(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024132081
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】芝刈機
(51)【国際特許分類】
A01D 34/71 20060101AFI20240920BHJP
A01D 34/84 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
A01D34/71
A01D34/84
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023042736
(22)【出願日】2023-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003683
【氏名又は名称】弁理士法人桐朋
(72)【発明者】
【氏名】松澤 康平
(72)【発明者】
【氏名】小林 浩
【テーマコード(参考)】
2B083
【Fターム(参考)】
2B083AA02
2B083BA03
2B083BA11
2B083CA02
2B083CA08
2B083CA27
2B083DA03
2B083FA09
2B083FA16
2B083HA19
2B083HA32
2B083HA58
(57)【要約】
【解決手段】芝刈機10は、ハウジング22の後端に設けられるディスチャージ部24を備える。ディスチャージ部24は、カッタブレード16によって刈られてハウジング22内に取り込まれた芝草Lを、ハウジング22の外部へと排出する。ディスチャージ部24には、芝草Lの排出方向の下流端に設けられる複数の突起42が形成される。複数の突起42は、カッタブレード16の下面161よりも下方に突出し、カッタブレード16の後方における芝面LFを掻き分ける。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転駆動力を発生する駆動部と、
前記駆動部により回転駆動され、上下方向に延在する回転軸線を中心として回転可能なカッタブレードと、
前記カッタブレードを覆うハウジングと、
前記カッタブレードより後方に設けられ前記カッタブレードによって刈られて前記ハウジング内に取り込まれた芝草を、前記ハウジングの外部へと排出するディスチャージ部と、
を備える芝刈機であって、
前記カッタブレードは、前記ハウジングの下方に向かい合う前記芝草を刈り取ることで、前記カッタブレードの下面に沿った芝面を形成し、
前記ディスチャージ部における前記芝草の排出方向の下流端に設けられ、且つ前記カッタブレードの前記下面よりも下方に突出し、前記カッタブレードの後方における前記芝面を掻き分ける複数の突起を有する、芝刈機。
【請求項2】
請求項1記載の芝刈機において、
前記複数の突起は、前記芝刈機の進行方向と直交する前記ハウジングの幅方向に離間して配置される、芝刈機。
【請求項3】
請求項2記載の芝刈機において、
前記複数の突起は、前記ディスチャージ部の後端に前記ハウジングの幅方向に沿って配置され、且つ前記後端の下端から下方に突出した櫛歯である、芝刈機。
【請求項4】
請求項2記載の芝刈機において、
前記ディスチャージ部の後端に、前記芝刈機の進行方向と直交する回転軸線を中心に回転する回転体を備え、
前記回転体は、中心シャフトと、
前記中心シャフトから径方向外方に突出した前記複数の突起と、
を有し、
前記複数の突起は、前記回転体の回転方向に沿って配置される、芝刈機。
【請求項5】
請求項1又は2記載の芝刈機において、
前記複数の突起に向けて送風する送風部を備える、芝刈機。
【請求項6】
請求項5記載の芝刈機において、
前記送風部は、前記カッタブレードに設けられる翼部である、芝刈機。
【請求項7】
請求項5記載の芝刈機において、
前記送風部は、前記カッタブレードとは別に配置された送風ファンを備える、芝刈機。
【請求項8】
請求項3又は4記載の芝刈機において、
前記ディスチャージ部は、刈り取られた前記芝草を排出する排出口を有し、
前記複数の突起は、前記幅方向における前記排出口の開口幅の全域にわたって配置される、芝刈機。
【請求項9】
請求項3記載の芝刈機において、
