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特開2024-132172エレベーター装置の制御方法及びエレベーター装置
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  • 特開-エレベーター装置の制御方法及びエレベーター装置 図1
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  • 特開-エレベーター装置の制御方法及びエレベーター装置 図6
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024132172
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】エレベーター装置の制御方法及びエレベーター装置
(51)【国際特許分類】
   B66B 5/02 20060101AFI20240920BHJP
【FI】
B66B5/02 F
B66B5/02 C
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023042857
(22)【出願日】2023-03-17
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-01-09
(71)【出願人】
【識別番号】000112705
【氏名又は名称】フジテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001438
【氏名又は名称】弁理士法人 丸山国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐原 慎介
【テーマコード(参考)】
3F304
【Fターム(参考)】
3F304CA04
3F304EB00
3F304EB05
3F304EB22
(57)【要約】
【課題】本発明は、建物の揺れからロープなどの長尺物の振れを判定し、管制運転に移行すべきかどうかを簡易に判定できるエレベーター装置の制御方法及びエレベー装置を提供する。
【解決手段】本発明に係るエレベーター装置10の制御方法は、建物30の揺れの変位の大きさが所定の値以上であり、前記揺れの振動周期が、監視対象となる長尺物の監視対象周期と一致する揺れ判定条件を満たす場合、前記揺れの周期回数が、予め設定された移行周期回数以上になると、管制運転に移行する。前記揺れ判定条件は、揺れの変位の大きさと振動周期に基づいて設定され、前記移行周期回数は、前記揺れ判定条件に応じて設定することができる。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の揺れの変位の大きさが所定の値以上であり、前記揺れの振動周期が、監視対象となる長尺物の監視対象周期と一致する揺れ判定条件を満たす場合、前記揺れの周期回数が、予め設定された管制運転移行回数以上になると、管制運転に移行するエレベーター装置の制御方法。
【請求項2】
前記揺れ判定条件は、揺れの変位の大きさと振動周期に基づいて設定され、
前記管制運転移行回数は、前記揺れ判定条件に応じて設定される、
請求項1に記載のエレベーター装置の制御方法。
【請求項3】
前記建物の揺れの変位の大きさと振動周期を検出する揺れ検出し、
検出された揺れの前記変位の大きさと前記振動周期が、前記揺れ判定条件を満たすかどうかを判定し、
前記揺れ判定条件を満たす揺れが検出された場合に、前記揺れの周期回数をカウントし、
前記揺れ判定条件を満たす揺れの周期回数が前記移行周期回数以上になると、管制運転に移行する、
請求項2に記載のエレベーターの制御方法。
【請求項4】
前記移行周期回数は、検出された揺れの振幅が減少する減少振動、又は、検出された揺れの振動が増大する増大揺れで異なる、
請求項3に記載のエレベーター装置の制御方法。
【請求項5】
建物の揺れを検出し、揺れ検出信号を出力する揺れ検出器と、
前記揺れ検出信号から変位の大きさと振動周期を得て、前記変位の大きさと前記振動周期が予め設定された揺れ判定条件を満たすかどうか判定し、前記揺れ判定条件を満たした揺れの周期回数が、予め設定された移行周期回数以上になると、管制運転への移行を指示する判定部と、
前記判定部からの前記管制運転への移行の指示に基づいて、管制運転に移行する運行制御部と、
を含む、エレベーター装置。
【請求項6】
前記揺れ判定条件は、揺れの変位の大きさと振動周期に基づいて設定され、
前記管制運転移行回数は、前記揺れ判定条件に応じて設定される、
請求項5に記載のエレベーター装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の揺れからロープなどの長尺物の振れを判定し、管制運転に移行すべきかどうかを簡易に判定できるエレベーター装置の制御方法及びエレベーター装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
