(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024132207
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】電動リフト装置
(51)【国際特許分類】
B66F 7/06 20060101AFI20240920BHJP
【FI】
B66F7/06 F
B66F7/06 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023042895
(22)【出願日】2023-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】000137960
【氏名又は名称】株式会社メイキコウ
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】塩谷 純一
(57)【要約】
【課題】ねじ軸の軸径を太くすることなく、テーブルを高揚程に昇降できる電動リフト装置を提供すること。
【解決手段】電動リフト装置1は、基台10と、基台10の上方に設けられるテーブル20を有する。基台10とテーブル20の間には、相互に連結される下Xリンク30と上Xリンク50が設けられる。相互に螺合する下ねじ軸61と下ナット62を備える下駆動部60が下Xリンク30に連結される。相互に螺合する上ねじ軸66と上ナット67を備える上駆動部65が上Xリンク50に連結される。下駆動部60と上駆動部65の間に歯車群70が設けられる。歯車群70に動力を与える電動モータ80が設けられる。歯車群70は、電動モータ80からの動力を下駆動部60に第1方向の回転力を伝える。歯車群70は、同時に上駆動部65に第1方向と反対の第2方向の回転力を伝える。下駆動部60と上駆動部65によってテーブル20が昇降動される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動リフト装置であって、
基台と、
前記基台の上方に設けられるテーブルと、
前記基台と前記テーブルの間にて相互に連結される下Xリンクと上Xリンクと、
前記下Xリンクに連結されかつ相互に螺合する下ねじ軸と下ナットを備える下駆動部、
前記上Xリンクに連結されかつ相互に螺合する上ねじ軸と上ナットを備える上駆動部と、
前記下駆動部と前記上駆動部の間に設けられる歯車群と、
前記歯車群に動力を与える電動モータを有し、
前記歯車群は、前記電動モータからの前記動力を前記下駆動部に第1方向の回転力を伝え、同時に前記上駆動部に前記第1方向と反対の第2方向の回転力を伝え、前記下駆動部と前記上駆動部によって前記テーブルを昇降動させる電動リフト装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電動リフト装置であって、
前記歯車群は、前記電動モータによって回転する第1かさ歯車と、
前記第1かさ歯車と噛み合いかつ前記下ねじ軸に接合される下かさ歯車と、
前記第1かさ歯車と噛み合いかつ前記上ねじ軸に接合される上かさ歯車を有し、
前記下ナットが前記下Xリンクに連結され、
前記上ナットが前記上Xリンクに連結される、
あるいは
前記第1かさ歯車と噛み合いかつ前記下ナットに接合される下かさ歯車と、
前記第1かさ歯車と噛み合いかつ前記上ナットに接合される上かさ歯車を有し、
前記下ねじ軸が前記下Xリンクに連結され、
前記上ねじ軸が前記上Xリンクに連結される電動リフト装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の電動リフト装置であって、
前記基台と前記テーブルの間には、前記下Xリンクと前記上Xリンクを含む奇数のXリンクを有し、
前記Xリンクは、それぞれ第1アームと第2アームを相互に回転可能に連結する連結軸を有し、
