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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024013210
(43)【公開日】2024-01-31
(54)【発明の名称】連結柱ユニットおよび建物の施工方法
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/58 20060101AFI20240124BHJP
   E04B 1/26 20060101ALI20240124BHJP
   E04B 1/30 20060101ALI20240124BHJP
【FI】
E04B1/58 507T
E04B1/26 G
E04B1/30 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023107286
(22)【出願日】2023-06-29
(31)【優先権主張番号】P 2022114979
(32)【優先日】2022-07-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】303046244
【氏名又は名称】旭化成ホームズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100189337
【弁理士】
【氏名又は名称】宮本 龍
(72)【発明者】
【氏名】菊地 訓
【テーマコード(参考)】
2E125
【Fターム(参考)】
2E125AA03
2E125AA13
2E125AA18
2E125AB12
2E125AC15
2E125AC23
2E125AG03
2E125AG12
2E125AG23
2E125AG41
2E125BB12
2E125BB22
2E125BC09
2E125BD01
2E125BE08
2E125BF01
2E125CA01
2E125CA79
(57)【要約】
【課題】現場における作業負荷を軽減できる連結柱ユニットおよび建物の施工方法を提供する。
【解決手段】水平方向に所定の間隔をあけて配置される2本(複数)の木造柱4と、2本の木造柱4を所定の間隔をあけた状態に連結する柱頭連結部材5および柱脚連結部材7と、2本の木造柱4それぞれの下端部に接合され、下方に設けられる鉄骨梁(構造材)と接合される柱脚部材6(柱接合材)、および2本の木造柱4それぞれの上端部に接合され、上方に設けられる鉄骨梁と接合される柱頭連結部材5と、を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平方向に所定の間隔をあけて配置される複数の木造柱と、
前記複数の木造柱を前記所定の間隔をあけた状態に連結する連結材と、
前記複数の木造柱それぞれの下端部に接合され、下方に設けられる構造材と接合される下側柱接合材、および、前記複数の木造柱それぞれの上端部に接合され、上方に設けられる構造材と接合される上側柱接合材のうちの少なくとも一方の柱接合材と、を有する連結柱ユニット。
【請求項2】
前記連結材は、水平方向に隣接する前記木造柱の前記柱接合材を前記所定の間隔をあけた状態に連結する請求項1に記載の連結柱ユニット。
【請求項3】
前記上側柱接合材を有する請求項1または2に記載の連結柱ユニット。
【請求項4】
前記下側柱接合材および前記上側柱接合材の両方を有する請求項1または2に記載の連結柱ユニット。
【請求項5】
前記連結材と前記上側柱接合材とは、一体に形成されている請求項1または2に記載の連結柱ユニット。
【請求項6】
前記連結材は、前記下側柱接合材に着脱可能である請求項2に記載の連結柱ユニット。
【請求項7】
前記連結材は、前記下側柱接合材と接合される鉛直面を有する請求項6に記載の連結柱ユニット。
【請求項8】
前記連結材は、1つの前記下側柱接合材に対して複数のボルトで固定されている請求項6または7に記載の連結柱ユニット。
【請求項9】
前記下側柱接合材は、下方に設けられる構造材に対する前記木造柱の設置高さを調整可能な設置高さ調整部を有する請求項1または2に記載の連結柱ユニット。
【請求項10】
前記柱接合材には、前記柱接合材と前記構造材とを固定する固定具が挿入される固定用孔部が形成される請求項1または2に記載の連結柱ユニット。
【請求項11】
前記下側柱接合材は、前記構造材の上方に間隔をあけて配置され、前記構造材との間隔に充填材が充填される請求項1または2に記載の連結柱ユニット。
【請求項12】
前記下側柱接合材は、
前記構造材との間隔に前記充填材を充填するための充填用孔部と、
前記構造材との間隔に充填された前記充填材の余剰分を流出させる流出用切欠き部と、を有する請求項11に記載の連結柱ユニット。
【請求項13】
前記下側柱接合材は、
前記木造柱の下端面に沿って設けられる下板部と、
前記下板部から下方に突出するスペーサと、を有し、
前記スペーサは、前記下板部からの突出寸法を調整可能であるとともに、前記構造材と接触すると、前記木造柱に作用する鉛直荷重を前記構造材に伝達可能である請求項11に記載の連結柱ユニット。
【請求項14】
前記連結材は、前記連結柱ユニットを吊り上げる揚重装置のフックを引っ掛け可能である請求項1または2に記載の連結柱ユニット。
【請求項15】
前記木造柱は、仮設部材を取り付け可能な仮設部材取付部を有する請求項1または2に記載の連結柱ユニット。
【請求項16】
請求項1に記載の連結柱ユニットを製作する連結柱ユニット製作工程と、