建物の高層化に伴い、建物に地震や強風等による周期振動が生じると、エレベーター装置も影響を受ける。エレベーター装置の場合、ロープなどの長尺物が水平方向に振動して、シャフト内構造物に接触してしまうことがある。
【0003】
そこで、特許文献1-6では、計測した建物揺れに基づいて、リアルタイムにロープなどの長尺物の振れ幅を推論・演算し、所定条件の下、エレベーター装置を管制運転に移行するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許2007-331901号公報
【特許文献2】特許2007-131360号公報
【特許文献3】特許2008-114944号公報
【特許文献4】特許2008-114959号公報
【特許文献5】特許2008-044701号公報
【特許文献6】特許2008-133105号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ロープなどの長尺物では、固有振動数や減衰比などの振動特性の誤差が、振れ幅等の推論・演算に影響するが、加振振動数や固有振動数の差に対して余裕度を与えることが難しく、長尺物振れを過小評価してしまう可能性がある。また、長尺物の振動特性の経年変化に対して、継続的に観測・確認を行なう必要があるが、ランニングコストの増大を招く。
【0006】
さらに、かごの移動により、長尺物振れの応答が変わるから、振れ幅等の推論・演算には、繰り返し演算、収束演算が求められる非線形解析が必要となり、演算のためのハードウエアの負荷や処理時間の増大を招く。とくに、エレベーター装置には、複数の長尺物(たとえば主ロープと補償ロープ)があり、その各々に対して、複数の推論・演算を行なう必要があるため、ハードウエアコストの増大を招く。
【0007】
そして、一般的には加振は2次元であり、長尺物の数学モデルを用いて振れ幅等を素論・演算する場合、1つの対象に対して最低2系列の演算を行なう必要があり、ハードウエアの負荷が増大する。
【0008】
本発明の目的は、建物の揺れからロープなどの長尺物の振れを判定し、管制運転に移行すべきかどうかを簡易に判定できるエレベーター装置の制御方法及びエレベー装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るエレベーター装置の制御方法は、
建物の揺れの変位の大きさが所定の値以上であり、前記揺れの振動周期が、監視対象となる長尺物の監視対象周期と一致する揺れ判定条件を満たす場合、前記揺れの周期回数が、予め設定された管制運転移行回数以上になると、管制運転に移行する。
【0010】
前記揺れ判定条件は、揺れの変位の大きさと振動周期に基づいて設定され、
前記管制運転移行回数は、前記揺れ判定条件に応じて設定することができる。
【0011】
前記建物の揺れの変位の大きさと振動周期を検出する揺れ検出し、
検出された揺れの前記変位の大きさと前記振動周期が、前記揺れ判定条件を満たすかどうかを判定し、
前記揺れ判定条件を満たす揺れが検出された場合に、前記揺れの周期回数をカウントし、
前記揺れ判定条件を満たす揺れの周期回数が前記移行周期回数以上になると、管制運転に移行することができる。
【0012】
前記移行周期回数は、検出された揺れの振幅が減少する減少振動、又は、検出された揺れの振動が増大する増大揺れで異なることができる。
【0013】
本発明のエレベーター装置は、
建物の揺れを検出し、揺れ検出信号を出力する揺れ検出器と、
前記揺れ検出信号から変位の大きさと振動周期を得て、前記変位の大きさと前記振動周期が予め設定された揺れ判定条件を満たすかどうか判定し、前記揺れ判定条件を満たした揺れの周期回数が、予め設定された移行周期回数以上になると、管制運転への移行を指示する判定部と、
前記判定部からの前記管制運転への移行の指示に基づいて、管制運転に移行する運行制御部と、
を含む。
【0014】
前記揺れ判定条件は、揺れの変位の大きさと振動周期に基づいて設定され、
前記管制運転移行回数は、前記揺れ判定条件に応じて設定することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明のエレベーター装置の制御方法及びエレベーター装置によれば、長尺物が共振する建物の揺れの変位の大きさと振動周期を含む揺れ判定条件と、当該揺れ判定条件に対して管制運転に移行すべき移行周期回数を予め設定しておく。そして、建物の揺れが検出されたときに、当該揺れの変位の大きさと周期回数を計測し、揺れ判定条件に一致する揺れの周期回数が予め設定された移行周期回数以上となったときに、管制運転に移行するようにしている。
【0016】