前記連結軸の1つに前記歯車群のケースが回転可能に組み付けられる電動リフト装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動モータを利用してテーブルに載置した重量物等を昇降させる電動リフト装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電動リフト装置は、例えば特許文献1に開示されているように、基台と、基台の上方に設けられるテーブルを有する。基台とテーブルは、上下の2段に連結された構成のXリンクによって連結される。Xリンクは、それぞれ相互に回転可能に連結された左右アームを有する。左右アームの角度を駆動装置によって変えることで、Xリンクがテーブルを昇降させる。駆動装置は、電動モータにより回転するねじ軸と、ねじ軸が螺合されるナットを有する。ねじ軸の一端が回転部材、連結部材を介して下段のXリンクの左右アームに連結される。ナットは、回転部材を介して上段のXリンクの左右アームに連結される。電動モータによってねじ軸が回転し、ねじ軸に対してナットが移動する。これにより上下の左右アームの角度が変わる。その結果、2段のXリンクがテーブルを昇降させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、テーブルを高揚程に昇降させる場合、ナットの移動ストロークを大きく(長く)する必要があった。その際、圧縮負荷に耐え得るねじ軸の座屈長さに限界があるため、ねじ軸の軸径を太くする必要があった。そこで、ねじ軸の軸径を太くすることなく(ねじ軸の軸径が細いままでも)、テーブルを高揚程に昇降できる電動リフト装置が従来必要とされていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の1つの特徴によると、電動リフト装置は、基台と、基台の上方に設けられるテーブルを有する。基台とテーブルの間には、相互に連結される下Xリンクと上Xリンクが設けられる。相互に螺合する下ねじ軸と下ナットを備える下駆動部が下Xリンクに連結される。相互に螺合する上ねじ軸と上ナットを備える上駆動部が上Xリンクに連結される。下駆動部と上駆動部の間に歯車群が設けられる。歯車群に動力を与える電動モータが設けられる。歯車群は、電動モータからの動力を下駆動部に第1方向の回転力を伝える。歯車群は、同時に上駆動部に第1方向と反対の第2方向の回転力を伝える。下駆動部と上駆動部によってテーブルが昇降動される。
【0006】
そのため、電動モータを一方向または他方向に駆動させると、歯車群を介して下駆動部の下ねじ軸と上駆動部の上ねじ軸が逆方向に回転する。したがって、下ナットと上ナットが遠ざかるまたは近づくように移動する。このように駆動部を2つ(下駆動部、上駆動部)有するため、駆動部が1つの場合と比較するとナットの移動ストロークが2倍となる。したがって、ねじ軸の軸径を太くすることなく(ねじ軸の軸径が細いままでも)、ナットの移動ストロークを大きく確保できる。その結果、下Xリンクと上Xリンクが大きく伸縮するため、テーブルを高揚程に昇降できる。また、上下のねじ軸において、各外周面に形成されているねじ山の向きが同一のものを使用できる。例えば、上下のいずれのねじ軸も、外周面に右ねじが形成されている汎用品を使用できる。したがって、上下のねじ軸において、部品の共通化を図りつつ特注する必要がないため安価に調達できる。
【0007】
本開示の他の特徴によると、歯車群は、電動モータによって回転する第1かさ歯車を有する。第1かさ歯車と噛み合う下かさ歯車が下ねじ軸に接合される。第1かさ歯車と噛み合う上かさ歯車が上ねじ軸に接合される。下ナットが下Xリンクに連結される。上ナットが上Xリンクに連結される。あるいは、歯車群は、電動モータによって回転する第1かさ歯車を有する。第1かさ歯車と噛み合う下かさ歯車が下ナットに接合される。第1かさ歯車と噛み合う上かさ歯車が上ナットに接合される。下ねじ軸が下Xリンクに連結される。上ねじ軸が上Xリンクに連結される。
【0008】
そのため、3つの歯車(第1かさ歯車、下かさ歯車、上かさ歯車)、一対のねじ軸および一対のナットといった汎用の部材によって、テーブルを昇降できる。そしてこの構成によって、下駆動部と上駆動部に逆方向の軸回りの回転力が付与され、歯車群に上下のねじ軸の軸回りの反回転トルクが付与され難い。
【0009】
本開示の他の特徴によると、基台とテーブルの間には、下Xリンクと上Xリンクを含む奇数のXリンクが設けられる。Xリンクは、それぞれ第1アームと第2アームを相互に回転可能に連結する連結軸を有する。連結軸の1つに歯車群のケースが回転可能に組み付けられる。
【0010】
