(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024132117
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】シートカバー固定具
(51)【国際特許分類】
A47C 31/02 20060101AFI20240920BHJP
B60N 2/58 20060101ALI20240920BHJP
B68G 7/05 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
A47C31/02 D
B60N2/58
B68G7/05 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023042788
(22)【出願日】2023-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 和大
【テーマコード(参考)】
3B087
【Fターム(参考)】
3B087DE03
(57)【要約】
【課題】シートカバーのカバー端末をシートフレームのフレーム面に適切に固定することが可能なシートカバー固定具を提供すること。
【解決手段】クッションカバー3Cのカバー端末3CAをロアアーム30に引き込んだ状態に固定するためのシートカバー固定具10は、クッションカバー3Cとカバー端末3CAに沿って縫合されるカバー縫合部11と、カバー縫合部11からカバー端末3CAの引き込み方向に延びる延長部B1、及び延長部B1の延びた先でロアアーム30の左側面30Aに固定されるフレーム固定部B2を有する脚部12と、を有する。脚部12が、カバー端末3CAに沿う長手方向をヒンジの軸方向とするインテグラルヒンジ13を延長部B1に有する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートカバーのカバー端末をシートフレームに引き込んだ状態に固定するためのシートカバー固定具であって、
前記シートカバーと前記カバー端末に沿って縫合されるカバー縫合部と、
該カバー縫合部から前記カバー端末の引き込み方向に延びる延長部、及び該延長部の延びた先で前記シートフレームの面状を成すフレーム面に固定されるフレーム固定部を有する脚部と、を有し、
前記脚部が、前記カバー端末に沿う長手方向をヒンジの軸方向とするインテグラルヒンジを前記延長部に有するシートカバー固定具。
【請求項2】
請求項1に記載のシートカバー固定具であって、
前記脚部が、前記長手方向に間隔をあけるように複数に分けられるシートカバー固定具。
【請求項3】
請求項2に記載のシートカバー固定具であって、
複数に分けられた前記脚部のうちの1つである第1脚部が、他の1つである第2脚部よりも長尺とされ、
前記インテグラルヒンジのうちの前記第1脚部に形成される第1ヒンジが、前記第2脚部に形成される第2ヒンジよりも前記カバー縫合部から離間した位置に形成されるシートカバー固定具。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載のシートカバー固定具であって、
前記脚部が、前記延長部における前記引き込み方向の複数の箇所に前記インテグラルヒンジを有するシートカバー固定具。
【請求項5】
請求項1から請求項3のいずれかに記載のシートカバー固定具であって、
前記インテグラルヒンジが、その板厚よりも前記引き込み方向に延びる長さの方が長いシートカバー固定具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートカバー固定具に関する。詳しくは、シートカバーのカバー端末をシートフレームに引き込んだ状態に固定するためのシートカバー固定具に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、シートカバーのカバー端末を樹脂プレートを用いてシートフレームに固定する構造が開示されている。