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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024013207
(43)【公開日】2024-01-31
(54)【発明の名称】生産設計シミュレーション装置
(51)【国際特許分類】
   G05B 19/418 20060101AFI20240124BHJP
   G06Q 50/04 20120101ALI20240124BHJP
【FI】
G05B19/418 Z
G06Q50/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023103701
(22)【出願日】2023-06-23
(31)【優先権主張番号】P 2022115132
(32)【優先日】2022-07-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】596148881
【氏名又は名称】株式会社レクサー・リサーチ
(74)【代理人】
【識別番号】100109243
【弁理士】
【氏名又は名称】元井 成幸
(72)【発明者】
【氏名】中村 昌弘
【テーマコード(参考)】
3C100
5L049
【Fターム(参考)】
3C100AA05
3C100AA43
3C100BB12
3C100BB14
5L049CC04
(57)【要約】
【課題】多様な生産プロセスに対応する二酸化炭素排出量を柔軟に算出できる。
【解決手段】単位稼働時間当たりの設備CFP原単位を含む設備要素情報と、必要な部品の種別と量が設定されている作業要素の惹起条件と、作業要素の作業完了後の出力先と、作業要素の標準サイクルタイムと、部品の単位消費量当たりの材料CFP原単位を含む作業要素情報と、設備要素と作業要素とを変更可能に関係付けるリンク情報とを記憶し、第1の設備要素とリンクされている第1の作業要素の作業要素情報の惹起条件の充足に応じて、第1の設備要素が作業を実行し、第1の作業要素の作業要素情報の作業完了後の出力先に出力するようにして模擬処理を行い、第1の設備要素の設備CFP原単位への標準サイクルタイムの乗算と第1の作業要素の材料CFP原単位への部品の消費量の乗算に基づき二酸化炭素の総排出量を模擬的に算出する生産設計シミュレーション装置1。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
離散的に発生する事象の連鎖による状態推移をシミュレーションする生産設計シミュレーション装置であって、
単位稼働時間当たりの設備CFP原単位を含む設備要素の諸元で構成される設備要素情報を記憶する設備要素情報記憶部と、
必要な部品の種別と前記部品の量が設定されている作業要素の惹起条件と、作業要素の作業完了後の出力先と、作業要素の標準サイクルタイムと、前記部品の単位消費量当たりの材料CFP原単位を含む作業要素の諸元で構成される作業要素情報を記憶する作業要素情報記憶部と、
前記設備要素と前記作業要素とを変更可能に関係付けるリンク情報を記憶するリンク情報記憶部とを備え、
少なくとも第1の設備要素とリンク情報でリンクされている第1の作業要素の作業要素情報の惹起条件の充足に応じて、前記第1の設備要素が作業を実行し、前記第1の作業要素の作業要素情報の作業完了後の出力先に出力するようにして模擬的に処理すると共に、
前記第1の設備要素における前記設備CFP原単位への前記標準サイクルタイムの乗算と前記第1の作業要素における前記材料CFP原単位への前記部品の消費量の乗算に基づき二酸化炭素の総排出量を模擬的に算出することを特徴とする生産設計シミュレーション装置。
【請求項2】
前記第1の作業要素の作業要素情報に設定されている前記標準サイクルタイムに加えて、前記第1の設備要素の設備要素情報に前記標準サイクルタイムよりも短い設備固有サイクルタイムが設定されている場合、設備要素情報の設備固有サイクルタイムで、前記第1の設備要素が前記第1の作業要素の前記部品を消費するようにして生成品の生成作業を実行して模擬的に処理すると共に、
前記第1の設備要素における前記設備CFP原単位への前記標準サイクルタイムの乗算に代えて、前記第1の設備要素における前記設備CFP原単位への前記設備固有サイクルタイムの乗算に基づき、二酸化炭素の総排出量を模擬的に算出することを特徴とする請求項1記載の生産設計シミュレーション装置。
【請求項3】
前記設備要素の諸元として前記設備要素の位置情報を前記設備要素情報記憶部に記憶し、
前記第1の設備要素の位置情報と前記第1の設備要素の出力先である第2の設備要素の位置情報に基づく前記第1の設備要素から前記第2の設備要素までの搬送時間を取得し、
前記第1の設備要素の作業完了時刻から前記搬送時間が経過した時刻に、前記第2の設備要素に前記第1の設備要素の作業完了後の中間品を出力するようにして模擬的に処理すると共に、
単位搬送時間当たりの搬送CFP原単位を有する搬送情報を搬送情報記憶部に記憶し、
前記搬送CFP原単位に前記搬送時間を乗算して取得した二酸化炭素排出量を加えて前記二酸化炭素の総排出量を算出することを特徴とする請求項1又は2記載の生産設計シミュレーション装置。
【請求項4】
前記第1の前記設備要素における前記設備要素の諸元を構成する単位稼働時間当たりの前記設備CFP原単位として、数値の異なる複数の前記設備CFP原単位を記憶すると共に、それぞれの数値の異なる前記設備CFP原単位のランクを示すランク識別情報を設備要素情報として記憶し、
入力されたランク識別情報に対応する前記設備CFP原単位を用いて二酸化炭素の排出量を模擬的に算出することを特徴とする請求項1又は2記載の生産設計シミュレーション装置。
【請求項5】
前記第1の前記設備要素における前記設備要素の諸元を構成する単位稼働時間当たりの前記設備CFP原単位として、数値の異なる複数の前記設備CFP原単位を記憶すると共に、それぞれの数値の異なる前記設備CFP原単位のランクを示すランク識別情報を設備要素情報として記憶し、
温度センサーと、入力された前記温度センサーの検出値から対応するランク識別情報を取得するランク識別情報取得部を備え、
取得されたランク識別情報に対応する前記設備CFP原単位を用いて二酸化炭素の排出量を模擬的に算出することを特徴とする請求項1又は2記載の生産設計シミュレーション装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば製造業の生産に係る作業工程等のモノ、機械、作業者や物流に係る搬送作業者やフォークリフト等の搬送手段のような要素で構成されるシステムにおいて、状態推移を予測する生産設計シミュレーション装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、生産ラインの挙動を予測するために、生産プロセス・ネットワークのルート(根)となる設備要素に固有動作を惹起させ、ルートに連なる生産プロセス・ネットワークの各設備要素に固有動作の惹起が伝播させて離散的シミュレーションを実行し、生産が進む状態を模擬的に処理する生産設計シミュレーション装置が知られている。
