(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024132140
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】宇宙構造物制御システムおよび宇宙構造物制御方法
(51)【国際特許分類】
B64G 1/22 20060101AFI20240920BHJP
B64G 1/26 20060101ALI20240920BHJP
B64G 1/66 20060101ALI20240920BHJP
B64G 1/44 20060101ALI20240920BHJP
B64G 1/24 20060101ALI20240920BHJP
B64G 1/28 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
B64G1/22 100B
B64G1/26 B
B64G1/66 C
B64G1/44 300
B64G1/24 A
B64G1/28 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023042818
(22)【出願日】2023-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 真
(72)【発明者】
【氏名】舟根 司
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 康一
(72)【発明者】
【氏名】田部 洋祐
(72)【発明者】
【氏名】木村 寿利
(57)【要約】
【課題】
宇宙空間で展開される宇宙構造物において、大型化に際して、より軽量でかつ面形状制御が容易で展開時間が短い宇宙構造物制御システムを提供する。
【解決手段】
宇宙構造物制御システムであって、宇宙構造物と、宇宙構造物に接続される人工衛星と、人工衛星に搭載され人工衛星の軌道及び姿勢を制御する推進装置を有し、宇宙構造物は膜状構造物を有し、膜状構造物に設置された反射鏡における太陽光反射率の空間パターンを制御する太陽光反射率制御装置と、膜状構造物に接続される形状維持装置を有し、推進装置は膜状構造物を回転させ遠心力を生成し、太陽光反射率制御装置は反射鏡における太陽光反射率を制御することにより反射鏡に加わる太陽輻射圧を制御し、膜状構造物の回転による遠心力と太陽輻射圧により膜状構造物の3次元形状を制御し、形状維持装置により膜状構造物の形状を維持もしくは安定化させる。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
宇宙空間で展開される宇宙構造物の形状を制御する宇宙構造物制御システムであって、
前記宇宙構造物と、
前記宇宙構造物に接続される人工衛星と、
前記人工衛星に搭載され該人工衛星の軌道及び姿勢を制御する推進装置を有し、
前記宇宙構造物は、膜状構造物を有し、該膜状構造物に設置された反射鏡における太陽光反射率の空間パターンを制御する太陽光反射率制御装置と、前記膜状構造物に接続される形状維持装置を有し、
前記推進装置は、前記膜状構造物を回転させ遠心力を生成し、
前記太陽光反射率制御装置は、前記反射鏡における太陽光反射率を制御することにより前記反射鏡に加わる太陽輻射圧を制御し、
前記膜状構造物の回転による遠心力と前記太陽輻射圧により前記膜状構造物の3次元形状を制御し、
前記形状維持装置により前記膜状構造物の形状を維持もしくは安定化させることを特徴とする宇宙構造物制御システム。
【請求項2】
請求項1に記載の宇宙構造物制御システムにおいて、
前記人工衛星は前記膜状構造物の中心軸上に接続されており、前記人工衛星に搭載される前記推進装置により前記膜状構造物を回転させた遠心力により前記膜状構造物を展開して前記3次元形状を形成することを特徴とする宇宙構造物制御システム。
【請求項3】
請求項1に記載の宇宙構造物制御システムにおいて、
前記太陽光反射率制御装置は、電気的に光の反射率を制御する液晶デバイスまたはエレクトロクロミックデバイスであることを特徴とする宇宙構造物制御システム。
