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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024132112
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】カムフォロア軸受
(51)【国際特許分類】
   F16C 33/58 20060101AFI20240920BHJP
   F16C 19/46 20060101ALI20240920BHJP
   F16C 33/64 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
F16C33/58
F16C19/46
F16C33/64
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023042773
(22)【出願日】2023-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】000102692
【氏名又は名称】NTN株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森内 光洋
【テーマコード(参考)】
3J701
【Fターム(参考)】
3J701AA14
3J701AA24
3J701AA42
3J701AA52
3J701AA62
3J701AA72
3J701BA53
3J701BA54
3J701BA56
3J701BA57
3J701BA69
3J701DA11
3J701FA13
3J701FA33
3J701FA44
3J701FA46
3J701GA42
3J701XB03
3J701XB24
3J701XB31
(57)【要約】
【課題】製造コストおよび組込みコストの高騰を防ぎつつ、摺動に対する耐カジリ性および耐摩耗性を向上し、使用期間の延長が可能なカムフォロア軸受を提供する。
【解決手段】カムフォロア軸受100は、スタッド10と、外輪20と、ころ30と、外輪20の側方に位置する側板40とを備える。スタッド10、外輪20、側板40のうち少なくともいずれかは、スタッド10の中心線AXが延びるA方向について他の少なくともいずれかと対向する部分を含む。上記対向する部分は、A方向に直交するR方向に対して傾斜角を有する傾斜面11a,20a1,20a2,40aを有する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内方部材と、前記内方部材の外方に位置する外方部材と、前記内方部材と前記外方部材との間に介在する転動体と、前記外方部材の側方に位置する側板とを備え、
前記内方部材、前記外方部材および前記側板のうち少なくともいずれかは、前記内方部材の中心線が延びる軸方向について他の少なくともいずれかと対向する部分を含み、
前記対向する部分は、前記軸方向に直交する径方向に対して傾斜角を有する傾斜面を有する、カムフォロア軸受。
【請求項2】
前記内方部材は前記対向する部分を含み、
前記内方部材は、前記軸方向について前記側板とともに前記外方部材を挟むようにフランジ部を有し、
前記内方部材の前記傾斜面は、前記フランジ部に形成されている、請求項1に記載のカムフォロア軸受。
【請求項3】
前記内方部材、前記外方部材、前記側板は前記対向する部分を含み、
前記内方部材の前記傾斜面は、前記外方部材と対向する第1傾斜面であり、
前記外方部材の前記傾斜面は、前記第1傾斜面および前記側板と対向する第2傾斜面であり、
前記側板の前記傾斜面は、前記第2傾斜面と対向する第3傾斜面であり、
前記第2傾斜面の前記傾斜角である第2傾斜角よりも、前記第1傾斜面の前記傾斜角である第1傾斜角は大きく、
前記第2傾斜角よりも、前記第3傾斜面の前記傾斜角である第3傾斜角は大きい、請求項1に記載のカムフォロア軸受。
【請求項4】
前記第1傾斜角をθ1、前記第2傾斜角をθ2、前記第3傾斜角をθ3とすれば、
(数1)θ1≧θ2+0.15°・・・・・・(1)
(数2)θ3≧θ2+0.15°・・・・・・(2)
が成立する、請求項3に記載のカムフォロア軸受。
【請求項5】
前記傾斜面は、研削仕上げ面またはラップ仕上げ面である、請求項1または2に記載のカムフォロア軸受。
【請求項6】
前記傾斜面の算術平均粗さRaは0.25μm以下である、請求項1または2に記載のカムフォロア軸受。
【請求項7】
前記傾斜面は、前記軸方向についての端面と連なっており、
前記軸方向についての前記端面から前記軸方向に離れるにつれて、前記中心線から前記傾斜面までの前記径方向の距離が単調変化する、請求項1または2に記載のカムフォロア軸受。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カムフォロア軸受に関する。
【背景技術】
【0002】
一般産業機械、自動車等において、カムフォロア軸受が用いられる。カムフォロア軸受は、ガイドローラ等として用いられる場合が多い。
【0003】
カムフォロア軸受は、たとえば内方部材と、外方部材と、転動体と、側板とで構成されている。カムフォロア軸受は、使用時に荷重を受けると内方部材がたわむ。すると内方部材の延在方向が相手側部材の表面に対して傾いた状態となる。これにより、外方部材および転動体には意図せずスラスト方向の荷重が発生する。このスラスト方向の荷重を以降においては「誘起スラスト」と記載する。
【0004】
