(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024132216
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】ポリカーボネート樹脂組成物およびその成形品
(51)【国際特許分類】
C08L 69/00 20060101AFI20240920BHJP
C08K 5/53 20060101ALI20240920BHJP
C08G 64/04 20060101ALI20240920BHJP
C08J 5/00 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
C08L69/00
C08K5/53
C08G64/04
C08J5/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023042907
(22)【出願日】2023-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】000003001
【氏名又は名称】帝人株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100169085
【弁理士】
【氏名又は名称】為山 太郎
(72)【発明者】
【氏名】岡本 広志
(72)【発明者】
【氏名】栗本 大地
【テーマコード(参考)】
4F071
4J002
4J029
【Fターム(参考)】
4F071AA50
4F071AC12
4F071AC15
4F071AC19
4F071AE05
4F071AF25
4F071AF34Y
4F071AF45Y
4F071AF53
4F071AF57
4F071AH07
4F071AH12
4F071AH16
4F071BA01
4F071BB05
4F071BC03
4F071BC07
4J002CG01W
4J002CG01X
4J002EW116
4J002FD036
4J002GL00
4J002GN00
4J002GQ00
4J029AA09
4J029BB12A
4J029BB12B
4J029BB13A
4J029BB13B
4J029BF14A
4J029HA01
4J029JF031
4J029KE11
4J029KH04
(57)【要約】 (修正有)
【課題】成形耐熱性、耐傷付き性(高硬度)、耐候性を共立したポリカーボネート樹脂組成物及びその成形品を提供する。
【解決手段】(A-1):2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパンから誘導された構成単位、および(A-2):2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンから誘導された構成単位を含む(A)ポリカーボネート樹脂(a成分)と、4-ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-4’-モノ(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-ビフェニレンジホスホナイト等の(B)リン系化合物少なくとも1種と、テトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-4,4’-ビフェニレンジホスホナイト等の(C)リン系化合物少なくとも1種と、を含むポリカーボネート樹脂組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A-1)下記式(1)で表される構成単位および(A-2)下記式(2)で表される構成単位を含む(A)ポリカーボネート樹脂(a成分)と、(B)下記式(3)で示されるリン系化合物(b-1成分)、下記式(4)で示されるリン系化合物(b-2成分)および下記式(5)で示されるリン系化合物(b-3成分)から選ばれる少なくとも1種と、(C)下記式(6)で示されるリン系化合物(c-1成分)および下記式(7)で示されるリン系化合物(c-2成分)から選ばれる少なくとも1種とを含む、ポリカーボネート樹脂組成物であって、前記(A)ポリカーボネート樹脂の全構成単位における構成単位(A-1)の割合は25~100モル%であり、a成分100質量部に対してb-1成分、b-2成分、b-3成分、c-1成分およびc-2成分との合計量が0.0005~0.5質量部であり、且つb-1成分、b-2成分およびb-3成分の合計量(x質量部)とc-1成分およびc-2成分の合計量(y質量部)との質量比(x/x+y)が0.050~0.700であることを特徴とする、ポリカーボネート樹脂組成物。
【化1】
(式(1)中、R
3、R
4は夫々独立して炭素原子数1~6のアルキル基またはハロゲン原子である。Xは、単結合、置換もしくは無置換のアルキレン基、置換もしくは無置換のアルキリデン基、硫黄原子または酸素原子である。)
【化2】
(式(2)中、Wは、単結合、置換もしくは無置換のアルキレン基、置換もしくは無置換のアルキリデン基、硫黄原子または酸素原子を示す。)
【化3】
(式(3)中、Ar
1はそれぞれ同一でも異なっていてもよく、アルキル置換基を有してもよい炭素数6~20の芳香族炭化水素基である。リン化合物は互変異性体を含む。)
【化4】
(式(4)中、Ar
2はそれぞれ同一でも異なっていてもよく、アルキル置換基を有してもよい炭素数6~20の芳香族炭化水素基である。リン化合物は互変異性体を含む。)
【化5】
(式(5)中、Ar
5はアルキル置換基を有してもよい炭素数6~20の芳香族炭化水素基である。リン化合物は互変異性体を含む。)
【化6】
(式(6)中、Ar
3はそれぞれ同一でも異なっていてもよく、アルキル置換基を有してもよい炭素数6~20の芳香族炭化水素基である。)
【化7】
(式(7)中、Ar
6はそれぞれ同一でも異なっていてもよく、アルキル置換基を有してもよい炭素数6~20の芳香族炭化水素基である。)
【請求項2】
前記ポリカーボネート樹脂組成物は、a成分100質量部に対してベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤、環状イミノエステル系紫外線吸収剤およびシアノアクリレート系紫外線吸収剤からなる群より選ばれた少なくとも1種の紫外線吸収剤(e成分)を0.01~3.0質量部含有する、請求項1に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項3】
前記b-1成分は、4-ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-4’-モノ(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-ビフェニレンジホスホナイト、4-ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-3’-モノ(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-ビフェニレンジホスホナイト、3-ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-4’-モノ(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-ビフェニレンジホスホナイトまたは3-ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-3’-モノ(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-ビフェニレンジホスホナイトから選ばれる少なくとも1種であり、前記b-2成分は、4、4’-ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-ビフェニレンジホスホナイト、3、4’-ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-ビフェニレンジホスホナイトまたは3、3’-ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-ビフェニレンジホスホナイトから選ばれる少なくとも1種であり、前記b-3成分は、2,4-ジ-tert-ブチルフェニル-4-フェニル-フェニルホスホナイトまたは2,4-ジ-tert-ブチルフェニル-3-フェニル-フェニルホスホナイトである、請求項1または2に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項4】
前記c-1成分は、テトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-4,4’
-ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)
-4,3’-ビフェニレンジホスホナイトまたはテトラキス(2,4-ジ-tert-ブ
チルフェニル)-3,3’-ビフェニレンジホスホナイトから選ばれる少なくとも1種であり、前記c-2成分は、ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-4-フェニル-フェニルホスホナイトまたはビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-3-フェニル-フェニルホスホナイトである、請求項1または請求項2に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項5】
構成単位(A-1)が、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパンから誘導された構成単位であり、構成単位(A-2)が、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンから誘導された構成単位である、請求項1または請求項2に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項6】
前記ポリカーボネート樹脂組成物における、成形滞留試験350℃、10分での色相変化度ΔEが0.9以下である、請求項1または2に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項7】
前記ポリカーボネート樹脂組成物における、成形耐熱性差ΔE’が1.7以上である、請求項1または2に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1または2に記載のポリカーボネート樹脂組成物を射出成形してなる成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリカーボネート樹脂組成物およびその成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境負荷低減や意匠性などの観点から、OA機器、電気・電子機器分野、自動車分野、建築分野等これまで透明性を必要としなかった分野においても、ポリカーボネートの透明性に対する要求が強まってきている。これらの利用分野の中には、OA機器、電気・電子機器分野を中心として、高い成形耐熱性を要求される分野がある。また、自動車分野において、環境負荷低減、生産効率の向上を目的に、内装部品の塗装レス化が検討されており、表面保護を目的としたコーティング処理を不要とした塗装レス材料が求められている。このような塗装レス材料は、耐候性も必要になり、また、コーティングを要さないため、材料の表面硬度が高いものが求められる傾向にある。
【0003】
しかしながら、材料の高機能化、高性能化の要求が高まる中で、多種の添加剤が用いられるようになり、一般的には添加剤を増やすほど樹脂の成形耐熱性は低下する傾向にある。さらには、コーティング処理を施していないポリカーボネート樹脂は、屋外に暴露されるとポリマーが分解し、成形品表面が黄変するという問題がある。
【0004】
例えば、溶融成形時において樹脂成形品の金型からの離型性を向上させる為に、樹脂組
成物中に内部離型剤が配合される場合が多い。然しながらこれを有効量添加すると組成物
の耐熱性が低下する傾向にある。この耐熱性の低下を防ぐための方法として例えばリン系
安定剤を配合する方法等があげられる。特許文献1および特許文献2には、ポリカーボネート樹脂に、特定のリン系熱安定剤を配合することにより、ポリカーボネート樹脂組成物の耐熱性を向上させることが示されている。
【0005】
また、表面硬度の高い共重合ポリカーボネート樹脂としては、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパンを構成単位とするポリカーボネートやコポリカーボネートとする方法が記載されている(例えば、特許文献3~7)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001-081302号公報
【特許文献2】特開2001-192544号公報
【特許文献3】特開昭64-069625号公報
【特許文献4】特開平08-183852号公報
【特許文献5】特開平08-034846号公報
【特許文献6】特開2002-117580号公報
【特許文献7】特許第3768903号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパンを構成単位とするポリカーボネート樹脂は、表面硬度は向上するが、例えば2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンから誘導された構成単位とするポリカーボネート樹脂と比べて成形耐熱性が劣ることが課題である。
したがって、成形耐熱性、耐傷付き性(高硬度)、耐候性を共立したポリカーボネート樹脂組成物は未だ存在しない。