そのため、電動モータの動力がケースの歯車群に与えられても、一対のねじ軸の軸回りに歯車群のケースが回転することを防止できる。しかも歯車群は、連結軸を共通部材として組付けられる。また、上述したように歯車群に上下のねじ軸の軸回りの反回転トルクが付与され難い。したがって、連結軸の1つに歯車群のケースを回転可能に組み付ける部材(例えばブラケット)や連結軸の軸径の小型化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】手前側のXリンクを透過した状態の第1実施形態に係る電動リフト装置の正面図である。
【
図3】
図1の下駆動部、上駆動部、歯車群のケース内部の拡大図である。
【
図4】手前側のXリンクを透過した状態の第2実施形態に係る電動リフト装置の正面図である。
【
図5】第3実施形態に係る
図3に対応する駆動装置の部分断面拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の好ましい実施形態を図面を参照して下記に詳しく説明する。説明中の同じ参照番号は、重複する説明をしないが、同じ機能を有する同じ要素を意味する。以下の説明にあたって上下、前後、左右の方向は、各図に示す上下、前後、左右の方向である。
【0013】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態を
図1~3にしたがって説明する。
図1~2に示すように、第1実施形態の電動リフト装置1は、基台10と、基台10の上方に設けられるテーブル20を有する。基台10は、左右一対の縦フレーム11と、前後一対の横フレーム12を備えた矩形枠状のフレームである。横フレーム12は、縦断面が略C形状となっている。横フレーム12の略C形状の内面は、左右方向に沿うガイドレール13となっている。ガイドレール13は、下Xリンク30の連結バー31aの両端(前後端)のローラ31bが左右方向に転がるように案内する。
【0014】
図1に示すように、前後一対の横フレーム12の略中間位置を橋渡す補助フレーム11aが設けられている。右の縦フレーム11と補助フレーム11aを橋渡す薄板状のベース11bが設けられている。
図2に示すように、ベース11bの前縁には、左右方向に沿う取付レール11cが設けられている。取付レール11cには、検出スイッチ11dが取り付けられている。検出スイッチ11dは、テーブル20の昇降動が上端位置に到達したときの下Xリンク30の連結バー31aを検出する。このように検出スイッチ11dは、取付レール11cを介してベース11bに取り付けられている。そのため、検出スイッチ11dの取り付け位置の微調整も容易に対応可能である。
【0015】
図1に示すように、横フレーム12の略中間位置には、上限ストッパ13aが設けられている。上限ストッパ13aは、テーブル20の昇降動が上端位置を超えて上昇した場合でも、ローラ31bの転がりを物理的(機械的に)に停める規制部品である。基台10の四隅には、上方に向けて突出する載置棒14が設けられている。
図1の想像線で示すように、4本の載置棒14は、下端位置に到達したテーブル20を下側から支持する。基台10は、フロアFに設置されている。
【0016】
図1~2に示すように、テーブル20は、載置物(図示しない)を載せ昇降可能なテーブル本体21と、テーブル本体21を支持する矩形枠状のフレームを有する。フレームは、左右一対の縦フレーム22と、前後一対の横フレーム23を備えている。横フレーム23は、縦断面が略C形状となっている。横フレーム23の略C形状の内面は、左右方向に沿うガイドレール24となっている。ガイドレール24は、上Xリンク50の連結バー52bの両端(前後端)のローラ52cが左右方向に沿って転がるように案内する。
【0017】
図1~2に示すように、基台10とテーブル20の間には、相互に連結される下Xリンク30と中Xリンク40と上Xリンク50が設けられている。すなわち、基台10とテーブル20の間には、下Xリンク30と上Xリンク50を含む3つ(奇数)のXリンクを有する。下Xリンク30は、前後一対の内アーム31と外アーム32を備えている。内アーム31と外アーム32の中間位置は、連結軸33を介して相互に回転可能に連結されている。前後一対の内アーム31の下端は、連結バー31aが橋渡されている。
【0018】
図1~2に示すように、連結バー31aの両端(前後端)には、連結バー31aに回転可能に連結されたローラ31bが設けられている。ローラ31bは、基台10の横フレーム12の内面(ガイドレール13)を左右方向に沿って転がり可能である。前後一対の内アーム31の上部は、回転可能に支持されたナックル34が橋渡されている。ナックル34は、検出スイッチ34aを備えている。前後一対の外アーム32の下端は、それぞれ支軸32aを介して基台10の横フレーム12の左端に上下に傾動可能に支持されている。