前記複数の突起は、前記芝刈機の進行方向において前記カッタブレードの配置される前方に向けて前記幅方向の幅が徐々に小さくなる、芝刈機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カッタブレードによって芝草を刈る芝刈機に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、より多くの人々が手頃で信頼でき、持続可能且つ先進的なエネルギーへのアクセスを確保できるようにするため、エネルギーの効率化に貢献する研究開発が行われている。特許文献1の芝刈機は、ハウジングと、ハウジングに収容されるカッタブレードと、ハウジングの後部に設けられるディスチャージ部とを備え、カッタブレードによって切断された芝をハウジング内に取り込んだ後、ディスチャージ部を通じてハウジングの後方に排出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来技術においては、芝が長く伸びた状態で刈り取りを行うと、ディスチャージ部から排出された長い芝の切断片がハウジングの後方の芝面上に残ってしまう。そのため、芝を刈り取った後の芝面上の美観を損ねるという課題がある。一方、マルチングの場合、ハウジング内に取り込まれる芝の切断片の量が増加することで、ハウジング内に切断片が付着してカッタブレードが回転するときに切断片と接触して作動負荷が高くなる。
【0005】
本発明は上記課題の解決のため、芝の刈り取り時における作動負荷を低減しつつ、芝を刈り取った後の芝面の美観を損ねることの防止の達成を目的としたものである。そして、延いてはエネルギーの効率化に寄与することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の態様は、回転駆動力を発生する駆動部と、前記駆動部により回転駆動され、上下方向に延在する回転軸線を中心として回転可能なカッタブレードと、前記カッタブレードを覆うハウジングと、前記カッタブレードより後方に設けられ前記カッタブレードによって刈られて前記ハウジング内に取り込まれた芝草を、前記ハウジングの外部へと排出するディスチャージ部と、を備える芝刈機であって、前記カッタブレードは、前記ハウジングの下方に向かい合う前記芝草を刈り取ることで、前記カッタブレードの下面に沿った芝面を形成し、前記ディスチャージ部における前記芝草の排出方向の下流端に設けられ、且つ前記カッタブレードの前記下面よりも下方に突出し、前記カッタブレードの後方における前記芝面を掻き分ける複数の突起を有する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、芝刈機によって芝草を刈るとき、複数の突起によってディスチャージ部の排出方向の芝面に下方に向けて窪んだ複数の窪みが形成されるため、ディスチャージ部より排出された刈り芝を複数の窪み内に入れ込むことで、芝面上に刈った芝が残ることが抑制され芝面の美観を高めることができる。ハウジング内における刈り芝の滞留が抑制されるため、ハウジング内に滞留した刈り芝との接触によるカッタブレードの作動抵抗の増加が抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本発明の第1実施形態に係る芝刈機の一部省略側面図である。
【
図2】
図2は、
図1の芝刈機のハウジングを示す平面断面図である。
【
図3】
図3Aは、ディスチャージ部のカバー部材及び芝面を示す正面図である。
図3Bは、芝刈機によって刈られた芝面の断面説明図である。
【
図4】
図4は、本発明の第2実施形態に係る芝刈機の一部省略側面図である。
【
図5】
図5は、
図4に示す芝刈機のカバー部材及び芝面を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1に示されるように、第1実施形態に係る芝刈機10は、機体12と、駆動部14と、カッタブレード16と、ハンドル18と、送風部20とを備える。例えば、芝刈機10は歩行型の作業機であり、図示しないユーザがハンドル18を操作することによって移動する。なお、芝刈機10は、歩行型の作業機に限られず、例えば、ユーザが芝刈機10に乗用して移動するものであってもよい。
【0010】
図1に示す矢印A方向は、芝刈機10の進行方向である前方を示す。
図1に示す矢印B方向は、芝刈機10の進行方向と反対方向である後方を示す。
図2に示す矢印C方向は、芝刈機10の進行方向と直交する左右方向(幅方向ともいう)を示す。
【0011】
機体12は、ハウジング22と、ハウジング22の後端に配置されるディスチャージ部24とを備える。ハウジング22の前部には前輪26が配置される。前輪26は、ハウジング22の左右方向(矢印C方向)に離間して配置される(
図2参照)。図示しないシャフトによって一対の前輪26が互いに連結される。ハウジング22の後部には後輪28が配置される。後輪28は、ハウジング22の左右方向(矢印C方向)に離間して配置される(
図2参照)。図示しないシャフトによって一対の後輪28が互いに連結される。
【0012】
