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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024132215
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】芳香族ポリエステルの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 63/78 20060101AFI20240920BHJP
   C08J 11/24 20060101ALI20240920BHJP
   C08J 11/16 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
C08G63/78
C08J11/24 ZAB
C08J11/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023042906
(22)【出願日】2023-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】501270287
【氏名又は名称】帝人フロンティア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100169085
【弁理士】
【氏名又は名称】為山 太郎
(72)【発明者】
【氏名】橋本 透生
(72)【発明者】
【氏名】須之内 慧
(72)【発明者】
【氏名】中島 卓
【テーマコード(参考)】
4F401
4J029
【Fターム(参考)】
4F401AA22
4F401BA06
4F401CA67
4F401CA68
4F401CA75
4F401CB01
4F401DC01
4F401EA04
4F401EA09
4F401EA16
4F401EA17
4F401EA27
4F401EA60
4F401EA65
4F401EA70
4F401FA07Z
4J029AA03
4J029AB01
4J029AB04
4J029AC02
4J029AE01
4J029AE02
4J029AE03
4J029BA02
4J029BA03
4J029BA04
4J029BA05
4J029CB04A
4J029CB05A
4J029CB06A
4J029CB12A
4J029CC03A
4J029CC05A
4J029CC06A
4J029CF08
4J029HA01
4J029HD04
4J029JA253
4J029JC573
4J029JC583
4J029JD06
4J029KB02
4J029KG01
4J029KG02
4J029KG03
(57)【要約】
【課題】芳香族ポリエステルを解重合して得た芳香族ジカルボン酸ビス(ヒドロキシアルキル)を経て、より付加価値の高い別の化学構造の芳香族ポリエステルの製造方法において、黄色みが少ない、良好な色相の芳香族ポリエステルを得る。
【解決手段】芳香族ジカルボン酸成分と第一のアルキレングリコール成分からなる第一の芳香族ポリエステルを第二のアルキレングリコールの存在下で解重合して芳香族ジカルボン酸ビス(ヒドロキシアルキル)とする解重合工程、および前記芳香族ジカルボン酸ビス(ヒドロキシアルキル)を重縮合して第二の芳香族ポリエステルとする重合工程を含む芳香族ポリエステルの製造方法であって、第二のアルキレングリコールの炭素数は第一のアルキレングリコールの炭素数と異なり、解重合工程で触媒としてアルカリ金属、アルカリ土類金属、マンガンおよび亜鉛からなる群から選ばれる少なくとも一つが使用され、その使用量が第一の芳香族ポリエステルを構成する全ジカルボン酸成分に対して35mmol%以上であり、解重合工程中または解重合工程後重合工程前にリン化合物が添加され、その添加量が第一の芳香族ポリエステルを構成する全ジカルボン酸成分に対して35mmol%以上であることを特徴とする、芳香族ポリエステルの製造方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
芳香族ジカルボン酸成分と第一のアルキレングリコール成分からなる第一の芳香族ポリエステルを第二のアルキレングリコールの存在下で解重合して芳香族ジカルボン酸ビス(ヒドロキシアルキル)とする解重合工程、および前記芳香族ジカルボン酸ビス(ヒドロキシアルキル)を重縮合して第二の芳香族ポリエステルとする重合工程を含む芳香族ポリエステルの製造方法であって、第二のアルキレングリコールの炭素数は第一のアルキレングリコールの炭素数と異なり、解重合工程で触媒としてアルカリ金属、アルカリ土類金属、マンガンおよび亜鉛からなる群から選ばれる少なくとも一つが使用され、その使用量が第一の芳香族ポリエステルを構成する全ジカルボン酸成分に対して35mmol%以上であり、解重合工程中または解重合工程後重合工程前にリン化合物が添加され、その添加量が第一の芳香族ポリエステルを構成する全ジカルボン酸成分に対して35mmol%以上であることを特徴とする、芳香族ポリエステルの製造方法。
