(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024132160
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】発振器
(51)【国際特許分類】
H03B 5/32 20060101AFI20240920BHJP
【FI】
H03B5/32 A
H03B5/32 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023042841
(22)【出願日】2023-03-17
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)2020年度国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「ポスト5G情報通信システム基盤強化研究開発事業/先導研究(委託)/極限時刻同期に基づく革新的通信デバイスと応用開拓」委託研究、産業技術強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000232483
【氏名又は名称】日本電波工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100093104
【弁理士】
【氏名又は名称】船津 暢宏
(72)【発明者】
【氏名】林 甲太郎
【テーマコード(参考)】
5J079
【Fターム(参考)】
5J079AA04
5J079BA02
5J079BA43
5J079CB02
5J079FB24
5J079HA06
5J079HA30
(57)【要約】
【課題】 水晶振動板の温度が変化するより先に周囲温度を検出して周波数温度特性の補正の遅れを防止し、周波数温度特性のヒステリシスを軽減できる発振器を提供する。
【解決手段】 面実装型であって、複数の回路を搭載する基板1上に、周波数温度特性の補正を行うために温度を検出する周囲温度検出用センサ15を設け、当該周囲温度検出用センサ15が、水晶振動板を備える基準水晶発振器11やその他の回路より金属カバー2の近くに配置され、金属カバー2と半田付け部17で半田付けされた熱伝導用銅箔16を介して温度を検出し、当該検出温度が周波数温度特性の補正に用いられる発振器である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属カバーを有する面実装型の発振器であって、
複数の回路を搭載する基板上に、水晶振動板における周波数温度特性の補正を行うために温度を検出する温度センサを設け、
当該温度センサが、前記複数の回路との距離より前記金属カバーとの距離の方が短くなる位置に配置され、前記金属カバーと半田付けされた熱伝導用銅箔を介して温度を検出することを特徴とする発振器。
【請求項2】
熱伝導用銅箔は、基板の四隅の角部で金属カバーに半田付けされ、温度センサが当該角部寄りに設けられていることを特徴とする請求項1記載の発振器。
【請求項3】
温度センサで検出した温度から構造上の過渡熱応答を踏まえた水晶振動板における温度変動量を算出する過渡熱応答算出部と、
前記算出された温度変動に基づいて周波数温度特性の補正値を演算する周波数補正値算出部と、を有することを特徴とする請求項1又は2記載の発振器。
【請求項4】
過渡熱応答算出部は、シミュレーションによって過渡熱応答の熱抵抗値及び熱容量値のパラメータを備えたCRフィルタ形式の過渡熱モデルを備え、当該過渡熱モデルを用いて水晶振動板における温度変動量を算出することを特徴とする請求項3記載の発振器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発振器に係り、特に、水晶振動板の温度が変化するより先に周囲温度を検出して周波数温度特性の補正の遅れを防止することができる発振器に関する。
【背景技術】
【0002】
[従来の技術]
従来の発振器には、水晶振動板を備える基準水晶発振器の温度検出用としてサーミスタをその基準水晶発振器の付近に配置し、演算回路(CPU:Central Processing Unit)を用いて検出温度に応じた周波数補正量の算出を行い、その周波数補正量により周波数温度特性を補正するものがあった。
【0003】
[従来の発振器:
図5]
