(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024013224
(43)【公開日】2024-01-31
(54)【発明の名称】検査室環境における試験サンプルの処理
(51)【国際特許分類】
G16H 10/40 20180101AFI20240124BHJP
G01N 35/00 20060101ALI20240124BHJP
【FI】
G16H10/40
G01N35/00 A
【審査請求】有
【請求項の数】20
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023116926
(22)【出願日】2023-07-18
(31)【優先権主張番号】22382689.2
(32)【優先日】2022-07-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】501205108
【氏名又は名称】エフ ホフマン-ラ ロッシュ アクチェン ゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ルイス スアレス ノヴァウ
【テーマコード(参考)】
2G058
5L099
【Fターム(参考)】
2G058GC02
2G058GD05
2G058GD07
2G058GE02
2G058GE10
5L099AA21
(57)【要約】 (修正有)
【課題】患者の試験サンプルを処理するための許容可能な期間内に検査室環境内の患者からの遅延/欠落した試験サンプルを位置特定して処理する方法及びシステムを提供する。
【解決手段】検査室環境100内で患者からの試験サンプル200を自動的に位置特定して処理するコンピュータ実装方法であって、試験サンプル200が検査室100内のいずれの装置300、310、320によっても処理されておらず、試験サンプル200が依然として処理期間内にあると決定することと、位置が特定されていない試験サンプル200の可能な位置について、データベース120に保持された以前の位置が特定されていない試験サンプルの履歴データの問い合わせを実行することと、履歴データに基づいて試験サンプルの位置の可能性が最も高い位置を検査室オペレータに通知することと、を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査室環境内で患者からの試験サンプル(200)を自動的に位置特定して処理するコンピュータ実装方法であって、
試験サンプルが検査室内のいずれの検査室装置によっても処理および/または識別されておらず、前記試験サンプルが依然として許容可能な処理期間内にあることを制御ユニットによって決定することと、
位置が特定されていない試験サンプルの可能な位置について、前記制御ユニットに通信可能に接続されたデータベースに保持された以前の位置が特定されず、且つ、その後に発見された試験サンプルの履歴データの前記制御ユニットによる問い合わせを実行することと、
前記履歴データの問い合わせに基づいて、処理されていない試験サンプルの位置の可能性が最も高い位置を前記制御ユニットによって検査室オペレータに通知することと
を含む、コンピュータ実装方法。
【請求項2】
前記検査室内で前記患者からの追加の試験サンプルを検索することと、
前記患者からの追加の試験サンプルが前記検査室内に位置し、且つ、許容可能な処理期間内にある場合、前記追加の試験サンプルに対して必要な試験を処理することと
をさらに含む、請求項1に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項3】
前記試験サンプルが前記検査室内に位置せず、且つ、前記許容可能な処理期間内になく、前記患者についての追加の試験サンプルが利用可能でない場合、前記制御ユニットによって、前記患者からの新たな試験サンプルが収集される必要があることを抽出ポイントに警告することをさらに含む、請求項1または2に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項4】
前記試験サンプルが前記検査室内に位置せず、且つ、前記許容可能な処理期間内にない場合、前記制御ユニットによって、前記患者についての新たな試験サンプルが収集される必要があることを抽出ポイントに警告することをさらに含む、請求項1または2に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項5】
前記試験サンプルが前記検査室内に位置し、且つ、前記検査室内の搬送システムに接続された検査室装置における前記許容可能な処理期間内にある場合、前記制御ユニットによって前記試験サンプルについての処理ステップを再計算して、ステップまたは結果が欠落したかどうか、およびどのステップまたは結果が欠落したかを決定することと、
再計算された処理ステップを前記試験サンプルに対して実行することと
をさらに含む、請求項1から4のいずれか一項に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項6】
前記試験サンプルが前記検査室内に位置し、且つ、前記検査室内の搬送システムに接続されていない検査室装置における前記許容可能な処理期間内にある場合、前記試験サンプルを前記検査室内の次の処理ステップに手動で移動させるように、前記制御ユニットによって前記検査室オペレータに警告することをさらに含む、請求項1から5のいずれか一項に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項7】
前記試験サンプルが前記検査室内に位置し、且つ、前記許容可能な処理期間内にあるが、かなりの数の必要な試験が前記検査室内で且つ許容可能な処理期間内に前記試験サンプルに対して実行され得ない場合、その試験サンプルのトラブルシューティングが必要であること、および/または前記許容可能な期間内に前記必要な試験の全てを実行するためにいくつかの検査室装置がマスクされる必要があることを、前記制御ユニットによって前記検査室オペレータに警告することをさらに含む、請求項1から6のいずれか一項に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項8】
前記試験サンプルが前記検査室内に位置し、且つ、前記許容可能な処理期間内にあるが、かなりの数の必要な試験が前記検査室で利用可能でない場合、その試験サンプルのトラブルシューティングが必要であること、または前記試験サンプルを別の検査室に搬送する必要があることを、前記制御ユニットによって前記検査室オペレータに警告することをさらに含む、請求項1から7のいずれか一項に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項9】
前記必要な試験の利用不可能性が、前記検査室装置の少なくとも1つに対して前記必要な試験を実行するために必要な試薬の欠如、前記検査室装置の少なくとも1つについての適切な較正の欠如、前記検査室装置の少なくとも1つについての利用可能な品質管理の欠如、またはそれらの組み合わせを含む、請求項8に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項10】
前記試験サンプルが前記検査室内に位置し、且つ、前記許容可能な処理期間内にある場合、前記データベースの前記履歴データが、位置特定された前記試験サンプルの前記位置からの結果によって更新される、請求項1に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項11】
検査室環境において患者の試験サンプルを自動的に処理するコンピュータ実装方法であって、