【0003】
このような生産設計シミュレーション装置として、特許文献1、2には、設備要素の諸元で構成される設備要素情報と、必要な部品の種別と部品の数が設定されている作業要素の惹起条件と、作業要素の作業完了後の出力先を含む作業要素の諸元で構成される作業要素情報と、設備要素と作業要素とを関係付けるリンク情報とを記憶させ、第1の設備要素とリンク情報でリンクされている第1の作業要素の作業要素情報の惹起条件の充足に応じて、第1の設備要素が作業を実行し、第1の作業要素の作業要素情報の作業完了後の出力先に出力するようにして模擬的に処理する生産設計シミュレーション装置が開示されている。この生産設計シミュレーション装置は、作業要素情報と設備要素情報とのリンク付けを柔軟に設定、変更し、多様なシミュレーションを柔軟に行うことが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5688864号公報
【特許文献2】特許第6998064号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、近年では、温室効果ガスの排出量の増大によって環境負荷が非常に大きくなっているため、温室効果ガス削減の取り組みとしてCFP(Carbon Footprint of Products)が提案されている。CFP(Carbon Footprint of Products)は、商品等の原材料調達から生産、輸送、消費後の廃棄、リサイクルに至るまでのライフサイクル全体で排出された温室効果ガスを二酸化炭素排出量に換算して視覚化するものである。
【0006】
CFPで正確な二酸化炭素排出量を算定し、二酸化炭素排出量を削減していくためには、CFPの一部を担う生産プロセスの生産設計において正確な二酸化炭素排出量を算定し、これを削減するよう模索することが重要となる。
【0007】
しかしながら、特許文献1、2の生産設計シミュレーション装置は、作業要素情報と設備要素情報とのリンク付けを柔軟に設定、変更し、多様な生産プロセスのシミュレーションを柔軟に行うことはできるものの、各々の生産プロセスに対応する二酸化炭素排出量を併せて算出するようになっていない。そのため、作業要素情報と設備要素情報とのリンク付けを柔軟に設定、変更し、多様な生産プロセスのシミュレーションを柔軟に行うことができると共に、各々の生産プロセスに対応する二酸化炭素排出量を併せて算出することができる生産設計シミュレーション装置が望まれている。
【0008】
本発明は上記課題に鑑み提案するものであって、作業要素情報と設備要素情報とのリンク付けを柔軟に設定、変更し、多様な生産プロセスのシミュレーションを柔軟に行うことができると共に、多様な生産プロセスに対応する二酸化炭素排出量を柔軟に算出することができる生産設計シミュレーション装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の生産設計シミュレーション装置は、離散的に発生する事象の連鎖による状態推移をシミュレーションする生産設計シミュレーション装置であって、単位稼働時間当たりの設備CFP原単位を含む設備要素の諸元で構成される設備要素情報を記憶する設備要素情報記憶部と、必要な部品の種別と前記部品の量が設定されている作業要素の惹起条件と、作業要素の作業完了後の出力先と、作業要素の標準サイクルタイムと、前記部品の単位消費量当たりの材料CFP原単位を含む作業要素の諸元で構成される作業要素情報を記憶する作業要素情報記憶部と、前記設備要素と前記作業要素とを変更可能に関係付けるリンク情報を記憶するリンク情報記憶部とを備え、少なくとも第1の設備要素とリンク情報でリンクされている第1の作業要素の作業要素情報の惹起条件の充足に応じて、前記第1の設備要素が作業を実行し、前記第1の作業要素の作業要素情報の作業完了後の出力先に出力するようにして模擬的に処理すると共に、前記第1の設備要素における前記設備CFP原単位への前記標準サイクルタイムの乗算と前記第1の作業要素における前記材料CFP原単位への前記部品の消費量の乗算に基づき二酸化炭素の総排出量を模擬的に算出することを特徴とする。
これによれば、設備要素の能力、数に拘わらずに不変な作業要素の作業要素情報を設備要素情報と独立して設定し、所望のリンクを設定してシミュレーションできることから、作業を担う設備要素を容易且つ柔軟に設定、変更することが可能となり、多様なシミュレーション、最適な工程条件の探求を低コストで迅速に行うことができる。また、作業要素情報に設定されている必要な部品の種別及び数を、所望の設備要素で柔軟に用いて製造作業のシミュレーションを行うことができる。また、複数種の設備要素で汎用的に利用可能な作業要素情報として、標準サイクルタイムを作業要素に対して設定することができる。また、作業要素情報と設備要素情報とのリンク付けを柔軟に設定、変更し、多様な生産プロセスのシミュレーションを柔軟に行うことができると共に、設備要素の単位稼働時間当たりの設備CFP原単位と、作業要素の部品の単位消費量当たりの材料CFP原単位とのリンク付けを柔軟に設定、変更し、多様な生産プロセスに対応する二酸化炭素排出量を柔軟に算出することができる。
【0010】
本発明の生産設計シミュレーション装置は、前記第1の作業要素の作業要素情報に設定されている前記標準サイクルタイムに加えて、前記第1の設備要素の設備要素情報に前記標準サイクルタイムよりも短い設備固有サイクルタイムが設定されている場合、設備要素情報の設備固有サイクルタイムで、前記第1の設備要素が前記第1の作業要素の前記部品を消費するようにして生成品の生成作業を実行して模擬的に処理すると共に、前記第1の設備要素における前記設備CFP原単位への前記標準サイクルタイムの乗算に代えて、前記第1の設備要素における前記設備CFP原単位への前記設備固有サイクルタイムの乗算に基づき、二酸化炭素の総排出量を模擬的に算出することを特徴とする。
これによれば、特定の設備要素が高機能の生産機械で設備固有サイクルタイムが標準サイクルタイムよりも短い場合に、特定の設備要素の特性をシミュレーションに反映させることができると共に、特定の設備要素の特性を二酸化炭素排出量の算出にも反映させることができる。
【0011】
