(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024132080
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】電線の端末構造及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01R 4/18 20060101AFI20240920BHJP
【FI】
H01R4/18 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023042735
(22)【出願日】2023-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100170575
【弁理士】
【氏名又は名称】森 太士
(72)【発明者】
【氏名】南川 暁
(72)【発明者】
【氏名】中山 慎
【テーマコード(参考)】
5E085
【Fターム(参考)】
5E085BB03
5E085BB23
5E085CC03
5E085DD13
5E085EE11
5E085JJ38
(57)【要約】
【課題】電線の端末部に接続端子を設ける工程において加工時間の短縮及びコスト低減を図ることが可能な電線の端末構造及びその製造方法を提供する。
【解決手段】電線10の端末構造1は、絶縁性材料から形成され、電線10の端末部11を折り返した状態で保持する電線保持部材2と、導電性材料から筒状に形成され、電線10の端末部11及び電線保持部材2が挿通される接続端子3とを備える。電線10の端末部11と接続端子3とが重なる部分には、電線10の端末部11と接続端子3とを貫通させて形成される貫通穴4が形成される。貫通穴4の周縁部分には、電線10の端末部11と接続端子3とが接触する電気的接続部55が形成される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁性材料から形成され、電線の端末部を折り返した状態で保持する電線保持部材と、
導電性材料から筒状に形成され、前記電線の端末部及び前記電線保持部材が挿通される接続端子と、を備え、
前記電線の端末部と前記接続端子とが重なる部分には、前記電線の端末部と前記接続端子とを貫通させて形成される貫通穴が形成され、
前記貫通穴の周縁部分には、前記電線の端末部と前記接続端子とが接触する電気的接続部が形成される、
電線の端末構造。
【請求項2】
前記電線保持部材は、
前記電線保持部材の前記接続端子への挿通方向の前端部に形成され、前記電線の端末部の折返部が巻き掛けられる巻掛部と、
前記電線保持部材における前記挿通方向の後端部に形成され、前記電線の端末部の先端部を係止する係止部と、を有する、
請求項1に記載の電線の端末構造。
【請求項3】
前記電線保持部材の前記係止部は、一対の挟持部から構成され、
一対の前記挟持部の少なくとも一方には、前記挿通方向と交差する方向に沿って延在して前記電線の端末部の抜けを防止するための抜け防止用リブが形成される、
請求項2に記載の電線の端末構造。
【請求項4】
一対の前記挟持部は、ヒンジ部を介して結合される、
請求項3に記載の電線の端末構造。
【請求項5】
前記電線保持部材には、係止突起が突出形成され、
前記接続端子には、前記係止突起が係止される係止穴が形成される、
請求項1から3のいずれか一項に記載の電線の端末構造。
【請求項6】
前記接続端子の挿通方向の前端に形成される開口には、前記電線の端末部及び前記電線保持部材の移動を規制するガイド壁部が形成される、
請求項1から3のいずれか一項に記載の電線の端末構造。
【請求項7】
絶縁性材料から形成される第1保持部材を、折り返した状態の電線の端末部に装着して、前記電線の端末部を折り返した状態で保持する工程と、
導電性材料から筒状に形成される第2保持部材に、前記電線の端末部及び前記第1保持部材を挿通して、前記第2保持部材を前記第1保持部材に装着する工程と、
前記電線の端末部と前記第2保持部材とが重なる部分に貫通させて貫通穴を形成する工程と、を備え、
前記貫通穴を形成する工程において、前記貫通穴の周縁部分において前記電線の端末部と前記第2保持部材とを接触させて、前記電線の端末部と前記第2保持部材とを電気的に接続させる、
