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特開2024-132225電動車両の充電制御方法及び充電制御装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024132225
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】電動車両の充電制御方法及び充電制御装置
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/02 20160101AFI20240920BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20240920BHJP
   H02J 7/04 20060101ALI20240920BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20240920BHJP
   H01M 10/44 20060101ALI20240920BHJP
   B60L 53/67 20190101ALI20240920BHJP
   B60L 58/24 20190101ALI20240920BHJP
【FI】
H02J7/02 J
H02J7/00 P
H02J7/04 C
H02J7/04 L
H01M10/48 P
H01M10/48 301
H01M10/44 Q
B60L53/67
B60L58/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023042926
(22)【出願日】2023-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】友田 幸輝
(72)【発明者】
【氏名】荻野 崇
(72)【発明者】
【氏名】濱本 高行
【テーマコード(参考)】
5G503
5H030
5H125
【Fターム(参考)】
5G503AA01
5G503BA04
5G503BB01
5G503CB06
5G503CB11
5G503CB13
5G503CB16
5G503EA05
5G503FA06
5G503GC04
5G503GD05
5H030AS08
5H030AS18
5H030BB01
5H030FF22
5H030FF41
5H030FF43
5H030FF52
5H125AA01
5H125AC12
5H125AC24
5H125BC19
5H125BE02
5H125CD03
5H125CD05
5H125CD09
5H125DD02
5H125EE25
5H125EE64
(57)【要約】
【課題】充電効率が向上した電動車両の充電制御方法及び充電制御装置を提供する。
【解決手段】複数の充電ポートにより、複数の電動車両を充電可能なマルチポート充電器における電動車両の充電制御方法が提供される。この充電制御方法は、各充電対象車両のバッテリ情報と、バッテリの充電完了予定時間を取得し、バッテリ情報に基づき、各充電対象車両の充電電力上限値を推定する。そして、各充電対象車両の充電完了予定時間、充電電力上限値及びマルチポート充電器の出力上限値に基づき、マルチポート充電器が各充電対象車両に対して出力する電力の配分を決定する。また、電力の配分に基づき、充電完了予定時間までに充電を完了できないと予測される充電未完了車両の有無を判断し、充電未完了車両がある場合、当該車両のバッテリを温調し、充電電力上限値を上昇させて、マルチポート充電器の出力上限値を超えない範囲で充電を行う。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の充電ポートにより、複数の電動車両を充電可能なマルチポート充電器における電動車両の充電制御方法であって、
各充電対象車両のバッテリの仕様、温度及びSOCを含むバッテリ情報と、充電対象車両ごとに設定されるバッテリの充電完了予定時間を取得し、
前記バッテリ情報に基づき、各充電対象車両のバッテリを充電可能な電力の上限値である充電電力上限値を推定し、
各充電対象車両の前記充電完了予定時間、前記充電電力上限値及び前記マルチポート充電器が出力可能な電力の上限値である出力上限値に基づき、前記マルチポート充電器が各充電対象車両に対して出力する電力の配分を決定し、
前記電力の配分に基づき、前記充電完了予定時間までに充電を完了できないと予測される充電未完了車両の有無を判断し、
充電未完了車両がある場合、当該車両のバッテリを温調し、前記バッテリの前記充電電力上限値を上昇させて、前記マルチポート充電器の前記出力上限値を超えない範囲で各充電対象車両の充電を行う、
電動車両の充電制御方法。
【請求項2】
請求項1に記載の電動車両の充電制御方法であって、
前記充電未完了車両が複数ある場合、前記充電完了予定時間が逼迫している車両のバッテリを優先的に温調する、
電動車両の充電制御方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の電動車両の充電制御方法であって、
前記充電未完了車両のバッテリ温度と外気温とに基づき、バッテリを暖機するか否か、または冷却するか否かを判断する、
電動車両の充電制御方法。
【請求項4】
請求項3に記載の電動車両の充電制御方法であって、
前記温調は、前記充電未完了車両のバッテリの仕様に応じた温度制御として実行される、
電動車両の充電制御方法。
【請求項5】
請求項3に記載の電動車両の充電制御方法であって、
前記充電未完了車両のバッテリの抵抗値を取得し、当該抵抗値が大きいほど、前記温調によりバッテリを暖機する場合のバッテリの目標温度を低く、バッテリを冷却する場合のバッテリの目標温度を高く設定する、
電動車両の充電制御方法。
【請求項6】
請求項1または2に記載の電動車両の充電制御方法であって、