そこで本発明の目的は、成形耐熱性、耐傷付き性(高硬度)、耐候性を共立したポリカーボネート樹脂組成物及びその成形品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、前記目的を達成するため、鋭意研究した結果、驚くべきことに、特定の成分を共重合したポリカーボネート樹脂に、熱安定剤として特定のホスホナイト系化合物であるリン系化合物をある範囲で使用することにより、ポリカーボネート樹脂組成物の成形耐熱性を著しく向上させることを見出し、本発明に至った。
本発明によれば、下記(構成1)~(構成8)が提供される。
【0009】
(構成1)
(A-1)下記式(1)で表される構成単位および(A-2)下記式(2)で表される構成単位を含む(A)ポリカーボネート樹脂(a成分)と、(B)下記式(3)で示されるリン系化合物(b-1成分)、下記式(4)で示されるリン系化合物(b-2成分)および下記式(5)で示されるリン系化合物(b-3成分)から選ばれる少なくとも1種と、(C)下記式(6)で示されるリン系化合物(c-1成分)および下記式(7)で示されるリン系化合物(c-2成分)から選ばれる少なくとも1種とを含む、ポリカーボネート樹脂組成物であって、前記(A)ポリカーボネート樹脂の全構成単位における構成単位(A-1)の割合は25~100モル%であり、a成分100質量部に対してb-1成分、b-2成分、b-3成分、c-1成分およびc-2成分との合計量が0.0005~0.5質量部であり、且つb-1成分、b-2成分およびb-3成分の合計量(x質量部)とc-1成分およびc-2成分の合計量(y質量部)との質量比(x/x+y)が0.050~0.700であることを特徴とする、ポリカーボネート樹脂組成物。
【0010】
【化1】
(式(1)中、R
3、R
4は夫々独立して炭素原子数1~6のアルキル基またはハロゲン原子である。Xは、単結合、置換もしくは無置換のアルキレン基、置換もしくは無置換のアルキリデン基、硫黄原子または酸素原子である。)
【0011】
【化2】
(式(2)中、Wは、単結合、置換もしくは無置換のアルキレン基、置換もしくは無置換のアルキリデン基、硫黄原子または酸素原子を示す。)
【0012】
【化3】
(式(3)中、Ar
1はそれぞれ同一でも異なっていてもよく、アルキル置換基を有してもよい炭素数6~20の芳香族炭化水素基である。リン化合物は互変異性体を含む。)
【0013】
【化4】
(式(4)中、Ar
2はそれぞれ同一でも異なっていてもよく、アルキル置換基を有してもよい炭素数6~20の芳香族炭化水素基である。リン化合物は互変異性体を含む。)
【0014】
【化5】
(式(5)中、Ar
5はアルキル置換基を有してもよい炭素数6~20の芳香族炭化水素基である。リン化合物は互変異性体を含む。)
【0015】
【化6】
(式(6)中、Ar
3はそれぞれ同一でも異なっていてもよく、アルキル置換基を有してもよい炭素数6~20の芳香族炭化水素基である。)
【0016】
【化7】
(式(7)中、Ar
6はそれぞれ同一でも異なっていてもよく、アルキル置換基を有してもよい炭素数6~20の芳香族炭化水素基である。)
【0017】
(構成2)
前記ポリカーボネート樹脂組成物は、a成分100質量部に対してベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤、環状イミノエステル系紫外線吸収剤およびシアノアクリレート系紫外線吸収剤からなる群より選ばれた少なくとも1種の紫外線吸収剤(e成分)を0.01~3.0質量部含有する、構成1に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
【0018】
(構成3)
前記b-1成分は、4-ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-4’-モノ(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-ビフェニレンジホスホナイト、4-ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-3’-モノ(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-ビフェニレンジホスホナイト、3-ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-4’-モノ(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-ビフェニレンジホスホナイトまたは3-ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-3’-モノ(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-ビフェニレンジホスホナイトから選ばれる少なくとも1種であり、前記b-2成分は、4、4’-ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-ビフェニレンジホスホナイト、3、4’-ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-ビフェニレンジホスホナイトまたは3、3’-ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-ビフェニレンジホスホナイトから選ばれる少なくとも1種であり、前記b-3成分は、2,4-ジ-tert-ブチルフェニル-4-フェニル-フェニルホスホナイトまたは2,4-ジ-tert-ブチルフェニル-3-フェニル-フェニルホスホナイトである、構成1または2に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
【0019】
(構成4)
前記c-1成分は、テトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-4,4’-ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-4,3’-ビフェニレンジホスホナイトまたはテトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-3,3’-ビフェニレンジホスホナイトから選ばれる少なくとも1種であり、前記c-2成分は、ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-4-フェニル-フェニルホスホナイトまたはビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-3-フェニル-フェニルホスホナイトである、構成1~構成3のいずれか一項に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
【0020】
(構成5)
構成単位(A-1)が、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパンから誘導された構成単位であり、構成単位(A-2)が、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンから誘導された構成単位である、構成1~構成4のいずれか一項に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
(構成6)
前記ポリカーボネート樹脂組成物における、成形滞留試験350℃、10分での色相変化度ΔEが0.9以下である、構成1~構成5のいずれか一項に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
(構成7)
前記ポリカーボネート樹脂組成物における、成形耐熱性差ΔE’が1.7以上である、構成1~構成6のいずれか一項に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
(構成8)
構成1~構成7のいずれか一項に記載のポリカーボネート樹脂組成物を射出成形してなる成形品。
【発明の効果】
【0021】
本発明のポリカーボネート樹脂組成物およびそれからなる成形品は、高い成形耐熱性を持ち、さらに耐傷付き性(高硬度)、耐候性に優れているため、自動車内装部品に好適に用いられる。したがって、その奏する産業上の効果は格別である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の比較例で使用したリン系安定剤D-1のHPLC測定におけるチャートを示した図である。
【
図2】本発明の実施例で使用したリン系安定剤D-3のHPLC測定におけるチャートを示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の詳細について説明する。
【0024】
<ポリカーボネート樹脂(A)>
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、(A)ポリカーボネート樹脂(a成分)を含む。(A)ポリカーボネート樹脂(a成分)は、(A-1)下記式(1)で表される構成単位および(A-2)下記式(2)で表される構成単位を有する。
【0025】
【化8】
(式(1)中、R
3~R
4は夫々独立して炭素原子数1~6のアルキル基またはハロゲン原子である。Xは、単結合、置換もしくは無置換のアルキレン基、置換もしくは無置換のアルキリデン基、硫黄原子または酸素原子である。)
【0026】
【化9】
(式(2)中、Wは、単結合、置換もしくは無置換のアルキレン基、置換もしくは無置換のアルキリデン基、硫黄原子または酸素原子を示す。)
【0027】
上記式(1)中、R3、R4は夫々独立して炭素原子数1~6のアルキル基またはハロゲン原子であり、炭素原子数1~6のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、tert-ブチル基などが挙げられ、ハロゲン原子としては、フッ素、臭素、ヨウ素などが挙げられる。R3、R4は夫々独立して炭素原子数1~6のアルキル基であることが好ましく、なかでもメチル基が好ましい。
【0028】
上記式(1)中、Xは、単結合、置換もしくは無置換のアルキレン基、置換もしくは無置換のアルキリデン基、硫黄原子または酸素原子であり、置換もしくは無置換のアルキリデン基が好ましい。
【0029】
構成単位(A-1)を誘導する二価フェノールとしては、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン(以下、ビスフェノールCと記載)、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-イソプロピルフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン等が挙げられ、中でもビスフェノールCが重合性、耐傷付き性の点で好ましい。
【0030】
上記式(2)中、Wは単結合、置換もしくは無置換のアルキレン基、置換もしくは無置換のアルキリデン基、硫黄原子または酸素原子であり、置換もしくは無置換のアルキリデン基が好ましい。
【0031】
構成単位(A-2)を誘導する二価フェノールとしては、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(以下、ビスフェノールAと記載)、4,4’-ジヒドロキシ-1,1-ビフェニル、4,4’-ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’-ジヒドロキシジフェニルチオエーテル、4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルフィド、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ペンタン、4,4-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ヘプタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)オクタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)デカン等が例示され、中でもビスフェノールAが重合性、耐衝撃性の点で好ましい。
【0032】
(A)ポリカーボネート樹脂の全構成単位における、構成単位(A-1)の割合は25~100モル%であり、30~95モル%であると好ましく、35~75モル%であるとより好ましく、40~65モル%であるとさらに好ましく、45~55モル%が特に好ましい。上記範囲内であると、耐傷つき性に優れる。
【0033】
本発明の(A)ポリカーボネート樹脂は、二価フェノールと、カーボネート前駆体とを反応させて得られるものである。反応の方法としては界面重縮合法、溶融エステル交換法、カーボネートプレポリマーの固相エステル交換法、および環状カーボネート化合物の開環重合法などを挙げることができる。界面重縮合の場合は通常一価フェノール類の末端停止剤が使用される。また、3官能成分を重合させた分岐ポリカーボネートであってもよく、更に脂肪族ジカルボン酸や芳香族ジカルボン酸、並びにビニル系単量体を共重合させた共重合ポリカーボネートであってもよい。
【0034】
カーボネート前駆物質として例えばホスゲンを使用する反応では、通常酸結合剤および溶媒の存在下に反応を行う。酸結合剤としては例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物またはピリジン等のアミン化合物が用いられる。溶媒としては例えば塩化メチレン、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素が用いられる。また反応促進のために例えば第三級アミンまたは第四級アンモニウム塩等の触媒を用いることもできる。その際、反応温度は通常0~40℃であり、反応時間は数分~5時間である。
