(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024013220
(43)【公開日】2024-01-31
(54)【発明の名称】反射型マスクの製造方法、反射型マスクブランク、反射型マスク、及び反射型マスクブランクの製造方法
(51)【国際特許分類】
G03F 1/24 20120101AFI20240124BHJP
G03F 1/48 20120101ALI20240124BHJP
G03F 1/80 20120101ALI20240124BHJP
【FI】
G03F1/24
G03F1/48
G03F1/80
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023116014
(22)【出願日】2023-07-14
(31)【優先権主張番号】P 2022114897
(32)【優先日】2022-07-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】522212882
【氏名又は名称】株式会社トッパンフォトマスク
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 原太
【テーマコード(参考)】
2H195
【Fターム(参考)】
2H195BA10
2H195BB14
2H195BC20
2H195BC24
2H195CA07
2H195CA15
2H195CA16
2H195CA22
(57)【要約】
【課題】製造工程が多くなることが抑制された反射型マスクの製造方法を提供する。
【解決手段】反射型マスクの製造方法は、基板11、基板11の一方の面に積層された多層膜12、及び多層膜12に積層された保護膜13、を備えた反射型マスクブランクを準備し、保護膜13の露出面に開口部14aを有するレジストパターン14bを形成し、保護膜13のうち開口部14aから露出する領域をエッチングし且つ多層膜12の平面視で開口部14aに重なる領域に保護膜13の主材料と多層膜12を構成する膜のうち最も保護膜寄りに位置する膜を構成する材料とを含む混合層15を副生成物として形成し、混合層15をマスクとして、多層膜12をエッチングする、反射型マスク20の製造方法。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板、前記基板の一方の面に積層された多層膜、及び前記多層膜に積層された保護膜、を備えた反射型マスクブランクを準備し、
前記保護膜の露出面に開口部を有するレジストパターンを形成し、
前記保護膜のうち前記開口部から露出する領域をエッチングし且つ前記多層膜の平面視で前記開口部に重なる領域に前記保護膜の主材料と前記多層膜を構成する膜のうち最も前記保護膜寄りに位置する膜を構成する材料とを含む混合層を副生成物として形成し、
前記混合層をマスクとして、前記多層膜をエッチングする、
反射型マスクの製造方法。
【請求項2】
基板と、
前記基板の一方の面に積層された多層膜と、
前記多層膜に積層された保護膜と、
を備えた、反射型マスクブランク。
【請求項3】
前記保護膜の膜厚は10nm以下である、請求項2に記載の反射型マスクブランク。
【請求項4】
前記保護膜の膜厚は5nm以下である、請求項2に記載の反射型マスクブランク。
【請求項5】
基板と、
前記基板の一方の面に積層された多層膜と、
前記多層膜に積層された保護膜と、を備え、
前記多層膜には回路パターンが構成されていて、
前記保護膜は、RuSiOを含む、
反射型マスク。
【請求項6】
基板、前記基板の一方の面に積層された多層膜、及び前記多層膜に積層されたミキシング層、を備えた反射型マスクブランクを準備し、
前記ミキシング層の露出面に開口部を有するレジストパターンを形成し、
前記レジストパターンをマスクとして、前記ミキシング層のうち前記開口部から露出する領域をエッチングし且つ前記多層膜をエッチングする、
反射型マスクの製造方法。
【請求項7】
前記ミキシング層は、ルテニウム(Ru)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)、テクネチウム(Tc)、レニウム(Re)、ビスマス(Bi)、テルル(Te)、及びタングステン(W)の少なくとも1種と、シリコン(Si)と、酸素(O)とを少なくとも含む混合層である、請求項6に記載の反射型マスクの製造方法。
【請求項8】
基板と、
前記基板の一方の面に積層され、EUV光を反射する多層膜と、
前記多層膜に積層され、前記多層膜を保護するミキシング層と、
を備え、
前記ミキシング層は、ルテニウム(Ru)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)、テクネチウム(Tc)、レニウム(Re)、ビスマス(Bi)、テルル(Te)、及びタングステン(W)の少なくとも1種と、シリコン(Si)と、酸素(O)とを少なくとも含む混合層である、
反射型マスクブランク。
【請求項9】
前記ミキシング層の膜厚は5nm以下である、請求項8に記載の反射型マスクブランク。
【請求項10】
前記ミキシング層の膜厚は3nm以下である、請求項8に記載の反射型マスクブランク。
【請求項11】
前記ミキシング層は、フッ素系ガスを用いたプラズマエッチングでエッチングが可能であり、且つ塩素系ガスを用いたプラズマエッチングに対してエッチング耐性を有する、請求項8に記載の反射型マスクブランク。
【請求項12】
前記多層膜は、物性が互いに異なる少なくとも1ペアの積層体を備え、
前記1ペアの積層体の繰り返し回数は40ペア以上50ペア以下である、請求項8に記載の反射型マスクブランク。
【請求項13】
前記多層膜は物性が互いに異なる少なくとも1ペアの積層体を備え、
前記1ペアの積層体の繰り返し回数は1ペア以上39ペア以下である、請求項8に記載の反射型マスクブランク。
【請求項14】
基板と、
前記基板の一方の面に積層された多層膜と、
前記多層膜に積層されたミキシング層と、を備え、
前記多層膜には回路パターンが構成されていて、