ハウジング22の中央部は、ブレード収容部30を有する。ブレード収容部30は、下方に向けて開口した円形状(
図2参照)である。ブレード収容部30にはカッタブレード16が収容される。ブレード収容部30の前部には、芝草Lを内部に取り込む取込部32を有する。ハウジング22によってカッタブレード16の上部が覆われる。ハウジング22の中央部上部には、駆動部14が設けられる。
【0013】
ハウジング22の後部は、後方に向かって開口した後方開口34を有する。後方開口34は、ハウジング22の左右方向(
図2参照)に延在する。
図2に示すように、ハウジング22の内部には、ブレード収容部30と後方開口34とを接続する搬出通路36を備える。
【0014】
図1に示すように、ディスチャージ部24は、カッタブレード16によって刈られてハウジング22内に取り込まれた芝草Lをハウジング22の外部へと排出可能である。ディスチャージ部24は、ハウジング22の後端に回動可能に支持されるカバー部材38と、刈り取られた芝草Lを排出する排出口40と、複数の突起42とを備える。以下、カッタブレード16によって刈られた芝草Lのことを「刈り芝CL」という。
【0015】
カバー部材38は、ハウジング22の後端の上部に支軸44を介して回動可能に支持される。支軸44を支点としてハウジング22に接近する方向に回動することで、カバー部材38によってハウジング22の後方開口34が塞がれる。ディスチャージ部24から芝刈機10の後方の芝面LFに刈り芝CLを排出するとき、カバー部材38によって後方開口34が塞がれる。
【0016】
図1の二点鎖線形状で示すように、支軸44を支点としてハウジング22から離間させるように上方に向けて回動させることで後方開口34が開放される。開放された後方開口34には、刈り芝CLを収容可能なグラスバック等の芝草収容体46を取り付け可能である。刈り芝CLが後方開口34を通じて芝草収容体46に収容される。
【0017】
カバー部材38は、後方壁48を備える。後方壁48は、カバー部材38が後方開口34を塞いだ状態において芝刈機10の後方側(矢印B方向)に配置される。後方壁48は、ハウジング22の後方開口34に対して後方に離間して配置される。後方壁48は、支軸44に支持されるカバー部材38の上部から下部に向けて後方に向かうように傾斜する。すなわち、後方壁48は、下方に向けてハウジング22から離間する方向に傾斜して形成される。
【0018】
カバー部材38の下端381は、芝面LFに対して上方に離間して配置される。カバー部材38の下端381には、刈り芝CLを下方に向けて排出する排出口40を備える。排出口40は、カバー部材38の左右方向(
図2参照)に延在して芝面LFに向かい合う。
【0019】
複数の突起42は、ディスチャージ部24における芝草Lの排出方向の下流端に設けられる。複数の突起42は、カバー部材38の後方壁48の下端部481に設けられる。複数の突起42は、カバー部材38の後方壁48に沿って上下方向に延在する。複数の突起42は、後方壁48の下端部481より下方に突出する。複数の突起42は同一形状で形成される。なお、複数の突起42が同一形状で形成される場合に限定されない。複数の突起42の形状が、異なる形状で形成されてもよい。
【0020】
図1に示すように、複数の突起42の上端421は、後方壁48の内面482に固定される。複数の突起42の下端422は、後方壁48の下端部481より下方に配置され、且つカッタブレード16の下面161よりも下方に配置される。複数の突起42は、例えば上下方向における長さの約半分以上が後方壁48の下端部481より下方に突出する。
図3Aに示すように、複数の突起42の下端422は、下方に向けて徐々に先細となる先細形状である。
【0021】
図1に示すように、複数の突起42は、後方壁48の内面482に対して前方側(矢印A方向)に突出する。
図2に示すように、複数の突起42は、カバー部材38の後方壁48に対して前方側(矢印A方向)に向かうように傾斜した一対の傾斜面423を有する。一対の傾斜面423は、各突起42において最も前方に位置する頂部424に対して左右方向に配置される。すなわち、芝刈機10の進行方向においてカッタブレード16の配置される前方(頂部424)に向けて左右方向の突起42の幅が徐々に小さくなる。突起42の延在方向と直交する方向の断面において、各突起42の形状が、前方に向けて先細な三角形状である。
【0022】
図1に示すように、カバー部材38による後方開口34の閉塞時において、複数の突起42は、少なくとも下端422が芝面LFに挿入される。芝刈機10が前方に向けて進行するとき、芝面LFに挿入された複数の突起42の傾斜面423によって芝面LFが左右方向に掻き分けられる。すなわち、