【0035】
カーボネート前駆物質として例えば炭酸ジエステルを用いるエステル交換反応は、不活性ガス雰囲気下所定割合の芳香族ジヒドロキシ成分を炭酸ジエステルと加熱しながら撹拌して、生成するアルコールまたはフェノール類を留出させる方法により行われる。反応温度は生成するアルコールまたはフェノール類の沸点等により異なるが、通常120~300℃の範囲である。反応はその初期から減圧にして生成するアルコールまたはフェノール類を留出させながら反応を完結させる。また反応を促進するために通常エステル交換反応に使用される触媒を使用することもできる。前記エステル交換反応に使用される炭酸ジエステルとしては、例えばジフェニルカーボネート、ジナフチルカーボネート、ビス(ジフェニル)カーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジブチルカーボネート等が挙げられる。これらのうち特にジフェニルカーボネートが好ましい。
【0036】
末端停止剤として通常使用される単官能フェノール類を使用することができる。殊にカーボネート前駆物質としてホスゲンを使用する反応の場合、単官能フェノール類は末端停止剤として分子量調節のために一般的に使用され、また得られたポリカーボネート樹脂は、末端が単官能フェノール類に基づく基によって封鎖されているので、そうでないものと比べて熱安定性に優れている。前記単官能フェノール類の具体例としては、例えばフェノール、m-メチルフェノール、p-メチルフェノール、m-プロピルフェノール、p-プロピルフェノール、1-フェニルフェノール、2-フェニルフェノール、p-tert-ブチルフェノール、p-クミルフェノール、イソオクチルフェノール、p-長鎖アルキルフェノール等が挙げられる。
【0037】
本発明の(A)ポリカーボネート樹脂は、必要に応じて三官能以上の多官能性芳香族化合物を含有する構成単位を、共重合し、分岐ポリカーボネートとすることもできる。分岐ポリカーボネートに使用される三官能以上の多官能性芳香族化合物としては、4,6-ジメチル-2,4,6-トリス(4-ヒドロキジフェニル)ヘプテン-2、2,4,6-トリメチル-2,4,6-トリス(4-ヒドロキシフェニル)ヘプタン、1,3,5-トリス(4-ヒドロキシフェニル)ベンゼン、1,1,1-トリス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,1-トリス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)エタン、2,6-ビス(2-ヒドロキシ-5-メチルベンジル)-4-メチルフェノール、および4-{4-[1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エチル]ベンゼン}-α,α-ジメチルベンジルフェノール等のトリスフェノールが好適に例示される。中でも1,1,1-トリス(4-ヒドロキシフェニル)エタンが好ましい。かかる多官能性芳香族化合物から誘導される構成単位は、他の二価成分からの構成単位との合計100モル%中、好ましくは0.03~1.5モル%、より好ましくは0.1~1.2モル%、特に好ましくは0.2~1.0モル%である。
【0038】
また分岐構造単位は、多官能性芳香族化合物から誘導されるだけでなく、溶融エステル交換法による重合反応時に生じる副反応の如き、多官能性芳香族化合物を用いることなく誘導されるものであってもよい。尚、かかる分岐構造の割合については1H-NMR測定により算出することが可能である。
【0039】
本発明の(A)ポリカーボネート樹脂は、その粘度平均分子量(Mv)が、好ましくは15,000~40,000であり、より好ましくは16,000~30,000であり、さらに好ましくは18,000~28,000である。粘度平均分子量が上記範囲内であると、実用上十分な靭性や割れ耐性が得られる。さらに、高い成形加工温度を必要とせず、または特殊な成形方法も必要としないことから汎用性に優れ、更に溶融粘度の増加により、射出速度依存性が高くなることを抑制し、外観不良等により歩留まりが低下することを防ぐことができる。
【0040】
本発明の(A)ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量は、まず、次式にて算出される比粘度(ηSP)を20℃で塩化メチレン100mlにポリカーボネート樹脂0.7gを溶解した溶液からオストワルド粘度計を用いて求め、
比粘度(ηSP)=(t-t0)/t0
[t0は塩化メチレンの落下秒数、tは試料溶液の落下秒数]
求められた比粘度(ηSP)から次の数式により粘度平均分子量Mvを算出したものである。
ηSP/c=[η]+0.45×[η]2c(但し[η]は極限粘度)
[η]=1.23×10-4Mv0.83
c=0.7
【0041】
本発明で好適に使用される(A)ポリカーボネート樹脂は、そのOH末端量がOH基の質量で好ましくは1~5000ppmの範囲であり、より好ましくは5~2000ppmの範囲であり、さらに好ましくは10~1000ppmの範囲である。
【0042】
本発明の(A)ポリカーボネート樹脂は、ガラス転移温度が110~160℃であることが好ましく、115~150℃であることがより好ましく、120~140℃であることがさらに好ましい。ガラス転移温度が上記範囲の下限以上であると耐熱性が充分で、上記範囲の上限以下であると成形加工温度を高温にする必要がなく、成形が容易となる。
【0043】
本発明の(A)ポリカーボネート樹脂は、耐傷付き性を有し、JIS K5600-5-4に記載の塗料一般試験方法-第5部:塗膜の機械的性質-第4節:引っかき硬度(鉛筆法)に則して測定した鉛筆硬度はF~4Hが好ましく、H~2Hがより好ましい。鉛筆硬度が上記範囲内であれば、成形体表面に引っかき傷が生じ難く好ましい。
なお、本発明のポリカーボネート樹脂は、ポリカーボネート共重合体および共重合ポリカーボネートブレンド物を含む。
【0044】
<(D)リン系安定剤>
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、(D)リン系安定剤として、以下のリン系化合物(b成分)、リン系化合物(c成分)を含む。
【0045】
[リン系化合物(b成分)について]
本発明において、b成分として使用されるリン系化合物は、下記式(3)で示されるリン系化合物(b-1成分)、下記式(4)で示されるリン系化合物(b-2成分)および下記式(5)で示されるリン系化合物(b-3成分)からなる群より選ばれた少なくとも1種のリン系化合物(b成分)である。
【0046】
【化10】
(式(3)中、Ar
1はそれぞれ同一でも異なっていてもよく、アルキル置換基を有してもよい炭素数6~20の芳香族炭化水素基である。リン化合物は互変異性体を含む。)
【0047】
【化11】
(式(4)中、Ar
2はそれぞれ同一でも異なっていてもよく、アルキル置換基を有してもよい炭素数6~20の芳香族炭化水素基である。リン化合物は互変異性体を含む。)
【0048】
【化12】
(式(5)中、Ar
5はアルキル置換基を有してもよい炭素数6~20の芳香族炭化水素基である。リン化合物は互変異性体を含む。)
【0049】
かかるリン系化合物(b成分)は樹脂用の安定剤として、成形耐熱性の向上に効果を発揮する。これらのb成分の安定剤はポリカーボネート樹脂に好適に用いられ、その含有量は、ポリカーボネート樹脂(a成分)100質量部に対して0.0001~0.5質量部の範囲であり、0.001~0.3質量部の範囲が好ましく、0.003~0.1質量部の範囲が最も好ましい。上記範囲内であると、ポリカーボネート樹脂組成物の成形耐熱性の向上に好ましい。
【0050】
なお、前記リン系化合物(b成分)において、前記式(3)、(4)および(5)のリン系化合物は互変異性体である。これらの互変異性体において、各々の存在割合は任意の割合であって構わない。
【0051】
前記式(3)、(4)および(5)において、Ar1、Ar2およびAr5は、それぞれ同一でも異なっていてもよく、アルキル置換基を有していてもよい炭素数6~20の芳香族炭化水素基である。芳香族炭化水素基における芳香環としては、フェニル、ナフチルなどが挙げられ、なかでもフェニルが好ましい。また、前記芳香環に置換してもよいアルキル置換基としては、炭素数1~10のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、tert-ブチル基などが挙げられ、なかでもメチル基、tert-ブチル基が好ましく、特にtert-ブチル基が好ましい。
【0052】
前記式(3)の化合物(b-1成分)の具体例としては、4-ビス(2,4-ジ-iso-プロピルフェニル)-4’-モノ(2,4-ジ-iso-プロピルフェニル)-ビフェニレンジホスホナイト、4-ビス(2,4-ジ-n-ブチルフェニル)-4’-モノ(2,4-ジ-n-ブチルフェニル)-ビフェニレンジホスホナイト、4-ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-4’-モノ(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-ビフェニレンジホスホナイト、4-ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-3’-モノ(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-ビフェニレンジホスホナイト、3-ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-4’-モノ(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-ビフェニレンジホスホナイト、3-ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-3’-モノ(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-ビフェニレンジホスホナイト、4-ビス(2,6-ジ-iso-プロピルフェニル)-4’-モノ(2,6-ジ-iso-プロピルフェニル)-ビフェニレンジホスホナイト、4-ビス(2,6-ジ-n-ブチルフェニル)-4’-モノ(2,6-ジ-n-ブチルフェニル)-ビフェニレンジホスホナイト、4-ビス(2,6-ジ-tert-ブチルフェニル)-4’-モノ(2,6-ジ-tert-ブチルフェニル)-ビフェニレンジホスホナイト、4-ビス(2,6-ジ-tert-ブチルフェニル)-3’-モノ(2,6-ジ-tert-ブチルフェニル)-ビフェニレンジホスホナイト、3-ビス(2,6-ジ-tert-ブチルフェニル)-4’-モノ(2,6-ジ-tert-ブチルフェニル)-ビフェニレンジホスホナイト、3-ビス(2,6-ジ-tert-ブチルフェニル)-3’-モノ(2,6-ジ-tert-ブチルフェニル)-ビフェニレンジホスホナイト、 4-ビス(2,4-ジ-tert-ブチル-5-メチルフェニル)-4’-モノ(2,4-ジ-tert-ブチル-5-メチルフェニル)-ビフェニレンジホスホナイト、4-ビス(2,4-ジ-tert-ブチル-5-メチルフェニル)-3’-モノ(2,4-ジ-tert-ブチル-5-メチルフェニル)-ビフェニレンジホスホナイト、3-ビス(2,4-ジ-tert-ブチル-5-メチルフェニル)-4’-モノ(2,4-ジ-tert-ブチル-5-メチルフェニル)-ビフェニレンジホスホナイト、3-ビス(2,4-ジ-tert-ブチル-5-メチルフェニル)-3’-モノ(2,4-ジ-tert-ブチル-5-メチルフェニル)-ビフェニレンジホスホナイト等があげられる。
【0053】
なかでもビス(ジ-tert-ブチルフェニル)モノ(ジ-tert-ブチルフェニル)ビフェニレンジホスホナイトが好ましく、ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)モノ(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ビフェニレンジホスホナイトがより好ましい。このビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)モノ(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ビフェニレンジホスホナイトは、具体的には4-ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-4’-モノ(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-ビフェニレンジホスホナイト、4-ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-3’-モノ(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-ビフェニレンジホスホナイト、3-ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-4’-モノ(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-ビフェニレンジホスホナイトおよび3-ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-3’-モノ(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-ビフェニレンジホスホナイトが好ましい。
【0054】