前記ミキシング層は、ルテニウム(Ru)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)、テクネチウム(Tc)、レニウム(Re)、ビスマス(Bi)、テルル(Te)、及びタングステン(W)の少なくとも1種と、シリコン(Si)と、酸素(O)とを含む、
反射型マスク。
【請求項15】
基板と、
前記基板の一方の面に積層された多層膜と、
前記多層膜に積層されたミキシング層と、を備え、
前記多層膜には回路パターンが構成されていて、
前記ミキシング層は、フッ素系ガスを用いたプラズマエッチングでエッチングが可能であり、且つ塩素系ガスを用いたプラズマエッチングに対してエッチング耐性を有する材料と、シリコン(Si)と、酸素(O)と、を含み、
前記材料は、ルテニウム(Ru)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)、テクネチウム(Tc)、レニウム(Re)、ビスマス(Bi)、テルル(Te)、及びタングステン(W)の少なくとも1種を含む、
反射型マスク。
【請求項16】
請求項8に記載の反射型マスクブランクの製造方法であって、
前記ミキシング層を、前記多層膜上に、前記多層膜を保護する保護膜の主材料と前記多層膜を構成する膜のうち最も前記保護膜寄りに位置する膜を構成する材料とを含む混合層を副生成物として形成する、反射型マスクブランクの製造方法。
【請求項17】
前記ミキシング層は、ルテニウム(Ru)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)、テクネチウム(Tc)、レニウム(Re)、ビスマス(Bi)、テルル(Te)、及びタングステン(W)の少なくとも1種を含んだ前記保護膜をO2ガスエッチングすることで形成する、請求項16に記載の反射型マスクブランクの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、極端紫外線(Extreme Ultra Violet;以下「EUV」と表記する)を光源とするEUVリソグラフィなどに利用される、反射型マスクの製造方法、反射型マスクブランク、及び反射型マスクに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体デバイスの微細化に伴い、波長が13.5nm近傍のEUVを光源に用いたEUVリソグラフィが開発されている。EUVリソグラフィは光源波長が短く光吸収性が非常に高いため、真空中で行われる必要がある。また、EUVの波長領域においては、ほとんどの物質の屈折率は1よりもわずかに小さい値であるため、EUVリソグラフィにおいては、従来から用いられてきた透過型の屈折光学系を使用することができず、反射型の光学系を使用する必要がある。従って、EUVリソグラフィの原版となるフォトマスク(以下、反射型マスクと呼ぶ)も、従来の透過型のマスクは使用できないため、反射型のマスクとする必要がある。
【0003】
このような反射型マスクの代表的な層構造は、低熱膨張基板の上に、露光光源波長に対して高い反射率を示す多層膜と、多層膜の表面を保護するための保護膜と、露光光源波長を吸収する吸収膜とが順次形成されて構成され、吸収膜に回路パターンが形成される。上記のマスク構造の場合、吸収膜を部分的に除去して、EUV光に対する吸収部と反射部とからなる回路パターンを形成する。そして、このように作製された反射型マスクによって反射された光像が反射光学系を経て半導体基板上に転写される。
【0004】
反射型マスクは、上述した理由で反射型マスクであるため、一般に、反射型マスクへのEUV光の入射角度を斜め入射にする必要がある。その場合、反射型マスク上の回路パターンでEUV光が反射する際、反射光の方向によっては、吸収膜の高さが影となり、ウエハ上に放射されない現象(いわゆる射影効果)が生じ、転写コントラストが低下することが指摘されている。そこで射影効果を抑制するために、回路パターンが形成される吸収膜の厚みを薄くして、射影効果を低減する手法が検討されているが、射影効果を完全に排除することは出来ない。
【0005】
射影効果の別の対策として、上記で説明した従来の反射型マスクとは異なる構造の反射型マスクも提案されている。これは、低熱膨張基板上の多層膜に、回路パターンを形成したものである(特許文献1)。このタイプの反射型マスク(以降、多層膜パターニング型マスクと呼ぶ)であれば、吸収膜自体が存在しないので射影効果は発生せず、従来の反射型マスクと比べ転写コントラストが高くなることが期待されている。
このような多層膜パターニング型マスクでは、多層膜に回路パターンを形成する工程において、ハードマスクを用いて多層膜をエッチングしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
多層膜パターニング型マスクでは、ハードマスクを用いて多層膜をエッチングするので、製造工程が多くなっていた。
本技術は、反射型マスクの製造工程が多くなることが抑制された反射型マスクの製造方法、反射型マスクブランク、反射型マスク、及び反射型マスクブランクの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本技術の一態様に係る反射型マスクの製造方法は、基板、前記基板の一方の面に積層された多層膜、及び前記多層膜に積層された保護膜、を備えた反射型マスクブランクを準備し、前記保護膜の露出面に開口部を有するレジストパターンを形成し、前記保護膜のうち前記開口部から露出する領域をエッチングし且つ前記多層膜の平面視で前記開口部に重なる領域に前記保護膜の主材料と前記多層膜を構成する膜のうち最も前記保護膜寄りに位置する膜を構成する材料とを含む混合層を副生成物として形成し、前記混合層をマスクとして、前記多層膜をエッチングすることを含む。
【0009】
本技術の一態様に係る反射型マスクブランクは、基板と、前記基板の一方の面に積層された多層膜と、前記多層膜に積層された保護膜と、を備える。
【0010】
本技術の一態様に係る反射型マスクは、基板と、前記基板の一方の面に積層された多層膜と、前記多層膜に積層された保護膜と、を備え、前記多層膜には回路パターンが構成されていて、前記保護膜は、RuSiOを含む。
【0011】