具体的には、シートカバーのカバー端末に沿って縫合された樹脂プレートが、シート裏側へと引き込まれて、クリップによりシートフレームのフレーム外面に面当接した状態に固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の構成では、樹脂プレートがシートフレームのフレーム面に沿うように設けられる構成とされる。そのため、樹脂プレートをその周囲のシートフレームに組み付く装備品や張り出しなどとの干渉を避けられる形に曲げたりカットしたりする工夫が必要となる。また、樹脂プレートがシートフレームに固定される構成であることから、着座乗員の乗降時にシートの天板サイドがシート裏側へと押し込まれる荷重により、樹脂プレートがシートカバーを介してシート裏側へと強く押し曲げられる負荷を受ける懸念がある。そこで、本発明は、シートカバーのカバー端末をシートフレームのフレーム面に適切に固定することが可能なシートカバー固定具を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する手段として、本発明のシートカバー固定具は、次の手段をとる。
【0006】
すなわち、本発明の第1の発明は、シートカバーのカバー端末をシートフレームに引き込んだ状態に固定するためのシートカバー固定具であって、前記シートカバーと前記カバー端末に沿って縫合されるカバー縫合部と、該カバー縫合部から前記カバー端末の引き込み方向に延びる延長部、及び該延長部の延びた先で前記シートフレームの面状を成すフレーム面に固定されるフレーム固定部を有する脚部と、を有し、前記脚部が、前記カバー端末に沿う長手方向をヒンジの軸方向とするインテグラルヒンジを前記延長部に有するシートカバー固定具である。
【0007】
第1の発明によれば、脚部の延長部に形成されるインテグラルヒンジにより、脚部を、フレーム面に固定されるフレーム固定部を支点に、カバー縫合部をカバー端末から引張られる方向に向けるように柔軟に屈曲させることができる。この屈曲により、シートカバー固定具を、周辺部品と干渉させにくい折れ曲がり形状にすることができる。また、カバー端末が着座荷重によりシート裏側へと強く押し込まれても、脚部のインテグラルヒンジによる屈曲により、フレーム固定部に強い曲げの負荷を掛けないよういなすことができる。その結果、シートカバーのカバー端末をシートフレームのフレーム面に適切に固定することができる。
【0008】
本発明の第2の発明は、上記第1の発明において、前記脚部が、前記長手方向に間隔をあけるように複数に分けられるシートカバー固定具である。
【0009】
第2の発明によれば、脚部が複数に分けられることで、それぞれを柔軟に撓ませることができる。また、脚部の分けられたそれぞれの間のスペースにおいて周辺部品との干渉を回避することができる。また、カバー縫合部も、複数に分かれた脚部のそれぞれの間では、脚部がないことで柔軟に撓ませることが可能となる。したがって、カバー縫合部を撓ませて脚部の位置を容易に変えることが可能となることから、周辺部品との干渉を回避するための自由度を高めることができる。
【0010】
本発明の第3の発明は、上記第2の発明において、複数に分けられた前記脚部のうちの1つである第1脚部が、他の1つである第2脚部よりも長尺とされ、前記インテグラルヒンジのうちの前記第1脚部に形成される第1ヒンジが、前記第2脚部に形成される第2ヒンジよりも前記カバー縫合部から離間した位置に形成されるシートカバー固定具である。
【0011】
第3の発明によれば、複数に分けられた脚部が、互いに長さの異なる第1脚部と第2脚部とを備えることで、これらのフレーム固定部を、シートフレームの形状や周辺部品の配置に応じた適切な位置に固定することができる。また、これら第1脚部と第2脚部とに形成される第1ヒンジと第2ヒンジとが、フレーム固定部に近い位置に設定されることとなる。それにより、シートカバーのテンションにより各フレーム固定部に掛けられる曲げ荷重を、各フレーム固定部の固定点に近い位置に掛けることができる。その結果、各フレーム固定部に掛けられる曲げの負荷を軽減することができる。
