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特開2024-132210足甲プロテクタ及び足甲プロテクタを備えた安全靴
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024132210
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】足甲プロテクタ及び足甲プロテクタを備えた安全靴
(51)【国際特許分類】
   A43B 7/32 20060101AFI20240920BHJP
   A43B 23/00 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
A43B7/32
A43B23/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023042898
(22)【出願日】2023-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】391009372
【氏名又は名称】ミドリ安全株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】天野 浩昭
【テーマコード(参考)】
4F050
【Fターム(参考)】
4F050AA01
4F050BC03
4F050FA27
4F050HA05
4F050HA55
4F050JA23
(57)【要約】
【課題】着用者が、つま先部で安全靴が屈曲する姿勢をとったとしても、着用者に対する干渉を緩和できる足甲プロテクタ、及び、足甲プロテクタを備えた安全靴を提供する。
【解決手段】足甲プロテクタ9は、足甲プロテクタ本体41と、支持構造(足甲プロテクタ支持部37)と、締結部材固定部(帯状部材43)と、付勢部BI(延長部61)を備えている。支持構造は、足甲プロテクタ本体41の先端部45Aを支持し、足甲プロテクタ本体41を、先端部45Aを中心にして円弧状に移動可能に支持する。締結部材固定部は、足甲プロテクタ本体41の裏面45Dに設けられ、足甲プロテクタ本体41に沿って延び、締結部材(靴紐33)を通す環状部67を形成する。付勢部BIは、足甲プロテクタ本体41の裏面45Dと甲部ISの間に設けられ、足甲プロテクタ本体41を、安全靴1から離す方向に付勢する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
着用者のつま先から足首に向かう方向に延びて安全靴の甲部を覆う足甲プロテクタ本体と、
前記安全靴のつま先部に設けられ、前記足甲プロテクタ本体の先端部を支持し、前記足甲プロテクタ本体を、前記先端部を中心にして円弧状に移動可能に支持する支持構造と、
前記安全靴の前記甲部と対向する前記足甲プロテクタ本体の裏面に設けられ、前記足甲プロテクタ本体に沿って延び、且つ、前記安全靴の幅方向に開放した環状部を形成し、前記環状部に前記安全靴の前記甲部を締める締結部材を通すことで、前記足甲プロテクタ本体を前記安全靴の前記甲部に固定する締結部材固定部と、
前記足甲プロテクタ本体の前記裏面と前記安全靴の前記甲部の間に設けられ、前記足甲プロテクタ本体を、前記安全靴から離す方向に付勢する付勢部と、を備える
ことを特徴とする足甲プロテクタ。
【請求項2】
前記締結部材固定部は、一端部が前記足甲プロテクタ本体の先端部側に固定され、他端部が前記足甲プロテクタ本体の後端部側に固定され、前記足甲プロテクタ本体との間に前記環状部を形成する帯状部材から構成されており、
前記環状部は、前記足甲プロテクタ本体の裏面と前記帯状部材の間に形成される隙間である
ことを特徴とする請求項1に記載の足甲プロテクタ。
【請求項3】
前記帯状部材は、帯状部材本体と、前記帯状部材本体の上に形成された前記帯状部材本体よりも摩擦係数の小さい低摩擦層とを有しており、
前記帯状部材は、前記低摩擦層を前記足甲プロテクタ本体の裏面と対向させて前記足甲プロテクタ本体に固定されている
ことを特徴とする請求項2に記載の足甲プロテクタ。
【請求項4】
前記帯状部材の前記一端は、前記足甲プロテクタ本体に対する固定位置よりも前記着用者のつま先側に延びる延長部を有しており、