保留中の試験の結果を有する分析後装置に位置する試験サンプルが定義された処理期間の前に期限切れになることを制御ユニットによって決定することと、
前記定義された処理期間が前記期限切れになる前に前記保留中の試験を実行するために、前記分析後装置から前記試験サンプルを取得することと
を含む、コンピュータ実装方法。
【請求項12】
前記分析後装置が冷蔵庫などの保管所である、請求項11に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項13】
前記試験サンプルが、検査室搬送システムによって前記分析後装置から自動的に取得される、請求項11または12に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項14】
前記制御ユニットが前記検査室内の前記試験サンプルの位置を検査室オペレータに通知した後、前記試験サンプルが前記検査室オペレータによって前記分析後装置から手動で取得される、請求項11または12に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項15】
前記定義された処理期間が前記期限切れになる前に前記試験サンプルの処理を加速するために、前記分析後装置から取得された後に前記試験サンプルをSTAT試験サンプルに変換することをさらに含む、請求項11に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項16】
検査室環境内で患者からの試験サンプルを位置特定して処理するためのシステムであって、
複数の検査室装置を備える検査室と、
前記検査室によって患者の試験サンプルを処理する履歴情報を含むデータベースと、
前記複数の検査室装置および前記データベースに通信可能に接続された1つまたは複数のプロセッサであって、
試験サンプルが前記検査室内のいずれの検査室装置によっても処理および/または識別されておらず、前記試験サンプルが依然として許容可能な処理期間内にあると決定し、
処理および/または識別されていない前記試験サンプルの前記検査室における可能な位置について、以前の位置が特定されず、且つ、その後に発見された試験サンプルの前記データベース内の検索を実行し、
処理および/または識別されていない前記試験サンプルの位置の可能性が最も高い位置を含む前記データベースの検索に基づいて通知を生成する、ようにプログラムされて構成された1つまたは複数のプロセッサと
を備える、システム。
【請求項17】
前記1つまたは複数のプロセッサが、
前記患者からの追加の試験サンプルが前記検査室内に位置し、且つ、許容可能な処理期間内にあると決定したことに応答して、前記追加の試験サンプルに対して必要な試験を処理するようにプログラムされて構成されている、請求項16に記載のシステム。
【請求項18】
前記1つまたは複数のプロセッサが、
前記試験サンプルが前記検査室内に位置せず、且つ、前記許容可能な処理期間内になく、前記患者についての追加の試験サンプルが利用できないと決定したことに応答して、前記患者からの新たな試験サンプルが収集される必要があることを示す警告を生成するようにプログラムされて構成されている、請求項16に記載のシステム。
【請求項19】
前記1つまたは複数のプロセッサが、
前記試験サンプルが前記検査室内に位置し、且つ、前記検査室内の搬送システムに接続された検査室装置における前記許容可能な処理期間内にあると決定したことに応答して、制御ユニットによって前記試験サンプルについての処理ステップを再計算して、ステップまたは結果が欠落したかどうか、およびどのステップまたは結果が欠落したかを決定し、
再計算された処理ステップを前記試験サンプルに対して実行する
ようにプログラムされて構成されている、請求項16に記載のシステム。
【請求項20】
前記1つまたは複数のプロセッサが、
前記試験サンプルが前記検査室内に位置し、且つ、前記検査室内の搬送システムに接続されていない検査室装置における前記許容可能な処理期間内にあると決定したことに応答して、前記試験サンプルを前記検査室内の次の処理ステップに手動で移動させる指示を伴う警告を生成するようにプログラムされて構成されている、請求項16に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、患者の試験サンプルを処理するための許容可能な期間内に、検査室環境内の患者からの遅延/欠落した試験サンプルを位置特定し、処理を提供することに関する。
【背景技術】
【0002】
検査室の通常の動作中、患者からの試験サンプルは、典型的には、例えば、試験サンプル収集ポイントおよびサテライト検査室などの様々な異なる方法で、例えば、病院内通信などのいくつかの異なるチャネルを介して、例えば、指定された検査所要時間(STAT)サンプルなどの異なる優先順位で、1日の間を通して(または前日から)受け取られる。したがって、検査室は、日中のある時点でこれらの試験サンプルを位置特定して識別することができるだけでなく、それらの試験サンプルに適切なトレーサビリティおよび管理の連鎖があるように試験サンプルを管理することができる必要がある。
【0003】
驚くべきことに、患者からの試験サンプルは、処理のために検査室に到着したと検査室ITシステムにおいて識別されないことがあり、患者の試験サンプルが検査室に物理的に到着しなかったか、または患者の試験サンプルが検査室に到着したときに検査室ITシステムに登録されなかった。この状況は、必要な許容可能な期間内に試験結果が存在しないために患者の生命を危険にさらす可能性があるため、非常に問題となり得る。さらに、この状況は、検査室自体に深刻な評判の問題を引き起こす可能性がある。
【0004】
米国特許出願公開第2009/0263281号明細書は、サンプルのトレーサビリティを保証するために、ならびに各異常エラー状態に対処するために、例えば使用された試薬の誤りまたはサンプルの品質問題などの異常エラー状態に対して特別な処理を受けたサンプルの内容を記録することができる自動分析機器を開示している。しかしながら、このシステムは、所望の検査所要時間内に処理ワークフローを完了しようとするのではなく、動作中のエラーまたは問題に焦点を合わせている。
【0005】
米国特許第8,418,001号明細書は、システム監視および詳細なトラブルシューティングのワークフロー案内を提供するためのシステムおよび方法を開示している。このシステムは、単に一般的なトラブルシューティングおよびガイダンスに関連する。
【0006】
米国特許出願公開第2014/0282181号明細書は、インターフェース上の医療装置動作を視覚化および管理し、それらの医療装置動作のトラブルシューティングを提供するためのシステムおよび方法を開示している。このシステムは、単に情報の視覚化を提供することに関する。
【発明の概要】
【0007】
本開示の目的は、許容可能な期間内に検査室環境内の患者からの遅延/欠落した試験サンプルを位置特定して処理することを提供することである。
【0008】
本開示の第1の態様によれば、検査室環境内で患者からの試験サンプルを自動的に位置特定して処理するコンピュータ実装方法が提示される。本方法は、制御ユニットによって、試験サンプルが検査室内のいずれの検査室装置によっても識別および/または処理されておらず、試験サンプルが依然として処理の許容可能な期間内にあると決定することと、処理されていない試験サンプルの可能な位置について、制御ユニットに通信可能に接続されたデータベースに保持された以前の位置が特定されず、且つ、その後に発見された試験サンプルの履歴データの問い合わせを実行することと、履歴データの問い合わせに基づいて、処理されていない試験サンプルの位置の可能性が最も高い位置を検査室オペレータに通知することと、を含む。