【0019】
図1~2に示すように、中Xリンク40は、前後一対の内アーム41と外アーム42を備えている。内アーム41と外アーム42の中間位置は、連結軸43を介して相互に回転可能に連結されている。前後一対の内アーム41の下端は、それぞれ支軸41aを介して下Xリンク30の外アーム32の上端に上下に傾動可能に支持されている。前後一対の外アーム42の下端は、それぞれ支軸42aを介して下Xリンク30の内アーム31の上端に上下に傾動可能に支持されている。
【0020】
図1~2に示すように、上Xリンク50は、前後一対の内アーム51と外アーム52を備えている。内アーム51と外アーム52の中間位置は、連結軸53を介して相互に回転可能に連結されている。前後一対の内アーム51の下端は、それぞれ支軸51aを介して中Xリンク40の外アーム42の上端に上下に傾動可能に支持されている。前後一対の内アーム51の下部は、回転可能に支持されたナックル54が橋渡されている。ナックル54は、検出スイッチ54aを備えている。
【0021】
図1~2に示すように、前後一対の内アーム51の上端は、それぞれ支軸51bを介してテーブル20の横フレーム23の左端に上下に傾動可能に支持されている。前後一対の外アーム52の下端は、それぞれ支軸52aを介して中Xリンク40の内アーム41の上端に上下に傾動可能に支持されている。前後一対の外アーム52の上端は、連結バー52bが橋渡されている。連結バー52bの両端(前後端)には、連結バー52bに回転可能に連結されたローラ52cが設けられている。ローラ52cは、テーブル20の横フレーム23の内面(ガイドレール24)を左右方向に沿って転がり可能である。
【0022】
下Xリンク30、中Xリンク40、上Xリンク50の各内アーム31、41、51が、特許請求の範囲に記載の第1アームに相当する。下Xリンク30、中Xリンク40、上Xリンク50の各外アーム32、42、52が、特許請求の範囲に記載の第2アームに相当する。
【0023】
図1~2に示すように、電動リフト装置1は、下駆動部60を有する。下駆動部60は、相互に螺合する下ボールねじ61と下ボールナット62を備えている。下ボールねじ61は、例えば、外周面に右ねじが形成されている汎用品である。
図3に示すように、下ボールねじ61の基端側は、後述する歯車群70のケース71に組み付けられた下ベアリング61a、61bに支持されている。下ボールナット62は、凸部63aを有する下フランジ部材63を備えている。下フランジ部材63には、一対のガイドボルト64が抜け防止の状態で貫通している。
【0024】
図1~2に示すように、下フランジ部材63の凸部63aは、下Xリンク30のナックル34の検出スイッチ34aにより検出されるストライカ63bを備えている。一対のガイドボルト64は、ナックル34に螺合されている。これにより、一対のガイドボルト64によりガイドされた状態でナックル34に対して下フランジ部材63がスライドする。このようにして、下駆動部60は下Xリンク30に連結されている。
【0025】
図1~2に示すように、電動リフト装置1は、上駆動部65を有する。上駆動部65は、相互に螺合する上ボールねじ66と上ボールナット67を備えている。上ボールねじ66も、下ボールねじ61と同様に、例えば、外周面に右ねじが形成されている汎用品である。上ボールねじ66、上ボールナット67は、上述した下ボールねじ61、下ボールナット62と対を成している(一対である)。上ボールねじ66の基端側は、歯車群70のケース71に組み付けられた上ベアリング66a、66bに支持されている。上ボールナット67は、凸部68aを有する上フランジ部材68を備えている。上フランジ部材68には、一対のガイドボルト69が抜け防止の状態で貫通している。
【0026】
図1~2に示すように、上フランジ部材68の凸部68aは、上Xリンク50のナックル54の検出スイッチ54aにより検出されるストライカ68bを備えている。一対のガイドボルト69は、ナックル54に螺合されている。これにより、一対のガイドボルト69によりガイドされた状態でナックル54に対して上フランジ部材68がスライドする。このようにして、上駆動部65は上Xリンク50に連結されている。
【0027】
