(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024132110
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】水素タンク用パイプ材の切断装置及び切断方法
(51)【国際特許分類】
B26D 3/16 20060101AFI20240920BHJP
B26D 7/08 20060101ALI20240920BHJP
B26D 3/00 20060101ALI20240920BHJP
F17C 1/16 20060101ALI20240920BHJP
F16J 12/00 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
B26D3/16 A
B26D3/16 Z
B26D7/08 A
B26D3/00 601D
F17C1/16
F16J12/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023042771
(22)【出願日】2023-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】000010065
【氏名又は名称】フクビ化学工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100133916
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 興
(72)【発明者】
【氏名】酒井 一雄
(72)【発明者】
【氏名】上田 修一
(72)【発明者】
【氏名】笛吹 祐登
(72)【発明者】
【氏名】岸田 知之
【テーマコード(参考)】
3E172
3J046
【Fターム(参考)】
3E172AA02
3E172AA05
3E172BA01
3E172BB03
3E172BB12
3E172BB17
3E172BC01
3E172BC04
3E172BD03
3E172CA22
3E172DA36
3J046AA14
3J046BA01
3J046CA03
3J046DA05
3J046EA00
(57)【要約】
【課題】水素タンクのライナーとして用いられる樹脂製のパイプ材を、その変形を抑止しながら効率的に切断する。
【解決手段】切断装置1は、超音波振動しながらパイプ材50の周面に押し付けられる超音波カッター2と、超音波カッター2がパイプ材50の周面に沿って相対的に円運動するように、超音波カッター2及びパイプ材50の少なくとも一方をパイプ材50の軸心回りに回転させる回転機構3とを備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素タンクのライナーとして用いられる樹脂製のパイプ材を切断する装置であって、
超音波振動しながら前記パイプ材の周面に押し付けられる超音波カッターと、
前記超音波カッターが前記パイプ材の周面に沿って相対的に円運動するように、前記超音波カッター及び前記パイプ材の少なくとも一方を前記パイプ材の軸心回りに回転させる回転機構とを備えた、水素タンク用パイプ材の切断装置。
【請求項2】
請求項1に記載の水素タンク用パイプ材の切断装置において、
前記パイプ材の周面に沿って並ぶ複数の前記超音波カッターを備え、
前記回転機構は、複数の前記超音波カッターを同時に前記パイプ材の周面に沿って相対的に円運動させる、水素タンク用パイプ材の切断装置。
【請求項3】
請求項2に記載の水素タンク用パイプ材の切断装置において、
前記パイプ材の外側に配置されかつ前記パイプ材の中心を挟んで相対向する一対の前記超音波カッターを備えた、水素タンク用パイプ材の切断装置。
【請求項4】
請求項2に記載の水素タンク用パイプ材の切断装置において、
複数の前記超音波カッターは、前記パイプ材の外側において周方向に並ぶように配置され、
前記回転機構は、複数の前記超音波カッターを保持するとともに前記パイプ材と同心に配置されたリング状の保持部材と、当該保持部材を軸回りに回転させる回転駆動部とを含む、水素タンク用パイプ材の切断装置。
【請求項5】
水素タンクのライナーとして用いられる樹脂製のパイプ材を、超音波振動しながら前記パイプ材の周面に押し付けられる超音波カッターを用いて切断する方法であって、