前記マルチポート充電器の混雑時間帯を予測し、当該予測に基づき、前記充電未完了車両のバッテリを温調する開始及び終了時刻を決定する、
電動車両の充電制御方法。
【請求項7】
請求項1または2に記載の電動車両の充電制御方法であって、
前記温調に、前記マルチポート充電器からの出力電力が用いられる、
電動車両の充電制御方法。
【請求項8】
請求項1または2に記載の電動車両の充電制御方法であって、
前記温調をしても、前記充電未完了車両が前記充電完了予定時間までに充電を完了できないと予測される場合、前記充電未完了車両の所有者に前記充電完了予定時間までに充電を完了できないことを報知する、
電動車両の充電制御方法。
【請求項9】
複数の充電ポートにより、複数の電動車両を充電可能なマルチポート充電器を制御する充電制御装置であって、
各充電対象車両のバッテリの仕様、温度及びSOCを含むバッテリ情報を取得するバッテリ情報取得部と、
充電対象車両ごとに設定されるバッテリの充電完了予定時間を取得する充電完了時間取得部と、
前記バッテリ情報に基づき、各充電対象車両のバッテリを充電可能な電力の上限値である充電電力上限値を推定する充電電力上限推定部と、
各充電対象車両の前記充電完了予定時間、前記充電電力上限値及び前記マルチポート充電器が出力可能な電力の上限値である出力上限値に基づき、前記マルチポート充電器が各充電対象車両に対して出力する電力の配分を決定する電力配分決定部と、
前記電力の配分に基づき、前記充電完了予定時間までに充電を完了できないと予測される充電未完了車両の有無を判断する充電未完了車両判定部と、
充電未完了車両がある場合、当該車両のバッテリを温調し、前記バッテリの前記充電電力上限値を上昇させる温調実行部と、
前記マルチポート充電器の前記出力上限値を超えない範囲で前記温調した車両のバッテリの充電を行う充電電力出力部と、を備える、
充電制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動車両の充電制御方法及び充電制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、複数の充電ポートにより、複数の電動車両を充電可能なバッテリ充電ステーション(充電器)が開示されている。このバッテリ充電ステーションでは、車両の到着時間、バッテリSOC、意図される出発時間等に基づき、各充電ポートの電力分配を決定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2014-527393号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、充電器にはそれぞれ出力可能な電力の上限(電力キャパシティ)がある。このため、特許文献1のバッテリ充電ステーション(充電器)において複数の電動車両を充電する場合、充電器の電力キャパシティの制約から、充電対象車両に対し、目標の時刻(充電完了予定時間)までに充電を完了できる理想的な電力を供給することができない場合がある。この場合、他の充電対象車両の充電が完了等して、充電器の電力キャパシティに余裕ができた際に、電力キャパシティの制約を受けている充電対象車両に対する出力電力を、バッテリを充電可能な電力の上限値まで増加させたとしても、充電完了予定時間までに充電を完了できない虞がある。一方、常に充電完了予定時間に充電を完了できる理想的な電力を供給できるように、充電器の電力キャパシティをより大きくしておく場合、コストが増大する虞がある。従って、電力キャパシティを低く抑えつつ、目標の時間内に充電を完了できるようにするためには、充電効率の向上が必要となる。
【0005】
本発明は上記課題に鑑みたものであり、充電効率が向上した電動車両の充電制御方法及び充電制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によれば、複数の充電ポートにより、複数の電動車両を充電可能なマルチポート充電器における電動車両の充電制御方法が提供される。この充電制御方法は、各充電対象車両のバッテリの仕様、温度及びSOCを含むバッテリ情報と、充電対象車両ごとに設定されるバッテリの充電完了予定時間を取得し、バッテリ情報に基づき、各充電対象車両のバッテリを充電可能な電力の上限値である充電電力上限値を推定する。そして、各充電対象車両の充電完了予定時間、充電電力上限値及びマルチポート充電器が出力可能な電力の上限値である出力上限値に基づき、マルチポート充電器が各充電対象車両に対して出力する電力の配分を決定する。また、電力の配分に基づき、充電完了予定時間までに充電を完了できないと予測される充電未完了車両の有無を判断し、充電未完了車両がある場合、当該車両のバッテリを温調し、バッテリの充電電力上限値を上昇させて、マルチポート充電器の出力上限値を超えない範囲で各充電対象車両の充電を行う。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、充電未完了車両のバッテリを温調し、バッテリの充電電力上限値を上昇させる。このため、マルチポート充電器の電力キャパシティに余裕ができた際に、充電未完了車両に対し、温調により充電電力上限値が上昇した分だけ、より急速に充電電力を供給することができる。従って、充電未完了車両を効率良く充電することができ、マルチポート充電器の出力上限を抑えつつ、充電完了予定時間までに各充電対象車両の充電を完了させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本発明の一実施形態の充電制御装置を含む充電システムの概略構成図である。
図2図2は、充電制御装置の概略構成図である。
図3図3は、本発明の一実施形態による電動車両の充電制御方法を説明するタイムチャートである。
図4図4は、外気温と温調制御の関係を示す図である。