前記付勢部は、前記安全靴側に折り返されて自由端部が前記安全靴の前記甲部に接触する前記延長部で構成されている
ことを特徴とする請求項2に記載の足甲プロテクタ。
【請求項5】
前記帯状部材は、反発性を有する
ことを特徴とする請求項4に記載の足甲プロテクタ。
【請求項6】
前記帯状部材または前記締結部材は、伸縮性を有する素材からなる
ことを特徴とする請求項2に記載の足甲プロテクタ。
【請求項7】
甲部を覆う足甲プロテクタを備え、前記甲部が締結部材で締められる安全靴であって、
前記足甲プロテクタは、
着用者のつま先から足首に向かう方向に延びて前記甲部を覆う足甲プロテクタ本体と、
つま先部に設けられ、前記足甲プロテクタ本体の先端部を支持し、前記足甲プロテクタ本体を、前記先端部を中心にして円弧状に移動可能に支持する支持構造と、
前記甲部と対向する前記足甲プロテクタ本体の裏面に設けられ、前記足甲プロテクタ本体に沿って延び、且つ、幅方向に開放した環状部を形成し、前記環状部に前記締結部材を通すことで、前記足甲プロテクタ本体を前記甲部に固定する締結部材固定部と、
前記足甲プロテクタ本体の前記裏面と前記甲部の間に設けられ、前記足甲プロテクタ本体を、前記甲部から離す方向に付勢する付勢部と、を備える
ことを特徴とする足甲プロテクタを備えた安全靴。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、足甲プロテクタ及び足甲プロテクタを備えた安全靴に関する。
【背景技術】
【0002】
着用者の足の甲への落下物により、着用者が怪我をすることを防ぐため、例えば、特許文献1及び特許文献2のような、安全靴の甲部分に固定される足甲プロテクタ、及び、足甲プロテクタを備えた安全靴が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開昭57-178504号公報
【特許文献2】特開平9-289902号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の足甲プロテクタは、足甲プロテクタ本体(5)と、帯体(6)と、帯体を足甲プロテクタ本体に留める留め具(7,8)とを備えている。足甲プロテクタ本体と帯体の間に形成される隙間に安全靴の靴紐を通して、安全靴に対して足甲プロテクタ本体を固定している。
【0005】
この構造の場合、着用者が、つま先部で安全靴が屈曲する姿勢(例えば、着用者がつま先を曲げて踵を上げてしゃがんだ姿勢やつま先立ちの姿勢)をとろうとすると、足甲プロテクタ本体の後端部が着用者の足に当たり、着用者が不快に感じたり、足を痛める原因になることがある。
【0006】
特許文献2に記載の足甲プロテクタは、足甲プロテクタ本体(9)と、固定構造(5)と、靴紐取付部(6)とを備えている。足甲プロテクタ本体(9)は、先端部が固定構造を介して安全靴のつま先に固定され、後端部が安全靴の足首部分に靴紐で固定されている。固定構造は、前後方向にスライドできる余裕をもたせた屈曲部を有している。着用者が、つま先部で安全靴が屈曲する姿勢をとると、足甲プロテクタ本体の後端部が着用者の足首に押され、足甲プロテクタ本体が前方向にスライドする。
【0007】
しかしながら、特許文献2に記載の足甲プロテクタの場合でも、足甲プロテクタ本体の後端部が着用者の足に当たることには変わりがなく、また、足甲プロテクタ本体が前方向にスライドできる距離にも限りがある。そのため、足甲プロテクタ本体が着用者の足に当たり、着用者が不快に感じたり、足を痛める原因になることがある。
【0008】
本発明の目的は、着用者が、つま先部で安全靴が屈曲する姿勢をとったとしても、着用者に対する干渉を緩和できる足甲プロテクタ、及び、足甲プロテクタを備えた安全靴を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するために、本発明の足甲プロテクタは、着用者のつま先から足首に向かう方向に延びて安全靴の甲部を覆う足甲プロテクタ本体と、前記安全靴のつま先部に設けられ、前記足甲プロテクタ本体の先端部を支持し、前記足甲プロテクタ本体を、前記先端部を中心にして円弧状に移動可能に支持する支持構造と、前記安全靴の前記甲部と対向する前記足甲プロテクタ本体の裏面に設けられ、前記足甲プロテクタ本体に沿って延び、且つ、前記安全靴の幅方向に開放した環状部を形成し、前記環状部に前記安全靴の前記甲部を締める締結部材を通すことで、前記足甲プロテクタ本体を前記安全靴の前記甲部に固定する締結部材固定部と、前記足甲プロテクタ本体の前記裏面と前記安全靴の前記甲部の間に設けられ、前記足甲プロテクタ本体を、前記安全靴から離す方向に付勢する付勢部と、を備える。
