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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024132108
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】建設機械の表示装置
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/26 20060101AFI20240920BHJP
   B60R 11/02 20060101ALI20240920BHJP
   G09G 5/00 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
E02F9/26 C
B60R11/02 C
G09G5/00 510V
G09G5/00 550D
G09G5/00 510Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023042768
(22)【出願日】2023-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】000004617
【氏名又は名称】日本車輌製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100128358
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 良彦
(74)【代理人】
【識別番号】100086210
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 一彦
(72)【発明者】
【氏名】田中 重希
【テーマコード(参考)】
2D015
3D020
5C182
【Fターム(参考)】
2D015HA03
3D020BA04
3D020BB07
3D020BC02
3D020BC03
3D020BD05
5C182AB08
5C182AB25
5C182BA06
5C182BA65
5C182BB03
5C182DA62
5C182DA63
(57)【要約】
【課題】使用上の負担が少なく、ユーザ相互間での施工の情報共有を円滑に行うことが可能な建設機械の表示装置を提供する。
【解決手段】作業者側表示部28を構成する携帯情報端末29は、施工管理装置21からの出力を表示画面30に表示させるための施工状態表示アプリと、これをOS上で実行させる制御部41と、クレードル34を介して建設機械から電力供給を受ける充電用の受電部42と、携帯情報端末がクレードルに載置されているか否かを検知する載置検知部43とを備え、制御部は、OSを起動していない状態で、受電部により建設機械からの電力を受電した場合には、OSを起動したうえで施工状態表示アプリを実行し、施工状態表示アプリを実行している状態で、携帯情報端末がクレードルに載置されており、かつ、受電部により建設機械からの電力を受電していない場合には、施工状態表示アプリを終了したうえでOSを終了する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
施工管理装置を備えた建設機械に設置され、運転操作を行う運転者に向けて前記施工管理装置からの出力を表示する運転者側表示部と、該運転者側表示部と同じ前記建設機械に設置され、前記建設機械の周囲で作業に従事する作業者に向けて前記運転者側表示部の表示と同じ表示を行う作業者側表示部とを備えている表示装置において、
前記作業者側表示部は、前記建設機械の電源線と接続されたクレードルと、該クレードルに着脱自在に載置された携帯情報端末とを有し、
前記携帯情報端末は、前記施工管理装置との無線通信接続を行い該施工管理装置からの出力を表示画面に表示させるための施工状態表示アプリケーションと、オペレーティングシステム上で前記施工状態表示アプリケーションを実行させる制御部と、前記クレードルを介して前記建設機械から電力供給を受ける充電用の受電部と、前記携帯情報端末が前記クレードルに載置されているか否かを検知する載置検知部とを備え、
前記電源線は、前記受電部への通電状態と非通電状態とに切り替えることが可能な電源スイッチが設けられ、
前記制御部は、前記オペレーティングシステムを起動していない状態で、前記受電部により前記建設機械からの電力を受電した場合には、前記オペレーティングシステムを起動したうえで前記施工状態表示アプリケーションを実行し、
