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特開2024-132082耐火ケーブルおよび耐火ケーブルの製造方法
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  • 特開-耐火ケーブルおよび耐火ケーブルの製造方法 図1
  • 特開-耐火ケーブルおよび耐火ケーブルの製造方法 図2
  • 特開-耐火ケーブルおよび耐火ケーブルの製造方法 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024132082
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】耐火ケーブルおよび耐火ケーブルの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01B 7/295 20060101AFI20240920BHJP
【FI】
H01B7/295
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023042737
(22)【出願日】2023-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】000238049
【氏名又は名称】冨士電線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】茂木 淑豪
(72)【発明者】
【氏名】中川 諒
【テーマコード(参考)】
5G315
【Fターム(参考)】
5G315CA01
5G315CB01
5G315CC02
5G315CD11
(57)【要約】
【課題】耐火性能の低下を抑制することができる耐火ケーブルを提供すること。
【解決手段】導体(1)と、前記導体(1)の周りに縦添え巻きされた耐火テープ(2)と、前記導体(1)の周りに横巻きされた耐火テープ(2)と、を有することを特徴とする、耐火ケーブル(7a、7b)。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
導体と、
前記導体の周りに縦添え巻きされた耐火テープと、
前記導体の周りに横巻きされた耐火テープと、
を有することを特徴とする、耐火ケーブル。
【請求項2】
請求項1に記載の耐火ケーブルであって、
前記横巻きされた耐火テープは前記縦添え巻きされた耐火テープの周りに配置されていることを特徴とする、耐火ケーブル。
【請求項3】
請求項1または2に記載の耐火ケーブルであって、
前記縦添え巻きの巻き方向と、前記横巻きの巻き方向とが同じ方向であることを特徴とする、耐火ケーブル。
【請求項4】
導体の周りに耐火テープを縦添え巻きまたは横巻きの一方で巻く工程と、
前記耐火テープを巻かれた前記導体の周りに耐火テープを縦添え巻きまたは横巻きの他方で巻く工程と、
を有することを特徴とする、耐火ケーブルの製造方法。
【請求項5】
請求項4に記載の耐火ケーブルの製造方法であって、
導体の周りに耐火テープを縦添え巻きで巻く工程の後に、前記耐火テープを巻かれた前記導体の周りに耐火テープを横巻きで巻く工程を行うことを特徴とする、耐火ケーブルの製造方法。
【請求項6】
請求項4または5に記載の耐火ケーブルの製造方法であって、
前記縦添え巻きの巻き方向と、前記横巻きの巻き方向とが同じ方向であることを特徴とする、耐火ケーブルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は耐火ケーブルおよび耐火ケーブルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ビルや地下街等の防災設備の電気配線として使用される耐火ケーブルは、その耐火性能が消防庁告示により規定されている。
【0003】