本発明の生産設計シミュレーション装置は、前記設備要素の諸元として前記設備要素の位置情報を前記設備要素情報記憶部に記憶し、前記第1の設備要素の位置情報と前記第1の設備要素の出力先である第2の設備要素の位置情報に基づく前記第1の設備要素から前記第2の設備要素までの搬送時間を取得し、前記第1の設備要素の作業完了時刻から前記搬送時間が経過した時刻に、前記第2の設備要素に前記第1の設備要素の作業完了後の中間品を出力するようにして模擬的に処理すると共に、単位搬送時間当たりの搬送CFP原単位を有する搬送情報を搬送情報記憶部に記憶し、前記搬送CFP原単位に前記搬送時間を乗算して取得した二酸化炭素排出量を加えて前記二酸化炭素の総排出量を算出することを特徴とする。
これによれば、搬送時間を加味したより正確な工程のシミュレーション結果を得ることができると共に、搬送CFP原単位を用いて搬送時間の特性を二酸化炭素排出量の算出にも反映させることができる。
【0012】
本発明の生産設計シミュレーション装置は、前記第1の前記設備要素における前記設備要素の諸元を構成する単位稼働時間当たりの前記設備CFP原単位として、数値の異なる複数の前記設備CFP原単位を記憶すると共に、それぞれの数値の異なる前記設備CFP原単位のランクを示すランク識別情報を設備要素情報として記憶し、入力されたランク識別情報に対応する前記設備CFP原単位を用いて二酸化炭素の排出量を模擬的に算出することを特徴とする。
これによれば、寒冷地や温暖地のような外気温等が異なる環境で二酸化炭素の総排出量を模擬的に算出する際に、より環境に適した設備CFP原単位を模擬処理で用いることができ、環境に適したより正確な二酸化炭素の総排出量を模擬的に算出できる。
【0013】
本発明の生産設計シミュレーション装置は、前記第1の前記設備要素における前記設備要素の諸元を構成する単位稼働時間当たりの前記設備CFP原単位として、数値の異なる複数の前記設備CFP原単位を記憶すると共に、それぞれの数値の異なる前記設備CFP原単位のランクを示すランク識別情報を設備要素情報として記憶し、温度センサーと、入力された前記温度センサーの検出値から対応するランク識別情報を取得するランク識別情報取得部を備え、取得されたランク識別情報に対応する前記設備CFP原単位を用いて二酸化炭素の排出量を模擬的に算出することを特徴とする。
これによれば、寒冷地や温暖地のような外気温等が異なる環境で二酸化炭素の総排出量を模擬的に算出する際に、より環境に適した設備CFP原単位を温度センサーの検出値に基づき客観的に特定して模擬処理で用いることができ、環境に適したより正確な二酸化炭素の総排出量を模擬的に算出できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の生産設計シミュレーション装置によれば、作業要素情報と設備要素情報とのリンク付けを柔軟に設定、変更し、多様な生産プロセスのシミュレーションを柔軟に行うことができると共に、多様な生産プロセスに対応する二酸化炭素排出量を柔軟に算出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施形態の生産設計シミュレーション装置の全体構成を示すブロック図。
図2】実施形態の生産設計シミュレーション装置の処理を示すフローチャート。
図3】実施形態の第1変形例の生産設計シミュレーション装置における設備要素情報の例を示す図。
図4】実施形態の第2変形例の生産設計シミュレーション装置の全体構成を示すブロック図。
図5】(a)は実施例における製品例を示す説明図、(b)は実施例における生産工程の流れを示す説明図。
図6】(a)は実施例における設備要素を示す説明図、(b)は実施例における作業要素による生産工程の流れを示すフローチャート。
図7】実施例における設備要素情報の例を示す図。
図8】実施例における作業要素情報の例を示す図。
図9】実施例におけるリンク情報の例を示す図。
図10】実施例における設備要素と作業要素のリンク設定画面を概念的に示す説明図。
図11】(a)~(d)は動作ログデータベースに記録されたログをグラフ化した例を示す説明図。
図12】変形例の生産設計シミュレーション装置とクライアント端末の全体構成を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
〔実施形態の生産設計シミュレーション装置〕
本発明の実施形態の生産設計シミュレーション装置1は、離散的に発生する事象の連鎖による工程の状態推移を模擬的に演算してシミュレーションする装置であり、図1に示すように、CPU等の演算制御部2と、ROM、ハードディスク等で構成される記憶部3と、マウス、キーボード、タッチパネル等の入力部4と、ディスプレイ、プリンター等の出力部5を備え、例えばサーバー、或いは通信ネットワークで接続された複数のコンピュータ等で構成される。
【0017】
記憶部3は、演算制御部2に所定処理を実行させる生産設計シミュレーションプログラム等の処理プログラムを記憶する処理プログラム記憶部31と、生産設備の設備要素の諸元を設備要素情報として記憶する設備要素情報記憶部32と、作業要素の惹起条件と作業完了後の出力先を含む作業要素情報を記憶する作業要素情報記憶部33と、設備要素或いは設備要素情報と作業要素或いは作業要素情報とを変更可能に関係付けるリンク情報を記憶するリンク情報記憶部34と、単位搬送時間当たりの搬送CFP原単位を有する搬送情報を記憶する搬送情報記憶部35と、出力部5のディスプレイで表示する所定画面のデータを記憶する画面データ記憶部36、各設備要素での状態変化の動作ログを時刻に対応して記憶する動作ログデータベース37、シミュレーション結果として、実行した生産工程のシミュレーションの識別情報とこれに対応する二酸化炭素の総排出量、シミュレーションの識別情報に対応するシミュレーションの内容を記憶するシミュレーション結果記憶部38を有し、更に、離散的シミュレーションや二酸化炭素排出量の算出の所定処理を行うのに必要なデータを記憶する領域を備える。
【0018】
設備要素情報として設定される設備要素の諸元には、単位稼働時間当たりの設備CFP原単位が設定される。設備CFP原単位は、生産設備の設備要素の稼働時間を乗ずることで二酸化炭素排出量が算出される排出係数を意味する。更に、設備要素の諸元には、例えば生産設備の設備要素の位置情報、生産設備の設備要素の設備固有サイクルタイム等が設定され、又、生産設備の設備要素自体に起因する或いは関連する適宜の諸元が必要に応じて設定される。
【0019】