前記施工状態表示アプリケーションを実行している状態で、前記携帯情報端末が前記クレードルに載置されており、かつ、前記受電部により前記建設機械からの電力を受電していない場合には、前記施工状態表示アプリケーションを終了したうえで前記オペレーティングシステムを終了することを特徴とする建設機械の表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設機械の表示装置に関し、詳しくは、運転室内に配置したモニタ画面に建設機械の運転状態を表示させる表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、油圧ショベルやクレーンなどの建設機械は、運転者の操作席に表示用モニタを備えている。運転者は、モニタの画面を見ることで、その時の建設機械の運転状態を確認することができる。また、建設機械のなかでも、地中で作業が進行する杭打機や地盤改良機などでは、モニタ画面の情報(施工情報)を機外の作業者や現場管理者、立会人など、運転者以外の者も確認したいというニーズがある。そのため、こうした杭施工用の建設機械では、運転室内の窓際に外部表示モニタとして、タブレットなどの携帯情報端末を設置し、この表示画面に運転者の見ている画面と同じ画面を表示させる対応がとられている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2023-3247号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された建設機械の表示装置は、汎用のタブレット端末をクレードルと呼ぶ電力供給が可能な設置台に載置して使用するものであり、運転室内に外向きに固定して表示画面を見る使用法と、取り外して手元で表示画面を見る使用法との両方を、ユーザのその時々の状況に応じて使い分けができるものである。しかしながら、固定状態のタブレット端末は、手元で扱うときには問題とならないような画面操作が一切できないことから、ソフトウェアの起動やユーザ認証といった画面操作を行うためには、クレードルから一旦取り外さなければならず、施工管理装置と接続するための段取り作業が煩雑になるおそれがあった。
【0005】
そこで本発明は、使用上の負担が少なく、ユーザ相互間での施工の情報共有を円滑に行うことが可能な建設機械の表示装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の建設機械の表示装置は、施工管理装置を備えた建設機械に設置され、運転操作を行う運転者に向けて前記施工管理装置からの出力を表示する運転者側表示部と、該運転者側表示部と同じ前記建設機械に設置され、前記建設機械の周囲で作業に従事する作業者に向けて前記運転者側表示部の表示と同じ表示を行う作業者側表示部とを備えている表示装置において、前記作業者側表示部は、前記建設機械の電源線と接続されたクレードルと、該クレードルに着脱自在に載置された携帯情報端末とを有し、前記携帯情報端末は、前記施工管理装置との無線通信接続を行い該施工管理装置からの出力を表示画面に表示させるための施工状態表示アプリケーションと、オペレーティングシステム上で前記施工状態表示アプリケーションを実行させる制御部と、前記クレードルを介して前記建設機械から電力供給を受ける充電用の受電部と、前記携帯情報端末が前記クレードルに載置されているか否かを検知する載置検知部とを備え、前記電源線は、前記受電部への通電状態と非通電状態とに切り替えることが可能な電源スイッチが設けられ、前記制御部は、前記オペレーティングシステムを起動していない状態で、前記受電部により前記建設機械からの電力を受電した場合には、前記オペレーティングシステムを起動したうえで前記施工状態表示アプリケーションを実行し、前記施工状態表示アプリケーションを実行している状態で、前記携帯情報端末が前記クレードルに載置されており、かつ、前記受電部により前記建設機械からの電力を受電していない場合には、前記施工状態表示アプリケーションを終了したうえで前記オペレーティングシステムを終了することを特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
