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特開2024-132241制御方法、制御装置、および鞍乗型車両
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024132241
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】制御方法、制御装置、および鞍乗型車両
(51)【国際特許分類】
   F02D 29/00 20060101AFI20240920BHJP
   F02D 29/02 20060101ALI20240920BHJP
   B60W 10/06 20060101ALI20240920BHJP
   B60W 10/11 20120101ALI20240920BHJP
   B60W 10/04 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
F02D29/00 G
F02D29/02 321C
F02D29/02 321B
B60W10/06
B60W10/11
B60W10/00 108
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023042949
(22)【出願日】2023-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】塚田 善昭
(72)【発明者】
【氏名】大関 孝
(72)【発明者】
【氏名】藤本 靖司
【テーマコード(参考)】
3D241
3G093
【Fターム(参考)】
3D241AA23
3D241AA51
3D241AB00
3D241AC13
3D241AC16
3D241AC24
3D241AD02
3D241AD04
3D241AE02
3G093AA02
3G093BA03
3G093CA02
3G093DA01
3G093DA06
3G093DB05
3G093DB06
3G093DB10
3G093DB11
3G093DB12
3G093DB13
3G093DB23
3G093EB01
(57)【要約】
【課題】コースティングの実行中に鞍乗型車両が停止した場合であっても、当該鞍乗型車両における変速機の変速段を変更し易くすることが可能な技術を提供する。
【解決手段】鞍乗型車両のコースティングを制御する制御方法は、前記鞍乗型車両のクラッチの切断状態を検知する第1検知工程と、前記鞍乗型車両のスロットル開度を検知する第2検知工程と、前記第1検知工程で前記クラッチの切断が検知され、且つ、前記第2検知工程で前記スロットル開度が所定開度未満であることが検知された場合に、前記鞍乗型車両のエンジンを停止させることによって前記コースティングを開始する開始工程と、前記コースティングの実行中に前記鞍乗型車両が停止するか否かを予測する予測工程と、前記予測工程で前記鞍乗型車両が停止すると予測された場合に、前記エンジンを再始動させる再始動工程と、を含む。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鞍乗型車両のコースティングを制御する制御方法であって、
前記鞍乗型車両のクラッチの切断状態を検知する第1検知工程と、
前記鞍乗型車両のスロットル開度を検知する第2検知工程と、
前記第1検知工程で前記クラッチの切断が検知され、且つ、前記第2検知工程で前記スロットル開度が所定開度未満であることが検知された場合に、前記鞍乗型車両のエンジンを停止させることによって前記コースティングを開始する開始工程と、
前記コースティングの実行中に前記鞍乗型車両が停止するか否かを予測する予測工程と、
前記予測工程で前記鞍乗型車両が停止すると予測された場合に、前記エンジンを再始動させる再始動工程と、
を含むことを特徴とする制御方法。
【請求項2】
前記鞍乗型車両は、複数の変速段を有する手動式の変速機を備え、
前記再始動工程では、前記エンジンの停止中における前記変速機の変速段に応じて前記エンジンを再始動させる、ことを特徴とする請求項1に記載の制御方法。
【請求項3】
前記予測工程で前記鞍乗型車両が停止すると予測された場合であっても、前記エンジンの停止中における前記変速機の変速段が低速側の所定の変速段である場合には前記再始動工程を実行しない、ことを特徴とする請求項2に記載の制御方法。
【請求項4】
前記再始動工程では、前記エンジンの停止中における前記変速機の変速段に応じて、前記エンジンを再始動させる際の前記エンジンの回転数を変更する、ことを特徴とする請求項2又は3に記載の制御方法。
【請求項5】
前記再始動工程では、前記エンジンの停止中における前記変速機の変速段が高速側であるほど前記エンジンの回転数が高くなるように、前記エンジンを再始動させる際の前記エンジンの回転数を変更する、ことを特徴とする請求項4に記載の制御方法。
【請求項6】
