(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024013212
(43)【公開日】2024-01-31
(54)【発明の名称】コーティング方法
(51)【国際特許分類】
B05D 1/28 20060101AFI20240124BHJP
B05D 5/06 20060101ALI20240124BHJP
E04F 13/02 20060101ALI20240124BHJP
C09D 201/02 20060101ALI20240124BHJP
【FI】
B05D1/28
B05D5/06 104J
E04F13/02 H
C09D201/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023113444
(22)【出願日】2023-07-11
(31)【優先権主張番号】P 2022114972
(32)【優先日】2022-07-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】510114125
【氏名又は名称】株式会社エフコンサルタント
(72)【発明者】
【氏名】都合 真弘
(72)【発明者】
【氏名】守本 浩直
【テーマコード(参考)】
4D075
4J038
【Fターム(参考)】
4D075AC57
4D075AC88
4D075AC91
4D075BB91Y
4D075CA47
4D075CA48
4D075CB21
4D075DA06
4D075DB11
4D075DC02
4D075EB22
4D075EC01
4D075EC02
4D075EC04
4D075EC11
4D075EC53
4D075EC54
4J038CG141
4J038HA216
4J038HA446
4J038MA02
4J038MA10
(57)【要約】
【課題】本発明は、優れた模様意匠仕上げを効率的かつ簡便に行うことができるコーティング方法を提供する。
【解決手段】本発明のコーティング方法は、特定の粉粒体を含む仕上塗材を、特殊な多孔質ローラーを用いて塗付し、さらに該仕上塗材表面にパターン付与することを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に、仕上塗材を、ローラーを用いて塗付するコーティング方法であって、
(1)該ローラーとして、芯材の周囲に多孔質層を有し、該多孔質層の表面は、独立した窪みを複数有し、窪み一つの大きさは2mm以上30mm以下である多孔質ローラーを用い、
結合剤、及び、大きさが2μm以上2mm未満の粉粒体(A)を含む粉粒体、を含有する仕上塗材を塗付する工程、
(2)(1)で塗付された仕上塗材が硬化する前に、パターン付与具を用いて、仕上塗材表面にパターン付与する工程、
を含むことを特徴とするコーティング方法。
【請求項2】
前記(1)が、前記多孔質ローラーを用い、前記仕上塗材を、塗付け量0.8kg/m 2以上で塗付する工程、であることを特徴とする請求項1に記載のコーティング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なコーティング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自然石調を施す材料として、例えば、ミクロンサイズ以上の粒子を有する仕上塗材等が挙げられる。このような仕上塗材によれば、粒子の粒がちりばめられたような、自然石調の模様意匠仕上げを施すことができ、近年、建築物の壁面等において好適に用いられている。
【0003】
このような仕上塗材のコーティングには、通常スプレーガン等に代表される吹き付けタイプの器具が用いられている(例えば、特許文献1、2等)。しかし、材料ロス等の観点から、最近では、ローラータイプの器具への切り替えが要望されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001-20487号公報