図1~2に示すように、電動リフト装置1は、下駆動部60と上駆動部65の間に歯車群70を有する。歯車群70は、第1かさ歯車72と、第1かさ歯車72に軸方向が直交するように噛み合う下かさ歯車73と、第1かさ歯車72に軸方向が直交するように噛み合う上かさ歯車74を有する。下かさ歯車73には、下ボールねじ61の基端が嵌め合わされた状態となっている(接合されている)。すなわち、下かさ歯車73と下ボールねじ61は、同一軸線上で一体化されている。
【0028】
図1~2に示すように、上かさ歯車74には、上ボールねじ66の基端が嵌め合わされた状態となっている(接合されている)。すなわち、上かさ歯車74と上ボールねじ66は、同一軸線上で一体化されている。これにより、下ボールねじ61と上ボールねじ66は、同一軸線上に配置される。第1かさ歯車72と下かさ歯車73と上かさ歯車74は、ケース71に収納されている。ケース71は、逆U字状のブラケット75に支持されている。ケース71を支持するブラケット75の両端は、それぞれが中Xリンク40の連結軸43に回転可能に組み付けられている。なお、ブラケット75の形状は、逆U字状に限定されることなく、L字状、コ字状等、各種の形状が考えられる。
【0029】
図3に示すように、電動リフト装置1は、歯車群70に動力を与える電動モータとしてのギヤモータ80を有する。ギヤモータ80は、図示しないブレーキを有するブレーキ付モータである。ギヤモータ80は、作業者90によるスイッチ(図示しない)の操作によって起動、停止される。ギヤモータ80は、歯車群70のケース71に支持されている。ギヤモータ80の出力軸81は、第1かさ歯車72に嵌め合わされた状態となっている(接合されている)。
【0030】
図1、3を参照して、電動リフト装置1の動作を説明する。テーブル20が下端位置(
図1において、想像線で示す位置)にあるときから説明する。テーブル20を上昇させる場合、作業者90は、ギヤモータ80を上昇側に起動させるスイッチの操作を行う。すると、ギヤモータ80の出力軸81に接合された第1かさ歯車72が一方向(
図3において、矢印方向であり、出力軸81を軸端側(前側)から見て時計回り方向)に回転する。
【0031】
これにより、第1かさ歯車72に噛み合う下かさ歯車73も一方向(
図3において、矢印方向であり、下ボールねじ61を軸端側(上側)から見て反時計回り方向)に回転するため、下ボールねじ61が一方向に回転して下ボールナット62が下ボールねじ61に対して下側(
図3において、矢印側)へ移動する(下ボールナット62が伸長する)。そのため、下フランジ部材63の凸部63aが下Xリンク30のナックル34を押し当てる。したがって、この押し当て力をナックル34にしっかり伝達できる。
【0032】
これと同時に、第1かさ歯車72に噛み合う上かさ歯車74も他方向(
図3において、矢印方向であり、上ボールねじ66を軸端側(下側)から見て反時計回り方向)に回転するため、上ボールねじ66が他方向に回転して上ボールナット67が上ボールねじ66に対して上側(
図3において、矢印側)へ移動する(上ボールナット67が伸長する)。すなわち、下ボールナット62と上ボールナット67が遠ざかるように移動する。そのため、上フランジ部材68の凸部68aが上Xリンク50のナックル54を押し当てる。したがって、この押し当て力をナックル54にしっかり伝達できる。このように下ボールねじ61と上ボールねじ66が、逆方向に回転するため、下ボールねじ61と上ボールねじ66に形成されているねじ山の向きを同一にできる(この場合、ねじ山の向きを右ねじに共通できる)。
【0033】
このように両ナックル34、54を押し当てながら両ボールナット62、67が移動する。そのため、下Xリンク30、中Xリンク40、上Xリンク50の各アーム31、32、42、42、51、52がそれぞれ起立側へ傾動して下Xリンク30、中Xリンク40、上Xリンク50が上方へ伸長し、これによりテーブル20が基台10に対して平行に上昇する。
【0034】
これらの記載が、「前記歯車群は、前記電動モータからの前記動力を前記下駆動部に第1方向の回転力を伝え、同時に前記上駆動部に前記第1方向と反対の第2方向の回転力を伝え、前記下駆動部と前記上駆動部によって前記テーブルを昇降動させる」に相当する。
【0035】