【0010】
また、本発明の足甲プロテクタを備えた安全靴は、甲部を覆う足甲プロテクタを備え、前記甲部が締結部材で締められる安全靴であって、前記足甲プロテクタは、着用者のつま先から足首に向かう方向に延びて前記甲部を覆う足甲プロテクタ本体と、つま先部に設けられ、前記足甲プロテクタ本体の先端部を支持し、前記足甲プロテクタ本体を、前記先端部を中心にして円弧状に移動可能に支持する支持構造と、前記甲部と対向する前記足甲プロテクタ本体の裏面に設けられ、前記足甲プロテクタ本体に沿って延び、且つ、幅方向に開放した環状部を形成し、前記環状部に前記締結部材を通すことで、前記足甲プロテクタ本体を前記甲部に固定する締結部材固定部と、前記足甲プロテクタ本体の前記裏面と前記甲部の間に設けられ、前記足甲プロテクタ本体を、前記甲部から離す方向に付勢する付勢部と、を備える。
【発明の効果】
【0011】
これにより、着用者が、つま先部で安全靴が屈曲する姿勢をとったとしても、足甲プロテクタの足に対する干渉を緩和できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本実施の形態の一例である安全靴(左足用)の側面図である。
図2図1の安全靴の足甲プロテクタ部分を断面にした部分断面図である。
図3】安全靴の靴紐を外し、足甲プロテクタを起こした状態を示す斜視図である。
図4図2の足甲プロテクタ部分の拡大図である。
図5】帯状部材の側面図(模式図)である。
図6】着用者が、安全靴を履いて、つま先部で安全靴が屈曲する姿勢をとった状態を示す側面図である。
図7図6の安全靴の足甲プロテクタ部分を断面にした部分断面図である。
図8】第2の実施の形態の一例である安全靴(左足用)の側面図である。
図9図8の安全靴の足甲プロテクタ部分を断面にした部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る足甲プロテクタ及び足甲プロテクタを備えた安全靴の実施形態について図面を参照して説明する。
【0014】
図1は、本実施の形態の一例である安全靴(左足用)の側面図であり、図2は、図1の安全靴の足甲プロテクタ部分を断面にした部分断面図であり、図3は、安全靴の靴紐を外し、足甲プロテクタを起こした状態を示す斜視図であり、図4は、図2の足甲プロテクタ部分の拡大図であり、図5は、帯状部材の側面図(模式図)である。
【0015】
図1乃至図3に示すように、本実施の形態の安全靴1は、短靴紐タイプの安全靴である。安全靴1は、JIS(日本産業標準)規格であるJIS T 8101:2020に準拠した安全靴1である。すなわち、安全靴1は、耐衝撃性等の性能を満たした上で、足甲プロテクタが、「安全靴を損傷しない限り取り出せないような方法で取り付け」られた安全靴である(6.2.6.1 足甲プロテクタの構造)。安全靴1は、左右で1セットであるが、左右対称の同じ構造を有しているため、以下では、左足用の安全靴1について説明し、右足用のものについては、説明を省略する。
【0016】
安全靴1においては、図1乃至図3に示すように、つま先(前方)から踵(後方)まで延びる靴の長手方向を前後方向X、安全靴1の幅方向を幅方向Y、靴底3を下方とし、前後方向X及び幅方向Yと直交する方向を上下方向Zと定義する。
【0017】
安全靴1は、靴底3と、甲被5と、つま先補強材7と、足甲プロテクタ9とを備えている。
【0018】
<靴底>
靴底3は、クッション層となるミッドソール11と、接地面を構成するアウトソール13とから構成されている。ミッドソール11及びアウトソール13は、それぞれ硬度が異なるゴムやウレタンによって形成されている。
【0019】
<甲被>