前記式(4)の化合物(b-2成分)の具体例としては、4,4’-ビス(2,4-ジ-iso-プロピルフェニル)-ビフェニレンジホスホナイト、4,4’-ビス(2,4-ジ-n-ブチルフェニル)-ビフェニレンジホスホナイト、4,4’-ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-ビフェニレンジホスホナイト、3,4’-ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-ビフェニレンジホスホナイト、3,3’-ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-ビフェニレンジホスホナイト、4,4’-ビス(2,6-ジ-iso-プロピルフェニル)-ビフェニレンジホスホナイト、4,4’-ビス(2,6-ジ-n-ブチルフェニル)-ビフェニレンジホスホナイト、4,4’-ビス(2,6-ジ-tert-ブチルフェニル)-ビフェニレンジホスホナイト、3,4’-ビス(2,6-ジ-tert-ブチルフェニル)-ビフェニレンジホスホナイト、3,3’-ビス(2,6-ジ-tert-ブチルフェニル)-ビフェニレンジホスホナイト、 4,4’-ビス(2,4-ジ-tert-ブチル-5-メチルフェニル)-ビフェニレンジホスホナイト、3,4’-ビス(2,4-ジ-tert-ブチル-5-メチルフェニル)-ビフェニレンジホスホナイト、3,3’-ビス(2,4-ジ-tert-ブチル-5-メチルフェニル)-ビフェニレンジホスホナイト等があげられる。なかでも、4、4’-ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-ビフェニレンジホスホナイト、3、4’-ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-ビフェニレンジホスホナイトまたは3、3’-ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-ビフェニレンジホスホナイトが好ましい。
【0055】
前記式(5)の化合物(b-3成分)の具体例としては、2,4-ジ-iso-プロピルフェニル-4-フェニル-フェニルホスホナイト、2,4-ジ-n-ブチルフェニル-3-フェニル-フェニルホスホナイト、2,4-ジ-tert-ブチルフェニル-4-フェニル-フェニルホスホナイト、2,4-ジ-tert-ブチルフェニル-3-フェニル-フェニルホスホナイト、2,6-ジ-iso-プロピルフェニル-4-フェニル-フェニルホスホナイト、2,6-ジ-n-ブチルフェニル-3-フェニル-フェニルホスホナイト、2,6-ジ-tert-ブチルフェニル-4-フェニル-フェニルホスホナイト、2,6-ジ-tert-ブチルフェニル-3-フェニル-フェニルホスホナイト、2,4-ジ-tert-ブチル-5-メチルフェニル-3-フェニル-フェニルホスホナイト等があげられる。
【0056】
なかでも、(ジ-tert-ブチルフェニル)-フェニル-フェニルホスホナイトが好ましく、(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-フェニル-フェニルホスホナイトが特に好ましい。具体的には2,4-ジ-tert-ブチルフェニル-4-フェニル-フェニルホスホナイトおよび2,4-ジ-tert-ブチルフェニル-3-フェニル-フェニルホスホナイトが耐熱性が高く好ましい。
【0057】
[リン系化合物(c成分)について]
本発明において、前記b成分として使用されるリン系化合物は、下記式(6)または下記式(7)のリン系化合物(c成分)を加水分解することにより得ることができる。
【0058】
【化13】
(式(6)中、Ar
3はそれぞれ同一でも異なっていてもよく、アルキル置換基を有してもよい炭素数6~20の芳香族炭化水素基である。)
【0059】
【化14】
(式(7)中、Ar
6はそれぞれ同一でも異なっていてもよく、アルキル置換基を有してもよい炭素数6~20の芳香族炭化水素基である。)
【0060】
すなわち、前記式(3)のリン系化合物(b-1成分)および前記式(4)のリン系化合物(b-2成分)は前記式(6)のリン系化合物(c-1成分)を加水分解することにより得ることができ、前記式(5)のリン系化合物(b-3成分)は前記式(7)のリン系化合物(c-1成分)を加水分解することにより得ることができる。
【0061】
前記式(6)および(7)において、Ar3およびAr6は、それぞれ同一でも異なっていてもよく、アルキル置換基を有していてもよい炭素数6~20の芳香族炭化水素基である。芳香族炭化水素基における芳香環としては、フェニル、ナフチルなどが挙げられ、なかでもフェニルが好ましい。また、前記芳香環に置換してもよいアルキル置換基としては、炭素数1~10のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、tert-ブチル基などが挙げられ、なかでもメチル基、tert-ブチル基が好ましく、特にtert-ブチル基が好ましい。
【0062】
前記式(6)の化合物(c-1成分)の具体例としては、テトラキス(2,4-ジ-iso-プロピルフェニル)-4,4’-ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4-ジ-n-ブチルフェニル)-4,4’-ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-4,4’-ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-4,3’-ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-3,3’-ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6-ジ-iso-プロピルフェニル)-4,4’-ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6-ジ-n-ブチルフェニル)-4,4’-ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6-ジ-tert-ブチルフェニル)-4,4’-ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6-ジ-tert-ブチルフェニル)-4,3’-ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6-ジ-tert-ブチルフェニル)-3,3’-ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4-ジ-tert-ブチル-5-メチルフェニル)-4,4’-ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4-ジ-tert-ブチル-5-メチルフェニル)-4,3’-ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4-ジ-tert-ブチル-5-メチルフェニル)-3,3’-ビフェニレンジホスホナイト等が挙げられる。
【0063】
なかでも、テトラキス(ジ-tert-ブチルフェニル)-ビフェニレンジホスホナイトが好ましく、テトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-ビフェニレンジホスホナイトがより好ましい。かかるテトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-ビフェニレンジホスホナイトは、具体的にはテトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-4,4’-ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-4,3’-ビフェニレンジホスホナイトおよびテトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-3,3’-ビフェニレンジホスホナイトが好ましい。これらの化合物は2種以上の混合物であってもよい。
【0064】
前記式(7)の化合物(c-2成分)の具体例としては、ビス(2,4-ジ-iso-プロピルフェニル)-4-フェニル-フェニルホスホナイト、ビス(2,4-ジ-n-ブチルフェニル)-3-フェニル-フェニルホスホナイト、ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-4-フェニル-フェニルホスホナイト、ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-3-フェニル-フェニルホスホナイト、ビス(2,6-ジ-iso-プロピルフェニル)-4-フェニル-フェニルホスホナイト、ビス(2,6-ジ-n-ブチルフェニル)-3-フェニル-フェニルホスホナイト、ビス(2,6-ジ-tert-ブチルフェニル)-4-フェニル-フェニルホスホナイト、ビス(2,6-ジ-tert-ブチルフェニル)-3-フェニル-フェニルホスホナイト、ビス(2,4-ジ-tert-ブチル-5-メチルフェニル)-3-フェニル-フェニルホスホナイト等があげられる。なかでも、ビス(ジ-tert-ブチルフェニル)-フェニル-フェニルホスホナイトが好ましく、ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-フェニル-フェニルホスホナイトがより好ましい。このビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-フェニル-フェニルホスホナイトは、具体的にはビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-4-フェニル-フェニルホスホナイトおよびビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-3-フェニル-フェニルホスホナイトが好ましい。これらの化合物は2種以上の混合物であってもよい。
【0065】
ポリカーボネート樹脂(a成分)に、前記リン系化合物(D)を配合する際に、c-1成分とc-2成分との混合物を含有するリン系化合物を加水分解したものを好ましく使用することができる。c-1成分とc-2成分との混合物を含有するリン系化合物は耐熱性が高いため、高温の溶融加工時でも使用できる。
【0066】
この場合、ポリカーボネート樹脂(a成分)に配合するリン系化合物は、前記b成分と前記c成分とを含有するリン系化合物となる。このリン系化合物は、b-1成分、b-2成分およびb-3成分の合計量(x質量部)とc-1成分およびc-2成分の合計量(y質量部)との質量比(x/x+y)が0.050~0.700の範囲であり、0.100~0.650の範囲とすることが好ましく、0.150~0.500の範囲とすることがより好ましく、0.150~0.400の範囲とすることがさらに好ましく、0.150~0.400の範囲とすることが特に好ましく、0.200~0.350の範囲とすることが最も好ましい。上記範囲内であると、加水分解したリン化合物が粘調にならず、ポリカーボネート樹脂(a成分)に添加した時に、均一に分散させることができ、高温の溶融加工時には、ポリカーボネート樹脂の熱分解を抑制できる。
【0067】
また、このリン系化合物は、ポリカーボネート樹脂(a成分)100質量部に対して、b-1成分、b-2成分およびb-3成分と、c-1成分およびc-2成分との合計量が0.0005~0.5質量部の範囲、好ましくは0.001~0.3質量部の範囲、より好ましくは0.003~0.2質量部の範囲となるように配合される。上記範囲内であると、ポリカーボネート樹脂の成形耐熱性が向上し好ましい。
【0068】
[他のリン系化合物について]
また、本発明において、ポリカーボネート樹脂(a成分)に熱安定剤として前記b成分やc成分以外のリン系化合物を配合してもよい。かかるリン系化合物として、具体的には、トリス(ジメチルフェニル)ホスファイト、トリス(ジエチルフェニル)ホスファイト、トリス(ジ-iso-プロピルフェニル)ホスファイト、トリス(ジ-n-ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,6-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4-ジ-tert-ブチル-5-メチルフェニル)ホスファイト等のトリス(ジアルキル置換フェニル)ホスファイト、ビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、2,2-メチレンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)オクチルホスファイト、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、トリブチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリメチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、ジフェニルモノオルソキセニルホスフェート、ジブチルホスフェート、ジオクチルホスフェート、ジイソプロピルホスフェート、ベンゼンホスホン酸ジメチル、ベンゼンホスホン酸ジエチル、ベンゼンホスホン酸ジプロピル等が挙げられる。
【0069】
なかでもトリス(ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイトが好ましく、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイトが特に好ましく使用される。かかるリン系化合物は1種または2種以上の混合物であってもよい。かかるリン系化合物はポリカーボネート樹脂(a成分)100質量部に対して、0.0005~0.2質量部の範囲が好ましく、0.005~0.1質量部の範囲がより好ましい。かかるリン化合物は部分的に加水分解したホスホナイトであってもよい。