図3Aに示すように複数の突起42の下端422が芝面LFよりも下方となるように、複数の突起42の位置又は高さが設定される。
【0023】
複数の突起42は、芝刈機10の進行方向と直交する左右方向(ハウジング22の幅方向)に等間隔離間して並列した櫛歯50から構成される。芝刈機10の進行方向において、櫛歯50が複数列設けられてもよい。その場合、前後方向に隣り合う櫛歯50において、複数の突起42が左右方向に互いにずれて配置されてもよい。なお、複数の突起42は、ハウジング22の左右方向(矢印C方向)に等間隔離間して配置される場合に限定されない。例えば、複数の突起42が、ハウジング22の左右方向に不等間隔で並列してもよい。複数の突起42は、ハウジング22の左右方向において排出口40の開口幅Wの全域にわたって配置される。
【0024】
駆動部14は、例えば回転駆動力を発生する駆動源141と、駆動源141に電力を供給可能なバッテリ142を有する。駆動部14は、ハウジング22の中央部上部に設けられる。駆動源141は、電動機である。なお、駆動源141は、電動機に限定されるものではなく、例えば、エンジンであってもよい。
【0025】
駆動源141は、回転駆動する回転シャフト52を有する。駆動源141は、回転シャフト52の軸方向が上下方向に延在するように配置される。回転シャフト52はハウジング22において回転可能に支持される。回転シャフト52の下端はブレード収容部30に配置されカッタブレード16が連結される。なお、回転シャフト52の上下方向は、芝刈機10の鉛直方向に限定されるものではなく、鉛直方向に対してわずかに傾斜した方向も含む。
【0026】
駆動源141の駆動力は、図示しない動力伝達ベルトによって後輪28に伝達される。駆動源141の駆動力によって後輪28が回転することで、芝刈機10は進行方向に沿って走行する。カッタブレード16の回転及び芝刈機10の走行のための動力源として駆動源141が機能する。
【0027】
カッタブレード16は、芝草Lを刈り取り可能である。
図2に示すように、カッタブレード16は、細長い平板状に形成されハウジング22のブレード収容部30に回転可能に収容される。カッタブレード16は、ブレード収容部30の下部開口301を介して芝草Lを有した芝面LFに向かい合う。カッタブレード16の中心は、回転シャフト52の下端部に連結される。カッタブレード16は、回転シャフト52の回転軸線Rに対して直交する(
図1参照)。カッタブレード16は、上下方向に延在する駆動源141の回転シャフト52(回転軸線R)を中心として回転可能である。なお、カッタブレード16(回転シャフト52)の回転軸線Rは、鉛直方向に対して斜めであってもよい。カッタブレード16は、中心から径方向外方に延在する一対のブレード部541、542を有する。ブレード部541、542は、回転シャフト52の回転軸線Rに対して略直交する(
図1参照)。
図2に示す平面視において、駆動部14の回転駆動力によってカッタブレード16が時計回りに回転する。
【0028】
一対のブレード部541、542の長手方向端部の各々には、刈刃56及び翼部58を有する。刈刃56は、カッタブレード16の回転方向に向かい合う。翼部58は、刈刃56に対して回転方向とは反対方向に配置される。翼部58は、カッタブレード16の回転方向とは反対方向に張り出し、且つ上方に向けて湾曲する(
図1参照)。翼部58は、ブレード部541、542から離間する方向に向けて上方へ徐々に突出する。
【0029】
駆動部14の回転駆動力によって、回転シャフト52の回転軸線Rを中心としてカッタブレード16がブレード収容部30で回転する。ブレード収容部30において翼部58によって上方に向かう上昇気流が発生し、ハウジング22内に取り込まれた芝草Lを立ち上げる。カッタブレード16が回転することで、一対の刈刃56によって地面Dから上方に向けて伸びた芝草Lを刈る。カッタブレード16の下面161に沿った芝面LFが形成される(
図1参照)。一対の翼部58によって、ハウジング22内に時計回りに旋回流が発生する。旋回流によって刈り芝CLが、搬出通路36を通じてハウジング22の後方開口34へと送られる。
【0030】
図1に示すように、ハンドル18は、ハウジング22の後端から後方(矢印B方向)に向けて延出する。芝刈機10を走行させるとき、ユーザがハンドル18を把持する。ハンドル18は、芝刈機10の各種操作を行うための操作部60が設けられる。ユーザが操作部60を操作することで、芝刈機10の駆動制御が可能である。
【0031】