甲被5は、天然皮革や合成皮革等の皮革から形成されており、甲被前側部15と、甲被後側部17とから構成されている。甲被前側部15は、先革とも呼ばれる部分であり、つま先部19と、甲被中央部21と、べろ部23とを有している。甲被後側部17は、腰革とも呼ばれる部分であり、一対のフラップ部25,25´と、踵部27とを有している。
【0020】
なお、本明細書では、甲被前側部15や甲被後側部17を特に区別せず、安全靴1の着用者の足の甲を覆う範囲を「甲部(IS)」と言う(図2参照)。具体的には、甲部ISは、つま先部19、甲被中央部21、べろ部23及び一対のフラップ部25,25´に跨る範囲のことである。
【0021】
つま先部19は、着用者のつま先の上部及び側方部を覆う部分である。つま先部19には、先端部分が閉じたカップ状の硬質の先芯29(図2には破線で示してある)が内蔵されており、着用者のつま先を保護するようになっている。図3に示すように、甲被中央部21は、着用者の甲(特に側方部)を覆う部分である。べろ部23は、一対のフラップ部25,25´の間に位置し、着用者の甲(特に上部)を覆う部分である。
【0022】
図3に示すように、一対のフラップ部25,25´は、べろ部23を挟んで、対向した位置に配置されている。フラップ部25の上端部には、はとめ31(第1はとめ31A~第4はとめ31D)が設けられている。また、フラップ部25´の上端部には、はとめ31´(第1はとめ31A´~第4はとめ31D´)が設けられている。安全靴1では、はとめ31及びはとめ31´に靴紐(締結部材)33を通して締めることで、一対のフラップ部25,25´の開き具合を調整し、安全靴1の締め具合を調整することができる。本実施の形態では、後述のように、靴紐33で足甲プロテクタ9の一部も固定される。
【0023】
<つま先補強材>
つま先補強材7は、補強材本体部35と、足甲プロテクタ支持部(支持構造の一部)37とを有している。補強材本体部35は、つま先部19の先端部分を覆う部分であり、つま先部19の表面に固定されている。足甲プロテクタ支持部37は、補強材本体部35の幅方向Yの中央部から甲被中央部21に向かって突出し、つま先部19の表面に固定されていないタブ状の部分である。足甲プロテクタ支持部37には、足甲プロテクタ9が固定される1組の支持部貫通孔39が形成されている(図4参照)。
【0024】
なお、足甲プロテクタ支持部37は、固定された足甲プロテクタ本体41が先芯29の後端部に、所定の長さ分(3mm以上)重なる位置に設けられている。
【0025】
<足甲プロテクタ>
足甲プロテクタ9は、足甲プロテクタ本体41と、帯状部材43とを備えている。足甲プロテクタ本体41は、金属素材や硬質樹脂等の硬質素材によって構成されており、前後方向Xに延びて安全靴1の甲部ISを覆う部材である。図3に示すように、足甲プロテクタ本体41は、幅方向Yの中央部のプロテクタ中央壁部45と、プロテクタ中央壁部45の幅方向Yの両端部からに形成された一対の側壁部47,47´を有している。プロテクタ中央壁部45の先端部45Aには、1組のプロテクタ先端貫通孔49が形成されている。プロテクタ中央壁部45の後端部45Bには、1組のプロテクタ後端貫通孔51が形成されている(図4参照)。
【0026】
帯状部材43は、図5に示すように、帯状部材本体53と、表面層55とを有する帯状の部材である。帯状部材本体53は、天然皮革や合成皮革等の皮革から形成されている。表面層55は、帯状部材本体53よりも摩擦係数の小さい低摩擦層である。また、表面層55は、帯状部材43の上(一方の表面)に貼り付けられ、帯状部材43が折り曲げられた場合に反発力を生じるようにもなっている。ここでは、ナイロンタフタ材を用いている。帯状部材43は、足甲プロテクタ本体41と組み合わされる際は、表面層55が足甲プロテクタ本体41の裏面と対向するように配置される。
【0027】
図4及び図5に示すように、帯状部材43は、一端部43Aに1組の一端側貫通孔57が形成され、他端部43Bに1組の他端側貫通孔59が形成されている。また、帯状部材43の一端部43Aは、一端側貫通孔57と先端43Cとの間に延長部61を有している。
【0028】