【特許文献2】特開2004-99911号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献においても、ローラーによるコーティングに関する記載がある。ところが、実際にローラータイプの器具を用いると、ローラーから基材への仕上塗材の転写が上手く行われず、所望量の仕上塗材を転写することが難しい。さらに、その後仕上塗材表面にパターン付与しようとしても、仕上塗材量が少なく、所望の模様が得られない等の問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、このような課題を解決するために鋭意検討した結果、特定の粉粒体を含む仕上塗材を、特殊な多孔質ローラーを用いて塗付し、さらに該仕上塗材表面にパターン付与することにより、優れた模様意匠仕上げを効率的かつ簡便に行うことができることを見出し、本発明を完成させた。
【0007】
すなわち、本発明は、下記の特徴を有するものである。
1.基材上に、仕上塗材を、ローラーを用いて塗付するコーティング方法であって、
(1)該ローラーとして、芯材の周囲に多孔質層を有し、該多孔質層の表面は、独立した窪みを複数有し、窪み一つの大きさは2mm以上30mm以下である多孔質ローラーを用い、
結合剤、及び、大きさが2μm以上2mm未満の粉粒体(A)を含む粉粒体、を含有する仕上塗材を塗付する工程、
(2)(1)で塗付された仕上塗材が硬化する前に、パターン付与器具を用いて、仕上塗材表面にパターン付与する工程、
を含むことを特徴とするコーティング方法。
2.前記(1)が、前記多孔質ローラーを用い、前記仕上塗材を、塗付け量0.8kg/m 2以上で塗付する工程、であることを特徴とする1.に記載のコーティング方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明のコーティング方法によれば、優れた模様意匠仕上げを効率的かつ簡便に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図3】開放孔と独立孔を有する多孔質層の断面の拡大図である。
【
図4】連通孔を有する多孔質層の断面の拡大図である。
【符号の説明】
【0010】
X :窪み
Y :孔
Y1:開放孔(多孔質層の表面)
Y2:独立孔
Y3:連通孔
a :窪みの大きさ
b :窪み間距離
1 :芯材
2 :補強材
3 :ハンドル軸
4 :多孔質層
5 :ハンドル
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。
【0012】
本発明は、基材上に、仕上塗材を、ローラーを用いて塗付するコーティング方法であって、
(1)該ローラーとして、芯材の周囲に多孔質層を有し、該多孔質層の表面は、独立した窪みを複数有し、窪み一つの大きさは2mm以上30mm以下である多孔質ローラーを用い、
結合剤、及び、大きさが2μm以上2mm未満の粉粒体(A)を含む粉粒体、を含有する仕上塗材を塗付する工程、
(2)(1)で塗付された仕上塗材が硬化する前に、パターン付与器具を用いて、仕上塗材表面にパターン付与する工程、
を含むことを特徴とするものである。
工程(1)では、多孔質ローラーを用いることにより、大きさが2μm以上2mm未満の粉粒体(A)を含む仕上塗材であっても、該多孔質ローラー中に多量の仕上塗材を含ませることができ、1度の塗付でより多くの仕上塗材を転写することが可能である。
さらに工程(2)で、仕上塗材が硬化する前に、パターン付与器具を用いて、仕上塗材表面にパターン付与する、ことにより凹凸感のあるパターンを効率よく付与することが可能である。
したがって、本発明コーティング方法では、粉粒体(A)を含む仕上塗材から得られる意匠性と、パターンによる意匠性とがあいまって、優れた美観性を有する意匠を得ることができる。
【0013】
<多孔質ローラー>
本発明で使用する多孔質ローラーは、例えば、
図1に示すように、筒状の芯材の外表面に多孔質層が備わったものであり、筒状の芯材は、軸を備えたハンドルを装着できるように空洞となっており、該空洞にハンドル軸を装着して使用することができるものである。
【0014】
筒状の芯材としては、特に限定されず、例えば、プラスチック製、木製、紙製、金属製等の芯材を用いることができ、また、ハンドル軸と芯材との密着性を高めるために、ハンドル軸と芯材の間に、例えば、プラスチック製、ゴム製、ガラス製、金属製、繊維製等の補強材を用いることもできる。
