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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024132145
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】産業車両の制動制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60T 8/00 20060101AFI20240920BHJP
【FI】
B60T8/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023042825
(22)【出願日】2023-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(74)【代理人】
【識別番号】100148013
【弁理士】
【氏名又は名称】中山 浩光
(74)【代理人】
【識別番号】100192511
【弁理士】
【氏名又は名称】柴田 晃史
(72)【発明者】
【氏名】桑原 啓介
【テーマコード(参考)】
3D246
【Fターム(参考)】
3D246AA14
3D246BA02
3D246BA08
3D246DA01
3D246EA05
3D246FA04
3D246GA09
3D246GA13
3D246GC14
3D246HA28A
3D246HA44A
3D246HA64A
3D246HA72A
3D246HA86B
3D246JA12
3D246JB03
3D246JB11
3D246JB32
3D246LA12Z
3D246LA15Z
(57)【要約】
【課題】コスト増大を抑制しつつ、駆動輪のロックの際に駆動系を構成する部品に加わる衝撃トルクを抑制することが可能となる産業車両の制動制御装置を提供する。
【解決手段】産業車両1は、駆動系6を介して走行モータ5により駆動される前輪2と、走行モータ5により駆動されない後輪3と、を備える。産業車両の制動制御装置100は、駆動系6よりも前輪2側に設けられ前輪2を制動するブレーキ装置8cと、駆動系6よりも走行モータ5側に設けられ走行モータ5を制動する電磁ブレーキ7と、後輪3の回転数を取得する第2車速センサ9bと、前輪2の回転数を取得する第1車速センサ9aと、後輪3の回転数及び前輪2の回転数に基づいてブレーキ装置8cの制動による前輪2のロックの発生を推定すると共に、前輪2のロックが発生したと推定された場合に走行モータ5を制動するように電磁ブレーキ7を制御するコントローラ10と、を備える。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動系を介してモータによって駆動される駆動輪と、前記モータによって駆動されない非駆動輪と、を備える産業車両の制動制御装置であって、
前記駆動系よりも前記駆動輪側に設けられ前記駆動輪を制動する駆動輪制動部と、
前記駆動系よりも前記モータ側に設けられ前記モータを制動するモータ制動部と、
前記非駆動輪の回転数を取得する非駆動輪回転数取得部と、
前記駆動輪の回転数を取得する駆動輪回転数取得部と、
前記非駆動輪の回転数及び前記駆動輪の回転数に基づいて前記駆動輪制動部の制動による前記駆動輪のロックの発生を推定すると共に、前記駆動輪のロックが発生したと推定された場合に前記モータを制動するように前記モータ制動部を制御する制御部と、を備える、産業車両の制動制御装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記非駆動輪の回転数及び前記駆動輪の回転数に基づいて前記非駆動輪に対する前記駆動輪のスリップ率を算出し、前記スリップ率と所定のスリップ率閾値との比較結果に基づいて前記駆動輪のロックの発生を推定する、請求項1に記載の産業車両の制動制御装置。
【請求項3】
前記駆動輪制動部は、油圧式のサービスブレーキであり、
前記駆動輪制動部を動作させる作動油の圧力を取得する油圧取得部を備え、
前記制御部は、前記駆動輪のロックが発生したと推定され、前記駆動輪の回転数が所定の回転数閾値以上であり、且つ、前記作動油の圧力が所定の圧力閾値以上である場合に、前記モータを制動するように前記モータ制動部を制御する、請求項1又は2に記載の産業車両の制動制御装置。
【請求項4】