このような基準を満たす耐火ケーブルとして、導体の周囲に耐火層や絶縁体層、シース等を配置したケーブルが知られている。たとえば、特許文献1では、導体に耐火テープ(マイカテープ)をラップ巻きして耐火テープ部を形成することが開示されている。また近年、耐火テープを縦添え巻きしその周囲にガラスヤーンを巻き付けた耐火層も知られている。耐火テープは、ケーブル燃焼時に発生する導電性炭化物や、その生成ガス等から導体を保護し、導体の周囲の絶縁性を維持する役割を果たす。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016-100061号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
耐火ケーブルを得るために、導体の周りへの耐火テープの巻き方として、テープを螺旋状に巻いていく横巻きと、テープの長さ方向と導体の長さ方向とを平行にしてテープを巻いていく縦添え巻きとが考えられる。図1A、Bは、このような横巻きと、縦添え巻きとをそれぞれ示す。
【0006】
図1Aの上段は導体1に耐火テープ2を横巻きしている所を示し、中段は耐火テープ2が横巻きされた導体1を示す。
図1Aの下段は、上記の様にして耐火テープ2が巻かれた導体1が曲げられた様子を示している。図1Aの下段の矢印に示されるように、曲げられると、湾曲部の外側に耐火テープ2の隙間が生じやすい。このような隙間は、燃焼時に発生する導電性炭化物の侵入口となるため短絡の原因となる。
【0007】
一方、図1Bの上段は、導体1に耐火テープ2を縦添え巻きしている所を示し、中段は耐火テープ2を縦添え巻きした後に、さらにガラスヤーン3が横巻きされた導体1を示す。このように耐火テープ2を縦添え巻きした場合、耐火テープ2を押さえるためにガラスヤーン3を巻くことになる。
図1Bの下段は、ガラスヤーン3が巻かれたことにより、ガラスヤーン3間で耐火テープ2が浮き上がり隙間が生じた様子を示す。このような隙間も、燃焼時に発生する導電性炭化物の侵入口となるため短絡の原因となる。
【0008】
本発明の目的は、耐火テープの巻き方に起因する耐火性能の低下を抑制することができる耐火ケーブル、および当該耐火ケーブルの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様によれば、
導体と、
前記導体の周りに縦添え巻きされた耐火テープと、
前記導体の周りに横巻きされた耐火テープと、
を有することを特徴とする、耐火ケーブルが提供される。
【0010】
また、本発明の他の一態様によれば、
導体の周りに耐火テープを縦添え巻きまたは横巻きの一方で巻く工程と、
前記耐火テープを巻かれた前記導体の周りに耐火テープを縦添え巻きまたは横巻きの他方で巻く工程と、
を有することを特徴とする、耐火ケーブルの製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、耐火テープの巻き方に起因する耐火性能の低下を抑制することができる耐火ケーブル、および当該耐火ケーブルの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1Aは、耐火テープが横巻きされたときの耐火性能の低下要因を説明するための図であり、図1Bは、耐火テープが縦添え巻きされたときの耐火性能の低下要因を説明するための図である。
図2図2Aは、実施の形態1に係る耐火テープの巻き方を説明するための図であり、図2Bは、耐火テープが巻かれた導体の断面模式図である。
図3図3Aは、実施の形態2に係る耐火テープの巻き方を説明するための図であり、図3Bは、耐火テープが巻かれた導体の断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態に係る耐火ケーブルにおける耐火テープの巻き方、および耐火テープが巻かれた導体の構成等について図を参照しつつ説明する。
【0014】
[実施の形態1]
図2Aは、実施の形態1に係る耐火ケーブルにおける耐火テープ2の巻き方を示し、図2Bの左図は、このようにして耐火テープ2が巻かれた導体1の断面模式図を示す。