【0015】
本発明の多孔質ローラーは、その表面(多孔質ローラーを構成する多孔質層の表面)に、独立した窪みを複数有するものである。「独立した窪み」とは、多孔質層の表面において、となりあう窪みどうしが多孔質層の多孔質素材によって隔てられた状態で存在する窪みのことである。
【0016】
このような多孔質ローラーを用いることによって、窪みに加え、孔にも仕上塗材成分が入り込みやすく、多孔質層に、より多くの仕上塗材を含ませることができ、1度の塗付で、より多くの仕上塗材を転写することができ、効率的かつ簡便に行うことができる。
【0017】
窪み一つの形状としては、多孔質ローラー表面からみた場合、例えば、円形状、だ円形状、三角形状、四角形状、六角形状、多角形等、特に限定されない。
【0018】
窪み一つの大きさは、多孔質ローラー表面からみた場合、好ましくは2mm以上30mm以下、より好ましくは3mm以上25mm以下、さらに好ましくは5mm以上20mm以下、特に好ましくは7mm以上18mm以下、最も好ましくは9mm以上15mm以下である。このような大きさであることにより、仕上塗材中に含まれる大きさが2μm以上2mm未満の粉粒体(A)を、窪みの中に無理なく含ませることができ、1度の塗付で、より多くの仕上塗材を基材へ転写することが可能である。
なお、窪みの大きさとは、各形状の重心からの最大距離×2で算出すればよく、例えば、円形の場合は直径、だ円形の場合は長径、正三角形の場合は1辺の長さをLとするとLcos30°×4/3、正四角形の場合は対角線の長さ、正六角形の場合は外接円の直径などにより算出することができる。
【0019】
なお、窪みの形状、大きさは、多孔質ローラー表面上の形状、大きさのことである。
【0020】
このような多孔質層の表面に複数有する窪みの大きさは、後述する孔の大きさよりも、好ましくは1.5倍以上(より好ましくは2倍以上)大きいものである。
【0021】
また、多孔質ローラー表面における窪みの総面積(窪みの面積の総和)は、ローラー表面全体の面積(ローラー外周面の面積)に対し、好ましくは10%以上80%以下、より好ましくは12%以上70%以下、さらに好ましくは15%以上60%以下、特に好ましくは20%以上50%以下、最も好ましくは25%以上45%以下である。ローラー表面のうち窪みの総面積が上記範囲内であることにより、仕上塗材を基材へ効率良く転写することができる。
【0022】
なお、多孔質ローラー表面における窪みの総面積の割合(%)は、窪みの総面積を、ローラーの表面面積(ローラーの幅×ローラー表面の円周)で除することにより求めることができる。例えば、窪みとして、大きさが一律の円形状のものであれば、(円の面積×個数)/(ローラーの表面面積)×100で求めることができる。形状がランダムであれば、ローラー表面の展開図を作成し、そこから窪みの総面積を求めるこができる。
【0023】
窪みの深さは、好ましくは1mm以上25mm未満、より好ましくは3mm以上22mm以下、さらに好ましくは5mm以上20mm以下、特に好ましくは7mm以上18mm以下、最も好ましくは10mm以上15mm以下である。また深さ方向の形状は、特に限定されないが、例えば表面の形状が円形状ならば、円柱のように深さ方向に対し同一の形状であるもの、また、円錐、円錐台のように深さ方向に対し大きさが小さくなっていくもの等が好ましい。窪みの深さは、多孔質層の厚みと同じでもよいし、多孔質層の厚みより小さくてもよい。なお、窪みの深さは、多孔質ローラー表面から最も離れた最深部までの距離のことである。
【0024】
本発明で用いる多孔質ローラーは、このような窪みを複数有するものである。窪みの配列は、ランダムでも、規則的であってもよい。本発明では、窪みが規則的に配列されていることが好ましく、例えば、多孔質ローラー表面からみた場合、大きい円と小さい円が交互に配列されたもの、円形と三角形が交互に配列されたもの、円Aと円Bの間隔と円Bと円Cの間隔が異なるが円A、円B、円Cは規則的に配列されたもの等も、規則的に配列されたものの一例である。
【0025】