その際、下Xリンク30の両ローラ31bが基台10の横フレーム12の内面(ガイドレール13)に案内される。これと同時に、上Xリンク50の両ローラ52cがテーブル20の横フレーム23の内面(ガイドレール24)に案内される。そのため、下Xリンク30、中Xリンク40、上Xリンク50の上方への伸長動作がスムーズに実施される。やがて、テーブル20が作業者90の所望する高さ位置に到達すると、作業者90はギヤモータ80を停止させるスイッチの操作を行う。
【0036】
テーブル20の上昇状態は、ギヤモータ80がその内蔵のブレーキにより回転不能にロックされることにより維持される。なお、上昇したテーブル20が上端位置(
図1において、実線で示す位置)に到達すると、基台10の検出スイッチ11dが下Xリンク30の連結バー31aを検出する。そのため、ギヤモータ80を停止させるスイッチの操作を行わなくても、ギヤモータ80が停止する。
【0037】
一方、テーブル20を下降させる場合、作業者90は、ギヤモータ80を下降側に起動させる(ギヤモータ80を逆回転させる)スイッチの操作を行う。すると、ギヤモータ80の出力軸81に接合された第1かさ歯車72が他方向に回転する。これにより、第1かさ歯車72に噛み合う下かさ歯車73も他方向に回転するため、下ボールねじ61が他方向に回転して下ボールナット62が下ボールねじ61に対して上側へ移動する(下ボールナット62が収縮する)。
【0038】
これと同時に、第1かさ歯車72に噛み合う上かさ歯車74も一方向に回転するため、上ボールねじ66が一方向に回転して上ボールナット67が上ボールねじ66に対して下側へ移動する(上ボールナット67が収縮する)。すなわち、下ボールナット62と上ボールナット67が近づくように移動する。これらの移動により、下Xリンク30、中Xリンク40、上Xリンク50の各アーム31、32、42、42、51、52がそれぞれギヤモータ80の逆回転に追従して倒伏側へ傾動して下Xリンク30、中Xリンク40、上Xリンク50が下方へ収縮し、これによりテーブル20が基台10に対して平行に下降する。
【0039】
その際、両ナックル34、54が両フランジ部材63、68の各凸部63a、68aを押し当てた状態となっている。また、その際、下Xリンク30の両ローラ31bが基台10のガイドレール13に案内される。これと同時に、上Xリンク50の両ローラ52cがテーブル20のガイドレール24に案内される。そのため、下Xリンク30、中Xリンク40、上Xリンク50の下方への収縮動作がスムーズに実施される。
【0040】
やがて、テーブル20が作業者90の所望する高さ位置に到達すると、作業者90はギヤモータ80を停止させるスイッチの操作を行う。テーブル20の下降状態は、ギヤモータ80がその内蔵のブレーキにより回転不能にロックされることにより維持される。なお、下降したテーブル20が下端位置(
図1において、想像線で示す位置)に到達すると、基台10の4本の載置棒14に載せられる。
【0041】
すると、これ以上、両ボールナット62、67が収縮してもテーブル20が載置棒14に干渉するため(下Xリンク30、中Xリンク40、上Xリンク50が下方へ収縮動作しないため)、両フランジ部材63、68の各凸部63a、68aに対する両ナックル34、54の押し当て状態が解消する。そのため、両ナックル34、54の各検出スイッチ34a、54aにおける両フランジ部材63、68の各ストライカ63b、68bの検出が解消する。したがって、ギヤモータ80を停止させるスイッチの操作を行わなくても、ギヤモータ80が停止する。
【0042】
以上説明したように第1実施形態の電動リフト装置1によれば、歯車群70は、ギヤモータ80からの動力を下駆動部60に第1方向の回転力を伝え、同時に上駆動部65に第1方向と反対の第2方向の回転力を伝え、下駆動部60と上駆動部65によってテーブル20を昇降動させる。そのため、ギヤモータ80を一方向または他方向に駆動させると、歯車群70を介して下駆動部60の下ボールねじ61と上駆動部65の上ボールねじ66が逆方向に回転する。したがって、下ボールナット62と上ボールナット67が遠ざかるまたは近づくように移動する。このように駆動部を2つ(下駆動部60、上駆動部65)有するため、駆動部が1つの場合と比較するとボールナットの移動ストロークが2倍となる。したがって、ボールねじの軸径を太くすることなく(ボールねじの軸径が細いままでも)、ボールナットの移動ストロークを大きく確保できる。その結果、下Xリンク30、中Xリンク40、上Xリンク50が大きく伸縮するため、テーブル20を高揚程に昇降できる。