【請求項2】
解重合工程において、第二のアルキレングリコールの他に、第二のアルキレングリコール以外のグリコールが存在し、第二のアルキレングリコールの存在量が芳香族ポリエステルのジカルボン酸成分の50mol%以上である、請求項1記載の芳香族ポリエステルの製造方法。
【請求項3】
解重合工程の触媒が、アルカリ金属、アルカリ土類金属、マンガンおよび亜鉛からなる群から選ばれる少なくとも一つと脂肪族カルボン酸との塩である、請求項1記載の芳香族ポリエステルの製造方法。
【請求項4】
解重合工程の触媒が、酢酸マンガン、酢酸カルシウム、酢酸マグネシウム、酢酸亜鉛、酢酸リチウム、酢酸ナトリウムおよび酢酸カリウムからなる群から選ばれる少なくとも一つである、請求項1記載の芳香族ポリエステルの製造方法。
【請求項5】
第一の芳香族ポリエステルを構成するジカルボン酸成分がテレフタル酸であり、第一のアルキレングリコールがエチレングリコールおよび/または1,4-ブタンジオールである、請求項1記載の芳香族ポリエステルの製造方法。
【請求項6】
第二のアルキレングリコールが1,3-プロパンジオールである、請求項5記載の芳香族ポリエステルの製造方法。
【請求項7】
リン化合物が、亜リン酸、正リン酸、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル、リン酸トリフェニル、ベンゼンホスホン酸ジエチル、(2-ヒドロキシエチル)ホスホン酸ジメチルおよびフェニルホスホン酸からなる群から選ばれる少なくとも一つである、請求項1記載の芳香族ポリエステルの製造方法。
【請求項8】
解重合工程の触媒が、第一の芳香族ポリエステルを構成する全ジカルボン酸成分に対して35~3000mmol%である、請求項1記載の芳香族ポリエステルの製造方法。
【請求項9】
リン化合物の添加量が第一の芳香族ポリエステルを構成する全ジカルボン酸成分に対して35~3000mmol%である、請求項1記載の芳香族ポリエステルの製造方法。
【請求項10】
請求項1の製造方法で得られた芳香族ポリエステル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、芳香族ポリエステルの製造方法に関し、詳しくは、芳香族ポリエステルを一旦解重合してその後に重合して芳香族ポリエステルを得る芳香族ポリエステルの製造方法に関する。さらに詳しくは、アップサイクリングによる芳香族ポリエステルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
芳香族ポリエステル、例えばポリエチレンテレフタレートは、その優れた特性により繊維、フィルム、樹脂として広く用いられている。近年、製造工程や加工工程で発生する端材および芳香族ポリエステルからなる製品の使用後に発生する廃棄物を有効に利用することが、環境保護観点から、求められている。
【0003】
これまでも、マテリアルリサイクル、サーマルリサイクル、ケミカルリサイクルといった方法が検討されている。品質の低下が少ないという芳香族ポリエステルを得る観点からは、芳香族ポリエステルを一旦解重合して、これを再度重合するケミカルリサイクルが優れている。ケミカルリサイクルの中でも、直接重縮合反応を行うことで芳香族ポリエステルを製造することができる中間体に解重合してこれを重縮合する方法は、消費エネルギーが少なく、優れた方法である。
【0004】
例えばポリエチレンテレフタレートをエチレングリコール中で解重合し、テレフタル酸ビス(2-ヒドロキシエチル)(以下、BHETともいう)を得る方法や、さらに得られたBHETを直接重縮合して再生ポリエステルを得る方法が、試みられている(特許文献1)。
【0005】
なお、ケミカルリサイクルの一つの形態として、アップサイクリングと称される方法がある。この方法は、汎用の芳香族ポリエステルを一旦解重合してその後に重合するにあたり、より付加価値の高い別の化学構造の芳香族ポリエステルを得る方法であり、廃棄物の有効利用の観点からも優れた方法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008-88096号公報
【特許文献2】特表2009-524730号公報
【特許文献3】特表2009-524731号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
発明者の検討結果では、特許文献2および特許文献3に記載されている、解重合後の中間体としてBHET等のオリゴマ類を用いるアップサイクリングで得られる芳香族ポリエステルは、黄色みが強く、色相おいて不十分なものであった。
【0008】