本発明では、特に大きさ及び/または形状が均等な窪みが規則的に配列されていることが好ましい。このような窪みは、等間隔で配列されていることが好ましい。
【0026】
本発明で用いる多孔質ローラーは、
図2に示すように、隣接する窪み間距離(b)は窪みの大きさ(a)に対し(b/a)、1.05倍以上3.0倍以下(さらには1.1倍以上2.8倍以下、さらには1.2倍以上2.6倍以下)であることが好ましい。このような間隔にて規則的に配列されていることにより、窪みによる意匠の偏りがなく、簡便に、より優れた模様意匠を得られやすい。なお、隣接する窪み間距離(b)とは、各窪み形状の重心間距離のことである。
【0027】
窪みを複数有する多孔質層の製造方法は、特に限定されないが、窪みのない多孔質層に対し、所定の大きさ、形状となるように多孔質層の一部に熱をかけて溶融させたり、カッター、ドリル等で切り取ったり、型枠で成形させる等で製造することができる。また、多孔質層を筒状の芯材に備えつける前に多孔質層に窪みをつくってもよいし、筒状の芯材に備えつけた後に多孔質層に窪みをつくってもよい。このような窪みを複数有する多孔質ローラーをハンドル軸に装着して使用することができる。
【0028】
なお、本発明多孔質ローラーを構成する多孔質層は、層表面・層内部に多数の「孔(気孔)」を有するもので、孔には、ひとつひとつ独立して存在する独立孔型、孔どうしが連なった連通孔型等が挙げられる(
図3及び
図4参照)。
【0029】
本発明で用いる多孔質ローラーとしては、例えば、スポンジ状の多孔質層を有するローラーが好ましい。また、多孔質層としては、連通孔を有する多孔質層、または、独立孔を有する多孔質層等特に限定されないが、本発明では連通孔を有する多孔質層が好ましい(
図3及び
図4参照)。独立孔とは、孔どうしの間を隔てる膜のようなものが存在し、孔一つ一つが独立した形状となっているもので、連通孔とは、孔どうしの間を隔てる膜のようなものが無く、孔どうしが連なった形状となっているものである。連通孔を有する多孔質層ローラーは、
図4に示すように、表面及び内部ともに開放孔を有する構造であり、孔内部にまで仕上塗材が入り込み、より多くの仕上塗材を多孔質層に含ませることができる。さらに、仕上塗材の粘度も幅広い範囲で適用可能である。
【0030】
多孔質層の孔の大きさは、窪み一つの大きさより小さく、0.5mm以上10mm以下、より好ましくは0.7mm以上8mm以下、であり、さらに好ましくは1mm以上6mm以下、最も好ましくは1.2mm以上5mm以下である。
なお、孔の大きさは、各孔の重心からの最大距離×2で算出すればよい。また、孔の大きさは、例えば、表面や切断面の開放孔から求めることができる。また、孔の大きさは、10か所を算出した平均値である。
【0031】
多孔質層の材質としては、特に限定されないが、例えば、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、エステル樹脂、エチレン樹脂等の樹脂等が挙げられ、これらをスポンジ状に多孔化したものである。
【0032】
なお、本発明で用いる多孔質ローラーに対して、ウール、合成繊維等の繊維質ローラーを用いて本発明の仕上塗材を塗付する場合、1度の塗付では十分転写することができず、また粉粒体の偏り、仕上がりムラが発生しやすい。また、多孔質層を有するローラーであっても窪みを有さない場合も、1度の塗付では十分転写することができず、また粉粒体の偏り、仕上がりムラが発生しやすい。
【0033】
多孔質ローラー(多孔質層)の厚みは、好ましくは1mm以上25mm未満、より好ましくは3mm以上22mm以下、さらに好ましくは5mm以上20mm以下、特に好ましくは7mm以上18mm以下、最も好ましくは10mm以上15mm以下である。このような厚みであれば、仕上塗材の塗付効率が良く、より優れた作業性を得ることができ、模様意匠の偏りを抑え、効率良く十分な量の仕上塗材が転写できる。
なお、多孔質ローラーの厚みは、多孔質層断面において、窪みを有さない箇所の多孔質層の厚みを測定した値である。
【0034】