本発明の建設機械の表示装置によれば、建設機械の周囲で作業に従事する作業者に向けて設置した作業者側表示部が、建設機械の電源線と接続されたクレードルと、該クレードルに着脱自在に載置された携帯情報端末とを有し、該携帯情報端末に備えられた制御部が、オペレーティングシステムを起動していない状態で、受電部により建設機械からの電力を受電した場合に、オペレーティングシステムを起動したうえで施工状態表示アプリケーションを実行するので、建設機械の電源の投入に応じてシステムの起動及びアプリケーションの実行を自動的に行うことができる。すなわち、運転者は、エンジンを始動させると、携帯情報端末に対して何の操作もせずに、これに施工管理装置のモニタ画面と同じ画面が表示されるのを待つだけで済むようになる。
【0008】
しかも、施工状態表示アプリケーションを実行している状態で、携帯情報端末がクレードルに載置されており、かつ、受電部により建設機械からの電力を受電していない場合に、施工状態表示アプリケーションを終了したうえでオペレーティングシステムを終了するので、建設機械の電源の切断に応じて携帯情報端末のシステムを正常に終了し電源断(シャットダウン)の状態を自動的に作ることができる。すなわち、運転者は、エンジンを停止させると、携帯情報端末の終了操作について特段意識せずとも運転室から離れることができるようになる。したがって、携帯情報端末を固定状態に置きながら、その画面操作を介さずに表示装置の運用が行えることから、ユーザにとって使用上の負担が軽減されるものである。
【0009】
とりわけ、システムの起動及びアプリケーションの実行を自動的に行った以後は、携帯情報端末のクレードルからの取外し操作に起因してシステムが終了へと移行するのを回避できることから、施工状況に応じて携帯情報端末をその場で取り外し、施工管理装置のモニタ画面と同じ画面表示状態を維持したまま外部に持ち出せるようになる。すなわち、建設機械から離れた場所(例えば現場事務所)においてユーザ相互間での施工の情報共有を行うことが可能となり、施工立会の品質向上にも寄与するものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一形態例を示す表示装置が適用される杭打機の側面図である。
図2】携帯情報端末を装着した状態の作業者側表示部を示す図である。
図3図2のIII-III矢視図である。
図4】表示装置の構成を示すブロック図である。
図5】クレードル用の電源回路図である。
図6】エンジンの始動・停止と携帯情報端末の起動・終了との関係を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1乃至図6は、本発明を建設機械の一例である小型杭打機に適用した一形態例を示すものである。杭打機11は、図1に示すように、クローラを備えた下部走行体12の上部に、上部旋回体13が旋回可能に設けられており、上部旋回体13の前部中央には、リーダ14や該リーダ14の前面に沿って昇降するオーガ(回転駆動装置)15などの杭打用の作業装置が設けられている。また、上部旋回体13のフレーム上には、右側部に運転室(キャブ)16が、左側部にエンジンや油圧ポンプを収納したエンジン室がそれぞれ設けられている。さらに、上部旋回体13の前後左右の4箇所に安定用のジャッキ17が設けられるとともに、上部旋回体13の後端部には機体のバランスをとるためのカウンタウエイト18が搭載されている。
【0012】
杭打機11を鋼管杭の埋設を目的として使用する場合には、施工部材に鋼管杭が使用される。鋼管杭(図示せず)は、ドライブロッド19の下端に設けられたキャップロッド20を介して連結され、ドライブロッド19を回転させながらオーガ15を下降させることによって地中に圧入される。また、杭打機11を地盤改良を目的として使用する場合には、施工部材に中空ロッド(図示せず)が使用される。中空ロッドは、上端がオーガ15の上方でスイベルと連結されるとともに下端が撹拌ロッドと連結される。この中空ロッドを回転させながら、中空ロッドを通じて撹拌ロッドの先端から噴射したセメントミルクなどの地盤改良剤が地盤内に注入される。
【0013】
こうした杭の埋設や地盤改良などの各種工法を行うために、運転室16内には、走行や旋回、オーガ15の昇降・回転駆動などを行うための複数の運転操作レバーやペダル、スイッチなどの機器が操作性を考慮して運転席の近傍に集約配置されており、さらに、これらの機器や杭打機11の運転状態検出手段(センサ)などと電気的に接続された施工管理装置が設置されている。
【0014】