本技術の一態様に係る反射型マスクの製造方法は、基板、前記基板の一方の面に積層された多層膜、及び前記多層膜に積層されたミキシング層、を備えた反射型マスクブランクを準備し、前記ミキシング層の露出面に開口部を有するレジストパターンを形成し、前記レジストパターンをマスクとして、前記ミキシング層のうち前記開口部から露出する領域をエッチングし且つ前記多層膜をエッチングすることを含む。
【0012】
本技術の一態様に係る反射型マスクブランクは、基板と、前記基板の一方の面に積層され、EUV光を反射する多層膜と、前記多層膜に積層され、前記多層膜を保護するミキシング層と、を備え、前記ミキシング層は、ルテニウム(Ru)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)、テクネチウム(Tc)、レニウム(Re)、ビスマス(Bi)、テルル(Te)、及びタングステン(W)の少なくとも1種と、シリコン(Si)と、酸素(O)とを少なくとも含む混合層である。
【0013】
本技術の一態様に係る反射型マスクは、基板と、前記基板の一方の面に積層された多層膜と、前記多層膜に積層されたミキシング層と、を備え、前記多層膜には回路パターンが構成されていて、前記ミキシング層は、ルテニウム(Ru)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)、テクネチウム(Tc)、レニウム(Re)、ビスマス(Bi)、テルル(Te)、及びタングステン(W)の少なくとも1種と、シリコン(Si)と、酸素(O)とを含む。
【0014】
本技術の一態様に係る反射型マスクは、基板と、前記基板の一方の面に積層された多層膜と、前記多層膜に積層されたミキシング層と、を備え、前記多層膜には回路パターンが構成されていて、前記ミキシング層は、フッ素系ガスを用いたプラズマエッチングでエッチングが可能であり、且つ塩素系ガスを用いたプラズマエッチングに対してエッチング耐性を有する材料と、シリコン(Si)と、酸素(O)と、を含み、前記材料は、ルテニウム(Ru)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)、テクネチウム(Tc)、レニウム(Re)、ビスマス(Bi)、テルル(Te)、及びタングステン(W)の少なくとも1種を含む。
【0015】
本技術の一態様に係る反射型マスクブランクの製造方法は、上述した反射型マスクブランクの製造方法であって、前記ミキシング層を、前記多層膜上に、前記多層膜を保護する保護膜の主材料と前記多層膜を構成する膜のうち最も前記保護膜寄りに位置する膜を構成する材料とを含む混合層を副生成物として形成することを含む。
【発明の効果】
【0016】
本発明の一態様によれば、保護膜のうちレジストパターン開口部から露出する領域をエッチングし、且つ多層膜の平面視で開口部に重なる領域に保護膜の主材料と多層膜を構成する膜のうち最も前記保護膜寄りに位置する膜を構成する材料とを含む混合層を副生成物として形成し、混合層をマスクとして、多層膜をエッチングするので、エッチング処理の回数を減らすことができる。
また、本発明の一態様によれば、ミキシング層のうちレジストパターン開口部から露出する領域をエッチングし、且つ多層膜をエッチングするので、エッチング処理の回数を減らすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本技術の第一実施形態に係る反射型マスクブランクの縦断面構造を示す断面図である。
【
図2】本技術の第一実施形態に係る反射型マスクブランクを用いた反射型マスクの製造工程を順に示す工程断面図である。
【
図3】従来の反射型マスクの製造工程を順に示す工程断面図である。
【
図4】本技術の第二実施形態に係る反射型マスクブランクの縦断面構造を示す断面図である。
【
図5】本技術の第二実施形態に係る反射型マスクブランクを用いた反射型マスクの製造工程を順に示す工程断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の第一実施形態、及び第二実施形態について、図面を参照して説明する。ここで、図面は模式的なものであり、厚さと平面寸法との関係、各層の厚さの比率等は現実のものとは異なる。また、以下に示す各実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための構成を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造等が下記のものに特定するものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0019】
(第一実施形態)
[反射型マスクブランク]
まず、本実施形態の反射型マスクブランク10の構成について説明する。本実施形態の反射型マスクブランク10は、
図1に示すように、基板11の一方の面に、多層膜12と、保護膜13とがこの順に形成された構造を有している。ここでは図示しないが、基板11と多層膜12の間にストッパー層があっても良いし、基板11の他方の面に導電膜が形成されていても良い。次に、反射型マスクブランク10の主な構成要素について説明する。
【0020】
<基板>
基板11は、低熱膨張基板である。基板11として、例えば、平坦なSi基板や合成石英基板、チタンを添加した低熱膨張ガラスを用いることができる。また、例えば、基板11として、合成石英基板やCaF2あるいはアルミノシリケートガラスなどを用いることができる。
【0021】
<多層膜>
以下、多層膜12の一構成例について、説明する。多層膜12には、回路パターンが形成される。多層膜12は、EUV光に対して50%以上の反射率を達成できるように設計する。例えば、多層膜12は、膜厚2.8nm程度のモリブデン(Mo)膜と膜厚4.2nmのシリコン(Si)膜を交互に20~50ペア積層した積層膜で構成する。MoとSiは、EUV光に対する吸収(消衰係数)が小さく、且つMoとSiのEUV光での屈折率差が大きいので、SiとMoの界面での反射率を高くすることが出来る。一般に、多層膜のペア数は多い方が高い反射率が得られ、20ペアで約50%、40ペア(合計約280nm)で約64%、50ペア(合計約350nm)で約66%となる。但し、50ペアより厚くしても反射率は上がらない。その理由は、50ペア以上の深い多層膜からは、深すぎるために途中でEUV光が吸収されてしまい、マスクの表面まで戻れないためである。また、多層膜12を構成する膜のうち最も保護膜13寄りに位置する膜はシリコン膜であり、以下、多層膜12を構成する膜のうち最も保護膜13寄りに位置するシリコン膜を、最表層膜と呼ぶ場合がある。