【0009】
コンピュータ実装方法は、検査室内で患者からの追加の試験サンプルを検索することと、患者からの追加の試験サンプルが許容可能な処理期間内にある場合、追加の試験サンプルに対して必要な試験を処理することと、をさらに含む。
【0010】
コンピュータ実装方法は、試験サンプルが検査室内に位置せず、且つ、許容可能な処理期間内になく、患者からの追加の試験サンプルが利用できない場合、患者からの新たな試験サンプルが収集される必要があることを収集検査室に警告することをさらに含む。
【0011】
コンピュータ実装方法は、試験サンプルが検査室内に位置せず、且つ、許容可能な処理期間内にない場合、患者からの新たな試験サンプルが収集される必要があることを収集検査室に警告することをさらに含む。
【0012】
コンピュータ実装方法は、試験サンプルが検査室内に位置し、且つ、検査室搬送システムに接続された検査室装置での許容可能な処理期間内にある場合、どのステップまたは結果が欠落したかを決定するために試験サンプルの処理ステップを再計算し、試験サンプルに対して再計算された処理ステップを実行することをさらに含む。
【0013】
コンピュータ実装方法は、試験サンプルが検査室内に位置し、且つ検査室搬送システムに接続されていない検査室装置における許容可能な処理期間内にある場合、検査室内の次の処理ステップに試験サンプルを手動で移動させるように検査室オペレータに警告することをさらに含む。
【0014】
コンピュータ実装方法は、試験サンプルが検査室内に位置し、且つ、許容可能な処理期間内にあるが、許容可能な期間内に試験サンプルに対してかなりの数の必要な試験を実行することができない場合、その試験サンプルにトラブルシューティングが必要であること、および/または許容可能な期間内に必要な試験の全てを実行するためにいくつかの検査室装置がマスクされる必要があることを検査室オペレータに警告することをさらに含む。
【0015】
コンピュータ実装方法は、試験サンプルが検査室内に且つ許容可能な期間処理内に位置するが、かなりの数の必要な試験が検査室において利用できない場合、その試験サンプルにトラブルシューティングが必要であること、または試験サンプルが別の検査室に搬送される必要があることを検査室オペレータに警告することをさらに含む。
【0016】
検査室での必要な試験の利用不可能性は、例えば、必要な試験に必要な試薬の欠如、検査室装置の少なくとも1つについての適切な較正の欠如、検査室装置の少なくとも1つについての利用可能な品質管理の欠如、またはそれらの組み合わせを含む。
【0017】
試験サンプルが検査室内に位置し、且つ、許容可能な処理期間内にある場合、データベースの履歴データは、位置特定された試験サンプルの位置からの結果によって更新される。
【0018】
本開示の第2の態様によれば、検査室環境において患者試験サンプルを自動的に処理するコンピュータ実装方法が提示される。本方法は、保留中の試験を有する分析後装置に位置する試験サンプルが定義された期間の前に期限切れになることを制御ユニットによって決定することと、保留中の試験を実行するために分析後装置から試験サンプルを取り出すことと、を含む。
【0019】
分析後装置は、例えば冷蔵庫などの保管所である。
【0020】
一実施形態では、試験サンプルは、分析後装置から自動的に取得される。別の実施形態では、試験サンプルは、制御ユニットが試験サンプルの位置を検査室オペレータに通知した後に、検査室オペレータによって分析後装置から手動で取得される。
【0021】
コンピュータ実装方法は、試験サンプルが期限切れになる前に試験サンプルの処理を加速するために、分析後装置から取得した後に試験サンプルをSTAT試験サンプルに変換することをさらに含む。
【0022】
本開示の第3の態様によれば、検査室環境において患者の試験サンプルを自動的に処理するための検査室システムが提示される。検査室システムは、例えば、分析前装置、分析装置、および/または分析後装置などの複数の検査室装置を含むことができる。検査室システムはまた、複数の検査室装置に通信可能に接続された制御ユニットを備えることができる。制御ユニットは、患者の試験サンプルが抽出ポイントから検査室に到着すると、複数の検査室装置による患者の試験サンプルのワークフロー処理を決定するように構成されている。
【0023】
分析前装置、分析装置、および分析後装置は、異なる検査室装置間で試験サンプルを自動的に搬送するために、搬送システムによって互いに接続され得る。
【0024】
バッファもまた搬送システムに接続されて、検査室でのピーク使用時に試験サンプルに追加の貯蔵を提供し得る。
【0025】
さらに、複数の検査室装置以外の他の検査室装置が、搬送システムに接続されていなくてもよい検査システム内に存在してもよい。
【0026】
制御ユニットは、データベースに通信可能に接続され得る。データベースは、以前の履歴データおよび以前の欠落した患者試験サンプルのパターンを記憶することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
本開示の特定の実施形態の以下の詳細な説明は、同様の構造が同様の参照符号によって示される以下の図面と併せて読むと最もよく理解され得る。
【0028】
【
図1】本開示の実施形態にかかる検査室システムのブロック図を示している。
【
図2】本開示の実施形態にかかる、検査室環境において遅延患者試験サンプルの位置を特定し、処理を提供するための方法のフローチャートを示している。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下の実施形態の詳細な説明では、本明細書の一部を形成し、限定ではなく例示として開示が実施され得る特定の実施形態が示されている添付の図面を参照する。他の実施形態を利用してもよく、本開示の精神および範囲から逸脱することなく、論理的、機械的および電気的変更を行ってもよいことを理解されたい。
【0030】
以下で使用される場合、「有する(have)」、「備える(comprise)」、もしくは「含む(include)」という用語、またはそれらの任意の文法的変形は、非排他的な方法で使用される。したがって、これらの用語は、これらの用語によって導入される特徴に加えて、この文脈で説明されているエンティティにさらなる特徴が存在しない状況と、1つまたは複数の追加の特徴が存在する状況との双方を指す場合がある。例として、「AはBを有する」、「AはBを備える」および「AはBを含む」という表現は、双方とも、B以外に、他の要素がAに存在しない状況(すなわち、Aが単独で、且つ排他的にBからなる状況)、および、B以外に、要素C、要素CおよびD、さらにはさらなる要素など、1つまたは複数のさらなる要素がエンティティAに存在する状況を指す場合がある。
【0031】
さらに、特徴または要素が1回または複数回存在してもよいことを示す「少なくとも1つ」、「1つまたは複数」という用語または同様の表現は、通常、それぞれの特徴または要素を導入するときに一度だけ使用されることに留意されたい。以下では、ほとんどの場合、それぞれの特徴または要素を指すとき、それぞれの特徴または要素が1回または複数回存在することができるという事実にもかかわらず、「少なくとも1つ」または「1つまたは複数」という表現は繰り返されない。
【0032】
「a」または「an」の使用は、本明細書の実施形態の要素および構成要素を説明するために使用され得る。これは、単に便宜上および本発明の概念の一般的な意味を与えるために行われている。この説明は、1つまたは少なくとも1つを含むように読まれるべきであり、そうでないことを意味することが明らかでない限り、単数形は複数形を含む。
