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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024132157
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】溶融炉
(51)【国際特許分類】
   F23M 5/00 20060101AFI20240920BHJP
   F23G 5/00 20060101ALI20240920BHJP
   F23J 15/00 20060101ALI20240920BHJP
   F27D 1/04 20060101ALI20240920BHJP
   F27D 1/00 20060101ALI20240920BHJP
   B09B 3/40 20220101ALI20240920BHJP
【FI】
F23M5/00 J
F23G5/00 115B
F23J15/00 Z
F23G5/00 115A
F23M5/00 F
F23M5/00 G
F23M5/00 C
F27D1/04 A
F27D1/00 N
B09B3/40
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023042838
(22)【出願日】2023-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】000220767
【氏名又は名称】東京窯業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124419
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 敬也
(74)【代理人】
【識別番号】100162293
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷 久生
(72)【発明者】
【氏名】後藤 康夫
(72)【発明者】
【氏名】小原 学
【テーマコード(参考)】
3K070
3K161
4D004
4K051
【Fターム(参考)】
3K070DA06
3K161AA21
3K161AA24
3K161CA05
3K161EA06
3K161EA08
4D004AA36
4D004AB03
4D004CA29
4D004CB04
4D004CB34
4K051AA03
4K051AA05
4K051AB05
4K051BE00
4K051DA06
4K051DA11
(57)【要約】
【課題】溶融炉の処理物の中に銅やアルミニウム等の低融点の金属が含まれている場合でも、それらの低融点の金属やスラグが炉底部の耐火レンガの目地を通って側方や下方の表層際まで浸潤する事態を高い精度で防止することが可能な溶融炉を提供する。
【解決手段】溶融炉1は、所定の大きさの有底円筒状に形成された外殻鉄皮6の内部に、所定の厚みの側壁2および底壁3を形成したものであり、底壁3の一部が、上面に凹部4aを形成してなる同じ大きさの直方体状の凹部付き耐火レンガ4,4・・を組み付けることによって形成されている。そして、それらの凹部付き耐火レンガ4,4・・同士がモルタルMで接合されているとともに、凹部付き耐火レンガ4,4・・の凹部4aにモルタルMが充填された状態になっている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃棄物あるいは廃棄物の焼却灰を溶融させるための溶融炉であって、
炉底部に、耐火レンガを組み付けることによって底壁が設けられており、
その底壁の少なくとも一部が、
上面に凹部を形成してなる同じ大きさの直方体状の複数の凹部付き耐火レンガを組み付けることによって形成されたものであるとともに、
それらの凹部付き耐火レンガが、モルタルで接合されており、かつ、凹部にモルタルが充填された状態になっていることを特徴とする溶融炉。
【請求項2】
前記底壁を形成した凹部付き耐火レンガの少なくとも一部が、長手方向を同じ向きに揃え、前後および/または左右の端縁をずらせた状態で、高さを揃えて上下に積層されたものであることを特徴とする請求項1に記載の溶融炉。
【請求項3】
前記凹部付き耐火レンガの凹部が、上下方向に扁平な直方体状のものであることを特徴とする請求項1に記載の溶融炉。
【請求項4】
前記凹部付き耐火レンガが、アルミナ質の耐火材によって形成されたものであることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の溶融炉。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃棄物もしくは廃棄物の焼却灰を溶融させるために用いられる誘電加熱式あるいはガスバーナー式等の工業炉(すなわち、溶融炉)に関するものである。