前記駆動輪回転数取得部は、前記モータに設けられ、前記モータの回転数を取得するモータ回転数センサである、請求項1又は2に記載の産業車両の制動制御装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記非駆動輪の回転数及び前記駆動輪の回転数に基づいて前記非駆動輪に対する前記駆動輪のスリップ率の変化率を算出し、前記スリップ率の変化率と所定の変化率閾値との比較結果に基づいて前記駆動輪のロックの発生を推定する、請求項1又は2に記載の産業車両の制動制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、産業車両の制動制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、産業車両の制動制御装置に関する技術として、パニックブレーキ状態の発生時に自動的に電動モータがストッピングアームを下降揺動させ、その先端部を路面に圧接させて車体に制動力を付与する技術が知られている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平08-040222号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば電動フォークリフト等の産業車両は、一般的に、駆動系を介してモータによって駆動される駆動輪と、モータによって駆動されない非駆動輪と、を備えている。駆動系よりも駆動輪側には、駆動輪を制動する駆動輪制動部(例えば主制動用のサービスブレーキ)が設けられている。このような構成の産業車両では、例えば低μ路等を走行中の急ブレーキにより駆動輪制動部の制動力で駆動輪がロックすることがある。この場合、駆動輪がロックする一方で回転し続けようとするモータの慣性力によって、駆動輪とモータとの間の駆動系を構成する部品(ギヤ及びシャフト等)に急激に弾性ねじりを生じさせる衝撃トルクが発生し得る。この問題の対策として、例えば駆動系を構成する部品の強化、非駆動輪への制動部の追加又は強化、及び、駆動輪へのアンチロックブレーキシステムの追加、等の手法が考えられる。しかしながら、これらの手法はコスト増大を抑制することが難しい。
【0005】
本発明は、コスト増大を抑制しつつ、駆動輪のロックの際に駆動系を構成する部品に加わる衝撃トルクを抑制することが可能となる産業車両の制動制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、駆動系を介してモータによって駆動される駆動輪と、モータによって駆動されない非駆動輪と、を備える産業車両の制動制御装置であって、駆動系よりも駆動輪側に設けられ、駆動輪を制動する駆動輪制動部と、駆動系よりもモータ側に設けられ、モータを制動するモータ制動部と、非駆動輪の回転数を取得する非駆動輪回転数取得部と、駆動輪の回転数を取得する駆動輪回転数取得部と、非駆動輪の回転数及び駆動輪の回転数に基づいて駆動輪制動部の制動による駆動輪のロックの発生を推定すると共に、駆動輪のロックが発生したと推定された場合にモータを制動するようにモータ制動部を制御する制御部と、を備える。
【0007】
本発明の一態様に係る産業車両の制動制御装置では、非駆動輪の回転数及び駆動輪の回転数に基づいて、駆動輪制動部の制動による駆動輪のロックの発生が推定される。駆動輪のロックが発生したと推定された場合、駆動系よりもモータ側に設けられたモータ制動部でモータを制動する。これにより、モータ制動部の制動力を利用してモータの慣性力が受け止められるため、回転し続けようとするモータの慣性力によって駆動系を構成する部品に加わる衝撃トルク自体が直接的に低減される。したがって、コスト増大を抑制しつつ、駆動輪のロックの際に駆動系を構成する部品に加わる衝撃トルクを抑制することが可能となる。
【0008】
一実施形態において、制御部は、非駆動輪の回転数及び駆動輪の回転数に基づいて非駆動輪に対する駆動輪のスリップ率を算出し、スリップ率と所定のスリップ率閾値との比較結果に基づいて駆動輪のロックの発生を推定してもよい。この場合、非駆動輪に対する駆動輪のスリップ率を用いることで、非駆動輪の回転数を基準とした駆動輪の回転数の低下の割合に応じてロックの発生を推定することができる。
【0009】
一実施形態において、駆動輪制動部は、油圧式のサービスブレーキであり、産業車両の制動制御装置は、駆動輪制動部を動作させる作動油の圧力を取得する油圧取得部を備え、制御部は、駆動輪のロックが発生したと推定され、駆動輪の回転数が所定の回転数閾値以上であり、且つ、作動油の圧力が所定の圧力閾値以上である場合に、モータを制動するようにモータ制動部を制御してもよい。この場合、駆動輪のロックの際に駆動系を構成する部品に加わる衝撃トルクが大きくなり易い状況で、衝撃トルクの低減を図ることができる。
【0010】
一実施形態において、駆動輪回転数取得部は、モータに設けられ、モータの回転数を取得するモータ回転数センサであってもよい。この場合、モータの回転数を用いて駆動輪の回転数を間接に取得することができるため、駆動輪への車輪速センサの設置を省くことができる。
【0011】
一実施形態において、制御部は、非駆動輪の回転数及び駆動輪の回転数に基づいて非駆動輪に対する駆動輪のスリップ率の変化率を算出し、スリップ率の変化率と所定の変化率閾値との比較結果に基づいて駆動輪のロックの発生を推定してもよい。この場合、駆動輪のスリップ率の変化率を用いることで、ロックの発生を推定する感度を高めることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の一態様の産業車両の制動制御装置によれば、コスト増大を抑制しつつ、駆動輪のロックの際に駆動系を構成する部品に加わる衝撃トルクを抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施形態に係る産業車両の制動制御装置を備えた産業車両を例示する概略構成図である。