施工管理装置21は、図4に示すように、各種工法制御のための施工管理プログラムを実行して、データ処理や判定などの演算処理を行う制御部(CPU)22を中心に構成されており、施工管理プログラムを記憶するFLASH ROMや処理中の各種データを一時的に記憶するRAM、さらには、施工現場における杭の埋設予定位置、目標深度などを設定した施工計画データ及び施工管理プログラムの実行により作成された実施工データの各種データを記憶する記憶部23、直流電源(DC電源)となるバッテリ24(図5参照)からの電力を施工管理装置21の各部に供給する電源部25、後述する携帯情報端末との間で無線通信接続を行う通信部26などを備えている。また、運転室16内には、施工管理プログラムの実行で得られる深度やトルクなどの施工情報(施工状態)を表示画面で確認したり、タッチパネル操作でデータ入力を行ったりする表示装置が設置されている。
【0015】
表示装置は、運転室16内の2箇所に互いに異なる向きとなるように配置された表示部を備えており、一方は、運転操作を行う運転者に対面したインストルメントパネルやその上方部などに設置され、該運転者に向けて施工管理装置21からの出力、つまり、施工情報を表示する運転者側表示部27(以下、モニタとも称する)である。他方は、運転室16内の窓際に設置され、杭打機11の周囲で作業に従事する作業者(管理者、立会人を含む)に向けて運転者側表示部27の表示と同じ表示を行う作業者側表示部28である。そして、施工管理装置21との間で、運転者側表示部27は有線にて、作業者側表示部28は無線にてそれぞれ接続が可能とされている。
【0016】
施工管理装置21と作業者側表示部28との間の通信は、例えば、無線LANなどの近距離通信手段を介してなされ、施工管理装置21の通信部26から、モニタ27に表示された画面情報と同じ情報を送信するものである。送信した画面情報は、図2及び図3に示すように、作業者側表示部28を構成する携帯情報端末29で受信される。これにより、携帯情報端末29の表示画面30には、モニタ27に表示された画面と同じ画面が表示されるようになっている。
【0017】
作業者側表示部28は、運転室16内に設置されたレバー操作式の運転操作装置31に取り付けられており、前後方向(図3の紙面方向)に傾動自在に配置された横並びの運転操作レバーL1~L4のうち、車幅方向外側(図3の左側)にある2本(L1,L2)の前方に設けられた取付ブラケット32と、該取付ブラケット32にヒンジ33を介して連結されたクレードル34と、該クレードル34に着脱自在に装着された携帯情報端末29とを有している。
【0018】
取付ブラケット32は、2つのL字状板35a,35bを組み合わせてなる基部35と、該基部35に立設されてヒンジ33の水平軸が配される支持部36とからなり、L字状板35a,35bの内面を操作装置本体31a上部の外側隅部にあてがった状態で、すなわち、前後方向と車幅方向との位置を確定した状態で、ボルト止めにて組み付けられている。また、基部35の外側角部(外縁)には、クレードル34を載置するゴム座37が設けられている。
【0019】
クレードル34は、車載用タブレットホルダとして周知のもので、杭打機11の電源線38と接続された本体部34aをヒンジ33の回動部材に取り付けるとともに、携帯情報端末装着面SFを外側に向けた状態で、上下方向に回動可能に設けられている。本体部34aは、携帯情報端末29を載置収容する凹部底座に給電及び制御信号用の端子群(図示せず)を備え、携帯情報端末29下面の対応する端子群と電気的に接続することが可能である。本体部34aの外形寸法は、例えば、10インチの画面サイズのタブレット端末を保持可能な寸法に設定されている。本体部34aの凹部底座に載置した携帯情報端末29をフック34bで上方から挟持すると、携帯情報端末29の背面と本体部34aの装着面SFとが対面した装着状態が作られる。
【0020】
このような装着状態(図2)において、クレードル34は、ヒンジ33を回動中心として、携帯情報端末29が最外側の運転操作レバーL1の移動線上に進入した着脱位置(図3の想像線)と、その移動線上から退出した使用位置(図3の実線)とを取り得る上下方向の回動域を有している。こうした姿勢変更についての必要な操作は、使用位置から着脱位置へと向かう回動に対しては人手により持ち上げることとなるが、着脱位置で手を離せば、携帯情報端末29の装着有無にかかわらず、クレードル34の重心移動により使用位置まで自然に下がるようになっている。これにより、携帯情報端末装着面SFがやや幅広い仕様のクレードル34でも、運転中にレバー操作の邪魔にならない状態での配置が可能となる。
【0021】