誘起スラストにより、内方部材の一部であるたとえばフランジの側面または側板の側面に、外方部材の側面または転動体の端面が接触しながら動く現象が起こる。この現象を以降においては「摺動」と記載する。
【0005】
外方部材の側面は旋削加工による形成部が多いため、摺動が起こる際には他の部材と線接触しやすい。このため極端に潤滑状態が悪くなると、摺動により、外方部材の側面にはカジリおよび摩耗が起こり得る。カジリおよび摩耗による損傷を防ぐ観点から、たとえば実開昭57-98352号公報(特許文献1)および特開2018-168871号公報(特許文献2)の技術が提案されている。特許文献1では摺動が起こる部分にスラストワッシャが配置される。特許文献2では摺動が起こる部分にスラスト軸受が配置される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開昭57-98352号公報
【特許文献2】特開2018-168871号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1および特許文献2のようにスラストワッシャまたはスラスト軸受が配置されれば、外方部材の側面のカジリおよび摩耗を抑制できる。しかしスラストワッシャまたはスラスト軸受を設けることにより、部品の点数が多くなる。このためカムフォロア軸受の製造コストが高騰する。また特に小径カムフォロア軸受において、スラストワッシャの組込性が低下する。つまりスラストワッシャの組込みが困難になるため、スラストワッシャの組込み工程のコストが高騰する。
【0008】
本発明は上記の課題に鑑みなされたものである。その目的は、製造コストおよび組込みコストの高騰を防ぎつつ、摺動に対する耐カジリ性および耐摩耗性を向上し、使用期間の延長が可能なカムフォロア軸受を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示に従ったカムフォロア軸受は、内方部材と、内方部材の外方に位置する外方部材と、内方部材と外方部材との間に介在する転動体と、外方部材の側方に位置する側板とを備える。内方部材、外方部材および側板のうち少なくともいずれかは、内方部材の中心線が延びる軸方向について他の少なくともいずれかと対向する部分を含む。上記対向する部分は、軸方向に直交する径方向に対して傾斜角を有する傾斜面を有する。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、製造コストおよび組込みコストの高騰を防ぎつつ、摺動に対する耐カジリ性および耐摩耗性を向上し、使用期間の延長が可能なカムフォロア軸受を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施の形態1に係るカムフォロア軸受の構成を示す概略断面図である。
図2図1中の点線で囲まれた領域IIの概略拡大断面図である。
図3】比較例に係るカムフォロア軸受の構成を示す概略断面図である。
図4図3中の点線で囲まれた領域IVの概略拡大断面図である。
図5】比較例のカムフォロア軸受の使用時に内方部材が傾いた状態を示す概略断面図である。
図6】実施の形態1のカムフォロア軸受の使用時に内方部材が傾いた状態を示す概略断面図である。
図7】実施の形態2に係るカムフォロア軸受の構成を示す概略断面図である。
図8】実施の形態3のカムフォロア軸受における、実施の形態1の図2と同様の概略拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら実施の形態について説明する。なお、説明の便宜のため、軸方向であるA方向、径方向であるR方向、周方向であるC方向が導入されている。A方向は概ね次に述べるカムフォロア軸受の静止時において、内方部材の(A方向よりも寸法が小さいR方向についての)中心を通る線である中心線が延在する方向である。内方部材以外の部材におけるA方向は、カムフォロア軸受の静止時で各部材が位置ずれしていない場合の、中心線に沿う方向である。R方向はA方向に直交する方向である。C方向はA方向およびR方向のいずれとも直交し、軸受の回転する方向に概ね沿う方向である。
【0013】
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1に係るカムフォロア軸受の構成を示す概略断面図である。図2は、図1中の点線で囲まれた領域IIの概略拡大断面図である。なお図1および図2は、カムフォロア軸受100が使用されていない静止時の状態を示す。図1および図2を参照して、実施の形態1に係るカムフォロア軸受100は、内方部材としてのスタッド10と、外方部材としての外輪20と、転動体としてのころ30と、側板40とを主に備えている。外輪20は、スタッド10のR方向の外方に位置している。ころ30は、スタッド10と外輪20との間に介在する。側板40は、外輪20の側方に位置している。具体的には、側板40はA方向について外輪20の右側(後述する軸部14に近い側)に隣接する。
【0014】
<主要な構成部材について>
まず上記の主要な構成部材について説明する。スタッド10は、フランジ部11と、軌道面部12と、側板圧入部13と、軸部14とを含んでおり、A方向について上記の順に並んでいる。スタッド10は、全体がボルトの形状を有する。フランジ部11、軌道面部12、側板圧入部13および軸部14は、中心線AXを中心とした円形の断面形状を有する。フランジ部11、軌道面部12、側板圧入部13および軸部14は、中実の円柱に近い形状を有する。R方向の寸法(直径)を大きい方から順に並べると、フランジ部11、軌道面部12、側板圧入部13、軸部14である。
【0015】
