(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024132087
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】波長変換装置、波長変換装置の製造方法、照明装置およびプロジェクター
(51)【国際特許分類】
G03B 21/14 20060101AFI20240920BHJP
G02B 5/20 20060101ALI20240920BHJP
H04N 5/74 20060101ALI20240920BHJP
G03B 21/00 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
G03B21/14 A
G02B5/20
H04N5/74 Z
G03B21/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023042743
(22)【出願日】2023-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】橋爪 俊明
【テーマコード(参考)】
2H148
2K203
5C058
【Fターム(参考)】
2H148AA00
2H148AA05
2H148AA07
2K203FA03
2K203FA23
2K203FA34
2K203FA44
2K203FA45
2K203FA54
2K203FA62
2K203GA25
2K203HA27
2K203MA01
5C058AB03
5C058BA35
5C058EA02
5C058EA26
5C058EA51
(57)【要約】
【課題】放熱性に優れるとともに蛍光の取り出し効率を向上させた、波長変換装置、波長変換装置の製造方法、照明装置およびプロジェクターを提供する。
【解決手段】本発明の波長変換装置は、基板と、基板に設けられ、複数の蛍光体粒子と、複数の蛍光体粒子と基板とを結合する結合部材とを含む波長変換層と、基板と波長変換層との間に配置され、波長変換層から射出された光を反射する反射層と、を備え、複数の蛍光体粒子の粒径分布は、40μm以上200μm以下であり、粒径分布の中心値は、70μm以上150μm以下であり、複数の蛍光体粒子のうち一部の蛍光体粒子は、反射層と熱的に接続され、複数の蛍光体粒子のうち50%以上の蛍光体粒子は、互いに熱的に接続され、結合部材の厚さは、波長変換層の厚さの30%以上80%以下である。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板に設けられ、複数の蛍光体粒子と、前記複数の蛍光体粒子と前記基板とを結合する結合部材とを含む波長変換層と、
前記基板と前記波長変換層との間に配置され、前記波長変換層から射出された光を反射する反射層と、
を備え、
前記複数の蛍光体粒子の粒径分布は、40μm以上200μm以下であり、
前記粒径分布の中心値は、70μm以上150μm以下であり、
前記複数の蛍光体粒子のうち一部の蛍光体粒子は、前記反射層と熱的に接続され、
前記複数の蛍光体粒子のうち50%以上の蛍光体粒子は、互いに熱的に接続され、
前記結合部材の厚さは、前記波長変換層の厚さの30%以上80%以下である、
ことを特徴とする波長変換装置。
【請求項2】
前記波長変換層の前記基板とは反対側において、前記複数の蛍光体粒子のうち一部の蛍光体粒子が前記結合部材から露出している、
ことを特徴とする請求項1に記載の波長変換装置。
【請求項3】
前記波長変換層の厚さは、60μm以上150μm以下である、
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の波長変換装置。
【請求項4】
前記基板とは反対側の前記波長変換層の表面において、前記結合部材を介して他の蛍光体粒子に結合されない蛍光体粒子が除去されている、
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の波長変換装置。
【請求項5】
基板と、前記基板に設けられ、粒径が40μm以上200μm以下であり、かつ、粒径分布の中心値が70μm以上150μm以下である複数の蛍光体粒子と前記基板とが結合部材により結合された波長変換層と、前記基板と前記波長変換層との間に配置され、前記波長変換層から射出された光を反射する反射層と、を備え、前記結合部材の厚さが前記波長変換層の厚さの30%以上80%以下である波長変換装置の製造方法であって、
前記基板に設けられた前記反射層上に前記結合部材を形成するための結合部材用塗膜を塗布する第1工程と、
前記結合部材用塗膜に前記複数の蛍光体粒子を含む蛍光体粒子群を配置する第2工程と、
押圧部材により前記蛍光体粒子群を前記反射層に向けて押圧する第3工程と、
前記基板および前記蛍光体粒子群とともに前記結合部材用塗膜を焼成して前記結合部材を形成する第4工程と、
を備える、
ことを特徴とする波長変換装置の製造方法。
【請求項6】
前記基板とは反対側の前記波長変換層の表面において、前記蛍光体粒子群のうち前記結合部材を介して他の蛍光体粒子に結合されていない余剰粒子を除去する第5工程をさらに備える、
ことを特徴とする請求項5に記載の波長変換装置の製造方法。
【請求項7】
励起光を射出する光源と、
前記励起光が入射する、請求項1または請求項2に記載の波長変換装置と、を備える、
ことを特徴とする照明装置。
【請求項8】
請求項7に記載の照明装置と、
前記照明装置から射出された光を変調する光変調装置と、
前記光変調装置により変調された光を投射する投射光学装置と、を備える、