多孔質ローラーの幅(長さ)は、特に限定されないが、好ましくは80mm以上250mm以下程度である。また、多孔質ローラーの直径(筒径)(多孔質層含む)は、好ましくは15mm以上100mm以下程度である。
【0035】
<仕上塗材>
本発明で用いる仕上塗材は、大きさ2μm以上2mm未満(好ましくは5μm以上1mm以下)の粉粒体(A)を含む粉粒体を含有することを特徴とするものであり、このような粉粒体は塗膜表面にて粒状に視認できる大きさであり、独自の意匠性を形成する材料である。なお、粉粒体の大きさは、粉粒体を水平面に安定に静置させ、上から観察したときの最大径のことである。ここでいう最大径とは、形状の重心からの最大距離×2で算出することができる。粉粒体の大きさは、光学顕微鏡等で測定することができる。
【0036】
本発明で用いる粉粒体(A)としては、仕上塗材中において、ゲル状、固体状など、特に限定されないが、基材にコーティングされた際に、大きさ2μm以上2mm未満の粒を形成し、独自の意匠模様を得る成分である。仕上塗材は、2種以上の異色の粉粒体(A)を含むこともできる。なお、上記仕上塗材は、大きさ2mm以上の粒子を含むこともできるが、仕上塗材に含まれる全粉粒体に対し、大きさ2mm以上の粉粒体は、好ましくは10重量%以下、さらに好ましくは0重量%以上5重量%以下であればよい。また、大きさ2μm未満の粉粒体を含むこともできるが、仕上塗材に含まれる全粉粒体に対し、大きさ2μm未満の粉粒体は、好ましくは10重量%以下、さらに好ましくは0重量%以上5重量%以下であればよい。
【0037】
粉粒体が仕上塗材中においてゲル状の場合は、粉粒体の成分として、着色材と樹脂を含むものが好ましい。
【0038】
着色材としては、例えば、酸化チタン、亜鉛華、黄色酸化鉄、オーカ、チタンイエロー、カーボンブラック、黒鉛、クロムグリーン、コバルトグリーン、群青、紺青、コバルトブルー、コバルトバイオレット、モリブデートオレンジ、べんがら、パーマネントレッド、ブリリアントカーミン、レーキレッド、アントラキノンレッド、ペリレンレッド、ファーストイエロー、パーマネントイエロー、イソシンドリノンイエロー、キノフタロンイエロー、フタロシアニングリーン、フタロシアニンブルー、キナクリドンバイオレット等の着色顔料等が挙げられる。
【0039】
樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、アクリルシリコン樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、フッ素樹脂、エチレン樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、塩化ビニル樹脂等が挙げられる。
【0040】
粉粒体(A)が仕上塗材中において固体状の場合は、粉粒体(A)の成分としては、例えば、重質炭酸カルシウム、寒水石、軽微性炭酸カルシウム、ホワイトカーボン、タルク、マイカ、カオリン、クレー、陶土、チャイナクレー、珪藻土、バライト粉、硫酸バリウム、沈降性硫酸バリウム、珪砂、珪石粉、石英粉、樹脂ビーズ、樹脂粉砕物、ガラスビーズ、ガラス粉砕物、陶磁器粉砕物、セラミック粉砕物、また、大理石、御影石、蛇紋岩、花崗岩、蛍石、寒水石、長石、珪石、珪砂及びこれらの粉砕物、また、ホタテ貝、アワビ貝、サザエ貝、ホッキ貝等の貝殻、珊瑚、木材、炭、活性炭及びこれらの粉砕物等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上の組み合わせて用いることができる。また、粉粒体(A)は、その表面が着色コーティングされたものでも良い。また、上記ゲル状の場合の粉粒体成分を予め固形化した固体状の樹脂粒子を粉粒体(A)として使用することもできる。
【0041】
結合材としては、例えば、アクリル樹脂、アクリルシリコン樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、フッ素樹脂、エチレン樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、塩化ビニル樹脂等を用いることができる。
【0042】