すなわち、本発明では、検出された建物の揺れと揺れ判定条件の一致性を監視し、当該一致した揺れの周期回数をカウントするだけで、長尺物の振れを判定し、管制運転移行への判断を行なうことができ、非線形解析などの数値解析は必要ないから、推論・演算を行なうためのハードウエアの負荷も低くて済む。これにより、ハードウエアコストを低減でき、より安価に且つ簡便に複数のロープなどの長尺物振れを監視し、判断を行なうことができる。
【0017】
予め設定される揺れ判定条件には幅を設けることで、監視される長尺物の振動特性の誤差や、経時による変化に対しても余裕を持って対応できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、本発明の一実施形態に係るエレベーター装置の全体構成を示す説明図である。
図2図2は、エレベーター装置の制御ブロック図である。
図3図3は、エレベーター装置の制御フローチャートである。
図4図4は、揺れ検出器により検出された揺れの波形図である。
図5図5は、減少傾向にある揺れの波形図である。
図6図6は、増大傾向にある揺れの波形図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面に沿って本発明のエレベーター装置10の一実施形態について説明を行なう。
【0020】
<エレベーター装置10の概略構成>
図1は、本発明が適用されるエレベーター装置10の全体構成を示す図である。エレベーター装置10は、建物30のシャフト11内に昇降可能にかご12と釣合い錘13を配置している。シャフト11には、たとえば頂上に機械室20が設けられ、機械室20には、巻上機14や制御装置40が配備される。
【0021】
かご12及び釣合い錘13は、シャフト11内で鉛直方向に敷設されたガイドレール(図示せず)上を走行可能となっており、かご12と釣合い錘13は、その天面側が主ロープ16によって懸架されるとともに、底面からは、主ロープ16の重量移動を相殺する釣合い用の補償ロープ17が垂下している。
【0022】
巻上機14はかご12の略直上に設けられ、釣合い錘13の略直上にはそらせ車15が設けられている。主ロープ16はこれらの巻上機14及びそらせ車15に巻掛けられ、その一端がかご12、他端が釣合い錘13に連結される。巻上機14は、図示しないモーター、調速機、制動装置などを含む。
【0023】
エレベーター装置10には、たとえば、機械室20に揺れ検出器50が設置される。揺れ検出器50は、建物30、具体的には機械室20の床21の平面振動を検出する。揺れ検出器50は、十分に短い時間間隔で機械室20の水平方向の変位を計測し、揺れ検出信号を制御装置40に逐次送信する。揺れ検出器50として、独立2軸の加速度計、速度計、変位計を例示でき、揺れ検出器50は、加速度ベクトル、速度ベクトル又は変位ベクトルなどを揺れ検出信号として出力する。
【0024】
エレベーター装置10のすべての制御は、制御装置40によって実行される。制御装置40は、一般的なエレベーター装置10の制御として、かご12やエレベータホールからの図示しないボタン操作により発生した乗場呼び、かご呼びに応答して、巻上機14などを駆動制御し、利用者を所望の階床まで移送する。
【0025】
<制御装置40及び制御方法>
図2は、本発明の一実施形態に係るエレベーター装置10の機能ブロック図であり、本発明の制御動作に関連する機能のみを抽出している。制御装置40は、本実施形態では、揺れ検出器50からの揺れ検出信号の入力に基づいて巻上機14を制御する。
【0026】
制御装置40は、判定部41と、記憶部45と、運行制御部46とを具え、建物30の揺れにより生ずる長尺物振れを監視して管制運転に移行するか否かの判断を行なう。記憶部45は、判定部41が管制運転移行への判断を行なうための揺れ判定条件と移行周期回数を記憶する。また、運行制御部46は、判定部41が管制運転移行の判断を行なうと、巻上機14などを作動させて、最寄り階への着床や戸開、また、かご12や釣合い錘13の停止位置がシャフト11の共振域から退避する管制運転を実行する。
【0027】
まず、記憶部45について説明する。記憶部45に記憶されている揺れ判定条件と移行周期回数は、建物30に生じた揺れにより、ロープなどの長尺物が加振・共振することでエレベーター装置10を管制運転に移行させるかどうかの判断基準となる条件である。これらは、エレベーター装置10の仕様や規格、設置される建物30などによって異なるため、実験やシミュレーションなどによって予め取得される。
【0028】
たとえば、予め、監視対象となる長尺物(たとえば主ロープ16)の振動特性(固有振動数、減衰比)に対して、予め、建物30から長尺物に与えられる加振(加速度、速度、又は変位)の振幅、周期(振動数)、継続時間(継続周期数)と、長尺物の揺れの大きさの組合せを条件として取得し、記憶部45に記憶しておく。本実施形態では、建物30の揺れの変位の大きさと、長尺物の共振周期、振れの周期時間を揺れ判定条件と称し、管制運転へ移行すべき建物30の揺れの継続回数を移行周期回数と称し、これらを管制運転への移行の判定に用いる。
【0029】