ことを特徴とするプロジェクター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、波長変換装置、波長変換装置の製造方法、照明装置およびプロジェクターに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、基板と、蛍光体粒子群および封止部材を含む波長変換層と、を備えた波長変換部材において、蛍光体粒子群の断面比率を50%以上に高め、かつ、断面が40μm以上の大粒径の蛍光体粒子と断面が30μm以下の小粒径の蛍光体粒子の両方を用いて充填率を高めることで波長変換層の熱伝導率を高める、技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に開示の波長変換部材において、30μm以下の小粒径の蛍光体粒子は比表面積が大きいため、波長変換層の内部で蛍光が反射されることで外部に取り出せる蛍光の光量が減少してしまうという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するために、本発明の1つの態様によれば、基板と、前記基板に設けられ、複数の蛍光体粒子と、前記複数の蛍光体粒子と前記基板とを結合する結合部材とを含む波長変換層と、前記基板と前記波長変換層との間に配置され、前記波長変換層から射出された光を反射する反射層と、を備え、前記複数の蛍光体粒子の粒径は、40μm以上、200μm以下であり、前記複数の蛍光体粒子の粒径分布の中心値は、70μm以上、150μm以下であり、前記複数の蛍光体粒子のうち一部の蛍光体粒子は、前記反射層と熱的に接続され、前記複数の蛍光体粒子のうち50%以上の蛍光体粒子は、互いに熱的に接続され、前記結合部材の厚さは、前記波長変換層の厚さの30%以上、80%以下である、波長変換装置が提供される。
【0006】
また、本発明の別の態様によれば、基板と、前記基板に設けられ、粒径が40μm以上200μm以下であり、かつ、粒径分布の中心値が70μm以上150μm以下である複数の蛍光体粒子と前記基板とが結合部材により結合された波長変換層と、前記基板と前記波長変換層との間に配置され、前記波長変換層から射出された光を反射する反射層と、を備え、前記結合部材の厚さが前記波長変換層の厚さの30%以上80%以下である波長変換装置の製造方法であって、前記基板に設けられた前記反射層上に前記結合部材を形成するための結合部材用塗膜を塗布する第1工程と、前記結合部材用塗膜に前記複数の蛍光体粒子を含む蛍光体粒子群を配置する第2工程と、押圧部材により前記蛍光体粒子群を前記反射層に向けて押圧する第3工程と、前記基板および前記蛍光体粒子群とともに前記結合部材用塗膜を焼成して前記結合部材を形成する第4工程と、を備える、波長変換装置の製造方法が提供される。
【0007】
また、本発明の別の態様によれば、励起光を射出する光源と、前記励起光が入射する、上記態様の波長変換装置と、を備える、照明装置が提供される。
【0008】
また、本発明の別の態様によれば、上記態様の照明装置と、前記照明装置から射出された光を変調する光変調装置と、前記光変調装置により変調された光を投射する投射光学装置と、を備える、プロジェクターが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】一実施形態のプロジェクターを示す概略構成図である。
【
図5】結合部材の厚さと蛍光発光量の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の説明で用いる図面は、特徴をわかりやすくするために、便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らない。
【0011】
以下、本発明の一実施形態について説明する。
図1は、一実施形態のプロジェクターを示す概略構成図である。
図1に示すように、本実施形態のプロジェクター1は、スクリーンSCR上に映像を表示する投射型画像表示装置である。プロジェクター1は、照明装置2と、色分離光学系3と、光変調装置4Rと、光変調装置4Gと、光変調装置4Bと、合成光学系5と、投射光学装置6と、を備える。
【0012】
照明装置2は、色分離光学系3に向けて白色の照明光WLを射出する。照明装置2の構成については、後で詳しく説明する。
【0013】
色分離光学系3は、照明装置2から射出された照明光WLを、赤色光LRと、緑色光LGと、青色光LBとに分離する。色分離光学系3は、第1ダイクロイックミラー7aと、第2ダイクロイックミラー7bと、第1全反射ミラー8aと、第2全反射ミラー8bと、第3全反射ミラー8cと、第1リレーレンズ9aと、第2リレーレンズ9bと、を備えている。
【0014】
第1ダイクロイックミラー7aは、照明装置2からの照明光WLを、赤色光LRと、緑色光LGおよび青色光LBを含む光と、に分離する。第1ダイクロイックミラー7aは、赤色光LRを透過するとともに、緑色光LGおよび青色光LBを含む光を反射する。一方、第2ダイクロイックミラー7bは、緑色光LGを反射するとともに、青色光LBを透過する。これにより、第2ダイクロイックミラー7bは、緑色光LGと青色光LBとを含む光を緑色光LGと青色光LBとに分離する。
【0015】
第1全反射ミラー8aは、赤色光LRの光路中に配置され、第1ダイクロイックミラー7aを透過した赤色光LRを光変調装置4Rに向けて反射する。一方、第2全反射ミラー8bおよび第3全反射ミラー8cは、青色光LBの光路中に配置され、第2ダイクロイックミラー7bを透過した青色光LBを光変調装置4Bに導く。緑色光LGは、第2ダイクロイックミラー7bから光変調装置4Gに向けて反射される。
【0016】
第1リレーレンズ9aは、青色光LBの光路中における第2ダイクロイックミラー7bおよび第2全反射ミラー8bの間に配置されている。第2リレーレンズ9bは、青色光LBの光路中における第2全反射ミラー8bおよび第3全反射ミラー8cの間に配置されている。第1リレーレンズ9aおよび第2リレーレンズ9bは、青色光LBの光路長が赤色光LRや緑色光LGの光路長よりも長くなることに起因した青色光LBの光損失を補償する。
【0017】
光変調装置4Rは、赤色光LRを画像情報に応じて変調し、赤色光LRに対応した画像光を形成する。光変調装置4Gは、緑色光LGを画像情報に応じて変調し、緑色光LGに対応した画像光を形成する。光変調装置4Bは、青色光LBを画像情報に応じて変調し、青色光LBに対応した画像光を形成する。
【0018】
光変調装置4R、光変調装置4G、および光変調装置4Bのそれぞれには、例えば透過型の液晶パネルが用いられている。また、液晶パネルの入射側および射出側のそれぞれには、図示しない偏光板が配置されている。
【0019】
光変調装置4Rの入射側には、フィールドレンズ10Rが配置されている。フィールドレンズ10Rは、光変調装置4Rに入射する赤色光LRを平行化する。光変調装置4Gの入射側には、フィールドレンズ10Gが配置されている。フィールドレンズ10Gは、光変調装置4Gに入射する緑色光LGを平行化する。光変調装置4Bの入射側には、フィールドレンズ10Bが配置されている。フィールドレンズ10Bは、光変調装置4Bに入射する青色光LBを平行化する。
【0020】