前記連結柱ユニットを前記構造材に接合する連結柱ユニット設置工程と、を有する建物の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、連結柱ユニットおよび建物の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
木造軸組工法などにおいて、木造の柱(木造柱)を土台や梁などの構造材と接合する際に、木造柱や構造材に仕口加工された継手部分を、直接または補強用の継手金物を介して連結することがある。このような場合、木造柱と構造材との抜け止めを図るため、古来の木製の込み栓に代わる金属製の連結ピンが柱と構造材との接合部に打ち込まれることがある(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3302343号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
建設現場において柱を施工する際には、1本ずつ木造柱を吊り上げて設置するため、複数の柱それぞれに対して位置合わせを行う必要があるとともに、複数の木造柱と構造材との接合部のそれぞれに対して連結ピンの打込みを行う必要があり、現場における作業負荷が大きいという問題がある。
【0005】
そこで、本発明は、現場における作業負荷を軽減できる連結柱ユニットおよび建物の施工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係る連結柱ユニットは、水平方向に所定の間隔をあけて配置される複数の木造柱と、前記複数の木造柱を前記所定の間隔をあけた状態に連結する連結材と、前記複数の木造柱それぞれの下端部に接合され、下方に設けられる構造材と接合される下側柱接合材、および、前記複数の木造柱それぞれの上端部に接合され、上方に設けられる構造材と接合される上側柱接合材のうちの少なくとも一方の柱接合材と、を有する。
【0007】
上記目的を達成するため、本発明に係る建物の施工方法は、連結柱ユニットを製作する連結柱ユニット製作工程と、前記連結柱ユニットを前記構造材に接合する連結柱ユニット設置工程と、を有する。
【0008】
連結柱ユニットは、複数の木造柱が所定の間隔をあけた状態に連結されている。このため、連結柱ユニットを工場や建物を建設する敷地内で予め製作してから建物に設置することにより、複数の木造柱を同時に揚重して建物に設置できる。また、複数の木造柱の間隔を設計に合わせた間隔とすることにより、木造柱の位置合わせが容易となる。
更に、木造柱の下端部および上端部の少なくとも一方には、構造材と接合される柱接合材が接合されている。このため、木造柱に接合された柱接合材を構造材に接合することによって、木造柱と構造材とを容易に接合できて建設現場における作業を軽減できるとともに、木造柱と構造材との接合部の精度が向上し、安定した品質を確保できる。
【0009】
また、本発明に係る連結柱ユニットでは、前記連結材は、水平方向に隣接する前記木造柱の前記柱接合材を前記所定の間隔をあけた状態に連結してもよい。
【0010】
このような構成とすることにより、柱接合材に連結材を取り付けることにより、柱接合材が接合された複数の木造柱を所定の間隔をあけた状態に容易に連結できる。また、柱接合材と連結材とを一体化すれば、複数の木造柱それぞれに柱接合材を取り付けることによって、これらの複数の木造柱を所定の間隔をあけた状態に容易に連結できる。
【0011】
また、本発明に係る連結柱ユニットでは、前記上側柱接合材を有していてもよい。
【0012】
このような構成とすることにより、連結柱ユニットの複数の木造柱それぞれの上端部を上方に設けられる構造材に容易にかつ確実に接合できる。
【0013】
また、本発明に係る連結柱ユニットでは、前記下側柱接合材および前記上側柱接合材の両方を有していてもよい。
【0014】
このような構成とすることにより、連結柱ユニットの複数の木造柱それぞれの上端部を上方に設けられる構造材に確実に接合でき、連結柱ユニットの複数の木造柱それぞれの下端部を下方に設けられる構造材に確実に接合できる。このため、連結柱ユニットの複数の木造柱を平行な状態に維持できる。
【0015】
また、本発明に係る連結柱ユニットでは、前記連結材と前記上側柱接合材とは、一体に形成されていても。
【0016】
このような構成とすることにより、上側柱接合材を複数の木造柱に接合すれば、連結材が取り付けられた状態となるため、複数の木造柱を所定の間隔をあけた状態に容易に連結できる。また、連結材と上側柱接合材とを連結したり取り外したりする作業が無いため、労力を軽減できる。
【0017】
また、本発明に係る連結柱ユニットでは、前記連結材は、前記下側柱接合材に着脱可能であってもよい。
【0018】
このような構成とすることにより、連結材が設けられる位置と内部造作材が施工される位置とが重なる場合でも、連結柱ユニットを建物に設置した後に連結材を取り外すことによって内部造作材を容易に施工できる。
【0019】
また、本発明に係る連結柱ユニットでは、前記連結材は、前記下側柱接合材と接合される鉛直面を有していてもよい。
【0020】
このような構成とすることにより、連結材を下側柱接合材に接合する際に、鉛直面を下側柱接合材に接触させた状態で行うことができるため、作業性を向上できる。
【0021】
また、本発明に係る連結柱ユニットでは、前記連結材は、1つの前記下側柱接合材に対して複数のボルトで固定されていてもよい。
【0022】