図2】コントローラの処理の一例を示すフローチャートである。
図3図2のロック発生の推定処理の一例を示すフローチャートである。
図4図2のロック発生の推定処理の他の例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下の説明において、同一又は相当要素には同一符号を用い、重複する説明は省略する。
【0015】
図1は、実施形態に係る産業車両の制動制御装置を備えた産業車両を例示する概略構成図である。本実施形態に係る産業車両の制動制御装置100が搭載される産業車両1としては、例えば、電動フォークリフトが挙げられる。
【0016】
図1に示されるように、産業車両1は、前輪2、後輪3、バッテリ4、走行モータ(モータ)5、駆動系6、電磁ブレーキ(モータ制動部)7、及び、ブレーキシステム8を備えている。産業車両1は、走行モータ5によって発生した駆動力が駆動系6を介して駆動輪に伝達するように構成されている。
【0017】
前輪2は、産業車両1の車体の前部に配置された車輪であり、例えば左右一対の駆動輪である。産業車両1が電動フォークリフトである場合、前輪2は、産業車両1の車体においてマスト及びフォークを含む荷役装置が設けられている側の車輪に対応する。後輪3は、産業車両1の車体の後部に配置された車輪であり、例えば左右一対の操舵輪である。
【0018】
バッテリ4は、直流電力を出力する電源である。バッテリ4としては、例えば、鉛蓄電池、リチウムイオン電池等の二次電池が用いられる。バッテリ4は、走行モータ5に電力を供給する。
【0019】
走行モータ5は、産業車両1の走行用のモータジェネレータである。走行モータ5は、例えば、三相交流回転電動機である。走行モータ5は、バッテリ4からの電力供給に応じて駆動力を発生させる。
【0020】
前輪2と走行モータ5との間には、駆動系6が介在している。駆動系6には、例えば減速用のギヤ及びシャフト等、産業車両1の走行中に前輪2と走行モータ5との間の動力伝達経路を形成する部品(駆動系を構成する部品)が含まれる。前輪2は、駆動系6を介して走行モータ5によって駆動される。後輪3は、走行モータ5によって駆動されない非駆動輪である。
【0021】
電磁ブレーキ7は、例えば、産業車両1の駐車時等にパーキングブレーキとして用いられる制動装置である。電磁ブレーキ7は、バッテリ4からの電力が供給されない場合に走行モータ5を制動してもよい。電磁ブレーキ7は、バッテリ4からの電力が供給された場合に走行モータ5の制動を解除してもよい。
【0022】
電磁ブレーキ7は、駆動系6よりも走行モータ5側に設けられ、走行モータ5を制動可能に設けられている。電磁ブレーキ7は、駆動系6を介さずに走行モータ5を制動可能に設けられている。ここでの電磁ブレーキ7は、例えば、走行モータ5の駆動系6とは反対側の端部側に設けられている。
【0023】
ブレーキシステム8は、産業車両1の作業者のブレーキ操作によって産業車両1の車輪を制動するためのシステムである。ここでのブレーキシステム8は、作業者のブレーキ操作によって前輪2を制動する。ブレーキシステム8は、ブレーキペダル8a、マスターシリンダ8b、及び、ブレーキ装置(駆動輪制動部)8cを有している。
【0024】
ブレーキペダル8aは、作業者のブレーキ操作によって踏み込まれるペダルである。マスターシリンダ8bは、ブレーキペダル8aが押されることでブレーキ装置8cを作動させるための油圧を発生させる。ブレーキ装置8cは、駆動系6よりも前輪2側に設けられており、前輪2を制動可能である。ここでのブレーキ装置8cは、油圧式のサービスブレーキであり、例えばドラムブレーキであってもよい。
【0025】
ブレーキペダル8aが押されると、ブレーキペダル8aによってマスターシリンダ8b内部のピストンロッド及びピストンが押し込まれて油圧が発生する。マスターシリンダ8bで発生した油圧は作動油を介してブレーキ装置8cに伝わり、ブレーキ装置8cが作動する。これにより、前輪2が制動される。
【0026】
産業車両の制動制御装置100は、産業車両1に搭載され、産業車両1の電磁ブレーキ7を制御する制御装置である。産業車両の制動制御装置100は、産業車両1を運転する作業者のブレーキ操作によりブレーキ装置8cの制動力で前輪2がロックすると推定される場合に、駆動系6を構成する部品に加わる衝撃トルクを抑制するように電磁ブレーキ7を制御する。
【0027】
産業車両の制動制御装置100は、例えば、第1車速センサ(駆動輪回転数取得部)9aと、第2車速センサ(非駆動輪回転数取得部)9bと、ブレーキ油圧センサ(油圧取得部)9cと、コントローラ(制御部)10と、を備えている。図1の破線で示されるように、第1車速センサ9a、第2車速センサ9b、ブレーキ油圧センサ9c、及び、電磁ブレーキ7は、コントローラ10に電気的に接続されている。