【背景技術】
【0002】
廃棄物は焼却され、その焼却灰は、最終的に埋立地等に投棄されるが、埋立地等の投棄場所が限られているため、投棄する前の焼却灰を小容量化することが望まれている。そのため、廃棄物の焼却灰を溶融させるための溶融炉が広く用いられている。また、そのような溶融炉としては、有底円筒状の金属容器(外殻鉄皮)の周面の内部に、耐火レンガを組み付けることによって一定の厚みの円筒状の側壁を形成するとともに、金属容器の炉底部に、耐火レンガを“あじろ積み”等の施工方法により組み付けることにより底壁を形成してなる誘電加熱式やガスバーナー式のものが知られている。
【0003】
また、廃棄物もしくは廃棄物の焼却灰を溶融させるための溶融炉の中には、安価な構成により、焼却灰中に含まれる重金属、塩素等の有害物質による炉底部の損傷、短期間での消耗を防止すべく、底壁を、耐熱性、耐摩耗性等に優れた耐火材の耐火レンガからなる第一の層と、当該第一の層より低廉な耐火材の耐火レンガからなる第二の層との二層構造としたものも知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10-132262号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1の如き従来の溶融炉においては、有害物質による耐火レンガの損傷や短期間での消耗を抑制できるものの、溶融炉の処理物の中に銅、アルミ等の低融点の金属が含まれていると、それらの低融点金属の溶融物やスラグが底壁の耐火レンガ同士の間の目地(通常、モルタルやキャスタブルによって形成されている)を通って奥まで侵入して、金属容器を損傷させてしまう事態が生じ得る。
【0006】
また、そのような事態を防止するために、底壁中に、大型のプレキャストブロックを配置して一定の領域の目地をなくす方法も採り得るが、かかる方法では、大型プレキャストブロック上に堆積した低融点金属の溶融物やスラグが水平に移動して(横に流れて)大型プレキャストブロックの側面の目地から奥まで侵入する事態を防ぐことができない。
【0007】
本発明の目的は、上記従来の溶融炉が有する問題点を解消し、溶融炉の処理物の中に銅やアルミニウム等の低融点金属が含まれている場合でも、それらの低融点金属の溶融物やスラグが炉底部の耐火レンガの目地を通って奥まで侵入する事態を高い精度で防止することが可能で実用的な溶融炉を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の内、請求項1に記載された発明は、廃棄物あるいは廃棄物の焼却灰を溶融させるための溶融炉であって、炉底部に、耐火レンガを組み付けることによって底壁が設けられており、その底壁の少なくとも一部が、上面に凹部を形成してなる同じ大きさの直方体状の複数の凹部付き耐火レンガを組み付けることによって形成されたものであるとともに、それらの凹部付き耐火レンガが、モルタルで接合されており、かつ、凹部にモルタルが充填された状態になっていることを特徴とするものである。
【0009】
請求項2に記載された発明は、請求項1に記載された発明において、前記底壁を形成した凹部付き耐火レンガの少なくとも一部が、長手方向を同じ向きに揃え、前後および/または左右の端縁をずらせた状態で、高さを揃えて上下に積層されたものであることを特徴とするものである。
【0010】
請求項3に記載された発明は、請求項1に記載された発明において、前記凹部付き耐火レンガの凹部が、上下方向に扁平な直方体状のものであることを特徴とするものである。なお、凹部の深さを、凹部付き耐火レンガの高さの30%以下に調整し、凹部の総体積を、凹部付き耐火レンガの体積の15%以下に調整すると、耐火レンガの本来の耐久強度が大きく損なわれないため、溶融炉の底壁部分が堅牢なものとなるので好ましい。
【0011】
請求項4に記載された発明は、請求項1~3のいずれかに記載された発明において、前記凹部付き耐火レンガが、アルミナ質の耐火材(たとえば、55~95質量%のアルミナと5~45質量%のシリカとからなるもの)によって形成されたものであることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に記載の溶融炉は、炉底部の底壁の少なくとも一部が凹部付き耐火レンガによって形成されており、それらの凹部付き耐火レンガの凹部にモルタルが充填された状態になっているため、処理物の溶融時に発生した低融点金属の溶融物やスラグを、凹部付き耐火レンガの凹部内のモルタルに吸収させることができる。したがって、請求項1に記載の溶融炉によれば、低融点金属の溶融物やスラグが炉底部の耐火レンガ同士の隙間(目地)を通って側方や下方の表層際まで浸潤する事態を効果的に防止することができ、外殻鉄皮の損傷等の事態を防止することができる。さらに、請求項1に記載の溶融炉は、大型プレキャストブロック等が不要であるので、クレーン等の重機を用いることなく、モルタルを用いた通常の築炉時と同様な工程数で、容易に築炉することができる。