送風部20は、ディスチャージ部24における複数の突起42に向けて送風する。送風部20は、カッタブレード16に設けられる第1送風部621と、カバー部材38の内部に設けられる第2送風部622とを備える。なお、送風部20は、第1及び第2送風部621、622を共に備える場合に限定されない。第1及び第2送風部621、622の少なくともいずれか一方を設けてもよいし、第1及び第2送風部621、622を含む送風部20を備えていなくてもよい。
【0032】
第1送風部621は、カッタブレード16に設けられる翼部58である。カッタブレード16が回転することで、一対の翼部58によって、複数の突起42に向けて送風することが可能である。第1送風部621は、ブレード収容部30内の刈り芝CLをディスチャージ部24に向けて送出可能である。
【0033】
第2送風部622は、例えば電力によって駆動する送風ファン64である。第2送風部622は、カバー部材38の上部に配置される。第2送風部622は、排出口40に向かい合うように下方に向けて配置される。第2送風部622が駆動すると、第2送風部622からの送風によってディスチャージ部24に供給された刈り芝CLが複数の突起42及び排出口40に向けて送出される。
【0034】
次に、芝刈機10によって芝草Lを刈るときの動作について説明する。このとき、
図1に示すように、芝刈機10の進行方向の前方(矢印A方向)の芝草Lは、カッタブレード16の下面161よりも上方に伸びた状態にある。
【0035】
先ず、ユーザがハンドル18を把持した状態で操作部60を操作し、芝刈機10の電源を投入する。芝刈機10の電源投入に伴って駆動部14が回転し、駆動部14の回転駆動力によって後輪28が回転して芝刈機10が進行方向である前方に向けて走行する。このとき、芝刈機10の後部において、複数の突起42が芝草Lの間に挿入されている。
【0036】
芝刈機10が前方に向けて進行することで、取込部32を通じてハウジング22の内部に芝草Lが取り込まれる。駆動部14の回転によって、回転シャフト52と共にカッタブレード16が回転し始める。カッタブレード16が回転することで(
図2中、時計回り)、一対の刈刃56によってハウジング22のブレード収容部30に取り込まれた芝草Lの先端部が刈られる。カッタブレード16を回転させながら芝刈機10が地面Dに沿って前方に走行することで、進行方向に沿って芝草Lが一定高さで刈られて略平坦な芝面LFが形成される。地面Dに対する芝面LFの高さは、カッタブレード16(刈刃56)の下面161の高さと略同一である。芝面LFは、カッタブレード16の下方において略水平に形成される。芝刈機10の進行に伴って、カッタブレード16の後方(矢印B方向)に芝面LFが連続的に形成されていく。
【0037】
図3Aに示されるように、カッタブレード16の後方において、複数の突起42によって芝面LFに複数の窪み部G1が形成される。窪み部G1は、突起42によって芝面LFを構成する芝草Lが左右に掻き分けられて形成される。芝草L内に挿入された突起42を中心として左右方向(矢印C方向)に芝草Lが分けられ、突起42の挿入された箇所に窪み部G1が形成される。窪み部G1は、芝面LFに対して下方に窪み、芝刈機10の進行方向に沿った溝状に形成される(
図2参照)。
図3Aに示すように、芝刈機10の進行方向に沿って見たとき、窪み部G1の断面形状は、概ね各突起42の下端422の形状に対応した三角形状となる。窪み部G1は、芝面LFから下方に向けて徐々に先細となる形状である。芝刈機10の前方への進行に伴って、
図2に示すように、複数の窪み部G1が芝刈機10の後方に連続してライン状に形成される。すなわち、複数の窪み部G1が、芝刈機10の左右方向(矢印C方向)において互いに離間して並列する。
【0038】
図2に示すように、刈られた芝草L(刈り芝CL)は、カッタブレード16の旋回によって生じた旋回流によって、ブレード収容部30内を時計回りに旋回しながら搬出通路36を通じて後方開口34へと送られる。カッタブレード16の翼部58によって発生する上昇気流によって、細断された刈り芝CLがブレード収容部30の内部で巻き上げられて上昇し、搬出通路36から後方開口34へと送られる。
【0039】
ハウジング22の後方開口34を通じて刈り芝CLがディスチャージ部24へと送り込まれ、カバー部材38の後方壁48に沿って下方へ向けて送出される。このとき、送風部20における第2送風部622からの送風によって、カバー部材38内における刈り芝CLの下方への送出が促進される。ディスチャージ部24の排出口40を通じて、刈り芝CLが芝草Lの刈られた芝面LF上に排出される。
【0040】
図3Bに示すように、芝面LF上に排出された刈り芝CLは、複数の窪み部G1に入り込むことで窪み部G1内に刈り芝CLが収容される。芝面LF上に刈り芝CLが残ることが抑制される。
