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特開2024-132132圧縮機の冷凍能力試験装置及び冷凍能力試験方法
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  • 特開-圧縮機の冷凍能力試験装置及び冷凍能力試験方法 図1
  • 特開-圧縮機の冷凍能力試験装置及び冷凍能力試験方法 図2
  • 特開-圧縮機の冷凍能力試験装置及び冷凍能力試験方法 図3
  • 特開-圧縮機の冷凍能力試験装置及び冷凍能力試験方法 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024132132
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】圧縮機の冷凍能力試験装置及び冷凍能力試験方法
(51)【国際特許分類】
   G01M 99/00 20110101AFI20240920BHJP
【FI】
G01M99/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023042809
(22)【出願日】2023-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】000133526
【氏名又は名称】株式会社チノー
(74)【代理人】
【識別番号】230116816
【弁護士】
【氏名又は名称】成川 弘樹
(74)【代理人】
【識別番号】100159248
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 修
(72)【発明者】
【氏名】高橋 伸明
【テーマコード(参考)】
2G024
【Fターム(参考)】
2G024AD13
2G024BA11
2G024CA16
2G024FA06
2G024FA11
(57)【要約】
【課題】従来のガス流量計法による試験装置においては、圧縮機に吸い込まれる冷媒の状態を判別する術がないという問題が存在した。
【解決手段】上記課題を解決するために、被試験圧縮機、油分離器及び凝縮器を順次管路で接続して構成した試験サイクルにおいて、前記凝縮器と前記被試験圧縮機との間の管路に配設される膨張弁と、前記油分離器と前記凝縮器との間で分岐し、前記凝縮器と前記膨張弁をバイパスして前記被試験用圧縮機に接続するバイパス管路に配設されるガス調整弁と、前記ガス調整弁の流量を計測するガス流量計と、前記膨張弁の流量を計測する液流量計と、を有する圧縮機の冷凍能力試験装置を提供する。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被試験圧縮機、油分離器及び凝縮器を順次管路で接続して構成した試験サイクルにおいて、
前記凝縮器と被試験圧縮機との間の管路に配設される膨張弁と、
前記油分離器と前記凝縮器との間で分岐し、前記凝縮器と前記膨張弁をバイパスして被試験用圧縮機に接続するバイパス管路に配設されるガス調整弁と、
前記ガス調整弁の流量を計測するガス流量計と、
前記膨張弁の流量を計測する液流量計と、
を有する圧縮機の冷凍能力試験装置。
【請求項2】
比エンタルピを計算することにより被試験圧縮機の吸込部における乾き度を算出する算出部を、
さらに有する請求項1に記載の圧縮機の冷凍能力試験装置。
【請求項3】
前記算出部は、
前記ガス流量計の計測値と、前記液流量計の計測値に基づき、被試験圧縮機の吸込部における乾き度を算出する
請求項2に記載の圧縮機の冷凍能力試験装置。
【請求項4】
被試験圧縮機、油分離器及び凝縮器を順次管路で接続して構成した試験サイクルにおいて、
前記凝集器と前記被試験圧縮機との間の管路に配設される膨張弁と、
前記油分離器と前記凝縮器との間で分岐し、前記凝縮器と前記膨張弁をバイパスして前記被試験用圧縮機に接続するバイパス管路に配設されるガス調整弁と、
を有する圧縮機の冷凍能力試験装置において、
コンピュータに、
比エンタルピを計算することにより被試験圧縮機の吸込部における乾き度を算出する算出ステップを、
実行させる圧縮機の冷凍能力試験プログラム。