【0013】
請求項2に記載の溶融炉は、底壁を形成した凹部付き耐火レンガの少なくとも一部が、長手方向を同じ向きに揃え、前後および/または左右の端縁をずらせた状態で、上下に積層されたものであるため、組み付けられた凹部付き耐火レンガ同士の目地を通った低融点金属の溶融物やスラグを、次層(真下の層)を構成した凹部付き耐火レンガの凹部内のモルタルに効率的に吸収させることができる。したがって、請求項2に記載の溶融炉によれば、低融点金属の溶融物やスラグが側方および下方の表層際まで浸潤する事態を非常に効果的に防止することが可能となる。
【0014】
請求項3に記載の溶融炉は、凹部付き耐火レンガの凹部が上下方向に扁平な直方体状のものであるため、凹部内のモルタルによって低融点金属の溶融物やスラグを吸収した後でも、各凹部付き耐火レンガが高い強度を保持することができるので、長期間使用時の耐久強度に優れている。また、底壁の表面際に位置した各凹部付き耐火レンガが、低融点金属の溶融物やスラグを効率的に吸収して下側の層への浸潤を抑制するため、メンテナンス(摩耗した凹部付き耐火レンガの除去および再築炉)を容易なものとすることができる。
【0015】
請求項4に記載の溶融炉は、凹部付き耐火レンガが、アルミナ質の耐火材によって形成されたものであり、低融点金属の溶融物やスラグに対して高い熱耐久性を発現するため、メンテナンスの頻度を低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】溶融炉を示す説明図(中心を通る鉛直面で切断した鉛直断面図)である。
図2】凹部付き耐火レンガを示す説明図である(aは平面図であり、bはaにおけるA-A線断面図である)。
図3】底壁の構造を示す説明図(図1のα部分の拡大図)である。
図4】底壁の構造を示す説明図である(aは図3におけるB-B線断面を拡大して示したものであり、bはaにおけるβ部分の拡大図である)。
図5】溶融炉の作用を示す説明図(組み付けられた凹部付き耐火レンガを正面側から見た説明図)である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る溶融炉の一実施形態について、図面に基づいて詳細に説明する。
【0018】
<溶融炉の構造>
図1は、溶融炉を示したものであり、溶融炉1は、所定の大きさ(たとえば、内径=約2,000mmφ×高さ=約2,000mm)の有底円筒状に形成された外殻鉄皮6の内部に、所定の厚みの側壁2および底壁3を形成したものである。
【0019】
側壁2は、外殻鉄皮6の周面の上部の内側において、アルミナ-クロム質系の耐火材によって所定の形状(扁平な円筒体を中心軸に対する放射方向に分割した形状等)に形成された複数の耐火レンガを組み付けることによって所定の厚みの中空円筒状に形成されている。そして、組み付けられた側壁2と外殻鉄皮6との間には不定形耐火物(キャスタブル材)が充填されている。また、側壁2には、内部に溜まったスラグ等を外部へ排出するための出滓口(図示せず)、廃棄物や焼却灰を投入するための投入口(図示せず)等が設けられている。
【0020】
一方、底壁3は、上層3aと下層3bとの上下二層構造になっている。底壁3の上層3aは、耐熱性、耐摩耗性、耐侵食性に優れた耐火材(たとえば、アルミナ-クロム質、アルミナカーボン、炭化珪素、クロムマグネシア)によって所定の形状(扁平な円筒体を中心軸に対する放射方向に分割した形状等)に形成された複数の耐火レンガ(プレキャストブロック)5,5・・を、モルタル(アルミナ系耐火材粉末と、粘土と、珪酸ナトリウムとを混合したもの)を接着剤として、“あじろ積み”や“リング積み”等の施工方法により中心から外殻鉄皮6の方向へ多層に組み付けることによって、所定の厚みの円板状に形成されている。
【0021】
また、底壁3の下層3bは、凹部付き耐火レンガ(プレキャストブロック)4,4・・を、モルタル(セメントと砂とを・・:・・の重量比で混合したもの)を接着剤として、多層状に組み付けることによって、所定の厚みの円板状(中心部を下向きに膨出させた半球状)に形成されている。
【0022】
<凹部付き耐火レンガの構造>