【0028】
第1車速センサ9aは、産業車両1の車速として、前輪2の回転数を取得するためのセンサである。第1車速センサ9aは、前輪2の回転数を直接的又は間接的に取得する。第1車速センサ9aは、例えば、走行モータ5に設けられ、走行モータ5の回転数を取得するモータ回転数センサとすることができる。モータ回転数センサは、前輪2の回転数を間接的に取得することができる。第1車速センサ9aは、取得した走行モータ5の回転数に関する信号をコントローラ10に送信する。
【0029】
第2車速センサ9bは、産業車両1の車速として、後輪3の回転数を取得するためのセンサである。第2車速センサ9bは、後輪3の回転数を直接的又は間接的に取得する。第2車速センサ9bは、例えば、一対の後輪3付近に設けられ、一対の後輪3の回転数をそれぞれ直接的に取得するスピードセンサとすることができる。第2車速センサ9bは、取得した一対の後輪3の回転数に関する信号をコントローラ10に送信する。
【0030】
ブレーキ油圧センサ9cは、ブレーキ装置8cを動作させる作動油の圧力(油圧)を取得するセンサである。ブレーキ油圧センサ9cは、例えばマスターシリンダ8bに設けられ、マスターシリンダ8bで発生した油圧を取得する。ブレーキ油圧センサ9cは、取得した油圧に関する信号をコントローラ10に送信する。
【0031】
コントローラ10は、産業車両1の電磁ブレーキ7を制御する電子制御ユニットである。コントローラ10は、CPU[Central Processing Unit]、ROM[Read Only Memory]、RAM[Random Access Memory]、CAN[Controller Area Network]通信回路等を有する。コントローラ10では、例えば、ROMに記憶されているプログラムをRAMにロードし、RAMにロードされたプログラムをCPUで実行することにより各種の機能を実現する。コントローラ10は、複数の電子制御ユニットから構成されていてもよい。
【0032】
コントローラ10は、第1車速センサ9aの取得結果と前輪2の理論タイヤ径とに基づいて、第1疑似車速を算出してもよい。第1疑似車速は、前輪2の回転数から推定した産業車両1の車速である。前輪2の理論タイヤ径は、例えば前輪2の設計値又は諸元値としてのタイヤ径を意味する。コントローラ10は、例えば、第1車速センサ9aで取得した走行モータ5の回転数と駆動系6の減速比と前輪2の理論タイヤ径とから、第1疑似車速を算出する。
【0033】
コントローラ10は、第2車速センサ9bの取得結果と後輪3の理論タイヤ径とに基づいて、第2疑似車速を算出してもよい。第2疑似車速は、後輪3の回転数から推定した産業車両1の車速である。後輪3の理論タイヤ径は、例えば後輪3の設計値又は諸元値としてのタイヤ径を意味する。コントローラ10は、例えば、第2車速センサ9bで取得した一対の後輪3の回転数の平均値を算出し、後輪3の回転数の平均値と後輪3の理論タイヤ径とから、第2疑似車速を算出する。
【0034】
コントローラ10は、前輪2の回転数及び後輪3の回転数に基づいてブレーキ装置8cの制動による前輪2のロックの発生を推定する。具体的な一例として、コントローラ10は、前輪2の回転数及び後輪3の回転数に基づいて、後輪3に対する前輪2のスリップ率を算出する。スリップ率は、駆動輪がロックしていない状態を基準として、駆動輪が接地する路面に対する駆動輪のスリップ度合いを表した指標である。スリップ度合いとは、ブレーキ装置8cの制動力によって、前輪2が接地する路面に対してどの程度前輪2がスリップしているかの程度に対応する。
【0035】
スリップ率は、例えば、第1疑似車速を第2疑似車速で除算して算出することができる。この場合、スリップ率の値は、前輪2が完全にロックしていない状態(通常走行状態)においては「1」付近の値を取る。ブレーキ装置8cの制動力によって前輪2の回転数が通常走行状態と比べて低下し始めると、スリップ率の値は「1」から低下し始める。ブレーキ装置8cの制動力によって前輪2が完全にロックすると、スリップ率の値は「0」となる。
【0036】
コントローラ10は、スリップ率と所定のスリップ率閾値との比較結果に基づいて前輪2のロックの発生を推定する。スリップ率閾値は、前輪2のロックが発生したか否かを推定するためのスリップ率の閾値である。スリップ率閾値は、例えば、通常走行状態でのスリップ率のばらつき度合いを考慮して、ブレーキ装置8cの制動力によって前輪2がロックした蓋然性が高いスリップ率の値として設定することができる。コントローラ10は、スリップ率がスリップ率閾値以下である場合、前輪2のロックが発生したと推定する。コントローラ10は、スリップ率がスリップ率閾値を超えている場合、前輪2のロックが発生していないと推定する。
【0037】
