホウ素カルシウムも使用することができる。また、これらの混合物(例えば水素化ホウ素ナトリウムと水素化マグネシウムの混合物)を使用することもできる。混合物を使用する場合、その混合割合は任意に設定することができる。
【0018】
植物由来の美容成分としては、ユズエキス、梅エキス、ビワ葉エキス、褐藻エキス、ヨモギエキス、クララ根エキス、マグワ根皮エキス、ローズヒップエキス、オウゴン葉エキス、フェルラ酸等といった植物抽出エキスあるいは植物由来成分が配合されたものを使用できる。一方で動物由来の美容成分としては、プラセンタエキス、ヒアルロン酸(ヒアルロン酸ナトリウム)、コラーゲン、エラスチン、核酸等といった動物抽出エキスあるいは動物由来成分が配合されたものを使用できる。なお、その他ビタミンCやその誘導体、ビタミンB群等のビタミン成分も配合することができる。さらには、キサンタンガム、カラギーナン等といった増粘剤や、クエン酸の配合も可能である。また、水素化ホウ素化合物を効率よく分散させる基材としては、硫酸ナトリウム、シクロデキストリン、マルトース、炭酸水素ナトリウムを用いる。
【0019】
上記物質が配合されて全体として粉状となっているものが本発明に係る水素含有パウダーである。この水素含有パウダーは、粉状の水素化ホウ素化合物が含有されているため、液体と混合して使用することで初めて水素が発生し、したがって水素を肌上で発生させることができる。このため、人体に確実にこれを取り込むことができる。そして、植物由来又は動物由来の美容成分が吸着されている硫酸ナトリウムも含有されているため、水素と同時に美容成分が液体とともに流れ出すので、この美容成分も肌上に提供することができ、確実に人体に取り込むことができる。
【0020】
上記のような水素含有パウダーを製造する方法の一例は以下の通りである。
図1に示すように、まずは、浸潤工程を行う(ステップS1)。この浸潤工程は、粉状の硫酸ナトリウムに液状の植物由来又は動物由来の美容成分を浸潤させて美容浸潤体を形成する工程である。ここで用いる植物由来の美容成分は、ユズエキス、梅エキス、ビワ葉エキス、褐藻エキス、ヨモギエキス、ローズヒップエキス、フェルラ酸等といった液状のものである。また、ここで用いる動物由来の美容成分は、プラセンタエキス、エラスチン、核酸等といった液状のものである。植物由来又は動物由来の美容成分としては、これらの他に粉状のものを硫酸ナトリウムとともに混合してもよい。この工程により、液状の植物由来又は動物由来の美容成分は硫酸ナトリウムに取り込まれて吸着される。
【0021】
次に、乾燥工程を行う(ステップS2)。この乾燥工程は、美容浸潤体を乾燥させて美容乾燥体を形成する工程である。具体的には、美容浸潤体を100℃~130℃にて加熱乾燥するか、あるいは美容浸潤体を30%エタノール水溶液に混入させて凍結乾燥させて固体化させる。そして、粉砕工程を行う(ステップS3)。この粉砕工程は、美容乾燥体を粉砕して微粒化させて美容粉状体を形成する工程である。具体的には、美容乾燥体を物理的に粉砕し、さらにふるい等により60メッシュ以下として美容粉状体とする。
【0022】
次に、第1の混合工程を行う(ステップS4)。この第1の混合工程は、美容粉状体に粉状のシクロデキストリン及び粉状のマルトースを撹拌混合させて第1の中間混合物を形成する工程である。具体的には、40℃程度で美容粉状体が適度に均等に分散するように撹拌混合する。そして、第2の混合工程を行う(ステップS5)。この第2の混合工程は、第1の中間混合物を常温環境下で炭酸水素ナトリウムを混合して第2の中間混合物を形成する工程である。具体的には、常温くらいまで第1の中間混合物を冷やし、これに炭酸水素ナトリウムを混合させ、それぞれ物質が均等分散されるように混合する。炭酸水素ナトリウムは、常温での物性が安定していることから、この第2の混合工程は常温にて行われる。なお、同様の物性の観点から、第2の混合工程にて消炎剤としてのグリチルリチン酸2Kをさらに混合させてもよい。