合成光学系5には、光変調装置4R、光変調装置4G、および光変調装置4Bから射出される画像光が入射する。合成光学系5は、赤色光LR、緑色光LG、および青色光LBのそれぞれに対応する画像光を合成し、合成された画像光を投射光学装置6に向けて射出する。合成光学系5には、例えばクロスダイクロイックプリズムが用いられている。
【0021】
投射光学装置6は、複数の投射レンズを有する。投射光学装置6は、合成光学系5により合成された画像光をスクリーンSCRに向けて拡大投射する。これにより、スクリーンSCR上には、拡大された映像が表示される。
【0022】
以下、照明装置2の構成について説明する。
図2は、本実施形態の照明装置2を示す概略構成図である。
図2に示すように、照明装置2は、第1光源40と、コリメート光学系41と、ダイクロイックミラー42と、第1集光光学系43と、波長変換装置50と、第2光源44と、第2集光光学系45と、拡散板46と、コリメート光学系47と、を備える。
【0023】
第1光源(光源)40は、レーザー光からなる青色の励起光Eを射出する複数の半導体レーザー40aで構成されている。励起光Eの発光強度のピークは、例えば445nmである。複数の半導体レーザー40aは、第1光源40の光軸axと直交する一つの平面内においてアレイ状に配置されている。なお、半導体レーザー40aとしては、445nm以外の波長、例えば455nmや460nmの青色光を射出する半導体レーザーを用いることもできる。第1光源40の光軸axは、照明装置2の照明光軸100axと直交する。
【0024】
コリメート光学系41は、第1レンズ41aと、第2レンズ41bと、を備える。コリメート光学系41は、第1光源40から射出された光を略平行化する。第1レンズ41aおよび第2レンズ41bのそれぞれは、凸レンズで構成されている。
【0025】
ダイクロイックミラー42は、コリメート光学系41から第1集光光学系43までの間の光路中に、第1光源40の光軸axと照明光軸100axとのそれぞれに対して45°の角度で交差する向きに配置されている。ダイクロイックミラー42は、青色光成分を反射させ、赤色光成分および緑色光成分を透過させる。したがって、ダイクロイックミラー42は、励起光Eおよび青色光Bを反射させ、黄色の蛍光Yを透過させる。
【0026】
第1集光光学系43は、ダイクロイックミラー42を透過した励起光Eを集光させて波長変換装置50に入射させる一方、波長変換装置50から射出された蛍光Yを略平行化する。第1集光光学系43は、第1レンズ43aと、第2レンズ43bと、を備える。第1レンズ43aおよび第2レンズ43bのそれぞれは、凸レンズで構成されている。
【0027】
第2光源44は、第1光源40の波長帯と同一の波長帯を有する半導体レーザーから構成されている。第2光源44は、1つの半導体レーザーで構成されていてもよいし、複数の半導体レーザーで構成されていてもよい。また、第2光源44は、第1光源40の半導体レーザーとは波長帯が異なる半導体レーザーから構成されていてもよい。
【0028】
第2集光光学系45は、第1レンズ45aと、第2レンズ45bと、を備える。第2集光光学系45は、第2光源44から射出された青色光Bを拡散板46の拡散面上または拡散面の近傍に集光させる。第1レンズ45aと第2レンズ45bのそれぞれは、凸レンズで構成されている。
【0029】
拡散板46は、第2光源44から射出された青色光Bを拡散させ、波長変換装置50から射出された蛍光Yの配光分布に近い配光分布を有する青色光Bを生成する。拡散板46として、例えば光学ガラスからなる磨りガラスを用いることができる。
【0030】
コリメート光学系47は、第1レンズ47aと、第2レンズ47bと、を備える。コリメート光学系47は、拡散板46から射出された光を略平行化する。第1レンズ47aおよび第2レンズ47bのそれぞれは、凸レンズで構成されている。
【0031】
第2光源44から射出された青色光Bは、ダイクロイックミラー42で反射され、波長変換装置50から射出され、ダイクロイックミラー42を透過した蛍光Yと合成されて、白色の照明光WLを生成する。照明光WLは、均一照明光学系80に入射する。
【0032】
均一照明光学系80は、第1レンズアレイ81と、第2レンズアレイ82と、偏光変換素子83と、重畳レンズ84と、を有する。
【0033】
第1レンズアレイ81は、照明装置2からの照明光WLを複数の部分光束に分割するための複数の第1レンズ81aを有する。複数の第1レンズ81aは、照明光軸100axと直交する面内においてマトリクス状に配列されている。
【0034】
第2レンズアレイ82は、第1レンズアレイ81の複数の第1レンズ81aに対応する複数の第2レンズ82aを有する。複数の第2レンズ82aは、照明光軸100axに直交する面内においてマトリクス状に配列されている。
【0035】
第2レンズアレイ82は、重畳レンズ84とともに、第1レンズアレイ81の各第1レンズ81aの像を光変調装置4R、光変調装置4G、および光変調装置4Bの画像形成領域の近傍にそれぞれ結像する。
【0036】
偏光変換素子83は、第2レンズアレイ82から射出された光を一方の直線偏光に変換する。偏光変換素子83は、例えば偏光分離膜および位相差板(図示略)を備える。
【0037】
重畳レンズ84は、偏光変換素子83から射出された各部分光束を集光して光変調装置4R、光変調装置4G、および光変調装置4Bの画像形成領域の近傍にそれぞれ重畳させる。
【0038】
次に、波長変換装置50の構成について説明する。
図3は、波長変換装置50の構成を示す断面図である。
図3は、
図2の照明光軸100axを含む平面で波長変換装置50を切断した断面に相当する。
【0039】
図3に示すように、波長変換装置50は、基板51と、波長変換層52と、反射層54と、を備える。本実施形態の波長変換装置50は、波長変換層52に対する励起光Eの入射位置が時間的に変化しない固定型の波長変換装置で構成されている。
【0040】
基板51は波長変換層52を支持する。基板51は、例えばアルミニウム、サファイア、窒化アルミニウム等の高い熱伝導率を有する平坦な基板で構成されている。波長変換層52は、一方側から入射した励起光Eを波長変換した蛍光Yを同じ一方側から射出させる。
【0041】
反射層54は基板51と波長変換層52との間に設けられている。つまり、反射層54は、基板51における波長変換層52の支持面である表面51aに設けられている。反射層54は、高い光反射率を有する銀等の金属膜、または誘電体多層膜、またはこれらの膜の組合せから構成されている。反射層54は、波長変換層52内において光入射側と反対側(基板51側)に向かった蛍光Yを光入射側に向けて反射する。なお、反射層54は、励起光Eの一部を光入射側に反射させてもよく、反射層54に反射された励起光Eは蛍光Yの励起に利用される。