【0015】
図2Aに示されるように、実施の形態1に係る耐火ケーブルの製造方法においては、導体1の周りに耐火テープ2を横巻きする工程と、その後に、導体1の周りに耐火テープ2を縦添え巻きする工程とを有する。すなわち、耐火テープ2を縦添え巻きする工程は、耐火テープ2を横巻きする工程の後に行われる。以下、それぞれの工程について説明する。
【0016】
耐火テープ2を横巻きする工程では、導体1の周りに耐火テープ2を螺旋状に巻いていく。横巻きする工程では、導体1の周囲に既に巻かれた耐火テープ2の一部に、次に巻かれる耐火テープ2の一部が重なるように螺旋状に巻いていき、耐火テープ2同士が重なって隙間が生じないようにすることが好ましい。このように、一部が重なるように巻くために、耐火テープ2は、その長さ方向が、導体1の長さ方向に対して垂直ではなくある程度の角度をもって斜めになるように巻かれていく。当該角度は、耐火テープ2の所望の重なり2’の程度に応じて適宜設定されればよい。耐火テープ2を横巻きする工程では、二重またはそれ以上重ねて耐火テープ2を横巻きしてもよい。
【0017】
縦添え巻きする工程では、導体1の長さ方向と耐火テープ2の長さ方向とが平行になるようにして、導体1の周りに耐火テープ2を巻いていく。より具体的には、例えば、耐火テープ2の幅方向の一端から他端の方向に向かって導体1に耐火テープ2を巻いていく。耐火テープ2の幅は、縦添え巻きしたときの耐火テープ2の所望の重なり2’の程度に応じて適宜設定されればよい。耐火テープ2を縦添え巻きする工程では、二重またはそれ以上重ねて耐火テープ2を縦添え巻きしてもよい。
【0018】
上記の横巻きの巻き方向と、縦添え巻きの巻き方向とは、同じであっても異なっていてもよいが、本実施の形態においては、両者の巻き方向は図2Aの白抜き矢印に示されるように同じ方向である。横巻きの巻き方向と縦添え巻きの巻き方向とが同じ方向であることで、内側に巻かれた横巻きの耐火テープ2に対して、外側に縦添え巻きした耐火テープ2が、締めつけるように作用し、耐火テープ2の隙間がより生じにくくなる。
【0019】
本実施の形態においては、耐火テープ2を縦添え巻きする工程の後に、ガラスヤーン3などを横巻きする工程(押え巻き)をさらに有することが好ましい。ガラスヤーン3などを横巻きすることで、縦添え巻きされた耐火テープ2を押さえて剥がれてしまうことを防止できる。ここでガラスヤーン3などを巻くと、上述のように耐火テープ2が浮き上がり隙間が生じやすいが、本実施の形態では縦添え巻きされた耐火テープ2の内側に横巻きされた耐火テープ2があるため導体1が露出しにくい。
【0020】
図2Bの左図は、上記のように耐火テープ2が巻かれた導体1の断面模式図を示す。導体1は、導体1の周りに縦添え巻きされた耐火テープ2と、導体1の周りに横巻された耐火テープ2との両方を有する。
より具体的には、本実施の形態においては、耐火テープ2が巻かれた導体1は、導体1により近い内側の横巻きされた耐火テープ2と、その外側の縦添え巻きされた耐火テープ2と、その外側のガラスヤーン3とを有する。以下、それぞれの構成の詳細について説明する。
【0021】
導体1は、電気を導通可能な材料で構成されていればよく、例えば銅から構成される線状の部材である。また、その径は、耐火ケーブルの用途に応じて適宜選択される。
【0022】
耐火テープ2は耐火性を有すれば特に制限されない。本実施の形態において、耐火テープ2はマイカテープである。マイカテープは高温でも絶縁性を発揮するテープである。マイカは暗緑色を呈する天然鉱物であり(「雲母」とも称される)、電気絶縁性、耐熱性に優れる物質である。マイカそのものは鉱物であるが、テープ状に加工されると、良好な可撓性を示し、ケーブルに好適な材料となる。マイカテープは、ガラスクロスにマイカを接着したガラスマイカテープであってもよく、ポリエチレン等のプラスチックフィルムにマイカを接着したプラスチックマイカテープであってもよい。なお、マイカテープは耐火テープ2の一例であって他の素材によるテープが使用されてもよい。