前記超音波カッターが前記パイプ材の周面に沿って相対的に円運動するように、前記超音波カッター及び前記パイプ材の少なくとも一方を前記パイプ材の軸心回りに回転させる、水素タンク用パイプ材の切断方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素タンクのライナーとして用いられる樹脂製のパイプ材を切断する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば自動車等の車両に搭載される燃料電池システムには、燃料としての水素ガスの供給源として高圧の水素タンクが用いられる。この水素タンクとして、下記特許文献1のものが公知である。具体的に、特許文献1の水素タンク(ガスタンク)は、略楕円筒を呈する二層構造のタンクであって、内側の樹脂ライナーと、当該樹脂ライナーの外面を覆う補強層としてのFRP層とを含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1の水素タンクの樹脂ライナーは、例えば、所定長さに切り出された樹脂製のパイプ材を用いて製造され得る。一方で、水素タンクの樹脂ライナーの肉厚は、タンク容量の確保のためにできるだけ薄くすることが望まれる。このため、樹脂ライナーの製造時には、これに対応する非常に薄肉の樹脂製パイプ材を切断する作業が必要になる場合がある。しかしながら、薄肉の樹脂製パイプ材は、剛性が低いため、これをきれいに切断することは必ずしも容易ではない。
【0005】
例えば、ギロチン方式の切断機によりパイプ材を切断した場合には、刃物がパイプ材に強く押し付けられる結果、パイプ材の断面が変形したり、切断面に割れや欠けが生じたりするおそれがある。また、回転式の鋸刃を用いるチップソー切断機によりパイプ材を切断した場合には、切断面に線状の傷(ショックマーク)が生じる可能性がある他、大量の切粉が発生して材料の歩留まりが低下することが懸念される。
【0006】
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、水素タンクのライナーとして用いられる樹脂製のパイプ材を、その変形を抑止しながら効率的に切断することが可能な切断装置及び切断方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するためのものとして、本発明の一局面に係る切断装置は、水素タンクのライナーとして用いられる樹脂製のパイプ材を切断する装置であって、超音波振動しながら前記パイプ材の周面に押し付けられる超音波カッターと、前記超音波カッターが前記パイプ材の周面に沿って相対的に円運動するように、前記超音波カッター及び前記パイプ材の少なくとも一方を前記パイプ材の軸心回りに回転させる回転機構と、を備えたものである。
【0008】
超音波振動する超音波カッターは、微視的に非常に高速でパイプ材に繰り返し接触、摺動し、高い摩擦熱を発生させる。本発明では、このような超音波カッターがパイプ材の周面に押し付けられながら相対的に円運動するので、パイプ材を軟化(溶融)させながら円周状にカットすることができる。このため、超音波カッターをパイプ材に押し付ける力(加工力)を大きくしなくても材料を分離させることができ、パイプ材の変形を抑止しながらパイプ材を切断することができる。また、パイプ材の切断面に割れや欠けが生じるのを抑止でき、切断面を円滑に仕上げることができる。さらに、切断時に発生する切粉の量を十分に低減でき、材料の歩留まりを高めることができる。
【0009】
好ましくは、前記切断装置は、前記パイプ材の周面に沿って並ぶ複数の前記超音波カッターを備え、前記回転機構は、複数の前記超音波カッターを同時に前記パイプ材の周面に沿って相対的に円運動させる。
【0010】
このように、パイプ材に対し複数の超音波カッターを同時に相対円運動させるようにした場合には、パイプ材の全周をカットするのに必要な各超音波カッターの周方向の相対移動量が少なく済むので、パイプ材の切断作業を効率化することができる。
【0011】
好ましくは、前記切断装置は、前記パイプ材の外側に配置されかつ前記パイプ材の中心を挟んで相対向する一対の前記超音波カッターを備える。
【0012】
このように、パイプ材の外側に一対の超音波カッターを対向配置した場合には、切断時に各超音波カッターからパイプ材に加わる加工力をバランスさせることができ、パイプ材の変形を抑止する上述した効果をより高めることができる。
【0013】
好ましくは、複数の前記超音波カッターは、前記パイプ材の外側において周方向に並ぶように配置され、前記回転機構は、複数の前記超音波カッターを保持するとともに前記パイプ材と同心に配置されたリング状の保持部材と、当該保持部材を軸回りに回転させる回転駆動部とを含む。