【0033】
本明細書で使用される「検査室機器」または「検査室装置」という用語は、1つまたは複数の生物学的サンプルおよび/または1つまたは複数の試薬に対して1つまたは複数の処理ステップ/ワークフローステップを実行するおよび/または実行させるように動作可能な任意の装置または装置構成要素を包含することができる。したがって、「処理ステップ」という表現は、遠心分離、分注、サンプル分析などの物理的に実行される処理ステップを指すことができる。「機器」または「装置」という用語は、分析前機器/装置、分析後機器/装置、分析機器/装置、および検査室ミドルウェアを包含することができる。
【0034】
本明細書で使用される「検査室機器」または「検査室装置」という表現は、1つまたは複数の生物学的サンプルに対して分析試験を実行するように動作可能とすることができる1つまたは複数の検査室装置または動作ユニットを備える任意のモノリシックまたはマルチモジュラ検査室装置を包含することができる。
【0035】
本明細書で使用される「分析前機器」または「分析前装置」という用語は、1つまたは複数の生物学的サンプルに対して1つまたは複数の分析前処理ステップを実行し、それによって1つまたは複数の後続の分析試験のためにサンプルを調製するための1つまたは複数の検査室装置を含むことができる。分析前処理ステップは、例えば、遠心分離ステップ、キャッピング、デキャッピングまたはリキャッピングステップ、密封、密封解除ステップ、アリコートステップ、サンプルの希釈などとすることができる。
【0036】
本明細書で使用される「分析後機器」または「分析後装置」という用語は、1つまたは複数の生物学的サンプルを自動的に処理および/または貯蔵するように動作可能な任意の検査室機器を包含することができる。分析後処理ステップは、リキャッピングステップ、分析システムからサンプルを取り出すステップ、または前記サンプルを貯蔵ユニットもしくは生物学的廃棄物を収集するユニットに貯蔵するステップを含み得る。
【0037】
本明細書で使用される「分析機器」/「分析装置」という用語は、測定値を取得するように構成された任意の装置または装置構成要素を包含することができる。分析機器は、様々な化学的、生物学的、物理的、光学的、電気化学的または他の技術的手順を介して、サンプルまたはその成分のパラメータ値を決定するように動作可能とすることができる。分析機器は、サンプルまたは少なくとも1つの検体のパラメータを測定し、得られた測定値を返すように動作可能であり得る。分析機器によって返された、可能性のある分析結果のリストは、限定されないが、サンプルにおける検体の濃度、(検出レベルを超える濃度に対応する)サンプルにおける検体の存在を示すデジタル(はいまたはいいえ)結果、光学的パラメータ、DNAまたはRNAシーケンス、タンパク質または代謝産物の質量スペクトロスコピーから取得されたデータ、および、様々なタイプの物理的または化学的パラメータを含む。分析機器は、サンプルおよび/または試薬のピペット操作、投与、および混合を支援するユニット/構成要素を備え得る。分析機器は、分析を実施するための試薬を保持するための試薬保持ユニットを備え得る。試薬は、例えば、個々の試薬または試薬のグループを含む容器またはカセットの形態で配置され得、貯蔵区画またはコンベヤ内の適切な容器または位置に配置され得る。それは、消耗品供給ユニットを備え得る。分析機器は、ワークフローが特定のタイプの分析用に最適化されたプロセスおよび検出システムを備え得る。そのような分析機器の例は、化学的または生物学的反応の結果を検出するため、または化学的または生物学的反応の進行を監視するために使用される臨床化学分析機器、凝固化学分析機器、免疫化学分析機器、尿分析機器、核酸分析機器、組織分析機器(形態染色機器および組織化学染色機器を含む)である。
【0038】
本明細書で使用される「サンプル」または「試験サンプル」という用語は、広義の用語であり、当業者にとってその通常の慣習的な意味が与えられるべきであり、特別なまたはカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されないが、化学的または生物学的化合物などの物質のアリコートを指し得る。具体的には、サンプルは、血液、血清、血漿、尿、唾液のうちの1つまたは複数などの少なくとも1つの生体検体であり得るか、またはそれらを含み得る。追加的または代替的に、試験サンプルは、化学物質もしくは化合物および/または試薬であり得るか、またはそれらを含み得る。サンプルは、具体的には、化学的または生物学的化合物の流体物質のアリコートなどの液体サンプルであり得る。例えば、液体サンプルは、少なくとも1つの化学物質および/または生物学的物質を含む、液体物質および/または1つまたは複数の液体物質を含む溶液などの、少なくとも1つの純粋な液体であり得るか、またはそれを含み得る。別の例として、液体サンプルは、懸濁液、エマルジョン、および/または1つまたは複数の化学的および/または生物学的物質の分散体などの液体混合物であり得るか、またはそれらを含み得る。しかしながら、他の、特に非液体サンプルも可能とすることができる。例えば、容器は、試薬容器であり得る。他のサンプルのタイプは、例えば、組織、均質化された材料、較正または監視容器のような装置であってもよく、取り扱い対象であってもよい。
【0039】
本明細書で使用される「検査室ミドルウェア」という用語は、ワークフローおよびワークフローステップが検査室機器/システムによって実行され得るように、検査室機器/装置または1つまたは複数の検査室機器/装置を備えるシステムを制御するように構成可能な任意の物理的または仮想的な処理装置を指すことができる。検査室ミドルウェアは、例えば、検査室機器/システムに、分析前、分析後、および分析ワークフロー/ワークフローステップを実行するように指示し得る。検査室ミドルウェアは、特定の試験サンプルにどのステップが実行される必要があるかに関してデータ管理ユニットから情報を受信し得る。いくつかの実施形態では、検査室ミドルウェアは、データ管理ユニットと一体化され得、サーバコンピュータによって構成され得、および/または1つの検査室機器/装置の一部とすることができ、または検査室自動化システムの複数の機器/装置にわたって分散され得る。検査室ミドルウェアは、例えば、操作を実行するための命令を備えたコンピュータ可読プログラムを実行するプログラム可能論理コントローラとして具体化されてもよい。
【0040】
本明細書で使用される「制御ユニット」または「ワークフロー制御ユニット」という用語は、広義の用語であり、当業者にとってその通常の慣習的な意味が与えられるべきであり、特別なまたはカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されないが、検査室ミドルウェア内のサンプル処理システムの機能を制御するために、特に、ハードウェアおよび/またはソフトウェアプログラミングによって構成された電子装置を指し得る。ワークフロー制御ユニットは、少なくとも1つの監視システムおよび/または少なくとも1つのクラウドサーバとのデータ交換のためにさらに構成されてもよい。具体的には、ワークフロー制御ユニットは、少なくとも1つの監視システムおよび/または少なくとも1つのクラウドサーバから、少なくとも1つの情報項目などの電子信号を受信し、受信した信号をさらに評価するように構成された、少なくとも1つのプロセッサなどの検査室ミドルウェア内のコンピューティング装置であってもよく、またはコンピューティング装置を備えてもよい。さらに、ワークフロー制御ユニットは、例えば、少なくとも1つの情報に基づいて、受信されて評価された信号に基づいて機能を制御するように構成されてもよい。