電線の端末構造の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電線の端末構造及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両のアース等に用いられる電線の端末部には、電線圧着部を介して接続端子が設けられる(特許文献1参照)。平型の編組電線の場合には、一般的に、平型の編組電線の端末部を丸型形状に束ねた後に、その電線の端末部を電線圧着部に圧着し、また、電線の端末部をはんだ付け等により接続端子に対して固着している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特に平型の編組電線の端末部に接続端子を設ける際には、電線の端末部を丸型形状に束ねる加工、その電線の端末部に電線圧着部を圧着する加工、はんだ付け等により電線の端末部を固着する加工等が必要であり、加工時間の短縮及びコスト低減の余地がある。
【0005】
本発明は、このような従来技術が有する課題に鑑みてなされたものである。そして本発明の目的は、電線の端末部に接続端子を設ける工程において加工時間の短縮及びコスト低減を図ることが可能な電線の端末構造及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の態様に係る電線の端末構造は、絶縁性材料から形成され、電線の端末部を折り返した状態で保持する電線保持部材と、導電性材料から筒状に形成され、電線の端末部及び電線保持部材が挿通される接続端子と、を備え、電線の端末部と接続端子とが重なる部分には、電線の端末部と接続端子とを貫通させて形成される貫通穴が形成され、貫通穴の周縁部分には、電線の端末部と接続端子とが接触する電気的接続部が形成される。
【0007】
本発明の態様に係る電線の端末構造の製造方法は、絶縁性材料から形成される第1保持部材を、折り返した状態の電線の端末部に装着して、電線の端末部を折り返した状態で保持する工程と、導電性材料から筒状に形成される第2保持部材に、電線の端末部及び第1保持部材を挿通して、第2保持部材を第1保持部材に装着する工程と、電線の端末部と第2保持部材とが重なる部分に貫通させて貫通穴を形成する工程と、を備え、貫通穴を形成する工程において、貫通穴の周縁部分において電線の端末部と第2保持部材とを接触させて、電線の端末部と第2保持部材とを電気的に接続させる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、電線の端末部に接続端子を設ける工程において加工時間の短縮及びコスト低減を図ることが可能な電線の端末構造及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】一実施形態に係る電線の端末構造の一例を示す斜視図である。
【
図2】一実施形態に係る電線の端末構造の一例を示す側断面図である。
【
図3】電線の端末構造の車両への取付状態を示す斜視図である。
【
図4】電線の端末構造の車両への取付状態を示す側断面図である。
【
図6】
図5とは反対側から見た電線保持部材の斜視図である。
【
図9】接続端子を
図8に示す状態から一部折り曲げた状態を示す斜視図である。
【
図10】電線保持部材を接続端子に挿通した状態を示す平面図である。
【
図11】電線保持部材を接続端子に挿通した状態を示す側面図である。
【
図12】電線保持部材を接続端子に挿通した状態を示す背面図である。
【
図13】一実施形態に係る電線の端末構造の製造方法の一例を示す説明図である。
【
図14】一実施形態に係る電線の端末構造の製造方法の一例を示す説明図である。
【
図15】一実施形態に係る電線の端末構造の製造方法の一例を示す説明図である。
【
図16】一実施形態に係る電線の端末構造の製造方法の一例を示す説明図である。
【
図17】一実施形態に係る電線の端末構造の製造方法の一例を示す説明図である。
【
図18】一実施形態に係る電線の端末構造の製造方法の一例を示す説明図である。
【
図19】他の実施形態に係る電線の端末構造の車両への取付状態を示す側断面図である。