【0014】
この態様では、リング状の保持部材を回転させることにより、当該保持部材に保持された複数の超音波カッターを一括して周方向に移動させることができ、各超音波カッターを簡単かつ合理的にパイプ材の周面に沿って同時に回転(円運動)させることができる。
【0015】
本発明の他の局面に係る切断方法は、水素タンクのライナーとして用いられる樹脂製のパイプ材を、超音波振動しながら前記パイプ材の周面に押し付けられる超音波カッターを用いて切断する方法であって、前記超音波カッターが前記パイプ材の周面に沿って相対的に円運動するように、前記超音波カッター及び前記パイプ材の少なくとも一方を前記パイプ材の軸心回りに回転させるものである。
【0016】
この切断方法の発明によっても、上述した切断装置の発明と同様の効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0017】
以上説明したように、本発明によれば、水素タンクのライナーとして用いられる樹脂製のパイプ材を、その変形を抑止しながら効率的に切断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の一実施形態に係る切断装置の概略構成を示す側面図である。
【
図3】超音波カッターをパイプ材の周面に押し付ける状況を示す正面図である。
【
図4】超音波カッターをパイプ材の周面に沿って回転させる状況を示す正面図であり、(a)は超音波カッターを90°回転させた状況を、(b)は超音波カッターを180°回転させた状況を、それぞれ示している。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[切断装置1の構成]
図1及び
図2は、本発明の一実施形態に係る切断装置1の概略構成を示す側面図及び正面図である。切断装置1は、水素タンクのライナーとして用いられる薄肉の樹脂製のパイプ材50を切断する装置である。パイプ材50が適用される水素タンクは、水素ガスを高圧状態で貯蔵するためのタンクであり、例えば車両用の燃料電池システムにおいて水素ガスの供給源として用いられ得る。水素タンクの容量をできるだけ確保するため、パイプ材50の肉厚は可及的に小さくされる。例えば、パイプ材50は、数mm程度の肉厚を有する。
【0020】
パイプ材50は、水素ガスの透過を防ぐガスバリア性を備えた樹脂材料によって形成される。例えば、パイプ材50の材質としては、ナイロン6系樹脂などが好適である。
【0021】
切断装置1は、一対の超音波カッター2と、回転機構3と、固定部材4とを備える。一対の超音波カッター2は、超音波振動しながらパイプ材50を切断するカッターであり、パイプ材50の中心を挟んで相対向するように配置されている。回転機構3は、各超音波カッター2をパイプ材50の軸心回りに回転(円運動)させる機構である。固定部材4は、超音波カッター2及び回転機構3に対するパイプ材50の軸方向の相対位置が固定されるようにパイプ材50を保持するものである。
【0022】
主に
図2に示すように、回転機構3は、保持部材31及び回転駆動部32を含む。保持部材31は、超音波カッター2を保持するリング状の部材であり、パイプ材50の外側においてパイプ材50と同心に配置されている。回転駆動部32は、保持部材31を軸回りに回転させるアクチュエータである。
【0023】
回転駆動部32は、電動式のモータ33と、モータ33の出力軸に連結されてモータ33と一体に回転するプーリ34と、プーリ34と保持部材31との間に掛け渡されたベルト35とを含む。モータ33によりプーリ34が回転駆動されると、当該プーリ34の回転がベルト35を介して保持部材31に伝達されて、保持部材31が回転する。保持部材31の回転は、これに保持された一対の超音波カッター2を一括して周方向に移動させる。これにより、パイプ材50の周面に沿って各超音波カッター2が同時に回転(円運動)する。
【0024】
一対の超音波カッター2は、それぞれ、カッター刃21及び支持体22を含む。カッター刃21は、パイプ材50を切断するための刃物であり、パイプ材50の径方向に沿って延びるように配置されている。支持体22は、カッター刃21を超音波振動させつつ保持する。
【0025】
カッター刃21は、パイプ材50と対向する支持体22の内端からパイプ材50の周面に向けて突出するように支持体22に取り付けられている。カッター刃21の先端部、つまりパイプ材50に近い側の端部は、先端に向けて尖った形状とされている。