【0042】
このような構成に基づき、本実施形態の波長変換装置50は、励起光Eが入射する波長変換層52の光入射側から蛍光Yを射出する反射型の波長変換装置として機能するようになっている。
【0043】
波長変換層52は、複数の蛍光体粒子20と結合部材21とを含む。複数の蛍光体粒子20は、励起光Eを波長変換して蛍光Yを生成する。
【0044】
複数の蛍光体粒子20は、例えば、賦活剤としてセリウム(Ce)が添加されたイットリウム・アルミニウム・ガーネット(YAG(Y3Al5O12):Ce)から構成される。各蛍光体粒子20は、Y2O3、Al2O3、CeO3等の結晶体を樹脂で結合し、プレス後に1600℃以上で焼成した後、例えば、ロールクラッシャーやハンマーやカッターなどで砕くことで構成される。あるいは、噴霧乾燥法、火炎熱分解法、熱プラズマ法等の気相法によりYAGの原料から形成した大粒径のYAG粒子を用いてもよい。
【0045】
本実施形態の波長変換層52において、複数の蛍光体粒子20のうち一部の蛍光体粒子は反射層54と熱的に接続されている。
図3において、複数の蛍光体粒子20のうち反射層54と熱的に接続されるものを蛍光体粒子24と称す。
【0046】
ここで、反射層54と熱的に接続された蛍光体粒子24とは、蛍光体粒子24と反射層54とが直接接触した状態のみならず、互いに熱伝導可能な程度の1~2μmの隙間が介在する状態も含む。なお、本実施形態の場合、蛍光体粒子24と反射層54との隙間には結合部材21が設けられている。
この構成によれば、蛍光体粒子24の熱が反射層54から基板51へと伝わって放出されるため、波長変換層52の放熱性を高めることができる。
【0047】
また、本実施形態の波長変換層52において、複数の蛍光体粒子20のうち50%以上の蛍光体粒子は、互いに熱的に接続されている。つまり、複数の蛍光体粒子20のうち半分以上は隣り合う粒子に対して接触あるいは熱伝導可能な隙間を介して配置されている。この構成によれば、蛍光体粒子20間で効率良く熱が伝わるため、波長変換層52の放熱性を高めることができる。
【0048】
また、本実施形態の波長変換層52において、波長変換層52は、基板51とは反対側において、つまり、光入射側において、複数の蛍光体粒子20のうち一部の蛍光体粒子が結合部材21から露出している。本実施形態の波長変換層52において、複数の蛍光体粒子20のうち最も光入射面に近い最上層蛍光体粒子20Aの一部が結合部材21から露出している。
【0049】
最上層蛍光体粒子20Aは、光入射側と反対側の根元部分22と光入射側に位置する先端部分23とを有する。最上層蛍光体粒子20Aにおいて、根元部分22の一部のみが結合部材21で覆われ、先端部分23は結合部材21から露出し周囲の空気層に接している。
【0050】
本実施形態の波長変換層52において、基板51とは反対側の表面、つまり、光入射面に位置する最上層蛍光体粒子20Aは、結合部材21を介して他の蛍光体粒子20に結合されるが、最上層蛍光体粒子20Aの周囲に結合部材21に結合されない蛍光体粒子は存在していない。これは、最上層蛍光体粒子20Aが、後述の製造工程によって、結合部材21から露出している複数の蛍光体粒子20の中から結合部材21と結合されない浮遊状態の余剰粒子を取り除くことで得られるためである。
つまり、本実施形態の波長変換層52では、基板51とは反対側の表面、つまり、光入射面において、結合部材21を介して他の蛍光体粒子20に結合されない蛍光体粒子が除去されていると換言できる。なお、本実施形態の波長変換装置50において、波長変換層52の基板51とは反対側の表面に、図示しない、例えばフッ化マグネシウムで構成された単層の反射防止コートが設けられている。すなわち、反射防止コートは、結合部材21から露出し周囲の空気層に接している最上層蛍光体粒子20Aの先端部分23に設けられている。これにより、蛍光体粒子20と空気層との境界において屈折率差に起因する光の反射を防止し、波長変換層52から射出される蛍光Yの光量を増大させることができる。
【0051】
本実施形態の波長変換層52において、複数の蛍光体粒子20は粒径のバラツキを考慮し、所定の粒径分布を有している。
【0052】
図4は本実施形態の蛍光体粒子20の粒径分布を示すグラフである。
図4において横軸は粒径を示し、縦軸は割合を示している。
図4に示すように、本実施形態の蛍光体粒子20の粒径分布は、40μmから200μmまでなだらかにばらついた分布を有している。つまり、本実施形態における複数の蛍光体粒子20の粒径分布は40μm以上200μm以下である。
【0053】
また、複数の蛍光体粒子20の粒径分布の中心値は、70μm以上150μm以下となっている。なお、粒径分布の中心値とは、複数の蛍光体粒子20の粒径分布のうち最も数が多い粒子の粒径をいう。粒径分布の中心値は、70μm以上120μm以下とすることが望ましく、70μm以上100μm以下とすることがより望ましい。本実施形態の場合、粒径分布の中心値は80μmである。
【0054】
複数の蛍光体粒子20の粒径分布は、波長変換層52に含まれる全ての蛍光体粒子20のうち95%以上の粒子で規定される。これは、波長変換層52に含まれる全ての蛍光体粒子20の粒径を制御することは非常に困難であるからである。つまり、本実施形態の蛍光体粒子20には粒径30μm等の小粒径粒子も含まれるが、その割合は5%よりも少なく影響も小さい。
【0055】
複数の蛍光体粒子20の粒径は40μm以上150μm以下とすることが望ましく、40μm以上100μm以下とすることがより望ましい。
【0056】
結合部材21は、複数の蛍光体粒子20同士、および、複数の蛍光体粒子20と基板51とを結合する。
結合部材21としては、例えば、シリコーン樹脂、或いは、シラザン化合物や低融点ガラスといった無機接着剤が用いられる。シラザン化合物は、励起光Eに対して変色が極端に少なく、信頼性に優れている。また、シラザン化合物の熱伝導率は、シリコーン樹脂の熱伝導率の10倍程度の1.4W/K・mであるため、蛍光体粒子20の熱を基板51側に効率良く伝えることが可能となる点でより好ましい。
【0057】