次に、従来の発振器の構成について
図5を参照しながら説明する。
図5は、従来の発振器の側面と平面の説明図である。尚、(a)が側面説明図であり、(b)が平面説明図である。
従来の発振器は、
図5に示すように、面実装タイプで、基板1に金属カバー2が半田付け部17で固定されている。
【0004】
従来の発振器の基板1の平面には、サーミスタ10と、基準水晶発振器11と、周波数-電圧制御発振器12と、CPU(Central Processing Unit)13と、FPGA(Field Programmable Gate Array)14と、基板1の平面の四隅に形成された半田付け部17と、を備えている。
サーミスタ10は、基準水晶発振器11の温度を検知するため、基準水晶発振器11の近くに配置されている。
【0005】
[従来の発振器の回路構成:
図6]
次に、従来の発振器の回路構成について
図6を参照しながら説明する。
図6は、従来の発振器の回路構成の概略図である。
従来の発振器の回路構成は、
図6に示すように、基準水晶発振器11で発振された発振周波数信号をFPGA14に入力し、FPGA14が周波数-電圧制御発振器12に制御電圧を出力して、周波数-電圧制御発振器12が特定周波数を出力する。
【0006】
また、サーミスタ10が、基準水晶発振器11の周囲の温度を検出し、CPU13が検出した温度値に基づく周波数補正値を算出してFPGA14に出力する。
FPGA14では、CPU13から入力される周波数補正値で基準水晶発振器11からの発振周波数を補正する。
【0007】
尚、サーミスタ10から出力されるのは、検出温度に対応した電圧であり、CPU13に入力されるとアナログからデジタルに変換(A/D変換)され、周波数補正値算出部13aに入力され、周波数補正値算出部13aで周波数補正値を算出する。
また、FPGA14は、DDS(Digital Direct Synthesizer:デジタル直接合成発振器)14aとPLL(Phase Locked Loop:位相同期回路)14bとを備えている。
【0008】
[従来の発振器の熱回路モデル:
図7]
次に、従来の発振器の熱回路モデルについて
図7を参照しながら説明する。
図7は、従来の発振器の熱回路モデルの模式図である。尚、
図7は、従来の発振器における温度変化を熱抵抗や熱容量で模式的に表現したものである。
従来の発振器の熱回路モデルは、
図7に示すように、電源電圧V2の+側に基準水晶発振器11とサーミスタ10とが並列的に接続される構成となっている。ここで、電源電圧は、周囲温度を電圧で置き換えたものとなる。
各部は、熱抵抗(R)と熱容量(C)で表されるものである。
【0009】
図7に記載した「Ta」は周囲温度を示し、「T_Xtal」は水晶振動板(基準水晶発振器11)の温度を示し、「T_Thermistor」はサーミスタ10の検出温度を示している。
【0010】
[従来の発振器の温度追従特性:
図8]
次に、従来の発振器の温度追従特性について
図8を参照しながら説明する。
図8は、従来の発振器の温度追従特性のグラフ図である。
図8は、360分過ぎまで周囲温度を上昇させて一定とし、400分から周囲温度を低下させたグラフとなっている。
従来の発振器の温度追従特性は、
図8に示すように、周囲温度(Ta)の上昇及び下降に対して水晶振動板(基準水晶発振器11)の温度(T_Xtal)が遅れて上昇及び下降するが、サーミスタ10の温度(T_Thermistor)の上昇及び下降は、水晶振動板温度(T_Xtal)より更に遅れて追従している。
【0011】
そして、サーミスタ10の温度(T_Thermistor)を用いて周波数補正値算出部13aが周波数補正値を算出し、それをFPGA14内のDDS14aに提供することで、DDS14aで基準水晶発振器11の周波数温度特性が補正されるようになっている。
【0012】
[関連技術]
尚、関連する先行技術として、特開平01-208904号公報「温度補償水晶発振器」(特許文献1)がある。
特許文献1には、温度補償水晶発振器において、周囲温度を検出する温度検出器の対温度変化応答時間を水晶発振素子の対温度変化応答時間に等しくなるようにする構成が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、従来の発振器では、容器内部の水晶振動板の温度変化に迅速に追随できず、遅れて温度を検出して周波数温度特性の補正を行うものであるため、周波数温度特性の補正の遅れが発生し、周波数温度特性のヒステリシスの原因になっていたという問題点があった。