図5図5は、電動車両の充電制御を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面等を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。
【0010】
[実施形態]
図1は、本発明の一実施形態の電動車両の充電制御方法が採用された充電制御装置100を含む充電システム1の概略構成図であり、図2は、充電制御装置100の概略構成図である。
【0011】
図1に示すように、充電システム1は、充電制御装置100と、充電制御装置100の制御対象であるマルチポート充電器10とから構成される。
【0012】
マルチポート充電器10は、複数の充電ポート11(11A~11E)を備え、同時に複数の電動車両(以下、単に車両とも言う)を充電可能に構成される。例えば、図1では、充電ポート11Aに車両Aが、充電ポート11Dに車両Bが、充電ポート11Eに車両Cがそれぞれ繋がれており、マルチポート充電器10は、車両A~Cのバッテリを同時に充電することができる。
【0013】
充電制御装置100は、マルチポート充電器10を制御するコントローラにより構成され、1または複数のコンピュータを含み、例えば、中央演算装置(CPU)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、及び、入出力インタフェース(I/Oインタフェース)等を備える。充電制御装置100は、充電ポート11に繋がれた車両に対し出力する電力を制御する充電制御を実行するようにプログラムされている。なお、本実施形態では、充電制御装置100は、マルチポート充電器10の内部に備えられ、マルチポート充電器10の一部として構成されるが、これに限られず、例えば、充電制御装置100は、外部から通信によりマルチポート充電器10を制御するように構成されていてもよい。
【0014】
図2に示すように、充電制御装置100は、バッテリ情報取得部101、充電電力上限推定部102、充電完了時間取得部103、電力配分決定部104、充電未完了車両判定部105、抵抗値取得部106、混雑時間帯予測部107、温調実行部108、充電電力出力部109、報知部110を含む。
【0015】
バッテリ情報取得部101は、マルチポート充電器10の充電ポート11に接続された車両(充電対象車両)のバッテリの仕様、温度及びSOC等を含むバッテリ情報を取得する。バッテリの仕様には、バッテリに使用される電池の種類、バッテリの最大充電量及び出力電圧等が含まれるが、これに限られない。バッテリ情報取得部101は、充電ポート11を介して、充電対象車両のコントローラから、バッテリの仕様、バッテリの温度情報、バッテリのSOC等を受信(取得)する。例えば、バッテリ情報取得部101は、充電ポート11A,D,Eに接続された車両A~Cのバッテリ情報を取得する。
【0016】
充電電力上限推定部102は、バッテリ情報に基づき、各充電対象車両のバッテリを充電可能な電力の上限値(以下、充電電力上限値と言う)を推定する。充電電力上限値は、バッテリの仕様(例えば種類)だけでなく、バッテリ温度やバッテリのSOCによって異なる。従って、充電電力上限推定部102は、例えば、バッテリ温度やSOCと充電電力上限値との関係を示すマップ等を参照し、バッテリ情報に基づき充電電力上限値を推定する。また、充電電力上限値は、バッテリの温度変化や、充電状態(SOCの大きさ)によって、変化するため、充電電力上限推定部102は、例えば所定周期ごとに、適宜、バッテリ情報に基づき各充電対象車両の充電電力上限値を推定する。
【0017】
充電完了時間取得部103は、充電対象車両ごとに設定されるバッテリの充電完了予定時間(及び時刻)を取得する。バッテリの充電完了予定時間は、各充電対象車両の所有者等の顧客(以下、所有者等と言う)が設定する。例えば、マルチポート充電器10のオーナー側は、充電完了予定時間の長さに基づき、マルチポート充電器10の使用料金を設定する。時間に余裕のない所有者等は、使用料金を上乗せして、充電完了予定時間を短く設定し、時間に余裕のある所有者等は、充電完了予定時間を長めに設定して使用料金を抑えることができる。所有者等は、マルチポート充電器10に備えられたタッチパネル(不図示)等を介して、または、充電予約をする際の予約画面に入力等することで、充電完了予定時間を設定することができる。充電完了時間取得部103は、所有者等により設定されたバッテリの充電完了予定時間を受信(取得)する。なお、バッテリの充電完了予定時間の設定方法は上記に限られない。例えば、充電制御装置100が、マルチポート充電器10の使用(混雑)状況や各充電対象車両の充電電力上限値等に基づき、自動的に設定するようにしてもよい。
【0018】
電力配分決定部104は、マルチポート充電器10が、各充電対象車両に対して出力する電力の配分を決定する。まず、電力配分決定部104は、各充電対象車両がそれぞれ充電完了予定時間にバッテリの充電が完了するような理想的な電力配分(以下、単に、理想的な電力配分とも言う)を算出する。ここで、各充電対象車両のバッテリは、仕様や状態によって、充電可能な電力の上限値(充電電力上限値)が異なり、また、マルチポート充電器10が出力可能な電力には上限がある。従って、電力配分決定部104は、各充電対象車両に配分する電力が充電電力上限値を超えず、且つ、各充電対象車両に出力する電力の合計が、マルチポート充電器10が出力可能な電力の上限値(以下、出力上限値と言う)を超えないように、算出した理想的な電力配分を必要に応じて修正し、電力の配分を決定する。このとき、電力配分決定部104は、充電完了予定時間が早い車両ほど、優先的に電力を配分する。
【0019】