【請求項5】
被試験圧縮機、油分離器及び凝縮器を順次管路で接続して構成した試験サイクルにおいて、
前記凝集器と前記被試験圧縮機との間の管路に配設される膨張弁と、
前記油分離器と前記凝縮器との間で分岐し、前記凝縮器と前記膨張弁をバイパスして前記被試験用圧縮機に接続するバイパス管路に配設されるガス調整弁と、
を有する圧縮機の冷凍能力試験装置において、
比エンタルピを計算することにより被試験圧縮機の吸込部における乾き度を算出する算出ステップを、
有する圧縮機の冷凍能力試験方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス流量計方式による冷凍用圧縮機の試験装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ルームエアコンや冷蔵庫などに用いられる冷凍用圧縮機の冷凍能力試験は、従来から二次冷媒加熱法(二次冷媒熱量計法ともいう)により行われていた。この方法による試験は、供試する圧縮機と試験装置内の蒸発熱交換機が熱平衡になるように制御を行う。圧縮機から吐出された冷媒全量は蒸発熱交換器内のヒータで熱交換され、その時のヒータ入力値を高精度の電力計で計測し、各部計測値から圧縮機の能力を算出する。
【0003】
二次冷媒加熱法による試験は、圧縮機の冷凍能力に対応して熱バランスをとるために大きな加熱負荷を要するものであった。そこで、エネルギー消費を抑制し、試験装置をコンパクトにするために、ガス流量計法による試験装置が考案された。ガス流量計法による試験は、例えば、特許文献1のように、供試された圧縮機から吐出された後に油分離器(オイルセパレータ)出口のガス冷媒の流量を計測し、このガスの流量と圧縮機の吐出・吸入ガスの圧力及び温度から圧縮機の能力を算出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000-321103号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、図3として、冷凍サイクルとp-h線図を重ねた概念図を示す。図3は、望ましい冷凍サイクルを示している。図3に示すように、p-h線図は、臨界点を境に飽和液線と飽和蒸気線に分かれ、飽和液線は過冷却液状態と湿り蒸気状態との分界線になり、飽和蒸気線は湿り蒸気状態と過熱蒸気状態との分界線になる。
【0006】
また、冷凍サイクルは、ア→イにおいて、液体冷媒は膨張弁で減圧され低圧・低温で気液混合状態となる。続いてイ→ウにおいて、蒸発器内ですべて気体溶媒となり、さらに過熱蒸気の状態になる。続いて、過熱蒸気の溶媒はウ→エにおいて、圧縮機に吸い込まれ加圧され高温の気体冷媒になる。そして、エ→オにおいて、気体冷媒は凝集器で熱交換され液体冷媒となる。
【0007】
一方、図4は、不適当な冷凍サイクルを示している。図4に示すように、イ→ウにおいて蒸発器を経た溶媒が、ウ→エにおいて気液混合状態のまま圧縮機に吸い込まれている。このように、気液混合状態で冷媒を圧縮する冷凍サイクルの態様では、圧縮機の能力試験が不適当なものとなってしまう。
【0008】
このような事態は、冷凍能力試験を行う試験サイクルの条件設定が適当でないために生じる。したがって、圧縮機に吸い込まれる冷媒がどの状態にあるかを判別できれば、それに基づき諸条件を設定して適当な試験環境を整えることができる。
【0009】
しかしながら、特許文献1に記載のような従来のガス流量計法による試験装置においては、圧縮機に吸い込まれる冷媒の気液の状態を判別する術がないという問題が存在した。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そこで、上記課題を解決するために本発明において、以下の圧縮機の冷凍能力試験装置などを提供する。すなわち、被試験圧縮機、油分離器及び凝縮器を順次管路で接続して構成した試験サイクルにおいて、前記凝縮器と前記被試験圧縮機との間の管路に配設される膨張弁と、前記油分離器と前記凝縮器との間で分岐し、前記凝縮器と前記膨張弁をバイパスして前記被試験用圧縮機に接続するバイパス管路に配設されるガス調整弁と、前記ガス調整弁の流量を計測するガス流量計と、前記膨張弁の流量を計測する液流量計と、を有する圧縮機の冷凍能力試験装置を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、圧縮機に吸い込まれる冷媒の状態を判別し得る圧縮機の冷凍能力試験装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施形態に係る圧縮機の冷凍能力試験装置の構成を示す概念図