このような構成とすることにより、連結材の鉛直面の面内の変形を抑制できる。
【0023】
また、本発明に係る連結柱ユニットでは、前記下側柱接合材は、下方に設けられる構造材に対する前記木造柱の設置高さを調整可能な設置高さ調整部を有していてもよい。
【0024】
このような構成とすることにより、躯体施工誤差を吸収できる。また、連結柱ユニットを設置するスペースの上方に梁が設けられている場合でも、木造柱の設置高さ調整しながら梁の下方に連結柱ユニットを施工できる。これにより、施工順序の制限がなくなり、効率的な施工を行うことができる。
【0025】
また、本発明に係る連結柱ユニットでは、前記柱接合材には、前記柱接合材と前記構造材とを固定する固定具が挿入される固定用孔部が形成されていてもよい。
【0026】
このような構成とすることにより、柱接合材と構造材とを固定具で容易に接合できる。
連結柱ユニットを予め製作する際に固定用孔部を形成しておくことによって、連結柱ユニットを建物に設置した際の固定具の位置決めを容易に行うことができる。
【0027】
また、本発明に係る連結柱ユニットでは、前記木造柱の下端部に接合される前記柱接合材は、前記構造材の上方に間隔をあけて配置され、前記構造材との間隔に充填材が充填されてもよい。
【0028】
このような構成とすることにより、例えば、構造材が床スラブなどの場合に、構造材の施工誤差や構造材上面に不陸がある場合でも、柱接合材と構造材との間隔によって、これらの施工誤差や不陸を吸収できる。
【0029】
また、本発明に係る連結柱ユニットでは、前記木造柱の下端部に接合される前記柱接合材は、前記構造材との間隔に前記充填材を充填するための充填用孔部と、前記構造材との間隔に充填された前記充填材の余剰分を流出させる流出用切欠き部と、を有していてもよい。
【0030】
このような構成とすることにより、柱接合材と構造材との間隔に充填用孔部から充填材を容易に充填できる。流出用切欠き部から充填材の余剰分が流出することを確認することによって、柱接合材と構造材との間隔に充填材が充填されたかどうかを容易に確認できる。
【0031】
また、本発明に係る連結柱ユニットでは、前記木造柱の下端部に接合される前記柱接合材は、前記木造柱の下端面に沿って設けられる下板部と、前記下板部から下方に突出するスペーサと、を有し、前記スペーサは、前記下板部からの突出寸法を調整可能であるとともに、前記構造材と接触すると、前記木造柱に作用する鉛直荷重を前記構造材に伝達可能であってもよい。
【0032】
このような構成とすることにより、連結柱ユニットを構造材に接合する際に、下板部と構造材との間隔に充填材が充填されていない状態であっても、スペーサが構造材と接触することにより、連結柱ユニットの鉛直荷重が構造材に伝達し、連結柱ユニットを安定した状態に維持できる。また、スペーサの突出寸法が調整可能であることにより、スペーサを構造材に確実に接触させることができる。
【0033】
また、本発明に係る連結柱ユニットでは、前記連結材は、前記連結柱ユニットを吊り上げる揚重装置のフックを引っ掛け可能であってもよい。
【0034】
このような構成とすることにより、連結柱ユニットを楊重する際に、連結柱ユニットに揚重装置のフックを引っ掛けるための紐や金具を設ける必要が無く、作業を簡便化できる。また、連結ユニットを確実に楊重でき、作業の安全性を確保できる。
【0035】
また、本発明に係る連結柱ユニットでは、前記木造柱は、仮設部材を取り付け可能な仮設部材取付部を有していてもよい。
【0036】
このような構成とすることにより、連結柱ユニットを建物に設置する際に、例えば、仮設ステーを仮設部材取付部に取り付けることによって、仮設時であっても連結柱ユニットを安定した状態に維持できるとともに、仮設ステーによって連結柱ユニットの立ち状態を調整できる。また、例えば、連結柱ユニットを足場と連結するための仮設部材を仮設部材取付部に取り付けることによって、外装資材設置の際の安全を確保できる。
【発明の効果】
【0037】
本発明によれば、複数の木造柱を容易に施工できる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】連結柱ユニットの一例を示す斜視図である。
図2】連結柱ユニットが設けられる建物の斜視図である。
図3】連結柱ユニットの分解斜視図である。
図4図3のA部分の拡大図である。
図5】木造柱と柱脚部材との接合を示す斜視図である。
図6図1のB-B線断面図である。
図7】柱脚部材を下方から見た斜視図である。
図8】柱頭連結部材を下方から見た斜視図である。
図9図2のC部分を示す図である。
図10】連結柱ユニットと足場とを連結する仮設部材を示す側面図である。
図11】連結柱ユニットと床スラブとを連結する仮設ステーを示す側面図である。
図12】柱脚部材と床スラブとの間のグラウト材の充填を説明する平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、本発明の実施形態による連結柱ユニットおよび建物11の施工方法について、図1図12に基づいて説明する。
図1に示すように、本実施形態による連結柱ユニット1は、水平方向に間隔をあけて配置される2本の木造柱4を連結してユニット化したものである。木造柱4とは、木材の柱を示し、鉛直荷重を支持可能な構造材である。連結柱ユニット1は、予め工場や建物11が建設される敷地内で製作されてから、図2に示すように、建物11に設置される。本実施形態の建物11は、3階建てである。