【0012】
本発明の第4の発明は、上記第1から第3のいずれかの発明において、前記脚部が、前記延長部における前記引き込み方向の複数の箇所に前記インテグラルヒンジを有するシートカバー固定具である。
【0013】
第4の発明によれば、脚部をより柔軟に屈曲させることができる。
【0014】
本発明の第5の発明は、上記第1から第3のいずれかの発明において、前記インテグラルヒンジが、その板厚よりも前記引き込み方向に延びる長さの方が長いシートカバー固定具である。
【0015】
第5の発明によれば、インテグラルヒンジにかかる曲げ応力を長さ方向に分散させることができ、インテグラルヒンジの繰り返しの曲げに対する耐久性や柔軟性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】第1の実施形態に係るシートカバー固定具が適用されたシートの斜視図である。
【
図3】シートカバー固定具をシートフレームから外した分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明を実施するための形態について、図面を用いて説明する。
【0018】
《第1の実施形態》
(シートカバー固定具10の概略構成)
始めに、本発明の第1の実施形態に係るシートカバー固定具10の構成について、
図1~
図7を用いて説明する。なお、以下の説明において、前後上下左右等の各方向を示す場合には、各図中に示されたそれぞれの方向を指すものとする。
【0019】
各図中に示す方向は、それぞれ、シートカバー固定具10を備えるシート1の着座乗員から見た方向となっている。以下の説明において、具体的な参照図を示さない場合、或いは参照図に該当する符号がない場合には、
図1~
図7のいずれかの図を適宜参照するものとする。
【0020】
図1に示すように、本実施形態に係るシートカバー固定具10は、自動車のフロア上に設置されるシート1に適用されている。シート1は、着座乗員の背凭れ部となるシートバック2と、着座部となるシートクッション3と、頭凭れ部となる不図示のヘッドレストと、を備える。
【0021】
シートクッション3は、その骨格を成すクッションフレーム3Fと、クッションフレーム3Fの上部に組み付くクッションパッド3Pと、クッションパッド3Pを覆うクッションカバー3Cと、を有する。クッションフレーム3Fは、シートクッション3の周囲側面に沿った骨格を成す平面視枠状に組まれた構成とされる。ここで、クッションカバー3Cが本発明の「シートカバー」に相当する。
【0022】
クッションパッド3Pは、ポリウレタン発泡成形体から成り、クッションフレーム3Fの上部全域に上方から覆い被さるようにセットされる。クッションカバー3Cは、クッションパッド3Pをパッド表面側から覆うように被せられ、その前後左右の各周縁部がシート裏側となる下側に引き込まれてクッションフレーム3Fに固定されている。それにより、クッションカバー3Cは、クッションパッド3Pのパッド表面に広く張られた状態として、クッションパッド3Pをクッションフレーム3Fの上部に位置固定した状態に保持する。
【0023】
このうち、クッションカバー3Cの左側の周縁部は、そのカバー端末3CAに沿って縫合されたシートカバー固定具10により、クッションフレーム3Fの左側のロアアーム30に固定されている。
図2~
図3に示すように、シートカバー固定具10は、クッションカバー3Cのカバー端末3CAに沿って前後方向に長尺状に延びる1枚の平板状の樹脂プレートにより構成されている。
【0024】
シートカバー固定具10は、前後に並ぶ3つのクリップCLにより、左側のロアアーム30の左側面30Aに当てられた状態に固定されている。ここで、ロアアーム30が本発明の「シートフレーム」に相当し、左側面30Aが本発明の「フレーム面」に相当する。
【0025】