本発明の目的は、芳香族ポリエステルを解重合して得た芳香族ジカルボン酸ビス(ヒドロキシアルキル)を経て、より付加価値の高い別の化学構造の芳香族ポリエステルを製造するアップサイクリングにおいて、黄色みが少ない、良好な色相の芳香族ポリエステルを得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、芳香族ジカルボン酸成分と第一のアルキレングリコール成分からなる第一の芳香族ポリエステルを第二のアルキレングリコールの存在下で解重合して芳香族ジカルボン酸ビス(ヒドロキシアルキル)とする解重合工程、および前記芳香族ジカルボン酸ビス(ヒドロキシアルキル)を重縮合して第二の芳香族ポリエステルとする重合工程を含む芳香族ポリエステルの製造方法であって、第二のアルキレングリコールの炭素数は第一のアルキレングリコールの炭素数と異なり、解重合工程で触媒としてアルカリ金属、アルカリ土類金属、マンガンおよび亜鉛からなる群から選ばれる少なくとも一つが使用され、その使用量が第一の芳香族ポリエステルを構成する全ジカルボン酸成分に対して35mmol%以上であり、解重合工程中または解重合工程後重合工程前にリン化合物が添加され、その添加量が第一の芳香族ポリエステルを構成する全ジカルボン酸成分に対して35mmol%以上であることを特徴とする、芳香族ポリエステルの製造方法である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、芳香族ポリエステルを解重合して得た芳香族ジカルボン酸ビス(ヒドロキシアルキル)を経て、より付加価値の高い別の化学構造の芳香族ポリエステルを製造するアップサイクリングにおいて、黄色みが少ない、良好な色相の芳香族ポリエステルを得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0012】
〔第一の芳香族ポリエステル〕
第一の芳香族ポリエステルは、芳香族ジカルボン酸成分と第一のアルキレングリコール成分からなる。
芳香族ジカルボン酸成分は、例えばテレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、1,5-ナフタレンジカルボン酸、ビス(p-カルボキシフェニル)メタン、アントラセンジカルボン酸、4,4’-ジフェニルエーテルジカルボン酸であり、好ましくはテレフタル酸である。
【0013】
芳香族ジカルボン酸成分としてテレフタル酸や2,6-ナフタレンジカルボン酸を主に用いる場合、芳香族ジカルボン酸分には、共重合成分として、イソフタル酸や芳香環上に置換基をもつ芳香族ジカルボン酸が含まれていてもよい。なお、「主に」は全ジカルボン酸成分あたり60mol%以上、好ましくは80mol%以上、特に好ましくは90mol%をいう。
【0014】
置換基として、スルホン酸塩基を挙げることができ、5-テトラブチルホスホニウムスルホイソフタル酸、5-ナトリウムスルホイソフタル酸が例示される。共重合成分が含まれる場合、共重合成分の含有量は、全ジカルボン酸成分あたり高々40mol%、好ましくは20mol%、特に好ましくは10mol%である。
芳香族ジカルボン酸としてテレフタル酸が用いられた態様が、本発明の効果を得る典型的な態様であり、好ましい態様である。
【0015】
第一のアルキレングリコール成分は、例えばエチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、あるいはこれらを2種以上含む混合アルキレングリコールが例示され、好ましくはエチレングリコール、1,4‐ブタンジオールである。
【0016】
第一の芳香族ポリエステルは、好ましくはポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリペンタメチレンテレフタレート、ポリヘキサメチレンテレフタレート、あるいはエチレンテレフタレートとブチレンテレフタレートの共重合体などの複数のジオール成分からなるアルキレンテレフタレート共重合体などであり、特に好ましくはポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートである。
【0017】
この芳香族ポリエステルは、共重合体であってもよく、その場合、テレフタル酸成分が全ジカルボン酸成分あたり、好ましくは60mol%以上、さらに好ましくは80mol%以上、特に好ましくは90mol%を占める。
【0018】
〔第二のアルキレングリコール〕
第一の芳香族ポリエステルの解重合は、第二のアルキレングリコールの存在下で行う。この第二のアルキレングリコールの炭素数は、第一のアルキレングリコールの炭素数と異なることが重要である。炭素数が異なることで、芳香族ポリエステルをアップサイクリングすることができ、解重合に用いた芳香族ポリエステルと異なる芳香族ポリエステルを得ることができる。他方、炭素数が同じであると、解重合に用いた芳香族ポリエステルと同じ芳香族ポリエステルを得ることになり、芳香族ポリエステルのアップサイクリングとはならない。なお、本発明におけるアップサイクリングは、汎用で比較的低価格の芳香族ポリエステルを原料として用い、高付加価値の別の化学構造の芳香族ポリエステルを製造することを意味するが、目的によっては、汎用である別の化学構造の芳香族ポリエステルを製造することも含みうることとする。