【0040】
連結柱ユニット1は、階ごとに複数設けられる。建物11の2階および3階に設けられる連結柱ユニット1は、上下に配置される鉄骨梁2,2の間に配置され、上下の鉄骨梁2,2それぞれに接合される。上下の鉄骨梁2,2のうちの上側の鉄骨梁2は、連結柱ユニット1が設けられる階の天井の上に設けられる鉄骨梁を示し、下側の鉄骨梁2は、連結柱ユニット1が設けられる階の床の下に設けられる鉄骨梁を示す。
【0041】
本実施形態では、鉄骨梁2の上には、床スラブ3が載置されている。連結柱ユニット1は、床スラブ3の上に載置され、床スラブ3を介した状態で下側の鉄骨梁2に接合される。本実施形態では、建物11の2階および3階に設けられる連結柱ユニット1は、床スラブ3にも接合される。
建物11の1階に設けられる連結柱ユニット1は、基礎12と上側の鉄骨梁2との間に配置される。上下の鉄骨梁2,2、床スラブ3および基礎12は、本発明の「構造材」に相当する。
【0042】
本実施形態の連結柱ユニット1は、建物11の外周部に沿って複数設けられる。以下の連結柱ユニット1の説明では、建物11の外周に沿った水平方向を幅方向(図面の矢印Xの方向)と表記し、建物11の屋内と屋外を結ぶ水平方向を屋内外方向(図面の矢印Yの方向)と表記する。幅方向と屋内外方向とは、直交する。連結柱ユニット1の説明において、幅方向の中央に対して幅方向の両端がある側を幅方向の外側と表記し、幅方向の両端に対して幅方向の中央がある側を幅方向の内側と表記することがある。
【0043】
図1および図3に示すように、連結柱ユニット1は、幅方向に所定の間隔をあけて配置される2本の木造柱4と、2本の木造柱4の柱頭どうしを連結する柱頭連結部材5と、2本の木造柱4それぞれの柱脚に取り付けられた柱脚部材6と、柱脚部材6どうしを連結する柱脚連結部材7と、を有する。
柱脚部材6は、本発明の「柱接合材」、「下側柱接合材」に相当し、柱脚連結部材7は、本発明の「連結材」に相当する。
【0044】
2本の木造柱4は、断面形状が同じ矩形の角柱である。2本の木造柱4のうちの一方は、連結柱ユニット1の幅方向の一方側の端部に位置し、他方は、連結柱ユニット1の幅方向の他方側の端部に位置する。図2に示すように、連結柱ユニット1が幅方向に隣接して配置されると、隣接する連結柱ユニット1それぞれの互いに隣接する側の木造柱4がわずかな隙間をあけて近接する。後述するが、図2に示す連結柱ユニット1は、柱脚連結部材7が取り外された状態である。
【0045】
図4図6に示すように、木造柱4の外周における4つの角部それぞれの下端部分には、それぞれの角部が隅切りされた隅切り部41が形成されている。図6では柱脚連結部材7を省略している。
図1および図2に示すように、木造柱4の高さ方向の中間部には、屋内外方向に貫通する貫通孔42が形成される。貫通孔の内部には、仮設部材取付部421が設けられる。仮設部材取付部421は、仮設部材を取り付け可能な金具などを備える。仮設部材取付部421については後述する。
【0046】
図4および図5に示すように、柱脚部材6は、柱脚挿入板部61と、下板部62と、を有する。
下板部62は、平板状であり、板面が木造柱4の下端面よりも大きい矩形状である。下板部62は、板面が水平面となる姿勢で木造柱4の下端面の下に重なる。
図6に示すように、下板部62の幅方向の外側の縁部62aは、木造柱4の幅方向の外側の面4aと重なる。下板部62の幅方向の内側の縁部62bは、木造柱4の幅方向の内側の面4bよりも幅方向の内側に突出する。下板部62の屋外側の縁部62cは、木造柱4の屋外側の面42cと重なる。下板部62の屋内側の縁部62dは、木造柱4の屋内側の面4dよりも屋内側に突出する。下板部62は、幅方向の内側に位置する2つの角部および幅方向の外側かつ屋内側に位置する角部の3つの角部が4と重ならずに露出している。
【0047】
図4および図5に示すように、柱脚挿入板部61は、平板状であり、板面が屋内外方向を向く姿勢で下板部62の上面から上方に突出する。柱脚挿入板部61の板面は、鉛直面である。柱脚挿入板部61は、木造柱4の柱脚に設けられた柱脚溝部45に挿入される。柱脚溝部45は、下方に開口する溝部であり、幅方向に延びる。柱脚溝部45に挿入された柱脚挿入板部61は、ドリフトピン631によって木造柱4に固定される。柱脚挿入板部61には、ドリフトピン631が挿通される接合孔部613が形成されている。
柱脚挿入板部61の幅方向の長さ寸法は、木造柱4の幅方向の長さ寸法よりも大きい。
柱脚挿入板部61の幅方向の外側の縁部61aは、木造柱4の幅方向の外側の面4aよりもやや内側に配置される。柱脚挿入板部61の幅方向の内側の縁部61bは、木造柱4の幅方向の内側の面4bよりも幅方向の内側に突出する。柱脚挿入板部61の上下方向の長さ寸法は、柱脚溝部45の深さと同じである。柱脚溝部45に挿入された柱脚挿入板部61は、木造柱4の下端面から突出しない。図1に示すように、柱脚挿入板部61における木造柱4から幅方向の内側に突出する突出部分611には、柱脚連結部材7を連結するボルトを挿入するための連結孔部612が形成される。
【0048】
図7に示すように、下板部62には、屋外側の2つの角部62e,62fおよび屋内側かつ幅方向の内側の1つの角部62gの3つの角部それぞれの近傍箇所、平面視における中央部となる箇所の4か所それぞれに上下方向に貫通するネジ孔621が形成されている。これらのネジ孔621それぞれには、スペーサ622が接合される。スペーサ622は、例えばネジ孔621に下側からねじ込まれるボルトである。スペーサ622は、下板部62から下方に突出する。スペーサ622は、下板部62からの突出寸法を調整可能である。