【0023】
次に、水素化ホウ素化合物混合工程を行う(ステップS6)。この水素化ホウ素化合物混合工程は、美容粉状体(を含む第2の中間混合物)に粉状の水素化ホウ素化合物を40%以下の湿度環境下で加えて撹拌する工程である。具体的には、水素化ホウ素ナトリウム等の水素化ホウ素化合物を美容粉状体(を含む第2の中間混合物)に混入させて15分間程度混合分散を行い、その後約2時間静置する。
【0024】
以上のような本発明に係る水素含有パウダーの製造方法によれば、浸潤工程にて液状の植物由来又は動物由来の美容成分を一旦硫酸ナトリウムに含浸させ、乾燥工程及び粉砕工程にて確実に美容成分を取り込んだ粉状の硫酸ナトリウムを形成することができる。このため、液体と組み合わせて使用するまでこれらの美容成分が外部に漏出してしまうことを防止し、確実に使用時に美容成分を利用者に提供することができる。また、水素化ホウ素化合物混合工程では、水素化ホウ素化合物の添加を40%以下の湿度環境下で行うので、水素化ホウ素化合物中の水素が空気中の水蒸気と反応して発生してしまうことを防止し、確実にパウダー内に水素発生物質(水素化ホウ素化合物)を収めることができる。
【0025】
また、第1の混合工程及び第2の混合工程にてシクロデキストリン及びマルトース、さらには炭酸水素ナトリウムを混合するので、これらは水に溶けやすいので、パウダー使用時の水素発生を妨げることなく効率的に水素を利用者に提供することができる。
【0026】
また、水素化ホウ素化合物として水素化ホウ素ナトリウムを用いれば、パウダーの基材となっている硫酸ナトリウム、シクロデキストリン、マルトース、炭酸水素ナトリウムも水素化ホウ素ナトリウムと同様比較的比重が重い原料であるため、水素化ホウ素ナトリウムを基材中で効率よく分散させることができる。水素化ホウ素ナトリウムを用いた場合は、水素含有パウダーの製造方法の全ての工程にて最後に行われる。上述したように、水素化ホウ素ナトリウムは水分とすぐに反応してしまう特性があり、比重も比較的重いため、ある程度乾燥状態が進んでいる製造工程の最後で添加することが好ましく、また均等分散を図るためにも他の物質が既にある状態で添加することが好ましいからである。
【0027】
発明者らは、従来の水素のアンチエイジング、若返り効果、美白作用、髪の毛の紫外線ダメージの回復といった美容に関する効果効能を活かせる化粧品の開発を進め、その一環として本発明に係る水素含有パウダー及びその製造方法を創作したものである。この水素含有パウダーは、肌用水素パウダーとして、肌の上で直接水素を発生することにより、水素を直接肌から吸収させ、活性酸素の除去、細胞内のミトコンドリアへの働きかけ、さらには細胞の活性化を促してきめ細かくみずみずしい透明感の肌を与えることができる。パウダーが水分に触れると同時に水素の細かい泡が発生し、肌を優しく包んで心地よいリラックス感を与えることができる。また、髪用パウダーとしても利用可能である。頭髪は、一般水道水の使用における金属イオンの吸着による毛髪の紫外線ダメージの抑制効果(毛髪キューティクルやそれを形成するケラチンの保護修復効果)が求められている。また、パーマやカラー剤、摩擦といったことでも毛髪へのダメージは促進されている。これらのダメージは基本的には酸化反応により行われていると考えられている。そこで、還元系元素である水素が発生するような本発明に係るパウダーは、髪用の水素パウダーとしても利用可能である。したがって、本発明の効果にて「肌」と表現されたものには「髪」にも適用される。