コントローラ10は、前輪2の回転数及び後輪3の回転数に基づいて後輪3に対する前輪2のスリップ率の変化率を算出してもよい。スリップ率の変化率は、スリップ率の時間変化率を意味する。スリップ率の変化率は、ブレーキ装置8cの制動力による前輪2の回転数の低下速度に対応する。スリップ率の変化率は、例えば、前輪2の回転数が低下するときに負の値となる。
【0038】
コントローラ10は、スリップ率の変化率と所定の変化率閾値との比較結果に基づいて前輪2のロックの発生を推定してもよい。変化率閾値は、前輪2のロックが発生したか否かを推定するためのスリップ率の変化率の閾値である。なお、変化率閾値が前輪2の回転数の低下速度に対応することから、ここでの「前輪2のロックが発生したか否か」は、「厳密には前輪2のロックが未発生であるが発生しつつあるか否か」を意味してもよい。
【0039】
変化率閾値は、例えば、通常走行状態でのスリップ率の時間変化率の取り得る範囲を考慮して、ブレーキ装置8cの制動力によって通常走行状態では生じない程度に大きい低下速度に対応するスリップ率の時間変化率の値として設定することができる。コントローラ10は、スリップ率の変化率が変化率閾値以下である場合、前輪2のロックが発生したと推定する。コントローラ10は、スリップ率の変化率がスリップ率閾値を超えている場合、前輪2のロックが発生していないと推定する。
【0040】
コントローラ10は、前輪2のロックが発生したと推定された場合に、走行モータ5を制動するように電磁ブレーキ7を制御する。ここでのコントローラ10は、前輪2のロックが発生していないと推定された場合に、バッテリ4からの電力を電磁ブレーキ7に供給することで、走行モータ5の制動を解除するように電磁ブレーキ7を制御する。コントローラ10は、前輪2のロックが発生したと推定された場合に、バッテリ4からの電力を電磁ブレーキ7に供給しないことで、走行モータ5を制動するように電磁ブレーキ7を制御する。
【0041】
ちなみに、走行モータ5の回転数が比較的低回転の場合には、衝撃トルクが発生したとしても、駆動系6を構成する部品に対する影響が大きくない傾向がある。また、ブレーキ装置8cの制動力が比較的小さい場合には、衝撃トルクが発生したとしても、駆動系6を構成する部品に対する影響が大きくない傾向がある。そこで、これらの場合を考慮して、コントローラ10は、前輪2のロックが発生したと推定され、前輪2の回転数が所定の回転数閾値以上であり、且つ、ブレーキ装置8cを動作させる作動油の圧力が所定の圧力閾値以上である場合に、走行モータ5を制動するように電磁ブレーキ7を制御してもよい。
【0042】
コントローラ10は、第1車速センサ9aの取得結果と駆動系6の減速比とに基づいて、前輪2の回転数が所定の回転数閾値以上であるか否かを判定してもよい。回転数閾値は、前輪2のロックが発生したと推定された場合に走行モータ5を制動するように電磁ブレーキ7を制御するための前輪2の回転数の閾値である。回転数閾値は、例えば走行モータ5の回転数と衝撃トルクの大きさとの関係を実験又はシミュレーションにより考慮して予め設定することができる。
【0043】
コントローラ10は、ブレーキ油圧センサ9cの取得結果に基づいて、ブレーキ装置8cを動作させる作動油の圧力が所定の圧力閾値以上であるか否かを判定してもよい。圧力閾値は、前輪2のロックが発生したと推定された場合に走行モータ5を制動するように電磁ブレーキ7を制御するための、ブレーキ装置8cを動作させる作動油の圧力の閾値である。圧力閾値は、例えばブレーキ装置8cの制動力と衝撃トルクの大きさとの関係を実験又はシミュレーションにより考慮して予め設定することができる。
【0044】
図2は、コントローラの処理の一例を示すフローチャートである。図2に示されるフローチャートの処理は、例えば、産業車両1の走行中に所定の演算周期ごとに繰り返し実行される。
【0045】
S10において、産業車両の制動制御装置100のコントローラ10は、非駆動輪の回転数の取得を行う。コントローラ10は、例えば、第2車速センサ9bで取得した一対の後輪3の回転数の平均値を算出し、後輪3の回転数を取得する。
【0046】
S11において、コントローラ10は、駆動輪の回転数の取得を行う。コントローラ10は、例えば、第1車速センサ9aで取得した走行モータ5の回転数と駆動系6の減速比とに基づいて、前輪2の回転数を取得する。
【0047】
S12において、コントローラ10は、作動油の圧力の取得を行う。コントローラ10は、例えば、ブレーキ油圧センサ9cで取得したマスターシリンダ8bでの油圧に基づいて、ブレーキ装置8cを動作させる作動油の圧力を取得する。
【0048】
S13において、コントローラ10は、駆動輪のロックの発生の推定を行う。コントローラ10は、例えば、図3及び図4のロック発生の推定処理を行うことで、駆動輪のロックの発生を推定する。
【0049】
図3は、図2のロック発生の推定処理の一例を示すフローチャートである。図3に示されるように、S20において、コントローラ10は、非駆動輪に対する駆動輪のスリップ率の算出を行う。例えば、コントローラ10は、第1車速センサ9aの取得結果と前輪2の理論タイヤ径とに基づいて、第1疑似車速を算出する。コントローラ10は、第2車速センサ9bの取得結果と後輪3の理論タイヤ径とに基づいて、第2疑似車速を算出する。コントローラ10は、第1疑似車速を第2疑似車速で除算してスリップ率を算出する。