【0041】
第1実施形態は、以下の効果を奏する。
【0042】
図1に示すように、芝刈機10は、回転駆動力を発生する駆動部14と、駆動部14により回転駆動され上下方向に延在する回転軸線Rを中心として回転可能なカッタブレード16と、カッタブレード16を覆うハウジング22と、カッタブレード16よりも後方に設けられカッタブレード16によって刈られてハウジング22内に取り込まれた芝草L(刈り芝CL)を、ハウジング22の外部へと排出するディスチャージ部24とを備える。
【0043】
芝刈機10は、ディスチャージ部24における芝草L(刈り芝CL)の排出方向の下流端に設けられ、且つカッタブレード16の下面161よりも下方に突出し、カッタブレード16の後方における芝面LF(芝草L)を掻き分ける複数の突起42を有する。
【0044】
これにより、芝刈機10によって芝草Lを刈るとき、複数の突起42によってディスチャージ部24の排出方向(後方)の芝面LFに下方に向けて窪んだ複数の窪み部G1が形成される。そのため、ディスチャージ部24より排出された刈り芝CLを複数の窪み部G1内に入れ込むことで、芝面LF上に刈った刈り芝CLが残ることが抑制され芝面LFの美観を高めることができる。ハウジング22内における刈り芝CLの滞留が抑制されるため、ハウジング22内に滞留した刈り芝CLとカッタブレード16との接触が抑制され、カッタブレード16の作動抵抗の増加が効果的に抑制される。
【0045】
図3Aに示すように、複数の突起42は、芝刈機10の進行方向と直交するハウジング22の幅方向(左右方向、矢印C方向)に離間して配置される。これにより、ハウジング22の幅方向において芝面LFに対して複数の窪み部G1を形成することができる。芝刈機10の幅方向に排出された刈り芝CLを効果的に複数の窪み部G1に入れ込んで、芝刈機10の幅方向の広範囲で芝面LFの美観を高めることができる。
【0046】
複数の突起42は、ディスチャージ部24の後端にハウジング22の幅方向に沿って配置され、且つ後端の下端から下方に突出した櫛歯50とすることで、複数の突起42を簡単に形成することができる。
【0047】
図1に示すように、芝刈機10は、複数の突起42に向けて送風する送風部20を備えることで、送風部20からの送風によって、ディスチャージ部24を通じて刈り芝CLを芝面LFに向けて送出することで芝面LFに落下させ、窪み部G1に刈り芝CLを効果的に送り込むことができる。刈り芝CLのハウジング22内での滞留をより効果的に抑制できる。
【0048】
カッタブレード16に設けられる翼部58が送風部20として機能することで、送風部を新たに設ける必要がなく、芝刈機10の部品点数の削減及び製造コストの削減を図ることができる。
【0049】
送風部20は、カッタブレード16とは別に配置された送風ファン64を備え、送風ファン64から下方に向けて送風することで、ハウジング22の下方に位置する芝面LFに向けて刈り芝CLを効果的に送出して芝面LFに落下させることができる。
【0050】
図3Aに示すように、ディスチャージ部24は、刈り取られた芝草L(刈り芝CL)を排出する排出口40を有し、複数の突起42は、幅方向(左右方向、矢印C方向)における排出口40の開口幅Wの全域にわたって配置される。これにより、排出口40の開口幅Wの全域にわたって複数の窪み部G1を配置できるため、排出口40から排出される刈り芝CLを効率的に複数の窪み部G1へと入れ込むことができる。
【0051】
図2に示すように、複数の突起42は、芝刈機10の進行方向においてカッタブレード16の配置される前方に向けて幅方向(矢印C方向)の幅が徐々に小さくなる。これにより、芝面LFに対して複数の突起42が挿入された状態で、前方に向けて芝刈機10が進行するとき、突起42による走行抵抗の増加が効果的に軽減される。芝刈機10が前方に向けて進行したとき、後方に向けて幅が大きくなる突起42によって後方に向けて窪み部G1を作りやすい。
【0052】
図4に示す第2実施形態に係る芝刈機70は、ディスチャージ部24の後端に回転自在に支持された回転体72を備える。
【0053】
回転体72は、芝刈機70の進行方向と直交する左右方向(
図5中、矢印C方向)に沿って配置される。回転体72の回転軸線がハウジング22の左右方向に延在する。回転体72は、カバー部材38の後端に対して下方に配置され支持部材74によって回転可能に支持される。
【0054】