作業要素情報として設定される作業要素の諸元には、設備要素に依存しない情報で特定の作業に関連する適宜の諸元が設定され、例えば特定の製品を生産する作業に関する諸元として、必要な部品の種別と当該部品の量が設定されている作業要素の惹起条件、作業要素の作業完了後の出力先や出力される部品数、作業要素の標準サイクルタイム、当該部品の単位消費量当たりの材料CFP原単位等が設定される。材料CFP原単位は、作業要素の必要な部品の消費量を乗ずることで二酸化炭素排出量が算出される排出係数を意味する。尚、生産工程全体など全体の工程において、例えば最初の工程の作業要素で、惹起条件に相当するものが開始入力であるもの等、惹起条件が設定記憶されない作業要素の作業要素情報が、全ての作業要素の作業要素情報中に、いくつか含まれていてもよい。
【0020】
リンク情報記憶部34に記憶される設備要素と作業要素のリンク情報は、生産設計シミュレーションプログラムと協働する演算制御部2の制御により、出力部5のディスプレイで所定の設定画面を表示し、この設定画面における入力部4からの入力に応じて設定されるが、設備要素が二次元配置された画面と、生産プロセス・ネットワークを構成する作業要素がネットワークとして配置された画面を表示し、2つの画面のそれぞれの要素を選択して関係付けのコマンドの実行或いはドラッグ&ドロップ等で関係付けることにより、リンク情報を入力設定可能にすると、リンク設定を直感的で使いやすいものとすることができて好ましい。
【0021】
生産設計シミュレーション装置1には、作業要素の作業要素情報として惹起条件と作業完了後の出力先が設定されており、生産設計シミュレーションプログラムと協働する演算制御部2は、図2に示すように、設備要素とリンク情報でリンクされている作業要素の作業要素情報の惹起条件の充足に応じて(S11)、当該設備要素が当該作業要素の作業要素情報で規定されている作業を実行するように当該設備要素の動作を惹起し、当該作業要素情報の出力先に作業完了後の中間品を出力するようにして演算を進行させ、生産工程の模擬的処理を行う。演算制御部2は、後述する任意の設備要素にリンク付けされた作業要素の作業要素情報における標準サイクルタイムよりも短い設備固有サイクルタイムが設定されていない場合(S12)、作業要素情報の標準サイクルタイムで、当該任意の設備要素がリンク付けされた作業要素の必要な部品を消費するようにして生成品や中間品の生成作業を実行して模擬的に処理する(S13)。
【0022】
この演算制御部2の模擬処理の演算の際には、例えば演算中に設備要素にリンクされている作業要素の作業要素情報の惹起条件と出力先を参照し、惹起条件の充足に応じて当該設備要素の動作を惹起して出力するように演算する、或いは演算前に、設備要素にリンクされている作業要素の作業要素情報の惹起条件と出力先を当該設備要素の付加情報として記憶部3に記憶させ、付加情報とされている作業要素情報の惹起条件の充足に応じて当該設備要素の動作を惹起して出力するように演算する等とすることが可能である。後者の例では、演算前に設備要素に惹起条件と出力先を付加しておくことで、演算中のリンク情報取得の処理を不要にし、演算制御部2が担う処理量を軽減することができる。演算制御部2による全生産工程のシミュレーションの模擬処理は、作業要素情報に当該作業要素の作業完了品の出力先となる作業要素が設定されていない作業要素或いは作業要素情報の処理を実行するまで行われ、後述する二酸化炭素排出量の算出、積算も、同様に作業完了品の出力先となる作業要素が設定されていない作業要素或いは作業要素情報の処理を実行するまで行われる(S18)。
【0023】
また、生産設計シミュレーション装置1の演算制御部2は、この生産工程の模擬的処理に伴い、当該設備要素に対応して記憶されている設備CFP原単位に当該作業要素の標準サイクルタイムを乗算して二酸化炭素排出量を模擬的に算出すると共に、当該作業要素に対応して記憶されている材料CFP原単位に当該作業要素に必要な部品の消費量を乗算して二酸化炭素排出量を模擬的に算出し(S14)、設備要素と作業要素の各々のリンク付けの関係において、各設備要素に対応して算出した二酸化炭素排出量と、各作業要素に対応して算出した二酸化炭素排出量とを、記憶部3のシミュレーション結果記憶部38の所定記憶領域に格納して積算していく(S15)。
【0024】
ここで、任意の設備要素の設備要素情報に、当該任意の設備要素にリンク付けされた作業要素の作業要素情報における標準サイクルタイムよりも短い設備固有サイクルタイムが設定されていると、生産設計シミュレーション装置1の演算制御部2が判断した場合には(S12)、演算制御部2は、設備要素情報の設備固有サイクルタイムで、当該任意の設備要素がリンク付けされた作業要素の必要な部品を消費するようにして生成品や中間品の生成作業を実行して模擬的に処理すると共に(S131)、当該任意の設備要素に対応して記憶されている設備CFP原単位に当該リンク付けされた作業要素の標準サイクルタイムを乗算する処理に代え、当該任意の設備要素に対応して記憶されている設備CFP原単位に当該任意の設備要素の設備固有サイクルタイムを乗算して二酸化炭素排出量を模擬的に算出し(S141)、各々の設備要素に対応して算出した二酸化炭素排出量として記憶部3のシミュレーション結果記憶部38の所定記憶領域に格納する(S151)。
【0025】
更に、本実施形態の生産設計シミュレーション装置1の演算制御部2の演算処理では、設備要素の諸元として設備要素情報記憶部32に記憶されている生産設備の設備要素の位置情報を用い、第1の設備要素の位置情報と第1の設備要素の出力先である第2の設備要素の位置情報に基づく第1の設備要素から第2の設備要素までの搬送時間を取得し、第1の設備要素の作業完了時刻から搬送時間が経過した時刻に、第2の設備要素に第1の設備要素の作業完了後の中間品を出力するようにして模擬的に処理し、搬送時間を加味したより正確な工程のシミュレーションを実行する(S16、S161)。
【0026】
この搬送時間の取得は、例えば記憶部3の所定領域に、生産工場等のエリア全体を規定する座標系と、設定速度を記憶し、演算制御部2の演算処理において、第1の設備要素の位置情報と第2の設備要素の位置情報と設定速度から搬送時間を演算取得する、或いは既存の経路推測技術を利用し、記憶部3の所定領域に記憶される所定データを用いて、演算制御部2の演算処理において移動経路を推測し、この移動経路に基づいて第1の設備要素から第2の設備要素までの搬送時間を演算取得する等とすることが可能である。
【0027】
また、生産設計シミュレーション装置1の演算制御部2は、第1の設備要素から第2の設備要素までの搬送時間の取得等の搬送時間の取得に伴い、搬送情報記憶部35に格納されている単位搬送時間当たりの搬送CFP原単位を用い、搬送CFP原単位に取得した搬送時間を乗算して二酸化炭素排出量を模擬的に算出し、各々の搬送時間に対応して算出した二酸化炭素排出量を記憶部3のシミュレーション結果記憶部38の所定記憶領域に格納して積算していく(S17、S171)。ここで搬送CFP原単位は、生産設備の設備要素間の搬送時間を乗ずることで二酸化炭素排出量が算出される排出係数を意味する。