【0050】
S21において、コントローラ10は、スリップ率がスリップ率閾値以下であるか否かの判定を行う。スリップ率がスリップ率閾値以下であると判定された場合(S21:YES)、S22において、コントローラ10は、駆動輪のロックが発生したと推定する。一方、スリップ率がスリップ率閾値を超えていると判定された場合(S21:NO)、S23において、コントローラ10は、駆動輪のロックが発生していないと推定する。その後、コントローラ10は、図3の処理を終了し、図2のS14の処理に移行する。
【0051】
他方、図4は、図2のロック発生の推定処理の他の例を示すフローチャートである。図4に示されるように、S30において、コントローラ10は、非駆動輪に対する駆動輪のスリップ率の変化率の算出を行う。例えば、コントローラ10は、スリップ率の時間変化率を計算することで、スリップ率の変化率を算出する。
【0052】
S31において、コントローラ10は、スリップ率の変化率が変化率閾値以下であるか否かの判定を行う。スリップ率の変化率が変化率閾値以下であると判定された場合(S31:YES)、S32において、コントローラ10は、駆動輪のロックが発生したと推定する。一方、スリップ率の変化率が変化率閾値を超えていると判定された場合(S31:NO)、S33において、コントローラ10は、駆動輪のロックが発生していないと推定する。その後、コントローラ10は、図4の処理を終了し、図2のS14の処理に移行する。
【0053】
図2に戻り、S14において、コントローラ10は、駆動輪の回転数が回転数閾値以上であるか否かの判定を行う。駆動輪の回転数が回転数閾値以上であると判定された場合(S14:YES)、コントローラ10は、S15の処理に移行する。一方、駆動輪の回転数が回転数閾値未満であると判定された場合(S14:NO)、コントローラ10は、図2の処理を終了する。
【0054】
S15において、コントローラ10は、作動油の圧力が圧力閾値以上であるか否かの判定を行う。作動油の圧力が圧力閾値以上であると判定された場合(S15:YES)、コントローラ10は、S16の処理に移行する。一方、作動油の圧力が圧力閾値未満であると判定された場合(S15:NO)、コントローラ10は、図2の処理を終了する。
【0055】
S16において、コントローラ10は、駆動輪のロックが発生したと推定されたか否かの判定を行う。駆動輪のロックが発生したと推定されたとの判定の場合(S16:YES)、コントローラ10は、S17の処理に移行する。一方、駆動輪のロックが発生していないと推定されたとの判定の場合(S16:NO)、コントローラ10は、図2の処理を終了する。
【0056】
S17において、コントローラ10は、モータを制動するようにモータ制動部の制御を行う。コントローラ10は、例えば、バッテリ4からの電力を電磁ブレーキ7に供給しないことで、走行モータ5を制動するように電磁ブレーキ7を制御する。その後、コントローラ10は、図2の処理を終了する。
【0057】
ここで、駆動系を構成する部品(ギヤ及びシャフト等)に急激に弾性ねじりを生じさせる衝撃トルクの対策として、例えば駆動系を構成する部品の強化、非駆動輪への制動部の追加又は強化、及び、駆動輪へのアンチロックブレーキシステムの追加、等の手法が考えられる。しかしながら、駆動系を構成する部品の強化については、衝撃トルクによる部品の破損を防ぐためには常用域では不必要なほど部品の耐久性を上げる必要がある。また、非駆動輪への制動部の追加又は強化は、例えばブレーキ油圧回路のバルブ等を用いて駆動輪への制動部の制動力に上限を設けることで駆動輪のロックを抑制しようとした場合に、駆動輪だけでの主制動力が減少することに対応し、非駆動輪でも主制動力を補う意味がある。特に車両重量が大きいフォークリフトでは、非駆動輪で主制動力を補う意味が顕著となる。しかしながら、非駆動輪への制動部の追加又は強化は、高コスト化に直結する。また、駆動輪へのアンチロックブレーキシステムの追加については、乗用車及び貨物車両と比べて低速で走るフォークリフトにとっては、車両安定効果のメリットが小さく、高コスト化の影響の方が大きい。
【0058】
この点、上述のように構成された産業車両の制動制御装置100によれば、後輪3の回転数及び前輪2の回転数に基づいて、ブレーキ装置8cの制動による前輪2のロックの発生が推定される。前輪2のロックが発生したと推定された場合、駆動系6よりも走行モータ5側に設けられた電磁ブレーキ7で走行モータ5を制動する。これにより、電磁ブレーキ7の制動力を利用して走行モータ5の慣性力が受け止められるため、回転し続けようとする走行モータ5の慣性力によって駆動系6を構成する部品に加わる衝撃トルク自体が直接的に低減される。したがって、コスト増大を抑制しつつ、前輪2のロックの際に駆動系6を構成する部品に加わる衝撃トルクを抑制することが可能となる。