回転体72は、中心シャフト76と、中心シャフト76から径方向外方に突出した複数の突起78とを備える。中心シャフト76は、軸状に形成される。中心シャフト76の軸方向における端部が、支持部材74によって支持される。支持部材74は、中心シャフト76を支持する一対の支持片741を有し、一対の支持片741の上端がカバー部材38の側部に対して固定される。支持部材74によって、回転体72がカバー部材38の下端部に対して下方に離間して配置される。カバー部材38の下方において回転体72が芝面LFに向かい合う。
【0055】
複数の突起78は、中心シャフト76の外周面761に設けられる。複数の突起78は、中心シャフト76の外周面761の周方向に沿って互いに離間して配置される。複数の突起78は、中心シャフト76の軸方向に沿って互いに離間して配置される(
図5参照)。各突起78は、中心シャフト76の外周面761から径方向外方に向けて先細となる円錐状に形成される。なお、突起78の形状は、先端に向けて尖った円錐状に形成される場合に限定されるものではない。例えば、突起78の形状は、三角錐状、四角錐状、円柱状であってもよい。
【0056】
複数の突起78は、例えば同一形状に形成される。外周面761に対する各突起78の高さは同一である。なお、複数の突起78を、形状の異なる複数の突起から構成してもよい。
図5に示すように、複数の突起78は、中心シャフト76の軸方向に互いに等間隔離間して並列する。複数の突起78は、中心シャフト76の周方向に沿って互いに等間隔離間する。周方向に隣り合う突起列における突起78は、中心シャフト76の左右方向にずれて配置される。
【0057】
図4に示すように、芝草Lを有した地面Dに芝刈機70が配置されたとき、突起78の先端が芝面LF内に挿入される。すなわち、突起78の先端が芝面LFよりも下方となるように、回転体72の高さが設定される。
【0058】
図4に示す芝刈機70によって芝草Lを刈るとき、芝刈機70が前方へ進行することで、支持部材74と共に回転体72が前方へ移動し、それに伴って、芝面LFに挿入された突起78が相対的に後方に移動する。挿入された突起78が後方に移動することで、中心シャフト76に回転力が働いて回転体72が
図4における反時計回りに回転する。回転体72が回転することで、回転体72の周方向に配置された複数の突起78が回転体72の回転方向に沿って芝面LFに対して順番に挿入される。突起78が芝面LFに挿入されることで、複数の突起78によって芝面LFに複数の窪み部G2が形成される。窪み部G2は、突起78によって芝面LFを構成する芝草Lが円環状に掻き分けられ、各突起78の挿入された箇所に窪み部G2が形成される。窪み部G2は、芝面LFに対して下方に窪み、芝刈機70の進行方向に沿って離間した点状に形成される。芝刈機70の前方への進行に伴って、複数の窪み部G2が芝刈機70の後方に向けて連続して複数形成される。
【0059】
図5に示すように、芝刈機70の進行方向に沿って見たとき、窪み部G2の断面形状は、概ね突起78の先端の形状に対応する。
【0060】
芝刈機70においてディスチャージ部24の排出口40から芝面LFに刈り芝CLが排出された後、刈り芝CLが、芝面LF上の複数の窪み部G2に入り込むことで窪み部G2内に刈り芝CLが収容される。芝面LF上に刈り芝CLが残ることが抑制される。
【0061】
第2実施形態は、以下の効果を奏する。
【0062】
図4に示されるように、芝刈機70において、ディスチャージ部24の後端に、芝刈機70の進行方向と直交する回転軸線を中心に回転する回転体72を備え、回転体72は、中心シャフト76と、中心シャフト76から径方向外方に突出した複数の突起78とを有している。複数の突起78が、回転体72の回転方向に沿って配置される。これにより、回転体72と共に複数の突起78が芝刈機70の進行方向に沿って回転することで、回転体72の回転方向に配置された各突起78が芝面LFに対して均一に接触するため、芝面LFに均一な窪み部G2を形成することができる。複数の突起が回転せずに芝面LFに接触する構成と比較し、芝面LFに窪み部G2の形状が残りにくいため美観をさらに高めることができる。
【0063】
上述した開示に関し、さらに以下の付記を開示する。
【0064】
(付記1)
回転駆動力を発生する駆動部(14)と、前記駆動部により回転駆動され、上下方向に延在する回転軸線(R)を中心として回転可能なカッタブレード(16)と、前記カッタブレードを覆うハウジング(22)と、前記カッタブレードより後方に設けられ前記カッタブレードによって刈られて前記ハウジング内に取り込まれた芝草(L)を、前記ハウジングの外部へと排出するディスチャージ部(24)と、を備える芝刈機(10、70)であって、前記カッタブレードは、前記ハウジングの下方に向かい合う前記芝草を刈り取ることで、前記カッタブレードの下面(161)に沿った芝面(LF)を形成し、前記ディスチャージ部における前記芝草の排出方向の下流端に設けられ、且つ前記カッタブレードの前記下面よりも下方に突出し、前記カッタブレードの後方における前記芝面を掻き分ける複数の突起(42、78)を有する。