【請求項4】
請求項1に記載の宇宙構造物制御システムにおいて、
前記膜状構造物は、前記3次元形状の薄膜を放射状に分割して得られる複数の膜面モジュールで形成され、
前記形状維持装置は、前記膜面モジュールの放射状の2辺に有しており、前記膜状構造物に接続されるテザーとテザー伸縮制御装置、磁石、硬化樹脂、またはラッチ機構であることを特徴とする宇宙構造物制御システム。
【請求項5】
請求項1に記載の宇宙構造物制御システムにおいて、
前記膜状構造物の膜面の照度を計測する太陽光パネルを有し、
前記太陽光反射率制御装置は、前記太陽光パネルの情報を基に前記反射鏡における太陽光反射率を制御することを特徴とする宇宙構造物制御システム。
【請求項6】
請求項1に記載の宇宙構造物制御システムにおいて、
前記形状維持装置は、赤外線センサまたはカメラを有し、これらの情報を基に前記膜状構造物の形状を維持もしくは安定化させることを特徴とする宇宙構造物制御システム。
【請求項7】
請求項1に記載の宇宙構造物制御システムにおいて、
前記膜状構造物の3次元形状はパラボラ形状であって、
前記人工衛星または前記膜状構造物と伸縮ピラーまたはテザーを介して接続される発信器/受信機を有し、アンテナの機能を有することを特徴とする宇宙構造物制御システム。
【請求項8】
請求項1に記載の宇宙構造物制御システムにおいて、
前記人工衛星は、前記膜状構造物の姿勢維持のため、前記推進装置を用いて前記膜状構造物の回転数を制御する機能を有することを特徴とする宇宙構造物制御システム。
【請求項9】
請求項1に記載の宇宙構造物制御システムにおいて、
前記人工衛星は、前記膜状構造物の形状維持のため、該人工衛星を前記宇宙構造物から切り離す機能を有することを特徴とする宇宙構造物制御システム。
【請求項10】
請求項1に記載の宇宙構造物制御システムにおいて、
前記太陽光反射率制御装置は、前記反射鏡における太陽光反射率を制御することにより前記反射鏡に加わる太陽輻射圧を制御することで、前記膜状構造物の3次元形状の姿勢を制御することを特徴とする宇宙構造物制御システム。
【請求項11】
請求項1に記載の宇宙構造物制御システムにおいて、
前記膜状構造物は、前記3次元形状の薄膜を放射状に分割して得られる複数の薄膜衛星モジュールで形成され、該薄膜衛星モジュールの薄膜端部に端部衛星が接続されており、
前記人工衛星は前記膜状構造物の中心軸上に接続されており、前記人工衛星に搭載される前記推進装置および前記端部衛星により前記膜状構造物を回転させた遠心力により前記膜状構造物を展開して前記3次元形状を形成することを特徴とする宇宙構造物制御システム。
【請求項12】
請求項1に記載の宇宙構造物制御システムにおいて、
前記膜状構造物は、前記3次元形状の薄膜の放射方向および円周方向に羅列して接続されている複数の薄膜衛星モジュールで形成され、該薄膜衛星モジュールの薄膜の頂点に端部衛星が接続されており、
前記薄膜衛星モジュールに接続された端部衛星により薄膜を保持または引っ張ることにより該薄膜衛星モジュールを展開し、複数の前記薄膜衛星モジュールが互いに接続されることで前記3次元形状を形成することを特徴とする宇宙構造物制御システム。
【請求項13】
請求項12に記載の宇宙構造物制御システムにおいて、
前記薄膜衛星モジュールは、端部にアレーパッチアンテナを設置することを特徴とする宇宙構造物制御システム。
【請求項14】
宇宙空間で展開される宇宙構造物の形状を制御する宇宙構造物制御システムの宇宙構造物制御方法であって、
宇宙構造物制御システムは、前記宇宙構造物と、前記宇宙構造物に接続される人工衛星と、前記人工衛星に搭載され該人工衛星の軌道及び姿勢を制御する推進装置を有し、
前記宇宙構造物は、膜状構造物を有し、
前記推進装置を用いて前記膜状構造物を回転させて遠心力を生成し、
前記膜状構造物に設置された反射鏡における太陽光反射率を制御することにより前記反射鏡に加わる太陽輻射圧を制御し、
前記膜状構造物の回転による遠心力と前記太陽輻射圧により前記膜状構造物の3次元形状を制御し、