スペーサ622は、先端部(下端部)が床スラブ3の上面と接触する。これにより、下板部62の下面と、床スラブ3の上面との間に間隔が形成される。この下板部62の下面と床スラブ3の上面との間隔には、グラウト材81が充填される。
【0049】
スペーサ622は、下板部62からの突出寸法を調整することによって床スラブ3の上面に対する下板部62の高さを調整可能である。すなわち、スペーサ622は、下板部62からの突出寸法を調整することによって下板部62が取り付けられる木造柱4の設置高さを調整可能である。スペーサ622は、本発明の「設置高さ調整部」に相当する。スペーサ622は、連結柱ユニット1が床スラブ3の上面に設置される前、および床スラブ3の上面に設置された後の両方において下板部62からの突出寸法を調整可能である。
【0050】
図6に示すように、下板部62には、幅方向の内側の部分で木造柱4の幅方向の内側の面4bから幅方向の内側に突出する部分に、上下方向に貫通する3つの孔部623-625が屋内外方向に間隔をあけて形成されている。3つの孔部623-625のうち、屋外側の2つの孔部623,624を固定用孔部623,624と表記し、屋内側の1つの孔部625を充填用孔部625と表記する。
2つの固定用孔部623,624は、屋外側の固定用孔部623が柱脚挿入板部61よりも屋外側に配置され、屋内側の固定用孔部624が柱脚挿入板部61よりも屋内側に配置される。
【0051】
2つの固定用孔部623,624は、下板部62と下側の鉄骨梁2とを接合するためのボルト(固定具)が挿入される。
充填用孔部625は、下板部62と床スラブ3との間隔にグラウト材81を充填するための孔部である。グラウト材81は、本発明の「充填材」に相当する。充填用孔部625は、下板部62における屋内側かつ幅方向の内側の角部62fの近傍に設けられる。
【0052】
下板部62には、屋外側の2つの角部62g,62hおよび屋内側かつ幅方向の外側の角部62eの3つの角部が隅切りされている。下板部62における角部が隅切りされて切り欠かれている部分を流出用切欠き部626と表記する。
3つの流出用切欠き部626のうち、下板部62の屋外側かつ幅方向の外側の角部62hに位置する流出用切欠き部626は、木造柱4の下端部分に形成された隅切り部41の下方に重なる。下板部62と床スラブ3との間隔へグラウト材81を充填する方法ついては後述する。
【0053】
図1および図3に戻り、柱脚連結部材7は、長尺の鋼材であり、幅方向に延びる。柱脚連結部材7は、断面形状が屋外側に開口するC字形である。柱脚連結部材7は、鉛直板部7aと、下板部7bと、上板部7cと、を有する。鉛直板部7aは、長尺の平板であり、幅方向に延び、板面が鉛直面となる向きに配置される。下板部7bは、鉛直板部7aの下縁部から屋外側に水平に突出している。上板部7cは、鉛直板部7aの上縁部から屋外側に水平に突出している。柱脚連結部材7の幅方向の一方側の端部は、幅方向の一方側の木造柱4に取り付けられた柱脚部材6の柱脚挿入板部61の突出部分611と複数のボルト7e(図3参照)で着脱可能に接合される。柱脚連結部材7の幅方向の他方側の端部は、幅方向の他方側の木造柱4に取り付けられた柱脚部材6の柱脚挿入板部61の突出部分611と複数のボルト7eで着脱可能に接合される。柱脚連結部材7は、柱脚挿入板部61、すなわち、柱脚部材6に着脱可能である。図1に示すように、連結柱ユニット1が建物11に設置された後に、柱脚連結部材7を柱脚部材6から取り外すことができる。
柱脚連結部材7は、柱脚部材6の柱脚挿入板部61の突出部分611に対して屋外側から接合される。柱脚連結部材7の鉛直板部7aの屋内側の面7dが突出部分611の屋外側の面611aと接触する。柱脚連結部材7の鉛直板部7aの屋内側の面7dは、本発明の「鉛直面」に相当する。
【0054】
図1図3図8に示すように、柱頭連結部材5は、幅方向に延びる長尺の鋼材である。柱頭連結部材5は、柱頭接合部51と、柱頭連結部52と、を有する。柱頭接合部51および柱頭連結部52は、本発明の「柱接合材」および「上側柱接合材」に相当し、柱頭連結部52は、本発明の「連結材」に相当する。柱頭接合部51は、2本の木造柱4それぞれの上端部に接合される。柱頭接合部51は、1つの柱頭連結部材5に2つ設けられる。柱頭連結部52は、2つの柱頭接合部51を連結する。2つの柱頭接合部51と柱頭連結部52とは、一体に設けられている。すなわち、「柱接合材」と「上側柱接合材」とは、一体に設けられている。
【0055】
柱頭接合部51は、柱頭挿入板部511と、上板部512と、を有する。
上板部512は、平板状であり、板面が木造柱4の上端面と略同じ形状である。上板部512は、板面が水平面となる姿勢で木造柱4の上端面の上に重なる。
【0056】
柱頭挿入板部511は、平板状であり、板面が屋内外方向を向く姿勢で上板部512の下面から下方に突出する。柱頭挿入板部511は、木造柱4の柱頭に設けられた柱頭溝部44に挿入される。柱頭溝部44は、上方に開口する溝部であり、幅方向に延びる。柱頭溝部44に挿入された柱頭挿入板部511は、ドリフトピン521によって木造柱4に固定される。柱頭挿入板部511には、ドリフトピン521が挿通される接合孔部513(図8参照)が形成されている。