【0019】
第一のアルキレングリコールがエチレングリコールである場合、第二のアルキレングリコールとして、例えば1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、好ましくは、1,3-プロパンジオールを用いる。
【0020】
第一のアルキレングリコールが1,4-ブタンジオールである場合、第二のアルキレングリコールとして、例えばエチレングリコール、1,3-プロパンジオール、好ましくは1,3-プロパンジオールを用いる。
第一のアルキレングリコールが1,3-プロパンジオールである場合、第二のアルキレングリコールとして、例えばエチレングリコール、1,4-ブタンジオールを用いることができる。
【0021】
第一の芳香族ポリエステルを構成するジカルボン酸成分がテレフタル酸であり、第一のアルキレングリコールがエチレングリコールおよび/または1,4-ブタンジオールであり、第二のアルキレングリコールが1,3-プロパンジオールである態様は、アップサイクリングの観点から特に好ましい態様である。
【0022】
〔解重合〕
本発明では、第一の芳香族ポリエステルを第二のアルキレングリコールの存在下で解重合する。
解重合工程の解重合反応で使用する第二のアルキレングリコールの量は、第一の芳香族ポリエステルのジカルボン酸成分に対して、好ましくは50mol%以上、さらに好ましくは100~2000mol%、特に好ましくは150~1000mol%である。この範囲で第二のアルキレングリコールを使用することにより、触媒、その他の異物の混入量を低減することができるため好ましい。
【0023】
なお、解重合工程において、第二のアルキレングリコールの他に、第二のアルキレングリコール以外のアルキレングリコールが解重合反応の反応系に存在してもよい。その場合、第二のアルキレングリコールの存在量は、芳香族ポリエステルのジカルボン酸成分に対して、好ましくは50mol%以上、さらに好ましくは70mol%以上、特に好ましくは80mol%以上である。50mol%未満であると、得られる芳香族ポリエステルのジオール成分の多くが第二のアルキレングリコール以外のアルキレングリコールとなり、目的とするアップサイクリングされた芳香族ポリエステルを得ることができない。
【0024】
第二のアルキレングリコールが1,3-プロパンジオールであり、第二のアルキレングリコール以外のアルキレングリコールがエチレングリコールおよび/または1,4-ブタンジオールである態様は、反応性の観点から好ましい態様である。
解重合反応は、触媒の存在下で行う。この触媒として、アルカリ金属、アルカリ土類金属、マンガンおよび亜鉛からなる群から選ばれる少なくとも一つを使用する。
【0025】
この触媒は、好ましくはアルカリ金属、アルカリ土類金属、マンガンおよび亜鉛からなる群から選ばれる少なくとも一つと、脂肪族カルボン酸、炭酸、硫酸およびリン酸からなる群から選ばれる少なくとも一つの酸との塩であり、さらに好ましくはアルカリ金属、アルカリ土類金属、マンガンおよび亜鉛からなる群から選ばれる少なくとも一つと、脂肪族カルボン酸との塩であり、特に好ましくはアルカリ土類金属と脂肪族カルボン酸との塩、マンガンと脂肪族カルボン酸との塩、亜鉛と脂肪族カルボン酸との塩である。
【0026】
脂肪族カルボン酸として、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸、ピバル酸、イソ吉草酸を例示することができ、好ましくは酢酸である。
触媒として好ましいものを例示すると、酢酸マンガン、酢酸カルシウム、酢酸マグネシウム、酢酸亜鉛、酢酸リチウム、酢酸ナトリウムおよび酢酸カリウムであり、特に好ましくは酢酸マンガンである。
【0027】
触媒は、予め第二のアルキレングリコール中に溶解または懸濁させて、溶液または懸濁液として用いることができる。なお、第二のアルキレングリコールの他に第二のアルキレングリコール以外のアルキレングリコールが解重合反応の反応系に存在する場合は、該アルキレングリコール中に溶解または懸濁させて、溶液または懸濁液として用いてもよい。
【0028】
解重合工程の触媒は、第一の芳香族ポリエステルを構成する全ジカルボン酸成分に対して、35mmol%以上である。35mmol%未満であると反応性不良となる。得られるポリマー色相の観点から、好ましくは高々3000mmol%を用いる。好ましくは50~300mmol%で用いる。
【0029】
解重合反応の温度は、例えば180~240℃、好ましくは200~220℃であり、時間は、例えば30~180分間、好ましくは60~120分間である。圧力は、常圧でもよく、例えば20~3000Paでもよい。
【0030】
〔リン化合物〕