揺れ判定条件と移行周期回数は、エレベーター装置10の構成や仕様、運行などから対象とする長尺物が採り得る固有振動数の範囲を設定し、この振動数の範囲に含まれる振動であれば共振するとして、変位の大きさや振動周期、周期回数を予め取得し、記憶部45に記憶しておく。
【0030】
表1は、上記条件から演算された揺れ判定条件と移行周期回数の一例を示している。たとえば、建物30に、長尺物の共振周期と一致する振動周期の振幅(変位の大きさA1以上)の揺れがn11回発生したときに、長尺物に管制運転に移行すべき振幅が生じる場合、表1では、共振周期と一致する揺れの変位の大きさをA1、移行周期回数をn11としている。変位の大きさA1に対しては、移行周期回数を2種類準備しており、移行周期回数に応じて、移行される管制運転を2種類としている。表1中、管制運転1に移行する移行周期回数はn11、管制運転2に移行する移行周期回数はn12である(n11<n12)。同様に、変位の大きさA2に対しては、移行周期回数はn21とn22の2種、変位の大きさA3に対しては、移行周期回数はn31とn32の2種類である。管制運転1は、たとえば、最寄り階に停止して乗客降車後、退避階にかご12を移動させる運転であり、管制運転2は、管制運転1よりも激しい揺れに対する管制運転であり、たとえば、最寄り階に停止した後、そのまま運転休止する運転とすることができる。
【0031】
【表1】
【0032】
揺れ判定条件に含まれる共振周期については、監視される長尺物の振動特性の誤差や、経時による変化を考慮し、一定幅を有することが望ましい。たとえば、長尺物の共振周期に対し、±30%の範囲も周期時間に含める。当該共振周期に一定幅の周期時間を含む振動周期を監視対象周期と称する。
【0033】
判定部41は、揺れ検出器50から入力される揺れ検出信号から逐次変位の大きさと周期時間を読み出して、当該揺れが、所定の揺れ判定条件を満たすかどうかを判定する。揺れ検出信号は、たとえばベクトル量として入力できる。そして、当該揺れ判定条件を満たした揺れが予め設定された移行周期回数以上となったときに、運行制御部46に管制運転への移行信号を送信する。具体的実施形態として、判定部41は、図2に示すように、変位計測判定部42と、周期計測判定部43、移行判定部44を含む構成とすることができる。
【0034】
図3は、判定部41が、揺れ検出信号に基づいて管制運転を指示するに至る制御の一実施形態のフローチャートを示す。以下の説明では、適宜図3を参照する。
【0035】
判定部41は、揺れ検出器50から入力された揺れ検出信号から(図3のステップS01)、揺れの変位を計測する。たとえば、変位計測判定部42は、揺れ検出信号のベクトル量を一次元化して変位の大きさを計測する。図4は、揺れ検出器50により検出された揺れの波形図である。そして、変位計測判定部42は、計測された変位の大きさが、予め記憶部45に記憶された揺れ判定条件を満たす変位の大きさ(表1)であるかどうかを判断する。変位の大きさが、揺れ判定条件の変位の大きさ以上である場合には(ステップS02のYES)、次のステップS03に進んで、揺れの振動周期を計測させる。揺れ判定条件の変位の大きさを、表1に示すように、複数設定している場合は、個々の変位の値に対して、図3のフローによる判断が行なう。なお、ステップS02がNOの場合、ステップS01に戻り、揺れ検出信号の入力を待つ。
【0036】
ステップS03では、揺れ判定条件の変位の大きさを満たす揺れの周期時間を計測する。たとえば、周期計測判定部43は、図4に示すように、判定部41に入力された揺れ検出信号について、変位の方向が予め定めた値A1を超えた後(地点B)、変位の方向が反対方向に一旦変化し(地点C)、再び最初と同じ方向に変位(地点D)して、最初と同じ変位の値まで達する(地点E)までの時間を1周期として計測し、周期時間を取得する。
【0037】
そして、周期計測判定部43は、得られた周期時間が、記憶部45に記憶された長尺物の共振する監視対象周期と一致、すなわち、周期時間が監視対象周期に含まれるかどうかを判定する(ステップS04)。周期時間が、監視対象周期に含まれる場合には(ステップS04のYES)、ステップS05に進む。含まれない場合にはステップS01に戻る。
【0038】
原則として、計測した振動周期毎に、予め定めた変位の大きさに達するかどうかを判定しているが、測定誤差なども考慮し、判定部41は、各周期時間がある幅をもった時間範囲であれば、同一周期時間と見なすようにしている。周期時間の算出には、サンプリング間隔の影響もあるので、所定のバラツキの範囲を同じ1つの周期の揺れとするためである。そこで、周期計測判定部43は、上記した変位計測判定部42で計測された振動周期の変位が、予め定めた値を越えた場合には、ステップS06に進む(ステップS05のYES)。計測された周期の中で、予め定めた変位以下の場合には、ステップS01に戻る(ステップS05のNO)。なお、二周期目以降については、周期時間だけでなく、変位の値についても一定の幅を持たせて判断することが望ましい。揺れが増減することがあるためである。なお、揺れの増減に対する措置については、図5図6を用いて後述する。