【0070】
<リン系化合物以外の安定剤>
本発明のポリカーボネート樹脂組成物には、その成形加工時の熱安定性、耐熱老化性および成形品の耐乾熱性を向上させることを主たる目的として、ヒンダードフェノール系安定剤を含んでも良い。
【0071】
かかるヒンダードフェノール系安定剤としては、例えば、α-トコフェロール、ブチルヒドロキシトルエン、シナピルアルコール、ビタミンE、テトラキス[メチレン-3-(3’,5’-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2-tert-ブチル-6-(3’-tert-ブチル-5’-メチル-2’-ヒドロキシベンジル)-4-メチルフェニルアクリレート、2,6-ジ-tert-ブチル-4-(N,N-ジメチルアミノメチル)フェノール、3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジルホスホネートジエチルエステル、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、2,2’-メチレンビス(4-エチル-6-tert-ブチルフェノール)、4,4’-メチレンビス(2,6-ジ-tert-ブチルフェノール)、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-シクロヘキシルフェノール)、2,2’-ジメチレン-ビス(6-α-メチル-ベンジル-p-クレゾール)2,2’-エチリデン-ビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェノール)、2,2’-ブチリデン-ビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、4,4’-ブチリデンビス(3-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、トリエチレングリコール-N-ビス-3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオネート、1,6-へキサンジオールビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ビス[2-tert-ブチル-4-メチル6-(3-tert-ブチル-5-メチル-2-ヒドロキシベンジル)フェニル]テレフタレート、3,9-ビス{2-[3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ]-1,1,-ジメチルエチル}-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、4,4’-チオビス(6-tert-ブチル-m-クレゾール)、4,4’-チオビス(3-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、2,2’-チオビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、ビス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)スルフィド、4,4’-ジ-チオビス(2,6-ジ-tert-ブチルフェノール)、4,4’-トリ-チオビス(2,6-ジ-tert-ブチルフェノール)、2,2-チオジエチレンビス-[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,4-ビス(n-オクチルチオ)-6-(4-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-tert-ブチルアニリノ)-1,3,5-トリアジン、N,N’-ヘキサメチレンビス-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシヒドロシンナミド)、N,N’-ビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニル]ヒドラジン、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-tert-ブチルフェニル)ブタン、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)イソシアヌレート、トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、1,3,5-トリス(4-tert-ブチル-3-ヒドロキシ-2,6-ジメチルベンジル)イソシアヌレート、1,3,5-トリス2[3(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]エチルイソシアヌレート、およびペンタエリスリトールテトラキス(3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート)などが例示される。
【0072】
ヒンダードフェノール系安定剤のなかでもペンタエリスリトールテトラキス(3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート)、オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)-プロピオネートが好ましい。ヒンダードフェノール系安定剤の融点は特に限定されないが、好ましくは30~300℃の範囲であり、より好ましくは40~250℃の範囲であり、さらに好ましくは50~200℃の範囲である。融点が上記範囲内であると、耐乾熱性、耐候性および射出成形時の金型付着抑制効果に優れる。上記ヒンダードフェノール系酸化防止剤は、単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0073】
ヒンダードフェノール系安定剤の含有量は、(A)ポリカーボネート樹脂100質量部に対して、0.015~0.15質量部の範囲が好ましく、0.03~0.08質量部の範囲がより好ましい。
【0074】
ヒンダードフェノール系安定剤の含有量が多すぎると材料の物性(衝撃強度や硬度)の低下、さらに成形時の金型汚染を起こしやすく好ましくない。また、ヒンダードフェノール系安定剤の含有量が少なすぎると透明性、色相および耐乾熱性が悪化する傾向にあり好ましくない。
【0075】
また、上記リン系安定剤とヒンダードフェノール系安定剤は併用して使用することにより、物性(衝撃強度や硬度)、耐乾熱性および金型付着抑制効果をバランスよく併せ持つポリカーボネート樹脂組成物を得ることができる。
【0076】
<紫外線吸収剤>
本発明に使用されるポリカーボネート組成物は紫外線吸収剤を含有する。紫外線吸収剤としては、融点130℃以上である紫外線吸収剤が使用される。融点が下限未満である紫外線吸収剤を使用した場合、耐乾熱性および耐候性に劣り、且つ射出成形時の金型付着物が多くなり、金型汚染や得られる成形品の色相や外観が悪化することになり好ましくない。紫外線吸収剤の融点は好ましくは140℃以上であり、より好ましくは150℃以上であり、さらに好ましくは170℃以上であり、特に好ましくは190℃以上である。
【0077】
紫外線吸収剤としては、具体的にはベンゾフェノン系では、例えば、2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-オクトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-ベンジロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシ-5-スルホキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシ-5-スルホキシトリハイドライドレイトベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’-テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4,4’-ジメトキシベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4,4’-ジメトキシ-5-ソジウムスルホキシベンゾフェノン、ビス(5-ベンゾイル-4-ヒドロキシ-2-メトキシフェニル)メタン、2-ヒドロキシ-4-n-ドデシルオキシベンソフェノン、および2-ヒドロキシ-4-メトキシ-2’-カルボキシベンゾフェノンなどが例示される。
【0078】
ベンゾトリアゾール系では、例えば、2-(2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-5-tert-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-3,5-ジクミルフェニル)フェニルベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-3-tert-ブチル-5-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2,2’-メチレンビス[4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)-6-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)フェノール]、2-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ブチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-5-tert-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-5-tert-ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-4-オクトキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2’-メチレンビス(4-クミル-6-ベンゾトリアゾールフェニル)、2,2’-p-フェニレンビス(1,3-ベンゾオキサジン-4-オン)、および2-[2-ヒドロキシ-3-(3,4,5,6-テトラヒドロフタルイミドメチル)-5-メチルフェニル]ベンゾトリアゾール、並びに2-(2’-ヒドロキシ-5-メタクリロキシエチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾールと該モノマーと共重合可能なビニル系モノマーとの共重合体や2-(2’-ヒドロキシ-5-アクリロキシエチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾールと該モノマーと共重合可能なビニル系モノマーとの共重合体などの2-ヒドロキシフェニル-2H-ベンゾトリアゾール骨格を有する重合体などが例示される。
【0079】
ヒドロキシフェニルトリアジン系では、例えば、2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-ヘキシルオキシフェノール、2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-メチルオキシフェノール、2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-エチルオキシフェノール、2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-プロピルオキシフェノール、2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-ブチルオキシフェノールなどが例示される。さらに2-(4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-ヘキシルオキシフェノールなど、上記例示化合物のフェニル基が2,4-ジメチルフェニル基となった化合物が例示される。
【0080】
環状イミノエステル系では、例えば2,2’-p-フェニレンビス(3,1-ベンゾオキサジン-4-オン)、2,2’-(4,4’-ジフェニレン)ビス(3,1-ベンゾオキサジン-4-オン)、および2,2’-(2,6-ナフタレン)ビス(3,1-ベンゾオキサジン-4-オン)などが例示される。
【0081】
また紫外線吸収剤としては、具体的にシアノアクリレート系では、例えば1,3-ビス-[(2’-シアノ-3’,3’-ジフェニルアクリロイル)オキシ]-2,2-ビス[(2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリロイル)オキシ]メチル)プロパン、および1,3-ビス-[(2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリロイル)オキシ]ベンゼンなどが例示される。
【0082】
さらに上記紫外線吸収剤は、ラジカル重合が可能な単量体化合物の構造をとることにより、かかる紫外線吸収性単量体および/またはヒンダードアミン構造を有する光安定性単量体と、アルキル(メタ)アクリレートなどの単量体とを共重合したポリマー型の紫外線吸収剤であってもよい。上記紫外線吸収性単量体としては、(メタ)アクリル酸エステルのエステル置換基中にベンゾトリアゾール骨格、ベンゾフェノン骨格、トリアジン骨格、環状イミノエステル骨格、およびシアノアクリレート骨格を含有する化合物が好適に例示される。