図2】被試験圧縮機の吸込部での乾き度の算出を説明するための概念図
図3】望ましい冷凍サイクルとp-h線図を重ねて示す概念図
図4】不適当な冷凍サイクルとp-h線図を重ねて示す概念図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について、添付図面を用いて説明する。なお、本発明は、これら実施形態に何ら限定されるべきものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得る。
【0014】
<実施形態>
<概要>
本実施形態の圧縮機の冷凍能力試験装置の特徴は、圧縮機を経た気体冷媒の流量と、圧縮機を経た液体冷媒の流量を測定することで、圧縮機の吸込部における乾き度を求めることができることである。
【0015】
以下では、圧縮機の冷凍能力試験装置の機能及び処理の流れ、並びにハードウエアの内容について説明する。なお、以下に記載する圧縮機の冷凍能力試験装置の機能及び構成は、ハードウエア及びソフトウェアの組み合わせとして実現され得る。
【0016】
具体的には、コンピュータを利用するものであれば、CPU(中央演算装置)や主メモリ、バス、あるいは二次記憶装置(ハードディスクドライブや不揮発性メモリ、情報入力に利用される入力デバイス、印刷機器や表示装置、その他の外部周辺装置などのハードウエア構成部、またその外部周辺装置用のインタフェース、通信用インタフェース、それらハードウエアを制御するためのドライバプログラムやその他アプリケーションプログラム、ユーザ・インターフェース用アプリケーションなどが挙げられる。
【0017】
そして主メモリ上に展開したプログラムに従ったCPUの演算処理によって、入力デバイスやその他インタフェースなどから入力され、メモリやハードディスク上に保持されているデータなどが加工、蓄積されたり、上記各ハードウエアやソフトウェアを制御するための命令が生成されたりする。あるいは本システムの機能ブロックは専用ハードウエアによって実現されてもよい。
【0018】
また、この発明は装置として実現できるのみでなく、方法としても実現可能である。また、このような発明の一部をソフトウェアとして構成することができる。さらに、そのようなソフトウェアをコンピュータに実行させるために用いるプログラム、及びプログラムを固定した記録媒体も、当然にこの発明の技術的な範囲に含まれる(本明細書の全体を通じて同様である)。
【0019】
<構成>
図1は、本実施形態の圧縮機の冷凍能力試験装置の構成の一例を示す概念図である。図1に示すように、圧縮機の冷凍能力試験装置100は、被試験圧縮機101と、油分離器102と、凝縮器103と、膨張弁104と、ガス調整弁105と、ガス流量計106と、液流量計107と、を備えている。
【0020】
まず、被試験圧縮機101、油分離器102及び凝縮器103は、順次管路で接続されて、圧縮機の冷凍能力の試験サイクルを構成している。そして、凝縮器103と被試験圧縮機101との間の管路には、膨張弁104が配設されている。そして、この膨張弁104の流量を計測する液流量計107が配設されている。
【0021】
また、油分離器102と凝縮器103との間で分岐し、凝縮器103と膨張弁104をバイパスして被試験用圧縮機101に接続するバイパス管路108に、ガス調整弁105が配設されている。そして、このガス調整弁105の流量を計測するガス流量計106が配設されている。なお、本図における矢印の記号は、この試験サイクルにおける冷媒の流れを示している。
【0022】
上記の構成から、被試験圧縮機の吸込部での乾き度を算出することについて、図2を用いて説明する。図2は、冷凍サイクルをp-h線図に重ねた図である。図中の用語は、以下のとおりである。