【
図20】他の実施形態に係る電線保持部材を接続端子に挿通した状態を示す側面図である。
【
図21】他の実施形態に係る電線の端末構造の製造方法の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を用いて本実施形態に係る電線の端末構造及びその製造方法について詳細に説明する。なお、図面の寸法比率は説明の都合上誇張されており、実際の比率と異なる場合がある。
【0011】
図1~
図4に示すように、本実施形態に係る電線10の端末構造1は、電線10を固定するための部品である電線保持部材2と接続端子3との2部品から主に構成されている。電線10の端末構造1には、ボルト固定用の貫通穴4が形成されており、その一方、車両の車体6には、図示しない接地対象の機器を車体6に接地(ボディーアース)するためのスタッドボルト7が設けられている。そして、電線10の端末構造1の貫通穴4にスタッドボルト7が挿入された状態で、そのスタッドボルト7に接続ナット8が締結されて、電線10の端末構造1が車体6に対して固定される。
【0012】
本実施形態の電線10は、平型に形成されたものである。この電線10は、例えば、金属編組電線等のシールド電線である。しかしながら、これに限定はされず、電線10が、導電性繊維を織り込んだシールド部材、シールド外装に導電性不織布を含むもの等であってもよい。本実施形態では、電線10の端末部11が、後方へ折り返した状態で電線保持部材2に保持されており、また、電線10の端末部11の先端11aは、電線保持部材2から後方へ露出した状態とされている。
【0013】
さらに、電線10の端末部11には、前述の貫通穴4の一部を構成する電線側貫通穴12が貫通形成されている。
【0014】
図5及び
図6に示すように、電線保持部材2は、電線ホルダーとも称されるものであり、合成樹脂等の絶縁性材料から形成され、電線10の端末部11をU字状に折り返した状態で保持する。電線保持部材2の接続端子3への挿通方向の前端部(
図1~
図4中の左側部分)には、電線10の端末部11の折返部13が巻き掛けられる巻掛部21が形成されている。その一方、電線保持部材2における挿通方向の後端部(
図1~
図4中の右側部分)には、電線10の端末部11の先端部を係止する係止部22が形成されている。
【0015】
巻掛部21と係止部22との間には、電線保持部材2の幅方向(左右方向)に一対の弾性片部23,23が架け渡されている。また、一対の弾性片部23,23は、延在方向の途中に設けられた連結部24によって連結されている。さらに、一対の弾性片部23,23の後端部にはそれぞれ、幅方向の外側に向かって係止突起25が形成されている。
【0016】
また、巻掛部21の挿通方向の前端部には、電線保持部材2を接続端子3に対して挿通し易くするために前端側に向かって先細りとなるテーパ21aが形成されている。巻掛部21と一対の弾性片部23,23と連結部24との間には、プレス加工で貫通穴4を開けるときのプレス回避用領域26が開口形成されている。このプレス回避用領域26の開口面積は、貫通穴4の開口面積よりも大きく設定されており、プレス加工のときに穴開けのためのパンチ61(
図17及び
図18参照)が電線保持部材2と干渉しないようになっている。また、プレス回避用領域26の周縁部分に位置する巻掛部21と一対の弾性片部23,23と連結部24とは、プレス加工により接続端子3の一部を凹ませるときの台座の役割をするようになっている。
【0017】
係止部22は、一対の挟持部27,28から構成されている。本実施形態の一対の挟持部27,28はそれぞれ、ほぼ板状に形成されている。一対の挟持部27,28のうち、一方の挟持部27は、一対の弾性片部23,23の後端部に連結されており、他方の挟持部28は、一方の挟持部の幅方向の一端部にヒンジ部29を介して一体に結合されている。これら一対の挟持部27,28は、ヒンジ部29で結合されずに、別部品として形成されてもよい。
【0018】
一方の挟持部27の幅方向の他端部に設けられたロック突起31に、他方の挟持部28の幅方向の他端部に設けられたロックアーム32が係止される。このようにすることにより、一対の挟持部27,28同士が係止され、これら一対の挟持部27,28の間に電線10の端末部11が挟持される。