【0083】
上記の中でも紫外線吸収能の点においてはベンゾトリアゾール系およびヒドロキシフェニルトリアジン系が好ましい。上記紫外線吸収剤(E)は単独であるいは2種以上の混合物で用いてもよい。紫外線吸収剤の具体例の2,2’-メチレンビス[4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)-6-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)フェノール]、2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-ヘキシルオキシ-フェノールが好ましい。
【0084】
紫外線吸収剤の含有量は、(A)ポリカーボネート樹脂100質量部に対して、0.01~3.0質量部であり、好ましくは0.02~1.0質量部であり、より好ましくは0.05~0.8質量部である。かかる配合量の範囲であれば、本発明における各リン系化合物の効果が十分に発現し、発明の目的を達成することができ、且つポリカーボネート樹脂に十分な耐候性が付与される。また、材料の物性(衝撃強度や硬度)低下や成形時の耐熱性の悪化や成形時の金型汚染の発生を抑制できる。
【0085】
<その他の成分>
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、離型剤、流動改質剤および帯電防止剤などのそれ自体公知の機能剤を含有できる。
【0086】
(i)離型剤
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、離型剤を併用しても良い。離型剤としては、例えば、脂肪酸エステル、ポリオレフィン系ワックス(ポリエチレンワックス、1-アルケン重合体など。酸変性などの官能基含有化合物で変性されているものも使用できる)、フッ素化合物(ポリフルオロアルキルエーテルに代表されるフッ素オイルなど)、パラフィンワックス、蜜蝋などを挙げることができる。これらの中でも入手の容易さ、離型性および透明性の点から脂肪酸エステルが好ましい。離型剤を含有させる割合は、(A)ポリカーボネート樹脂100質量部に対して、好ましくは0.005~0.5質量部、より好ましくは0.007~0.4質量部、更に好ましくは0.01~0.3質量部である。含有量が上記範囲の下限以上では、離型性の改良効果が明確に発揮され、上限以下の場合、成形時の金型汚染などの悪影響が低減され好ましい。
【0087】
上記の中でも好ましい離型剤として用いられる脂肪酸エステルについて、さらに詳述する。かかる脂肪酸エステルは、脂肪族アルコールと脂肪族カルボン酸とのエステルである。かかる脂肪族アルコールは1価アルコールであっても2価以上の多価アルコールであってもよい。また該アルコールの炭素数としては、好適には3~32の範囲、より好適には5~30の範囲である。かかる一価アルコールとしては、例えばドデカノール、テトラデカノール、ヘキサデカノール、オクタデカノール、エイコサノール、テトラコサノール、セリルアルコール、およびトリアコンタノールなどが例示される。かかる多価アルコールとしては、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、ポリグリセロール(トリグリセロール~ヘキサグリセロール)、ジトリメチロールプロパン、キシリトール、ソルビトール、およびマンニトールなどが挙げられる。脂肪酸エステルにおいては多価アルコールがより好ましい。
【0088】
一方、脂肪族カルボン酸は炭素数3~32であることが好ましく、特に炭素数10~22の脂肪族カルボン酸が好ましい。該脂肪族カルボン酸としては、例えばデカン酸、ウンデカン酸、ドデカン酸、トリデカン酸、テトラデカン酸、ペンタデカン酸、ヘキサデカン酸(パルミチン酸)、ヘプタデカン酸、オクタデカン酸(ステアリン酸)、ノナデカン酸、イコサン酸、およびドコサン酸(ベヘン酸)などの飽和脂肪族カルボン酸、並びにパルミトレイン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、エイコセン酸、エイコサペンタエン酸、およびセトレイン酸などの不飽和脂肪族カルボン酸を挙げることができる。上記の中でも脂肪族カルボン酸は、炭素原子数14~20であるものが好ましい。なかでも飽和脂肪族カルボン酸が好ましい。かかる脂肪族カルボン酸は通常、動物性油脂(牛脂および豚脂など)や植物性油脂(パーム油など)などの天然油脂類から製造されるため、これらの脂肪族カルボン酸は、通常炭素原子数の異なる他のカルボン酸成分を含む混合物である。したがって脂肪族カルボン酸の製造においてもかかる天然油脂類から製造され、他のカルボン酸成分を含む混合物の形態からなる。脂肪酸エステルにおける酸価は、20以下(実質的に0を取り得る)であることが好ましい。しかしながら全エステル(フルエステル)の場合には、離型性を向上させるため、少なくからず遊離の脂肪酸を含有することが好ましく、この点においてフルエステルにおける酸価は3~15の範囲が好ましい。また脂肪酸エステルのヨウ素価は、10以下(実質的に0を取り得る)が好ましい。これらの特性はJIS K 0070に規定された方法により求めることができる。
【0089】
前述の脂肪酸エステルは、部分エステルおよびフルエステルのいずれであってもよいが、より良好な離型性および耐久性の点で部分エステルが好ましく、特にグリセリンモノエステルが好ましい。グリセリンモノエステルは、グリセリンと脂肪酸のモノエステルが主成分であり、好適な脂肪酸としてはステアリン酸、パルチミン酸、ベヘン酸、アラキン酸、モンタン酸、およびラウリン酸等の飽和脂肪酸やオレイン酸、リノール酸、およびソルビン酸等の不飽和脂肪酸が挙げられ、特にステアリン酸、ベヘン酸、およびパルチミン酸のグリセリンモノエステルを主成分としたものが好ましい。尚、かかる脂肪酸は、天然の脂肪酸から合成されたものであり、上述のとおり混合物となる。そのような場合でも、脂肪酸エステル中のグリセリンモノエステルの割合は60質量%以上であることが好ましい。
【0090】
なお、部分エステルは、熱安定性の点ではフルエステルに対して劣る場合が多い。かかる部分エステルの熱安定性を向上するため、部分エステルは、好ましくは20ppm未満、より好ましくは5ppm未満、更に好ましくは1ppm未満のナトリウム金属含有量とすることが好ましい。ナトリウム金属含有量が1ppm未満の脂肪酸部分エステルは、脂肪酸部分エステルを通常の方法で製造した後、分子蒸留などにより精製して製造することができる。
【0091】
具体的には、スプレーノズル式脱ガス装置によりガス分および低沸点物質を除去した後に流下膜式蒸留装置を用い蒸留温度120~150℃、真空度0.01~0.03kPaの条件にてグリセリン等の多価アルコール分を除去し、更に遠心式分子蒸留装置を用いて、蒸留温度160~230℃、真空度0.01~0.2Torrの条件にて高純度の脂肪酸部分エステルを留出分として得る方法などがあり、ナトリウム金属は蒸留残渣として除去できる。得られた留出分に対し、繰り返し分子蒸留を行うことにより、更に純度を上げ、ナトリウム金属含有量の更に少ない脂肪酸部分エステルを得ることもできる。また前もって適切な方法にて分子蒸留装置内を十分に洗浄し、また気密性を高めるなどにより外部環境からのナトリウム金属成分の混入を防ぐことも肝要である。かかる脂肪酸エステルは、専門業者(例えば理研ビタミン(株))から入手可能である。
【0092】
(ii)流動改質剤
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、流動改質剤を含むことができる。かかる流動改質剤としては、スチレン系オリゴマー、ポリカーボネートオリゴマー(高度分岐型、ハイパーブランチ型および環状オリゴマー型を含む)、ポリアルキレンテレフタレートオリゴマー(高度分岐型、ハイパーブランチ型および環状オリゴマー型を含む)高度分岐型およびハイパーブランチ型の脂肪族ポリエステルオリゴマー、テルペン樹脂、並びにポリカプロラクトン等が好適に例示される。かかる流動改質剤は、(A)ポリカーボネート樹脂100質量部当たり、好ましくは0.1~30質量部、より好ましくは1~20質量部、さらに好ましくは2~15質量部である。特にポリカプロラクトンが好適であり、組成割合は(A)ポリカーボネート樹脂100質量部あたり、特に好ましくは2~7質量部である。ポリカプロラクトンの分子量は数平均分子量で表して1,000~70,000であり、1,500~40,000が好ましく、2,000~30,000がより好ましく、2,500~15,000が更に好ましい。
【0093】
(iii)帯電防止剤
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、帯電防止性を向上させることを主たる目的として帯電防止剤を配合することができる。帯電防止剤としては、スルホン酸ホスホニウム塩、亜リン酸エステル、カプロラクトン系重合体等を使用することができ、スルホン酸ホスホニウム塩が好ましく使用される。かかるスルホン酸ホスホニウム塩の具体例としては、ドデシルスルホン酸テトラブチルホスホニウム、ドデシルベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム、ドデシルベンゼンスルホン酸トリブチルオクチルホスホニウム、ドデシルベンゼンスルホン酸テトラオクチルホスホニウム、オクタデシルベンゼンスルホン酸テトラエチルホスホニウム、ジブチルベンゼンスルホン酸トリブチルメチルホスホニウム、ジブチルナフチルスルホン酸トリフェニルホスホニウム、ジイソプロピルナフチルスルホン酸トリオクチルメチルホスホニウム等が挙げられる。中でも、ポリカーボネートとの相溶性及び入手が容易な点で、ドデシルベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウムが好ましい。帯電防止剤の量は、(A)ポリカーボネート樹脂100質量部に対し、好ましくは0.1~5.0質量部、より好ましくは0.2~3.0質量部、さらに好ましくは0.3~2.0質量部、特に好ましくは0.5~1.8質量部配合される。0.1質量部以上では、帯電防止の効果が得られ、5.0質量部以下であると透明性や機械的強度に優れ、成形品表面にシルバーや剥離が生じず外観不良を引き起こし難い。
【0094】
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、他にも、ブルーイング剤、蛍光染料、難燃剤、および染顔料などの各種の添加剤を含有することができる。これらは、本発明の効果を損なわない範囲で、適宜選択して含有することができる。
【0095】
ブルーイング剤は、(A)ポリカーボネート樹脂中0.05~3.0ppm(質量割合)含んでなることが好ましい。ブルーイング剤としては代表例として、バイエル社のマクロレックスバイオレットB及びマクロレックスブルーRR、並びにクラリアント社のポリシンスレンブルーRLSなどが挙げられる。
【0096】
蛍光染料(蛍光増白剤を含む)としては、例えば、クマリン系蛍光染料、ベンゾピラン系蛍光染料、ペリレン系蛍光染料、アンスラキノン系蛍光染料、チオインジゴ系蛍光染料、キサンテン系蛍光染料、キサントン系蛍光染料、チオキサンテン系蛍光染料、チオキサントン系蛍光染料、チアジン系蛍光染料、およびジアミノスチルベン系蛍光染料などを挙げることができる。蛍光染料(蛍光増白剤を含む)の配合量は、(A)ポリカーボネート樹脂100質量部に対して0.0001~0.1質量部が好ましい。
【0097】
難燃剤としては、例えば、スルホン酸金属塩系難燃剤、ハロゲン含有化合物系難燃剤、燐含有化合物系難燃剤、および珪素含有化合物系難燃剤などを挙げることができる。これらの中でも、スルホン酸金属塩系難燃剤が好ましい。難燃剤の配合量は、通常、(A)ポリカーボネート樹脂100質量部に対し、0.01~1質量部が好ましく、0.05~1質量部の範囲がより好ましい。
【0098】
本発明の樹脂組成物を製造するには、任意の方法が採用される。例えばa成分、b-1成分、b-2成分、b-3成分、c-1成分およびc-2成分、並びに任意に他の添加剤を、V型ブレンダー、ヘンシェルミキサー、メカノケミカル装置、押出混合機などの予備混合手段を用いて充分に混合した後、必要に応じて押出造粒器やブリケッティングマシーンなどによりかかる予備混合物の造粒を行い、その後ベント式二軸押出機に代表される溶融混練機で溶融混練し、ペレタイザーによりペレット化する方法が挙げられる。かかるペレットから射出成形法、押出成形法、圧縮成形法、押出圧縮成形法、シート押出し法等の通常知られている方法で成形品やシートにすることができる。
【0099】
ポリカーボネート樹脂とリン系化合物およびその他の添加剤とのブレンドにあたっては、一段階で実施してもよいが、二段階以上に分けて実施してもよい。二段階に分けて実施する方法には、例えば、配合予定のポリカーボネート樹脂パウダーやペレットの一部と添加剤とをブレンドした後、つまり、添加剤をポリカーボネート樹脂パウダーで希釈して添加剤のマスターバッチとした後、これを用いて最終的なブレンドを行う方法がある。例えば、一段階でブレンドする方法においては、各所定量の各添加剤を予め混合したものをポリカーボネート樹脂パウダーやペレットとブレンドする方法、また、各所定量の各添加剤を各々別個に計量し、ポリカーボネート樹脂パウダーやペレットに順次添加後ブレンドする方法等を採用することができる。リン系化合物以外の添加剤の配合にあたっては、かかる添加剤を押出機に直接添加、注入する方法をとることができる。その場合、各添加剤を加熱融解後注入することも可能である。また、溶液重合法(界面重合法)においては、重合終了後のポリカーボネート樹脂の有機溶媒溶液を撹拌された温水中に導入し、撹拌流中でポリカーボネート粉状体を製造する方法がしばしば用いられる。この際、ポリカーボネート樹脂の有機溶媒溶液に、予め上記c成分を含有するリン系化合物を添加溶解し、これを温水中に導入する事によりc成分のリン系化合物の一部を加水分解させ、上記b成分に変性させる事により、ポリカーボネート樹脂に導入する方法も採用される。