例えば、マルチポート充電器10の出力上限値が200kW、充電ポート11に接続されている車両のうち、車両Aの充電電力上限値が100kW、車両B及び車両Cの充電電力上限値が80kWで、車両Aの充電完了予定時刻が最も早いとする。また、理想的な電力配分も、車両Aが100kW、車両B及び車両Cが80kWであったとする。この場合、例えば、車両Aに100kWの電力を配分し、車両B、Cには、マルチポート充電器10の出力電力の合計が出力上限値を超えないように、それぞれ50kWの電力を配分する(図3を参照)。このように、電力配分決定部104は、理想的な電力配分では、マルチポート充電器10の出力上限値を超えてしまう場合、充電完了予定時間が早い充電対象車両に優先的に電力を配分し、充電完了予定時間が遅い充電対象車両には、出力上限値を超えない範囲で電力を配分する。但し、上記の電力配分方法は一例であり、これに限られない。各充電対象車両への電力の配分は、各充電対象車両の充電完了予定時間、充電電力上限値に基づき、マルチポート充電器10の出力上限値を超えない範囲で、充電効率が最適となるように決定される。
【0020】
また、各充電対象車両の充電電力上限値及び充電対象車両の台数は、時間の経過とともに変化する。例えば、充電が完了した車両が充電ポート11から離脱したり、新たな車両が充電ポート11に接続されることで、充電対象車両の台数は変化する。また、充電対象車両の充電が進み、バッテリのSOCが上昇すると、当該車両の充電電力上限値は減少していく。さらに、後述するように、充電対象車両のバッテリの温調によっても、充電電力上限値は変化する。従って、電力配分決定部104は、例えば所定周期ごとに、適宜、充電効率が最適となるように、充電対象車両に配分する電力を変更(決定)する。例えば、先の例の車両Aが充電ポート11Aから離脱すると、電力配分決定部104は、車両Aの次に充電完了予定時間(時刻)が早い、車両Bのバッテリに対する電力の配分を増加させる。
【0021】
充電未完了車両判定部105は、電力配分決定部104により決定された電力の配分に基づき充電を行った場合に、充電完了予定時間(時刻)までに充電を完了できないと予測される車両(以下、充電未完了車両と言う)の有無を判断する。例えば、電力配分決定部104が、充電ポート11に接続されている車両のうち、車両Aに100kW、車両B、Cに50kWの電力を配分すると決定し、これに従って充電を行った場合に、車両B、Cがそれぞれ充電完了予定時間までに充電を完了できない(所望のSOCまで充電できない)と予測されたとする。この場合、充電未完了車両判定部105は、車両B、Cを充電未完了車両と判断する。
【0022】
抵抗値取得部106は、充電ポート11を介して、充電未完了車両のコントローラから、充電未完了車両のバッテリの抵抗値を取得する。なお、本実施形態では、抵抗値取得部106を備えてバッテリの抵抗値を取得しているが、バッテリの抵抗値は、バッテリ情報の一つとして、バッテリ情報取得部101が取得するようにしてもよい。
【0023】
混雑時間帯予測部107は、マルチポート充電器10が混雑する時間帯を予測する。混雑する時間帯の予測は、例えば、過去の各曜日の各時間帯における充電ポート11の使用状況を蓄積したデータベース(不図示)や、充電の予約状況等に基づいて行う。
【0024】
温調実行部108は、充電未完了車両のバッテリの温調を実行する。各バッテリは、温度によって、充電電力上限値が変わるため、バッテリの温度を最適化(充電効率が最も良い温度に調整)することで、充電電力上限値を最も高くすることができる。温調実行部108は、マルチポート充電器10に備えられた不図示の温度センサ等から、外気温を取得し、外気温と充電未完了車両のバッテリ温度、及びマルチポート充電器10の出力上限値(マルチポート充電器10の出力電力が出力上限値に達していないか否か)に基づき、温調の可否を判断する。そして、温調により充電電力上限値を上昇させることが可能な場合、温調を実行する。温調は、温調実行部108から、充電未完了車両のコントローラに温調指令が出力されて実行され、温調により、充電未完了車両のバッテリの充電電力上限値が上昇する。温調の可否の判断、及び外気温と温調制御の関係の詳細は後述する。温調により、充電未完了車両のバッテリの充電電力上限値が上昇すると、電力配分決定部104は温調により上昇した充電電力上限値に基づき、電力配分を決定する。
【0025】
なお、充電未完了車両のバッテリの温調には、マルチポート充電器10からの出力電力が用いられる。
【0026】
充電電力出力部109は、電力配分決定部104により決定された電力配分に基づき、各充電対象車両に充電電力を出力する。これにより、充電ポート11に接続された各車両のバッテリが充電される。
【0027】
報知部110は、温調できない場合(充電未完了車両のバッテリを温調しても充電電力上限値を上昇することができない場合)、及び温調して充電電力上限値が上昇させても、充電未完了車両の充電を充電完了予定時間までに完了できないと予測される場合に、充電未完了車両の所有者等に対し、充電完了予定時間までに充電を完了できないことを報知する。当該報知は、例えば、マルチポート充電器10に備えられたディスプレイに表示したり、音声等により行われるが、これに限られない。
【0028】
以上のとおり、充電制御装置100は、各充電対象車両の充電完了予定時間、充電電力上限値及びマルチポート充電器10の出力上限値に基づき、各充電対象車両に対して充電電力を配分する。
【0029】
ところで、前述のとおり、マルチポート充電器10(充電器)には、出力可能な電力の上限(電力キャパシティ)がある。このため、充電器の電力キャパシティの制約から、充電対象車両に対し、充電完了予定時間に充電を完了できる理想的な電力を供給することができない場合がある。この場合、他の充電対象車両の充電が完了等して、充電器の電力キャパシティに余裕ができた際に、電力キャパシティの制約を受けた充電対象車両に対する出力電力を充電電力上限値まで増加させたとしても、充電完了予定時間までに充電を完了できない(所望のSOCまで充電できない)虞がある。一方、常に充電完了予定時間に充電を完了できる理想的な電力を供給できるように、契約電力を上げて、充電器の電力キャパシティをより大きくする場合、コストが増大する虞がある。また、充電器の電力キャパシティを大きくした場合、充電対象車両が少ない時間帯においては、マルチポート充電器10の出力電力と出力上限との差が大きくなり、充電器のオーナー側にとっては非効率である。