【0019】
また、一方の挟持部27の他方の挟持部28と対向する側の面には、電線保持部材2の挿通方向と交差する方向(図示例では、直交方向)に沿って延在して電線10の端末部11の抜け(脱落)を防止するための抜け防止用リブ33が複数形成されている。抜け防止用リブ33は、他方の挟持部28に設けてもよく、一対の挟持部27,28の双方に設けてもよい。
【0020】
さらに、他方の挟持部28の一方の挟持部27と対向する側の面には、電線10を巻掛部21に巻き掛ける際の幅方向ずれを防止するための電線装着溝34が形成されている。さらにまた、一方の挟持部27の他方の挟持部28と対向する側とは反対側の面にも、電線10を巻掛部21に巻き掛ける際の幅方向ずれを防止するための電線装着溝35が形成されている。
【0021】
ところで、
図12に示されるように、前述の電線装着溝34,35の幅Wは、電線10の幅に応じて設定することが可能である。電線装着溝34,35の幅Wは、電線10の幅方向ずれを防止するために、適用される電線10の幅と同等に設定されてもよい。
【0022】
また、一方の挟持部27の表面と他方の挟持部28の電線装着溝34の底面との間隔Hは、電線10の厚さT(
図2参照)に応じて設定することが可能である。この間隔Hは、電線10の厚さTよりも広く設定してもよい(H>T)。
【0023】
さらに、一方の挟持部27の抜け防止用リブ33と他方の挟持部28の電線装着溝34の底面との間隔tは、電線10の厚さTに応じて設定することが可能である。この間隔tは、電線10の端末部11の抜けを防止するために、電線10の厚さTよりも狭く設定してもよい(T>t)。
【0024】
図7~
図9に示すように、接続端子3は、箱型接続端子とも称されるものであり、金属等の導電性材料から筒状又は箱型に形成され、電線10の端末部11及び電線保持部材2の前部が挿通される。接続端子3の内部には、電線10の端末部11及び電線保持部材2の前部を収容可能な内部空間部41が形成されている。接続端子3の長さ方向の一方側(電線保持部材2の挿通方向後側)の開口は、内部空間部41内に電線10の端末部11及び電線保持部材2の前部を挿通可能な挿通開口41aとなっている。接続端子3の長さ方向の一端部は、電線10の端末部11及び電線保持部材2の前部を内部空間部41内に挿通し易くするために、面取りによるテーパを設ける等して挿通し易い形状としてもよい。
【0025】
その一方、接続端子3の長さ方向の他方側(電線保持部材2の挿通方向前側)の前側開口41bには、内部空間部41内に挿通された電線10の端末部11及び電線保持部材2の前部の移動を規制するガイド壁部42,43が形成されている。
【0026】
接続端子3は、導電性材料である銅又は銅合金等の金属プレートをプレス成形によって筒状に折り曲げることで形成されている。この接続端子3は、前後方向に長い角筒状に形成されており、前後方向に延出された底壁部44と、底壁部44の両側縁からほぼ垂直に立ち上げられた一対の側壁部45,45と、一対の側壁部45,45の上端縁を接続する上壁部46とを備える。これらの底壁部44と一対の側壁部45,45と上壁部46とが、接続端子3の外壁を構成している。
【0027】
接続端子3の側壁部45には、電線保持部材2に設けられた係止突起25が係止される係止穴47が形成されている。また、側壁部45と底壁部44との角部48には、1枚の金属プレートを折り曲げて接続端子3を形成する際のプレス加工に必要な力を低減することを目的として穴部49が設けられている。さらに、側壁部45と上壁部46との角部51にも、1枚の金属プレートを折り曲げて接続端子3を形成する際のプレス加工に必要な力を低減することを目的として穴部52が設けられている。
【0028】
底壁部44の挿通方向の前端には、前述のガイド壁部42が形成されている。このガイド壁部42は、底壁部44から前方へ突出する前方突出部42aと、前方突出部42aの前端から上方へ突出する上方突出部42bとを有して構成されている。上方突出部42bの長さは、必要に応じて適宜に設定することが可能である。本実施形態では、上方突出部42bの長さは、上方突出部42bの先端(上端)が上壁部46を越えて上方へ突出しないように、接続端子3の上下方向に対する高さよりも小さく設定されている。