【0015】
尚、特許文献1は、温度変化への温度検出器の応答特性が改善されるものの、検出温度に追従する構成であるため、周波数補正の遅れが発生するものとなっていた。
従って、特許文献1には、周波数温度特性の補正の遅れを防止し、周波数温度特性のヒステリシスを軽減できる構成は示されていない。
【0016】
本発明は上記実状に鑑みて為されたもので、水晶振動板の温度が変化するより先に周囲温度を検出して周波数温度特性の補正の遅れを防止し、周波数温度特性のヒステリシスを軽減できる発振器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記従来例の問題点を解決するための本発明は、金属カバーを有する面実装型の発振器であって、複数の回路を搭載する基板上に、水晶振動板における周波数温度特性の補正を行うために温度を検出する温度センサを設け、当該温度センサが、複数の回路との距離より金属カバーとの距離の方が短くなる位置に配置され、金属カバーと半田付けされた熱伝導用銅箔を介して温度を検出することを特徴とする。
【0018】
本発明は、上記発振器において、熱伝導用銅箔が、基板の四隅の角部で金属カバーに半田付けされ、温度センサが当該角部寄りに設けられていることを特徴とする。
【0019】
本発明は、上記発振器において、温度センサで検出した温度から構造上の過渡熱応答を踏まえた水晶振動板における温度変動量を算出又は概算する過渡熱応答算出部と、算出された温度変動に基づいて周波数温度特性の補正値を演算する周波数補正値算出部と、を有することを特徴とする。
【0020】
本発明は、上記発振器において、過渡熱応答算出部が、シミュレーションによって過渡熱応答の熱抵抗値及び熱容量値のパラメータを備えたCRフィルタ形式の過渡熱モデルを備え、当該過渡熱モデルを用いて水晶振動板における温度変動量を算出することを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、金属カバーを有する面実装型の発振器であって、複数の回路を搭載する基板上に、水晶振動板における周波数温度特性の補正を行うために温度を検出する温度センサを設け、当該温度センサが、複数の回路部品との距離より金属カバーとの距離の方が短くなる位置に配置され、金属カバーと半田付けされた熱伝導用銅箔を介して温度を検出する発振器としているので、水晶振動板より先に周囲温度を検出して周波数温度特性の補正の遅れを防止し、周波数温度特性のヒステリシスを軽減できる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図7】従来の発振器の熱回路モデルの模式図である。
【
図8】従来の発振器の温度追従特性のグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
[実施の形態の概要]
本発明の実施の形態に係る発振器(本発振器)は、金属カバーを有する面実装型の水晶発振器であって、複数の回路を搭載する基板上に、周波数温度特性の補正を行うために温度を検出する温度センサを設け、当該温度センサが、水晶振動板を備える基準水晶発振器やその他の回路との距離より金属カバーとの距離の方が短くなる位置に配置され、金属カバーと半田付けされた熱伝導用銅箔を介して温度を検出し、当該検出温度が周波数温度特性の補正に用いられるものであり、水晶振動板の温度が変化するより先に周囲温度を検出して周波数温度特性の補正の遅れを防止し、周波数温度特性のヒステリシスを軽減できるものである。
【0024】
[本発振器:
図1]
本発振器の構成について
図1を参照しながら説明する。
図1は、本発振器の側面と平面の説明図である。尚、(a)が側面説明図であり、(b)が平面説明図である。
本発振器は、
図1に示すように、面実装タイプで、基板1に金属カバー2が半田付け部17で固定されている。
【0025】
本発振器の基板1の平面には、基準水晶発振器11と、周波数-電圧制御発振器12と、CPU(Central Processing Unit)13と、FPGA(Field Programmable Gate Array)14と、周囲温度検出用センサ15と、基板1の平面の四隅に形成された半田付け部17と、周囲温度検出用センサ15と半田付け部17とを接続する熱伝導用銅箔16と、を備えている。