【0059】
なお、電磁ブレーキ7が駆動系6よりも走行モータ5側に設けられていることで、駆動系6の減速比によるトルク増幅の影響を受けずに走行モータ5を制動することができる。よって、トルク増幅の影響を受ける場合と比べて、電磁ブレーキ7の小型化を図ることができる。
【0060】
産業車両の制動制御装置100では、コントローラ10は、後輪3の回転数及び前輪2の回転数に基づいて後輪3に対する前輪2のスリップ率を算出し、スリップ率と所定のスリップ率閾値との比較結果に基づいて前輪2のロックの発生を推定する。これにより、後輪3に対する前輪2のスリップ率を用いることで、後輪3の回転数を基準とした前輪2の回転数の低下の割合に応じてロックの発生を推定することができる。
【0061】
ブレーキ装置8cは、油圧式のサービスブレーキである。産業車両の制動制御装置100は、ブレーキ装置8cを動作させる作動油の圧力を取得する油圧取得部を備えている。コントローラ10は、前輪2のロックが発生したと推定され、前輪2の回転数が所定の回転数閾値以上であり、且つ、作動油の圧力が所定の圧力閾値以上である場合に、走行モータ5を制動するように電磁ブレーキ7を制御する。これにより、前輪2のロックの際に駆動系6を構成する部品に加わる衝撃トルクが大きくなり易い状況で、衝撃トルクの低減を図ることができる。
【0062】
なお、衝撃トルクが駆動系6を構成する部品に与える影響が一定未満の場合に、走行モータ5を制動しないように電磁ブレーキ7を制御することとなるため、電磁ブレーキ7による走行モータ5の制動によって産業車両1の車両挙動に影響が及ぶことを抑制することができる。
【0063】
産業車両の制動制御装置100では、走行モータ5に設けられ、走行モータ5の回転数を取得する走行モータ5の回転数センサが駆動輪回転数取得部として機能する。これにより、走行モータ5の回転数を用いて前輪2の回転数を間接に取得することができるため、前輪2への車輪速センサの設置を省くことができる。
【0064】
なお、例えば、左右の前輪2の両方に車輪速センサを設ける場合と比べて、構成の簡素化を図ることができる。また、産業車両1において前輪2に車輪速センサが設けられておらず走行モータ5のモータ回転数センサが既設であれば、モータ回転数センサを利用することで前輪2への車輪速センサの追加を省くことができる。
【0065】
産業車両の制動制御装置100では、コントローラ10は、後輪3の回転数及び前輪2の回転数に基づいて後輪3に対する前輪2のスリップ率の変化率を算出し、スリップ率の変化率と所定の変化率閾値との比較結果に基づいて前輪2のロックの発生を推定する。これにより、前輪2のスリップ率の変化率を用いることで、ロックの発生を推定する感度を高めることができる。
【0066】
[変形例]
本発明は上述した実施形態に限定されるものではない。本発明は、上述した実施形態を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した様々な形態で実施することができる。
【0067】
上記実施形態では、コントローラ10は、前輪2のロックが発生したと推定され、前輪2の回転数が所定の回転数閾値以上であり、且つ、作動油の圧力が所定の圧力閾値以上である場合に、走行モータ5を制動するように電磁ブレーキ7を制御したが、この例に限定されない。前輪2の回転数の条件及び作動油の圧力の条件は、いずれか一方又は両方を省いてもよい。
【0068】
上記実施形態では、第1車速センサ9aは、走行モータ5の回転数を取得するモータ回転数センサであったが、この例に限定されない。第1車速センサ9aは、例えば、前輪2付近に設けられ、前輪2の回転数を直接的に取得するスピードセンサであってもよい。なお、駆動系6に左右の前輪2の回転差を吸収するデファレンシャルギアが含まれる場合には、第1車速センサ9aとしての車輪速センサを左右の前輪2の両方に設けることで、左右の前輪2に回転差が生じた場合の補正を行ってもよい。
【0069】
上記実施形態では、第2車速センサ9bは、後輪3付近に設けられ、後輪3の回転数を直接的に取得するスピードセンサであったが、この例に限定されない。第2車速センサ9bは、後輪3の回転数を間接的に取得可能に設けられていてもよい。また、第2車速センサ9bに代わる非駆動輪回転数取得部として、例えばGPS受信機、又は、対地光学車速計を用いることができる。GPS受信機により測位した測位位置に基づく車速、又は、対地光学車速計により計測した車速を用いて、後輪3の回転数を間接的に取得してもよい。
【0070】
上記実施形態では、ブレーキ油圧センサ9cは、マスターシリンダ8bに設けられていたが、この例に限定されない。例えば、ブレーキ油圧センサ9cは、マスターシリンダ8bからブレーキ装置8cまでの油圧経路に設けられていてもよい。ブレーキ油圧センサ9cは、ブレーキ装置8cに設けられ、ブレーキ装置8cに伝達された油圧を取得してもよい。
【0071】