柱頭挿入板部511の幅方向の長さ寸法は、木造柱4の幅方向の長さ寸法よりもやや小さい。柱頭挿入板部511の上下方向の長さ寸法は、柱頭溝部44の深さと略同じである。柱頭溝部44に挿入された柱頭挿入板部511は、木造柱4の側面および上端面から突出しない。
【0057】
柱頭連結部52は、長尺の平板状である。柱頭連結部52は、板面が水平面となる姿勢で一方の端部が一方の柱頭接合部51の上板部512と接合され、他方の端部が他方の柱頭接合部51の上板部512と接合される。柱頭連結部52は、2本の木造柱4の間の上方に配置される。柱頭連結部52の上には、上側の鉄骨梁2(図2参照)が配置される。
柱頭連結部52は、鉄骨梁2と接合される。図8に示すように、柱頭連結部52には、柱頭連結部52と鉄骨梁2を接合するボルト522(図9参照)が挿通されるボルト孔523が幅方向および屋内外方向に間隔をあけて複数形成されている。
【0058】
連結柱ユニット1が設けられる建物11の施工方法について説明する。
まず、工場や建設を行う敷地内で、連結柱ユニット1を製作する連結柱ユニット製作工程を行う。連結柱ユニット製作工程では、2本の木造柱4の柱頭に柱頭連結部材5を接合するとともに、2本の木造柱4の柱脚に柱脚部材6と接合して2本の木造柱4それぞれの柱脚部材6に柱脚連結部材7を固定する。このようにして、四方枠状に枠組みされた連結柱ユニット1を製作する。
【0059】
製作された連結柱ユニット1を建物11に設置する連結柱ユニット設置工程を行う。
まず、連結柱ユニット1をクレーンなどの揚重装置で楊重し、建物11の設置階に設置する。本実施形態による連結柱ユニット1は、柱頭連結部材5に揚重装置のフック引っ掛けて揚重を行う。
連結柱ユニット1を建物の外周部において床スラブ3の上に設置する。連結柱ユニット1を、床スラブ3を介して下側の鉄骨梁2の鉛直方向上側となる位置に設置する。
連結柱ユニット1を床スラブ3の上に設置する際には、柱脚部材6のスペーサ622の下端部を床スラブ3の上面と接触させる。スペーサ622の下端部が床スラブ3の上面と接触しない場合は、スペーサ622の下板部62からの突出寸法を調整する。このようにして柱脚部材6の下板部62と床スラブ3の上面との間に間隔を形成する。
【0060】
図10に示すように、仮設ステー16の一端を木造柱4に設けられた仮設部材取付部421に取り付け、他端を床スラブ3に取り付ける。これにより、仮設時であっても連結柱ユニットを安定した状態に維持できるとともに、仮設ステー16を移動させながら連結柱ユニット1が鉛直となるように立ち状態を調整できる。
図11に示すように、連結柱ユニット1と足場15と連結する仮設部材151の一端を木造柱4に設けられた仮設部材取付部421に取り付け、他端を足場15に取り付ける。
これにより、外装資材設置の際の安全を確保できる。
【0061】
図9に示すように、連結柱ユニット1の柱脚部材6の下板部62の固定用孔部623,624に木造柱側ボルト75を挿入し、下側の鉄骨梁2に接合された高ナット74と締結する。以下の説明では、連結柱ユニット1は、図9において鉄骨梁2よりも上側に示されている連結柱ユニット1を示す。
下板部62の2つの固定用孔部623,624を、それぞれ下方の鉄骨梁2に接合された高ナット74の鉛直方向上側に配置する。高ナット74は、鉄骨梁2の上フランジ71に接合されている。高ナット74は、鉄骨梁2の上フランジ71に形成された孔部72に下方から挿通された鉄骨梁側ボルト73が締結され、鉄骨梁2に接合されている。2つの高ナット74は、床スラブ3に形成された孔部31に配置されている。孔部31は、上下方向から見た平面視形状が屋内外方向に延びる長孔である。本実施形態では、2つの高ナット74が1つの長孔(孔部31)に配置されているが、2つの高ナット74がそれぞれ1つずつ孔部に配置されてもよい。この場合、孔部は、例えば丸孔など、長孔以外であってもよい。高ナット74に木造柱側ボルト75を締結したら、孔部31の内周面と高ナット74との間には、グラウト材82を充填する。
このようにして、連結柱ユニット1を下側の鉄骨梁2と接合する。
【0062】
続いて、連結柱ユニット1と上側の鉄骨梁2とを接合する。以下の説明では、連結柱ユニット1は、図9において鉄骨梁2よりも下側に示されている連結柱ユニット1を示す。
連結柱ユニット1の上に鉄骨梁2を設置し、連結柱ユニット1の柱頭連結部材5の柱頭連結部52と上側の鉄骨梁2の下フランジ21とをボルト522で接合する。
このようにして、連結柱ユニット1を下側の鉄骨梁2と接合する。
【0063】
続いて、柱脚部材6の下板部62と床スラブ3の上面との間にグラウト材81が充填する。
図12に示すように、柱脚部材6の下板部62と床スラブ3との間隔を外周から囲むように、下板部62の縁部に沿った型枠83を設置する。型枠83は、下板部62の流出用切欠き部626には沿わずに、流出用切欠き部626の斜めの部分の外側において角部を形成する。このため、流出用切欠き部626の斜めの部分と型枠83の角部831との間に隙間832が形成される。
【0064】
この状態で充填用孔部625から下板部62と床スラブ3との間にグラウト材81を注入すると、グラウト材81が下板部62と床スラブ3との間で広がり、下板部62と床スラブ3との間にグラウト材81が充填される。グラウト材81が下板部62の流出用切欠き部626まで到達すると、流出用切欠き部626の斜めの部分と型枠83の角部831との間の隙間832から上方に流出する。流出用切欠き部626は、充填用孔部625と離れた位置に設けられるため、3つの流出用切欠き部626と型枠83との隙間832からグラウト材81が流出したことを確認できれば、グラウト材81が下板部62と床スラブ3との間に充填されたと確認できる。