尚、本発振器の各部については後述する。
【0026】
また、
図1(2)に示すように、周囲温度検出用センサ15は、金属カバー2の温度を検出するため、他の回路より金属カバー2の近くで基板1の四隅の一つである角部分の半田付け部17の近くに設けられ、熱伝導用銅箔16を介して半田付け部17に接続している。
つまり、周囲温度検出用センサ15は、他の回路との距離より金属カバー2との距離の方が短くなる位置に配置され、熱伝導用銅箔16、半田付け部17を経由して金属カバー2の温度を検出している。
【0027】
[本発振器の回路構成:
図2]
次に、本発振器の回路構成について
図2を参照しながら説明する。
図2は、本発振器の回路構成の概略図である。
本発振器の回路構成は、
図2に示すように、基準水晶発振器11で発振された発振周波数信号をFPGA14に入力し、FPGA14が周波数-電圧制御発振器12に制御電圧を出力して、周波数-電圧制御発振器12から特定周波数を出力させる。
【0028】
また、周囲温度検出用センサ15が、金属カバー2の温度を検出し、CPU13が過渡熱応答による熱伝導遅れの温度値を算出し、当該温度値に基づく周波数補正値を算出してFPGA14に出力する。
ここで、「熱伝導遅れの温度値」とは、周囲温度検出センサ15で検出された温度の値に対して基準水晶発振器11が周囲からの熱の伝導を受けて得られる温度値のことである。
FPGA14では、CPU13から入力される周波数補正値で基準水晶発振器11からの発振周波数を補正する。
【0029】
[本発振器の各部]
次に、本発振器の各部について具体的に説明する。
基準水晶発振器11は、水晶振動子を備え、基準周波数を発振するものである。
この基準水晶発振器11は、周囲の温度によって周波数特性が変化する周波数温度特性を有している。
周波数-電圧制御発振器12は、FPGA14からの制御電圧によって発振周波数を変化させて周波数を出力するVCO(Voltage Controlled Oscillator)である。
【0030】
CPU13は、周囲温度検出用センサ15で検出された温度に基づいて過渡熱応答による熱伝導遅れの温度値を算出し、それに対応した周波数補正値を算出するものであり、周波数補正値算出部13aと、過渡熱応答算出部13bとを備えている。
【0031】
周波数補正値算出部13aは、過渡熱応答算出部13bから入力される温度値に基づいて周波数補正値を算出し、FPGA14のDDS14aに出力する。
過渡熱応答算出部13bは、過渡熱応答に対する熱伝導遅れの温度値を算出する過渡熱演算モデルを備えている。過渡熱演算モデルは、後述する模式図の回路に示すようなフィルタ形式で、パラメータを備えている。過渡熱演算モデルは、実測又は熱シミュレーションで求めておく。
【0032】
FPGA14は、製造後に購入者や設計者が構成を設定できる集積回路である。
FPGA14内のDDS(Digital Direct Synthesizer:デジタル直接合成発振器)14aは、周波数や波形を自由に変調して出力する装置であり、基準水晶発振器11からの基準周波数をCPU13の周波数補正値算出部13aからの周波数補正値で補正する。
【0033】
また、FPGA14内のPLL(Phase Locked Loop:同期位相回路)14bは、基準周波数の入力信号と、電圧に応じて周波数が変化する周波数-電圧制御発振器12の出力のフィードバック信号との位相差を周波数-電圧制御発振器12に入力することにより、入力信号と出力信号の位相を同期させる。
【0034】
周囲温度検出用センサ15は、16bitの高精度な温度センサICであり、金属カバー2に接続する熱伝導用銅箔16の温度を検出し、周辺デバイスとのシリアル通信方式で高速通信を実現するI2C(Inter-Integrated Circuit)通信で検出温度の情報をCPU13に出力する。
熱伝導用銅箔16は、熱伝導率が高い銅箔が基板1上に印刷されており、金属カバー2に伝わる周囲温度をほぼ同時に、少ない誤差で周囲温度検出用センサ15に出力する。
【0035】
[本発振器の熱回路モデル:
図3]
次に、本発振器の熱回路モデルについて