前記膜状構造物の形状を維持もしくは安定化させることを特徴とする宇宙構造物制御方法。
【請求項15】
請求項14に記載の宇宙構造物制御方法において、
前記人工衛星は前記膜状構造物の中心軸上に接続されており、前記人工衛星に搭載される前記推進装置により前記膜状構造物を回転させた遠心力により前記膜状構造物を展開して前記3次元形状を形成することを特徴とする宇宙構造物制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、宇宙空間で展開される宇宙構造物に関する。
【背景技術】
【0002】
地上から宇宙空間へ運搬され展開される宇宙構造物として、人工衛星のアンテナや、太陽光発電パネルに用いる太陽光集光反射面等がある。
【0003】
人工衛星のアンテナとしては、シンプルな構造で高利得が得られるパラボラアンテナが用いられることが多く、当該アンテナの利得を上げるためには反射鏡を大きくする必要がある。従来、人工衛星に搭載される軽量なパラボラアンテナは、薄膜反射面とフレームやリブを用いて宇宙空間で展開することで反射鏡の曲面を形成する展開式アンテナであり、数10m級の軽量大型パラボラアンテナを実現している。ここで、更に利得を上げるためには、更なる大型化が必要である。そのためには、重量が増大し、ロケットによる打ち上げコストも増大するため、軽量化を目指した新たな膜展開方式や面形状制御等の研究が進められている。
【0004】
本技術分野に関連する先行技術文献として特許文献1がある。特許文献1には、薄膜材によって形成される反射鏡を備えた宇宙用電磁波集束装置で、反射鏡面の表面の輻射率と反射率の面分布を調整し、反射鏡面形状を指定の形状に近づける形状形成方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1では、輻射率と反射率による面形状制御の記載はあるが、膜構造物の展開時間、重力傾斜や空気外乱などによる影響を修正するための動作時間は考慮されていない。
【0007】
そこで、本発明では、宇宙空間で展開される宇宙構造物において、大型化に際して、軽量でかつ面形状制御が容易で展開時間が短い宇宙構造物制御システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、その一例を挙げるならば、宇宙空間で展開される宇宙構造物の形状を制御する宇宙構造物制御システムであって、宇宙構造物と、宇宙構造物に接続される人工衛星と、人工衛星に搭載され人工衛星の軌道及び姿勢を制御する推進装置を有し、宇宙構造物は膜状構造物を有し、膜状構造物に設置された反射鏡における太陽光反射率の空間パターンを制御する太陽光反射率制御装置と、膜状構造物に接続される形状維持装置を有し、推進装置は膜状構造物を回転させ遠心力を生成し、太陽光反射率制御装置は反射鏡における太陽光反射率を制御することにより反射鏡に加わる太陽輻射圧を制御し、膜状構造物の回転による遠心力と太陽輻射圧により膜状構造物の3次元形状を制御し、形状維持装置により膜状構造物の形状を維持もしくは安定化させる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、宇宙空間で展開される宇宙構造物において、大型化に際して、より軽量でかつ面形状制御が容易で展開時間が短い宇宙構造物制御システムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施例1における宇宙構造物制御システムの構成ブロック図である。
【
図2】実施例1における宇宙構造物制御システムの全体構成を示す斜視図である。
【
図3】
図2における宇宙構造物制御システムの太陽側から見た上面図である。
【
図4】
図2における宇宙構造物制御システムの側面図である。
【
図5】
図2における膜状構造物を太陽側から見た展開図である。
【
図6】実施例1における膜状構造物の薄膜構造の断面図である。
【
図7】実施例1における膜状構造物の他の薄膜構造の断面図である。
【