【0029】
上壁部46の挿通方向の前端には、前述のガイド壁部43が形成されている。このガイド壁部43は、上壁部46から前方へ突出する前方突出部43aと、前方突出部43aの前端から下方へ突出する下方突出部43bとを有して構成されている。下方突出部43bの長さL(
図2参照)は、必要に応じて適宜に設定することが可能である。本実施形態では、下方突出部43bの長さLは、下方突出部43bの先端(下端)が底壁部44を越えて下方へ突出しないように、接続端子3の上下方向に対する高さよりも小さく設定されている。
【0030】
図19~
図21に示す電線10の端末構造1Aのように、下方突出部43bの長さLを、下方突出部43bの先端(下端)が底壁部44を越えて下方へ突出するように、接続端子3の上下方向に対する高さよりも大きく設定されてもよい。この場合、下方突出部43bの先端を、車体6に設けた係合穴6h又はプレス用のダイ62に設けた係合穴62hに係合させることにより、ガイド壁部43は、車体6又はプレス用のダイ62に対する回り止めとして機能する。
【0031】
図2及び
図4に示されるように、接続端子3の底壁部44と上壁部46とにはそれぞれ、前述の貫通穴4の一部を構成する端子側貫通穴53,54が貫通形成されている。
【0032】
接続端子3の上壁部46に形成された端子側貫通穴54の周縁部分には、電線10の端末部11と接続端子3とが接触する電気的接続部55が形成されている。この電気的接続部55は、端子側貫通穴54の周縁部分に、下方へ凸となるように突出させて(凹ませて)形成されている。
【0033】
図10~
図12に示すように、接続端子3の前側開口41bにガイド壁部42,43を形成する。このようにすることにより、電線10の端末部11を接続端子3の内部空間部41内に挿通する際に、電線10の端末部11に対する装着状態を接続端子3の外部から確認することが可能である。また、電線10の端末部11を接続端子3の内部空間部41内に挿通した後に貫通穴4を形成するため、電線10の端末部11を接続端子3の内部空間部41内に挿通した状態では、電線10と接続端子3との間に隙間G(
図17参照)があってもよい。この隙間Gを設けることにより、電線10の端末部11及び電線保持部材2の前部を接続端子3の内部空間部41内に挿通する際に、過度な力を必要とせず容易に挿通することが可能である。
【0034】
以下、本実施形態に係る電線10の端末構造1の製造方法の一例を説明する。
【0035】
(1)
図13~
図14に示すように、電線10の端末部11を電線保持部材2の巻掛部21に巻き掛けるように装着する。電線10の端末部11は、下方から上方(ロックアーム32側)へ折り返す。また、電線10の端末部11は、供給状態で(トリミング等を行わずに)電線保持部材2の巻掛部21に巻き掛ける。さらに、電線10の端末部11の先端11aは、電線保持部材2の係止部22から後方へ露出した状態とする。
【0036】
(2)
図15に示すように、ロックアーム32をロック突起31に係止して、電線保持部材2の係止部22をロックする。一対の挟持部27,28の間に電線10の端末部11が挟持されて、電線10の端末部11が電線保持部材2に対して保持される。
【0037】
(3)
図16に示すように、接続端子3を電線10の端末部11に装着(嵌合)する。すなわち、電線10の端末部11及び電線保持部材2の前部を接続端子3の内部空間部41内に、
図15中の矢印A方向に装着(嵌合)する。電線保持部材2の係止突起25を接続端子3の係止穴47に係止することにより、接続端子3と電線10の端末部11との嵌合が完了する。
【0038】
(4)
図17~