解重合工程中または解重合工程後重合工程前に、リン化合物を添加する。このリン化合物は安定剤として添加され、亜リン酸、正リン酸、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル、リン酸トリフェニル、ベンゼンホスホン酸ジエチル、(2-ヒドロキシエチル)ホスホン酸ジメチルおよび/またはフェニルホスホン酸を例示することができ、好ましくは正リン酸、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル、リン酸トリフェニルである。
【0031】
リン化合物の添加量は、第一の芳香族ポリエステルを構成する全ジカルボン酸成分に対して35mmol%以上、好ましくは50mmol%以上、さらに好ましくは50~3000mmol%である。35mmol%未満であると得られるポリマーの色相は悪化する。3000mmol%を超えると重合反応性に悪影響であり好ましくない。
【0032】
〔芳香族ジカルボン酸ビス(ヒドロキシアルキル)〕
第一の芳香族ポリエステルは第二のアルキレングリコールの存在下で解重合されて、その殆どの成分が、一般的なケミカルリサイクルである第一の芳香族ポリエステルを第一のアルキレングリコールの存在下で解重合されて得られる芳香族ジカルボン酸とは異なる炭素数の芳香族ジカルボン酸ビス(ヒドロキシアルキル)となる。
【0033】
例えば、第一の芳香族ポリエステルがポリエチレンテレフタレートであって、第二のアルキレングリコールがトリメチレングリコールのる場合、芳香族ジカルボン酸ビス(ヒドロキシアルキル)はその殆どがテレフタル酸ビス(ヒドロキシプロピル)(BHPT)となり、少量のテレフタル酸ビス(ヒドロキシエチル)(BHET)が残留したものとなる。第一の芳香族ポリエステルがポリブチレンテレフタレートであって、第二のアルキレングリコールがトリメチレングリコールの場合、芳香族ジカルボン酸ビス(ヒドロキシアルキル)はその殆どがテレフタル酸ビス(ヒドロキシプロピル)(BHPT)となり、少量のテレフタル酸ビス(ヒドロキシブチル)(BHBT)が残留したものとなる。
【0034】
〔第二の芳香族ポリエステル〕
第二の芳香族ポリエステルは、上記の芳香族ジカルボン酸ビス(ヒドロキシアルキル)を重縮合して得られる。
例えば芳香族ジカルボン酸ビス(ヒドロキシアルキル)がテレフタル酸ビス(ヒドロキシプロピル)(BHPT)である場合、これを重縮合して得られる第二の芳香族ポリエステルはポリトリメチレンテレフタレートである。なお、第一の芳香族ポリエステルがポリエチレンテレフタレートであった場合、前述の通り、解重合物に少量のテレフタル酸ビス(ヒドロキシエチル)(BHET)が残留している場合があるため、厳密には、第二の芳香族ポリエステルは、トリメチレンテレフタレートを主たる繰り返し単位とし、少量のエチレンテレフタレート単位が含まれているものとなる。
【0035】
また、第一の芳香族ポリエステルがポリブチレンテレフタレートであった場合、前述の通り、解重合物に少量のテレフタル酸ビス(ヒドロキシブチル)(BHBT)が残留している場合があるため、厳密には、第二の芳香族ポリエステルは、トリメチレンテレフタレートを主たる繰り返し単位とし、少量のブチレンテレフタレート単位が含まれているものである。
【0036】
〔重合〕
重合工程では、芳香族ジカルボン酸ビス(ヒドロキシアルキル)を、触媒の存在下で加熱して、アルキレングリコールを留去することにより重縮合反応を行う。これは公知の方法で行うことができる。
【0037】
この方法として、芳香族ジカルボン酸ビス(ヒドロキシアルキル)、第二のアルキレングリコールを、触媒の存在下かつ減圧下で、第二の芳香族ポリエステルの融点以上の温度(通常240~280℃)に加熱することにより、重縮合反応させる方法を用いることができる。この重縮合反応では、未反応の第二のアルキレングリコールおよび重縮合反応で発生するアルキレングリコールを反応系外に留去させながら行われる。
【0038】
重縮合反応は、一つの反応槽で行ってもよく、複数の反応槽に分けて行ってもよい。例えば、重縮合反応が二つ槽で行われる場合、第1槽での重縮合反応は、反応温度が245~290℃、好ましくは260~280℃、圧力が100~1kPa、好ましくは50~2kPaの条件下で行われ、最終第2槽での重縮合反応は、反応温度が265~300℃、好ましくは270~290℃、反応圧力は通常1000~10Paで、好ましくは500~30Paの条件下で行われる。
この重縮合工程で得られた第二の芳香族ポリエステルは、溶融状態で押出しながら冷却しカットすることで、粒状のものを得ることができる。
【0039】
重縮合反応の触媒として、アンチモン系、ゲルマニウム系、チタン系の触媒を用いることができ、得られるポリマー色相の観点から、好ましくはアンチモン系を用いる。アンチモン系の触媒のなかでも、特に好ましくは三酸化二アンチモンを用いる。
触媒の使用量は、得られるポリマー色相の観点から、芳香族ジカルボン酸ビス(ヒドロキシアルキル)の重量に対して、好ましくは10~1000ppm、特に好ましくは15~400ppmである。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明で得られる芳香族ポリエステルは、例えば繊維、フィルムおよびその他の形状の樹脂成型品の素材として用いることができる。