上記実施形態では、コントローラ10は、後輪3に対する前輪2のスリップ率、及び、後輪3に対する前輪2のスリップ率の変化率を算出したが、この例に限定されない。コントローラ10は、後輪3に対する前輪2のスリップ率、及び、後輪3に対する前輪2のスリップ率の変化率のいずれか一方を算出してもよい。
【0072】
上記実施形態では、スリップ率は、第1疑似車速を第2疑似車速で除算して算出されたが、第2疑似車速を第1疑似車速で除算して算出されてもよい。この場合、スリップ率閾値及び変化率閾値は、例えば上記実施形態の逆数にする等、スリップ率の算出手法に合わせて前輪2の回転数の低下から前輪2のロックの発生を推定するように適宜変更されてもよい。
【0073】
上記実施形態での後輪3に対する前輪2のスリップ率、及び、後輪3に対する前輪2のスリップ率の変化率に代えて、コントローラ10は、後輪3の回転数と前輪2の回転数との差分等、その他の指標を算出すると共に、当該その他の指標と所定の閾値との比較結果に基づいて前輪2のロックの発生を推定してもよい。所定の閾値は、前輪2の回転数の低下から前輪2のロックの発生を推定するための当該その他の指標の閾値を意味する。
【0074】
上記実施形態では、電磁ブレーキ7は、走行モータ5の駆動系6とは反対側の端部側に設けられていたが、この例に限定されない。電磁ブレーキ7は、駆動系6を介さずに走行モータ5を制動可能に設けられていればよい。例えば、電磁ブレーキ7は、走行モータ5と駆動系6との間に設けられていてもよい。
【0075】
上記実施形態では、モータ制動部の一例として電磁ブレーキ7を示したが、この例に限定されない。モータ制動部は、例えば、電磁ブレーキ7に代えて、モータの回転に抵抗を与える部材に対する遮断及び接続を行うクラッチであってもよい。要は、モータ制動部は、駆動系よりもモータ側に設けられ、モータを制動可能であればよい。例えば、モータ制動部は、駆動系よりもモータ側に設けられた油圧式の制動装置であってもよい。
【0076】
上記実施形態では、駆動輪制動部は、油圧式のサービスブレーキであったが、油圧式に限定されず、その他の流体圧又は機械式のサービスブレーキであってもよい。
【0077】
上記実施形態では、前輪2が駆動輪であり、後輪3が非駆動輪であったが、この例に限定されない。互いに逆でもよい。
【0078】
上記実施形態では、産業車両の制動制御装置100が搭載される産業車両1として、電動フォークリフトを示したが、この例に限定されない。例えば、産業車両は、牽引車、搬送車、トーイングトラクタ等の他の産業車両であってもよい。
【0079】
なお、以下、本発明の種々の態様の構成要件を記載する。
<発明1>
駆動系を介してモータによって駆動される駆動輪と、前記モータによって駆動されない非駆動輪と、を備える産業車両の制動制御装置であって、
前記駆動系よりも前記駆動輪側に設けられ前記駆動輪を制動する駆動輪制動部と、
前記駆動系よりも前記モータ側に設けられ前記モータを制動するモータ制動部と、
前記非駆動輪の回転数を取得する非駆動輪回転数取得部と、
前記駆動輪の回転数を取得する駆動輪回転数取得部と、
前記非駆動輪の回転数及び前記駆動輪の回転数に基づいて前記駆動輪制動部の制動による前記駆動輪のロックの発生を推定すると共に、前記駆動輪のロックが発生したと推定された場合に前記モータを制動するように前記モータ制動部を制御する制御部と、を備える、産業車両の制動制御装置。
<発明2>
前記制御部は、前記非駆動輪の回転数及び前記駆動輪の回転数に基づいて前記非駆動輪に対する前記駆動輪のスリップ率を算出し、前記スリップ率と所定のスリップ率閾値との比較結果に基づいて前記駆動輪のロックの発生を推定する、発明1に記載の産業車両の制動制御装置。
<発明3>
前記駆動輪制動部は、油圧式のサービスブレーキであり、
前記駆動輪制動部を動作させる作動油の圧力を取得する油圧取得部を備え、
前記制御部は、前記駆動輪のロックが発生したと推定され、前記駆動輪の回転数が所定の回転数閾値以上であり、且つ、前記作動油の圧力が所定の圧力閾値以上である場合に、前記モータを制動するように前記モータ制動部を制御する、発明1又は2に記載の産業車両の制動制御装置。
<発明4>
前記駆動輪回転数取得部は、前記モータに設けられ、前記モータの回転数を取得するモータ回転数センサである、発明1~3の何れか一項に記載の産業車両の制動制御装置。
<発明5>
前記制御部は、前記非駆動輪の回転数及び前記駆動輪の回転数に基づいて前記非駆動輪に対する前記駆動輪のスリップ率の変化率を算出し、前記スリップ率の変化率と所定の変化率閾値との比較結果に基づいて前記駆動輪のロックの発生を推定する、発明1~4の何れか一項に記載の産業車両の制動制御装置。
【符号の説明】
【0080】
1…産業車両、5…走行モータ(モータ)、9a…第1車速センサ(駆動輪回転数取得部)、9b…第2車速センサ(非駆動輪回転数取得部)、9c…ブレーキ油圧センサ(油圧取得部)、6…駆動系、7…電磁ブレーキ(モータ制動部)、8c…ブレーキ装置(駆動輪制動部)、10…コントローラ(制御部)、100…産業車両の制動制御装置。
図1
図2
図3
図4