【0039】
ステップS05がYESの場合、この判定結果は、移行判定部44に送信される。移行判定部44は、周期回数をカウントするカウンターを有しており、当該揺れを1周期目と判断し、揺れの継続周期回数としてカウントする(ステップS06)。2周期目以降では、カウント値に1を加算する。
【0040】
移行判定部44でカウントされた揺れ判定条件を変位の大きさを満たし、監視対象周期に一致する揺れの継続周期回数が、記憶部45に記憶された移行周期回数(表1参照)に達すると(ステップS07のYES)、移行判定部44は、運行制御部46に管制運転への移行を指示する(ステップS08)。移行する管制運転は、本実施形態では、管制運転1又は管制運転2である。
【0041】
運行制御部46は、判定部41からの指示を受け、エレベーター装置10を管制運転(1又は2)させる。これにより、建物30の揺れに応じて迅速にかご12及び利用者を退避させることができる。
【0042】
ステップS07がNOの場合、再びステップS01に戻り、揺れ検出信号の入力を待てばよい。ステップS05に戻る構成としてもよい。
【0043】
図3のフローチャートは、たとえば所定時間内に揺れ判定条件を満たす建物30の揺れが検出されない場合には、継続周期回数をリセットし、再び、揺れ検出信号の入力を待てばよい。
【0044】
以上のように、本実施形態のエレベーター装置10では、揺れ検出器50で検出された揺れ検出信号から、揺れ判定条件を満たす揺れが、継続周期回数をカウントし、予め設定された移行周期回数に達すると、管制運転に移行する。揺れ検出信号から、当該揺れが所定の変位の大きさを有し、且つ、その振動周期が共振を発生させる監視対象周期に一致するかどうかは簡易な演算で実施でき、また、周期時間の演算も容易である。さらに、継続周期回数のカウントや移行周期回数との比較も容易である。故に、本発明によれば、判定部41を構成するハードウエアの負荷は小さくて済むから、ハードウエアコストを低減できる。
【0045】
<建物30の揺れの増減傾向に対する措置>
建物30の揺れが図5に示すように減少傾向にある場合でも、共振する長尺物の揺れが増大することがある。このため、判定部41は、最初に予め定めた変位の大きさA1(表1参照)を越えてから、2回目移行の繰り返しの揺れについては、予め定めた変位A1の大きさよりも小さな変位A1’であっても、揺れは継続していると判断することが望ましい。
【0046】
表2は、図5の場合の変位の大きさと、管制運転1、2を行なう移行周期回数を示している。揺れの継続をカウントする変位の大きさを第1周期の判断値(A1)から変更したもの(A1’、A1”)を追加し、管制運転を行なう移行周期回数も変更する。変位の大きさは、1周期目のA1に対して、2周期目はA1’(<A1)、m周期目のA1”(<A1’)である。たとえば、変位の大きさA1’に対して管制運転1、2を行なう周期回数は夫々n11’、n12’、変位の大きさA1”に対して管制運転1、2を行なう周期回数は夫々n11”、n12”とすることができる。この場合、n11≦n11’≦n11”、n12≦n12’≦n12”である。これら条件は、予め記憶部45に記憶しておく。
【0047】
【表2】
【0048】
上記の場合、2周期目以降は、変位の大きさA1とA1’の2種類の振幅に対して監視を行い、m周期目以降については3種類の振幅に対して監視を行なえばよい。なお、変位の大きさの設定数に制限はない。
【0049】
同様に、建物30の揺れが図6に示すように増大傾向にある場合は、加振が一定の場合よりも早く長尺物の揺れが増大してしまう。このため、判定部41は、最初に予め定めた変位の大きさA1(表1参照)を越えてから、2回目移行の繰り返しの揺れについて、予め定めた変位A1の大きさよりも大きな振幅となった場合には、管制運転への移行周期回数を小さくすることが望ましい。
【0050】
表3は、図6の場合の変位の大きさと、管制運転1、2を行なう移行周期回数を示している。揺れの継続をカウントする変位の大きさを第1周期の判断値(A1)から変更したもの(A1’、A1”)を追加し、管制運転を行なう移行周期回数も変更する。変位の大きさは、1周期目のA1に対して、2周期目はA1’(>A1)、m周期目のA1”(>A1’)であり、管制運転を行なう移行周期回数も変更する。たとえば、変位の大きさA1’に対して管制運転1、2を行なう周期回数は夫々n11’、n12’、変位の大きさA1”に対して管制運転1、2を行なう周期回数は夫々n11”、n12”とすることができる。ただし、n11≧n11’≧n11”、n12≧n12’ ≧n12”である。これら条件は、予め記憶部45に記憶しておく。
【0051】
【表3】
【0052】
上記の場合、2周期目以降は、変位の大きさA1とA1’の2種類の振幅に対して監視を行い、m周期目については3種類の振幅に対して監視を行なえばよい。なお、変位の大きさの設定数に制限はない。