【0041】
「データ記憶ユニット」または「データベース」は、メモリ、ハードディスクまたはクラウドストレージなどのデータを記憶および管理するためのコンピューティングユニットとすることができる。これは、自動化システムによって処理される生物学的/医学的試験サンプルに関連するデータを含み得る。データ管理ユニットは、LIS(検査室情報システム)および/またはHIS(病院情報システム)に接続され得る。データ管理ユニットは、検査室機器/装置内のユニットとすることができるか、または検査室機器/装置と同じ場所に配置され得る。それは、検査室ミドルウェアの一部であり得る。あるいは、データベースは、遠隔地にあるユニットであってもよい。例えば、データベースは、通信ネットワークを介して接続されたコンピュータで具現化されてもよい。
【0042】
本明細書で使用される「搬送システム」という用語は、広義の用語であり、当業者に対してとってその通常の慣習的な意味が与えられるべきであり、特別なまたはカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されないが、ある位置から別の位置に物体を移動および/または搬送および/または移送および/または運搬するように構成され得る任意のシステムを指し得る。具体的には、搬送システムは、例えば検査室装填装置などの分析前装置から試験サンプル搬送システムの別の検査室装置になど、試験サンプル搬送システムを通って複数の試験サンプルチューブキャリアを移動させるように構成されてもよい。他の検査室装置は、別の分析前装置、分析装置、または分析後装置であってもよい。例として、搬送システムは、ベルトコンベヤまたはチェーンコンベヤなどのコンベヤ、または電子車両システムなどの車両システムから構成される群から選択される少なくとも1つの搬送要素を備えてもよい。搬送システムは、複数の搬送要素を有するマルチレーン搬送システムであってもよく、またはそれを備えてもよい。搬送システムは、複数の並列搬送要素であってもよく、または複数の並列搬送要素を備えてもよい。搬送装置は、共通の平面に、および/または互いの上などの異なる平面に配置されてもよい。
【0043】
最初に
図1を参照すると、
図1は、検査室システム100を概略的に示している。検査室システム100は、分析前装置300、分析装置310、および/または分析後装置320を備えることができる。分析前装置、分析装置、および分析後装置は、異なる検査室装置300、310、310間で試験サンプル200を自動的に搬送するために、搬送システム340によって互いに接続され得る。バッファ330もまた、搬送システム340に接続されて、検査室でのピーク使用時に試験サンプルに追加の貯蔵を提供し得る。さらに、他の検査室装置400は、搬送システム340に接続されていなくてもよい検査システム100内に存在してもよい。
【0044】
検査室システムは、検査室ミドルウェアと連携して制御ユニット110によって制御され得る。制御ユニット110は、検査室システム100内の試験サンプル200のワークフロー処理を決定する。制御ユニット110は、データベース120に通信可能に接続され得る。
【0045】
試験サンプル200は、検査室システム100の外側に位置する抽出ポイント500において患者から収集され得る。抽出ポイント500は、試験サンプル200が収集され、検査室システム100に送られていることを検査室システム100に通知することができる。次いで、試験サンプル200は、検査室装置300、310、320による処理のために検査室システム100に搬送され得る。抽出ポイント500は、例えば、サテライト検査室、医院、または患者から試験サンプル200が抽出され得る任意の他の場所とすることができる。
【0046】
試験サンプル200が処理のために検査室100に到着すると、試験サンプル200は、例えば、バーコードスキャナによって試験サンプル200に取り付けられた識別ラベルをスキャンすることによって識別され、検査室ミドルウェアシステムに入力される。試験サンプル200が検査室ミドルウェアシステムに入力されると、試験サンプル200は、検査室システム100内で把握される/位置特定される。その後、検査室ミドルウェアによって試験サンプル200に割り当てられたワークフローにしたがって、検査室100内の特定の場所に試験サンプル200が期待され、そこにない場合、試験サンプル200は、遅延または欠落していると見なされる。
【0047】
一実施形態では、試験サンプル200は遅延していると決定されたが、依然として許容可能な処理期間内にあり、すなわち、試験サンプル200がいかなる試験サンプルの劣化もなく試験/処理に依然として使用され得る期間内にある。試験サンプル200が、特定の期間中に検査室100のどこかで、例えば、分析前装置300、分析装置310、または分析後装置320などの検査室装置において見られなかった/スキャンされなかった場合、抽出ポイント500から検査室100への試験サンプル200の収集および/または搬送に問題があったと推定される。
【0048】
試験サンプル200が検査室100に到着したことがない、または検査室ミドルウェアに入力されたことがないと決定された場合、制御ユニット110は、最初に、同じ患者からの検査室100内の追加の試験サンプルによって行うことができる全ての試験を、そのような試験サンプルが検査室100に到達したおよび/または利用可能である場合に識別しようと試みる。識別された追加の患者試験サンプルからいくつかの検査結果を得ることができる場合、追加の試験サンプルが取得され、処理ワークフローは、識別された追加の患者試験サンプルで継続する。可能であれば、追加の試験サンプルは、検査室100によって自動的に処理されるべきである。
【0049】
同じ患者からの追加の試験サンプル200を位置特定することができず、これらの試験サンプル200が欠落しているかまたは検査室100によって「受け取られなかった」と宣言する前に、検査室システム100は、例えば、以下のような、以前に欠落した試験サンプル200が位置特定されていた検査室100内の可能な場所をチェックすることができる:
- 制御ユニット110に接続されたデータベース120に記憶された過去の知識に基づいて、入ってくる試験サンプル200が過去に失われた検査室システム100における典型的な場所。この過去の履歴知識は、可能な位置、すなわち、過去に失われた試験サンプルの位置パターンが何であるかを提供するための訓練セットとして機能することができる。この過去の知識は、試験サンプルのための複数の入口点を有する大規模な検査室にとって特に重要であり得るか、または
- 検査室内の試験サンプル200の受け取り点において、例えばSTATサンプルなどの試験サンプル200を最後に受け入れた。
【0050】
次いで、欠落した/失われた試験サンプル200の他の以前のエピソードからの履歴知識を使用して、欠落した試験サンプル200がどこに位置し得るか、および欠落した/失われた試験サンプル200がどこに位置していたかに関する問い合わせが形成され得る。この過去の知識は、制御ユニット110と通信可能に接続されたデータベース120に挿入されて記憶され得る。欠落した試験サンプル200のこの現在のシナリオは、欠落した試験サンプルの記憶された以前のシナリオと比較され得る。この比較から、どの記憶されたシナリオが現在のシナリオと同じまたは類似している可能性が最も高いかが決定され得る。一実施形態では、次いで、最も高い可能性を有するシナリオは、制御ユニット110によって識別され、例えば、電子メール、テキスト、警告、および/または警報などのメッセージによって、検査室装置300、310、320および/または例えばスマートフォン、タブレット、および/またはラップトップコンピュータなどの検査室オペレータのパーソナルデバイス上で、検査室オペレータに伝達され得る。別の実施形態では、可能性の順にランク付けされた全ての可能なシナリオのリストは、例えば、検査室装置300、310、320および/または例えばスマートフォン、タブレット、および/またはラップトップコンピュータなどの検査室オペレータのパーソナルデバイス上の、例えば、電子メール、テキスト、警告、および/または警報などのメッセージによって、検査室オペレータに通信され得る。