ここで、着脱位置にある携帯情報端末29は、上下回動域の上限位置でその下端部が横窓SWに接近し、表示画面30を、例えば、真横から略20度上向きに傾けた状態で、前窓FWと横窓SWとからなる室内隅部に配置される。このとき、クレードル34のフック34bが運転操作レバーL1の移動線上の先(前方)に位置し、図3からも想像できるように、運転操作レバーL1越しのアクセスにより、例えば、右手で携帯情報端末29を掴み、左手でフック34bを操作するなどの無理のない着脱態様が可能となる。
【0022】
一方、使用位置にある携帯情報端末29は、上下回動域の下限位置でクレードル34がゴム座37に載置され、表示画面30を、地上の作業者が視認しやすい状態、例えば、真横から略10度下向きに傾けた状態で、室内隅部における横窓SWのそばに配置される。このとき、レバー操作によって運転操作レバーL1が中立位置から最大前傾角度(θmax)の位置まで移動すると、図2から見てとれるように、携帯情報端末29との間で一部重なり合った状態に見えることとなる。しかしこの状態でも、図3から見てとれるように、運転操作レバーL1と携帯情報端末29とは互いに車幅方向に離れており、レバー操作によって両者が互いに干渉し合うことはない。
【0023】
クレードル34の電源線38は、運転室16内に設けられた電源スイッチ39の入切(オンオフ)に基づいて、携帯情報端末29に内蔵されている受電部への通電状態(オン)と非通電状態(オフ)とに切り替えることが可能であり、図5に示すように、バッテリ24から電源スイッチ39を介して供給される作動用電源(入力電圧)を携帯情報端末29の作動電圧に変換するDC/DC変換回路40などが設けられている。
【0024】
電源スイッチ39は、杭打機11のエンジンを始動するための主電源スイッチ(エンジンキースイッチ)とされ、これにより、エンジンの始動と同時に携帯情報端末29の充電機能を働かせることができる。なお、運用上、主電源スイッチと独立して操作する切替スイッチを設けても差し支えない。その場合、切替スイッチを切断(オフ)した状態では、電源線38が非通電状態に保持されていることから、エンジンを始動させても、クレードル34に装着した携帯情報端末29に対して電気的な作用が働くことはない。
【0025】
携帯情報端末29は、屋外使用向けの表示装置に好適な堅牢性の高いタブレット端末が採用されており、ユーザ認証(例えば起動・接続パスワード認証)によってログインすれば、汎用のタブレット端末と同様に各種ソフトウェアの使用が可能である。この携帯情報端末29は、図4にも示すように、主に、事前インストールがなされたリモートモニタリングソフトウェア(RMS)として、実行開始時に施工管理装置(親機)21との無線通信接続を自動的に行い該施工管理装置21からの出力を表示画面30に表示させるための施工状態表示アプリケーション(施工状態表示アプリ)と、オペレーティングシステム(OS)上で施工状態表示アプリを実行させる制御部(CPU)41と、クレードル34を介して杭打機11から電力供給を受ける充電用の受電部42と、携帯情報端末29がクレードル34に載置されているか否かを検知する載置検知部43と、施工管理装置21との間で無線通信接続を行う通信部44とを備えている。
【0026】
受電部42及び載置検知部43は、いずれもクレードル34の本体部34aの端子群に対応する接続端子42a,43aを備えている。また、受電部42には充電池及び充電池の充電用回路が含まれており、接触式給電として、クレードル34を介して受電した電力に基づいて充電池を充電するように構成されている。そして、接続端子42a,43aの接続状態、つまり、携帯情報端末29がクレードル34に載置されている状態で、電源スイッチ39を投入(オン)し、電源線38が通電状態に置かれると、接続端子42a,43aには所定電圧が与えられる。なお、受電部42の充電用回路には、充電池の充電機器(例えばACアダプタ)を接続するための充電端子(図示せず)が別途設けられており、携帯情報端末29単体で使用管理する際には、商用電源からの受電が可能である。
【0027】
制御部41は、受電部42の接続端子42aに所定値以上の電圧が与えられた場合は、受電していると判断し、逆に、電圧がなくなった場合は、受電していないと判断する。一方、載置検知部43の接続端子43aに所定値以上の電圧が与えられた場合は、携帯情報端末29がクレードル34に載置されていると判断し、逆に、電圧がなくなった場合は、載置されていないと判断する。
【0028】