【実施例0041】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。実施例の各値は、以下の方法により求めた。
ポリエチレンテレフタレートを「PET」、1,3-プロパンジオールを「1,3PDO」、エチレングリコールを「EG」、テレフタル酸ビス(1,3-ヒドロキシプロピル)を「BHPT」、テレフタル酸ビス(2-ヒドロキシエチル)を「BHET」と称することがある。
【0042】
(1)色相
分光色差計(日本電色工業株式会社製 SE-7700)を用いて、JIS Z8781-4:2013に従い、色相L、aおよびbを測定した。bの値が大きいほど黄色みが強く、色相が悪いと判定した。
【0043】
(2)極限粘度数(IV)
芳香族ポリエステル0.6gを、o-クロロフェノール50cc中に加熱溶解した後、一旦冷却させ、ウベローデ式粘度計を用いて35℃の温度条件で測定したその溶液の溶液粘度から、別途作成した検量線を用いて算出した。
【0044】
(3)融点(Tm)
サンプルを10mg切り取りアルミパンに充填し、TA Instruments-Waters LLC社製 DSC装置Q10にて融点を測定した。測定条件として、まずサンプルを昇温速度20℃/分間にて25℃から300℃まで一旦昇温後、急冷しクエンチした。そしてこのクエンチしたサンプルに対して20℃/分間にて、25℃から300℃まで昇温し、結晶融点を求めた。
【0045】
(4)ジカルボン酸成分およびジオール成分の含有量
サンプルをメタノールにて分解し、AGILENT TECHNOLOGIES,INC.製 ガスクロマトグラフィー(GC)7820Aにて測定した。検出限界は0.5mol%以上を検出範囲とし、それ未満は「ND」とした。
【0046】
(5)ポリマー中の元素の含有量
波長分散型蛍光X線分析装置(理学電機株式会社製 ZSX primusII)を用いて測定した。
【0047】
〔実施例1〕
PET80.6重量部に対して0.052重量部の酢酸マンガンを添加し、95.9重量部の1,3PDO中で、常圧下、215℃で100分間加熱し、その後、正リン酸を0.021重量部添加して、常圧下、215℃で20分間加熱すること解重合して、BHPT/BHET/1,3PDO/EG溶液を得た。
【0048】
この後、BHPT/BHET/1,3PDO/EG溶液に、0.021重量部のチタンテトラブトキシドを添加して、20Pa、255℃の熱媒中で、1,3PDOおよびEGを留去しながら、重縮合反応を行い、芳香族ポリエステルを得た。
【0049】
得られた芳香族ポリエステルを取り出し、色相L、aおよびbを測定した。測色値は、L=45.7、a=-1.0、b=13.0であった。
得られた芳香族ポリエステル中の元素の量は、マンガンが157ppm、リンが53ppmであった。
【0050】
この実施例において、解重合に用いた酢酸マンガンの使用量は、PETのテレフタル酸成分に対して50mmol%にあたる。解重合で添加された正リン酸0.021重量部は、PETのテレフタル酸成分に対して50mmol%にあたる。
【0051】
〔実施例2〕
PET80.6重量部に対して0.052重量部の酢酸マンガンを添加し、95.9重量部の1,3PDO中で、常圧下、215℃で100分間加熱し、その後、正リン酸を0.031重量部添加して、常圧下、215℃で20分間加熱することで解重合して、BHPT/BHET/1,3PDO/EG溶液を得た。
【0052】
この後、BHPT/BHET/1,3PDO/EG溶液に、0.021重量部のチタンテトラブトキシドを添加して、20Pa、255℃の熱媒中で、1,3PDOおよびEGを留去しながら、重縮合反応を行い、芳香族ポリエステルを得た。
【0053】
得られた芳香族ポリエステルを取り出し、色相L、aおよびbを測定した。測色値は、L=47.7,a=-0.6,b=6.2であった。
得られた芳香族ポリエステル中の元素の量は、マンガンが153ppm、リンが79ppmであった。
【0054】
この実施例において、解重合に用いた酢酸マンガンの使用量は、PETのテレフタル酸成分に対して50mmol%にあたる。解重合で添加された正リン酸0.031重量部は、PETのテレフタル酸成分に対して75mmol%にあたる。
【0055】
〔実施例3〕
PET80.6重量部に対して0.052重量部の酢酸マンガンを添加し、95.9重量部の1,3PDO中で、常圧下、215℃で100分間加熱し、その後、正リン酸を0.041重量部添加して、常圧下、215℃で20分間加熱することで解重合して、BHPT/BHET/1,3PDO/EG溶液を得た。
【0056】
この後、BHPT/BHET/1,3PDO/EG溶液に、0.021重量部のチタンテトラブトキシドを添加して、20Pa、255℃の熱媒中で、1,3PDOおよびEGを留去しながら、重縮合反応を行い、芳香族ポリエステルを得た。