【0022】
<保護膜>
保護膜13は、マスクを作製する際のドライエッチング工程やマスク洗浄工程において、多層膜12へのダメージ防止膜としての役割を担っている。保護膜13には、洗浄耐性及びエッチング耐性が高いとされているルテニウム(Ru)が用いられている。保護膜13は、ルテニウムを主材料として構成されている。本実施形態では、保護膜13がルテニウムから成るとして、説明する。
また、好ましくは、保護膜13の膜厚は10nm以下である。より好ましくは、保護膜13の膜厚は5nm以下である。また、保護膜13の膜厚は1nm以上であっても良い。保護膜13の膜厚は、好ましくは2nm以上である。また、保護膜13の膜厚は、より好ましくは3nm以上である。保護膜13の多層膜12側とは反対側の面は露出されていて、いかなるハードマスク層も形成されていない。なお、ハードマスク層とは、エッチング工程においてハードマスクとして利用可能な材料からなる層である。
【0023】
[反射型マスクの製造方法]
以下、反射型マスクの製造方法について、説明する。まず、
図2(a)に示すように、基板11と、基板11の一方の面に積層された多層膜12と、多層膜12に積層された保護膜13と、を備えた反射型マスクブランク10を準備し、保護膜13の露出面にレジストを塗布してレジスト膜14を形成する。その後、
図2(b)に示すように、レジスト膜14に電子線で描画し、現像して、開口部14aを有するレジストパターン14bを得る。開口部14aは、形成したい回路に応じた形状を有している。次に、
図2(c)に示すように、レジストパターン14bをマスクとして、保護膜13の開口部14aから露出する領域をエッチングして除去する。
【0024】
保護膜13のエッチングは、酸素(O
2)ガスを用いたプラズマエッチングにより行う。そして、プラズマ中における酸素イオンやラジカルでルテニウムから成る保護膜13をエッチングする際に、その下地のシリコン膜(多層膜12の最表層膜)とミキシング反応を起こす。これにより、エッチングの副生成物として混合層15が形成される。混合層15は、多層膜12の最表層膜のうち平面視で開口部14aに重なる領域に形成され且つ保護膜13の主材料(ルテニウム)と多層膜12を構成する膜のうち最も保護膜13寄りに位置する膜を構成する材料(シリコン)とを含む。より具体的には、混合層15は、RuSiOを含む。そして、
図2(d)に示すように、レジストパターン14b及びエッチングされずに残ったルテニウムを剥離する。混合層15は、この工程により除去されることはなく、多層膜12の露出面に残っている。
【0025】
次に、
図2(e)に示すように、混合層15をマスクとして、多層膜12を選択的にエッチングする。より具体的には、積層方向と垂直な面内において多層膜12の一部領域を、基板11に達するまで厚み方向に沿ってエッチングして除去する。これにより、多層膜12に回路パターンが形成される。より具体的には、多層膜12のうち平面視で開口部14aに重なる領域が残されて、回路が形成される。多層膜12のエッチングは、塩素(Cl)系ガスを用いたプラズマエッチングにより、行う。混合層15は、選択されたエッチャント(塩素系ガス)に対するエッチングレートが、多層膜12のエッチングレートより低いので、多層膜12のエッチング時のマスクとして機能することができる。そして、多層膜12のうちエッチングされずに残った部分は、最表層に保護膜としても機能する混合層15を有している。こうして、本実施形態に係る反射型マスク20を得る。
【0026】
[本実施形態の主な効果]
以下、本実施形態の主な効果について説明するが、その前に、従来の反射型マスクの製造方法について、説明する。まず、
図3(a)に示すように、基板11と、基板11の一方の面に積層された多層膜12と、多層膜12に積層された保護膜13と、保護膜13に積層されたハードマスク層16とを備えた反射型マスクブランク10aを準備し、ハードマスク層16の露出面に公知のリソグラフィ技術を用いてレジストパターン14bを形成する。本実施形態では、ハードマスク層16がホウ化タンタル(TaBO)から成るとして、説明する。
【0027】
その後、
図3(b)に示すように、レジストパターン14bをマスクとしてハードマスク層16のうち開口部14aから露出する部分をエッチングし、除去する。これにより、ハードマスク16aを得る。ハードマスク層16のエッチングは、フッ素(F)系ガスを用いたプラズマエッチングにより第1チャンバー内で行う。
次に、
図3(c)に示すように、保護膜13のハードマスク16aの開口部から露出する領域を、酸素ガスを用いたプラズマエッチングによりエッチングして除去する。保護膜13のエッチングは、第1チャンバー内で行う。そして、このエッチングにより混合層15が副生成物として形成される。
【0028】
その後、ハードマスク16aをマスクとして多層膜12のエッチングを行いたいところではあるが、副生成物の混合層15は、多層膜12のエッチングに用いられる塩素系ガスでは、たとえエッチングされたとしても僅かである。そのため、混合層15の下の多層膜12をエッチングすることができない。そこで、
図3(d)に示すように、多層膜12のエッチングの前に、第1チャンバー内においてフッ素系ガスを用いたプラズマエッチングにより、混合層15を除去する。
その後、
図3(e)に示すように、多層膜12のうちハードマスク16aの開口部から露出する部分を、厚み方向に沿ってエッチングする。多層膜12のエッチングは、塩素系ガスを用いたプラズマエッチングにより、第1チャンバーとは異なる第2チャンバー内で行う。
【0029】
そして、
図3(f)に示すように、第1チャンバー内においてフッ素系ガスを用いたプラズマエッチングにより、ハードマスク16aを除去する。このようにして、反射型マスク20aを得る。