上記判断に基づいて制御部41は、OSを起動していない状態で、受電部42により杭打機11からの電力を受電した場合には、自動接続モードとして、OSを起動したうえで施工状態表示アプリを実行する処理を行う。この場合、クレードル34に載置された携帯情報端末29がユーザ管理下に置かれているものとみなし、手元操作では要求されるユーザ認証のステップが省略される。一方、施工状態表示アプリを実行している状態で、携帯情報端末29がクレードル34に載置されており、かつ、受電部42により杭打機11からの電力を受電していない場合には、自動終了モードとして、施工状態表示アプリを終了したうえでOSを終了する処理を行う。
【0029】
以下では、携帯情報端末29がクレードル34に載置された状態(図2)において、エンジンの始動・停止と携帯情報端末29の起動・終了との関係を、図6を参照しながら具体的に説明する。
【0030】
表中、エンジンの状態が「始動時(運転開始時)」において、携帯情報端末(タブレット)29の電源状態が「ON(オン)」である場合には、通常、携帯情報端末29の電源が入っている状態でクレードル34に載置されたものであるから、何もアクションせずに手元で行った画面操作の結果を優先させる。一方、エンジンの状態が「始動時」において、携帯情報端末29の電源状態が「OFF(オフ)」である場合には、自動接続モードを実行し、OSを起動後、施工状態表示アプリを起動させる。
【0031】
表中、エンジンの状態が「停止時(運転終了時)」において、携帯情報端末29の電源状態が「ON」である場合には、自動終了モードを実行し、OSを終了し電源断(シャットダウン)させる。この場合、OSを終了する前処理として施工状態表示アプリの終了処理が行われる。一方、エンジンの状態が「停止時」において、携帯情報端末29の電源状態が「OFF」である場合には、通常、携帯情報端末29は、電源が切られている状態でクレードル34に載置されたものであり、その上、エンジン停止を受けて杭打機11からの電源も切断されることから、何もアクションせず、そのように対応しても不都合が生じることはない。
【0032】
このように構成された杭打機11の表示装置を使用して施工を行う場合、作業者側表示部28では、上述の着脱態様によって、未装着状態のクレードル34に対して携帯情報端末29が装着される。こうした作業は、例えば、建設会社などが所有するストック施設において事前になされ、すぐに使用可能な状態で杭打機11と一体で現場へ配送される。
【0033】
現場において杭打機11のエンジンを始動すると、携帯情報端末29に対してバッテリ24からの給電が行われ、端末のOS及び施工状態表示アプリが自動的に起動される。そして、施工管理装置21の電源を投入すると、施工管理装置が起動し、施工管理プログラムが実行され、モニタ27には施工管理プログラムの実行を受けて施工画面(ホーム画面)が表示される。そして、施工管理装置21と携帯情報端末29との間で無線通信接続が確立すると、携帯情報端末29では、充電池の残量に基づいて充電を行いながら、自端末の表示画面30に対して施工管理装置21のモニタ27に表示された画面と同じ画面を表示させる。
【0034】
現場管理者の運転指示のもとで杭打ち作業を開始すると、オーガ15の運転操作に従って作成された実施工データは、施工画面に数値やグラフ形式でリアルタイムに表示され、運転者は地盤調査で得た情報から支持層の位置をある程度予測しながら、目標深度に対して計画通りに杭打ち作業を進める。
【0035】
ところで、地盤調査地点から離れた地点では、設計時の目標深度と実際の深度との間にギャップが生じやすくなる。こうした状況下で、万一、杭長の過不足が発生した場合には、作業の中断や現場管理者への報告など、非定常的な作業が発生することとなる。このような場合、現場管理者は、携帯情報端末29の表示画面30を通じて運転者と情報共有を図ることにより、問題の解決にあたって必要な判断が行えるようになる。また、現場事務所などにおいて協議が必要な場合には、上述の着脱態様によって携帯情報端末29をその場で取り外すことにより、システムの動作に変更を加えることなく、表示状態を維持したまま運転室16の外部に持ち出せるようになる。
【0036】
その後、取り外した携帯情報端末29を再度クレードル34に装着することにより、携帯情報端末29に対してバッテリ24からの給電が行われ、速やかに充電池残量が回復する。これにより、システムの動作に変更を加えることなく、表示装置を適切に稼働できるようになる。そして、施工が完了すると、運転者は所定の操作を行って施工管理プログラムを終了し、杭打機11のエンジンを停止させる。このとき、表示装置では、エンジン停止に基づいて、携帯情報端末29のOSを終了し電源断(シャットダウン)させる。こうして、携帯情報端末29のその後の使用については、セキュリティ上、運転室16の外部に持ち出す場合と、施錠して一時的に運転室16内に置いておく場合とのいずれにおいても、電源を切った状態にして取り扱えるようになる。