前記再始動工程で前記エンジンを再始動させた後、前記変速機の変速段がニュートラルまたは低速側の所定の変速段になった場合に前記エンジンを再び停止する再停止工程を更に含む、ことを特徴とする請求項2又は3のいずれか1項に記載の制御方法。
【請求項7】
前記再停止工程では、前記変速機の変速段がニュートラルまたは前記所定の変速段になった場合でなくとも、前記再始動工程で前記エンジンを再始動させてから所定時間が経過した場合に前記エンジンを再び停止する、ことを特徴とする請求項6に記載の制御方法。
【請求項8】
前記再始動工程で前記エンジンを再始動させる際に、前記変速機の変速段を低速側の所定の変速段に変更することを前記鞍乗型車両の運転者に指示するための報知を行う報知工程を更に含む、ことを特徴とする請求項2又は3に記載の制御方法。
【請求項9】
前記予測工程では、前記鞍乗型車両の速度が閾値未満になった場合に前記鞍乗型車両が停止すると予測する、ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の制御方法。
【請求項10】
前記コースティングの実行中に前記クラッチの接続が検知された場合、または、前記スロットル開度が前記所定開度以上であることが検知された場合に、前記エンジンを始動させて前記コースティングを終了する終了工程を更に含む、ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の制御方法。
【請求項11】
鞍乗型車両のコースティングを制御する制御装置であって、
前記鞍乗型車両のクラッチの切断状態を検知するクラッチ検知手段と、
前記鞍乗型車両のスロットル開度を検知するスロットル検知手段と、
前記コースティングを制御する制御手段と、
を備え、
前記制御手段は、
前記クラッチ検知手段により前記クラッチの切断が検知され、且つ、前記スロットル検知手段により前記スロットル開度が所定開度未満であることが検知された場合に、前記鞍乗型車両のエンジンを停止させることによって前記コースティングを開始し、
前記コースティングの実行中に前記鞍乗型車両が停止すると予測した場合に、前記エンジンを再始動させる、
ことを特徴とする制御装置。
【請求項12】
請求項11に記載の制御装置を備える鞍乗型車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鞍乗型車両のコースティングを制御する制御方法、制御装置、および、それを備える鞍乗型車両に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、手動式の変速機とクラッチとを有する車両において、惰性走行を制御することによって燃費を向上させる技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2012/070131号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されているような惰性走行(コースティングとも呼ばれる)は、四輪車だけでなく、自動二輪車などの鞍乗型車両にも適用することが望まれている。鞍乗型車両にコースティングを適用することにより、鞍乗型車両の燃費を向上させることができる。しかしながら、鞍乗型車両では、エンジンを停止させた状態でのコースティングの実行中に鞍乗型車両が停止すると、変速機における変速段の変更が困難になることがある。
【0005】
そこで、本発明は、コースティングの実行中に鞍乗型車両が停止した場合であっても、当該鞍乗型車両において変速段の変更を正常に行うことが可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の一側面としての制御方法は、鞍乗型車両のコースティングを制御する制御方法であって、前記鞍乗型車両のクラッチの切断状態を検知する第1検知工程と、前記鞍乗型車両のスロットル開度を検知する第2検知工程と、前記第1検知工程で前記クラッチの切断が検知され、且つ、前記第2検知工程で前記スロットル開度が所定開度未満であることが検知された場合に、前記鞍乗型車両のエンジンを停止させることによって前記コースティングを開始する開始工程と、前記コースティングの実行中に前記鞍乗型車両が停止するか否かを予測する予測工程と、前記予測工程で前記鞍乗型車両が停止すると予測された場合に、前記エンジンを再始動させる再始動工程と、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、例えば、コースティングの実行中に鞍乗型車両が停止した場合であっても、当該鞍乗型車両における変速機の変速段を変更し易くすることが可能な技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】鞍乗型車両の一例を示す外観図
図2】制御装置の構成例を示すブロック図
図3】鞍乗型車両のコースティング制御を示すフローチャート
図4】鞍乗型車両のコースティング制御を示すフローチャート