このように、従来の反射型マスクブランク10aはハードマスク層16を備えていて、ハードマスク層16を加工してハードマスクパターンとしていたため、エッチング処理を行う回数が多くなり、計5回行っていた。
また、それらのエッチング処理はフッ素系ガスを用いた処理と、塩素系ガスを用いた処理との両方の処理を含み、それら処理は互いに異なるチャンバーを用いて行う必要があった。
【0030】
また、フッ素系ガスを用いたプラズマエッチングにより混合層15を除去する際に、混合層15と一緒にハードマスク16aもエッチングされていた。そのため、ハードマスク16aを厚く設けておく必要があった。しかし、ハードマスク16aを厚膜化すると、それに伴いレジストパターン14bを厚膜化する必要があり、結果として解像性が劣化する可能性があった。
また、多層膜12は、回路パターンの側壁角度が垂直であることが望ましい。しかし、垂直なパターンを得るには、各エッチング処理の条件を最適化するのに加え、複数回のエッチング処理の組み合わせも考慮する必要があった。したがって、プロセス構築が難しかった。
【0031】
また、フッ素系ガスを用いたプラズマエッチングによりハードマスク16aを除去する際にオーバーエッチングを行うと、保護膜13もエッチングされてしまい、損傷を受ける可能性があった。また、回路パターンの密度が高い領域と低い領域とでは、ハードマスク16aのエッチングの進行速度が異なるため、反射型マスク面内において均一にハードマスク16aをエッチングすること、及び、反射型マスク面内において均一に保護膜13を残すことは、難しかった。そして、ハードマスク16aの残りや保護膜13の損傷が反射型マスク面内に存在する場合、回路パターンのウエハ転写に影響を与える可能性があった。
【0032】
これに対して、本技術の実施形態に係る反射型マスクブランクは、ハードマスク層16を有していない。そのため、本技術の実施形態に係る反射型マスクの製造方法では、ハードマスク16aに関連するエッチング処理を行う必要が無い。これにより、エッチング処理の回数を減らすことができる。
また、本技術の実施形態に係る反射型マスクの製造方法では、多層膜12のエッチング処理において、副生成物の混合層15をマスクとして利用する。そのため、混合層15を除去する必要がなく、エッチング処理の回数を減らすことができる。
【0033】
また、本技術の実施形態に係る反射型マスクの製造方法では、ハードマスク16aに関連するエッチング処理と、混合層15を除去するエッチング処理とを行う必要がないので、フッ素系ガスを用いたエッチング処理を行わない。より具体的には、酸素ガスを用いたエッチング処理及び塩素系ガスを用いたエッチング処理のみを行う。そのため、複数のチャンバーを使い分ける必要がなく、1つのチャンバーで処理を行うことができる。
また、本技術の実施形態に係る反射型マスクの製造方法では、混合層15を除去する必要がなく、ハードマスク16aも使用しない。そのため、従来混合層15の除去に関連して行っていたハードマスク16aの厚膜化及びそれに伴う、レジストの膜厚化が必要ない。これにより、解像性が劣化するのを抑制できる。
【0034】
また、本技術の実施形態に係る反射型マスクの製造方法では、エッチング処理の回数を減らすことができる。そのため、プロセス構築が難しくなることを抑制できる。
また、本技術の実施形態に係る反射型マスクでは混合層15を保護膜として利用するので、その製造方法において、多層膜12に回路パターンを形成した後に混合層15を除去しない。そのため、エッチング処理の回数を減らすことができ、また、反射型マスク面内において膜が不均一になることを抑制でき、回路パターンのウエハ転写が劣化するのを抑制できる。
【0035】
(第二実施形態)
[反射型マスクブランク]
まず、本実施形態の反射型マスクブランク30の構成について説明する。本実施形態の反射型マスクブランク30は、
図4に示すように、基板11の一方の面に、多層膜12と、ミキシング層(混合層)15がこの順に形成された構造を有している。ここでは図示しないが、基板11と多層膜12の間にストッパー層があっても良いし、基板11の他方の面に導電膜が形成されていても良い。次に、反射型マスクブランク30の主な構成要素について説明する。
【0036】
<基板>
本実施形態の基板は、第一実施形態で説明した基板11と同じである。即ち、基板11は、低熱膨張基板である。基板11として、例えば、平坦なSi基板や合成石英基板、チタンを添加した低熱膨張ガラスを用いることができる。また、例えば、基板11として、合成石英基板やCaF2あるいはアルミノシリケートガラスなどを用いることができる。
【0037】
<多層膜>
本実施形態の多層膜は、第一実施形態で説明した多層膜12と同じである。即ち、多層膜12には、回路パターンが形成される。多層膜12は、EUV光に対して50%以上の反射率を達成できるように設計する。なお、本実施形態の多層膜12は、膜厚2.8nm程度のモリブデン(Mo)膜と膜厚4.2nmのシリコン(Si)膜を交互に1~50ペア積層した積層膜で構成する。MoとSiは、EUV光に対する吸収(消衰係数)が小さく、且つMoとSiのEUV光での屈折率差が大きいので、SiとMoの界面での反射率を高くすることが出来る。一般に、多層膜のペア数は多い方が高い反射率が得られ、20ペアで約50%、40ペア(合計約280nm)で約64%、50ペア(合計約350nm)で約66%となる。但し、50ペアより厚くしても反射率は上がらない。その理由は、50ペア以上の深い多層膜からは、深すぎるために途中でEUV光が吸収されてしまい、マスクの表面まで戻れないためである。
【0038】
このように、多層膜12は、物性が互いに異なる少なくとも1ペアの積層体(例えば、Mo膜とSi膜)を備えていれば良く、その1ペアの積層体の繰り返し回数は40ペア以上50ペア以下であれば好ましい。また、その1ペアの積層体の繰り返し回数は1ペア以上39ペア以下であっても良い。なお、39ペア以下であっても使用する上で問題のない程度の反射率が得られる。
また、多層膜12を構成する膜のうち最も保護膜寄りに位置する膜はシリコン膜であり、以下、多層膜12を構成する膜のうち最も保護膜寄りに位置するシリコン膜を、最表層膜と呼ぶ場合がある。