シートカバー固定具10は、具体的には、クッションカバー3Cのカバー端末3CAに縫合されるカバー縫合部11と、カバー縫合部11からカバー端末3CAの引き込み方向に延びる脚部12と、を有する。脚部12には、インテグラルヒンジ13が形成されている。インテグラルヒンジ13は、カバー端末3CAに沿う長手方向(前後方向)をヒンジの軸方向とするように脚部12の板厚を部分的に薄くする形状とされる。
【0026】
カバー縫合部11は、カバー端末3CAに沿って前後方向に長尺状に延びる細長い平板形状とされる。カバー縫合部11は、カバー端末3CAに沿って前後方向に縫い目が延びるようにカバー端末3CAと縫合されている。
【0027】
図4に示すように、脚部12は、カバー縫合部11の前端下縁部から引き込み方向に平板状に延びる前脚部12Aと、カバー縫合部11の前後方向の略中央下縁部から引き込み方向に平板状に延びる中脚部12Bと、カバー縫合部11の後端下縁部から引き込み方向に平板状に延びる後脚部12Cと、から成る。前脚部12Aと中脚部12Bと後脚部12Cとは、互いに前後方向に間隔をあけて形成されている。
【0028】
前脚部12Aは、カバー縫合部11の前端下縁部から延びる平板状の延長部A1と、延長部A1の延びた先に形成される平板状のフレーム固定部A2と、を有する。中脚部12Bも同様に、カバー縫合部11の前後方向の略中央下縁部から延びる平板状の延長部B1と、延長部B1の延びた先に形成される平板状のフレーム固定部B2と、を有する。後脚部12Cも同様に、カバー縫合部11の後端下縁部から延びる平板状の延長部C1と、延長部C1の延びた先に形成される平板状のフレーム固定部C2と、を有する。
【0029】
脚部12の長さは、前脚部12Aが最も短く、次いで中脚部12Bが長く、後脚部12Cが最も長くなっている。それに伴い、後脚部12Cに形成されたフレーム固定部C2は、中脚部12Bに形成されたフレーム固定部B2よりもカバー縫合部11から遠い位置に配置されている。ここで、後脚部12Cが本発明の「第1脚部」に相当し、中脚部12Bが本発明の「第2脚部」に相当する。
【0030】
インテグラルヒンジ13は、前脚部12Aの延長部A1に形成される前脚ヒンジ13Aと、中脚部12Bの延長部B1に形成される中脚ヒンジ13Bと、後脚部12Cの延長部C1に形成される後脚ヒンジ13Cと、から成る。ここで、後脚ヒンジ13Cが本発明の「第1ヒンジ」に相当し、中脚ヒンジ13Bが本発明の「第2ヒンジ」に相当する。前脚ヒンジ13Aは、前脚部12Aの延長部A1の延びる図示上下方向の中間部1箇所にのみ形成されている。
【0031】
中脚ヒンジ13Bは、中脚部12Bの延長部B1の延びる図示上下方向の2箇所に形成されている。後脚ヒンジ13Cは、後脚部12Cの延長部C1の延びる図示上下方向の2箇所に形成されている。各後脚ヒンジ13Cは、その引き込み方向となる上下方向の位置が、中脚部12Bに形成された上側の中脚ヒンジ13Bよりも下側の位置、すなわちカバー縫合部11から遠い位置に形成されている。詳しくは、下側の後脚ヒンジ13Cは、下側の中脚ヒンジ13Bよりも下側の位置、すなわちカバー縫合部11から遠い位置に形成されている。
【0032】
図2~
図3に示すように、シートカバー固定具10は、次の手順によりロアアーム30の左側面30Aに固定されている。先ず、シートカバー固定具10を、カバー縫合部11に縫合されたクッションカバー3Cのテンションに抗してシート裏側へと引き込む。そして、シートカバー固定具10の各フレーム固定部A2,B2,C2を、ロアアーム30の左側面30Aの対応する各取付箇所にそれぞれ面当接させた状態にセットする。
【0033】
次いで、各フレーム固定部A2,B2,C2の外側(左側)からそれぞれクリップCLを差し込んでロアアーム30に締結する。それにより、
図5~
図6に示すように、シートカバー固定具10は、各フレーム固定部A2,B2,C2(フレーム固定部A2については
図2参照)がロアアーム30の左側面30Aに面当接した状態に固定される。そして、シートカバー固定具10は、クッションカバー3Cから掛けられるテンションにより、前脚部12A(
図2参照)、中脚部12B及び後脚部12Cが、それぞれ、前脚ヒンジ13A(