図8】実施例1における宇宙構造物制御システムの膜状構造物の形状制御の処理フローチャートである。
【
図9】実施例2における宇宙構造物制御システムの構成ブロック図である。
【
図10】実施例2における宇宙構造物制御システムの全体構成を示す斜視図である。
【
図11】
図10における膜状構造物を太陽側から見た展開図である。
【
図12】実施例3おける宇宙構造物制御システムの全体構成を示す斜視図である。
【
図13】
図12における薄膜衛星モジュールを太陽側から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施例を図面を用いて説明する。なお、本実施例では、宇宙構造物として、人工衛星に搭載されるアンテナを例に説明する。
【実施例0012】
図1は、本実施例における宇宙構造物制御システムの構成ブロック図である。
図1において、宇宙構造物制御システム100は、宇宙構造物130と人工衛星102と推進装置103を有する。また宇宙構造物130は、宇宙構造物としてアンテナを構成し、膜状構造物101と伸縮ピラー107と発信器/受信機108を有する。さらに、膜状構造物101は、太陽光反射率制御装置104と形状維持装置105と太陽光パネル106を有する。
【0013】
図2は、本実施例における宇宙構造物制御システム100の全体構成を示す斜視図である。
図2において、
図1と同じ構成は同じ符号を付し、その説明は省略する。
図2に示すように、人工衛星102は、膜状構造物101の中心軸上に接続されており、人工衛星102に搭載される推進装置103により膜状構造物101を回転させる。なお、9は太陽を模式的に示している。また、109は小さい重りを示す。
【0014】
図3は、
図2における宇宙構造物制御システム100の太陽側から見た上面図である。また、
図4は、
図2における宇宙構造物制御システム100の側面図である。さらに、
図5は、
図2における膜状構造物101を太陽側から見た展開図である。
【0015】
図5に示すように、本実施例における膜状構造物101は、10~50m級の口径サイズの大型展開式アンテナを構成する。膜状構造物101は、アンテナを構成する3次元形状であるパラボラ形状(放物面形状)の薄膜を放射状に分割して得られる複数の三角形状の薄膜である膜面モジュール120で形成される。また、複数の膜面モジュール120は、中心部で結合されている。なお、それぞれの膜面モジュール120は、三角形状に限定されるものではなく、中心部を切り欠いて四角形状や短冊状としてもよい。
【0016】
膜面モジュール120は、薄膜に反射鏡と液晶デバイスが貼り付けられた薄膜構造を有している。
図6は、本実施例における薄膜構造を説明する模式図であり、薄膜構造の断面図を示している。
図6に示すように、薄膜構造121として、太陽9側から液晶デバイス141、薄膜142、反射鏡143で構成されている。液晶デバイス141は、反射鏡143における太陽光反射率の空間パターンを制御できる。そのため、液晶デバイス141は、太陽光反射率制御装置104として機能する。太陽光反射率制御装置104は、反射鏡143における太陽光反射率を制御することにより反射鏡143に加わる太陽輻射圧を制御可能である。なお、太陽光反射率制御装置104は、液晶デバイス141以外の、例えばエレクトロクロミックデバイスまたは材料等により光の透過率または吸収率を制御できる装置でもよい。
【0017】
なお、膜状構造物101の薄膜構造121は、
図7に示すように、薄膜と反射鏡が一体となった反射鏡144を有する構成としてもよい。
【0018】
薄膜142の膜材は、例えばポリイミドフィルムや、GFRP(ガラス繊維強化プラスチック)生地、CFRP(炭素繊維強化プラスチック)生地などの、耐宇宙環境性に優れた素材を用いるのが好ましい。また、反射鏡143は、ジルコニウム合金生地、GFRP生地、CFRP生地を用いるのが好ましい。
【0019】
また、膜面モジュール120は、膜面の照度を計測する太陽光パネル106、すなわち照度計として機能する光検出器を有し、太陽光反射率制御装置104は、太陽光パネル106からの情報を基に反射鏡143または144における太陽光反射率を制御する。