【0039】
<ミキシング層>
ミキシング層15は、第一実施形態で説明した混合層に相当する層であって、マスクを作製する際のドライエッチング工程やマスク洗浄工程において、多層膜12へのダメージ防止膜(所謂、ストッパー層)としての役割を担っている。ミキシング層15には、洗浄耐性及びエッチング耐性が高いとされているルテニウム(Ru)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)、テクネチウム(Tc)、レニウム(Re)、ビスマス(Bi)、テルル(Te)、及びタングステン(W)の少なくとも1種が用いられている。つまり、ミキシング層15は、ルテニウム(Ru)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)、テクネチウム(Tc)、レニウム(Re)、ビスマス(Bi)、テルル(Te)、及びタングステン(W)の少なくとも1種を主材料として含んだ層であれば良く、上述した金属元素と、シリコン(Si)と、酸素(O)とを少なくとも含んだ混合層であっても良い。ここで、「主材料」とは、ミキシング層15を構成する全原子のうち、50原子%以上を占める元素を意味する。
【0040】
本実施形態では、ミキシング層15がルテニウムを含むとして、説明する。
また、好ましくは、ミキシング層15の膜厚は5nm以下である。より好ましくは、ミキシング層15の膜厚は3nm以下である。また、ミキシング層15の膜厚は1nm以上であっても良い。ミキシング層15の膜厚は、好ましくは2nm以上である。ミキシング層15の膜厚が5nmを超える場合には、ミキシング層15が厚すぎるため、EUV光の反射率が低下することがある。また、ミキシング層15の膜厚が1nm未満である場合には、ストッパー層としての機能を発揮しないことがある。
また、ミキシング層15の多層膜12側とは反対側の面は露出されていて、いかなるハードマスク層も形成されていない。なお、ハードマスク層とは、エッチング工程においてハードマスクとして利用可能な材料からなる層である。
なお、基板11の多層膜12とは反対面側には、裏面導電膜(図示せず)が形成されていても良い。裏面導電膜は、公知のスパッタリング法を用いて形成することができる。基板11の裏面に形成される導電膜(即ち、裏面導電膜)は、導電性があれば良く、例えば、クロム(Cr)またはタンタル(Ta)のいずれかの金属もしくはその酸化物、窒化物、酸窒化物のいずれか、または、導電性のあるその他の金属材料を含む材料で形成されていても良い。
【0041】
また、ミキシング層15は、フッ素(F)系ガスを用いたプラズマエッチングでエッチングが可能であり、且つ塩素(Cl)系ガスを用いたプラズマエッチングに対してエッチング耐性を有する層である。ここで、「フッ素(F)系ガスを用いたプラズマエッチングでエッチングが可能であり、且つ塩素(Cl)系ガスを用いたプラズマエッチングに対してエッチング耐性を有する」とは、ミキシング層15に対するフッ素系ガスのエッチングレートと、ミキシング層15に対する塩素系ガスのエッチングレートとの比(ミキシング層15に対するフッ素系ガスのエッチングレート/ミキシング層15に対する塩素系ガスのエッチングレート)が1超であることを意味する。あるいは、「フッ素(F)系ガスを用いたプラズマエッチングでエッチングが可能である」とは、エッチングレートが、例えば0.1nm/sec.以上であることを意味する。また、「塩素(Cl)系ガスを用いたプラズマエッチングに対してエッチング耐性を有する」とは、エッチングレートが、例えば0.1nm/sec.未満であることを意味する。
【0042】
また、ミキシング層15は、例えば、第一実施形態で説明した保護膜13を酸素(O2)ガスを用いてプラズマエッチングすることで形成した層である。そのため、保護膜13がルテニウム(Ru)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)、テクネチウム(Tc)、レニウム(Re)、ビスマス(Bi)、テルル(Te)、及びタングステン(W)の少なくとも1種を主材料として含んだ層であれば、多層膜12を保護する保護膜13の主材料である上記金属元素と、多層膜12を構成する膜のうち最も保護膜13寄りに位置する膜を構成する材料(即ち、Si)と、エッチングガスに含まれる酸素(O)とを含む混合層であるミキシング層15形成することができる。
【0043】
[反射型マスクの製造方法]
以下、反射型マスクの製造方法について、説明する。まず、
図5(a)に示すように、基板11と、基板11の一方の面に積層された多層膜12と、多層膜12に積層された保護膜13と、を備えた反射型マスクブランク10を準備する。
次に、
図5(b)に示すように、前処理として、保護膜13をエッチングする。保護膜13のエッチングは、酸素(O
2)ガスを用いたプラズマエッチングにより行う。そして、プラズマ中における酸素イオンやラジカルでルテニウムから成る保護膜13をエッチングする際に、その下地のシリコン膜(多層膜12の最表層膜)とミキシング反応を起こす。これにより、エッチングの副生成物としてミキシング層15が形成される。ミキシング層15は、多層膜12の最表層膜に形成され且つ保護膜13の主材料(ルテニウム)と多層膜12を構成する膜のうち最も保護膜13寄りに位置する膜を構成する材料(シリコン)とを含む。より具体的には、ミキシング層15は、RuSiOを含む。
こうして、本実施形態に係る反射型マスクブランク30を得る。
【0044】
なお、本実施形態においては、多層膜12の最表層膜であるシリコン膜の全てがミキシング層15に置き換わっていても良いし、多層膜12の最表層膜であるシリコン膜の一部がミキシング層15に置き換わっていても良い。例えば、多層膜12の最表層膜において、基板11寄りの膜部分はシリコン膜で構成されており、表面寄りの膜部分はミキシング層15で構成されていても良い。このように、多層膜12の最表層膜において、基板11側から表面側に向かって徐々にミキシング層15を構成する元素の割合が増加していっても良い。