グラウト材81が硬化したら型枠83を撤去する。
【0065】
連結柱ユニット1が上下の鉄骨梁2に接合されたら、必要に応じて連結柱ユニット1と足場15と連結する仮設部材151および仮設ステー16を撤去する。
また、必要に応じて、柱脚連結部材7を柱脚部材6から外して撤去する。
【0066】
次に、上述した本発明の実施形態による連結柱ユニット1および建物11の施工方法の作用・効果について説明する。
連結柱ユニット1は、2本の木造柱4が幅方向に間隔をあけた状態に連結されている。
このため、連結柱ユニット1を工場や建物11を建設する敷地内で予め製作してから建物11に設置することにより、2本の木造柱4を同時に設置できる。また、2本の木造柱4の間隔を設計に合わせた間隔とすることにより、木造柱4の位置合わせが容易となる。
更に、木造柱4の下端部に柱脚部材6が接合され、木造柱4の上端部に柱頭連結部材5が接合されていることにより、柱脚部材6を下側の鉄骨梁2に接合し、柱頭連結部材5を上側の鉄骨梁2に接合すれば、木造柱4と上下の鉄骨梁2とを容易に接合できて建設現場における作業を軽減できるとともに、木造柱4と鉄骨梁2との接合部の精度が向上し、安定した品質を確保できる。特に、本実施形態では、柱脚部材6および柱頭連結部材5を木造柱4に接合するためのドリフトピン521,531の打込みを現場で行う必要がないため、建設現場における作業を軽減できる。
【0067】
連結柱ユニット1の柱脚連結部材7は、2本の木造柱4の柱脚部材6どうしを連結している。これにより、柱脚部材6に柱脚連結部材7を取り付けることにより、2本の木造柱4を所定の間隔をあけた状態に容易に連結できる。また、柱頭連結部材5のように、柱頭接合部51と柱頭連結部52とを一体化すれば、2の木造柱4それぞれに柱頭接合部51を取り付けることで、柱頭連結部52によって2本の木造柱4が連結されるため、連結柱ユニット1を容易に製作できる。
【0068】
連結柱ユニット1の柱脚連結部材7は、2本の木造柱4の柱脚部材6に着脱可能である。これにより、柱脚連結部材7が設けられる位置と内部造作材が施工される位置とが重なる場合でも、連結柱ユニット1を建物11に設置した後に柱脚連結部材7を取り外すことによって内部造作材を容易に施工できる。
【0069】
連結柱ユニット1の柱脚部材6および柱頭連結部材5の柱頭接合部51には、鉄骨梁2と固定するための木造柱側ボルト75が挿入される固定用孔部623,624が形成されている。これにより、柱脚部材6および柱頭連結部材5を鉄骨梁2に容易に接合できる。
また、連結柱ユニット1を製作する際に固定用孔部623,624を形成しておくことによって、連結柱ユニット1を建物11に設置した際の木造柱側ボルト75の位置決めを容易に行うことができる。
【0070】
連結柱ユニット1の柱脚部材6は、床スラブ3の上方に間隔をあけて配置され、床スラブ3との間にグラウト材が充填されている。このような構成とすることにより、床スラブ3の施工誤差や床スラブ3の上面に不陸がある場合でも、柱脚部材6と床スラブ3との隙間によって、これらの施工誤差や不陸を吸収できる。
【0071】
連結柱ユニット1の柱脚部材6は、床スラブ3との間にグラウト材を充填するための充填用孔部625と、床スラブ3との間に充填されたグラウト材の余剰分を流出させる流出用切欠き部626と、を有する。これにより、柱脚部材6と床スラブ3との間にグラウト材を容易に充填できるとともに、グラウト材が確実に充填されたかどうかを容易に確認できる。
【0072】
連結柱ユニット1の柱脚部材6は、下板部62と、下板部62から下方に突出する複数のスペーサ622と、を有し、スペーサ622は、下板部62からの突出寸法を調整可能であるとともに、床スラブ3と接触すると、木造柱4に作用する鉛直荷重を床スラブ3に伝達可能である。
このような構成とすることにより、連結柱ユニット1を上下の鉄骨梁2に接合する際に、下板部62と床スラブ3との間にグラウト材が充填されていない状態であっても、スペーサ622が床スラブ3と接触することにより、連結柱ユニット1を安定した状態に維持できる。また、スペーサ622の突出寸法を調整可能であるため、スペーサ622を床スラブ3に確実に接触させることができる。
【0073】
連結柱ユニット1の柱頭連結部材5は、連結柱ユニット1を吊り上げる揚重装置のフックを引っ掛け可能である。これにより、連結柱ユニット1を楊重する際に、連結柱ユニット1に揚重装置のフックを引っ掛けるための紐や金具を設ける必要が無く、作業を簡便化できる。
【0074】
連結柱ユニット1の木造柱4は、仮設部材を取り付け可能な仮設部材取付部421を有する。これにより、例えば、仮設ステー16を仮設部材取付部421に取り付けることによって、仮設時であっても連結柱ユニット1を安定した状態に維持できるとともに、仮設ステー16によって連結柱ユニット1の立ち状態を調整できる。また、例えば、連結柱ユニット1を足場と連結するための仮設部材151を仮設部材取付部421に取り付けることによって、外装資材設置の際の安全を確保できる。
【0075】
以上、本発明による連結柱ユニットおよび建物の施工方法の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、上記の実施形態では、連結柱ユニット1は、2本の木造柱4が連結されているが、3本以上の木造柱4が連結されていてもよい。