図2参照)、中脚ヒンジ13B及び後脚ヒンジ13Cのまわりにカバー端末3CAの引き込み方向である左斜め上方向を向く形に屈曲する。
【0034】
このような構成により、シートカバー固定具10は、例えば、着座乗員の乗降時に、シートクッション3の天板サイドに局所的な着座荷重が掛けられて、クッションカバー3Cのカバー端末3CAがシートカバー固定具10を支点に下方(シート裏側)に強く引き込まれることがあっても、前脚ヒンジ13A、中脚ヒンジ13B及び後脚ヒンジ13Cを中心とした屈曲により、カバー端末3CAから受ける荷重をいなすことができるようになっている。
【0035】
各フレーム固定部A2,B2,C2は、ロアアーム30の高さ方向の中間部に形成された、右側に凹む領域である凹面部31にそれぞれ固定されている。詳しくは、
図2~
図3及び
図5に示すように、真ん中のフレーム固定部B2は、ロアアーム30の凹面部31の一部分である、凹みの深さが他の部分に対して半分程度とされた中段差部32に固定されている。
【0036】
また、
図2~
図3に示すように、後側のフレーム固定部C2は、ロアアーム30の凹面部31から下方に張り出さないように取り付けられるべく、カバー縫合部11の途中箇所を上方に曲げるように押し上げられた状態で、凹面部31に固定されている。このようにカバー縫合部11の途中箇所を曲げることができるようになっている理由は、カバー縫合部11から延びる前脚部12Aと中脚部12Bと後脚部12Cとが互いの間隔をあけて形成されているからである。
【0037】
すなわち、カバー縫合部11は、前脚部12Aと中脚部12Bと後脚部12Cとが互いの間隔をあけて形成されていることで、これら(前脚部12A、中脚部12B及び後脚部12C)のない間の部分では剛性が低く曲げやすい構成とされている。したがって、上記の態様に限らず、カバー縫合部11をロアアーム30との干渉を回避できる形に自由に撓ませることも可能である。
【0038】
上記固定に伴い、
図5~
図6に示すように、シートカバー固定具10は、ロアアーム30の凹面部31に取り付く各フレーム固定部A2,B2,C2(フレーム固定部A2については
図2参照)の直上に、凹面部31よりも左方に張り出すロアアーム30の上縁部33がそれぞれ配置される構成とされる。しかし、シートカバー固定具10は、上述したカバー端末3CAの引き込み方向に向けられる前脚部12A(
図2参照)、中脚部12B及び後脚部12Cの屈曲により、ロアアーム30の上縁部33との干渉を回避した状態に設けられるようになっている。ここで、ロアアーム30の上縁部33が、本発明の「周辺部品」に相当する。
【0039】
詳しくは、
図7に示すように、シートカバー固定具10は、ロアアーム30の凹面部31に固定される後脚部12Cが、凹面部31内の中段差部32に固定される中脚部12Bよりも長いことで、これらを適切にロアアーム30の取付箇所に当てられるようになっている。なおかつ、脚の長い後脚部12Cに形成される下側の後脚ヒンジ13Cが、脚の短い中脚部12Bに形成される下側の中脚ヒンジ13Bよりも遠い(低い)位置に形成されていることで、後脚ヒンジ13Cと中脚ヒンジ13Bとの双方が、対応する各フレーム固定部C2,B2の固定点(クリップCL)に近い位置に配置されている。
【0040】
それにより、クッションカバー3Cのテンションにより各フレーム固定部C2,B2に掛けられる曲げ荷重が、各フレーム固定部C2,B2の固定点(クリップCL)に近い位置に掛けられるようになっている。その結果、各フレーム固定部C2,B2に掛けられる曲げの負荷を軽減することができる。なお、
図2に示す短尺な前脚部12Aの前脚ヒンジ13Aも、フレーム固定部A2の固定点(クリップCL)に近い位置に形成されている。
【0041】
図5に示すように、真ん中の中脚部12Bには、上下2つの中脚ヒンジ13Bが形成されている。また、後脚部12Cにも、上下2つの後脚ヒンジ13Cが形成されている。それにより、中脚部12Bと後脚部12Cとは、