波長変換層52における厚さは、その厚さ方向において1~3個分の蛍光体粒子20を含むように設定される。このため、波長変換層52における厚さは、蛍光体粒子20の最小粒径40μm以上、蛍光体粒子20の最大粒径200μm以下となる。具体的に波長変換層52における厚さは、60μm以上150μm以下とするのが好ましく、より好ましい厚さは60μm以上100μm以下であり、70μm以上90μm以下とすることがさらに好ましい。なお、波長変換層52の厚さよりも粒径が大きい蛍光体粒子20は波長変換層52の厚さ方向において斜め方向に配列されることになる。
【0058】
波長変換層52の表面は、複数の蛍光体粒子20による凹凸を含む形状である。例えば、局所的に視た場合、波長変換層52の厚さは、最小粒径40μmの蛍光体粒子20を含む部位において局所的に厚さが40μmとなり、最大粒径200μmの蛍光体粒子20を含む部位において局所的に厚さが200μmとなる場合もある。
このため、本明細書において、波長変換層52の厚さは複数の蛍光体粒子20による凹凸を含む平均値で規定することにした。本実施形態の波長変換層52では、例えば、厚さを80μmとした。
【0059】
本発明者らは、結合部材21の厚さは蛍光Yの発光量に影響及ぼすとの知見を得た。
図5は結合部材の厚さと蛍光発光量の関係を示すグラフである。
図5のグラフにおいて、横軸は結合部材の厚さにおける波長変換層の全体に対する割合に相当し、縦軸は蛍光発光量に相当する。
【0060】
図5に示すように、結合部材21の厚さが波長変換層52の厚さの30%より小さいと蛍光Yの発光量が低下することが分かる。これは、結合部材21の厚みが小さくなりすぎることで複数の蛍光体粒子20を基板51に安定して接着できなくなったことで蛍光体粒子20の数が少なくなるからである。
通常、結合部材21の厚さとともに波長変換層52の厚さが増えることで蛍光の発光量が増えていくが、結合部材21の厚さが波長変換層52の厚さの60%を超えると、蛍光の取り出し光量が減少していく。これは、発光した蛍光Yが結合部材21の内部に閉じ込められる割合が増えて外部へ射出され難くなるためである。
【0061】
本実施形態の波長変換層52では、
図5のグラフに基づき、結合部材21の厚さを波長変換層52の厚さの30%以上80%以下に設定した。結合部材21の厚さは、波長変換層52の厚さの40%以上60%以下に設定することがより望ましい。
本実施形態の波長変換層52では、波長変換層52の厚さが80μmとした場合に結合部材21の厚さを40μmとした。
【0062】
続いて、波長変換層52の厚さにおける好ましい範囲を、気孔を有しないセラミックス蛍光体の測定実験の類推に基づいて説明する。
YAG:Ce蛍光体の励起光の吸収量、つまり、蛍光の発光量は、EXP(-λxt)に比例する。λは、吸収度を表わす係数であり、tは距離である。本実験によると、セラミックス蛍光体のCe濃度を0.3%~1%以下とした場合、セラミックス蛍光体の厚さが30μm以下では、Ceイオンの量が不十分であるために、励起光を蛍光に変換することが十分にできない。
また、セラミックス蛍光体の厚さが60μm以上の場合、蛍光体内部の蛍光の拡がりが大きくなるため、後段の光学系の光の取り込み効率が低下し蛍光の光利用効率が低下する。したがって、蛍光体の充填率がほぼ100%であるセラミックス蛍光体の場合、蛍光体の厚さを30μmから60μmとすることで、蛍光変換効率を高めるとともに蛍光の利用効率を高めることが可能となる。
【0063】
本実施形態の波長変換層52では、蛍光体粒子20の充填率を比較的低い値である40%以上50%、より望ましくは40%以上50%未満に設定した。この理由としては、蛍光体粒子20の粒径分布を後述のように40μm以上200μm以下に設定したことで30μm以下の小粒径の粒子が蛍光体粒子20としてほとんど含まれないことで、蛍光体粒子20間に微小な隙間が生じ易くなったからである。
【0064】
本実施形態の波長変換層52は、その厚さを、60μm(=30μm÷0.5)から150μm(60μm÷0.4)、つまり、60μm以上150μm以下に設定することで、蛍光変換効率を高めるとともに蛍光の利用効率を高めるようにした。
【0065】
続いて、蛍光体粒子20の粒径分布の範囲の根拠について説明する。
一般的にプロジェクターでは、液晶パネルを通過する光束とパネル面積との積と、蛍光体層で発光する光束と蛍光体層の発光面積との積と、を同じにすることで、エネルギーロスを最小にすることが可能となる。
【0066】
例えば、液晶パネルのサイズを対角25mmとした場合、パネル面積は、約20mm2となる。また、投射レンズをF2とすると、飲み込みの立体角は2xπx(1-cos(14°))となる。なお、F2の拡がり角度は、arctan(0.5/2)=14°と規定される。
【0067】
一方、蛍光体層の発光面積をSとすると、蛍光発光の立体角は、2xπx(1-cos(70°)となる。ここで、蛍光体層から発光された蛍光をピックアップレンズで飲み込み場合において、蛍光の発光角度が70度を超えると、ピックアップレンズの表面での反射量が増えて取り込み効率が低下するので、上記式においてピックアップレンズの飲み込み角度を上記式において70°とした。
【0068】
したがって、パネル側と蛍光体層側との間で面積および立体角の積が等しくなるように発光面積Sを設定すると、S=3.2mm2となる。このような発光面積Sを持つ蛍光体層は1.8mmx1.8mmに相当する。
【0069】
ここで、波長変換層が複数の蛍光体粒子を含む場合、励起光の照射面積よりも蛍光体粒子の1個分程度だけ蛍光の発光領域が拡がるにじみが発生する。このような蛍光のにじみが大きくなるほど、蛍光体層から発光された蛍光を後段の光学系が取り込むことができず、蛍光の光利用効率が低下することで光損失となる。
【0070】
例えば、1.8mm角の蛍光体層において発生するにじみ領域を上下左右方向で10%以下の大きさに抑えた場合、上述の光損失を30%以下に抑えることが可能となる。
つまり、1.8mm角の蛍光体層で発生する蛍光のにじみによる光損失を30%以下に抑えるためには、蛍光体粒子の粒径を180μm(=1.8mmx10%)以下とすればよいことになる。また、蛍光体粒子の粒径を150μmにすれば光損失を25%以下に抑えることができ、蛍光体粒子の粒径を120μm以下にすれば光損失を22%以下に抑えることができる。
【0071】