g1:圧縮機入口ポイント
g3:圧縮機出口ポイント
g4:等エントロピ線上の比エンタルピkJ/kg
f1:過冷却度=0のポイント
f2:任意過冷却度のポイント
hg1:圧縮機入口ガス比エンタルピkJ/kg
hg2:過熱度=0の吸入ガス比エンタルピkJ/kg
hg3:圧縮機出口ガス比エンタルピkJ/kg
hg4:断熱圧縮時の比エンタルピkJ/kg
hf1:吐出圧力における飽和液比エンタルピkJ/kg
hf2:任意過冷却度の液比エンタルピkJ/kg
hf3:吸込圧力における飽和液比エンタルピkJ/kg
qmf:膨張弁液流量kg/h
qmg:ホットガス流量kg/h
sg1:吸入エントロピkJ/kg・K
【0023】
本実施形態に係る圧縮機の冷凍能力試験装置は、以下に示すように、比エンタルピを計算することにより被試験圧縮機の吸込部における乾き度を算出する。
【0024】
仮想である被試験圧縮機の吸込部におけるガスの比エンタルピhg1は、ガス調整弁からの加熱能力(g3→g1)と膨張弁からの冷却能力(f2→g1)の混合するポイントである。そこで、以下の平衡式から展開してhg1を算出する。
【0025】
qmg×(hg3-hg1)/3600=qmf×(hg1-hf2)/3600
hg1=(hf2+hg3(qmg/qmf))/(qmg/qmf+1)
求める圧縮機の吸込部の乾き度(%)は吸込部での比エンタルピ比率であることから
乾き度=(hg1-hf3)/(hg2-hf3)×100 (%)
となる。
【0026】
このように、ガス流量計の計測値であるqmgと、液流量計の計測値であるqmfに基づき、非エンタルピを計算することにより、圧縮機の吸込部の乾き度を算出することができる。
【0027】
<ハードウエア構成>
本実施形態の圧縮機の冷凍能力試験装置のハードウエア構成は、試験サイクルを構成する被試験圧縮機、油分離器、凝集器、膨張弁、ガス調整弁、液流量ガス流量計を駆動及び制御し、ガス流量計と液流量計の計測値を取得し被試験圧縮機の吸込部における乾き度を算出する算出部を実現するプロセッサ、メインメモリ、ROMなどの不揮発性メモリを備えるマイコンなどの演算処理装置によって実現され、ROMに記憶されている各機能を実現するためのプログラムを、プロセッサがメインメモリ上に展開して演算処理することで圧縮機の冷凍能力試験装置は動作する。
【0028】
<処理の流れ>
本実施形態の発明は、圧縮機の冷凍能力試験方法としても実現することができ、具体的には、被試験圧縮機、油分離器及び凝縮器を順次管路で接続して構成した試験サイクルにおいて、前記凝集器と前記被試験圧縮機との間の管路に配設される膨張弁と、前記油分離器と前記凝縮器との間で分岐し、前記凝縮器と前記膨張弁をバイパスして前記被試験用圧縮機に接続するバイパス管路に配設されるガス調整弁と、を有する圧縮機の冷凍能力試験装置において、比エンタルピを計算することにより被試験圧縮機の吸込部における乾き度を算出する算出ステップを、有する圧縮機の冷凍能力試験方法として実現することができる。
【0029】
また、本実施形態における発明は、圧縮機の冷凍能力試験プログラムとしても実現することができ、被試験圧縮機、油分離器及び凝縮器を順次管路で接続して構成した試験サイクルにおいて、前記凝集器と前記被試験圧縮機との間の管路に配設される膨張弁と、前記油分離器と前記凝縮器との間で分岐し、前記凝縮器と前記膨張弁をバイパスして前記被試験用圧縮機に接続するバイパス管路に配設されるガス調整弁と、を有する圧縮機の冷凍能力試験装置において、コンピュータに、比エンタルピを計算することにより被試験圧縮機の吸込部における乾き度を算出する算出ステップを、実行させる圧縮機の冷凍能力試験プログラムとして実現することができる。
【0030】
<効果>
本実施形態の圧縮機の冷凍能力試験装置により、圧縮機に吸い込まれる冷媒の状態を判別することができる。
【符号の説明】
【0031】
100:圧縮機の冷凍能力試験装置
101:被試験圧縮機
102:油分離器
103:凝縮器
104:膨張弁
105:ガス調整弁
106:ガス流量計
107:液流量計
108:バイパス管路

図1
図2
図3
図4