【0028】
そして、演算制御部2は、積算した各設備要素に対応して算出した二酸化炭素排出量と、積算した各作業要素に対応して算出した二酸化炭素排出量と、積算した各々の搬送時間に対応して算出した二酸化炭素排出量を全て積算し、模擬的処理した全生産工程、全生産プロセスによって排出される二酸化炭素総排出量を算出し、記憶部3のシミュレーション結果記憶部38の所定記憶領域に格納する(S19)。尚、演算制御部2は、積算した各設備要素に対応して算出した二酸化炭素排出量と、積算した各作業要素に対応して算出した二酸化炭素排出量と、積算した各々の搬送時間に対応して算出した二酸化炭素排出量をそれぞれ区別せず模擬処理に応じて順次積算することにより、全生産プロセスによって排出される二酸化炭素総排出量を算出し、記憶部3のシミュレーション結果記憶部38の所定記憶領域に格納するようにしても好適である。演算制御部2は、例えば入力部4からの出力要求の入力に応じて、模擬的に算出して記憶部3のシミュレーション結果記憶部38に格納した二酸化炭素総排出量を出力部5で出力、表示する。
【0029】
本実施形態の生産設計シミュレーション装置1によれば、設備要素の能力、数に拘わらずに不変な作業要素の作業要素情報を設備要素情報と独立して設定し、所望のリンクを設定してシミュレーションできることから、作業を担う設備要素を容易且つ柔軟に設定、変更することが可能となり、多様なシミュレーション、最適な工程条件の探求を低コストで迅速に行うことができる。また、作業要素情報に設定されている必要な部品の種別及び数を、所望の設備要素で柔軟に用いて製造作業のシミュレーションを行うことができる。また、複数種の設備要素で汎用的に利用可能な作業要素情報として、標準サイクルタイムを作業要素に対して設定することができる。また、作業要素情報と設備要素情報とのリンク付けを柔軟に設定、変更し、多様な生産プロセスのシミュレーションを柔軟に行うことができると共に、設備要素の単位稼働時間当たりの設備CFP原単位と、作業要素の部品の単位消費量当たりの材料CFP原単位とのリンク付けを柔軟に設定、変更し、多様な生産プロセスに対応する二酸化炭素排出量を柔軟に算出することができる。
【0030】
また、特定の設備要素が高機能の生産機械で設備固有サイクルタイムが標準サイクルタイムよりも短い場合に、特定の設備要素の特性をシミュレーションに反映させることができると共に、特定の設備要素の特性を二酸化炭素排出量の算出にも反映させることができる。
【0031】
また、搬送時間を加味したより正確な工程のシミュレーション結果を得ることができると共に、搬送CFP原単位を用いて搬送時間の特性を二酸化炭素排出量の算出にも反映させることができる。
【0032】
〔実施形態の第1変形例の生産設計シミュレーション装置〕
実施形態の第1変形例の生産設計シミュレーション装置1では、図3に示すように、コンプレッサー、電気炉等の所要の設備要素における設備要素の諸元を構成する単位稼働時間当たりの設備CFP原単位として、数値の異なる複数の設備CFP原単位が設定されて設備要素情報記憶部32に記憶されると共に、それぞれの数値の異なる設備CFP原単位のランクを示すランク識別情報がそれぞれの数値の異なる設備CFP原単位に対応設定されて設備要素情報記憶部32に記憶される。第1変形例における設備CFP原単位も、生産設備の設備要素の稼働時間を乗ずることで二酸化炭素排出量が算出される排出係数を意味する。
【0033】
第1変形例における生産設計シミュレーション装置1の演算制御部2は、入力部4から入力された、それぞれの設備要素におけるランク識別情報を認識し、それぞれの設備要素において入力されたランク識別情報及びこれに対応する設備CFP原単位を記憶部3の一時的な記憶領域に記憶する等により指定状態とし、それぞれの設備要素において、入力されて指定状態とされたランク識別情報に対応する設備CFP原単位を用いて二酸化炭素排出量を模擬的に算出する処理を実行する。即ち、図2のS14、S141の処理において、指定状態のランク識別情報に対応する設備CFP原単位を用いて二酸化炭素排出量の模擬的算出が実行される。尚、設備要素の諸元として単一の設備CFP原単位だけが設定されている設備要素については、その設備CFP原単位を用いて二酸化炭素排出量の模擬的算出が実行される。その他の第1変形例の構成は上記実施形態と同様である。
【0034】
尚、同種の生産設備のような設備要素群に対して同一のランク識別情報を設定し、一つのランク識別情報の入力に応じて複数の設備要素で構成される設備要素群に対する設備CFP原単位が一度に指定される構成としても好適である。また、ランク識別情報に入力に代え、ランク識別情報と対応する温度、気圧、或いは湿度等の指標を入力し、入力された指標とランク識別情報を対応させる指標対応テーブルを記憶部3の所定記憶領域に記憶し、演算制御部2が、指標対応テーブルを用いて入力された指標と対応するランク識別情報を認識する構成としても好適である。
【0035】
第1変形例の生産設計シミュレーション装置1によれば、寒冷地や温暖地のような外気温等が異なる環境で二酸化炭素の総排出量を模擬的に算出する際に、より環境に適した設備CFP原単位を模擬処理で用いることができ、環境に適したより正確な二酸化炭素の総排出量を模擬的に算出できる。
【0036】
〔実施形態の第2変形例の生産設計シミュレーション装置〕
実施形態の第2変形例の生産設計シミュレーション装置1では、第1変形例と同様に、コンプレッサー、電気炉等の所要の設備要素における設備要素の諸元を構成する単位稼働時間当たりの設備CFP原単位として、数値の異なる複数の設備CFP原単位が設定されて設備要素情報記憶部32に記憶されると共に、それぞれの数値の異なる設備CFP原単位のランクを示すランク識別情報がそれぞれの数値の異なる設備CFP原単位に対応設定されて設備要素情報記憶部32に記憶される。第2変形例における設備CFP原単位も、生産設備の設備要素の稼働時間を乗ずることで二酸化炭素排出量が算出される排出係数を意味する(図3参照)。
【0037】
更に、第2変形例の生産設計シミュレーション装置1には、図4に示すように、温度センサー6と、入力された温度センサー6の検出値から、それぞれの設備要素における対応するランク識別情報を取得するランク識別情報取得部21が設けられる。ランク識別情報取得部21は、処理プログラム記憶部31に記憶された生産設計シミュレーションプログラムと協働する演算制御部2によって構成される。記憶部3には、温度センサー6の検出値の数値範囲とそれぞれの設備要素のランク識別情報が対応して設定されたランク識別情報対応テーブルがランク識別情報対応テーブル記憶部39に記憶されており、ランク識別情報取得部21は、温度センサー6から入力される検出値に対応するそれぞれの設備要素のランク識別情報を取得し、更に、取得したランク識別情報及びこれに対応する設備CFP原単位を記憶部3の一時的な記憶領域に記憶する等により指定状態とし、それぞれの設備要素において、指定状態とされたランク識別情報に対応する設備CFP原単位を用いて二酸化炭素排出量を模擬的に算出する処理を実行する。その他の第2変形例の構成は上記第1変形例と同様であり、適用可能な範囲で第2変形例にも第1変形例の変更構成を用いても好適である。