【0030】
これに対し、本実施形態では、充電完了予定時間(時刻)までに充電を完了できないと予測される車両(充電未完了車両)のバッテリを温調し、バッテリの充電電力上限値を上昇させ、上昇した充電電力上限値に基づき、マルチポート充電器10の出力上限値を超えない範囲で各充電対象車両の充電を行う。このため、マルチポート充電器10の電力キャパシティに余裕ができた際に、充電未完了車両に対し、温調により充電電力上限値が上昇した分だけ、より急速に充電電力を供給することができる。従って、充電未完了車両を効率良く充電することができ、マルチポート充電器10の出力上限を抑えつつ、充電完了予定時間までに各充電対象車両の充電を完了させることができる。
【0031】
以下、本実施形態による充電制御方法の詳細を説明する。
【0032】
図3は、本実施形態による電動車両の充電制御方法を説明するタイムチャートである。
【0033】
図3の時刻tにおいて、マルチポート充電器10の充電ポート11には、三台の車両A~Cが接続されているものとする。また、図3においては、マルチポート充電器10の出力上限値が200kW、車両Aの充電電力上限値が100kW、車両B及び車両Cの充電電力上限値が80kWであり、車両Aの充電完了予定時刻がt、車両Bの充電完了予定時刻がt、車両Cの充電完了予定時刻がtであるとする。
【0034】
時刻tにおいて、充電完了予定時刻に車両A~Cの充電を完了可能な理想的な電力配分が、車両Aのバッテリに対し100kW、車両B及び車両Cのバッテリに対し80kWであったとする。この場合、車両Aに100kW、車両B及び車両Cに80kWの電力を供給すると、マルチポート充電器10の出力上限値が200kWを超えてしまう。従って、例えば、充電完了予定時刻が最も早い車両Aに100kWの電力が配分され、車両B及び車両Cには、マルチポート充電器10の出力電力の合計が出力上限値を超えないように、それぞれ50kWの電力が配分される。ここで、マルチポート充電器10の出力上限値による制約を受ける車両B及び車両Cは、充電完了予定時刻t,tまでに充電を完了できないと予測される車両(充電未完了車両)となる。
【0035】
車両A~Cに、時刻tまで充電が行われると、車両Aの充電が完了し、時刻tにおいて、マルチポート充電器10から車両Aが離脱する。なお、バッテリのSOCの増加に伴い、バッテリの充電電力上限値は減少していくため、車両Aに対する出力電力は、時刻tよりも前から徐々に減少していく。
【0036】
時刻tにおいて、マルチポート充電器10から車両Aが離脱すると、マルチポート充電器10からの出力電力が、マルチポート充電器10の出力上限値よりも小さくなる。即ち、マルチポート充電器10の電力キャパシティに余裕ができる。図3では、車両Aの離脱により、マルチポート充電器10の出力上限値と出力中の電力との間に100kWの差が生じる。
【0037】
ここで、時刻tにおいて、充電未完了車両のうち、車両Aの次に充電完了予定時刻が早い車両Bに対し、車両Bの充電電力上限値である80kWまで出力電力を増加させたとしても、充電完了予定時刻tまでに車両Bの充電を完了することができない(図3の破線を参照)。即ち、電力キャパシティに余裕ができてから車両Bへの出力電力を充電電力上限値まで増加させても、充電完了予定時刻tまでに充電が間に合わない。そこで、時刻tにおいて、車両Bのバッテリの温調が実行される。これにより、車両Bのバッテリの充電電力上限値が上昇する。例えば、時刻tにおいて車両Bのバッテリを温調することで、車両Bのバッテリの充電電力上限値が150kWまで上昇する。そして、充電電力上限値が温調により上昇した分だけ、車両Bをより急速に受電することができる。時刻tにおいて、温調により車両Bの充電電力上限値が上昇すると、マルチポート充電器10から車両Bへ供給される出力電力は、上昇した充電電力上限値まで増加される。これにより、車両Bの充電を、充電完了予定時刻tまでに完了させることができる。
【0038】
なお、温調後の充電も、各充電対象車両に供給される電力の合計が、マルチポート充電器10の出力上限値を超えない範囲で行われる。例えば、時刻tにおいて、車両Cへの出力電力(50kW)と、温調により充電電力上限値が上昇した車両Bへの出力電力との合計が、マルチポート充電器10の出力上限値(200kW)を超えないように車両B及びCへの充電が行われる。
【0039】
また、バッテリの温調は、充電未完了車両が複数ある場合、充電完了予定時間が逼迫している車両のバッテリを優先的に温調する。ここで充電完了予定時間が逼迫している車両とは、充電完了予定時間がより早い車両や、SOCの値が小さく、充電完了予定時間に対し充電すべき電力量がより多い車両等を言う。本実施形態では、時刻tにおける、充電未完了車両である車両Bと車両Cのうち、充電完了予定時間が早い車両Bのバッテリが優先的に温調される。
【0040】
温調により上昇した充電電力上限値まで車両Bへの出力電力が増加された後、車両B、Cに対し時刻tまで充電が行われると、車両Bの充電が完了する。従って、時刻tにおいて、マルチポート充電器10から車両Bが離脱する。これにより、マルチポート充電器10の出力上限値と出力中の電力との間に100kWの差が生じる。即ち、マルチポート充電器10の電力キャパシティに余裕ができる。
【0041】