本発明の仕上塗材における結合材と粉粒体の混合比率は、結合材の固形分100重量部に対し、好ましくは、粉粒体50重量部以上3000重量部以下(さらに好ましくは100重量部以上2000重量部以下)である。
【0043】
例えば、粉粒体として、ゲル状の粉粒体を使用する場合は、結合材の固形分100重量部に対し、ゲル状の粉粒体を好ましくは50重量部以上500重量部以下、さらに好ましくは100重量部以上400重量部以下程度とすればよい。
【0044】
また、粉粒体として、固体状の粉粒体を使用する場合は、結合材の固形分100重量部に対し、好ましくは、固体状の粉粒体100重量部以上3000重量部以下、さらに好ましくは300重量部以上2000重量部以下程度とすればよい。
【0045】
また、粉粒体中の粉粒体(A)の混合比率は、好ましくは、50重量%以上100重量%以下(さらに好ましくは60重量%以上98重量%以下)である。
【0046】
また、仕上塗材は、その他、例えば、顔料、硬化剤、溶剤、分散剤、粘性調整剤、造膜助剤、増粘剤、消泡剤、レベリング剤、沈降防止剤、たれ防止剤、可塑剤、防腐剤、防黴剤、防藻剤、抗菌剤、湿潤剤、乾燥調整剤、脱水剤、艶消剤、凍結防止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤等の添加剤を含むこともでき、水系、溶剤系など、特に限定されない。
【0047】
顔料としては、例えば、酸化チタン、亜鉛華、黄色酸化鉄、オーカ、チタンイエロー、カーボンブラック、黒鉛、クロムグリーン、コバルトグリーン、群青、紺青、コバルトブルー、コバルトバイオレット、モリブデートオレンジ、べんがら、パーマネントレッド、ブリリアントカーミン、レーキレッド、アントラキノンレッド、ペリレンレッド、ファーストイエロー、パーマネントイエロー、イソシンドリノンイエロー、キノフタロンイエロー、フタロシアニングリーン、フタロシアニンブルー、キナクリドンバイオレット等の着色顔料等が挙げられる。
【0048】
<(1)の工程>
本発明の(1)の工程では、仕上塗材を含ませたローラーを用いて、基材に塗付することを特徴とするものであり、特に、基材の上に、ローラーを転動させて、仕上塗材を基材に転写させることを特徴とするものである。本願発明のローラーを用いることにより、1度のローラーの転動で、より多くの仕上塗材を基材に転写させることができるとともに、ムラなく優れた意匠を形成することができる。特に、本発明は、固体状粒子を含む仕上塗材(好ましくは固体状粒子を含み、ゲル状粒子を含まない仕上塗材)を用いる場合に十分な効果を発揮することができる。
また、本発明では、1種の仕上塗材を用いることもできるし、色調の異なる2種以上の仕上塗材を用いることもできる。
【0049】
上記基材としては、例えば、石膏ボード、合板、コンクリート、モルタル、レンガ、磁器タイル、繊維混入セメント板、セメント珪酸カルシウム板、スラグセメントパーライト板、ALC板、サイディング板、押出成形板、鋼板、プラスチック板等が挙げられる。これら基材の表面は、何らかの表面処理(例えば、シーラー、サーフェーサー、フィラー、パテ等の塗装)が施されたものでもよく、既に塗膜が形成されたもの等であってもよい。
このような塗膜としては、下塗材等による下塗材塗膜、中塗材等による中塗材塗膜、意匠性塗材等による意匠性塗膜等が挙げられ、これら塗膜は、新設した塗膜でも良いし、経年劣化した塗膜でも良い。本発明では、これら塗膜の表面が凹凸を有するものであれば、(1)の工程において、よりローラーの転動性、仕上塗材の転写性に優れ、好ましい。
また、このような塗膜は、公知の方法で形成することができ、例えば、ローラー、ガン、スプレー、ハケ、コテ、ヘラ等の塗装器具を用いて形成することができる。このうち、多孔質ローラー(窪み有り、窪み無しは適宜選定すれば良い)は、塗膜表面に微細な凹凸を簡便に付与することができ、好適に用いることができる。
【0050】
本発明において、仕上塗材を塗付する際の塗付け量は、適宜設定すればよく、好ましくは0.2~10kg/m 2程度で仕上げることができる。