【0038】
第2変形例の生産設計シミュレーション装置1によれば、寒冷地や温暖地のような外気温等が異なる環境で二酸化炭素の総排出量を模擬的に算出する際に、より環境に適した設備CFP原単位を温度センサー6の検出値に基づき客観的に特定して模擬処理で用いることができ、環境に適したより正確な二酸化炭素の総排出量を模擬的に算出できる。
【実施例0039】
次に、実施形態の生産設計シミュレーション装置1を高圧ガス容器を製品として製造する生産工程について適用した実施例について説明する。図5に示すように、実施例においては、高圧ガス容器は本体(Body)と両側の側部(Side)を固着して構成され、本体(Body)と両側の側部(Side)をそれぞれ鍛造した後、本体(Body)と両側の側部(Side)を溶接し、耐圧検査を施した後、塗装して高圧ガス容器が完成する生産工程となっている。
【0040】
この生産工程では、生産設備の設備要素と作業要素は図6のように定義する。即ち、設備要素A~Cに各鍛造機、設備要素D、Eに各溶接機、設備要素F、Gに各耐圧検査機、設備要素Hに塗装機を定義すると共に、作業要素WE1に本体(Body)鍛造工程、作業要素WE2に側部(Side)鍛造工程、作業要素WE3に溶接工程、作業要素WE4に耐圧検査工程、作業要素WE5に塗装工程を定義する。尚、図6では、工場レイアウトにおける各設備要素としてのステーションの位置と通路(図示の点線)を模式的に示している。
【0041】
そして、入力部4からの入力等により、設備要素毎に、設備要素の諸元である設備要素情報を生産設計シミュレーション装置1の設備要素情報記憶部32に記憶させると共に、作業要素毎に、作業要素の諸元である作業要素情報を作業要素情報記憶部33に記憶させ、更に、設備要素と作業要素を関係付けることにより設備要素情報と作業要素情報の関係付けを行い、この関係付けのリンク情報をリンク情報記憶部34に記憶させる。
【0042】
図7に各設備要素に設定される設備要素情報の例を示す。この例では、各生産設備の設備要素に対して、各製品毎の設備固有サイクルタイムCT1[min]、工場レイアウトの座標系における設備要素の位置座標、設備要素が占有する縦横の大きさ、設備要素の部品バッファの部品の収容可能数、設備要素の部品バッファの部品の現在収容数、単位稼働時間当たりの設備CFP原単位等が設備要素の諸元とされ、設備要素情報として設定されている。尚、例えば設備要素が複数種別の部品を必要とするものである場合、部品バッファの収容可能数と現在収容数は部品種別毎に設定するとよい。
【0043】
図8に各作業要素に設定される作業要素情報の例を示す。この例では、各作業要素に、作業要素の惹起条件である必要な部品の種別とその数量、当該作業要素の作業完了品の出力先となる作業要素、作業完了後に出力される出力品の種別と数、作業要素の標準サイクルタイムCT2[min]、作業要素の惹起条件における必要な部品の単位消費量当たりの材料CFP原単位等が作業要素の諸元とされ、作業要素情報として設定されている。尚、作業要素の標準サイクルタイムは当該作業の一般的なサイクルタイムを表すものであり、任意の設備要素の設備要素情報に、当該任意の設備要素にリンク付けされた作業要素の作業要素情報における標準サイクルタイムよりも短い設備固有サイクルタイムが設定されている場合には、設備要素情報に保持される設備固有サイクルタイムを利用させるようにする。
【0044】
また、作業要素情報には、上記情報に加え、惹起条件として、作業に必要な治工具、消耗品の量、作業を行うための必要要員数や作業を実施するために必要な電力、水力、ガスなどの二次リソース、さらには、後工程引取り(かんばん方式)としても稼働するために、当該作業が後工程引き取りなのか、そうでないか、また、後工程引き取りの場合は、現状、後工程の状態に対応して稼働してよい状態かどうかを表すフラグを設定してもよい。また、出力情報として、消耗される工具の数、排出される切り屑、熱量、水、ガスの数や量を設定してもよい。
【0045】
図9にリンク情報の例を示す。この例では、作業要素WE1に設備要素C、作業要素WE2に設備要素A、作業要素WE3に設備要素D、E、作業要素WE4に設備要素G、作業要素WE5に設備要素Hが設定されているが、工場内の全ての設備要素A~Hのうちの適宜の設備要素に対して作業要素を関係付ける、或いは工場内の全ての設備要素A~Hに対して作業要素を関係付けることが可能であり、この関係付けは、必要な生産量等により柔軟に設定、変更することが可能である。
【0046】
上述の設備要素に対応する設備要素情報と作業要素に対応する作業要素情報とのリンク情報による関係付けは、図10の概念図に示すように、例えば設備要素が二次元配置された画面の中の設備要素を選択すると共に、生産プロセス・ネットワークを構成する作業要素がネットワークとして配置された画面の中の作業要素を選択し、それらを関係付けるコマンドを実行させる、或いは生産プロセス・ネットワークを構成する作業要素がネットワークとして配置された画面の中の作業要素を選択し、設備要素が二次元配置された画面の中の設備要素にドラッグ&ドロップする等により行う。
【0047】
この設備要素と作業要素との関係付け、リンク情報は、設備要素と作業要素を複数対複数で設定可能になっている。これにより、ある作業要素を、生産量や生産品目の変動に対応して、単数又は複数の設備要素で適宜実施することや、当初の設備要素から別の設備要素で実施する変更に対応可能になっていると共に、一つの設備要素に複数の作業要素をリンクさせ、一つの設備要素で複数の作業要素を実施することが可能になっている。尚、工場内で利用されない設備要素が生ずることもあるため、作業要素とリンクされていない設備要素があってもよいが、作業要素は必ず実施する必要があるため、いずれかの設備要素にリンクされる必要がある。
【0048】
上述のように設備要素情報、作業要素情報、設備要素情報と作業要素情報とを変更可能に関係付けるリンク情報を設定した生産設計シミュレーション装置1により、生産工程のシミュレーション演算を実行する。シミュレーション演算では、各設備要素とリンク情報で個別にリンクされている作業要素の惹起条件の充足に応じて、各設備要素で必要とする部品を利用して生産作業を実行し、当該設備要素の処理結果として加工或いは組立等された作業完了品を、当該作業要素の作業完了後の出力先である次の設備要素に出力するようにして模擬的に演算処理する。