【0057】
得られた芳香族ポリエステルを取り出し、色相L、aおよびbを測定した。測色値は、L=47.3、a=-0.5、b=6.1であった。
得られた芳香族ポリエステル中の元素の量は、マンガンが155ppm、リンが102ppmであった。
【0058】
この実施例において、解重合に用いた酢酸マンガンの使用量は、PETのテレフタル酸成分に対して50mmol%にあたる。解重合で添加された正リン酸0.041重量部は、PETのテレフタル酸成分に対して100mmol%にあたる。
【0059】
〔実施例4〕
PET80.6重量部に対して0.037重量部の酢酸カルシウムを添加し、95.9重量部の1,3PDO中で、常圧下、215℃で100分間加熱し、その後、正リン酸を0.021重量部添加して、常圧下、215℃で20分間加熱することで解重合して、BHPT/BHET/1,3PDO/EG溶液を得た。
【0060】
この後、BHPT/BHET/1,3PDO/EG溶液に、0.021重量部のチタンテトラブトキシドを添加して、20Pa、255℃の熱媒中で、1,3PDOおよびEGを留去しながら、重縮合反応を行い、芳香族ポリエステルを得た。
【0061】
得られた芳香族ポリエステルを取り出し、色相L、aおよびbを測定した。測色値は、L=44.0、a=0.2、b=13.8であった。
得られた芳香族ポリエステル中の元素の量は、カルシウムが101ppm、リンが55ppmであった。
【0062】
この実施例において、解重合に用いた酢酸カルシウムの使用量は、PETのテレフタル酸成分に対して50mmol%にあたる。解重合で添加された正リン酸0.021重量部は、PETのテレフタル酸成分に対して50mmol%にあたる。
【0063】
〔実施例5〕
PET80.6重量部に対して0.047重量部の酢酸マグネシウムを添加し、95.9重量部の1,3PDO中で、常圧下、215℃で100分間加熱し、その後、正リン酸を0.021重量部添加して、常圧下、215℃で20分間加熱することで解重合して、BHPT/BHET/1,3PDO/EG溶液を得た。
【0064】
この後、BHPT/BHET/1,3PDO/EG溶液に、0.021重量部のチタンテトラブトキシドを添加し、20Pa、255℃の熱媒中で、1,3PDOおよびEGを留去しながら、重縮合反応を行い、芳香族ポリエステルを得た。
【0065】
得られた芳香族ポリエステルを取り出し、色相L、aおよびbを測定した。測色値は、L=44.1、a=0.4、b=13.7であった。
得られた芳香族ポリエステル中の元素の量は、マグネシウムが59ppm、リンが52ppmであった。
【0066】
この実施例において、解重合に用いた酢酸マグネシウムの使用量は、PETのテレフタル酸成分に対して50mmol%にあたる。解重合で添加された正リン酸0.021重量部は、PETのテレフタル酸成分に対して50mmol%にあたる。
【0067】
〔実施例6〕
PET80.6重量部に対して0.046重量部の酢酸亜鉛を添加し、95.9重量部の1,3PDO中で、常圧下、215℃で100分間加熱し、その後、正リン酸を0.021重量部添加して、常圧下、215℃で20分間加熱することで解重合して、BHPT/BHET/1,3PDO/EG溶液を得た。
【0068】
この後、BHPT/BHET/1,3PDO/EG溶液に、0.021重量部のチタンテトラブトキシドを添加し、20Pa、255℃の熱媒中で、1,3PDOおよびEGを留去しながら、重縮合反応を行い、芳香族ポリエステルを得た。
【0069】
得られた芳香族ポリエステルを取り出し、色相L、aおよびbを測定した。測色値はL=45.2、a=0.9、b=14.8であった。
得られた芳香族ポリエステル中の元素の量は、亜鉛が138ppm、リンが55ppmであった。
【0070】
この実施例において、解重合に用いた酢酸亜鉛の使用量は、PETのテレフタル酸成分に対して50mmol%にあたる。解重合で添加された正リン酸0.021重量部は、PETのテレフタル酸成分に対して50mmol%にあたる。
【0071】
〔比較例1〕
PET70.0重量部に対して0.076重量部のチタンテトライソプロポキシドを添加し、84.0重量部の1,3PDO中で、常圧下、215℃で120分間加熱することで解重合して、BHPT/BHET/1,3PDO/EG溶液を得た。(正リン酸は添加していない。)
【0072】
この後、BHPT/BHET/1,3PDO/EG溶液を、20Pa、255℃の熱媒中で、1,3PDOおよびEGを留去しながら、重縮合反応を行い、芳香族ポリエステルを得た。
【0073】
得られた芳香族ポリエステルを取り出し、色相L、aおよびbを測定した。測色値はL=43.4、a=0.9、b=20.2であった。
得られた芳香族ポリエステル中の元素の量は、チタンが171ppm、リンが10ppmであった。