【0026】
詳細な図示は省略するが、支持体22は、カッター刃21を超音波振動させる振動子と、カッター刃21を軸方向にスライドさせる直動シリンダーとを有する。振動子は、例えば電圧を受けて振動する圧電素子を含み、可聴域を超える高い周波数(例えば2万ヘルツ以上)の振動をカッター刃21に付与する。直動シリンダーは、パイプ材50の周面に対しカッター刃21を離接させ得るようにカッター刃21を軸方向に往復動させる。言い換えると、直動シリンダーは、パイプ材50の周面にカッター刃21を押し付ける動作と、パイプ材50の周面からカッター刃21を離間させる動作と、の双方を行い得るようにカッター刃21を支持している。
【0027】
支持体22は、リング状の保持部材31の一箇所と、そこから周方向に180°離れた保持部材31の他箇所と、にそれぞれ取り付けられている。言い換えると、超音波カッター2は、互いに180°の間隔を空けて周方向に並ぶようなレイアウトで保持部材31に取り付けられている。
【0028】
[切断方法]
以上のような切断装置1を用いたパイプ材50の切断は、例えば次のようにして行うことができる。まず、パイプ材50を超音波カッター2の位置を跨ぐように配置した後、固定部材4によってパイプ材50を保持する。すなわち、一対の超音波カッター2の各カッター刃21の間にパイプ材50の切断目標位置がくるようにパイプ材50を軸方向に移動させ、その状態で固定部材4を用いてパイプ材50を保持することにより、超音波カッター2に対しパイプ材50を位置決めする。この時点で、各カッター刃21は、パイプ材50の周面から離れた位置に退避している。
【0029】
次いで、各カッター刃21を超音波振動させつつ、
図3に示すように各カッター刃21をパイプ材50の周面に近接する方向つまり伸長方向にスライドさせる。
【0030】
上記スライドにより各カッター刃21の先端がパイプ材50の周面に当接すると、その直後から各カッター刃21を回転駆動する。すなわち、
図4(a)(b)に示すように、各カッター刃21をパイプ材50に押し付けながら、各カッター刃21を周方向に180°以上回転させる。なお、
図4(a)は、回転動作の途中経過として、回転角が90°に達したときの状況を示している。また、
図4(b)は、回転動作がほぼ完了したときの状況、つまり回転角が180°に達したときの状況を示している。
【0031】
図4に示すような回転動作は、各カッター刃21を保持する保持部材31が180°以上回転するように回転駆動部32(モータ33)を駆動することで達成される。具体的には、保持部材31を180°以上回転させるのに必要な角度だけモータ33でプーリ34を回転させて、当該プーリ34の回転をベルト35を介して保持部材31に伝達することにより、保持部材31を180°以上回転させる。この保持部材31の回転は、これに保持された一対のカッター刃21をパイプ材50の周面に沿って同時に180°以上回転させる。これにより、両カッター刃21の合計の回転角度が360°以上になり、パイプ材50が全周に亘って切り込まれる。
【0032】
上述したカッター刃21の回転駆動は、超音波振動を伴いながら行われる。超音波振動するカッター刃21は、微視的に非常に高速でパイプ材50に繰り返し接触、摺動することにより、高い摩擦熱を発生させ、材料を軟化(溶融)させる。一対のカッター刃21は、このように材料を軟化させながら合計で360°以上回転することにより、パイプ材50に一周分の切り込みを入れてパイプ材50を切断する。
【0033】
上記のようにしてパイプ材50の切断が完了すると、各カッター刃21の回転を停止させるとともに、各カッター刃21をパイプ材50の周面から離れる方向つまり退避方向にスライドさせる。その後、固定部材4によるパイプ材50の保持を適宜解除して、切断されたパイプ材50の各分割ピースを取り出す。
【0034】
[作用効果]
以上説明したとおり、本実施形態の切断装置1は、超音波振動しながらパイプ材50の周面に押し付けられるカッター刃21を含む超音波カッター2と、超音波カッター2をパイプ材50の軸心回りに回転させる回転機構3とを備える。このような切断装置1を用いてパイプ材50を切断する本実施形態によれば、パイプ材50の変形を抑止しつつパイプ材50を効率的に切断できるという利点がある。
【0035】