ここで、時刻tにおいて、充電未完了車両である車両Cに対し、車両Cの充電電力上限値である80kWまで出力電力を増加させたとしても、充電完了予定時刻tまでに車両Cの充電を完了することができない。従って、時刻tにおいて、車両Cのバッテリの温調が実行され、車両Cのバッテリの充電電力上限値が上昇するとともに、車両Cへの出力電力が温調により上昇した充電電力上限値まで増加される。例えば、時刻tにおいて、温調により車両Cのバッテリの充電電力上限値が150kWまで上昇し、マルチポート充電器10から車両Bへ供給される出力電力が、上昇した充電電力上限値である150kWまで増加される。これにより、車両Cの充電を、充電完了予定時刻tまでに完了させることができる。
【0042】
温調により上昇した充電電力上限値まで車両Cへの出力電力が増加された後、車両Cに対し時刻tまで充電が行われると、車両Cの充電が完了する。
【0043】
このように、充電未完了車両のバッテリを温調し、バッテリの充電電力上限値を上昇させることで、充電未完了車両をより急速に充電することができ、充電完了予定時間までに充電対象車両の充電を完了させることができる。
【0044】
なお、図3では、車両B、Cの充電が、充電完了予定時刻t、tにおいて完了するように電力を出力しているが、充電完了予定時刻t、tより早く充電が完了するように車両B、Cへ電力を供給してもよい。この場合、充電完了から充電完了予定時刻t、tまでの間、車両B、Cへの電力の出力が停止される。
【0045】
また、充電未完了車両のバッテリの温調はマルチポート充電器10が混雑する時間帯をできるだけ避けて実行される。即ち、マルチポート充電器10が混雑する時間帯を避けるように、充電未完了車両のバッテリを温調する開始及び終了時刻が決定される。例えば、時刻tにマルチポート充電器10の混雑が予測される場合、車両Cの温調を時刻tよりも遅らせて実行することで、混雑時間帯を避けることができる。この場合、充電完了予定時刻tまでに充電が完了するように、温調により充電電力上限値が150kWよりも高くなるように、車両Cのバッテリ温度が制御(温調)される。このように混雑する時間帯を避けて温調することにより、マルチポート充電器10の電力キャパシティに、より余裕があるタイミングで温調して急速充電を行うことができ、充電システム1全体としての充電効率が向上する。
【0046】
また、温調によりまず、充電未完了車両のバッテリを最適温度に制御し、充電電力上限値を最大まで上昇させてから充電完了予定時間に間に合うような電力を供給(出力)することも可能であるが、この場合、温調後の出力電力と充電電力上限値とが一致しなくなる。従って、温調に用いられる電力の一部が無駄になり、非効率となる虞がある。よって、好ましくは、温調後の充電電力上限値とマルチポート充電器10からの出力電力が一致するように、バッテリ温度を制御(温調)するが、これに限られない。
【0047】
また、バッテリの抵抗値が高いほど、バッテリが劣化していることが予測される。従って、好ましくは、充電未完了車両のバッテリの抵抗値が高いほど、充電完了予定時刻までに充電が完了される範囲で、温調により上昇させる充電電力上限値の量をできるだけ低くする。このように、バッテリの抵抗値が高い場合に、充電完了予定時間に充電が間に合う範囲で、温調により上昇させる充電電力上限値の量をできるだけ低くすることで、バッテリの劣化が進むことを抑制できる。
【0048】
また、外気温との関係上、温調しても充電電力上限値を上昇させることができない場合(温調できない場合)や、温調によりバッテリ温度を最適化して、充電電力上限値を最大まで上昇させても、充電完了予定時間までに充電未完了車両の充電を完了できないと予測される場合は、充電未完了車両の所有者等に、充電完了時間までに充電を完了できないことを報知する。これにより、充電未完了車両の所有者等は、充電後の行動計画等を予め考えることができる。
【0049】
図4は、外気温と温調制御の関係を示す図である。
【0050】
図4に示すように、外気温が高温(例えば40℃)の場合、バッテリの温度も高温となり、充電未完了車両のバッテリを冷却することで、充電電力上限値を上昇させる。また、外気温が中温(例えば25℃)の場合、バッテリの温度は最適温度に保たれ、温調しても充電電力上限値を上昇させることができないため、温調を実行しない(温調できない)。一方、外気温が低温(例えば-10℃)の場合、バッテリ温度が低温または中温であれば、充電未完了車両のバッテリを暖機してバッテリ温度を上昇させることで、充電電力上限値を上昇させる。外気温が低温であっても、バッテリ温度が高温である場合、温調は実行されない。なお、通常、バッテリ温度が外気温より低くなることは無い。
【0051】
上記のように、充電未完了車両のバッテリの温調は、バッテリの温度と外気温とに基づき実行される。これにより、単にバッテリ温度のみを基準に温調する場合に比べ、より効率良く温調することができ、温調に用いる電力を低減することができる。
【0052】
なお、バッテリは、仕様(例えばバッテリに使用される電池の種類(LiB、ASSB等))によって、最適温度が異なる。従って、充電未完了車両の温調は、バッテリの仕様に応じた温度に制御するように実行される。このように、温調をバッテリの仕様に応じた温度制御として実行するため、多車種に対応した充電制御を行うことができる。
【0053】
図5は、電動車両の充電制御を説明するフローチャートである。以下の制御は、いずれも充電制御装置100を構成するコントローラにより所定時間ごとに繰り返し実行される。なお、充電制御装置100は、充電ポート11を介して充電対象車両のバッテリ情報及び充電未完了車両のバッテリの抵抗値を適宜取得し、マルチポート充電器10に備えられた不図示の温度センサ等から、外気温を適宜取得する。また、充電制御装置100は、マルチポート充電器10が混雑する時間帯の予測を適宜行う。
【0054】
ステップS101において、充電制御装置100は、各充電対象車両の充電完了予定時間(出発時刻)を取得する。
【0055】