図2は、凹部付き耐火レンガ4を示したものであり、凹部付き耐火レンガ4は、アルミナ質の耐火材(たとえば、55~95質量%のアルミナと5~45質量%のシリカとからなるもの)によって、所定の大きさ(縦×横×高さ=114mm×230mm×65mm)の直方体状に一体的に形成されたものである。また、凹部付き耐火レンガの表面には、所定の大きさ(縦×横×高さ=35mm×65mm×15mm)を有する4つの扁平な直方体状の凹部4a,4a・・が、長手方向を凹部付き耐火レンガの長手方向と同じくした状態で、等間隔で規則正しく配置されている。そして、各凹部4a,4a・・の深さは、凹部付き耐火レンガ4の高さの約20%になっており、各凹部4a,4a・・の総体積は、凹部付き耐火レンガ4の体積の約10%になっている)。そして、前後の端縁際においては、凹部4の前後の端縁との間に約15mmの隙間が形成されており、左右の端縁際においては、凹部の左右の端縁との間に約30mmの隙間が形成されている。なお、下層3bを構成する凹部付き耐火レンガ4,4・・mp熱膨張率は、底壁3の上層3aを構成する耐火レンガ5,5・・の熱膨張率と略同一になっている。
【0023】
底壁3の下層3bにおいては、それらの凹部付き耐火レンガ4,4・・が、図3図4(a),(b)の如く、モルタル(アルミナ系耐火材粉末と、粘土と、珪酸ナトリウムとを混合したもの)を接着剤として、“長手積み”の施工方法により、長手方向を同じ向きに揃え、所謂、半枚継ぎ方式によって、前後および左右の端縁を半個分だけずらせた状態で、高さを揃えて上下に積層されている。そして、組み付けられた凹部付き耐火レンガ4,4・・同士の隙間(すなわち、目地)G、および、積層された各凹部付き耐火レンガ4,4・・の凹部4aの内部に、モルタルMが充填された状態になっている。なお、外殻鉄皮6の内面際の部分においては、積層された凹部付き耐火レンガ4,4・・と外殻鉄皮6の内面との隙間に不定形耐火物(キャスタブル材)が充填された状態になっている。
【0024】
<溶融炉の作用>
上記の如く構成された溶融炉1は、図示しない加熱装置(バーナーあるいは誘電加熱装置等)を利用して内部の温度を上昇させることによって、廃棄物や廃棄物を焼却した後の焼却灰(図1におけるC)を溶融させることができる。また、そのように廃棄物等を溶融させる際に、銅やアルミニウム等の低融点金属が含まれている場合や溶融後にスラグが発生した場合には、それらの低融点金属の溶融物やスラグが、底壁3の上層3aの耐火レンガ5,5・・同士の隙間(目地)から下方へ侵入する事態が起こり得る。
【0025】
そのような場合には、低融点金属の溶融物やスラグが、下層3bの最上層を構成した凹部付き耐火レンガ4,4・・の凹部4aの内部のモルタルMに吸収される。さらに、最上層を構成した凹部付き耐火レンガ4の凹部4aの内部に堆積し切れなかった低融点金属の溶融物やスラグは、図5の如く、凹部付き耐火レンガ4,4・・同士の隙間(目地)を介して下方へと流れ、次層(真下の層)を構成した凹部付き耐火レンガ4,4・・の凹部4aの内部のモルタルMに吸収される。
【0026】
そして、上側の凹部付き耐火レンガ4,4・・の凹部4aの内部のモルタルMでは、すべの低融点金属の溶融物やスラグを吸収し切れなかった場合(飽和量を上回った場合)でも、その下側に位置した(下側の層を構成した)凹部付き耐火レンガ4,4・・が、溢れた低融点金属の溶融物やスラグを、順次、凹部4aの内部のモルタルMに吸収させていくため、低融点金属の溶融物やスラグが下層3bの内部の深くまで(外殻鉄皮6に近い部分まで)至る事態を高い精度で防止することができる。
【0027】
<溶融炉による効果>
溶融炉1は、上記の如く、炉底部に、耐火レンガを組み付けることによって底壁3が設けられているとともに、その底壁3の一部が、上面に凹部4aを形成してなる同じ大きさの直方体状の凹部付き耐火レンガ4,4・・を組み付けることによって形成されたものであり、それらの凹部付き耐火レンガ4,4・・同士がモルタルMで接合されているとともに、凹部付き耐火レンガ4,4・・の凹部4aにモルタルMが充填された状態になっている。それゆえ、溶融炉1によれば、処理物の中に銅やアルミニウム等の低融点金属が含まれている場合でも、それらの低融点金属の溶融物やスラグを、凹部付き耐火レンガ4,4・・の凹部4a内のモルタルMに吸収させて外部に漏洩させないので、低融点金属の溶融物やスラグが炉底部の耐火レンガ同士の隙間(目地)を通って側方や下方の表層際まで浸潤する事態を効果的に防止することができ、外殻鉄皮6の損傷等の事態を防止することができる。
【0028】
また、溶融炉1は、底壁3を形成した凹部付き耐火レンガ4,4・・が、長手方向を同じ向きに揃え、前後および/または左右の端縁をずらせた状態で、上下に積層されたものであるため、組み付けられた凹部付き耐火レンガ4,4・・同士の目地を通った低融点金属の溶融物やスラグを次層(真下の層)が効果的に吸収するため、低融点金属の溶融物やスラグが側方や下方の表層際まで浸潤する事態を非常に効果的に防止することができる。
【0029】