【0049】
この演算においては、例えば設備要素A(鍛造機)で鍛造された部品we2:側部(Side)を設備要素D(溶接機)の部品バッファに格納し、設備要素C(鍛造機)で鍛造された部品we1:本体(Body)を設備要素D(溶接機)、または設備要素E(溶接機)の部品バッファに格納し、設備要素D(溶接機)、または設備要素E(溶接機)の惹起条件が充足された時刻(部品we2:側部2個と部品we1:本体1個が部品バッファに格納された時刻)に、必要な部品(部品we2:側部2個と部品we1:本体1個)を消費するようにして、設備要素D(溶接機)、または設備要素E(溶接機)が作業(溶接作業)を実行して側部(Side)と本体(Body)が溶接された中間品(部品we3)を生成し、この中間品(部品we3、生成品)を次工程として定義されている設備要素G(耐圧検査機)に出力するように模擬して演算処理する。尚、同一の作業要素において複数の設備要素が設定されている場合には、各設備要素における各々の惹起条件を個別に判断して、惹起条件に達した設備要素から稼働して出力する。このような処理を各設備要素が並列的に実行するように演算することで、生産を模擬することができる。
【0050】
更に、このシミュレーション演算では、例えば設備要素Cと作業要素WE1とのリンク付けの関係において、設備要素Cに対応して記憶されている設備CFP原単位に、設備要素Cとリンク付けされている作業要素WE1の標準サイクルタイムを乗算して設備要素Cに対応する二酸化炭素排出量を模擬的に算出すると共に、作業要素WE1に対応して記憶されている材料CFP原単位に作業要素WE1に必要な部品の消費量を乗算して作業要素WE1に対応する二酸化炭素排出量を模擬的に算出し、設備要素Cに対応して算出した二酸化炭素排出量と、作業要素WE1に対応して算出した二酸化炭素排出量とを、記憶部3の所定記憶領域に格納する。
【0051】
同様に、例えば設備要素Aと作業要素WE2とのリンク付けの関係において、設備要素Aに対応して記憶されている設備CFP原単位に、設備要素Aとリンク付けされている作業要素WE2の標準サイクルタイムを乗算して設備要素Aに対応する二酸化炭素排出量を模擬的に算出すると共に、作業要素WE2に対応して記憶されている材料CFP原単位に作業要素WE2に必要な部品の消費量を乗算して作業要素WE2に対応する二酸化炭素排出量を模擬的に算出し、設備要素Aに対応して算出した二酸化炭素排出量と、作業要素WE2に対応して算出した二酸化炭素排出量とを、記憶部3の所定記憶領域に格納する。
【0052】
このように設備要素と作業要素の各々のリンク付けの関係において、各設備要素に対応して算出した二酸化炭素排出量と、各作業要素に対応して算出した二酸化炭素排出量とを、記憶部3の所定記憶領域に格納して積算していく。
【0053】
ここで、例えば設備要素Dの設備要素情報に、設備要素Dにリンク付けされた作業要素WE3の作業要素情報における標準サイクルタイムよりも短い設備固有サイクルタイムが設定されていると、生産設計シミュレーション装置1の演算制御部2が標準サイクルタイムと設備固有サイクルタイムの対比等で判断した場合には、設備要素情報の設備固有サイクルタイムで、設備要素Dがリンク付けされた作業要素WE3の必要な部品を消費するようにして生成品や中間品の生成作業を実行して模擬的に処理すると共に、通常の設備要素Dに対応して記憶されている設備CFP原単位にリンク付けされた作業要素WE3の標準サイクルタイムを乗算する処理に代え、設備要素Dに対応して記憶されている設備CFP原単位に設備要素Dの設備固有サイクルタイムを乗算して二酸化炭素排出量を模擬的に算出し、設備要素Dと作業要素WE3とのリンク付けの関係において、設備要素Dに対応して算出した二酸化炭素排出量として記憶部3の所定記憶領域に格納し、上述の二酸化炭素排出量の積算に用いる。
【0054】
また、このシミュレーション演算では、生産プロセスの進行に応じて発生する生成品や中間品の搬送に伴い、例えば作業要素WE1とリンク付けされている設備要素Cから作業要素WE3とリンク付けされている設備要素Dまでの搬送工程における搬送時間を設備要素C、Dの位置情報と記憶部3に記憶されている設定速度から算出、取得し、搬送情報記憶部35に格納されている単位搬送時間当たりの搬送CFP原単位を用い、搬送CFP原単位に取得した搬送時間を乗算して二酸化炭素排出量を模擬的に算出する。同様に生産プロセスで発生する各々の搬送工程における搬送時間を取得して二酸化炭素排出量を模擬的に算出し、各々の搬送時間に対応して算出した二酸化炭素排出量を記憶部3の所定記憶領域に格納して積算していく。
【0055】
そして、設備要素と作業要素の各々のリンク付けの関係において、各設備要素に対応して算出した二酸化炭素排出量と、各作業要素に対応して算出した二酸化炭素排出量と、各々の搬送時間に対応して算出した二酸化炭素排出量を全て積算して、二酸化炭素の総排出量を模擬的に算出する。このように算出した二酸化炭素の総排出量は、生産設計シミュレーション装置1の演算制御部2により、実行した生産工程のシミュレーションの識別情報と対応させてシミュレーション結果記憶部38に格納される。
【0056】
本実施例では、上記第1変形例を適用し、例えば設備要素Cに対応する設備CFP原単位として数値の異なる複数の設備CFP原単位を設定し、それぞれの数値の異なる設備CFP原単位のランクを示すランク識別情報を設備要素情報記憶部32に記憶し、生産設計シミュレーション装置1の演算制御部2が、入力されて指定状態とされた設備要素Cのランク識別情報に対応する設備CFP原単位を用い、設備要素Cとリンク付けされている作業要素WE1の標準サイクルタイムを乗算して二酸化炭素排出量を模擬的に算出するようにしても好適である。
【0057】
また、本実施例では、上記第2変形例を適用し、例えば設備要素Cに対応する設備CFP原単位として数値の異なる複数の設備CFP原単位を設定し、それぞれの数値の異なる設備CFP原単位のランクを示すランク識別情報を設備要素情報記憶部32に記憶し、生産設計シミュレーション装置1の演算制御部2のランク識別情報取得部21が、温度センサー6から入力される検出値に対応する設備要素Cのランク識別情報を取得し、更に、取得したランク識別情報及びこれに対応する設備CFP原単位を指定状態とし、指定状態とされたランク識別情報に対応する設備CFP原単位を用い、設備要素Cとリンク付けされている作業要素WE1の標準サイクルタイムを乗算して二酸化炭素排出量を模擬的に算出するようにしても好適である。
【0058】