ステップS102において、充電制御装置100は、各充電対象車両のバッテリ情報に基づき、各充電対象車両の充電電力上限値を推定(算出)する。
【0056】
ステップS103において、充電制御装置100は、各充電対象車両の充電完了予定時間及び充電電力上限値に基づき、マルチポート充電器10の出力上限値の範囲内で、各充電対象車両に対する電力配分を決定する。電力配分は、例えば以下のように決定される。まず、各充電対象車両の充電完了予定時間及び充電電力上限値に基づき、理想的な電力配分を算出する。次に、理想的な電力配分による出力電力がマルチポート充電器10の出力上限値を超えているか否かを判断する。出力上限値を超えている場合、マルチポート充電器10の出力上限値の範囲内で出力電力を配分できるように、充電完了時間が遅い充電対象車両に対して配分する電力を制限する。一方、理想的な電力配分による出力電力がマルチポート充電器10の出力上限値以内である場合、理想的な電力配分がそのまま各充電対象車両に対する電力配分として決定される。
【0057】
ステップS104において、充電制御装置100は、決定した電力の配分に基づき、各充電対象車両への充電を開始する。
【0058】
ステップS105において、充電制御装置100は、決定した電力の配分に基づき、充電完了予定時間までに充電を完了できないと予測される充電未完了車両の有無を判断する。
【0059】
充電未完了車両が無い場合、充電制御装置100は、各充電対象車両の充電をそのまま継続し、電動車両の充電制御を終了する。電動車両の充電制御を終了すると、充電制御装置100は、再びステップS101からの処理を繰り返す。
【0060】
一方、充電未完了車両がある場合、ステップS106において、充電制御装置100は、マルチポート充電器10の電力キャパシティに余裕があるか否かを判断する。例えば、複数の充電対象車両のうちの一部の車両の充電が完了し、当該車両が充電から離脱すると、マルチポート充電器10の電力キャパシティに余裕ができる。電力キャパシティに余裕があるか否かは、例えば、マルチポート充電器10の出力上限値と、マルチポート充電器10から出力されている電力(出力電力)との差が所定の値以上であるか否かによって判断する。
【0061】
出力上限値と出力電力との差が所定の値以上である場合、充電制御装置100は、マルチポート充電器10の電力キャパシティに余裕があるとして、ステップS107の処理を実行する。一方、出力上限値と出力電力との差が所定の値より小さい場合、マルチポート充電器10の電力キャパシティに余裕がないため、充電制御装置100は、電力キャパシティに余裕ができるまでステップS106の処理を繰り返す。
【0062】
ステップS107において、充電制御装置100は、温調すべき充電未完了車両(温調すべき車両)の有無を判断するとともに、充電未完了車両(温調対象車両)を決定する。このとき、外気温と充電未完了車両のバッテリとの関係から、温調により充電電力上限値を上昇させることができない(温調できない)車両は温調すべき車両とならない。また、温調をせずに、充電電力上限値及びマルチポート充電器10の出力上限の範囲内で供給する出力電力を上昇させた場合に、充電完了予定時間までに充電が完了する充電未完了車両についても、温調する必要が無いため、温調すべき車両とならない。即ち、温調すべき車両とは、温調せずに供給する出力電力を上昇させた場合に充電完了予定時間までに充電を完了できない車両であって、且つ温調により充電電力上限値を上昇させることが可能な車両のことである。温調すべき車両が複数ある場合、充電制御装置100は、充電完了予定時間がより逼迫している車両を優先的に温調対象車両として決定する。温調すべき車両が無い場合、充電制御装置100は、ステップS110の処理を実行する。一方、温調すべき車両がある場合、充電制御装置100は、温調対象車両を決定するとともに、ステップS108の処理を実行する。
【0063】
ステップS108において、充電制御装置100は、温調対象車両のコントローラに温調指令を出力する。充電制御装置100は、温調対象車両のバッテリ温度と外気温とに基づき、バッテリを暖機するか、または冷却するかを判断し、温調指令を出力する。充電制御装置100から温調指令が出力されると、温調対象車両の温調が実行され、温調対象車両の充電電力上限値が上昇する。
【0064】
なお、充電制御装置100は、マルチポート充電器10が混雑する時間帯の予測に基づき、混雑時間帯を避けたタイミングで温調が実行されるように、温調の開始及び終了時刻を決定して、温調指令を出力する。
【0065】
また、充電制御装置100は、温調対象車両のバッテリの抵抗値が高いほど、温調対象車両の充電完了予定時刻までに充電が完了される範囲で、温調により上昇させる充電電力上限値の量ができるだけ低くなるように、温調指令を出力する。即ち、充電制御装置100は、温調対象車両のバッテリの抵抗値が高いほど、温調によりバッテリを暖機する場合のバッテリの目標温度を低く、バッテリを冷却する場合のバッテリの目標温度を高く設定した温調指令を出力する。
【0066】
ステップS109において、充電制御装置100は、温調を実行した充電未完了車両に対する出力電力を、マルチポート充電器10の出力上限値を超えない範囲で増加させる。
【0067】
一方、温調すべき車両が無い場合、充電制御装置100は、ステップS110において、充電未完了車両の充電が充電完了予定時間までに完了するように、充電未完了車両に対する出力電力を増加させる。
【0068】
ステップS109またはステップS110の処理を実行すると、充電制御装置100は、電動車両の充電制御を終了し、再びステップS101からの処理を繰り返す。
【0069】
上記した実施形態の電動車両の充電制御方法及び充電制御装置100によれば、以下の効果を得ることができる。
【0070】