フランジ部11は、スタッド10のうちA方向についての一方の端部に配置されている。フランジ部11は、ボルトの頭部のような形状を有する。フランジ部11は、軸部14から最も離れた表面11sを有する。表面11sは図1図2の最も左側の面であり、中心線AXに直交する。フランジ部11のR方向の最外部には、テーパ11pと、径一定部11qと、テーパ11rと、第1傾斜面11aとを有し、A方向について上記の順に並んでいる。以降においてR方向の最外部は、図1および図2に示す中心線AXに沿った断面図におけるR方向の中心線AXから最も離れた部分(表面)を意味する。
【0016】
以降において「テーパ」および「傾斜面」(直前に「第1、第2、第3」のいずれかを付す傾斜面を含む)はいずれも、図1および図2に示す中心線AXに沿った断面図において、R方向およびA方向のいずれに対しても傾斜角を有する面状の部分を意味する。テーパ11pのA方向の寸法は、フランジ部11全体のA方向の寸法のたとえば10%以上15%以下でもよく、15%以上20%以下でもよい。テーパ11pの軌道面部12側(図1図2の右側)にて径一定部11qが連なってもよい。径一定部11qはA方向に沿って延び拡がる。径一定部11qの軌道面部12側にテーパ11rが連なってもよい。フランジ部11の表面11sからA方向に離れるにつれて、テーパ11pと中心線AXとのR方向の距離は大きくなる。これに対し、フランジ部11の表面11sからA方向に離れるにつれて、テーパ11rと中心線AXとのR方向の距離は小さくなる。
【0017】
テーパ11rの軌道面部12側(図1図2の右側)に第1傾斜面11aが連なってもよい。ただしたとえばフランジ部11がテーパ11rを有さず、径一定部11qの軌道面部12側に第1傾斜面11aが直接連なってもよい。フランジ部11は端面11eを有する。端面11eは、フランジ部11のうちA方向の最も軌道面部12に近い面である。端面11eは、A方向について表面11sとは反対側に配置される。端面11eは中心線AXに直交する。第1傾斜面11aはR方向の最も内側において端面11eと連なっている。第1傾斜面11aは外輪20に対向する部分に形成される。これについては後述する。
【0018】
端面11eからA方向に離れるにつれて、中心線AXから第1傾斜面11aまでのR方向の距離が大きくなる(単調変化する)。すなわち図1図2の第1傾斜面11aの左側は右側よりも、中心線AXから第1傾斜面11aまでのR方向の距離が大きくなる。
【0019】
軌道面部12の本体は、軌道面部本体12dである。軌道面部本体12dのR方向の最外部には、内輪軌道面12aと、段差部12bと、テーパ12cとが形成されている。内輪軌道面12aはA方向に沿って延び拡がる。内輪軌道面12aにはころ30の転動面が接触可能である。段差部12bは、軌道面部12のうち、A方向について側板圧入部13よりもフランジ部11に近い領域に形成されることが好ましい。たとえば段差部12bは、軌道面部12のフランジ部11との境界部B1から、軌道面部12全体のA方向の寸法の10%以上20%以下までの領域に形成される。ただし段差部12bは、軌道面部12のフランジ部11との境界部B1から、軌道面部12全体のA方向の寸法の20%以上25%以下の位置までの領域に形成されてもよい。テーパ12cは、軌道面部12のA方向の最も側板圧入部13側の領域に形成される。テーパ12cは軌道面部12の側板圧入部13側の端部から、軌道面部12全体のA方向の寸法の5%以下の位置までの領域に形成されてもよい。テーパ12cは内輪軌道面12aに連なってもよい。A方向について軌道面部12の側板圧入部13との境界部B2に近づくにつれて、テーパ12cと中心線AXとのR方向の距離は小さくなる。
【0020】
軌道面部12は、段差部12bにおいて、内輪軌道面12aよりも、中心線AXとのR方向の距離が小さくてもよい。軌道面部12は、テーパ12cにおいて、内輪軌道面12aよりも、中心線AXとのR方向の距離が小さくてもよい。
【0021】
側板圧入部13は、そのR方向の外側に側板40を圧入できる部分である。図1の側板圧入部13はテーパが形成されず、全体においてR方向の寸法が同じになっている。しかし側板圧入部13のR方向の最外面にはテーパが形成されてもよい。
【0022】
軸部14は、スタッド10のうちA方向についての他方の端部(フランジ部11と反対側の端部)に配置されている。軸部14は、ボルトと同様に、雄ネジ14aが形成されている。軸部14は、最もフランジ部11から離れた先端部にテーパ14bが形成されている。テーパ14bは、先端部に近づくにつれて(フランジ部11から離れるにつれて)中心線AXとのR方向の距離が小さくなる。軸部14には、雌ネジを有するナット60が、雄ネジ14aと互いに締結されてもよい。
【0023】
外輪20は、スタッド10のR方向の外側に配置される。外輪20の大部分は、軌道面部12のR方向の外側に配置される。外輪20の他の部分は、フランジ部11および側板圧入部13のR方向の外側に配置される。外輪20は、円環形状に近い形状を有している。外輪20は、A方向の中央部において、A方向の両端部よりも、R方向の内側に突出していてもよい。外輪20のうち最も内側の面は、外輪軌道面20iである。外輪軌道面20iは、ころ30の転動面が接触可能である。
【0024】