【0051】
検査室オペレータに提示されたシナリオのいずれも、欠落した試験サンプル200が検査室内で、且つ試験サンプル200を処理するための許容可能な期間内に発見されない場合、警告/メッセージが制御ユニット100によって生成され、抽出ポイント500に送信され得、欠落した試験サンプル200を抽出ポイント500に通知し、患者から別の試験サンプル200を取得することを要求する。
【0052】
しかしながら、欠落した試験サンプル200が検査室100内で、且つ搬送システム340に接続された検査室機器300、310、340、搬送システム340に接続されたバッファ330、または搬送システム340自体で試験サンプル200を処理するための許容可能な期間内に見つかった場合、この試験サンプル200の処理ワークフローは、許容可能な期間内に必要な欠落した試験結果を得るために、以前に欠落した処理ステップを完了することに重点を置いて再計算され得る。次いで、試験サンプル200は、再計算された処理ワークフローにしたがって自動的に処理されて、必要な保留中の試験の結果を取得するか、または例えば、試験サンプル200を例えば保管所などの分析後装置320に戻すなどの必要な欠落処理ステップを完了することができる。
【0053】
欠落した試験サンプル200が検査室100内で、接続されていない検査室装置、すなわち搬送システム340に接続されていない検査室装置400において試験サンプルを処理するための許容可能な期間内に見つかった場合、警告/メッセージが検査室オペレータに送信されて、接続されていない検査室装置400から試験サンプル200を取得し、次のワークフロー処理ステップの検査室装置/場所に試験サンプル200を手動で移動させることができる。検査室オペレータに送信される警告/メッセージは、例えば、検査室装置300、310、320および/または例えばスマートフォン、タブレット、および/またはラップトップコンピュータなどの検査室オペレータのパーソナルデバイス上の電子メール、テキスト、警告、および/または警報などのメッセージによって送信され得る。
【0054】
欠落した試験サンプル200が検査室100内で且つ試験サンプルを処理するための許容可能な期間内に見つかったが、試験サンプル200に必要な特定の試験が許容可能な期間内に完了できないことが、試験サンプル200のかなりの割合、すなわち、必要な試験の50%超である場合、その試験サンプル200にトラブルシューティングが必要であること、および/または許容可能な期間内に試験サンプル200に対して必要な試験の全てを実行するために、いくつかの検査室装置300、310、320をマスクする必要がある可能性があることを述べる警告/メッセージが検査室オペレータに送信され得る。検査室オペレータに送信される警告/メッセージは、例えば、検査室装置300、310、320および/または例えばスマートフォン、タブレット、および/またはラップトップコンピュータなどの検査室オペレータのパーソナルデバイス上の電子メール、テキスト、警告、および/または警報などのメッセージによって送信され得る。
【0055】
欠落した試験サンプル200が検査室100内で且つ試験サンプル200を処理するための許容可能な期間内に見つかったが、試験サンプル200に必要な特定の試験が検査室100で現在利用できない場合、警告/メッセージが検査室オペレータに送信されて、これらの必要な試験の問題を是正するか、または特定の試験が利用できる別の検査室に試験サンプル200を搬送することができる。検査室オペレータに送信される警告/メッセージは、例えば、検査室装置300、310、320および/または例えばスマートフォン、タブレット、および/またはラップトップコンピュータなどの検査室オペレータのパーソナルデバイス上の電子メール、テキスト、警告、および/または警報などのメッセージによって送信され得る。
【0056】
必要な特定の試験が利用できない一般的な理由は、例えば、検査室装置300、310、320のうちの少なくとも1つに対する必要な特定の試験に必要な試薬が不足していること、検査室装置300、310、320のうちの少なくとも1つに対する適切な較正が不足していること、検査室装置300、310、320のうちの少なくとも1つに対する利用可能な品質管理が不足していること、またはそれらの組み合わせとすることができる。これらの一般的な理由は、典型的には、検査室のオペレータによって解決され得る。
【0057】
別の実施形態では、要求された試験に必要な試験サンプル200は、必ずしも遅延/欠落しなくてもよく、代わりに、試験サンプルを処理するための許容可能な期間が期限切れになろうとしている。この実施形態では、保留中の必要な試験結果を有する試験サンプル200は、例えば保管所、すなわち冷蔵庫などの分析後装置320に配置されるが、試験サンプル200の定義されたTATが許容可能な処理期間内に発生する前に、試験サンプル200は、期限切れになる。このシナリオの一実施形態では、試験サンプル200は、分析後装置320から自動的に取得され得る。別の実施形態では、警告/メッセージが検査室オペレータに送信されて、分析後装置320から試験サンプル200を手動で取得することができる。さらに別の実施形態では、試験サンプル200を処理するための許容可能な期間が期限切れになる前に試験結果を受け取るために、試験サンプル200がSTATサンプルに変換され、検査室100によって自動的に/手動で処理され得る。
【0058】
試験サンプル200の欠落の問題に対する別の可能な解決策は、試験サンプル200を連続的に、すなわち、例えばカメラおよびセンサなどによって通常行われるように、検査室100内の特定の時点だけでなく監視して、定義された検査所要時間(TAT)に対する遅延をチェックし、そのような遅延の根本原因を決定することとすることができる。例えば、検査室100に受け入れられた正常な試験サンプル200は、その処理ワークフローにいくつかの遅延した中間ステップがある場合に遅延する可能性がある。この例では、遅延の根本原因分析は、どの処理ワークフローステップが遅延を引き起こしたかを決定し、ワークフロー処理ステップを加速するか、または現在の処理ワークフローを別の代替処理ワークフローによって置き換えるための可能な解決策を提供する。さらに、この例では、試験サンプル200が遅延されている場合、試験サンプル200が検査室100に決して到達せず、したがって、実際に欠落している試験サンプル200であるかどうかが容易に決定され得る。この例はまた、検査室100内の傾向の後の分析および最適化に使用するための問題および改善策の以前の履歴知識のデータベース120の作成に役立つことができる。
【0059】
図2を参照すると、
図2は、遅延した患者の試験サンプルの位置を特定し、検査室環境において処理を提供するためのコンピュータ実装方法のフローチャートを示している。ステップ700において、入ってくる試験サンプル200の処理ワークフローが、検査室ミドルウェアの制御ユニット110において開発される。処理ワークフローが開発された後、ステップ710において、試験サンプル200が検査室100に到着したかどうかが決定される。試験サンプル200が検査室100に到着したか/位置した場合、ステップ715の処理ワークフローにしたがって試験サンプル200の処理を開始する。