本実施形態の電動車両の充電制御方法によれば、充電完了予定時間(時刻)までに充電を完了できないと予測される車両(充電未完了車両)のバッテリを温調し、バッテリの充電電力上限値を上昇させる。このため、マルチポート充電器10の電力キャパシティに余裕ができた際に、充電未完了車両に対し、温調により充電電力上限値が上昇した分だけ、より急速に充電電力を供給することができる。従って、充電未完了車両を効率良く充電することができ、マルチポート充電器10の出力上限を抑えつつ、充電完了予定時間までに各充電対象車両の充電を完了させることができる。
【0071】
本実施形態の電動車両の充電制御方法によれば、充電未完了車両が複数ある場合、充電完了予定時間が逼迫している車両のバッテリを優先的に温調する。これにより、複数の充電未完了車両に対し、効率良く充電をすることができ、充電完了予定時間までに各充電対象車両の充電を完了させることができる。
【0072】
本実施形態の電動車両の充電制御方法によれば、温調は、充電未完了車両のバッテリの仕様に応じた温度制御として実行される。これにより、多車種に対応した充電制御を行うことができる。
【0073】
本実施形態の電動車両の充電制御方法によれば、バッテリの抵抗値が高いほど、温調によりバッテリを暖機する場合のバッテリの目標温度を低く、バッテリを冷却する場合のバッテリの目標温度を高く設定する。これにより、バッテリの劣化が進むことを抑制できる。
【0074】
本実施形態の電動車両の充電制御方法によれば、マルチポート充電器10の混雑時間帯を予測し、当該予測に基づき、充電未完了車両のバッテリを温調する開始及び終了時刻を決定する。これにより、マルチポート充電器10の電力キャパシティに、より余裕があるタイミングで温調して急速充電を行うことができ、充電システム1全体としての充電効率が向上する。
【0075】
本実施形態の電動車両の充電制御方法によれば、充電未完了車両のバッテリの温調には、マルチポート充電器10からの出力電力が用いられる。これにより、充電制御装置100が、温調に用いられる電力も含めて、各充電対象車両の充電を充電完了予定時間までに完了できる出力電力を算出することができる。
【0076】
本実施形態の電動車両の充電制御方法によれば、温調しても充電未完了車両が充電完了予定時間までに充電を完了できないと予測される場合、充電未完了車両の所有者に、充電完了時間までに充電を完了できないことを報知する。これにより、充電未完了車両の所有者は、充電後の行動計画等を予め考えることができる。
【0077】
本実施形態の充電制御装置100は、充電完了予定時間までに充電を完了できないと予測される充電未完了車両の有無を判断する充電未完了車両判定部105と、充電未完了車両がある場合、当該車両のバッテリを温調し、バッテリの充電電力上限値を上昇させる温調実行部108と、を備える。これにより、マルチポート充電器10の電力キャパシティに余裕ができた際に、充電未完了車両に対し、温調により充電電力上限値が上昇した分だけ、より急速に充電電力を供給することができる。従って、充電未完了車両を効率良く充電することができ、マルチポート充電器10の出力上限を抑えつつ、充電完了予定時間までに各充電対象車両の充電を完了させることができる。
【0078】
なお、本実施形態のように、充電未完了車両が複数ある場合、充電完了予定時間が逼迫している車両のバッテリを優先的に温調することが好ましいが、必ずしもこれに限られない。例えば、各充電未完了車両の充電が充電完了予定時間までに完了されれば、どの車両から温調を実行してもよい。
【0079】
また、本実施形態のように、充電未完了車両の温調は、バッテリ温度と外気温に基づき、バッテリを暖機するか、または冷却するかを判断することが好ましいが、必ずしもこれに限られない。例えば、充電未完了車両のバッテリ温度のみに基づき、バッテリを暖機するか、または冷却するかを判断してもよい。
【0080】
また、本実施形態のように、充電未完了車両のバッテリの抵抗値を取得し、抵抗値が大きいほど、温調によりバッテリを暖機する場合のバッテリの目標温度を低く、バッテリを冷却する場合のバッテリの目標温度を高く設定することが好ましいが、必ずしもこれに限られない。例えば、温調の際に、抵抗値に基づかずにバッテリの目標温度を設定してもよい。
【0081】
また、本実施形態のように、マルチポート充電器10の混雑時間帯を予測し、当該予測に基づき、充電未完了車両のバッテリを温調する開始及び終了時刻を、混雑時間帯を避けるように決定することが好ましいが、必ずしもこれに限られない。例えば、各充電未完了車両の充電が充電完了予定時間までに完了されれば、マルチポート充電器10の混雑時間帯を避けずに温調を実行してもよい。
【0082】
また、本実施形態のように、充電未完了車両のバッテリの温調に、マルチポート充電器10からの出力電力を用いることが好ましいが、必ずしもこれに限られず、マルチポート充電器10からの出力電力以外の電力等を用いて温調してもよい。
【0083】
また、本実施形態においては、充電対象車両が複数ある場合、一部の充電対象車両がマルチポート充電器10から離脱してから、充電未完了車両への出力電力を増加させるものとしたが、必ずしもこれに限られない。例えば、SOCの上昇と共に供給される充電電力は減少していくため、マルチポート充電器10の電力キャパシティに余裕ができれば、一部の充電対象車両が離脱するよりも前に充電未完了車両への出力電力を増加させてもよい。
【0084】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【符号の説明】
【0085】
1:充電システム,10:マルチポート充電器,11:充電ポート,100:充電制御装置,101:バッテリ情報取得部,102:充電完了時間取得部,103:充電電力上限推定部,104:電力配分決定部,105:充電未完了車両判定部,106:抵抗値取得部,107:混雑時間帯予測部,108:温調実行部,109:充電電力出力部,110:報知部
図1
図2
図3
図4
図5