図3を参照しながら説明する。
図3は、本発振器の熱回路モデルの模式図である。尚、
図3は、本発振器における温度変化を熱抵抗や熱容量で模式的に表現したものである。
本発振器の熱回路モデルは、
図3に示すように、電源電圧V2の+側に基準水晶発振器11と周囲温度検出用センサ15とが並列的に接続され、周囲温度検出用センサ15には過渡熱応答算出部13bが接続される構成となっている。
各部は、熱抵抗(R)と熱容量(C)で表されるものである。
【0036】
図3に記載した「Ta」は周囲温度を示し、「T_Xtal」は水晶振動板(基準水晶発振器11)の温度を示し、「T_TaSensor」は周囲温度検出用センサ15の温度を示し、「T_Xtal_est」は水晶振動板推定温度を示している。
【0037】
この水晶振動板推定温度は、過渡熱応答による熱伝導遅れの温度のことであり、過渡熱応答算出部13bで算出される温度値が相当する。従って、過渡熱応答算出部13bでは、
図3の模式回路に示す抵抗(R3)と容量(C3)のパラメータをシミュレーションで保有し、演算により水晶振動板推定温度(過渡熱応答に対する熱伝導遅れの温度)の値を算出している。
【0038】
[本発振器の温度追従特性:
図4]
次に、本発振器の温度追従特性について
図4を参照しながら説明する。
図4は、本発振器の温度追従特性のグラフ図である。
図4は、360分過ぎまで周囲温度を上昇させて一定とし、400分から周囲温度を低下させたグラフとなっている。
本発振器の温度追従特性は、
図4に示すように、周囲温度(Ta)の上昇及び下降に対して水晶振動板(基準水晶発振器11)の温度(T_Xtal)が遅れて上昇及び下降するが、周囲温度検出用センサ15の温度(T_TaSensor)の上昇及び下降は、水晶振動板温度(T_Xtal)より周囲温度(Ta)に近い位置で追従している。
【0039】
そして、過渡熱応答算出部13bでは、水晶振動板推定温度(T_Xtal_est)を水晶振動板温度(T_Xtal)と同じになるよう制御値を算出し、それをFPGA14内のDDS14aに提供することで、水晶振動板推定温度(T_Xtal_est)を用いて周波数補正値算出部13aが周波数補正値を算出でき、DDS14aで基準水晶発振器11の周波数温度特性が補正されるものである。
【0040】
[実施の形態の効果]
本発振器によれば、金属カバー2を有する面実装型であって、複数の回路を搭載する基板1上に、周波数温度特性の補正を行うために温度を検出する周囲温度検出用センサ15を設け、当該周囲温度検出用センサ15が、水晶振動板を備える基準水晶発振器11やその他の回路より金属カバー2の近くに配置され、金属カバー2と半田付け部17で半田付けされた熱伝導用銅箔16を介して温度を検出し、当該検出温度が周波数温度特性の補正に用いられるようにしているので、水晶振動板の温度が変化する前に周囲温度を検出して周波数温度特性の補正の遅れを防止し、周波数温度特性のヒステリシスを軽減できる効果がある。
【0041】
また、本発振器によれば、基準水晶発振器11における温度変化に対応した過渡熱応答の温度値を過渡熱応答算出部13bで算出し、その温度値に基づいて周波数補正値算出部13aが周波数補正値を算出し、FPGA14内のDDS14aに出力して、DDS14aが基準水晶発振器11からの基準周波数について周波数温度特性を補正するようにしているので、基準水晶発振器11の水晶振動板の温度変化に近い推定温度を過渡熱応答算出部13bが算出でき、その推定温度で周波数補正値算出部13aが周波数補正値を算出しているため、周波数温度特性の補正の遅れを防止し、周波数温度特性のヒステリシスを軽減できる効果がある。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明は、水晶振動板の温度が変化するより先に周囲温度を検出して周波数温度特性の補正の遅れを防止し、周波数温度特性のヒステリシスを軽減できる発振器に好適である。
【符号の説明】
【0043】
1…基板、 2…金属カバー、 10…サーミスタ、 11…基準水晶発振器、 12…周波数-電圧制御発振器、 13…CPU(Central Processing Unit)、 14…FPGA(Field Programmable Gate Array)、 15…周囲温度検出用センサ、 16…熱伝導用銅箔、 17…半田付け部