【0060】
試験サンプル200が検査室100に到着していないかまたは位置することができない場合、ステップ720において、試験サンプル200が依然として試験サンプル200を処理するための許容可能な期間内にあるかどうかを決定する。許容可能な期間内でない場合、ステップ725において、検査室100内で利用可能な同じ患者からの他の試験サンプル200があるかどうかを決定する。利用可能な試験サンプル200がある場合、ステップ730において、利用可能な他の試験サンプル200を用いて処理ワークフローに進む。同じ患者からの他の試験サンプル200が利用可能でない場合、ステップ735において、抽出ポイント500において患者から新たな試験サンプルが抽出されるように要求する。
【0061】
試験サンプル200を処理するための許容可能な期間内に依然としてある場合、ステップ740において、欠落した試験サンプルの他のエピソードからの以前の履歴データに基づいて、欠落した試験サンプル200の可能な位置についての問い合わせを実行する。
【0062】
ステップ745において、以前の履歴データを使用して欠落した試験サンプル200が位置特定されたかどうかを決定する。試験サンプル200が位置特定されなかった場合、ステップ735において、抽出ポイント500において患者から新たな試験サンプルが抽出されるように要求する。
【0063】
試験サンプル200が位置特定された場合、ステップ750において処理ワークフローを再計算して、全ての処理ステップが行われるのを確実にし、再計算された処理ワークフローを使用して試験サンプル200の処理を進める。
【0064】
このコンピュータ実装方法の主な利点の1つは、検査室システムが、可能であれば完全に自動的な方法で、または状況を是正するために特定の検査室オペレータに対する警告を発することによって、試験サンプル200の満了前に遅延/欠落した試験サンプル200の処理を強制するアクションを積極的に提供することができることである。対照的に、今日の典型的な検査室システムでは、検査室試験サンプルのTAT時間が表示され、どの試験サンプルが遅延したかを示してもよい。しかしながら、これらの典型的な検査室システムでは、遅延を是正するプロセスは、検査室オペレータによって手動で行われなければならず、このプロセスは、検査室オペレータによってトリガされなければならない。
【0065】
プログラムがコンピュータまたはコンピュータネットワーク上で実行されると、本明細書に包含される実施形態のうちの1つまたは複数において開示された方法を実行するためのコンピュータ実行可能命令を含むコンピュータプログラム製品がさらに開示され、提案される。具体的には、コンピュータプログラムは、コンピュータ可読データキャリアまたはサーバコンピュータに記憶され得る。したがって、具体的には、上述したような方法ステップの1つ、2つ以上、または全ては、コンピュータまたはコンピュータネットワークを使用して、好ましくはコンピュータプログラムを使用して実行され得る。
【0066】
本明細書で使用される場合、コンピュータプログラム製品は、取引可能な製品としてのプログラムを指す。製品は、一般に、紙形式などの任意の形式で、またはオンプレミスのもしくは遠隔地に位置するコンピュータ可読データキャリア上に存在してもよい。具体的には、コンピュータプログラム製品は、データネットワーク(クラウド環境など)を介して配布されてもよい。さらにまた、コンピュータプログラム製品だけでなく、実行ハードウェアも、オンプレミスまたはクラウド環境に配置されてもよい。
【0067】
さらに開示および提案されるのは、コンピュータシステムによって実行されると、検査室自動化システムに本明細書に開示される1つまたは複数の実施形態にかかる方法を実行させる命令を含むコンピュータ可読媒体である。
【0068】
さらに開示および提案されるのは、コンピュータシステムによって実行されると、検査室自動化システムに本明細書に開示される1つまたは複数の実施形態にかかる方法を実行させる命令を含む変調されたデータ信号である。
【0069】
開示された方法のコンピュータ実装態様を参照すると、本明細書に開示される実施形態のうちの1つまたは複数にかかる方法の方法ステップの1つまたは複数または全ての方法ステップは、コンピュータまたはコンピュータネットワークを使用することによって実行され得る。したがって、一般に、データの提供および/または操作を含む方法ステップのいずれかは、コンピュータまたはコンピュータネトワークを使用することによって実行され得る。一般に、これらの方法ステップは、サンプルの提供および/または実際の測定を実行する特定の態様などの手作業を必要とする方法ステップを通常除いて、任意の方法ステップを含み得る。
【0070】
「好ましくは」、「一般的に」、および「典型的に」のような用語は、特許請求される実施形態の範囲を限定するため、または特定の特徴が特許請求される実施形態の構造または機能にとって重要、必須、またはさらに重要であることを意味するために本明細書では使用されないことに留意されたい。むしろ、これらの用語は、本開示の特定の実施形態で利用されてもされなくてもよい代替または追加の特徴を強調することを単に意図している。
【0071】
本開示を詳細に説明し、その特定の実施形態を参照することにより、添付の特許請求の範囲で定義される本開示の範囲から逸脱することなく、変更および変形が可能であることは明らかであろう。より具体的には、本開示の一部の態様は、本明細書において好ましいまたは特に有利であると特定されているが、本開示は、本開示のこれらの好ましい態様に必ずしも限定されないことが企図される。
【手続補正書】
【提出日】2023-07-18
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査室環境内で患者からの試験サンプル(200)を自動的に位置特定して処理するコンピュータ実装方法であって、
試験サンプルが検査室内のいずれの検査室装置によっても処理および/または識別されておらず、前記試験サンプルが依然として許容可能な処理期間内にあることを制御ユニットによって決定することと、
位置が特定されていない試験サンプルの可能な位置について、前記制御ユニットに通信可能に接続されたデータベースに保持された以前の位置が特定されず、且つ、その後に発見された試験サンプルの履歴データの前記制御ユニットによる問い合わせを実行することと、
前記履歴データの問い合わせに基づいて、処理されていない試験サンプルの位置の可能性が最も高い位置を前記制御ユニットによって検査室オペレータに通知することと
を含む、コンピュータ実装方法。
【請求項2】
前記検査室内で前記患者からの追加の試験サンプルを検索することと、
前記患者からの追加の試験サンプルが前記検査室内に位置し、且つ、許容可能な処理期間内にある場合、前記追加の試験サンプルに対して必要な試験を処理することと
をさらに含む、請求項1に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項3】
前記試験サンプルが前記検査室内に位置せず、且つ、前記許容可能な処理期間内になく、前記患者についての追加の試験サンプルが利用可能でない場合、前記制御ユニットによって、前記患者からの新たな試験サンプルが収集される必要があることを抽出ポイントに警告することをさらに含む、請求項1または2に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項4】