縦添え巻きされる耐火テープ2と、横巻きされる耐火テープ2とは、同じ種類のテープであってもよいし、異なる種類のテープであってもよい。また、耐火テープ2を、二重またはそれ以上重ねて縦添え巻きする場合、それぞれの耐火テープ2は、同じ種類のテープであってもよいし、異なる種類のテープであってもよい。同様に、耐火テープ2を、二重またはそれ以上重ねて横巻きする場合、それぞれの耐火テープ2は、同じ種類のテープであってもよいし、異なる種類のテープであってもよい。
【0023】
ガラスヤーン3は、特に制限されず、公知のガラスヤーン3とすることができる。本実施の形態において、ガラスヤーン3は原糸を複数本含み、当該複数の原糸が撚り合わせられた構造を有している。ガラスヤーン3中に含まれる原糸の数は、ガラスヤーン3に要求される強度や、各原糸の太さ等に応じて適宜選択される。
【0024】
図2Bの中央に示されるように、耐火テープ2が巻かれた導体1は、その周りに絶縁体層4をさらに有していてもよい。絶縁体層4を形成することで耐火絶縁線心5aが得られる。例えば、絶縁体層4は、塩化ビニル樹脂、ポリオレフィン等を押出して形成される。
【0025】
ポリオレフィンの例には、低密度ポリエチレン(LDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、エチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン・アクリル酸エチル共重合体(EEA)、エチレン・アクリル酸メチル共重合体(EMA)、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・プロピレン・三元共重合体、エチレン・ブテン共重合体等が含まれる。
また、ポリオレフィンの例には、メタロセン触媒によりエチレンにプロピレン、ブテン、ペンテン、ヘキセン、オクテン等のα-オレフィンや環状オレフィン等を1種または2種以上共重合させた共重合体も含まれる。これらは単独または混合して使用される。
これらのうち、耐火性能、環境保全などの観点から、絶縁体層4の材料として、低密度ポリエチレン(LDPE)を含むことが好ましく、低密度ポリエチレン(LDPE)単独がより好ましい。
絶縁体層4は、上記塩化ビニル樹脂やポリオレフィン等の絶縁性の樹脂以外に、酸化防止剤、紫外線安定剤等の添加剤を必要に応じて含んでいてもよい。
ただし、難燃剤を含むと、絶縁体層4の電気特性や耐水性等が低下する場合があるため、難燃剤は含まないことが好ましい。
【0026】
図2Bの右側に示されるように、耐火絶縁線心5aはその周りがシース6で被覆され、これが複数本(図2Bでは3本)で撚り合わされ、耐火ケーブル7aとなる。シース6は、例えば、塩化ビニル樹脂やポリオレフィン、もしくはこれらの樹脂に難燃剤を配合した難燃性ポリマー等を押し出して形成される。
ポリオレフィンの種類は、上述の絶縁体層4で挙げたポリオレフィンと同様でよい。当該ポリオレフィンは、単独または混合して使用される。
シース6の材料としては、中でも、塩化ビニル樹脂、難燃性ポリエチレン、エチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン・アクリル酸エチル共重合体(EEA)、エチレン・アクリル酸メチル共重合体(EMA)等のエチレン系コポリマーとの混合ポリマーに難燃剤を配合した組成物が、難燃性、耐火性能、耐外傷性、耐耐光性等の観点で好ましい。また、端末処理の際の被覆(シース)除去性の観点からは、難燃性ポリエチレンが特に好ましい。
【0027】
シース6が含む難燃剤の例には、酸化アンチモン、酸化モリブテン等の金属酸化物、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の金属水和物、ハロゲン系難燃剤、赤リン等のリン系難燃剤等が含まれる。