【0065】
このような構成によれば、芝刈機によって芝草を刈るとき、複数の突起によってディスチャージ部の排出方向(後方)の芝面に下方に向けて窪んだ複数の窪みが形成されるため、ディスチャージ部より排出された刈り芝を複数の窪み内に入れ込むことで、芝面上に刈った芝が残ることが抑制され芝面の美観を高めることができる。ハウジング内における刈り芝の滞留が抑制されるため、ハウジング内に滞留した刈り芝との接触によるカッタブレードの作動抵抗の増加が抑制される。
【0066】
(付記2)
付記1に記載の芝刈機において、前記複数の突起は、前記芝刈機の進行方向と直交する前記ハウジングの幅方向に離間して配置されてもよい。このような構成によれば、芝面に複数の窪みを形成することで、芝刈機の幅方向に排出された刈り芝を効果的に窪み部内に入れ、芝刈機の幅方向における広範囲で芝面の美観を高めることができる。
【0067】
(付記3)
付記1又は2記載の芝刈機において、前記複数の突起は、前記ディスチャージ部の後端に前記ハウジングの幅方向に沿って配置され、且つ前記後端の下端から下方に突出した櫛歯(50)であってもよい。このような構成によれば、櫛歯によって、複数の突起を簡単に形成することができる。
【0068】
(付記4)
付記1又は2記載の芝刈機において、前記ディスチャージ部の後端に、前記芝刈機の進行方向と直交する回転軸線を中心に回転する回転体(72)を備え、前記回転体は、中心シャフト(76)と、前記中心シャフトから径方向外方に突出した前記複数の突起と、を有し、前記複数の突起は、前記回転体の回転方向に沿って配置されてもよい。このような構成によれば、回転体と共に複数の突起が芝刈機の進行方向に沿って回転することで、回転体の回転方向に配置された各突起が芝面に対して均一に接触するため、芝面に均一な窪み部を形成することができ、しかも、複数の突起が回転せずに芝面に接触する構成と比較し、芝面に窪み部の形状が残りにくいため美観をさらに高めることができる。
【0069】
(付記5)
付記1~4のいずれか1つに記載の芝刈機において、前記複数の突起に向けて送風する送風部(20)を備えてもよい。このような構成によれば、送風部からの送風によって、ディスチャージ部を通じて刈り芝を芝面に向けて送出することで芝面に落下させ、窪み部に刈り芝を効果的に送り込むことができる。送風部からの送風によって、ハウジング内における芝草の滞留が効果的に抑制される。
【0070】
(付記6)
付記5に記載の芝刈機において、前記送風部は、前記カッタブレードに設けられる翼部(58)であってもよい。このような構成によれば、カッタブレードの翼部を送風部として用いることで、送風部を新たに設ける必要がないため、芝刈機の部品点数の削減及び製造コストの削減を図ることができる。
【0071】
(付記7)
付記5又は6に記載の芝刈機において、前記送風部は、前記カッタブレードとは別に配置された送風ファン(64)を備えてもよい。このような構成によれば、送風ファンから下方に向けて送風することで、ハウジングの下方に位置する芝面に向けて刈り芝を効果的に送出して芝面に落下させることができる。
【0072】
(付記8)
付記1~7のいずれか1つに記載の芝刈機において、前記ディスチャージ部は、刈り取られた前記芝草を排出する排出口(40)を有し、前記複数の突起は、前記幅方向における前記排出口の開口幅(W)の全域にわたって配置されてもよい。このような構成によれば、排出口の開口幅の全域にわたって複数の窪み部を配置できるため、排出口から排出される刈り芝を効率的に複数の窪み部へと入れ込むことができる。
【0073】
(付記9)
付記1~8のいずれか1つに記載の芝刈機において、前記複数の突起は、前記芝刈機の進行方向において前記カッタブレードの配置される前方に向けて前記幅方向の幅が徐々に小さくなってもよい。このような構成によれば、芝面に対して複数の突起が挿入された状態で、前方に向けて芝刈機が進行するとき、突起による走行抵抗の増加が軽減される。芝刈機が前方に向けて進行したとき、後方に向けて幅が大きくなる突起によって後方に向けて窪み部を作りやすい。
【0074】
なお、本発明は、上述した開示に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得る。
【符号の説明】
【0075】
10、70…芝刈機
12…機体
14…駆動部
16…カッタブレード
22…ハウジング
24…ディスチャージ部
42、78…突起
L…芝草
LF…芝面