【0053】
上記とすることで、振幅が増減傾向にある場合であっても対応できる。
【0054】
<管制運転の終了>
上記により実施された管制運転に対し、揺れが収まった場合には、管制運転を終了する。管制運転の終了は、たとえば、長尺物の振れが減衰自由振動するものとして、変位計測判定部42にて測定された長尺物の振れ幅が一定幅まで減衰する時間を監視する。そして、当該時間経過後、管制運転を解除し、エレベーター装置10を通常運行とすればよい。
【0055】
ただし、減衰時間を監視中に、再び変位計測判定部42により測定される長尺物の振れが増大した場合には、減衰時間の監視開始時刻を更新し、再び振れ幅が一定幅まで減衰する時間を監視する。
【0056】
なお、長尺物の振れ幅が、一定幅まで減衰する時間を判断するために、上記監視と同時に、特定の振動特性を持つロープ、長尺物の一つ又は複数に数学モデルに基づいてリアルタイムシミュレーションを行ない、所定時間のロープ、長尺物の振れ幅が一定幅を超えないことを確認することが望ましい。上記の監視とリアルタイムシミュレーションの条件が何れも管制運転解除の条件を満たしたときに、エレベーター装置10の管制運転を解除する。
【0057】
上記説明は、本発明を説明するためのものであって、特許請求の範囲に記載の発明を限定し、或いは範囲を限縮するように解すべきではない。また、本発明の各部構成は、上記実施例に限らず、特許請求の範囲に記載の技術的範囲内で種々の変形が可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0058】
10 エレベーター装置
12 かご
14 巻上機
30 建物
40 制御装置
41 判定部
42 変位計測判定部
43 周期計測判定部
44 移行判定部
46 運行制御部
50 揺れ検出器
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【手続補正書】
【提出日】2023-11-08
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項1
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項1】
建物の揺れの変位の大きさが所定の値以上であり、前記揺れの振動周期が、監視対象となる長尺物の監視対象周期と一致する揺れ判定条件を満たす場合、前記揺れの周期回数が、予め設定された移行周期回数以上になると、管制運転に移行するエレベーター装置の制御方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項2
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項2】
前記揺れ判定条件は、揺れの変位の大きさと振動周期に基づいて設定され、
前記移行周期回数は、前記揺れ判定条件に応じて設定される、
請求項1に記載のエレベーター装置の制御方法。
【手続補正3】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項6
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項6】
前記揺れ判定条件は、揺れの変位の大きさと振動周期に基づいて設定され、
前記移行周期回数は、前記揺れ判定条件に応じて設定される、
請求項5に記載のエレベーター装置の制御方法。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0009
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0009】
本発明に係るエレベーター装置の制御方法は、
建物の揺れの変位の大きさが所定の値以上であり、前記揺れの振動周期が、監視対象となる長尺物の監視対象周期と一致する揺れ判定条件を満たす場合、前記揺れの周期回数が、予め設定された移行周期回数以上になると、管制運転に移行する。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0010
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0010】
前記揺れ判定条件は、揺れの変位の大きさと振動周期に基づいて設定され、
前記移行周期回数は、前記揺れ判定条件に応じて設定することができる。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0014
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0014】
前記揺れ判定条件は、揺れの変位の大きさと振動周期に基づいて設定され、
前記移行周期回数は、前記揺れ判定条件に応じて設定することができる。