外輪20が外輪軌道面20iを有する領域(R方向の内側に突出した領域)は、A方向の両端部に端面20eを有する。端面20eは中心線AXに直交する。端面20eはA方向について、フランジ部11と隣りあう。また端面20eはA方向について、側板40と隣りあう。これにより外輪20とフランジ部11とは、A方向について互いに対向する部分を有する。また外輪20と側板40とは、A方向について互いに対向する部分を有する。当該対向する部分における外輪20には、第2傾斜面20a1および第2傾斜面20a2が形成されている。具体的には、外輪20がフランジ部11と対向する部分には第2傾斜面20a1が形成され、フランジ部11が外輪20の特に第2傾斜面20a1と対向する部分には第1傾斜面11aが形成される。外輪20が側板40と対向する部分には第2傾斜面20a2が形成される。第2傾斜面20a1は図2における左側の端面20eのR方向内側に連なる。第2傾斜面20a2は図2における右側の端面20eのR方向内側に連なる。第2傾斜面20a2は、側板40の傾斜面と対向するが、側板40の傾斜面については後述する。
【0025】
端面20eからA方向に離れるにつれて、中心線AXから第2傾斜面20a1までのR方向の距離が小さくなる(単調変化する)。同様に、端面20eからA方向に離れるにつれて、中心線AXから第2傾斜面20a2までのR方向の距離が小さくなる(単調変化する)。
【0026】
外輪20のうち外輪軌道面20iの両端側は、軌道面部12の両端側に配置される。外輪20のうち外輪軌道面20iの両端側にある部分は、フランジ部11および側板40のR方向外側に配置される。このため外輪20は、フランジ部11および側板40と干渉しない。外輪20のうち外輪軌道面20iの両端側にある部分は、第2傾斜面20a1,20a2よりもR方向外側の領域のみに配置される。外輪20は、外輪軌道面20iの両端側に、第1部21と、第2部22とを有する。第1部21と、第2部22と、外輪20がR方向の内側に突出する外輪軌道面20iの形成部分とにより、後述のシール70が保持される。第1部21は外輪20のうち、最もR方向の厚みが薄くなるように、R方向外側に向けて溝状となった領域である。第1部21は外輪軌道面20iの形成部分のA方向両側に隣接する。第2部22は、A方向について、第1部21から見て外輪軌道面20iの形成部分と反対側(外側)に隣接する。第2部22は、第1部21よりR方向について厚く、外輪20の中央部よりR方向について薄い。
【0027】
第1部21の内壁面は、A方向に沿う第1内壁21aである。第2部22の内壁面は、第2内壁22aである。これらの内壁と、外輪20がR方向の内側に突出し外輪軌道面20iを有する部分と、フランジ部11または側板40とにより、シール70が囲まれ保持される。
【0028】
第2部22のR方向の外周部にはテーパ22bが形成されてもよい。テーパ22bのR方向およびA方向の寸法は、テーパ11p,11r,12cの少なくともいずれか(または全て)のR方向およびA方向の寸法より大きくてもよい。ただしテーパ22bのR方向およびA方向の寸法は、テーパ14bのR方向およびA方向の寸法より小さくてもよい。
【0029】
ころ30は、R方向について軌道面部12の外側および外輪20の内側に配置される。ころ30は、内輪軌道面12aおよび外輪軌道面20iの双方に接触している。ころ30は、C方向の全体に配置される円筒形状であってもよい。言い換えればころ30は円筒ころであってもよい。この場合、カムフォロア軸受100はいわゆる総ころ型の軸受となり、保持器を有さない。ただしころ30は、円柱状であり、これが複数、C方向に間隔をあけて、図示されない保持器に保持される態様であってもよい。この場合、保持器に形成されたポケットに複数の針状ころが収容される。複数のころは保持器に対して回転可能である。また保持器は外輪20およびスタッド10に対してC方向に相対回転可能である。
【0030】
側板40は、スタッド10のフランジ部11とともに、外輪20を挟むように配置される。側板40は、側板圧入部13のR方向の最外面13aに接触するように、たとえば軸部14側から圧入される。側板40は概ね円環形状である。側板40のR方向の最外部には、テーパ40pと、径一定部40qと、テーパ40rと、第3傾斜面40aとを有し、A方向について上記の順に並んでいる。側板40は端面40eと表面40sとを有する。端面40eは、A方向の最も軌道面部12に近い面である。端面40eは、最もフランジ部11から離れた表面40sとは反対側、すなわち最もフランジ部11に近い側に配置される。端面40eは中心線AXに直交する。第3傾斜面40aはR方向の最も内側において端面40eと連なっている。
【0031】
側板40が配置される領域は、概ね中心線RAに関して、フランジ部11と対称の形状を有する。中心線RAは外輪20のA方向の中央を示す線である。フランジ部11から離れた方からテーパ40p、径一定部40q、テーパ40r、第3傾斜面40aの順に配置される。テーパ40p、径一定部40q、テーパ40r、第3傾斜面40aは、テーパ11p、径一定部11q、テーパ11r、第1傾斜面11aとはA方向について並ぶ方向が互いに逆になっている。しかしテーパ40p、径一定部40q、テーパ40r、第3傾斜面40aは、傾斜角および他の部分との連なり方は、フランジ部11のテーパ40p、径一定部40q、テーパ40r、第3傾斜面40aと概ね同様であるため、その説明を繰り返さない。
【0032】
テーパ40p、径一定部40q、テーパ40r、第3傾斜面40aは、テーパ40p、径一定部40q、テーパ40r、第3傾斜面40aと、R方向の位置がほぼ等しいことが好ましい。また側板40のA方向の厚みは、フランジ部11のA方向の厚みとほぼ等しいことが好ましい。具体的には、側板40のA方向の厚みは、フランジ部11のA方向の厚みの80%以上120%以下であることが好ましい。その中でも、側板40のA方向の厚みは、フランジ部11のA方向の厚みの90%以上110%以下であることがより好ましい。