上記の実施形態では、連結柱ユニット1は、2本の木造柱4の下端部どうしが柱脚部材6および柱脚連結部材7によって連結され、上端部どうしが柱頭連結部材5によって連結されている。本発明による連結柱ユニットは、複数の木造柱4それぞれの下端部および上端部のいずれかが連結されていてもよい。
連結柱ユニットは、連結材によって複数の木造柱4が連結され、複数の木造柱4の下端部および上端部の少なくとも一方が、柱接合材によって下方または上方に設けられた構造材と接合されていればよい。すなわち、連結柱ユニットは、複数の木造柱の下端部に設けられた下側柱接合材によって下方の構造材と接合されている形態、および複数の木造柱の上端部に設けられた上側柱接合材によって上方の構造材と接合されている形態の少なくとも一方の形態を有していればよい。
上記の実施形態では、連結柱ユニット1は、建物11の外周部に沿って設けられているが、建物11の外周部よりも内側に設けられていてもよい。
上記の実施形態では、連結柱ユニット1は、上下の鉄骨梁2や床スラブ3に接合されているが、鉄骨梁以外の構造材に固定されてもよい。例えば、木造梁や土台などに接合されてもよい。
【0076】
上記の実施形態では、2本の木造柱4それぞれの下端部には柱脚部材6が取り付けられ、柱脚連結部材7は、2本の木造柱4それぞれの柱脚部材6どうしを連結している。これに対し、2本の木造柱4それぞれの下端部どうしを連結する柱脚連結部材7は、2本の木造柱4それぞれに直接取り付けられていてもよい。このような場合、柱脚連結部材7には、木造柱4と接合される鉛直面が設けられていてもよい。例えば、柱脚連結部材7の端部が折り曲げられており、折り曲げられた部分に木造柱4の側面と面接触する鉛直面が形成されていてもよい。
上記の実施形態では、柱脚連結部材7は、2本の木造柱4それぞれの柱脚部材6に着脱可能であるが、柱脚部材6と一体化していて、柱脚部材6から取り外せないように構成されていてもよい。
上記の実施形態では、柱脚連結部材7と柱脚部材6とは、柱脚連結部材7の鉛直板部7aの屋内側の面7dが突出部分611の屋外側の面611aと接触した状態で、複数のボルト7eで接合されている。柱脚連結部材7と柱脚部材6とは、鉛直面どうしが接触していなくてもよいし、ボルト接合以外の接合によって着脱可能に接合されていてもよい。柱脚連結部材7の断面形状は、上記のC字形以外であってもよい。また、柱脚連結部材7の端部が折り曲げられており、折り曲げられた部分に柱脚部材6と面接触する鉛直面が形成されていてもよい。
上記の実施形態では、柱脚連結部材7が突出部分611の屋外側に配置されているが、柱脚連結部材7が突出部分611の屋内側に配置されていてもよい。
【0077】
上記の実施形態では、2本の木造柱4それぞれの上端部には、柱頭接合部51と柱頭連結部52とが一体化した柱頭連結部材5が取り付けられている。柱頭接合部51と柱頭連結部52とは、別部材であってもよいし、柱頭連結部52が柱頭接合部51に着脱可能な構成であってもよい。2本の木造柱4を連結する柱頭連結部52は、2本の木造柱4それぞれに直接接合されていてもよい。
【0078】
上記の実施形態では、連結柱ユニット1の柱脚部材6および柱頭連結部材5の柱頭接合部51には、鉄骨梁2と固定するための固定具が挿入される固定用孔部623,624が形成されているが、固定用孔部623,624が形成されていなくてもよい。柱脚部材6および柱頭連結部材5の柱頭接合部51と建物の構造材との接合は、ボルト接合や、ボルトおよび高ナットを用いた接合以外であってもよい。
【0079】
上記の実施形態では、連結柱ユニット1の柱脚部材6の下板部62と床スラブ3との間にグラウト材が充填されているが、柱脚部材6の下板部62が床スラブ3や鉄骨梁2などの下側構造材に直接接触していてもよい。これにより、柱脚部材6には、グラウト材を充填するための充填用孔部625、および充填されたグラウト材の余剰分を流出させる流出用切欠き部626が設けられていなくてもよい。柱脚部材6には、下板部62から下方に突出して下側構造材と接触する複数のスペーサ622が設けられていなくてもよい。また、スペーサ622は、下板部62からの突出寸法を調整できなくてもよい。すなわち、連結柱ユニット1には、木造柱4の設置高さを調整可能な設置高さ調整部が設けられていなくてもよい。
【0080】
上記の実施形態では、柱頭連結部材5は、連結柱ユニット1を吊り上げる揚重装置のフックを引っ掛け可能に構成されているが、このように構成されていなくてもよい。
【0081】
上記の実施形態では、木造柱4には仮設部材を取り付け可能な仮設部材取付部421が設けられているが、仮設部材取付部421が設けられていなくてもよい。また、仮設部材取付部421の形態は、上記以外であってもよい。
【符号の説明】
【0082】
1 連結柱ユニット
2 鉄骨梁
2 鉄骨梁
3 床スラブ
4 木造柱
5 柱頭連結部材(柱接合材、上側柱接合材、連結材)
6 柱脚部材(柱接合材、下側柱接合材)
7 柱脚連結部材(連結材)
7a 鉛直板部
7d 屋内側の面(鉛直面)
11 建物
12 基礎
16 仮設ステー(仮設部材)
51 柱頭接合部(柱接合材、上側柱接合材)
52 柱頭連結部(柱接合材、下側柱接合材、連結材)
81 グラウト材
83 型枠
151 仮設部材
421 仮設部材取付部
622 スペーサ(設置高さ調整部)
623,624 固定用孔部
625 充填用孔部
626 流出用切欠き部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12