また、保護膜13の主材料がオスミウム(Os)、イリジウム(Ir)、テクネチウム(Tc)、レニウム(Re)、ビスマス(Bi)、テルル(Te)、あるいはタングステン(W)である場合には、ミキシング層15は、OsSiO、IrSiO、TcSiO、ReSiO、BiSiO、TeSiO、あるいはWSiOを含んだ層となる。
【0045】
次に、
図5(c)に示すように、ミキシング層15の露出面にレジストを塗布してレジスト膜14を形成する。その後、
図5(d)に示すように、レジスト膜14に電子線で描画し、現像して、開口部14aを有するレジストパターン14bを得る。開口部14aは、形成したい回路に応じた形状を有している。
次に、
図5(e)に示すように、レジストパターン14bをマスクとして、ミキシング層15の開口部14aから露出する領域をエッチングして除去する。ミキシング層15のエッチングは、フッ素(F)系ガスを用いたプラズマエッチングにより、行う。ミキシング層15は、選択されたエッチャント(フッ素系ガス)に対するエッチングレートが、レジストパターン14bのエッチングレートより低いので、ミキシング層15のエッチング時のマスクとして機能することができる。そして、ミキシング層15のうちエッチングされずに残った部分は、その最表面にレジストパターン14bを有している。
【0046】
次に、
図5(f)に示すように、レジストパターン14bを剥離する。ミキシング層15は、この工程により除去されることはなく、多層膜12の露出面に残っている。
次に、
図5(g)に示すように、ミキシング層15をマスクとして、多層膜12を選択的にエッチングする。より具体的には、積層方向と垂直な面内において多層膜12の一部領域を、基板11に達するまで厚み方向に沿ってエッチングして除去する。これにより、多層膜12に回路パターンが形成される。より具体的には、多層膜12のうち平面視で開口部14aに重なる領域が残されて、回路が形成される。多層膜12のエッチングは、塩素(Cl)系ガスを用いたプラズマエッチングにより、行う。ミキシング層15は、選択されたエッチャント(塩素系ガス)に対するエッチングレートが、多層膜12のエッチングレートより低いので、多層膜12のエッチング時のマスクとして機能することができる。そして、多層膜12のうちエッチングされずに残った部分は、最表層に保護膜としても機能するミキシング層15を有している。こうして、本実施形態に係る反射型マスク40を得る。
【0047】
[本実施形態の主な効果]
以下、本実施形態の主な効果について説明する。
本技術の実施形態に係る反射型マスクブランク30は、上述した実施形態に係る反射型マスクブランク10と同様に、ハードマスク層16を有していない。そのため、本技術の実施形態に係る反射型マスク40の製造方法では、ハードマスク16aに関連するエッチング処理を行う必要が無い。これにより、エッチング処理の回数を減らすことができる。
また、本技術の実施形態に係る反射型マスク40の製造方法では、多層膜12のエッチング処理において、ミキシング層15をマスクとして利用する。そのため、ミキシング層15を除去する必要がなく、エッチング処理の回数を減らすことができる。
【0048】
また、本技術の実施形態に係る反射型マスク40の製造方法では、ハードマスク16aも使用しない。そのため、従来ハードマスク16aの除去に関連して行っていたハードマスク16aの厚膜化及びそれに伴う、レジストの膜厚化が必要ない。これにより、解像性が劣化するのを抑制できる。
また、本技術の実施形態に係る反射型マスク40の製造方法では、エッチング処理の回数を減らすことができる。そのため、プロセス構築が難しくなることを抑制できる。
また、本技術の実施形態に係る反射型マスク40ではミキシング層15を保護膜として利用するので、その製造方法において、多層膜12に回路パターンを形成した後にミキシング層15を除去しない。そのため、エッチング処理の回数を減らすことができ、また、反射型マスク面内において膜が不均一になることを抑制でき、回路パターンのウエハ転写が劣化するのを抑制できる。
【0049】
また、本技術の実施形態に係る反射型マスク40では、多層膜12のペア数を減らすことができる。そのため、マスク上の解像性を大幅に向上させることが可能となり、ウエハ上の解像性も大幅に向上する。さらに、転写像のコントラストをほとんど低下させることなく転写像の非対象性を低減することも可能となるため、転写像の位置ずれを解消することが可能となる。その結果として高品質の半導体デバイスを製造することが可能となる。
【0050】
また、本技術の実施形態に係る反射型マスクブランク30及び反射型マスク40であれば、以下の効果もさらに得られる。
本技術の実施形態に係る反射型マスクブランク30及び反射型マスク40であれば、ハードマスク16a(TaBO)を使用しないため、従来技術に係る反射型マスクブランク及び反射型マスクと比較して、膜構造が単純になり、処理工程が少なくなる。
また、本技術の実施形態に係る反射型マスクブランク30及び反射型マスク40であれば、ハードマスク16a(TaBO)を使用しないため、従来技術に係る反射型マスクブランク及び反射型マスクと比較して、エッチング回数を減らすことができるため、回路パターンが形成された多層膜12の側壁角度を垂直にすることが容易になる。
また、本技術の実施形態に係る反射型マスクブランク30及び反射型マスク40であれば、ハードマスク16a(TaBO)を使用しないため、従来技術に係る反射型マスクブランク及び反射型マスクと比較して、所謂ハードマスク16a(TaBO)の抜け残りが生じない。
【0051】
このように、本技術の実施形態に係る反射型マスクブランク30及び反射型マスク40であれば、ハードマスク16a(TaBO)を使用しないため、レジスト膜を厚くする必要が生じず、解像性が向上する。
また、ハードマスク16a(TaBO)を使用しないため、Ru膜のダメージが少なくなり、ドライエッチング耐性やマスク洗浄耐性が向上する。
【0052】
本技術の範囲は、図示され記載された例示的な実施形態に限定されるものではなく、本技術が目的とするものと均等な効果をもたらす全ての実施形態をも含む。さらに、本技術の範囲は、請求項により画される発明の特徴の組み合わせに限定されるものではなく、全ての開示されたそれぞれの特徴のうち特定の特徴のあらゆる所望する組み合わせによって画されうる。