【0033】
側板40が外輪20と対向する部分には、第3傾斜面40aが形成される。側板40が外輪20の特に第2傾斜面20a2と対向する部分に、第3傾斜面40aが形成される。端面40eからA方向に離れるにつれて、中心線AXから第3傾斜面40aまでのR方向の距離が大きくなる(単調変化する)。
【0034】
側板40とフランジ部11とにより、外輪20およびころ30が挟まれる。これによりスタッド10、外輪20およびころ30は互いに分離せず、図1図2の態様が保たれる。
【0035】
以上のように、本実施の形態においては、スタッド10、外輪20および側板40のすべてが、A方向について互いに他と対向する部分を含み、当該対向する部分に傾斜面(11a,20a1,20a2,40a)を有する。ただしこのような態様に限られない。本実施の形態においては、スタッド10、外輪20および側板40のうち少なくともいずれかが、A方向について他の少なくともいずれかと対向する部分および傾斜面を含んでもよい。つまりスタッド10、外輪20および側板40のうち少なくともいずれかは、当該対向する部分および傾斜面を有さなくてもよい。たとえばフランジ部11と対向する外輪20とのいずれか一方のみが傾斜面を有してもよい。あるいは側板40と対向する外輪20とのいずれか一方のみが傾斜面を有してもよい。
【0036】
第1傾斜面11a、第2傾斜面20a1,20a2、第3傾斜面40aは、たとえばフランジ部11、外輪20、側板40の形成用のプレス金型により形成されてもよい。すなわち当該プレス金型の、フランジ部11などが形成される内壁面が、予め傾斜角を有するように形成されてもよい。このようなプレス金型を用いて成形加工することにより、傾斜面を有するフランジ部11などが形成される。あるいは金型により傾斜角を有さないように形成されたフランジ部11などに対し、研削仕上げ加工またはラップ仕上げ加工がなされることにより、各傾斜面が形成されてもよい。これにより形成された各傾斜面の算術平均粗さRaは0.25μm以下であることが好ましい。ただし各傾斜面の算術平均粗さRaは0.20μm以下であることがより好ましい。各傾斜面の算術平均粗さRaは0.15m以下であることがいっそう好ましい。
【0037】
<その他の構成部材について>
次に上記以外の各構成部材について説明する。ナット60は、軸部14の雄ネジ14aに締結される。図1のカムフォロア軸受100では、軸部14の一部、すなわちフランジ部11と反対側の端部に近い領域のみに、雄ネジ14aが形成される。軸部14の他の一部であるフランジ部11側の領域には雄ネジ14aが形成されない。雄ネジ14aが形成されない軸部14の外周面には、カムフォロア軸受100の取り付けられる対象物としてのハウジングH1が接触するように配置される。つまりハウジングH1に設けられた円形の空洞内に、軸部14の雄ネジ14aが形成されない部分が挿入される。ハウジングH1はC方向の全周に配置されてもよい。スタッド10の軸部14は、側板40とナット60とにより、ハウジングH1に固定される。ナット60の代わりに図示されない固定ピンが用いられてもよい。
【0038】
外輪20は、スタッド10に対してC方向に回転しながら、相手側部材H2のトラック面(図1中の最上面)に対して転がり接触する。一方、スタッド10は回転しない。このときスタッド10のフランジ部11側は片持ち支持の状態である。
【0039】
カムフォロア軸受100が取り付けられる対象物(ハウジングH1)は、たとえば、自動車のフライホイールダンパのトランスミッション側フライホイールであってもよい。フライホイールダンパは、エンジンとトランスミッションとの間に配置される。図1において、カムフォロア軸受100の外輪20が当接する相手側部材H2のトラック面は、エンジン側のフライホイールの内径面となる。エンジンとトランスミッションとの間にカムフォロア軸受100を配置することにより、エンジンの回転運動が滑らかになり、トルク変動が吸収される。これによりカムフォロア軸受100の騒音および振動が抑制される。
【0040】
シール70は、第1内壁21a、第2内壁22a、端面20eに接触するように、第2部22に囲まれる(収納される)。ただしシール70は第1内壁21a、端面20eのみに接触し、第2内壁22aには接触しなくてもよい。シール70は、フランジ部11、側板40の最外部に接触可能である。このため図1図2の断面図においてシール70は、先細りの形状を有する部分が、A方向の外輪20の外側、およびR方向の外輪20の内側に向けて延びている。上記先細りの形状の部分の先端(シール70のA方向の外縁)が、フランジ部11および側板40に接触している。シール70の上記先細りの形状の部分の先端(シール70のA方向の外縁)は、第1内壁21aよりもA方向の外側(外輪20の中心線RAから離れた側)に配置され、径一定部11q,40qに接触することが好ましい。これによりシール70は、外輪20とフランジ部11との間の隙間、および外輪20と側板40との間の隙間を塞ぐ。シール70は潤滑剤の漏出を防止する。
【0041】
<作用効果>