【0043】
また、上下のボールねじ61、66において、各外周面に形成されているねじ山の向きが同一のものを使用できる。例えば、上下のいずれのボールねじ61、66も、外周面に右ねじが形成されている汎用品を使用できる。したがって、上下のボールねじ61、66において、部品の共通化を図りつつ特注する必要がないため安価に調達できる。
【0044】
また、この電動リフト装置1によれば、歯車群70は、ギヤモータ80によって回転する第1かさ歯車72と、第1かさ歯車72と噛み合いかつ下ボールねじ61に接合される下かさ歯車73と、第1かさ歯車72と噛み合いかつ上ボールねじ66に接合される上かさ歯車74を有する。下ボールナット62(下駆動部60)が下Xリンク30に連結されている。上ボールナット67(上駆動部65)が上Xリンク50に連結されている。そのため、3つの歯車(第1かさ歯車72、下かさ歯車73、上かさ歯車74)、一対のボールねじ61、66および一対のボールナット62、67といった汎用の部材によって、テーブル20を昇降できる。そしてこの構成によって、下駆動部60と上駆動部65に逆方向の軸回りの回転力が付与され、歯車群70に上下のボールねじ61、66の軸回りの反回転トルクが付与され難い。
【0045】
また、この電動リフト装置1によれば、基台10とテーブル20の間には、下Xリンク30と上Xリンク50を含む3つ(奇数)のXリンクを有する。各Xリンク30、40、50は、それぞれ内アーム31、41、51と外アーム32、42、52を相互に回転可能に連結する連結軸33、43、53を有する。中Xリンク40の連結軸43に歯車群70のケース71が回転可能に組み付けられる。そのため、ギヤモータ80の動力がケース71の歯車群70に与えられても、一対のボールねじ61、66の軸回りに歯車群70のケース71が回転することを防止できる。しかも歯車群70は、連結軸43を共通部材として組付けられる。また、上述したように、歯車群70に上下のボールねじ61、66の軸回りの反回転トルクが付与され難い。したがって、ケース71の回転防止のための回り止め用のブラケット75や連結軸43の軸径の小型化を図ることができる。
【0046】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態を
図4にしたがって説明する。
図4に示すように、第2実施形態の電動リフト装置101も、電動リフト装置1と同様に、基台10と、基台10の上方に設けられるテーブル20を有する。
図4に示すように、電動リフト装置101は、下駆動部60と上駆動部65を有する。また、電動リフト装置101は、下駆動部60と上駆動部65の間に歯車群70と、歯車群70に動力を与える電動モータとしてのギヤモータ80を有する。
【0047】
図4に示すように、基台10とテーブル20の間には、相互に連結される下Xリンク30と上Xリンク50が設けられている。前後一対の内アーム51の下端は、それぞれ支軸151aを介して下Xリンク30の内アーム31の上端に上下に傾動可能に支持されている。前後一対の外アーム52の下端は、それぞれ支軸152aを介して下Xリンク30の外アーム32の上端に上下に傾動可能に支持されている。
【0048】
以上説明したように第2実施形態の電動リフト装置101によれば、電動リフト装置1と同様に、歯車群70は、ギヤモータ80からの動力を下駆動部60に第1方向の回転力を伝え、同時に上駆動部65に第1方向と反対の第2方向の回転力を伝え、下駆動部60と上駆動部65によってテーブル20を昇降動させる。そのため、電動リフト装置101によれば、電動リフト装置1と同様の作用効果を得ることができる。すなわち、ボールねじの軸径を太くすることなく(ボールねじの軸径が細いままでも)、ボールナットの移動ストロークを大きく確保できる。その結果、下Xリンク30、上Xリンク50が大きく伸縮するため、テーブル20を高揚程に昇降できる。
【0049】
(第3実施形態)
本発明の第3実施形態を
図5にしたがって説明する。
図5に示すように、第3実施形態の電動リフト装置201では、歯車群270の形態が相違する。詳しくは、第1かさ歯車72に接合されている歯車群70への入力軸181は、第1かさ歯車72を貫通した状態となっている。この貫通した状態の出力軸81は、第1かさ歯車72を境に対向するように設けられたベアリング176、177によって支持されている。そのため、大容量の中空ギヤモータ80であっても適用できる。したがって、大型の下Xリンク30、中Xリンク40、上Xリンク50にも適用できるため、テーブル20をより高揚程に昇降できる。