【0100】
上記方法における押出機は単軸押出機、および二軸押出機のいずれもが利用できるが、生産性や混練性の観点からは二軸押出機が好ましい。かかる二軸押出機の代表的な例としては、ZSK(Werner & Pfleiderer社製、商品名)を挙げることができる。同様のタイプの具体例としてはTEX((株)日本製鋼所製、商品名)、TEM(東芝機械(株)製、商品名)、KTX((株)神戸製鋼所製、商品名)などを挙げることができる。押出機としては、原料中の水分や、溶融混練樹脂から発生する揮発ガスを脱気できるベントを有するものが好ましく使用できる。ベントからは発生水分や揮発ガスを効率よく押出機外部へ排出するための真空ポンプが好ましく設置される。また押出原料中に混入した異物などを除去するためのスクリーンを押出機ダイス部手前のゾーンに設置し、異物を樹脂組成物から取り除くことも可能である。かかるスクリーンとしては金網、スクリーンチェンジャー、焼結金属プレート(ディスクフィルターなど)などを挙げることができる。
【0101】
更に添加剤は、独立して押出機に供給することもできるが、前述のとおり樹脂原料と予備混合することが好ましい。かかる予備混合の手段には、ナウターミキサー、V型ブレンダー、ヘンシェルミキサー、メカノケミカル装置、および押出混合機などが例示される。より好適な方法は、例えば原料樹脂の一部と添加剤とをヘンシェルミキサーの如き高速攪拌機で混合してマスター剤を作成した後、かかるマスター剤物を残る全量の樹脂原料とナウターミキサーの如き高速でない攪拌機で混合する方法である。
【0102】
押出機より押出された樹脂組成物は、直接切断してペレット化するか、またはストランドを形成した後かかるストランドをペレタイザーで切断してペレット化される。外部の埃などの影響を低減する必要がある場合には、押出機周囲の雰囲気を清浄化することが好ましい。更にかかるペレットの製造においては、光学ディスク用ポリカーボネート樹脂において既に提案されている様々な方法を用いて、ペレットの形状分布の狭小化、ミスカット物の更なる低減、運送または輸送時に発生する微小粉の更なる低減、並びにストランドやペレット内部に発生する気泡(真空気泡)の低減を行うことが好ましい。ミスカットの低減には、ペレタイザーでの切断時のスレッドの温度管理、切断時のイオン風の吹き付け、ペレタイザーのすくい角の適正化、および離型剤の適切な配合などの手段、並びに切断されたペレットと水との混合物を濾過してペレットと水およびミスカットとを分離する方法などが挙げられる。その測定方法の一例は例えば特開2003-200421号公報に開示されている。これらの処方により成形のハイサイクル化、およびシルバーの如き不良発生割合の低減を行うことができる。
【0103】
成形材料(ペレット)におけるミスカット量は、好ましくは10ppm以下、より好ましくは5ppm以下である。ここで、ミスカットとは、目開き1.0mmのJIS標準篩を通過する所望の大きさのペレットより細かい粉粒体を意味する。ペレットの形状は、円柱、角柱、および球状など一般的な形状を取り得るが、より好適には円柱(楕円柱を含む)であり、かかる円柱の直径は好ましくは1.5~4mm、より好ましくは2~3.5mmである。楕円柱において長径に対する短径の割合は、好ましくは60%以上、より好ましくは65%以上である。一方、円柱の長さは好ましくは2~4mm、より好ましくは2.5~3.5mmである。
【0104】
<ポリカーボネート樹脂組成物の特性>
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、特定の(A)ポリカーボネート樹脂に、特定の成分を有するリン系安定剤を特定量の範囲で配合することにより、上述した耐傷付き性(高硬度)を保持しながら、成形耐熱性に優れ、且つ成形品の耐候性に優れることを見出した。
【0105】
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、ガラス転移温度が110~160℃であることが好ましく、115~150℃であることがより好ましく、120~140℃であることがさらに好ましい。ガラス転移温度が上記範囲の下限以上であると耐熱性が充分で、上記範囲の上限以下であると成形加工温度を高温にする必要がなく、成形が容易となる。
【0106】
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、JIS K7211-2に即して測定された高速面衝撃試験による衝撃エネルギーが25J以上であることが好ましく、30J以上であることがより好ましい。さらに、破壊形態が延性破壊であることが好ましい。衝撃エネルギーが上記数値以上であると、脆性破壊を生じず、耐衝撃性に優れるため好ましい。衝撃エネルギーは50J以下で十分な特性を有する。
【0107】
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、JIS K7202-2に準拠し、Mスケールにて測定したロックウェル硬度が90以上であることが好ましく、95以上であることがより好ましい。ロックウェル硬度が上記数値以上であると、耐傷付き性に優れるため、好ましい。なお、ロックウェル硬度は120以下で十分な特性を有する。
【0108】
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、耐傷付き性を有し、JIS K5600-5-4に記載の塗料一般試験方法-第5部:塗膜の機械的性質-第4節:引っかき硬度(鉛筆法)に則して測定した鉛筆硬度はF~4Hが好ましく、H~2Hがより好ましい。鉛筆硬度が上記範囲内であれば、成形体表面に引っかき傷が生じ難く好ましい。
【0109】
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、耐候性に優れる。耐候性は、下記の方法で測定したΔYIが、好ましくは10.0以下であり、より好ましくは9.0以下であり、さらに好ましくは8.5以下である。
耐候性の測定方法;ポリカーボネート樹脂組成物ペレットを、算術平均粗さ(Ra)が0.03μmとしたキャビティ面を持つ金型を使用し、日本製鋼所製の射出成形機 J-75E3を用いてシリンダ温度290℃、金型温度80℃の条件で、保圧時間20秒および冷却時間20秒にて幅50mm、長さ90mm、厚みがゲート側から3mm(長さ20mm)、2mm(長さ45mm)、1mm(長さ25mm)である3段型プレートを成形した。得られたプレートについて、スガ試験機株式会社製スーパーキセノンウェザーメーター試験機SX75を用い、照射照度180W/m2(300-400nm)、雨あり(18分/120分)、照射時:ブラックパネル温度63℃湿度50%、降雨時:槽内温度38℃湿度95%の条件で、1,000hr処理をした。耐候促進試験1,000hr処理前後でプレート厚み2mm部のYI(黄色度)を測定し、黄色変化度(ΔYI)を評価した。評価機器として日本電色(株)製SE2000型を用いてC光源、視野角2°、透過法で測定した。
【0110】
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、下記の方法で測定した滞留前後の平板の色差を表す成形耐熱性ΔEが0.9以下であることが好ましく、0.7以下であることがより好ましく、0.5以下であることがさらに好ましく、0.4以下であることが特に好ましく、0.3以下であることが最も好ましい。
【0111】
ペレットを用いて射出成形機によりシリンダー温度350℃、1分サイクルで「滞留前の色相測定用平板」(縦70mm×横50mm×厚み2mm)を成形した。さらに、シリンダー中に樹脂を10分間滞留させた後、「滞留後の色相測定用平板」(縦70mm×横50mm×厚み2mm)を成形した。滞留前後の平板の色相を日本電色(株)製SE-2000を用いてC光源により測定し、次式により色差ΔEを求めた。ΔEが小さいほど成形耐熱性が優れることを示す。
ΔE={(L-L’)2+(a-a’)2+(b-b’)2}1/2
「滞留前の色相測定用平板」の色相:L、a、b
「滞留後の色相測定用平板」の色相:L’、a’、b’
【0112】
ΔEが上記範囲内であるとその変化が外観上確認できないため、成形品の滞留による不良品の発生が抑えられるため、製品歩留まりを向上させることができる。
また、本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、下記の方法で測定した成形耐熱性差ΔE’が1.7以上であることが好ましく、1.8以上であることがより好ましく、2.0以上であることがさらに好ましく、2.1以上であることが特に好ましく、2.2以上であることが最も好ましい。
【0113】
上述にてΔEを求めたペレットに使用した樹脂成分と同様の樹脂における成形耐熱性をΔE0とし、それとの成形耐熱性差をΔE’とした。
【0114】
ΔE0は樹脂を用いて射出成形機によりシリンダー温度350℃、1分サイクルで「滞留前の色相測定用平板」(縦70mm×横50mm×厚み5mm)を成形した。さらに、シリンダー中に樹脂を10分間滞留させた後、「滞留後の色相測定用平板」(縦70mm×横50mm×厚み5mm)を成形した。滞留前後の平板の色相を日本電色(株)製SE-2000を用いてC光源により測定し、次式により色差ΔE0を求めた。
ΔE0={(L-L’)2+(a-a’)2+(b-b’)2}1/2
「滞留前の色相測定用平板」の色相:L、a、b
「滞留後の色相測定用平板」の色相:L’、a’、b’
【0115】
例えば実施例1の場合、製造例1にて得られた樹脂の成形耐熱性をΔE0とし、実施例1にて得られたペレットの成形耐熱性をΔEとし、その差分を成形耐熱性差ΔE’とした。
ΔE’=ΔE0-ΔE
【0116】
ΔE’が上記範囲内であると、リン系化合物の効果により、ポリカーボネート樹脂組成物の成形耐熱性が向上し、樹脂の成形耐熱性を改善でき、成形品の滞留による不良品の発生が抑えられるため、製品歩留まりを向上させることができる。
【0117】
<成形品、自動車内装部品>
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、射出成形、射出圧縮成形、インジェクションブロー成形、二色成形、押出成形またはブロー成形などの方法により目的の成形品を得ることができる。
【0118】
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、その製法には特に限定はなく、例えば、溶融押出法、溶液キャスティング法(流延法)等などの方法によりシート状、フィルム状の成形品を得ることもできる。溶融押出法の具体的な方法は、例えば、ポリカーボネート樹脂組成物を押出機に定量供給して、加熱溶融し、Tダイの先端部から溶融樹脂をシート状に鏡面ロール上に押出し、複数のロールにて冷却しながら引き取り、固化した時点で適当な大きさにカットするか巻き取る方式が用いられる。溶液キャスティング法の具体的な方法は、例えば、ポリカーボネート樹脂組成物を塩化メチレンに溶解した溶液(濃度5%~40%)を鏡面研磨されたステンレス板上にTダイから流延し、段階的に温度制御されたオーブンを通過させながらシートを剥離し、溶媒を除去した後、冷却して巻き取る方式が用いられる。
【0119】
ポリカーボネート樹脂組成物は、積層体とすることもできる。積層体の製法としては、任意の方法を用いればよく、特に熱圧着法または共押出法で行うことが好ましい。熱圧着法としては任意の方法が採用されるが、例えばシートをラミネート機やプレス機で熱圧着する方法、押出し直後に熱圧着する方法が好ましく、特に押出し直後のシートに連続して熱圧着する方法が工業的に有利である。
【0120】
また、本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、耐傷付き性、耐衝撃性、アミン耐性、耐乾熱性および耐候性に優れるため自動車内装部品として好適に使用される。自動車内装部品としては、室内照明用ランプレンズ、表示用メーターカバー、メーター文字板、各種スイッチカバー、ディスプレイカバー、ヒートコントロールパネル、インストルメントパネル、センタークラスター、センターパネル、ルームランプレンズ、ヘッドアップディスプレイ等の各種表示装置、保護部品、透光部品などが挙げられる。また、本発明の自動車内装部品は上記特性を有するためコーティング処理を必要とせず、ポリカーボネート樹脂組成物から得られた成形品をそのまま使用できる利点がある。
【実施例0121】
以下に実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、評価は下記の方法で行った。
【0122】
(1)リン系化合物(実施例で使用したリン系安定剤)組成の定量
リン系化合物10mgをヘキサン25mlに溶解し、下表1に示す条件で高速液体クロマトグラフ(HPLC)測定を行った。各ピーク成分をHPLC装置に接続したフラクションコレクターを用い、ピーク毎に分取を行い単離した。単離した各成分から溶媒を除去、乾固した後、各成分を一定質量計り取り、ヘキサンに溶解して標準液とし、検量線を作成した。なお、使用したアセトニトリル(AN)、イソプロパノール(IPA)、ヘキサンについてはモレキュラーシーブスで脱水処理したものを使用した。
使用試薬
ヘキサン ; 和光純薬(株)製 高速液体クロマトグラフ用
アセトニトリル ; 和光純薬(株)製 高速液体クロマトグラフ用
イソプロパノール ; 和光純薬(株)製 高速液体クロマトグラフ用
モレキュラージーブス ; 和光純薬(株)製 4A 1/16
【0123】
【0124】