ここで、比較例およびその課題について言及しつつ、本実施の形態の作用効果を説明する。図3は、比較例に係るカムフォロア軸受の構成を示す概略断面図である。図4は、図3中の点線で囲まれた領域IVの概略拡大断面図である。なお図3および図4は、カムフォロア軸受900が使用されていない静止時の状態を示す。図3および図4を参照して、比較例に係るカムフォロア軸受900は、大筋で実施の形態1のカムフォロア軸受100と同様の構成を有するため、同一の構成要素には同一の符号を付し、特に必要がない限りその説明を繰り返さない。ただしカムフォロア軸受900では、フランジ部11、外輪20、側板40がA方向に対向する部分において、第1傾斜面11a、第2傾斜面20a1,20a2、第3傾斜面40aが形成されていない。当該部分には傾斜面の代わりに、R方向に沿う径方向面が形成される。つまりフランジ部11には径方向面11bが形成され、外輪20には径方向面20b1,20b2が形成される。側板40には径方向面40bが形成される。径方向面11bは端面11eに連なり、端面11eと同方向に延び拡がる。径方向面20b1,20b2は端面20eに連なり、端面20eと同方向に延び拡がる。径方向面40bは端面40eに連なり、端面40eと同方向に延び拡がる。
【0042】
図5は、比較例のカムフォロア軸受の使用時に内方部材が傾いた状態を示す概略断面図である。図5を参照して、カムフォロア軸受900の使用時に、内方部材に対して外方部材が回転する。これに伴い、スタッド10の中心線AXが本来の方向に対して異なる方向に延びるよう傾く場合がある。つまり、図5に点線で示す中心線AXの本来の方向(A方向)に対して角度を有するように、中心線AXが傾斜する。このとき、誘起スラストの発生により、図5の上側の外輪20の端面20eが、これに対向するフランジ部11の端面11eと接触する。また誘起スラストにより、図5の下側の外輪20の端面20eが、これに対向する側板40の端面40eと接触する。このとき、特に外輪20の端面20eは、端面11e,40eと線接触しやすい。線接触した部分は尖っており面積が小さい。このため線接触した部分には高い応力が加わる。したがって端面20eに摺動が起こり、カジリまたは摩耗が生じる可能性がある。
【0043】
図5の課題を回避する観点から、摺動が起こる部分にスラストワッシャまたはスラスト軸受を配置することが考えられる。このとき、スラストワッシャまたはスラスト軸受を配置するスペースを確保する場合がある。そのためには、外輪20の端面20e(径方向面20b1,20b2)のA方向の寸法を小さくするか、スタッド10の鍔部(たとえばフランジ部11)または側板40にスペース確保用の段差を設けるかのいずれかが必要となる。これにより、外輪20の強度または鍔部の強度が低下する可能性がある。
【0044】
そこで本開示に従ったカムフォロア軸受100は、内方部材としてのスタッド10と、スタッド10の外方に位置する外方部材としての外輪20と、スタッド10と外輪20との間に介在する転動体としてのころ30と、外輪20の側方に位置する側板40とを備える。スタッド10、外輪20および側板40のうち少なくともいずれかは、スタッド10の中心線AXが延びる軸方向(A方向)について他の少なくともいずれかと対向する部分を含む。上記対向する部分は、A方向に直交する径方向(R方向)に対して傾斜角を有する傾斜面(11a,20a1,20a2,40a)を有する。
【0045】
図6は、実施の形態1のカムフォロア軸受の使用時に内方部材が傾いた状態を示す概略断面図である。図6を参照して、本実施の形態においては、傾斜面(傾斜面11a,20a1,20a2,40aのうち少なくともいずれか)を有する。図6では、内方部材に対して外方部材が回転する。これに伴い、カムフォロア軸受100に誘起スラストが生じ、A方向に延びる相手側部材H2の上面に対して、スタッド10の中心線AXが傾いている。このとき外輪20の傾斜面20a1,20a2は、たとえフランジ部11の傾斜面11a、側板40の傾斜面40aと接触し、摺動を起こしたとしても、摺動部は線接触ではなく、ある面積の面として接触(面接触)する。たとえばスタッド10の傾き角度が、外輪20の傾斜面のR方向に対する傾斜角と等しくなれば、両者は面接触するためである。これにより、図5のように線接触を起こした場合に比べて接触面圧が低下する。その結果、摺動に対する耐カジリ性および耐摩耗性を向上できる。このためカムフォロア軸受100の使用期間を延長できる。
【0046】
また傾斜面を設けることで摺動が起こる部分を面接触にできるため、外輪20の摺動を防ぐためのスラストワッシャまたはスラスト軸受の設置が不要となる。このため部品の点数の増加、および組込み工程の追加によるコスト高騰を抑制できる。またスラストワッシャなどを設置するスペースの導入による外輪20などの強度の低下を抑制できる。
【0047】
図6においては傾斜面11a,20a1,20a2,40aの全てを有する。しかしこれらのうち少なくとも1つを有するだけでも、傾斜面を全く有さない場合に比べて上記の効果を得られる。たとえば互いに対向する傾斜面11aと傾斜面20a1とのいずれか、および互いに対向する傾斜面20a2と傾斜面40aとのいずれか、のみが形成されてもよい。この場合他方には傾斜面は形成されず、図4に示す径方向面11b,20b1,20b2,40bとなってもよい。このような場合においても、傾斜面を全く有さない場合に比べて上記の効果を得られる。
【0048】
上記カムフォロア軸受100において、スタッド10は上記対向する部分を含む。スタッド10は、A方向について側板40とともに外輪20を挟むようにフランジ部11を有する。スタッド10の傾斜面11aは、フランジ部11に形成されている。フランジ部11は他の部分に比べてR方向の寸法が大きい。このため外輪20と対向する部分を有し、その部分にて上記の傾斜面11aが形成可能となる。
【0049】