特に本発明では、下記に示す(2)の工程を考慮し、1度あるいは2度の塗付で、塗付け量が、好ましくは0.8kg/m 2以上、より好ましくは1.0kg/m 2以上4.0kg/m 2以下、さらに好ましくは1.3kg/m 2以上3.8kg/m 2以下、特に好ましくは1.8kg/m 2以上3.6kg/m 2以下、最も好ましくは2.5kg/m 2以上3.4kg/m 2以下、で塗付することが可能であり、少ない塗付回数(好ましくは1度の塗付)で多量の仕上塗材を転写することが可能である。
【0051】
また、コーティングの際の仕上塗材の粘度は、適宜調整すればよいが、好ましくは1Pa・s以上300Pa・s以下、より好ましくは10Pa・s以上250Pa・s以下、さらに好ましくは30Pa・s以上200Pa・s以下程度に調整すれば良い。なお、粘度は、温度23℃、相対湿度50%RH下においてBH型粘度計で回転数を2rpmとして測定したときの値である。
【0052】
また、仕上塗材を塗付する際には、予め目地テープ、目地棒や目地型枠等の使用によって、タイル調模様、幾何学的模様等を形成させることもできる。
【0053】
<(2)の工程>
本発明の(2)の工程は、(1)の工程で塗付された仕上塗材が硬化する前に、パターン付与器具を用いて、仕上塗材表面にパターン付与することを特徴とするものである。
パターン付与器具としては、特に限定されないが、例えば、ハケ、コテ、ヘラ、ローラー等が挙げられる。
ハケとしては、例えば、ポリエステル、ポリアミド、ポリプロピレン、ポリウレタン、アクリル系重合体、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニリデン、ナイロン等の合成繊維製、レーヨン、ビスコース等の半合成繊維製、馬毛、羊毛、山羊毛、豚毛、猪毛等の獣毛製、綿、絹、木、竹、麻、椰子等の植物繊維製等からなるハケ(あるいはブラシ)等が挙げられる。このようなハケは、繊維(または毛)の太さ、硬さ、長さ、また繊維(または毛)の密度等を適宜選定することができる。
コテとしては、例えば、鉄製、ステンレス製、スチール製、木製、プラスチック製、ゴム製の素材からなるコテ等が挙げられる。このようなコテは、コテ腹部面(仕上塗材表面と接する部分)が平滑でも凹凸を有するものでも良いし、また、コテヘリ部やコテ肩部が、直線状や湾曲したものでも良いし、凹凸を有するものでも良い。
ヘラとしては、例えば、鉄製、ステンレス製、スチール製、木製、プラスチック製、ゴム製の素材からなるヘラ(あるいはナイフ、くし)等が挙げられる。このようなヘラは、仕上塗材表面と接する部分が直線状や湾曲したものでも良いし、凹凸を有するものでも良い。
ローラーとしては、例えば、パターンローラー、繊維質ローラー、多孔質ローラー等が挙げられ、具体的には、例えば、鉄製、ステンレス製、スチール製、木製、プラスチック製、ゴム製、合成繊維製、半合成繊維製、獣毛製、植物繊維製等の素材からなるローラー等が挙げられる。このようなローラーは、表面に各々の凹凸を有し転動してパターンを付与するもの、また、繊維製、獣毛製等のものは、繊維(または毛)の太さ、硬さ、長さ、また繊維(または毛)の密度、編み方、多孔度等を適宜選定し、用いることができる。また、(1)の工程で使用したローラーを用いることもできる。
【0054】
このようなパターン付与器具を用いて、独特のパターンを仕上塗材表面に付与することができ、より優れた模様意匠を得ることができる。このようなパターン付与は、1種の器具で行うこともできるし、2種以上の器具を用いて行うこともできる。またパターン付与時には、仕上塗材表面と接するパターン付与器具面が乾燥した状態でパターン付与することもできるし、パターン付与器具面を水や溶剤等で湿潤状態にしてからパターン付与することもできる。
また、別途用意した仕上塗材をパターン付与器具面に付着させつつ、該パターン付与器具を用いて(1)の工程で塗付した仕上塗材表面にパターン付与することもできるし、別途用意した仕上塗材を(1)の工程で塗付した仕上塗材表面に塗付した後、パターン付与器具を用いてパターン付与することもできる。このような方法では、(1)の工程で塗付した仕上塗材の色調と、別途用意した仕上塗材の色調を調整することで、独特のパターンとともに、独特の色調を有するより優れた模様意匠(例えば、2色以上の色調が混在した模様意匠等)を得ることができる。なお、別途用意した仕上塗材を(1)の工程で塗付した仕上塗材表面に塗付する方法では、例えば、ローラー、ガン、スプレー、ハケ、コテ、ヘラ等を用いて塗付すればよい。