図5】鞍乗型車両のコースティングの制御例を説明するための図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について図を参照しながら説明する。本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨の範囲内での構成の変更や変形も含む。また、本実施形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが本発明に必須のものとは限らない。なお、同一の構成要素には同一の参照番号を付して、その説明を省略する。
【0010】
本発明に係る一実施形態の制御装置100について説明する。制御装置100は、鞍乗型車両10のコースティングを制御する装置である。コースティングとは、クラッチにより駆動源(エンジン)から駆動輪(車輪)への動力伝達を遮断して惰性走行を行うことである。本実施形態の場合、駆動源であるエンジンを停止させることによってコースティングが行われる。また、鞍乗型車両10としては、例えば自動二輪車や三輪車などが挙げられる。本実施形態では、鞍乗型車両10として自動二輪車を例示して説明する。
【0011】
図1は、本実施形態の制御装置100が適用(搭載)される鞍乗型車両10の一例を示す外観図(左側面図)である。鞍乗型車両10は、図1に示されるように、エンジン11と変速機12とを備える。エンジン11の出力は、不図示のクラッチを介して変速機12に伝達される。変速機12は、変速比が互いに異なる複数の変速段(ギヤ段)を有する手動式の変速機である。本実施形態では、変速機12が1速~5速の変速段を有する例を説明するが、それに限られず、変速機12における変速段の数は幾つであってもよい。
【0012】
鞍乗型車両10における左側のハンドルグリップ13の近傍には、運転者(ライダ)がクラッチの切断操作(クラッチ操作)を行うためのクラッチレバー14が設けられている。また、鞍乗型車両10の左側面には、運転者が変速機12の変速操作を行うためのシフトペダル15が設けられている。運転者によりクラッチレバー14およびシフトペダル15が操作されると、それに応じて不図示のシフタが作動し、変速機12の変速段が変更される(切り替えられる)。
【0013】
鞍乗型車両10における右側のハンドルグリップ16は、運転者がアクセル操作を行うように回転可能に構成されている。即ち、ハンドルグリップ16は、運転者による回転操作に応じてスロットル開度を調整してエンジン11の出力を制御するためのスロットル操作部として構成される。また、ハンドルグリップ16の近傍には、鞍乗型車両10のブレーキを制御するためのブレーキレバー17が設けられている。
【0014】
図2は、本実施形態の制御装置100の構成例を示すブロック図を示している。制御装置100は、エンジン11を制御することによって鞍乗型車両10のコースティングを制御する装置であり、本実施形態では制御部110と各種センサ120と報知部130とを備えうる。制御装置100は、鞍乗型車両10に設けられたECU(Electronic Control Unit)の一部として構成されてもよい。
【0015】
制御部110は、処理部111と、記憶部112と、インタフェース部113とを含みうる。処理部111は、CPU(Central Processing Unit)等によって構成され、各種センサ120の検知結果に基づいて鞍乗型車両10のコースティングを制御する。記憶部112は、RAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)等によって構成され、鞍乗型車両10のコースティングを制御するためのプログラムを記憶する。記憶部112に記憶されている当該プログラムは、処理部111によって読み出されて実行されうる。インタフェース部113は、各種センサ120等の外部デバイスと情報やデータの送受信を行う。
【0016】
各種センサ120は、クラッチ検知センサ121と、スロットル検知センサ122と、ギヤ段検知センサ123と、バンク角検知センサ124と、エンジン回転数センサ125と、車速センサ126とを含みうる。各種センサ120での検知結果を示す情報は、制御部110に供給(送信)されうる。即ち、各種センサ120での検知結果を示す情報は、インタフェース部113を介して処理部111に供給(送信)されうる。
【0017】
クラッチ検知センサ121(第1検知部)は、鞍乗型車両10のクラッチの切断状態を検知する。クラッチ検知センサ121は、運転者によるクラッチレバー14の操作量に基づいて、鞍乗型車両10のクラッチが切断された状態か否かを検知するものとして理解されてもよい。また、スロットル検知センサ122(第2検知部)は、鞍乗型車両10のスロットル開度を検知する。スロットル検知センサ122は、運転者によるハンドルグリップ16の操作量(回転量)に基づいてスロットル開度を検知するものとして理解されてもよい。
【0018】