図2で前述したように互いの間のカバー縫合部11が上方にクランク状に曲げられるのに伴い、カバー縫合部11から捩じられるように負荷を受けても、上下2つの中脚ヒンジ13Bや後脚ヒンジ13Cまわりの屈曲によって柔軟に撓むことができるようになっている。
【0042】
また、
図2に示すように、シートカバー固定具10は、前脚部12Aと中脚部12Bと後脚部12Cとの間があけられていることで、これらの間に設けられるロアアーム30の左側面30Aに取り付く装備品Pとの干渉を回避できるようになっている。ここで、装備品Pが、本発明の「周辺部品」に相当する。
【0043】
図5~
図6に示すように、前脚ヒンジ13A(
図2参照)、中脚ヒンジ13B及び後脚ヒンジ13Cは、それぞれ、それらの板厚Htよりも引き込み方向に延びる長さHnの方が長い形状とされている。それにより、前脚ヒンジ13A、中脚ヒンジ13B及び後脚ヒンジ13Cは、それらにかかる曲げ応力が1箇所に集中せず長さ方向に分散されるようになっており、繰り返しの曲げに対する耐久性や柔軟性が高められている。
【0044】
以上をまとめると、本実施形態に係るシートカバー固定具10は、次のような構成とされている。なお、以下において括弧書きで付す符号は、上記実施形態で示した各構成に対応する符号である。
【0045】
すなわち、シートカバー固定具(10)は、シートカバー(3C)のカバー端末(3CA)をシートフレーム(30)に引き込んだ状態に固定するための固定具であり、シートカバー(3C)とカバー端末(3CA)に沿って縫合されるカバー縫合部(11)と、カバー縫合部(11)からカバー端末(3CA)の引き込み方向に延びる延長部(A1,B1,C1)、及び延長部(A1,B1,C1)の延びた先でシートフレーム(30)の面状を成すフレーム面(30A)に固定されるフレーム固定部(A2,B2,C2)を有する脚部(12)と、を有する。脚部(12)が、カバー端末(3CA)に沿う長手方向をヒンジの軸方向とするインテグラルヒンジ(13)を延長部(A1,B1,C1)に有する。
【0046】
上記構成によれば、脚部(12)の延長部(A1,B1,C1)に形成されるインテグラルヒンジ(13)により、脚部(12)を、フレーム面(30A)に固定されるフレーム固定部(A2,B2,C2)を支点に、カバー縫合部(11)をカバー端末(3CA)から引張られる方向に向けるように柔軟に屈曲させることができる。この屈曲により、シートカバー固定具(10)を、周辺部品(33)と干渉させにくい折れ曲がり形状にすることができる。
【0047】
また、カバー端末(3CA)が着座荷重によりシート裏側へと強く押し込まれても、脚部(12)のインテグラルヒンジ(13)による屈曲により、フレーム固定部(A2,B2,C2)に強い曲げの負荷を掛けないよういなすことができる。その結果、シートカバー(3C)のカバー端末(3CA)をシートフレーム(30)のフレーム面(30A)に適切に固定することができる。
【0048】
また、脚部(12)が、長手方向に間隔をあけるように複数に分けられる。上記構成によれば、脚部(12)が複数に分けられることで、それぞれを柔軟に撓ませることができる。また、脚部(12)の分けられたそれぞれの間のスペースにおいて周辺部品(P)との干渉を回避することができる。また、カバー縫合部(11)も、複数に分かれた脚部(12)のそれぞれの間では、脚部(12)がないことで柔軟に撓ませることが可能となる。したがって、カバー縫合部(11)を撓ませて脚部(12)の位置を容易に変えることが可能となることから、周辺部品(33,P)との干渉を回避するための自由度を高めることができる。
【0049】
また、複数に分けられた脚部(12)のうちの1つである第1脚部(12C)が、他の1つである第2脚部(12B)よりも長尺とされる。インテグラルヒンジ(13)のうちの第1脚部(12C)に形成される第1ヒンジ(13C)が、第2脚部(12B)に形成される第2ヒンジ(13B)よりもカバー縫合部(11)から離間した位置に形成される。
【0050】