【0020】
図5において、太陽光反射率制御装置104によって反射鏡における太陽光反射率を制御することにより、反射鏡に加わる太陽輻射圧を制御した時の膜状構造物101に掛かるA-A断面での太陽輻射圧分布を図下部に示す。
図5に示すように、太陽輻射圧を制御することで、複数の膜面モジュール120で形成される膜状構造物101は、アンテナを構成するパラボラ形状に制御することが可能となる。
【0021】
膜状構造物101は、地上から宇宙空間への運搬時の収容容積の制約の為に折り畳んだ状態で運搬する。そして、膜状構造物101は、宇宙空間に運搬後、人工衛星102に搭載される推進装置103により膜状構造物101を回転させ、その際に生じる遠心力により膜状構造物101を展開する。その後、膜状構造物101の回転による遠心力と太陽輻射圧のバランスで、膜状構造物101を3次元形状であるパラボラ形状となるように制御する。
図5に示すように、膜状構造物101を構成する複数の膜面モジュール120は、それぞれ放射状の2辺に接地センサ110を有しており、各膜面モジュール120が隣接する膜面モジュール120と接触したことを検出することで、膜状構造物101の3次元形状の生成が完了したことを検知する。
【0022】
また、膜面モジュール120は、放射状の2辺に形状維持装置105を有しており、膜状構造物101の形状生成が完了した後の形状を維持する。形状維持装置105は、具体的には、膜状構造物101に接続されるテザーとテザー伸縮制御装置、磁石、硬化樹脂、またはラッチ機構等で構成される。なお、形状維持装置105は、赤外線センサまたはカメラを有し、これらの情報を基に膜状構造物101の形状を維持もしくは安定化させてもよい。
【0023】
そして、本実施例における宇宙構造物制御システム100は、膜状構造物101のパラボラ形状を維持し、人工衛星102または膜状構造物101と伸縮ピラー107を介して接続される発信器/受信機108によりアンテナの機能を有する。なお、伸縮ピラーの代わりにテザーを介して発信器/受信機108が接続されてもよい。
【0024】
なお、人工衛星102は、膜状構造物101の姿勢維持(指向方向維持)のため、推進装置103を用いて回転数を制御してもよい。
【0025】
また、人工衛星102は、膜状構造物101の形状維持のため、重りになる人工衛星自体を膜状構造物101から切り離す機能を有してもよい。
【0026】
また、太陽光反射率制御装置104は、反射鏡143における太陽光反射率を制御することにより反射鏡143に加わる太陽輻射圧を制御することで、膜状構造物101の3次元形状の姿勢を制御してもよい。
【0027】
図8は、本実施例における宇宙構造物制御システムの膜状構造物の形状制御の処理フローチャートである。
図8において、まず、ステップS11で、推進装置103を用いて膜状構造物101を回転させて膜状構造物101を展開する。次に、ステップS12で、太陽光パネルを用いて膜面の照度を計測する。そして、ステップS13で、太陽光反射率制御装置104である液晶デバイスの太陽光反射率を変化させ太陽輻射圧を制御する。そして、ステップS14で、膜状構造物の回転による遠心力と液晶デバイスの太陽光反射率変化による太陽輻射圧制御により膜状構造物101の膜面形状を制御する。次に、ステップS15で、膜状構造物101を構成する複数の膜面モジュール120のそれぞれの放射状の2辺にある接地センサ110に信号有かを判断する。そして、信号無しの場合は、膜状構造物101の膜面形状の制御が未完了と判断しステップS13に戻る。ステップS15で、信号有の場合は、膜状構造物101の回転による展開および膜面形状の制御が完了と判断しステップS16に移行する。
【0028】
そして、ステップS16で、形状維持装置を用いて膜状構造物101の膜面形状を維持する。そして、ステップS17で、伸縮ピラー107を展開し、発信器/受信機108を所望位置に配置する。
【0029】