また、本明細書に記載された効果はあくまでも例示であって限定されるものでは無く、また他の効果があっても良い。
【0053】
また、例えば、本発明は以下のような構成を取ることができる。
(1)
基板、前記基板の一方の面に積層された多層膜、及び前記多層膜に積層された保護膜、を備えた反射型マスクブランクを準備し、
前記保護膜の露出面に開口部を有するレジストパターンを形成し、
前記保護膜のうち前記開口部から露出する領域をエッチングし且つ前記多層膜の平面視で前記開口部に重なる領域に前記保護膜の主材料と前記多層膜を構成する膜のうち最も前記保護膜寄りに位置する膜を構成する材料とを含む混合層を副生成物として形成し、
前記混合層をマスクとして、前記多層膜をエッチングする、
反射型マスクの製造方法。
(2)
基板と、
前記基板の一方の面に積層された多層膜と、
前記多層膜に積層された保護膜と、
を備えた、反射型マスクブランク。
(3)
前記保護膜の膜厚は10nm以下である、上記(2)に記載の反射型マスクブランク。
(4)
前記保護膜の膜厚は5nm以下である、上記(2)に記載の反射型マスクブランク。
(5)
基板と、
前記基板の一方の面に積層された多層膜と、
前記多層膜に積層された保護膜と、を備え、
前記多層膜には回路パターンが構成されていて、
前記保護膜は、RuSiOを含む、
反射型マスク。
(6)
基板、前記基板の一方の面に積層された多層膜、及び前記多層膜に積層されたミキシング層、を備えた反射型マスクブランクを準備し、
前記ミキシング層の露出面に開口部を有するレジストパターンを形成し、
前記レジストパターンをマスクとして、前記ミキシング層のうち前記開口部から露出する領域をエッチングし且つ前記多層膜をエッチングする、
反射型マスクの製造方法。
(7)
前記ミキシング層は、ルテニウム(Ru)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)、テクネチウム(Tc)、レニウム(Re)、ビスマス(Bi)、テルル(Te)、及びタングステン(W)の少なくとも1種と、シリコン(Si)と、酸素(O)とを少なくとも含む混合層である、上記(6)に記載の反射型マスクの製造方法。
(8)
基板と、
前記基板の一方の面に積層され、EUV光を反射する多層膜と、
前記多層膜に積層され、前記多層膜を保護するミキシング層と、
を備え、
前記ミキシング層は、ルテニウム(Ru)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)、テクネチウム(Tc)、レニウム(Re)、ビスマス(Bi)、テルル(Te)、及びタングステン(W)の少なくとも1種と、シリコン(Si)と、酸素(O)とを少なくとも含む混合層である、
反射型マスクブランク。
(9)
前記ミキシング層の膜厚は5nm以下である、上記(8)に記載の反射型マスクブランク。
(10)
前記ミキシング層の膜厚は3nm以下である、上記(8)に記載の反射型マスクブランク。
(11)
前記ミキシング層は、フッ素系ガスを用いたプラズマエッチングでエッチングが可能であり、且つ塩素系ガスを用いたプラズマエッチングに対してエッチング耐性を有する、上記(8)から(10)のいずれか1項に記載の反射型マスクブランク。
(12)
前記多層膜は、物性が互いに異なる少なくとも1ペアの積層体を備え、
前記1ペアの積層体の繰り返し回数は40ペア以上50ペア以下である、上記(8)から(11)のいずれか1項に記載の反射型マスクブランク。
(13)
前記多層膜は物性が互いに異なる少なくとも1ペアの積層体を備え、
前記1ペアの積層体の繰り返し回数は1ペア以上39ペア以下である、上記(8)から(11)のいずれか1項に記載の反射型マスクブランク。
(14)
基板と、
前記基板の一方の面に積層された多層膜と、
前記多層膜に積層されたミキシング層と、を備え、
前記多層膜には回路パターンが構成されていて、
前記ミキシング層は、ルテニウム(Ru)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)、テクネチウム(Tc)、レニウム(Re)、ビスマス(Bi)、テルル(Te)、及びタングステン(W)の少なくとも1種と、シリコン(Si)と、酸素(O)とを含む、
反射型マスク。
(15)
基板と、
前記基板の一方の面に積層された多層膜と、
前記多層膜に積層されたミキシング層と、を備え、
前記多層膜には回路パターンが構成されていて、
前記ミキシング層は、フッ素系ガスを用いたプラズマエッチングでエッチングが可能であり、且つ塩素系ガスを用いたプラズマエッチングに対してエッチング耐性を有する材料と、シリコン(Si)と、酸素(O)と、を含み、
前記材料は、ルテニウム(Ru)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)、テクネチウム(Tc)、レニウム(Re)、ビスマス(Bi)、テルル(Te)、及びタングステン(W)の少なくとも1種を含む、
反射型マスク。
(16)
上記(8)から(13)のいずれか1項に記載の反射型マスクブランクの製造方法であって、
前記ミキシング層を、前記多層膜上に、前記多層膜を保護する保護膜の主材料と前記多層膜を構成する膜のうち最も前記保護膜寄りに位置する膜を構成する材料とを含む混合層を副生成物として形成する、反射型マスクブランクの製造方法。
(17)
前記ミキシング層は、ルテニウム(Ru)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)、テクネチウム(Tc)、レニウム(Re)、ビスマス(Bi)、テルル(Te)、及びタングステン(W)の少なくとも1種を含んだ前記保護膜をO2ガスエッチングすることで形成する、上記(16)に記載の反射型マスクブランクの製造方法。
【符号の説明】
【0054】
10 反射型マスクブランク
11 基板
12 多層膜
13 保護膜
14 レジスト膜
14a 開口部
14b レジストパターン
15 混合層(ミキシング層)
20 反射型マスク
30 反射型マスクブランク
40 反射型マスク