これらの中でも、環境保全性の観点から、ノンハロゲン系の難燃剤が好ましく、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の金属水和物が好ましい。
また、シース6は、必要に応じて、架橋剤、架橋助剤、酸化防止剤、滑剤等をさらに含んでいてもよい。また、シース6は、電子線や有機過酸化物等で架橋されてもよい。
【0028】
[実施の形態2]
図3Aは、実施の形態2に係る耐火ケーブルにおける耐火テープ2の巻き方を示し、図3Bの左図は、このようにして耐火テープ2が巻かれた導体1の断面模式図を示す。
【0029】
図3Aに示されるように、実施の形態2に係る耐火ケーブルにおける耐火テープ2の巻き方は、先に、導体1の周りに耐火テープ2を縦添え巻きする工程と、その後に、導体1の周りに耐火テープ2を横巻きする工程とを有し、縦添え巻きと横巻きの順番が逆である点で実施の形態1と異なる。以下、実施の形態2について、実施の形態1と異なる点を中心に説明し、同様の構成等については同様の符号を付すなどして、その説明を省略する。
【0030】
本実施の形態において、縦添え巻きする工程では、導体1の周りに耐火テープ2を縦添え巻きする。このとき、耐火テープ2の幅は、所望の耐火テープ2の重なり2’の程度に応じて適宜設定されればよい。耐火テープ2を縦添え巻きする工程では、二重またはそれ以上重ねて耐火テープ2を縦添え巻きしてもよい。
【0031】
本実施の形態において、横巻きする工程では、耐火テープ2を縦添え巻きされた導体1の周りに耐火テープ2を横巻きする。このようにすることで、縦添え巻きされた耐火テープ2を横巻きする耐火テープ2で押さえることができる。すなわち、ガラスヤーン3の代わりに耐火テープ2を横巻することで縦添え巻きされた耐火テープ2を押さえることができる。これにより、縦添え巻きされた耐火テープ2の周りにガラスヤーン3を巻く必要がなくなり、ガラスヤーン3を不要とすることができる。このようにガラスヤーン3を不要とすることができるので、ガラスヤーン3が巻かれることによって耐火テープ2が浮き上がり、隙間が生じることがない。導体1の長さ方向に対する横巻きされている耐火テープ2の角度は、耐火テープ2の所望の重なり2’の幅に応じて適宜設定されればよい。耐火テープ2を横巻きする工程では、二重またはそれ以上重ねて耐火テープ2を横巻きしてもよい。
なお、本実施形態でも、縦添え巻きした耐火テープ2の周りにガラスヤーン3を巻いてもよい。
【0032】
上記の縦添え巻きの巻き方向と、横巻きの巻き方向は、同じであっても異なっていてもよいが、本実施の形態においては、両者の巻き方向は図3Aの白抜き矢印に示されるように同じ方向である。縦添え巻きの巻き方向と横巻の巻き方向とが同じ方向であることで、内側に巻かれた縦添え巻きの耐火テープ2を、外側に巻かれた横巻きの耐火テープ2が、締めつけるように作用し、耐火テープ2の隙間がより生じにくくなる。
【0033】
図3Bの左図は、上記のように耐火テープ2が巻かれた導体1の断面模式図を示す。本実施の形態において、耐火テープ2が巻かれた導体1は、導体1により近い内側の縦添え巻きされた耐火テープ2と、その外側の横巻された耐火テープ2とを有する。なお、ガラスヤーン3は本実施の形態においては不要とすることができるので、実施の形態1と異なり、基本的にガラスヤーン3は無い。
なお、本実施の形態においても、図3Bの中央図、および右図に示されるように絶縁体層4を形成して耐火絶縁線心5bを得て、耐火絶縁線心5bをシース6で被覆してこれを複数本撚り合わせて耐火ケーブル7bを得る。これは実施の形態1と同様である。
【0034】
(効果)
実施の形態1、2に係る耐火ケーブル7a、bは、導体1の周りに縦添え巻きされた耐火テープ2と、横巻された耐火テープ2との両方を有する。これにより、互いの欠点を補完し、耐火性能が高くなる。
【0035】
[実験]
実施例1、2および比較例1、2の耐火ケーブルを以下のように作製して、それぞれの耐火性能を評価した。