図4に示すように、帯状部材43の一端部43Aは、プロテクタ中央壁部45の先端部45Aを介して、足甲プロテクタ支持部37の裏面に宛がわれる。その上で、プロテクタ中央壁部45及び帯状部材43は、位置合わせをした支持部貫通孔39、プロテクタ先端貫通孔49及び一端側貫通孔57に挿通されたカシメピン63をカシメ加工することで、まとめて足甲プロテクタ支持部37に対して固定されている。これにより、足甲プロテクタ本体41は、プロテクタ中央壁部45の先端部45Aを中心にして円弧状に移動可能に支持され、支持構造が構成されている(図3参照)。また、帯状部材43の一端部43Aも、プロテクタ中央壁部45の先端部45Aに固定されている。
【0029】
図4に示すように、帯状部材43の他端部43Bは、プロテクタ中央壁部45の後端部45Bを越えて折り返されて、プロテクタ中央壁部45の表(おもて)面45Cに接触している。その上で、位置合わせをしたプロテクタ後端貫通孔51及び他端側貫通孔59に挿通されたカシメピン65をカシメ加工することで、帯状部材43の他端部43Bは、プロテクタ中央壁部45の後端部45Bに固定されている。
【0030】
上述の通り、帯状部材43は、一端部43Aがプロテクタ中央壁部45の先端部45Aに固定され、他端部43Bがプロテクタ中央壁部45の後端部45Bに固定されており、プロテクタ中央壁部45の裏面45Dに沿って延びるように配置されている。これにより、図4に示すように、帯状部材43は、プロテクタ中央壁部45との間に環状部67を形成しており、靴紐33を通す締結部材固定部を構成している。環状部67は、プロテクタ中央壁部45の裏面45Dと帯状部材43の間に形成される隙間であり、幅方向Yに開放している。図4に示すように、安全靴1の靴紐33を環状部67にも通すことで、足甲プロテクタ本体41は、安全靴1の甲部ISに固定される。
【0031】
延長部61は、足甲プロテクタ支持部37にプロテクタ中央壁部45の先端部45A、及び、帯状部材43の一端部43Aが固定された状態で、安全靴1のつま先部19側に折り返されている。つまり、延長部61は、帯状部材43の甲プロテクタ本体41に対する固定位置(57)よりもつま先側に延びている。そして、延長部61は、自由端部が安全靴1の甲部IS(本実施の形態では、つま先部19)に接触するようになっている。これにより、延長部61は、足甲プロテクタ本体41を、安全靴1から離す方向に付勢する付勢部BIを構成している。
【0032】
<作用>
以下、本実施の形態の足甲プロテクタ及び足甲プロテクタを備えた安全靴の作用を説明する。
【0033】
図6は、着用者が、安全靴1を履いて、つま先部で安全靴1が屈曲する姿勢をとった状態を示す側面図であり、図7は、図6の安全靴1の足甲プロテクタ部分を断面にした部分断面図である。
【0034】
図6及び図7に示すように、安全靴1は、着用者がつま先部で安全靴1が屈曲する姿勢をとると、踵部分が上がる。踵部分が上がることで、安全靴1の甲部ISは、付勢部BI(延長部61)と共に、足甲プロテクタ本体41を押し上げる。甲部IS(特に一対のフラップ部25,25´)は、足甲プロテクタ本体41の押し上げと同時に、つま先部19に対して近づく。このため、環状部67内を通してある靴紐(締結部材)33は、環状部67内を足甲プロテクタ本体41のプロテクタ中央壁部45の先端部45Aに向かって相対的にスライドする。これにより、足甲プロテクタ本体41は、靴紐(締結部材)33によって動きが妨げられることがなく、プロテクタ中央壁部45の先端部45Aを中心にしてスムーズに円弧状に移動する。したがって、着用者が、つま先部分で安全靴が屈曲する姿勢をとったとしても、本実施の形態の安全靴1は、足甲プロテクタ9の足への干渉を緩和できる。そして、これにより、安全靴1は、足甲プロテクタ9が着用者の足に当たって着用者が不快に感じたり、足を痛める原因にならない。
【0035】
また、締結部材固定部は、足甲プロテクタ本体41との間に環状部67を形成する帯状部材43から構成されている。これにより、本実施の形態の安全靴1は、足甲プロテクタ本体41に帯状部材43を固定するだけで、容易に環状部67を形成することが可能である。
【0036】