さらに、溶融炉1は、凹部付き耐火レンガ4,4・・の凹部4aが上下方向に扁平な直方体状のものであるため、凹部4a内のモルタルMによって低融点金属の溶融物やスラグを吸収した後でも、各凹部付き耐火レンガ4,4・・が高い強度を保持することができるので、長期間使用時の耐久強度に優れている。また、底壁3の下層3bの表面際に位置した各凹部付き耐火レンガ4,4・・が、低融点金属の溶融物やスラグを効率的に吸収して下側の層への浸潤を抑制するため、メンテナンス(摩耗した凹部付き耐火レンガ4,4・・の除去および再築炉)を容易なものとすることができる。
【0030】
また、溶融炉1は、凹部付き耐火レンガ4,4・・がアルミナ質の耐火材によって形成されたものであり、低融点金属の溶融物やスラグに対して高い熱耐久性を発現するため、メンテナンスの頻度を低減させることができる。
【0031】
<溶融炉の変更例>
本発明に係る溶融炉は、上記した実施形態の態様に何ら限定されるものではなく、外殻鉄皮、側壁、底壁、凹部付き耐火レンガ等の材質、形状、大きさ等の構成を、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、必要に応じて適宜変更することができる。
【0032】
たとえば、本発明に係る溶融炉は、上記実施形態の如く、炉底部の底壁の下層として凹部付き耐火レンガを“長手積み”したものに限定されず、凹部付き耐火レンガの積み方を、“あじろ積み”や“リング積み”等に変更することも可能である。なお、上記実施形態の如く、凹部付き耐火レンガを“長手積み”の施工方法により、長手方向を同じ向きに揃えて、半枚継ぎ方式によって、前後および左右の端縁を半個分だけずらせた状態で、高さを揃えて上下に積層した場合には、より多くの低融点金属の溶融物やスラグを底壁の下層の上側の部分で、より効果的に吸収することが可能となるため、低融点金属の溶融物やスラグが炉底部の耐火レンガ同士の目地を通って側方や下方の表層際まで浸潤する事態をきわめて効果的に防止することができる上、メンテナンスの頻度を大幅に低減させることが可能となる。
【0033】
また、本発明に係る溶融炉は、上記実施形態の如く、凹部付き耐火レンガに形成された凹部が上下方向に扁平な直方体状であるものに限定されず、凹部付き耐火レンガに形成された凹部が半球状、半楕球状、半円柱状、半角柱状等であるものに変更することが可能である。さらに、凹部付き耐火レンガに形成される凹部の個数は、上記実施形態の如く、4個に限定されず、3個以下あるいは5個以上に変更することも可能である。なお、上記実施形態の如く、凹部付き耐火レンガの表面に4個の凹部を形成した場合には、凹部付き耐火レンガの表面に、ロ字状の外周枠と前後・左右を縦断・横断する十字状の枠とが形成されたものとなり、耐火レンガの本来の耐久強度が大きく損なわれないため、溶融炉の底壁の凹部付き耐火レンガの組み付け部分が非常に堅牢なものとなるので好ましい。
【0034】
さらに、本発明に係る溶融炉は、上記実施形態の如く、凹部付き耐火レンガに形成された凹部にモルタルが充填されているものに限定されず、凹部付き耐火レンガに形成された凹部にポーラス状(ポーラスライクな)耐火物が充填されているもの等に変更することも可能である。また、本発明に係る溶融炉は、上記実施形態の如く、築炉作業中に、凹部付き耐火レンガに形成された凹部内にモルタル等が充填されるものに限定されず、(築炉作業の前に予め)工場等において凹部内にモルタルやポーラス状耐火物等を充填した凹部付き耐火レンガを用いて築炉したものでも良い。
【0035】
また、本発明に係る溶融炉は、上記実施形態の如く、凹部付き耐火レンガがアルミナ質の耐火材によって形成されているものに限定されず、凹部付き耐火レンガの材質がアルミナ-クロム質、アルミナカーボン、炭化珪素、クロムマグネシア等のアルミナ質の耐火材以外の耐火物であるものに変更することも可能である。加えて、本発明に係る溶融炉は、上記実施形態の如く、底壁の上層の耐火レンガがアルミナ-クロム質、アルミナカーボン、炭化珪素、クロムマグネシア等の耐侵食性に優れた耐火材によって形成されているものに限定されず、底壁の上層の耐火レンガの材質を、アルミナ系の耐火材等に変更することも可能である。
【0036】
また、本発明に係る溶融炉は、上記実施形態の如く、炉底部の底壁を二層構造にしたものに限定されず、凹部付き耐火レンガを組み付けた層のみの単層構造にしたものや、耐火レンガ層、凹部付き耐火レンガ層以外の層を積層した三層以上の多層構造にしたものでも良い。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明に係る溶融炉は、上記の如く優れた効果を奏するものであるので、廃棄物や廃棄物の焼却灰を溶融させるための工業炉として好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0038】
1・・溶融炉
2・・側壁
3・・底壁
3a・・上層
3b・・下層
4・・凹部付き耐火レンガ
4a・・凹部
5・・耐火レンガ
6・・外殻鉄皮
図1
図2
図3
図4
図5