【0050】
本発明の形態を上記構造を参照して説明したが、本発明の目的を逸脱せずに多くの交代、改良、変更が可能であることは当業者であれば明らかである。したがって本発明の形態は、添付された請求項の精神と目的を逸脱しない全ての交代、改良、変更を含み得る。例えば本発明の形態は、前記特別な構造に限定されず、下記のように変更が可能である。
【0051】
下ねじ軸と下ナットおよび上ねじ軸と上ナットの例として、下ボールねじ61と下ボールナット62および上ボールねじ66と上ボールナット67を説明した。これに替えて、ボールの無い下ねじ軸と下ナットおよびボールの無い上ねじ軸と上ナットでも構わない。
【0052】
また、基台10のベース11bに設けた検出スイッチ11dが下Xリンク30の連結バー31aを検出することでテーブル20の上端位置の到達を検出する形態を説明した。すなわち、基台10側でテーブル20の上端位置の到達を検出する形態を説明した。これに替えて、テーブル20側でテーブル20の上端位置の到達を検出する形態でも構わない。その場合、上述した説明に対して上下対称となるように、テーブル20に検出スイッチ11dを設ける。そして、検出スイッチ11dが上Xリンク50の連結バー52bを検出することでテーブル20の上端位置の到達を検出する。
【0053】
また、テーブル20の下端位置の到達をテーブル20の上端位置の到達と同様に検出してもよい。その場合、基台10のベース11bの取付レール11cに下端位置の到達の検出用の検出スイッチ11dを設けることが考えられる。もちろん、テーブル20側でテーブル20の下端位置の到達を検出する形態でも構わない。
【0054】
また、歯車群70は、ギヤモータ80によって回転する第1かさ歯車72と、第1かさ歯車72と噛み合いかつ下ボールねじ61に接合される下かさ歯車73と、第1かさ歯車72と噛み合いかつ上ボールねじ66に接合される上かさ歯車74を有する。そして、下ボールナット62が下Xリンク30に連結され、上ボールナット67が上Xリンク50に連結される形態を説明した。これに替えて、歯車群70は、ギヤモータ80によって回転する第1かさ歯車72と、第1かさ歯車72と噛み合いかつ下ボールナット62に接合される下かさ歯車73と、第1かさ歯車72と噛み合いかつ上ボールナット67に接合される上かさ歯車73を有する。そして、下ボールねじ61が下Xリンク30に連結され、上ボールねじ66が上Xリンク50に連結される形態でも構わない。すなわち、下かさ歯車73と下ボールナット62は、同一軸線上で一体化されており、上かさ歯車74と上ボールナット67は、同一軸線上で一体化されている形態でも構わない。
【0055】
また、基台10とテーブル20の間には、相互に連結される下Xリンク30と中Xリンク40と上Xリンク50が設けられている形態を説明した。また、基台10とテーブル20の間には、相互に連結される下Xリンク30と上Xリンク50が設けられている形態を説明した。すなわち、基台10とテーブル20の間には、Xリンクが3つまたは2つ設けられている形態を説明した。これに替えて、基台10とテーブル20の間には、Xリンクが4つ以上設けられている形態でも構わない。
【0056】
また、ケース71を支持するブラケット75の両端は、それぞれが中Xリンク40の連結軸43に回転可能に組み付けられている形態を説明した。これに替えて、ケース71を支持するブラケット75の両端は、それぞれが下Xリンク30の連結軸33または上Xリンク50の連結軸53に回転可能に組み付けられている形態でも構わない。
【0057】
また、上下のボールねじ61、66は、それぞれ外周面に右ねじが形成されている汎用品の形態を説明した。これに替えて、上下のボールねじ61、66は、それぞれ外周面に左ねじが形成されている特注品でも構わない。
【符号の説明】
【0058】
1 電動リフト装置
10 基台
20 テーブル
30 下Xリンク
50 上Xリンク
60 下駆動部
61 下ボールねじ(下ねじ軸)
62 下ボールナット(下ナット)
65 上駆動部
66 上ボールねじ(上ねじ軸)
67 上ボールナット(上ナット)
70 歯車群
80 ギヤモータ(電動モータ)