図18に示すように、ハンドプレス、プレス機、プレス設備等を用いて、電線10の端末部11及び接続端子3に対して穴開け加工を行う(パンチ61を用いて、電線10の端末部11と接続端子3とを同時に打ち抜く)。電線10の端末部11と接続端子3とが重なる部分には、電線10の端末部11と接続端子3とを貫通する貫通穴4(電線側貫通穴12、端子側貫通穴53,54)が形成される。穴開け加工と同時に接続端子3の一部(端子側貫通穴54の周縁部分)を下方へ凹ませて、電線10の端末部11と接続端子3との隙間Gを埋めて電気的接続部55を形成する。電気的接続部55で電線10の端末部11と接続端子3との密着を高めて、電線10の端末部11と接続端子3とが導通が可能な状態にする。
【0039】
仕上げとして、接続端子3の係止部22又は電線10の端末部11の先端11aに、固定テープ等によるテープ巻きを行ってもよい。
【0040】
電線保持部材2の前端の巻掛部21において電線10の端末部11を後方へ折り返すようにするため、電線10の端末部11の先端11aのトリミングが不要である(
図16参照)。すなわち、電線10の端末部11を折り返すだけで電線保持部材2に対して装着することが可能であり、電線10の端末部11の先端11aのトリミング等の作業を廃止することができる。
【0041】
穴開け加工と同時に接続端子3の一部を下方へ凹ませ、電気的接続部55で電線10の端末部11と接続端子3との密着を高め、電線10の端末部11と接続端子3とが導通が可能な状態(
図2参照)になるため、接続端子3の加締め作業を廃止することができる。電線10の端末構造1の貫通穴4にスタッドボルト7が挿通された状態で、最終的にスタッドボルト7に接続ナット8が締結されるため、電線10の端末構造1と接続端子3との安定した接続を確保することができる。
【0042】
電線10を平型の状態で接続端子3に装着することが可能であるため、平型の電線10の端末部11を丸型形状に束ねる作業を廃止することができる。
【0043】
電線10を平型の状態で車体6に対して固定することができるため、電線10の丸型形状に束ねた部分における繰り返し曲げでの断線を回避することが可能になる。
【0044】
次に、電線10の端末構造1及びその製造方法の効果について説明する。
【0045】
このように、本実施形態の態様に係る電線10の端末構造1は、絶縁性材料から形成され、電線10の端末部11を折り返した状態で保持する電線保持部材2を備える。電線10の端末構造1は、導電性材料から筒状に形成され、電線10の端末部11及び電線保持部材2が挿通される接続端子3を備える。電線10の端末部11と接続端子3とが重なる部分には、電線10の端末部11と接続端子3とを貫通させて形成される貫通穴4が形成される。貫通穴4の周縁部分には、電線10の端末部11と接続端子3とが接触する電気的接続部55が形成される。
【0046】
電線10の端末構造1では、電線10の端末部11を電線保持部材2に折り返した状態で保持し、その電線保持部材2を接続端子3に挿通(装着)し、その後に、ボルト固定用の貫通穴4と電気的接続部55とを同じ工程において形成することが可能である。このため、平型の電線10の端末部11を丸型形状に束ねる加工、電線10の端末部11に電線圧着部(バレル部)を圧着する加工、はんだ付け等により電線10の端末部11を固着する加工等が不要であり、加工時間の短縮及びコスト低減を図ることができる。
【0047】
以上のように、本実施形態によれば、電線10の端末部11に接続端子3を設ける工程において加工時間の短縮及びコスト低減を図ることが可能な電線10の端末構造1を提供することができる。
【0048】
電線10の端末構造1において、電線保持部材2は、電線保持部材2の接続端子3への挿通方向の前端部に形成され、電線10の端末部11の折返部13が巻き掛けられる巻掛部21を有してもよい。電線保持部材2は、電線保持部材2における挿通方向の後端部に形成され、電線10の端末部11の先端部を係止する係止部22を有してもよい。
【0049】
電線保持部材2に巻掛部21及び係止部22を形成することにより、折り返した状態の電線10の端末部11が電線保持部材2から外れることを抑制でき、電線10の端末部11を電線保持部材2に対して効率的に保持することができる。
【0050】
電線10の端末構造1において、電線保持部材2の係止部22は、一対の挟持部27,28から構成されてもよい。一対の挟持部27,28の少なくとも一方には、挿通方向と交差する方向に沿って延在して電線10の端末部11の抜けを防止するための抜け防止用リブ33が形成されてもよい。