上記カムフォロア軸受100において、スタッド10、外輪20、側板40は上記対向する部分を含む。スタッド10の傾斜面は、外輪と対向する第1傾斜面11aである。外輪20の傾斜面は、第1傾斜面11aおよび側板40と対向する第2傾斜面20a1,20a2である。側板40の傾斜面は、第2傾斜面20a2と対向する第3傾斜面40aである。第2傾斜面20a1,20a2の傾斜角である第2傾斜角θ2よりも、第1傾斜面11aの傾斜角である第1傾斜角θ1は大きい。第2傾斜角θ2よりも、第3傾斜面40aの傾斜角である第3傾斜角θ3は大きい。より具体的には、第1傾斜角をθ1、第2傾斜角をθ2、第3傾斜角をθ3とすれば、
(数1)θ1≧θ2+0.15°・・・・・・(1)
(数2)θ3≧θ2+0.15°・・・・・・(2)
が成立する。
【0050】
上記数式(1)、(2)は、片持ち梁の集中荷重によるたわみ計算を用いて、基本動定格荷重Crの50%の負荷を加えたときの、スタッド10のたわみ角度を考慮して求められた。基本動定格荷重Crは、スタッド10を静止させ外輪20を回転させた条件で100万回転の基本定格寿命が得られるような荷重を意味する。上記数式(1)、(2)が成り立つようにすれば、上記のように摺動に対する耐カジリ性および耐摩耗性を向上できる。このためカムフォロア軸受100の使用期間を延長できる。なお上記各傾斜角は、たとえばJIS B 1515-2に規定される測定方法により測定されてもよい。
【0051】
上記の摺動部が面接触するとの作用効果を顕著にする観点から、上記カムフォロア軸受100において、各傾斜面11a,20a1,20a2,40aはいわゆる平面(曲面ではなく、曲率がほぼゼロ)であることが好ましい。上記カムフォロア軸受100では、当該摺動部について、さらに以下の特徴を有することが好ましい。上記カムフォロア軸受100では、各傾斜面11a,20a1,20a2,40aは、研削仕上げ面またはラップ仕上げ面であることが好ましい。ただし各傾斜面は通常の旋削加工により仕上げられても、摺動に対する耐カジリ性および耐摩耗性を向上し使用期間を延長する効果が得られる。しかし各傾斜面を研削仕上げ面またはラップ仕上げ面とすることにより、傾斜面の粗さを向上できる。これにより、傾斜面での潤滑剤による潤滑状態が改善する。そもそもカジリおよび摩耗は、摺動部の潤滑状態が極端に悪化した状態で発生する。このため潤滑状態を改善することで、摺動に対する耐カジリ性および耐摩耗性を向上し使用期間を延長する効果を大幅に高められる。
【0052】
上記カムフォロア軸受100において、上記各傾斜面11a,20a1,20a2,40aの算術平均粗さRaは0.25μm以下であることが好ましい。これにより上記のように、潤滑状態を改善することで、摺動に対する耐カジリ性および耐摩耗性を向上し使用期間を延長できるとともに、各傾斜面の加工コストの高騰を抑制できる。
【0053】
上記カムフォロア軸受100において、第1傾斜面11aは、A方向についての端面11eと連なっている。第2傾斜面20a1,20a2は、A方向についての端面20eと連なっている。第3傾斜面40aは、A方向についての端面40eと連なっている。A方向についての端面11e,20e,40eからA方向に離れるにつれて、中心線AXから傾斜面(11a,20a1,20a2,40a)までのR方向の距離が単調変化(増加または減少)する。このような形状を有することで、上記の作用効果が得られる。
【0054】
(実施の形態2)
図7は、実施の形態2に係るカムフォロア軸受の構成を示す概略断面図である。図7を参照して、実施の形態2に係るカムフォロア軸受100は、大筋で実施の形態1のカムフォロア軸受100と同様の構成を有するため、同一の構成要素には同一の符号を付し、特に必要がない限りその説明を繰り返さない。ただし実施の形態2のカムフォロア軸受100は、スタッド16を有している。スタッド16は、全体がボルトの形状を有する。スタッド16は、頭部17と、側板圧入部13と、内輪接触部18と、他の側板圧入部13と、軸部14とを含んでおり、A方向について上記の順に並んでいる。頭部17と、内輪接触部18とは、中心線AXを中心とした円形の断面形状を有する。
【0055】
頭部17は、実施の形態1のフランジ部11に相当するが、頭部17には傾斜面を有さない。外方部材である外輪20の側方の両側に側板40を有する。つまり側板40はA方向について外輪20の右側と左側との双方に隣接する。このため側板圧入部13がA方向について内輪接触部18(ころ30)のA方向の両側に配置される。2つの側板40は互いに同一であり、外輪20の中心線RAに関して互いに対称となるように配置される。
【0056】
内輪接触部18のR方向の最外面18aに接触するように、円環形状の内輪19が配置される。内輪19は、その最外部に内輪軌道面19aを有する。内輪軌道面19aはA方向に沿って延び拡がる。内輪軌道面19aにはころ30の転動面が接触可能である。外輪20は、内輪19およびころ30のR方向の外側に配置される。
【0057】
本実施の形態のカムフォロア軸受100のように、内方部材として、スタッド10の代わりに内輪19が設けられてもよい。また外輪20のA方向の両側に側板40を有することにより、側板40および外輪20の少なくともいずれかが傾斜面40a,20a1,20a2を有し、内輪19には傾斜面を有さない構成であってもよい。このような構成においても、実施の形態1と同様の作用効果が得られる。ただし図7では側板40および外輪20の双方が傾斜面を有する。
【0058】
(実施の形態3)