(2)成形耐熱性(滞留耐熱性):各実施例で得たペレットを用いて射出成形機によりシリンダー温度350℃、1分サイクルで「滞留前の色相測定用平板」(縦70mm×横50mm×厚み2mm)を成形した。さらに、シリンダー中に樹脂を10分間滞留させた後、「滞留後の色相測定用平板」(縦70mm×横50mm×厚み2mm)を成形した。滞留前後の平板の色相を日本電色(株)製SE-2000を用いてC光源により測定し、次式により色差ΔEを求めた。ΔEが小さいほど成形耐熱性が優れることを示す。
ΔE={(L-L’)2+(a-a’)2+(b-b’)2}1/2
「滞留前の色相測定用平板」の色相:L、a、b
「滞留後の色相測定用平板」の色相:L’、a’、b’
また、各実施例にて得られるペレットに使用した樹脂成分と同様の樹脂における成形耐熱性をΔE0とし、それとの成形耐熱性差をΔE’とした。
【0125】
ΔE0は各製造例で得た樹脂を用いて射出成形機によりシリンダー温度350℃、1分サイクルで「滞留前の色相測定用平板」(縦70mm×横50mm×厚み5mm)を成形した。さらに、シリンダー中に樹脂を10分間滞留させた後、「滞留後の色相測定用平板」(縦70mm×横50mm×厚み5mm)を成形した。滞留前後の平板の色相を日本電色(株)製SE-2000を用いてC光源により測定し、次式により色差ΔE0を求めた。
ΔE0={(L-L’)2+(a-a’)2+(b-b’)2}1/2
「滞留前の色相測定用平板」の色相:L、a、b
「滞留後の色相測定用平板」の色相:L’、a’、b’
【0126】
例えば実施例1の場合、製造例1にて得られた樹脂の成形耐熱性をΔE0とし、実施例1にて得られたペレットの成形耐熱性をΔEとし、その差分を成形耐熱性差ΔE’とした。
ΔE’=ΔE0-ΔE
【0127】
(3)粘度平均分子量
ポリカーボネート樹脂パウダーまたはポリカーボネート樹脂組成物の粘度平均分子量は、以下の方法で測定、算出したものである。まず、押出により得られたポリカーボネート樹脂組成物ペレットを、30倍質量の塩化メチレンと混合して溶解させ、可溶分をセライト濾過により採取した。その後得られた溶液から溶媒を除去した後の得られた固体を十分に乾燥し、該固体0.7gを塩化メチレン100mlに溶解した溶液から、その溶液の20℃における比粘度(ηsp)を測定した。そして、下記式により算出されるMvを粘度平均分子量とした。
ηsp/c=[η]+0.45×[η]2c
[η]=1.23×10-4Mv0.83
ηsp:比粘度
η:極限粘度
c:定数(=0.7)
Mv:粘度平均分子量
【0128】
(4)組成比
ポリカーボネート樹脂40mgを0.6ml重クロロホルム溶液に溶解し、日本電子製400MHzの核磁気共鳴装置により、1H-NMRを測定し、各構成単位に特徴のあるスペクトルピーク面積比より、ポリカーボネート樹脂の組成比を算出した。
【0129】
(5)耐傷付き性(鉛筆硬度)
各製造例で得た樹脂パウダーまたは各実施例で得られたポリカーボネート樹脂組成物を算術平均粗さ(Ra)が0.03μmとしたキャビティ面を持つ金型を使用し、日本製鋼所製射出成形機J-75E3を用いて、シリンダー温度280℃、金型温度80℃の条件で、保圧時間20秒および冷却時間20秒にて幅50mm、長さ90mm、厚みがゲート側から3mm(長さ20mm)、2mm(長さ45mm)、1mm(長さ25mm)である3段型プレートを成形した。かかる3段型プレートの厚み2mm部における鉛筆硬度をJIS K5600に則して測定した。
【0130】
(6)耐候性
各製造例で得た樹脂パウダーまたは各実施例で得たペレットを、算術平均粗さ(Ra)が0.03μmとしたキャビティ面を持つ金型を使用し、日本製鋼所製の射出成形機 J-75E3を用いてシリンダー温度290℃、金型温度80℃の条件で、保圧時間20秒および冷却時間20秒にて幅50mm、長さ90mm、厚みがゲート側から3mm(長さ20mm)、2mm(長さ45mm)、1mm(長さ25mm)である3段型プレートを成形した。得られたプレートについて、スガ試験機株式会社製スーパーキセノンウェザーメーター試験機SX75を用い、照射照度180W/m2(300-400nm)、雨あり(18分/120分)、照射時:ブラックパネル温度63℃湿度50%、降雨時:槽内温度38℃湿度95%の条件で、1,000hr処理をした。耐候促進試験1,000hr処理前後でプレート厚み2mm部のYI(黄色度)を測定し、黄色変化度(ΔYI)を評価した。評価機器として日本電色(株)製SE2000型を用いてC光源、視野角2°、透過法で測定した。
【0131】
<ポリカーボネート樹脂の製造>
[製造例1]
温度計、撹拌機および還流冷却器の付いた反応器に、48%水酸化ナトリウム水溶液4,555部およびイオン交換水22,730部を仕込み、これにビスフェノールC(BPC、本州化学製)2,023部、ビスフェノールA(BPA、新日鐵化学製)1,799部、およびハイドロサルファイト7.94部(和光純薬製)を溶解した後、塩化メチレン13,415部を加え、撹拌下、15~25℃でホスゲン2,000部を約70分かけて吹き込んだ。ホスゲンの吹き込み終了後、48%水酸化ナトリウム水溶液650部およびp-tert-ブチルフェノール87.6部を加え、撹拌を再開、乳化後トリエチルアミン3.94部を加え、さらに28~35℃で1時間撹拌して反応を終了した。
【0132】
反応終了後生成物を塩化メチレンで希釈して水洗した後、塩酸を加え、酸性にして水洗し、さらに水相の導電率がイオン交換水とほぼ同じになるまで水洗を繰り返し、ポリカーボネート樹脂の塩化メチレン溶液を得た。次いで、この溶液を目開き0.3μmのフィルターに通過させ、さらに軸受け部に異物取出口を有する隔離室付きニーダー中の温水に滴下、塩化メチレンを留去しながらポリカーボネート樹脂をフレーク化し、引続き該含液フレークを粉砕・乾燥してパウダー(J-1)を得た。該パウダーを評価した結果を表2に示した。
【0133】
[製造例2]
ビスフェノールC(本州化学製)0部、ビスフェノールA(新日鐵化学製)3,598部、p-tert-ブチルフェノール71.0部とした以外は製造例1と同様の手法にてポリカーボネート樹脂パウダー(J-2)を得た。該パウダーを評価した結果を表2に示した。
【0134】
[製造例3]
ビスフェノールC(本州化学製)4,046部、ビスフェノールA(新日鐵化学製)0部、p-tert-ブチルフェノール66.1部とした以外は製造例1と同様の手法にてポリカーボネート樹脂パウダー(J-3)を得た。該パウダーを評価した結果を表2に示した。
【0135】
【0136】
<ポリカーボネート樹脂組成物の製造>
[実施例1~8、比較例1~4]
表3に記載の各成分を表3記載の割合で計量して混合しブレンダーにて混合した後、ベント式二軸押出機を用いて溶融混練し、ポリカーボネート樹脂組成物のペレットを得た。PCに添加する添加剤はブレンダーによる全体の混合を行った。ベント式二軸押出機は(株)日本製鋼所製:TEX30α(完全かみ合い、同方向回転、2条ネジスクリュー)を使用した。混練ゾーンはベント口手前に1箇所のタイプとした。押出条件は吐出量30kg/hr、スクリュー回転数250rpm、ベントの真空度1kPaであり、また押出温度は第1供給口から混錬ゾーン前までを220~250℃、混錬ゾーンを250~260℃、以降ダイスまでを260~270℃とした。なお、上記の樹脂組成物の製造はHEPAフィルターを通した清浄な空気が循環する雰囲気において実施し、また作業時に異物の混入がないよう十分に注意して行った。
また、実施例および比較例で用いたリン系安定剤、紫外線吸収剤は以下の通りである。
【0137】
<リン系安定剤(リン化合物)>
1.リン系安定剤D-1
ホスホナイト系化合物の商品名P-EPQ(クラリアント社製)を使用した。なお、上記のHPLC測定条件におけるピーク1~6は下記のリン系化合物である(
図1参照)。
【0138】
[b-1成分(ピーク4)]
4-ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-4’-モノ(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-ビフェニレンジホスホナイト、4-ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-3’-モノ(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-ビフェニレンジホスホナイト、3-ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-4’-モノ(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-ビフェニレンジホスホナイトおよび3-ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-3’-モノ(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-ビフェニレンジホスホナイトの4成分の混合物
【0139】
[b-2成分(ピーク2)]
4,4’-ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-ビフェニレンジホスホナイト、3,4’-ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-ビフェニレンジホスホナイトおよび3,3’-ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-ビフェニレンジホスホナイトの3成分の混合物
【0140】
[b-3成分(ピーク1)]
2,4-ジ-tert-ブチルフェニル-4-フェニル-フェニルホスホナイトおよび2,4-ジ-tert-ブチルフェニル-3-フェニル-フェニルホスホナイトの2成分の混合物
【0141】
[c-1成分(ピーク6)]
テトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-4,4’-ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-4,3’-ビフェニレンジホスホナイトおよび、テトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-3,3’-ビフェニレンジホスホナイトの3成分の混合物
【0142】
[c-2成分(ピーク3)]
ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-4-フェニル-フェニルホスホナイトおよびビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-3-フェニル-フェニルホスホナイトの2成分の混合物
【0143】
[他の主な成分(ピーク5)]
トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト
(b成分)/(b成分とc成分との合計量)の質量比=0.004
【0144】
2.リン系安定剤D-2
リン系安定剤Aを50℃、90%RHの雰囲気下の恒温恒湿機に30分曝露させたものを使用した。
(b成分)/(b成分とc成分との合計量)の質量比=0.014
3.リン系安定剤D-3
リン系安定剤D-1を50℃、90%RHの雰囲気下の恒温恒湿機に24時間曝露させたものを使用した。なお、上記のHPLC測定条件におけるチャートを
図2に示した。
(b成分)/(b成分とc成分との合計量)の質量比=0.190
4.リン系安定剤D-4
リン系安定剤D-1を50℃、90%RHの雰囲気下の恒温恒湿機に30時間曝露させたものを使用した。
(b成分)/(b成分とc成分との合計量)の質量比=0.253
5.リン系安定剤D-5
リン系安定剤D-1を50℃、90%RHの雰囲気下の恒温恒湿機に36時間曝露させたものを使用した。
(b成分)/(b成分とc成分との合計量)の質量比=0.278
6.リン系安定剤D-6
リン系安定剤D-1を50℃、90%RHの雰囲気下の恒温恒湿機に48時間曝露させたものを使用した。
(b成分)/(b成分とc成分との合計量)の質量比=0.403
7.他のリン系安定剤D-7
下記式(8)で示されるトリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト(チバスペシャリティーケミカルズ社製イルガフォス168)
【0145】
【0146】
<紫外線吸収剤(E)>
E-1;2,2’-メチレンビス[4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)-6-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)フェノール](融点:200℃、ADEKA社製)
E-2;2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-(へキシル)オキシ-フェノール(融点:152℃、BASF社製)
E-3;2-(2′ヒドロキシ-5′-tert-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール(融点:108℃、BASF社製)
【0147】
【0148】
実施例1~8で得られたポリカーボネート樹脂組成物は、成形耐熱性、耐傷付き性(高硬度)、耐候性を共立している。
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、コーティング処理を必要とせず、室内照明用ランプレンズ、表示用メーターカバー、メーター文字板、各種スイッチカバー、ディスプレイカバー、ヒートコントロールパネル、インストルメントパネル、センタークラスター、センターパネル、ルームランプレンズ、ヘッドアップディスプレイ等の各種表示装置、保護部品、透光部品などの自動車内装部品用の材料として好適に利用できる。