前記試験サンプルが前記検査室内に位置せず、且つ、前記許容可能な処理期間内にない場合、前記制御ユニットによって、前記患者についての新たな試験サンプルが収集される必要があることを抽出ポイントに警告することをさらに含む、請求項1または2に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項5】
前記試験サンプルが前記検査室内に位置し、且つ、前記検査室内の搬送システムに接続された検査室装置における前記許容可能な処理期間内にある場合、前記制御ユニットによって前記試験サンプルについての処理ステップを再計算して、ステップまたは結果が欠落したかどうか、およびどのステップまたは結果が欠落したかを決定することと、
再計算された処理ステップを前記試験サンプルに対して実行することと
をさらに含む、請求項1または2に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項6】
前記試験サンプルが前記検査室内に位置し、且つ、前記検査室内の搬送システムに接続されていない検査室装置における前記許容可能な処理期間内にある場合、前記試験サンプルを前記検査室内の次の処理ステップに手動で移動させるように、前記制御ユニットによって前記検査室オペレータに警告することをさらに含む、請求項1または2に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項7】
前記試験サンプルが前記検査室内に位置し、且つ、前記許容可能な処理期間内にあるが、かなりの数の必要な試験が前記検査室内で且つ許容可能な処理期間内に前記試験サンプルに対して実行され得ない場合、その試験サンプルのトラブルシューティングが必要であること、および/または前記許容可能な期間内に前記必要な試験の全てを実行するためにいくつかの検査室装置がマスクされる必要があることを、前記制御ユニットによって前記検査室オペレータに警告することをさらに含む、請求項1または2に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項8】
前記試験サンプルが前記検査室内に位置し、且つ、前記許容可能な処理期間内にあるが、かなりの数の必要な試験が前記検査室で利用可能でない場合、その試験サンプルのトラブルシューティングが必要であること、または前記試験サンプルを別の検査室に搬送する必要があることを、前記制御ユニットによって前記検査室オペレータに警告することをさらに含む、請求項1または2に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項9】
前記必要な試験の利用不可能性が、前記検査室装置の少なくとも1つに対して前記必要な試験を実行するために必要な試薬の欠如、前記検査室装置の少なくとも1つについての適切な較正の欠如、前記検査室装置の少なくとも1つについての利用可能な品質管理の欠如、またはそれらの組み合わせを含む、請求項8に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項10】
前記試験サンプルが前記検査室内に位置し、且つ、前記許容可能な処理期間内にある場合、前記データベースの前記履歴データが、位置特定された前記試験サンプルの前記位置からの結果によって更新される、請求項1に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項11】
検査室環境において患者の試験サンプルを自動的に処理するコンピュータ実装方法であって、
保留中の試験の結果を有する分析後装置に位置する試験サンプルが定義された処理期間の前に期限切れになることを制御ユニットによって決定することと、
前記定義された処理期間が前記期限切れになる前に前記保留中の試験を実行するために、前記分析後装置から前記試験サンプルを取得することと
を含む、コンピュータ実装方法。
【請求項12】
前記分析後装置が冷蔵庫などの保管所である、請求項11に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項13】
前記試験サンプルが、検査室搬送システムによって前記分析後装置から自動的に取得される、請求項11または12に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項14】
前記制御ユニットが前記検査室内の前記試験サンプルの位置を検査室オペレータに通知した後、前記試験サンプルが前記検査室オペレータによって前記分析後装置から手動で取得される、請求項11または12に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項15】
前記定義された処理期間が前記期限切れになる前に前記試験サンプルの処理を加速するために、前記分析後装置から取得された後に前記試験サンプルをSTAT試験サンプルに変換することをさらに含む、請求項11に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項16】
検査室環境内で患者からの試験サンプルを位置特定して処理するためのシステムであって、
複数の検査室装置を備える検査室と、
前記検査室によって患者の試験サンプルを処理する履歴情報を含むデータベースと、
前記複数の検査室装置および前記データベースに通信可能に接続された1つまたは複数のプロセッサであって、
試験サンプルが前記検査室内のいずれの検査室装置によっても処理および/または識別されておらず、前記試験サンプルが依然として許容可能な処理期間内にあると決定し、
処理および/または識別されていない前記試験サンプルの前記検査室における可能な位置について、以前の位置が特定されず、且つ、その後に発見された試験サンプルの前記データベース内の検索を実行し、
処理および/または識別されていない前記試験サンプルの位置の可能性が最も高い位置を含む前記データベースの検索に基づいて通知を生成する、ようにプログラムされて構成された1つまたは複数のプロセッサと
を備える、システム。
【請求項17】
前記1つまたは複数のプロセッサが、
前記患者からの追加の試験サンプルが前記検査室内に位置し、且つ、許容可能な処理期間内にあると決定したことに応答して、前記追加の試験サンプルに対して必要な試験を処理するようにプログラムされて構成されている、請求項16に記載のシステム。
【請求項18】
前記1つまたは複数のプロセッサが、
前記試験サンプルが前記検査室内に位置せず、且つ、前記許容可能な処理期間内になく、前記患者についての追加の試験サンプルが利用できないと決定したことに応答して、前記患者からの新たな試験サンプルが収集される必要があることを示す警告を生成するようにプログラムされて構成されている、請求項16に記載のシステム。
【請求項19】
前記1つまたは複数のプロセッサが、
前記試験サンプルが前記検査室内に位置し、且つ、前記検査室内の搬送システムに接続された検査室装置における前記許容可能な処理期間内にあると決定したことに応答して、制御ユニットによって前記試験サンプルについての処理ステップを再計算して、ステップまたは結果が欠落したかどうか、およびどのステップまたは結果が欠落したかを決定し、
再計算された処理ステップを前記試験サンプルに対して実行する
ようにプログラムされて構成されている、請求項16に記載のシステム。
【請求項20】
前記1つまたは複数のプロセッサが、
前記試験サンプルが前記検査室内に位置し、且つ、前記検査室内の搬送システムに接続されていない検査室装置における前記許容可能な処理期間内にあると決定したことに応答して、前記試験サンプルを前記検査室内の次の処理ステップに手動で移動させる指示を伴う警告を生成するようにプログラムされて構成されている、請求項16に記載のシステム。
【外国語明細書】