図8は、実施の形態3のカムフォロア軸受における、実施の形態1の図2と同様の概略拡大断面図である。図8を参照して、実施の形態3に係るカムフォロア軸受100は、大筋で実施の形態1のカムフォロア軸受100と同様の構成を有するため、同一の構成要素には同一の符号を付し、特に必要がない限りその説明を繰り返さない。ただし実施の形態3のカムフォロア軸受100は、各傾斜面の傾斜方向が実施の形態1と逆方向となっている。つまり実施の形態1(図2)の断面図では下側(R方向内側)にて互いの傾斜面の間隔が狭まるように傾斜しているのに対し、実施の形態3(図8)ではの断面図では下側(R方向内側)にて互いの傾斜面の間隔が拡がるように傾斜している。
【0059】
より詳しくは、端面11eからA方向に離れるにつれて、中心線AXから第1傾斜面11cまでのR方向の距離が大きくなる(単調変化する)。第3傾斜面40cについても第1傾斜面11cと同様である。また端面20eからA方向に離れるにつれて、中心線AXから当該端面20eに連なる第2傾斜面20c1,20c2までのR方向の距離が小さくなる(単調変化する)。ただし逆に、端面からA方向に離れるにつれて中心線から傾斜面11c,40cまでのR方向の距離が小さくなってもよい。あるいは端面からA方向に離れるにつれて中心線から傾斜面20cまでのR方向の距離が大きくなってもよい。このような構成においても、実施の形態1と同様の作用効果が得られる。
【0060】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。矛盾のない限り、今回開示された実施の形態(各実施例)の少なくとも2つを組み合わせてもよい。本開示の基本的な範囲は、上記した説明ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることを意図される。
【0061】
<付記>
以下、本開示の諸態様を付記としてまとめて記載する。
【0062】
(付記1)
内方部材と、前記内方部材の外方に位置する外方部材と、前記内方部材と前記外方部材との間に介在する転動体と、外方部材の側方に位置する側板とを備え、
前記内方部材、前記外方部材および前記側板のうち少なくともいずれかは、前記内方部材の中心線が延びる軸方向について他の少なくともいずれかと対向する部分を含み、
前記対向する部分は、前記軸方向に直交する径方向に対して傾斜角を有する傾斜面を有する、カムフォロア軸受。
【0063】
(付記2)
前記内方部材は前記対向する部分を含み、
前記内方部材は、前記軸方向について前記側板とともに前記外方部材を挟むようにフランジを有し、
前記内方部材の前記傾斜面は、前記フランジに形成されている、付記1に記載のカムフォロア軸受。
【0064】
(付記3)
前記内方部材、前記外方部材、前記側板は前記対向する部分を含み、
前記内方部材の前記傾斜面は、前記外方部材と対向する第1傾斜面であり、
前記外方部材の前記傾斜面は、前記第1傾斜面および前記側板と対向する第2傾斜面であり、
前記側板の前記傾斜面は、前記第2傾斜面と対向する第3傾斜面であり、
前記第2傾斜面の前記傾斜角である第2傾斜角よりも、前記第1傾斜面の前記傾斜角である第1傾斜角は大きく、
前記第2傾斜角よりも、前記第3傾斜面の前記傾斜角である第3傾斜角は大きい、付記1に記載のカムフォロア軸受。
【0065】
(付記4)
前記外方部材、前記側板は前記対向する部分を含み、
前記内方部材の前記傾斜面は、前記外方部材と対向する第1傾斜面であり、
前記外方部材の前記傾斜面は、前記第1傾斜面および前記側板と対向する第2傾斜面であり、
前記側板の前記傾斜面は、前記第2傾斜面と対向する第3傾斜面であり、
前記第2傾斜面の前記傾斜角である第2傾斜角よりも、前記第1傾斜面の前記傾斜角である第1傾斜角は大きく、
前記第2傾斜角よりも、前記第3傾斜面の前記傾斜角である第3傾斜角は大きい、付記2に記載のカムフォロア軸受。
【0066】
(付記5)
前記第1傾斜角をθ1、前記第2傾斜角をθ2、前記第3傾斜角をθ3とすれば、
(数3)θ1≧θ2+0.15°・・・・・・(1)
(数4)θ3≧θ2+0.15°・・・・・・(2)
が成立する、付記3または4に記載のカムフォロア軸受。
【0067】
(付記6)
前記傾斜面は、研削仕上げ面またはラップ仕上げ面である、付記1~5のいずれか1項に記載のカムフォロア軸受。
【0068】
(付記7)
前記傾斜面の算術平均粗さRaは0.25μm以下である、付記1~6のいずれか1項に記載のカムフォロア軸受。
【0069】
(付記8)
前記傾斜面は、前記軸方向についての端面と連なっており、
前記軸方向についての前記端面から前記軸方向に離れるにつれて、前記中心線から前記傾斜面までの前記径方向の距離が単調変化する、付記1~7のいずれか1項に記載のカムフォロア軸受。
【符号の説明】
【0070】
10,16 スタッド、11 フランジ部、11a,11c 第1傾斜面、11b,20b1,20b2,40b 径方向面、11e,20e,40e 端面、11p,11r,12c,14b,22b,40p,40r テーパ、11q,40q 径一定部、11s,40s 表面、12 軌道面部、12a,19a 内輪軌道面、12b 段差部、12d 軌道面部本体、13 側板圧入部、13a,18a 最外面、14 軸部、14a 雄ネジ、17 頭部、18 内輪接触部、19 内輪、20 外輪、20a1,20a2,20c1,20c2 第2傾斜面、20i 外輪軌道面、21 第1部、21a 第1内壁、22 第2部、22a 第2内壁、30 ころ、40 側板、40a,40c 第3傾斜面、60 ナット、70 シール、100,900 カムフォロア軸受、AX,RA 中心線、B1,B2 境界部、H1 ハウジング、H2 相手側部材。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8