【0051】
電線保持部材2に一対の挟持部27,28及び抜け防止用リブ33を形成することにより、折り返した状態の電線10の端末部11が電線保持部材2から外れることを抑制でき、電線10の端末部11を電線保持部材2に対してより効率的に保持することができる。
【0052】
電線10の端末構造1において、一対の挟持部27,28は、ヒンジ部29を介して結合されてもよい。
【0053】
一対の挟持部27,28がヒンジ部29を介して一体に結合されていることにより、一対の挟持部27,28により電線10の端末部11を係止する作業が容易となり、また、部品点数の低減を図ることができる。
【0054】
電線10の端末構造1において、電線保持部材2には、係止突起25が突出形成され、接続端子3には、係止突起25が係止される係止穴47が形成されてもよい。
【0055】
電線保持部材2に係止突起25が形成され、その一方、接続端子3に係止穴47が形成されていることにより、係止突起25と係止穴47との係合で、電線10の端末部11及び電線保持部材2の前部を接続端子3に挿通した状態を保持することができる。
【0056】
電線10の端末構造1において、接続端子3の挿通方向の前端に形成される開口(前側開口41b)には、電線10の端末部11及び電線保持部材2の移動を規制するガイド壁部42,43が形成されてもよい。
【0057】
接続端子3の前側開口41bにガイド壁部42,43を形成することにより、ガイド壁部42,43で電線10の端末部11及び電線保持部材2の移動を規制して、電線10の端末部11の折返部13が接続端子3から過度にはみ出すことを抑制することができる。また、電線10の端末部11を接続端子3に挿通する際に、電線10の端末部11に対する装着状態を接続端子3の外部から確認することが可能である。
【0058】
また、本実施形態の態様に係る電線10の端末構造1の製造方法は、絶縁性材料から形成される第1保持部材(電線保持部材2)を、折り返した状態の電線10の端末部11に装着して、電線10の端末部11を折り返した状態で保持する工程を備える。この製造方法は、導電性材料から筒状に形成される第2保持部材(接続端子3)に、電線10の端末部11及び第1保持部材(電線保持部材2)を挿通して、第2保持部材(接続端子3)を第1保持部材(電線保持部材2)に装着する工程を備える。電線10の端末構造1の製造方法は、電線10の端末部11と第2保持部材(接続端子3)とが重なる部分に貫通させて貫通穴4を形成する工程を備える。貫通穴4を形成する工程において、貫通穴4の周縁部分において電線10の端末部11と第2保持部材(接続端子3)とを接触させて、電線10の端末部11と第2保持部材(接続端子3)とを電気的に接続させる。
【0059】
電線10の端末構造1の製造方法では、電線10の端末部11を電線保持部材2に折り返した状態で保持し、その電線保持部材2を接続端子3に挿通(装着)し、その後に、ボルト固定用の貫通穴4と電気的接続部55とを同じ工程において形成している。このため、平型の電線10の端末部11を丸型形状に束ねる加工、電線10の端末部11に電線圧着部(バレル部)を圧着する加工、はんだ付け等により電線10の端末部11を固着する加工等が不要であり、加工時間の短縮及びコスト低減を図ることができる。
【0060】
以上のように、本実施形態によれば、電線10の端末部11に接続端子3を設ける工程において加工時間の短縮及びコスト低減を図ることが可能な電線10の端末構造1の製造方法を提供することができる。
【0061】
以上、本実施形態を説明したが、本実施形態はこれらに限定されるものではなく、本実施形態の要旨の範囲内で種々の変形が可能である。
【符号の説明】
【0062】
1,1A 端末構造
2 電線保持部材
3 接続端子
4 貫通穴
10 電線
11 端末部
12 電線側貫通穴
13 折返部
21 巻掛部
22 係止部
25 係止突起
27 挟持部
28 挟持部
29 ヒンジ部
33 抜け防止用リブ
41 内部空間部
41b 前側開口
42 ガイド壁部
43 ガイド壁部
47 係止穴
53 端子側貫通穴
54 端子側貫通穴
55 電気的接続部