上述のシミュレーション演算では、各設備要素での状態変化をシミュレーション開始時刻からの経過時刻等の時刻に対応して動作ログデータベース37に記録することにより、様々な分析を行うことが可能となる。図11に動作ログデータベース37に記録されたログをグラフ化したものを示す。これにより、時間の推移に対して、各設備要素が保持する部品バッファでの部品数、すなわち、中間在庫の推移や、各設備要素の稼働時間内における稼働率等を把握することができる。上述の例では、例えば設備要素A(鍛造機)で鍛造された部品we2(側部)が設備要素D(溶接機)や要素設備E(溶接機)の部品バッファに格納される時刻、設備要素C(鍛造機)で鍛造された部品we1(本体)が設備要素D(溶接機)や要素設備E(溶接機)の部品バッファに格納される時刻、設備要素D(溶接機)や要素設備E(溶接機)が部品we2(側部)2個と部品we1(本体)1個を消費し、部品we3(中間品)の生成を開始する時刻、設備要素D(溶接機)や要素設備E(溶接機)が部品we3(中間品)を生成を完了した時刻等を、各々の状態に対応して動作ログデータベース37に記録、格納する。
【0059】
尚、上記例の生産設計シミュレーション装置1による生産シミュレーションでは、各設備要素で惹起条件が充足されれば生産作業を実行するように模擬演算するが、生産計画に対応し、惹起条件に加えて、それぞれの作業要素で生産作業を実施してよいかどうか条件、或いはアクティビティ(物流、作業員編成)の条件、或いはその双方等の付加条件を加え、この付加条件を作業要素情報記憶部33に記憶させ、惹起条件と付加条件が充足した場合に、当該作業要素とリンクされている設備要素が作業を実行するように模擬演算しても良好である。
【0060】
例えば、どの製品をどのような順番で何個づつ生産するか、どのくらいの数量を生産するかなどの生産目標、生産方式に加えて、生産を行なう就業時間内であるかどうか、何時から生産を実行するか、また、目標の生産量を達していない範囲で実行するなどの、生産工場の運営上の条件を加える。また、外注先や他の工場から供給される部品が、何時に何個、工場に入ってくるかを加えてもよい。この場合、設備要素の持つ部品バッファにおいて、外注先や他工場からの納品状態に応じて部品を発生させる機構を準備する。計画の早期段階において、外注先や他工場からの部品供給の状態を反映させたくない場合には、生産プロセス・ネットワークの最も上流となる部品バッファにおいて、設備要素が必要とした場合に無制限に部品を供給する機構を準備するとよい。
【0061】
作業員編成の条件としては、例えば作業班毎の人数を設定するとともに、ある作業班が作業を受け持つ設備要素を設定しておけば、その作業班の要員が空いているときに設備要素での作業を実行できることを加えるとよい。このような活用は、本例で示した形態に限らず、例えば、各設備要素への部品搬送作業を作業要素として設定するような場合に、搬送の作業班の要員が対応できる範囲で作業を成さしめるような付加条件を実現することができる。
【0062】
〔本明細書開示発明の包含範囲〕
本明細書開示の発明は、発明として列記した各発明、実施形態、実施例の他に、適用可能な範囲で、これらの部分的な内容を本明細書開示の他の内容に変更して特定したもの、或いはこれらの内容に本明細書開示の他の内容を付加して特定したもの、或いはこれらの部分的な内容を部分的な作用効果が得られる限度で削除して上位概念化して特定したものを包含する。そして、本明細書開示の発明には下記のような変形例も含まれる。
【0063】
例えば上記実施形態や第1変形例、第2変形例の更なる変形例として、図12に示すように、生産設計シミュレーション装置1に通信制御を行う通信部7を設け、通信回線101を介してクライアント端末102と通信可能とし、クライアント端末102からの送信によりリンク情報を設定することや、入力部4からの入力に代えてクライアント端末102から送信入力できるようにすることや、クライアント端末102がシミュレーション結果を受信することが可能なように構成しても好適であり、又、生産設計シミュレーション装置1が別途設置されるサーバー等を介してクライアント端末102と間接的に送受信可能にするようにしても好適である。
【0064】
これによれば、遠隔地等の別の場所に居る利用者に生産設計シミュレーション装置1の二酸化炭素排出量の程度を含むシミュレーション結果を提示することができ、又、利用者は、複数の者で共用される生産設計シミュレーション装置1のシミュレーションによる二酸化炭素排出量の程度を含む効果分析を所要時のみ得ることも可能となり、生産設計シミュレーション装置1の効率的利用、より低コストでシミュレーションによる二酸化炭素排出量の程度を含む効果分析を行うことができる。
【0065】
また、本発明の生産設計シミュレーション装置では、必要に応じて、材料の廃棄量を乗ずることで二酸化炭素排出量が算出される排出係数として廃棄材料CFP原単位を設定記憶し、生産時に廃棄される材料の廃棄量を廃棄材料CFP原単位に乗じて二酸化炭素排出量を算出し、この二酸化炭素排出量を上記実施形態で算出した二酸化炭素排出量に更に積算して、二酸化炭素の総排出量を算出するようにしても好適である。また、本発明の生産設計シミュレーション装置では、必要に応じて、生産に関わらない照明使用の電力量に対応する二酸化炭素の排出係数のCFP原単位や、エアコン使用の電力量に対応する二酸化炭素の排出係数のCFP原単位等を設定記憶し、生産時の照明使用の電力量やエアコン使用の電力量にそれぞれ対応するCFP原単位を乗じて二酸化炭素排出量を算出し、この二酸化炭素排出量を上記実施形態で算出した二酸化炭素排出量に更に積算して、二酸化炭素の総排出量を算出するようにして好適である。また、本発明の生産設計シミュレーション装置では、必要に応じて当該業務に関わるスタッフの通勤経路に依存する二酸化炭素の排出係数のCFP原単位等を設定記憶し、生産時の生産品目毎にそれぞれのスタッフが関わる割合に応じて算出し、二酸化炭素の総排出量を算出するようにしても好適である。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明は、例えば生産工程をシミュレーションして温室効果ガス削減に優れる生産工程を把握する際に利用することができる。
【符号の説明】
【0067】
1…生産設計シミュレーション装置 2…演算制御部 3…記憶部 31…処理プログラム記憶部 32…設備要素情報記憶部 33…作業要素情報記憶部 34…リンク情報記憶部 35…搬送情報記憶部 36…画面データ記憶部 37…動作ログデータベース 38…シミュレーション結果記憶部 39…ランク識別情報対応テーブル記憶部 4…入力部 5…出力部 6…温度センサー 7…通信部 101…通信回線 102…クライアント端末
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12