【0037】
このように、本発明の建設機械の表示装置によれば、建設機械の周囲で作業に従事する作業者に向けて設置した作業者側表示部28が、建設機械の電源線38と接続されたクレードル34と、該クレードル34に着脱自在に載置された携帯情報端末29とを有し、該携帯情報端末29に備えられた制御部41が、オペレーティングシステムを起動していない状態で、受電部42により建設機械からの電力を受電した場合に、オペレーティングシステムを起動したうえで施工状態表示アプリケーションを実行するので、建設機械の電源の投入に応じてシステムの起動及びアプリケーションの実行を自動的に行うことができる。すなわち、運転者は、エンジンを始動させると、携帯情報端末29に対して何の操作もせずに、これに施工管理装置21のモニタ画面と同じ画面が表示されるのを待つだけで済むようになる。
【0038】
しかも、施工状態表示アプリケーションを実行している状態で、携帯情報端末29がクレードル34に載置されており、かつ、受電部42により建設機械からの電力を受電していない場合に、施工状態表示アプリケーションを終了したうえでオペレーティングシステムを終了するので、建設機械の電源の切断に応じて携帯情報端末29のシステムを正常に終了し電源断(シャットダウン)の状態を自動的に作ることができる。すなわち、運転者は、エンジンを停止させると、携帯情報端末29の終了操作について特段意識せずとも運転室16から離れることができるようになる。したがって、携帯情報端末29を固定状態に置きながら、その画面操作を介さずに表示装置の運用が行えることから、ユーザにとって使用上の負担が軽減されるものである。
【0039】
とりわけ、システムの起動及びアプリケーションの実行を自動的に行った以後は、携帯情報端末29のクレードル34からの取外し操作に起因してシステムが終了へと移行するのを回避できることから、施工状況に応じて携帯情報端末29をその場で取り外し、施工管理装置21のモニタ画面と同じ画面表示状態を維持したまま外部に持ち出せるようになる。すなわち、建設機械から離れた場所(例えば現場事務所)においてユーザ相互間での施工の情報共有を行うことが可能となり、施工立会の品質向上にも寄与するものとなる。
【0040】
なお、本発明は、前記形態例に限定されるものではなく、表示装置は、建設機械の電源状態に応じて動作する携帯情報端末でのモニタリングができる構成であればよく、その他の動作仕様については適宜変更することができる。また、実施形態では、携帯情報端末をエンジンキースイッチの入切に連動して動作する構成としているが、必要に応じて、独立の切替スイッチを設けることや、施工管理装置の電源部の入切に連動する切替スイッチを設けることも考えられる。その場合、切替スイッチを切断状態に保持しておくと、携帯情報端末を固定状態とした後での配送(場所移動)において、端末の待機状態(非表示)が作れるようになる。さらに、杭施工用の建設機械として、小型杭打機を例に挙げて説明したが、3点支持式の杭打機のような大型建設機械にも適用することができる。
【0041】
また、表示装置の配置は建設機械の仕様、例えば運転室の形状、大きさ、操作系の配置に応じて適宜変更することができる。前記形態例では作業者側表示部を運転室内の窓際に設置したが、建設機械の外側に表示画面を向けていれば運転室の外部に設置してもよい。その場合、運転室に対応する側方部(例えば車体右側部)であって、運転室が搭載されるフロアフレームに設置することにより、運転室が高位置に設けられている大型建設機械において特に有効な表示装置の構成が得られる。
【符号の説明】
【0042】
11…杭打機、12…下部走行体、13…上部旋回体、14…リーダ、15…オーガ、16…運転室、17…ジャッキ、18…カウンタウエイト、19…ドライブロッド、20…キャップロッド、21…施工管理装置、22…制御部、23…記憶部、24…バッテリ、25…電源部、26…通信部、27…運転者側表示部(モニタ)、28…作業者側表示部、29…携帯情報端末、30…表示画面、31…運転操作装置、31a…操作装置本体、32…取付ブラケット、33…ヒンジ、34…クレードル、34a…本体部、34b…フック、35…基部、35a,35b…L字状板、36…支持部、37…ゴム座、38…電源線、39…電源スイッチ、40…DC/DC変換回路、41…制御部、42…受電部、42a…接続端子、43…載置検知部、43a…接続端子、44…通信部
図1
図2
図3
図4
図5
図6