すなわち、超音波カッター2のカッター刃21が超音波振動しつつパイプ材50の周面に押し付けられることにより、その押し付けられた部分に高い摩擦熱が発生し、パイプ材50の材料が軟化(溶融)する。さらに、カッター刃21がパイプ材50の周面に沿って押し付けられつつ回転(円運動)することで、パイプ材50を軟化させながら円周状にカットすることができる。これにより、カッター刃21をパイプ材50に押し付ける力つまり加工力を大きくしなくても材料を分離させることができ、パイプ材50切断時の変形を抑止することができる。
【0036】
特に、本実施形態では、水素タンクのライナーとして用いられる薄肉のパイプ材50が切断対象であるため、加工力が大きいとパイプ材50が変形する可能性が高いが、このような変形は、超音波カッター2の使用による加工力の低減によって効果的に抑止できる。すなわち、本実施形態では、変形し易い薄肉のパイプ材50を切断対象としながらも、当該パイプ材50をその変形を抑止しながら適切に切断することができる。
【0037】
また、パイプ材50を軟化させながらカットできる本実施形態では、パイプ材50の切断面に割れや欠けが生じるのを抑止でき、切断面を円滑に仕上げることができる。さらに、切断時に発生する切粉の量を十分に低減でき、材料の歩留まりを高めることができる。
【0038】
また、本実施形態では、回転機構3によって一対の(複数の)超音波カッター2を同時に回転駆動できるので、パイプ材50の全周をカットするのに必要な各超音波カッター2の周方向の移動量が少なく済み、パイプ材50の切断作業を効率化することができる。
【0039】
また、本実施形態では、一対の超音波カッター2がパイプ材50を挟んで対向配置されるので、切断時に各超音波カッター2からパイプ材50に加わる加工力をバランスさせることができ、パイプ材50の変形を抑止する上述した効果をより高めることができる。
【0040】
また、本実施形態では、一対の超音波カッター2を回転させる回転機構3として、各超音波カッター2を保持するリング状の保持部材31と当該保持部材31を回転させる回転駆動部32とを含む機構が用いられる。このような構成によれば、リング状の保持部材31を回転させることで一対の超音波カッター2を一括して周方向に移動させることができ、各超音波カッター2を簡単かつ合理的にパイプ材50の周面に沿って同時に回転(円運動)させることができる。
【0041】
[変形例]
上記実施形態では、パイプ材50の周面に沿って回転(円運動)する一対の(2つの)超音波カッター2を用いてパイプ材50を切断するようにしたが、超音波カッター2は、1つでもよいし、3つ以上であってもよい。超音波カッター2が1つの場合は、当該1つの超音波カッター2を360°以上回転させることにより、パイプ材50を切断することができる。また、超音波カッター2が3つ以上の場合は、当該3つ以上のカッター刃21の合計の回転角度が360°以上になるように各カッター刃21を回転させることにより、パイプ材50を切断することができる。
【0042】
上記実施形態では、超音波カッター2を回転させるために、当該超音波カッター2を保持するリング状の保持部材31を、モータ33及びベルト35を含む回転駆動部32を用いて回転させるようにしたが、回転駆動部32は、モータ33の回転をギヤを介して伝達する形式であってもよい。あるいは、超音波カッター2を周方向に移動可能に支持するリング状のスライド支持部材を用意し、当該スライド支持部材に対し超音波カッター2を周方向に移動させるようにしてもよい。
【0043】
上記実施形態では、固定したパイプ材50の周面に沿って超音波カッター2を回転させるようにしたが、超音波カッター2は、パイプ材50に対し相対的に円運動するように設けられていればよく、必ずしも超音波カッター2自身を回転させる必要はない。すなわち、超音波カッター2を周方向の定位置に配置しつつ、パイプ材50を軸回りに回転させるようにしてもよい。このようにした場合でも、パイプ材50に対する超音波カッター2の相対的な円運動(回転)を実現でき、パイプ材50を切断することができる。
【0044】
上記実施形態では、切断装置1が不動であるか可動であるかについては特に言及しなかったが、仮に切断装置を軸方向に移動可能に構成した場合には、パイプ材の押出成形と切断装置によるパイプ材の切断とを同時並行(インライン)で行うことも可能である。すなわち、パイプ材を押出成形する成形機の下流側に切断装置を配置するとともに、当該切断装置を押出速度と同じ速度で軸方向に移動させれば、パイプ材の切断をインラインで行うことができ、生産効率をより高めることができる。
【符号の説明】
【0045】
1 切断装置
2 超音波カッター
3 回転機構
31 保持部材
32 回転駆動部
50 パイプ材