この実施例において、解重合に用いたチタンテトライソプロポキシドの使用量は、PETのテレフタル酸成分に対して73mmol%にあたる。
【0074】
〔比較例2〕
PET80.6重量部に対して0.052重量部の酢酸マンガンを添加し、95.9重量部の1,3PDO中で、常圧下、215℃で100分間加熱し、その後、正リン酸を0.010重量部添加して、常圧下、215℃で20分間加熱することで解重合して、BHPT/BHET/1,3PDO/EG溶液を得た。
【0075】
この後、BHPT/BHET/1,3PDO/EG溶液に、0.021重量部のTi触媒を添加し、20Pa、255℃の熱媒中で、1,3PDOおよびEGを留去しながら、重縮合反応を行い、芳香族ポリエステルを得た。
【0076】
得られた芳香族ポリエステルを取り出し、色相L、aおよびbを測定した。測色値は、L=43.0、a=-1.2、b=18.8であった。
得られた芳香族ポリエステル中の元素の量は、マンガンが159ppm、リンが26ppmであった。
【0077】
この実施例において、解重合に用いた酢酸マンガンの使用量は、PETのテレフタル酸成分に対して50mmol%にあたる。解重合で添加された正リン酸0.021重量部は、PETのテレフタル酸成分に対して25mmol%にあたる。
【0078】
〔比較例3〕
PET80.6重量部に対して0.052重量部の酢酸マンガンを添加し、95.9重量部の1,3PDO中で、常圧下、215℃で120分間加熱することで解重合して、BHPT/BHET/1,3PDO/EG溶液を得た。(正リン酸は添加していない。)
【0079】
この後、BHPT/BHET/1,3PDO/EG溶液に、0.021重量部のTi触媒を添加し、20Pa、255℃の熱媒中で、1,3PDOおよびEGを留去しながら、重縮合反応を行い、芳香族ポリエステルを得た。
【0080】
得られた芳香族ポリエステルを取り出し、色相L、aおよびbを測定した。測色値はL=45.4、a=-0.3、b=19.9であった。
得られた芳香族ポリエステル中の元素の量は、マンガンが154ppm、リンが6ppmであった。
この実施例において、解重合に用いた酢酸マンガンの使用量は、PETのテレフタル酸成分に対して50mmol%にあたる。
【0081】
〔比較例4〕
PET70.0重量部に対して0.076重量部のチタンテトライソプロポキシドを添加し、84.0重量部の1,3PDO中で、常圧下、215℃で100分間加熱し、その後、正リン酸を0.026重量部添加して、常圧下、215℃で20分間加熱することで解重合して、BHPT/BHET/1,3PDO/EG溶液を得た。
【0082】
この後、BHPT/BHET/1,3PDO/EG溶液を20Pa、255℃の熱媒中で、1,3PDOおよびEGを留去しながら、重縮合反応を行い、芳香族ポリエステルを得た。
【0083】
得られた芳香族ポリエステルを取り出し、色相L、aおよびbを測定した。測色値はL=45.0、a=0.3、b=19.8であった。
得られた芳香族ポリエステル中の元素の量は、チタンが166ppm、リンが81ppmであった。
この実施例において、解重合に用いたチタンテトライソプロポキシドの使用量は、PETのテレフタル酸成分に対して73mmol%にあたる。
【0084】
〔参考例1〕
DMT116.5重量部に対して0.117重量部のチタンテトラブトキシドを添加し、68.5重量部の1,3PDO中で、常圧下、220℃で70分間加熱することでBHPT溶液を得た。
この後、BHPT溶液を、20Pa、255℃の熱媒中で1,3PDOを留去しながら、重縮合反応を行い、芳香族ポリエステルを得た。
【0085】
得られた芳香族ポリエステルを取り出し、色相L、aおよびbを測定した。測色値はL=47.5、a=-0.5、b=5.9であった。
得られた芳香族ポリエステル中の元素の量は、チタンが102ppmであった。
【0086】
〔実施例7〕
PET80.6重量部に対して0.052重量部の酢酸マンガンを添加し、16.0重量部の1,3PDO中で、常圧下、215℃で100分間加熱し、その後、正リン酸を0.021重量部添加して、常圧下、215℃で20分間加熱すること解重合して、BHPT/BHET/1,3PDO/EG溶液を得た。
【0087】
この後、BHPT/BHET/1,3PDO/EG溶液に、0.021重量部のチタンテトラブトキシドを添加して、20Pa、255℃の熱媒中で、1,3PDOおよびEGを留去しながら、重縮合反応を行い、芳香族ポリエステルを得た。
【0088】
得られた芳香族ポリエステルを取り出し、色相L*、a*およびb*を測定した。測色値は、L=46.3、a=-1.3、b=16.1であった。
得られた芳香族ポリエステル中の元素の量は、マンガンが165ppm、リンが63ppmであった。
【0089】
この実施例において、解重合に用いた酢酸マンガンの使用量は、PETのテレフタル酸成分に対して50mmol%にあたる。解重合で添加された正リン酸0.021重量部は、PETのテレフタル酸成分に対して50mmol%にあたる。