このように、本実施例によれば、宇宙構造物130は、地上から宇宙空間への運搬時の収容容積の制約の為に折り畳んだ状態で運搬し、宇宙空間に運搬後、人工衛星102に搭載される推進装置103により膜状構造物101を回転させ、その際に生じる遠心力により膜状構造物101を展開する。そのため、展開時間が短い宇宙構造物制御システムを提供できる。また、太陽光反射率制御装置104を膜状構造物101に有するので、太陽光反射率制御装置104により、反射鏡143における太陽光反射率を制御することにより反射鏡143に加わる太陽輻射圧を制御可能である。よって、膜状構造物101の回転による遠心力と太陽輻射圧のバランスで膜状構造物101のパラボラ形状を形成することができる。よって、推進装置103と太陽光反射率制御装置104により宇宙構造物の軌道及び姿勢の制御も可能であり、重力傾斜や空気外乱などによる影響も修正可能となる。すなわち、宇宙空間で展開される宇宙構造物において、大型化に際して、より軽量でかつ面形状制御が容易で展開時間が短い宇宙構造物制御システムを提供できる。
実施例1では、宇宙構造物として10~50m級の大型展開式アンテナについて説明したが、本実施例では、さらに大きな宇宙構造物である100~500m級の大型展開式アンテナについて説明する。
薄膜衛星モジュール230は、実施例1での膜面モジュール120と同様に、薄膜に反射鏡と液晶デバイスが貼り付けられた薄膜構造を有している。すなわち、液晶デバイスは太陽光反射率制御装置104として機能し、反射鏡における太陽光反射率を制御することにより反射鏡に加わる太陽輻射圧を制御可能である。また、薄膜衛星モジュール230は、膜面モジュール120と同様に、太陽光パネル106を有している。
本実施例では、宇宙構造物は、地上から宇宙空間への運搬時の収容容積の制約の為に折り畳んだ状態で運搬する。そして、宇宙構造物は、宇宙空間に運搬後、人工衛星102に搭載される推進装置103および端部衛星209により宇宙構造物の膜状構造物220を回転させ、その際に生じる遠心力により膜状構造物220を展開する。そして、膜状構造物220の回転による遠心力と太陽輻射圧のバランスで、膜状構造物220を3次元形状であるパラボラ形状となるように制御する。
また、薄膜衛星モジュール230は、放射状の2辺に形状維持装置105を有しており、薄膜構造物の形状生成が完了した後の形状を維持する。形状維持装置105は、実施例1と同様の構成であり、その説明は省略する。
そして、本実施例における宇宙構造物制御システム200は、宇宙構造物の膜状構造物220のパラボラ形状を維持し、人工衛星102または膜状構造物220と、発信器/受信機モジュール240内の伸縮ピラー107を介して接続される発信器/受信機108によりアンテナの機能を有する。なお、伸縮ピラーの代わりに編隊衛星を介して発信器/受信機108が接続されてもよい。
また、太陽光反射率制御装置104は、反射鏡における太陽光反射率を制御することにより反射鏡に加わる太陽輻射圧を制御することで、膜状構造物220の3次元形状の姿勢を制御してもよい。
このように、本実施例によれば、宇宙構造物は、地上から宇宙空間への運搬時の収容容積の制約の為に折り畳んだ状態で運搬し、宇宙空間に運搬後、人工衛星102に搭載される推進装置103と共に端部衛星209により膜状構造物220を回転させる。これにより、回転により生じる遠心力により膜状構造物101を展開する。そのため、実施例1に比べて、端部衛星209による推力も使用するため、より大きな宇宙構造物についても展開時間が短い宇宙構造物制御システムを提供できる。また、実施例1と同様に、膜状構造物220の回転による遠心力と太陽輻射圧のバランスで膜状構造物220のパラボラ形状を形成することができる。よって、推進装置103と太陽光反射率制御装置104により宇宙構造物の軌道及び姿勢の制御も可能であり、重力傾斜や空気外乱などによる影響も修正可能となる。すなわち、宇宙空間で展開される宇宙構造物において、さらなる大型化に際して、より軽量でかつ面形状制御が容易で展開時間が短い宇宙構造物制御システムを提供できる。