上記構成によれば、複数に分けられた脚部(12)が、互いに長さの異なる第1脚部(12C)と第2脚部(12B)とを備えることで、これらのフレーム固定部(C2,B2)を、シートフレーム(30)の形状や周辺部品(33,P)の配置に応じた適切な位置に固定することができる。そして、これら第1脚部(12C)と第2脚部(12B)とに形成される第1ヒンジ(13C)と第2ヒンジ(13B)とが、フレーム固定部(C2,B2)に近い位置に設定されることとなる。
【0051】
それにより、シートカバー(3C)のテンションにより各フレーム固定部(C2,B2)に掛けられる曲げ荷重を、各フレーム固定部(C2,B2)の固定点(CL)に近い位置に掛けることができる。その結果、各フレーム固定部(C2,B2)に掛けられる曲げの負荷を軽減することができる。
【0052】
また、脚部(12)が、延長部(B1,C1)における引き込み方向の複数の箇所にインテグラルヒンジ(13)を有する。上記構成によれば、脚部(12)をより柔軟に屈曲させることができる。
【0053】
また、インテグラルヒンジ(13)が、その板厚(Ht)よりも引き込み方向に延びる長さ(Hn)の方が長い。上記構成によれば、インテグラルヒンジ(13)にかかる曲げ応力を長さ方向に分散させることができ、インテグラルヒンジ(13)の繰り返しの曲げに対する耐久性や柔軟性を高めることができる。
【0054】
《その他の実施形態について》
以上、本発明の実施形態を1つの実施形態を用いて説明したが、本発明は上記実施形態の他、各種の形態で実施することができるものである。
【0055】
1.本発明のシートカバー固定具は、乗物用シートの他、乗物用以外のシートのカバー端末をシートフレームに引き込んだ状態に固定するための用途に適用されるものであっても良い。シートカバー固定具は、シートクッションの他、シートバックに適用されるものであっても良い。シートカバー固定具が固定されるシートフレームのフレーム面は、シートフレームの外側面(周囲側面)の他、シート裏側を向く背裏面(シートクッションにおける下側面、シートバックにおける後側面)であっても良い。
【0056】
シートカバー固定具は、クッションカバーの左右のカバー端末をシートフレームに引き込んで固定するものの他、クッションカバーの前後のカバー端末をシートフレームに引き込んで固定するものであっても良い。また、シートカバー固定具は、バックカバーの左右のカバー端末や上下のカバー端末をシートフレームに引き込んで固定するものであっても良い。
【0057】
2.シートカバー固定具の脚部は、複数に分けられず、連続した1つで構成されていても良い。また、脚部は、互いの間隔をあけずに複数に分けられる構成であっても良い。そのような構成であっても、脚部に形成されるインテグラルヒンジにより、脚部を、上記実施形態で示したロアアーム30の上縁部33のような周辺部品との干渉を避けられる形に屈曲させることができる。脚部に形成されるインテグラルヒンジは、引き込み方向の1箇所又は複数箇所(2箇所又は3箇所以上)にあっても良い。インテグラルヒンジは、脚部が複数に分けられる場合において、その全てに複数箇所ずつ形成されていても良い。
【0058】
3.フレーム固定部は、クリップの他、ビスの締結や圧入嵌合によってシートフレームのフレーム面に固定されるものであっても良い。
【符号の説明】
【0059】
1 シート
2 シートバック
3 シートクッション
3F クッションフレーム
3P クッションパッド
3C クッションカバー(シートカバー)
3CA カバー端末
10 シートカバー固定具
11 カバー縫合部
12 脚部
12A 前脚部
A1 延長部
A2 フレーム固定部
12B 中脚部(第2脚部)
B1 延長部
B2 フレーム固定部
12C 後脚部(第1脚部)
C1 延長部
C2 フレーム固定部
13 インテグラルヒンジ
13A 前脚ヒンジ
13B 中脚ヒンジ(第2ヒンジ)
13C 後脚ヒンジ(第1ヒンジ)
CL クリップ(固定点)
30 ロアアーム(シートフレーム)
30A 左側面(フレーム面)
31 凹面部
32 中段差部
33 上縁部(周辺部品)
P 装備品(周辺部品)
Ht 板厚
Hn 長さ