さらに、帯状部材43は、帯状部材本体53と、ナイロンタフタ材からなる表面層55とから構成されている。これにより、本実施の形態の安全靴1は、帯状部材43と締結部材(靴紐)33との摩擦係数を低下させ、締結部材(靴紐)33がよりスムーズにスライド可能になる。また、本実施の形態の安全靴1は、帯状部材43の延長部61により構成される付勢部BIの反発力を、帯状部材本体53単体の場合に比べて向上させることができる。なお、表面層55は、同様の性質を有する他の素材から構成してもよいし、表面層55を設けなくても良いのはもちろんである。また、帯状部材43を塩化ビニール等の軟質の他の素材で代用することも可能である。
【0037】
本実施の形態では、付勢部BIは、帯状部材43の延長部61により構成した。これにより、別部材を準備することなく、簡易な構成にて、足甲プロテクタ本体41を、安全靴1から離す方向に付勢することが可能である。
【0038】
<第2の実施の形態>
図8及び図9は、第2の実施の形態の安全靴を示す図である。第1の実施の形態と共通する部分については、図1乃至図5に付した符号に100を加えた数の符号を付して、その説明を省略する。
【0039】
第2の実施の形態の安全靴101は、締結部材として、面テープを有するベルト133を用いた、長編上タイプの安全靴である。第1の実施の形態と同様、締結部材であるベルト133を、帯状部材143とプロテクタ中央壁部145との間に形成された環状部167に通すことで、足甲プロテクタ本体141を安全靴101の甲部ISに固定するようになっている。この場合でも、着用者が、安全靴101を履いて、つま先部で安全靴101が屈曲する姿勢をとると、安全靴101の甲部ISが、付勢部BI(延長部161)と共に、足甲プロテクタ本体141を押し上げ、ベルト133が環状部167内をスライドすることで、足甲プロテクタ本体141がプロテクタ中央壁部145の先端部145Aを中心にしてスムーズに円弧状に移動する。
【0040】
以上、本発明の実施の形態について具体的に説明したが、本発明はこれらの実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で変更が可能であるのは勿論である。
【0041】
例えば、上記例では、JIS T 8101:2020に準拠するために、足甲プロテクタが安全靴に取り外し不能に固定された安全靴(短靴紐タイプ及び長編上タイプ)の例を示した。しかしながら、本発明は、上記例に限られるものでなく、靴紐や面テープを有するベルト等の締結部材を有する他のタイプの安全靴にも適用可能であり、足甲プロテクタが、取り外し可能に固定された安全靴にも当然適用可能である。また、足甲プロテクタを有さない安全靴に、後付けで固定できる足甲プロテクタにも適用可能である。
【0042】
また、上記例では、帯状部材及び締結部材は伸縮性を有さないものとしたが、帯状部材及び/または締結部材を、伸縮性を有する素材から構成してもよい。このようにすれば、帯状部材及び/または締結部材が伸びて、足甲プロテクタ本体が先端部を中心にしてスムーズに円弧状に移動することが可能である。
【0043】
また、上記例では、足甲プロテクタを、足甲プロテクタ本体と帯状部材を別々の部材として示したが、足甲プロテクタを一体成型品とすることも可能である。
【0044】
また、上記例では、付勢部として、帯状部材の延長部を利用したが、その代わりに、足甲プロテクタと安全靴の間にスポンジ等の弾性体を挟んで、付勢部とすることも可能である。また、帯状部材は、上記例では、帯状部材は、表面層を設けることで反発力を持たせる例を示したが、帯状部材(帯状部材本体)が反発力を有する材質によって形成されていてもよい。
【符号の説明】
【0045】
1 安全靴
3 靴底
5 甲被
7 つま先補強材
9 足甲プロテクタ
11 ミッドソール
13 アウトソール
15 甲被前側部
17 甲被後側部
19 つま先部
21 甲被中央部
23 べろ部
25,25´ 一対のフラップ部
27 踵部
29 先芯
31,31´ はとめ
33 靴紐(締結部材)
35 補強材本体部
37 足甲プロテクタ支持部
39 支持部貫通孔
41 足甲プロテクタ本体
43 帯状部材
45 プロテクタ中央壁部
47,47´ 一対の側壁部
49 プロテクタ先端貫通孔
51 プロテクタ後端貫通孔
53 帯状部材本体
55 表面層
57 一端側貫通孔
59 他端側貫通孔
61 延長部(付勢部)
67 環状部
IS 甲部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9