【0055】
また、パターン付与後の仕上塗材の硬化は公知の方法で行えばよく、特に限定されないが、例えば、熱をかけて硬化させる方法、熱をかけずに硬化させる方法、あるいは、触媒等を加えて硬化を反応させる方法等が挙げられる。熱をかけて硬化させる方法では、好ましくは40℃以上200℃以下、より好ましくは50℃以上120℃以下で硬化させればよい。また、熱をかけずに硬化させる方法(常温硬化)では、好ましくは0℃以上40℃以下、より好ましくは5℃以上35℃以下で硬化させればよい。
【実施例0056】
以下に本発明の効果を明確にするため、実施例、比較例をあげて説明する。
【0057】
仕上塗材として、次の表1に示す原料及び配合にて、アクリル樹脂エマルション中に各粉粒体が分散した仕上塗材1~6を用意した。なお、表1中の数値は、全て重量部を示す。
【0058】
【0059】
ローラーとして、表2に示すローラー1~21を用意した。なお、ローラー1~18は、幅が175mm、窪みの大きさ及び形状が均等なものである。ローラー19は、窪みを有さない多孔質ローラーである。ローラー20は、窪み、孔を有さず、表面に凹凸を有するゴム状のパターンローラーである。ローラー21は、窪み、孔を有さず、毛丈(厚み)が10mmの繊維状のウールローラである。
【0060】
【0061】
パターン付与器具として、表3に示す器具1~6を用意した。
【0062】
【0063】
(評価実験)
900mm×900mmのスレート板(基材)に対し、アクリル樹脂下塗材を多孔質ローラー(窪みなし)で塗付し、2時間乾燥させた。その後、表4の組み合わせにて、表1に示す仕上塗材を、表2に示すローラーにて塗付した。
その後、表4の組み合わせにて、表3に示す器具を用い、パターンを付与し、24時間乾燥させ、試験体を得た。
なお、実施例24、25については、工程(2)において、器具2を用いて仕上塗材表面にパターンを付与した後、さらに器具1を用いてパターン付与を行ったものである。
【0064】
(転写性評価)
転写性評価では、ローラーにて塗付した際の仕上塗材の転写度合いを評価した。評価は、次のA~D及びZの5段階で評価した。結果は表4に示す。
A:1度の塗付で、基材全面に、仕上塗材を2.5kg/m 2以上転写することができた。
B:1度の塗付で、基材全面に、仕上塗材を2.0kg/m 2以上転写することができた。
C:1度の塗付で、基材全面に、仕上塗材を1.5kg/m 2以上転写することができた。
D:1度の塗付で、基材全面に、仕上塗材を0.8kg/m 2以上転写することができた。
Z:1度の塗付で、基材全面に、仕上塗材を0.8kg/m 2未満しか転写することができなかった。
【0065】
(仕上り性評価)
得られた試験体の表面の仕上がりを目視にて評価した。評価は、次のA~C及びZの4段階で評価した(優:A>B>C>Z:劣)。結果は表3に示す。
A:パターン付与器具に由来するパターンが全面に亘り偏りなく付与され、かつ、仕上塗材の色あいとあいまって、優れた意匠性が確認できた。
B:パターン付与器具に由来するパターンが全面に亘り付与され、かつ、仕上塗材の色あいとあいまって、優れた意匠性が確認できた。
C:パターン付与器具に由来するパターンと仕上塗材の色あいとにより、総じて良好な意匠性が確認できた。
Z:次のいずれかの状態が確認された。(1)仕上塗材の色合い、あるいは、パターンの偏りが目立ってしまった、(2)仕上塗材が単色の意匠となってしまった、(3)一部基材が露出した状態となってしまった
【0066】
【0067】
上記表4の評価結果より、実施例においては、所定のローラー、所定の器具を用いて、所定の仕上塗材を塗付することにより、優れた模様意匠仕上げを効率的かつ簡便に行うことができ、転写性(作業性)及び仕上がり性において、実用上問題のないレベルであることが確認できた。一方、比較例では、ローラー、器具や仕上塗材として所定のものを使用しなかったため、転写性(作業性)及び仕上がり性の両立を図れるものは認められなかった。