実際には、蛍光のにじみ成分の光強度は弱いため、蛍光体粒子の最大粒径を180μmとすることで光損失を十分に低減できる。一方、蛍光体粒子20の粒径が200μmよりも大きくなると波長変換層52の厚さを150μm以下に制御することが難しくなる。
このような考察に基づき、本実施形態の波長変換層52では、蛍光体粒子20の粒径分布の上限を200μmに設定するようにした。
【0072】
一方、蛍光体粒子の粒径が40μmより小さくなると、比表面積が大きくなることで、蛍光体粒子による蛍光の反射が増え、波長変換層の表面から取り出せる蛍光量が少なくなるからである。さらに、粒径の小さい蛍光体粒子を固定するためには、波長変換層全体までバインダー層の厚さを大きくする必要が生じる。バインダー層は空気層よりも屈折率が高いため、蛍光体粒子におけるバインダー層への埋め込み量が増えると、バインダー層と蛍光体粒子との界面での蛍光の反射が起こり、蛍光体粒子に蛍光が吸収されることで蛍光の取り出し効率が減少するためである。
したがって、蛍光体粒子の粒径が小さくなると、蛍光の取り出し効率が下がり、蛍光発光により波長変換層に生じた熱が基板まで届くまでに、多数の小粒径の蛍光体粒子とバインダー層との界面を通らなければならず、波長変換層の熱抵抗が大きくなることで、蛍光の発光量が少なくなってしまう。
【0073】
このような考察に基づき、本実施形態の波長変換層52では、蛍光体粒子20の粒径分布の下限を40μmに設定するようにした。上述のように複数の蛍光体粒子20の全ての粒径を制御することは難しく、下限値40μmよりも小径の粒子も多少含まれるが、下限値を設定することで40μmよりも小径の粒子の影響を無視できる程度まで小さくできる。
【0074】
例えば、30μmの蛍光体粒子の比表面積は40μmの蛍光体粒子の比表面積の1.3倍(=40÷30)となる。仮に40μmの蛍光体粒子の割合を6.5%以上、30μmの蛍光体粒子の割合を5%以下に抑えれば、30μm以下の小径粒子の影響を最小限に抑えることが可能となる。
【0075】
このように本実施形態の波長変換層52では、蛍光体粒子20の粒径分布の下限を40μmに設定することで、蛍光体粒子20の比表面積が大きくなることによる蛍光の反射による閉じ込めを抑制するとともにバインダー層に相当する結合部材21の厚さを抑えることで蛍光の取り出し効率を高め、結合部材21と蛍光体粒子20との界面の増加に伴う熱抵抗の増大を抑えることができる。
【0076】
波長変換層52において、蛍光体粒子20における励起光Eの吸収は光入射面からの距離が大きくなるにつれて指数関数的に小さくなる。このため、波長変換層52において、厚さ方向において複数の蛍光体粒子20が配置される場合、光入射面側に最も近い蛍光体粒子20における励起光Eの吸収が多くなる。つまり、波長変換層52では、最も光入射側に位置する蛍光体粒子20からの発光が大きくなる。
【0077】
このため、波長変換層52において、複数の蛍光体粒子20のうち最上層蛍光体粒子20Aが最も励起光Eの吸収量が多くなる。最上層蛍光体粒子20Aは、その先端部分23から蛍光Yを空気層中に発光する。一方、最上層蛍光体粒子20Aは、先端部分23よりも光入射側から離間する根元部分22における励起光Eの吸収量が先端部分23よりも少なく、かつ、結合部材21との接触面積も僅かであるため、根元部分22から結合部材21中に放出される蛍光量は少ない。
【0078】
また、最上層蛍光体粒子20Aよりも光入射側と反対側、つまり基板51側に位置する蛍光体粒子20は結合部材21に埋め込まれているが、最上層蛍光体粒子20Aに比べて励起光Eの吸収も少ないため、蛍光発光量が少なく、結果的に、結合部材21中に放出される蛍光量は少なくなる。
また、結合部材21中に放出される蛍光量が少なくなることで、結合部材21内に閉じ込められる蛍光Yが少なくなるので、結果的に蛍光Yの取り出し効率を高めることができる。
【0079】
このように本実施形態の波長変換層52では蛍光Yの取り出し効率を高めることで明るい蛍光Yを発光することができる。また、結合部材21内への蛍光の拡がりを抑えることで発光面積が小さくなるため、蛍光Yのエテンデューも小さくなる。このように蛍光Yのエテンデューが小さくなると、波長変換層52から射出された蛍光Yを含む照明光WLのエテンデューを小さくできる。
したがって、本実施形態の照明装置2は、照明光WLが入射する均一照明光学系80の光利用効率を高めることができる。
【0080】
また、本実施形態の波長変換層52において、最上層蛍光体粒子20Aでは蛍光Yの発光量が増えることで大きな熱が発生する。
本実施形態の波長変換層52において、上述のように複数の蛍光体粒子20のうち50%以上の蛍光体粒子20は互いに熱的に接続され、複数の蛍光体粒子20のうち一部の蛍光体粒子24は反射層54と熱的に接続されている。
【0081】
このため、最上層蛍光体粒子20Aの熱は熱的に接続される他の蛍光体粒子20へと伝わり、やがて他の蛍光体粒子20の熱は熱的に接続された蛍光体粒子24を介して反射層54に伝わり基板51から放出される。
なお、最上層蛍光体粒子20Aのいずれかが反射層54に熱的に接続されている場合もあり得る。この場合においては、最上層蛍光体粒子20Aの熱は粒子内部を通って反射層54に伝わり基板51から放出される。
本実施形態の波長変換層52は、放熱性に優れるため、高輝度の励起光Eを入射させることが可能となるため、より明るい蛍光Yを効率良く外部に取り出すことができる。
【0082】
続いて、本実施形態の波長変換装置50の製造方法について図面を参照しつつ説明する。
図6Aから
図6Eは波長変換装置50の製造工程を示す図である。
まず初めに、第1工程S1として、
図6Aに示すように、表面51aに反射層54を形成した基板51を用意し、基板51に設けられた反射層54上に結合部材21を形成するためのシリコーンからなる結合部材用塗膜210を塗布する。結合部材用塗膜210の厚さは例えば20μmとした。
【0083】
続いて、第2工程S2として、
図6Bに示すように、ガラス板G上に配置した枠状のスペーサー部材SP内に蛍光体粒子群200を配置する。具体的に波長変換層52の厚さに合わせて、蛍光体粒子群200の厚さが大体80μmとなるようにスペーサー部材SPの高さを設定した。
本実施形態では、蛍光体粒子群200として、粒径が40μm以上200μm以下の蛍光体粒子20を複数含む粒子群を予め用意した。なお、蛍光体粒子群200を準備する際の蛍光体粒子20における粒径の計測には、例えば、マイクロトラック社の計測器を用いた。
【0084】