【0036】
実施例1の耐火ケーブルは、断面積150mmの銅導体に2枚のマイカテープをそれぞれ縦添え巻きし、その後に、2枚のマイカテープをそれぞれ横巻きして耐火層(4層のマイカテープ)を形成した。その後、耐火層の周りに、低密度ポリエチレン(LDPE)を押しだし被覆して絶縁体層4を形成し、耐火絶縁線心を得た。その後、耐火絶縁線心の外周に難燃性ポリエチレン(酸素指数(JIS K7201)27)を押し出し被覆してシース6を形成し、これを3本撚り合わせて耐火ケーブルを得た。
実施例2の耐火ケーブルは、導体1に2枚のマイカテープをそれぞれ横巻きし、その後に、2枚のマイカテープをそれぞれ縦添え巻きし、その後にガラスヤーン3を横巻きして耐火層(4層のマイカテープ)を形成した以外は、実施例1と同様にした。
【0037】
比較例1の耐火ケーブルは、導体1に4枚のマイカテープをそれぞれ縦添え巻きし、その後にガラスヤーン3を横巻きして耐火層(4層のマイカテープ)を形成した以外は実施例1と同様にした。
比較例2の耐火ケーブルは、導体1に4枚のマイカテープをそれぞれ横巻きして耐火層(4層のマイカテープ)を形成した以外は実施例1と同様にした。
なお、実施例1、2および比較例1、2において、縦添え巻き、および、横巻きの巻き方向はいずれも同じ方向とした。
【0038】
上記のようにして作製した実施例および比較例の耐火ケーブルを日本電線工業会規格JCS7509に準拠した露出試験および電線管試験を行うことによって耐火性能を評価した。
【0039】
露出試験は、1.3mの耐火ケーブルを被試験体として使用し、耐火ケーブルの自重の2倍の荷重をかけながら耐火試験を実施した。電線管試験は、1.3mの耐火ケーブルを被試験体として使用し、これを長さ400mmの金属製電線管に挿入して電線管の両端にロックウールを充填し、耐火試験を実施した。
かかる耐火試験に際し、その耐火試験前後および耐火試験中の絶縁耐力や絶縁抵抗を観察し測定した、観察結果および測定結果を表1に示す。
絶縁耐力は表1に記載の一定電圧を一定時間印加し、絶縁破壊が起こったかどうかを評価しており、絶縁破壊が生じなかった場合を「良」としている。
絶縁抵抗の測定ではまず、3本の耐火絶縁線心の撚りを解き、1本の耐火絶縁線心と2本の耐火絶縁線心とに分け、1本の耐火絶縁線心の絶縁抵抗の値と2本の耐火絶縁線心の絶縁抵抗の値とをそれぞれ測定し、当該絶縁抵抗の低いほうの値を採用する。当該値が1本の耐火絶縁線心に由来する値であればその値に心数(1心)を乗じ、2本の耐火絶縁線心に由来する値であればその値に心数(2心)を乗じ、これを結果として表1に示している。
【0040】
併せて、耐火試験終了後に、各サンプルに対して電圧を印加していき、当該サンプルが絶縁破壊を起こす電圧値(破壊電圧)および燃焼性も測定した。燃焼性は、燃焼後のケーブルの炭化長さ(燃焼距離)を金属製の定規で測定した。測定結果を表1に示す。また、耐火試験終了後に導通できるかどうかを調べた。その結果も表1に示す。
【0041】
【表1】
【0042】
表1からわかるように、実施例1、2の耐火ケーブルは1時間耐火性能を満たし、比較例1、2の耐火ケーブルより耐火性能が高かった。これは実施例1、2の耐火ケーブルでは、縦添え巻きの耐火テープ2と横巻きの耐火テープ2とが組み合わされているのに対して、比較例1、2の耐火ケーブルでは、どちらか一方の巻き方の耐火テープ2しか有していないからである。そのため、実施例では、巻き方に起因する欠点が克服されているので耐火性がより高く、比較例では欠点が克服されていないため耐火性がより低いと考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明の耐火ケーブルは、耐火性能が求められる環境下の配線に有用である。
【符号の説明】
【0044】
1 導体
2 耐火テープ
2’ 耐火テープの重なり
3 ガラスヤーン
4 絶縁体層
5a、5b 耐火絶縁線心
6 シース
7a、7b 耐火ケーブル
図1
図2
図3