その後、基板51上に形成した結合部材用塗膜210をガラス板G上のスペーサー部材SP内に上方から挿入し、ハンドプレスによって結合部材用塗膜210に蛍光体粒子群200を配置する。
なお、ハンドプレスの押圧力としては、人の手でできる範囲、例えば、約10Kgf/cm2とした。
【0085】
基板51およびガラス板Gの上下を反転し、ガラス板Gおよびスペーサー部材SPを基板51から分離した後、第3工程S3として、
図6Cに示すように、押圧部材60により蛍光体粒子群200を反射層54に向けて押圧する。
【0086】
本実施形態の場合、冷間等方加圧装置(CIP)を用いて蛍光体粒子群200を反射層54に向けて押圧した。本実施形態では、例えば、基板51、蛍光体粒子群200および結合部材用塗膜210を押圧部材60としてゴムのような変形抵抗の少ない成形モールドで覆った状態で液圧を加え、高圧力を均等にかけることで蛍光体粒子群200に含まれる複数の蛍光体粒子20を圧縮し、蛍光体粒子20の充填率を30%以上55%以下、より望ましくは40%以上50%未満に調整した。
【0087】
本実施形態の場合、例えば、冷間等方加圧装置では約5MPaの圧力をかけることで、複数の蛍光体粒子20のうち50%以上の蛍光体粒子は、互いに接触あるいは熱伝導可能な程度の1~2μm程度の隙間が設けられた状態、つまり、熱的に接続された状態となる。なお、より大きな圧力、例えば、10MPa以上50MPa以下の圧力をかけることで、熱蛍光体粒子20の熱的な接続をより一層高めることができる。
また、複数の蛍光体粒子20のうち基板51側に位置する蛍光体粒子20は基板51に設けられた反射層54に対して接触あるいは熱伝導可能な隙間が設けられた状態、つまり、熱的に接続された状態となる。
【0088】
このようにして結合部材用塗膜210は蛍光体粒子群200に含まれる各蛍光体粒子20間に隙間なく入り込む。なお、押圧後における結合部材用塗膜210の厚さは蛍光体粒子20の充填率により決まる。これは、充填率が低すぎると所望の発光特性が得られず、充填率が高すぎると小粒径の蛍光体粒子20の含有量が増えることで発光効率が低下するからである。
本実施形態の場合、上述のように蛍光体粒子20の充填率は30%以上55%以下、より望ましくは40%以上50%未満とされる。これにより、結合部材用塗膜210の厚さは、最初にガラス板Gに塗布された状態の厚さの2倍の40μmとなる。
【0089】
続けて、第4工程S4として、
図6Dに示すように、基板51および蛍光体粒子群200とともに結合部材用塗膜210を150℃で所定時間だけ焼成して結合部材21を形成する。このように複数の蛍光体粒子20が結合部材21を介して基板51上の反射層54に結合された波長変換層52を生成することができる。
【0090】
ここで、蛍光体粒子群200に含まれる一部の蛍光体粒子は結合部材21に結合されていない、あるいは、ほとんど結合されていない。具体的に波長変換層52の上面には、結合部材21と結合されない浮遊状態の余剰粒子25が残っている。このような余剰粒子25は容易に剥離して照明装置2内で異物となったり、蛍光発生時に発生した熱が溜まるおそれがある。
【0091】
本実施形態では、第5工程S5として、
図6Eに示すように、粘着テープTPを使って、基板51とは反対側の波長変換層52の表面において、蛍光体粒子群200のうち結合部材21を介して他の蛍光体粒子20に結合されていない余剰粒子25を除去する。その後、真空蒸着装置により上述した図示しない反射防止コートを波長変換層52の上面に形成する。このようにして本実施形態の波長変換装置50が製造される。
【0092】
本実施形態の波長変換装置50によれば、基板51と、基板51に設けられ、複数の蛍光体粒子20と、複数の蛍光体粒子20と基板51とを結合する結合部材21とを含む波長変換層52と、基板51と波長変換層52との間に配置され、波長変換層52から射出された光を反射する反射層54と、を備える。複数の蛍光体粒子20の粒径分布は40μm以上200μm以下である。粒径分布の中心値は70μm以上150μm以下である。複数の蛍光体粒子20のうち一部の蛍光体粒子24は反射層54と熱的に接続される。複数の蛍光体粒子20のうち50%以上の蛍光体粒子20は互いに熱的に接続される。結合部材21の厚さは波長変換層52の厚さの30%以上80%以下である。
【0093】
本実施形態の波長変換層52によれば、蛍光Yの取り出し効率を高めることで明るい蛍光Yを射出することができる。また、蛍光発光時の熱を蛍光体粒子24から反射層54を介して基板51へ逃がすことで波長変換層52の放熱性を高めることができる。このため、高輝度の励起光Eを波長変換層52に入射させることができるので、より明るい蛍光Yを効率良く外部に取り出すことができる。
【0094】
本実施形態の波長変換装置50の製造方法によれば、基板51と、基板51に設けられ、粒径が40μm以上200μm以下であり、かつ、粒径分布の中心値が70μm以上150μm以下である複数の蛍光体粒子20と基板51とが結合部材21により結合された波長変換層52と、基板51と波長変換層52との間に配置され、波長変換層52から射出された光を反射する反射層54と、を備え、結合部材21の厚さが波長変換層52の厚さの30%以上80%以下である波長変換装置50の製造方法であって、基板51に設けられた反射層54上に結合部材21を形成するための結合部材用塗膜210を塗布する第1工程S1と、結合部材用塗膜210に複数の蛍光体粒子20を含む蛍光体粒子群200を配置する第2工程S2と、押圧部材60により蛍光体粒子群200を反射層54に向けて押圧する第3工程S3と、基板51および蛍光体粒子群200とともに結合部材用塗膜210を焼成して結合部材21を形成する第4工程S4と、を備える。
【0095】
本実施形態の波長変換層52の製造方法によれば、波長変換層52で生成した蛍光Yの取り出し効率を高めることで明るい蛍光Yを射出し、蛍光発光時の熱を蛍光体粒子20から反射層54を介して基板51へ逃がすことで放熱性に優れた波長変換装置50を提供することができる。
【0096】
本実施形態の照明装置2は、励起光Eを射出する第1光源40と、励起光Eが入射する波長変換装置50と、を備える。
本実施形態の照明装置2によれば、明るい照明光WLを射出する照明装置を提供することができる。また、波長変換装置50から発光される蛍光Yのエテンデューが小さくなるため、蛍光Yを含む照明光WLが均一照明光学系80に効率良く取り込まれることで光利用効率を高めた照明装置2を提供できる。
【0097】
本実施形態のプロジェクター1は、照明装置2と、照明装置2から射出された光を変調する光変調装置4R,4G,4Bと、光変調装置4R,4G,4Bにより変調された光を投射する投射光学装置6と、を備える。
【0098】
本実施形態のプロジェクター1によれば、表示品質に優れ、高効率のプロジェクターを提供することができる。
【0099】
なお、本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
上記実施形態で示した波長変換装置、照明装置およびプロジェクターの各構成要素の形状、数、配置、材料、製造方法等の具体的な記載については、上記実施形態に限らず、適宜変更が可能である。
【0100】
以下、本開示のまとめを付記する。
(付記1)
基板と、
前記基板に設けられ、複数の蛍光体粒子と、前記複数の蛍光体粒子と前記基板とを結合する結合部材とを含む波長変換層と、
前記基板と前記波長変換層との間に配置され、前記波長変換層から射出された光を反射する反射層と、
を備え、
前記複数の蛍光体粒子の粒径分布は、40μm以上200μm以下であり、
前記粒径分布の中心値は、70μm以上150μm以下であり、
前記複数の蛍光体粒子のうち一部の蛍光体粒子は、前記反射層と熱的に接続され、
前記複数の蛍光体粒子のうち50%以上の蛍光体粒子は、互いに熱的に接続され、
前記結合部材の厚さは、前記波長変換層の厚さの30%以上80%以下である、
ことを特徴とする波長変換装置。
【0101】
この構成の波長変換装置によれば、波長変換層で生成した蛍光の取り出し効率を高めることで明るい蛍光を射出することができる。また、蛍光発光時の熱を蛍光体粒子から反射層を介して基板へ逃がすことで波長変換層の放熱性を高めることができる。このため、高輝度の励起光を波長変換層に入射させることができるので、より明るい蛍光を効率良く外部に取り出すことができる。
【0102】
(付記2)
前記波長変換層の前記基板とは反対側において、前記複数の蛍光体粒子のうち一部の蛍光体粒子が前記結合部材から露出している、
ことを特徴とする付記1に記載の波長変換装置。
【0103】
この構成によれば、結合部材から露出する蛍光体粒子から空気層中に蛍光を放出することで、結合部材中に放出される蛍光量を少なくできる。これにより、結合部材内に蛍光が閉じ込められないので、蛍光の取り出し効率を高めることができる。また、結合部材内への蛍光の拡がりを抑えることで蛍光の発光面積が小さくなるため、蛍光のエテンデューを小さくできる。よって、蛍光を後段の光学系に効率良く入射させることができる。
【0104】
(付記3)
前記波長変換層の厚さは、60μm以上150μm以下である、
ことを特徴とする付記1または付記2に記載の波長変換装置。
【0105】
この構成によれば、上述の粒形分布を有する蛍光体粒子と組み合わせることで、放熱性に優れ明るい蛍光を生成する波長変換装置を提供できる。
【0106】
(付記4)
前記基板とは反対側の前記波長変換層の表面において、前記結合部材を介して他の蛍光体粒子に結合されない蛍光体粒子が除去されている、
ことを特徴とする付記1から付記3のうちのいずれか一つに記載の波長変換装置。
【0107】
この構成によれば、他の蛍光体粒子に結合されない余剰粒子が除去されているため、余剰粒子による異物の発生や蛍光発生時の熱が溜まるといった不具合の発生を抑制することができる。
【0108】
(付記5)
基板と、前記基板に設けられ、粒径が40μm以上200μm以下であり、かつ、粒径分布の中心値が70μm以上150μm以下である複数の蛍光体粒子と前記基板とが結合部材により結合された波長変換層と、前記基板と前記波長変換層との間に配置され、前記波長変換層から射出された光を反射する反射層と、を備え、前記結合部材の厚さが前記波長変換層の厚さの30%以上80%以下である波長変換装置の製造方法であって、
前記基板に設けられた前記反射層上に前記結合部材を形成するための結合部材用塗膜を塗布する第1工程と、
前記結合部材用塗膜に前記複数の蛍光体粒子を含む蛍光体粒子群を配置する第2工程と、
押圧部材により前記蛍光体粒子群を前記反射層に向けて押圧する第3工程と、
前記基板および前記蛍光体粒子群とともに前記結合部材用塗膜を焼成して前記結合部材を形成する第4工程と、
を備える、
ことを特徴とする波長変換装置の製造方法。
【0109】
この構成の波長変換装置の製造方法によれば、波長変換層で生成した蛍光の取り出し効率を高めることで明るい蛍光を射出し、蛍光発光時の熱を蛍光体粒子から反射層を介して基板へ逃がすことで放熱性に優れた波長変換装置を提供することができる。
【0110】
(付記6)
前記基板とは反対側の前記波長変換層の表面において、前記蛍光体粒子群のうち前記結合部材を介して他の蛍光体粒子に結合されていない余剰粒子を除去する第5工程をさらに備える、
ことを特徴とする付記5に記載の波長変換装置の製造方法。
【0111】
この構成によれば、異物の発生や蛍光発生時の熱が溜まる原因となり得る余剰粒子を除去することができる。これにより、異物の発生や放熱性の低下といった不具合の発生を抑制できる。
【0112】
(付記7)
励起光を射出する光源と、
前記励起光が入射する、付記1から付記4のうちのいずれか一つに記載の波長変換装置と、を備える、
ことを特徴とする照明装置。
【0113】
この構成の照明装置によれば、明るい照明光を射出する照明装置を提供することができる。また、波長変換装置から発光される蛍光のエテンデューが小さくなるため、蛍光を含む照明光が後段の光学系に効率良く取り込まれることで光利用効率を高めた照明装置を提供できる。
【0114】
(付記8)
付記7に記載の照明装置と、
前記照明装置から射出された光を変調する光変調装置と、
前記光変調装置により変調された光を投射する投射光学装置と、を備える、
ことを特徴とするプロジェクター。
【0115】
この構成のプロジェクターによれば、表示品質に優れ、高効率のプロジェクターを提供できる。
【符号の説明】
【0116】
1…プロジェクター、2…照明装置、4B,4G,4R…光変調装置、6…投射光学装置、20,24…蛍光体粒子、21…結合部材、25…余剰粒子、40…第1光源、50…波長変換装置、51…基板、51a…表面、52…波長変換層、54…反射層、60…押圧部材、200…蛍光体粒子群、210…結合部材用塗膜、E…励起光、S1…第1工程、S2…第2工程、S3…第3工程、S4…第4工程、S5…第5工程、Y…蛍光。