ギヤ段検知センサ123は、鞍乗型車両10の変速機12における複数の変速段のうち運転者により選択されている変速段(即ち、現在の変速段)を検知する。バンク角検知センサ124は、鞍乗型車両10のバンク角を検知する。エンジン回転数センサ125は、鞍乗型車両10のエンジン11の回転数を検知する。また、車速センサ126は、鞍乗型車両10の速度(車速)を検知する。
【0019】
報知部130(通知部)は、各種情報を運転者に報知(通知)する。報知部130は、鞍乗型車両10に設けられた表示装置(ディスプレイ)に各種情報を表示することによって各種情報の報知を行ってもよいし、運転者の所有する情報端末に各種情報を送信することによって各種情報の報知を行ってもよい。本実施形態の場合、報知部130は、変速機12の変速段を低速側の所定の変速段に変更することを運転者に指示するための報知を行うために用いられる。所定の変速段とは、変速機12における複数の変速段のうち鞍乗型車両10を安定して発進させることができる低速側(即ち、高変速比側)の変速段に設定されうる。所定の変速段としては、例えば、1速または1速~2速が設定されうるが、それに限られるものではない。
【0020】
ところで、近年では、鞍乗型車両10の燃費向上の観点から、エンジン11の停止を伴うコースティングを鞍乗型車両10に適用することが望まれている。しかしながら、鞍乗型車両10に採用される手動式の変速機12では、一般に、隣接する変速ギヤ間に設けられた複数のダボ(突起)およびこれに対応するダボ孔から成るドッグクラッチ(ドッグギヤ)が用いられうる。ドッグクラッチを用いる変速機12では、エンジン11を停止させた状態でのコースティングの実行中に鞍乗型車両10が停止すると、変速時にダボが変速ギヤの側壁に当たってダボ孔に入らない現象(いわゆる「ダボ当たり」)が発生し、変速機12における変速段の変更が困難になることがある。例えば、変速機12の変速段が5速の状態でコースティングが実行され、当該コースティングの実行中に鞍乗型車両10が停止すると、変速機12の変速段を5速から1速に変更することが困難になりうる。
【0021】
そこで、本実施形態の制御装置100(制御部110)は、エンジン11を停止させるコースティングの実行中に鞍乗型車両10が停止するか否かを予測し、鞍乗型車両10が停止すると予測された場合にエンジン11を再始動させる。これにより、コースティングの実行中に鞍乗型車両10が停止した場合であっても、エンジン11が動いている状態であるため、変速機12の変速段を変更し易くすることができる。ここで、「鞍乗型車両10の停止」とは、鞍乗型車両10が完全に停止している状態(即ち、鞍乗型車両10の速度がゼロkm/h)に限られず、完全な停止に近い状態、例えば、鞍乗型車両10の速度が停止判断閾値より遅い状態をも含んでもよい。停止判断閾値は、鞍乗型車両10が停止状態にあると判断するための閾値であり、一例として3~5km/hの範囲内の値に設定されうる。なお、鞍乗型車両10の速度(車速)は、車速センサ126によって検知される。
【0022】
以下、鞍乗型車両10のコースティングの制御例について、図3図5を参照しながら説明する。図3図4は、鞍乗型車両10のコースティング制御を示すフローチャートである。図3図4のフローチャートは、制御部110(処理部111)によって実行されうる。また、図5は、鞍乗型車両10のコースティングの制御例を説明するための図である。図5には、時刻と車速(鞍乗型車両10の速度)との関係、および、時刻とエンジン11の回転数との関係が示されている。
【0023】
ステップS101で、制御部110は、クラッチ検知センサ121によりクラッチの切断が検知されたか否かを判定する。クラッチの切断が検知されていない場合にはステップS101を繰り返し行い、クラッチの切断が検知された場合にステップS102に進む。ステップS102で、制御部110は、スロットル検知センサ122によりスロットル開度が所定開度未満であることが検知されたか否かを判定する。スロットル開度が所定開度以上である場合にはステップS101に戻り、スロットル開度が所定開度未満である場合にはステップS103に進む。ここで、所定開度は、スロットルが閉状態であると判断するための値(閾値)であり、例えばゼロ、或いは、ゼロに近い値に設定されうる。
【0024】
ステップS103で、制御部110は、鞍乗型車両10のエンジン11を停止させてコースティングを開始する。制御部110は、図5に示されるように、クラッチ検知センサ121によりクラッチの切断が検知され、且つ、スロットル検知センサ122によりスロットル開度が所定開度未満であることが検知されたタイミングt1において、エンジン11を停止させて鞍乗型車両10のコースティングを開始する。
【0025】
ステップS104で、制御部110は、鞍乗型車両10のコースティングを制御する。ステップS104におけるコースティング制御の詳細については図4に示されている。以下、図4を参照しながら、ステップS104におけるコースティング制御について説明する。
【0026】
ステップS111で、制御部110は、鞍乗型車両10が停止するか否かを予測する。例えば、制御部110は、図5に示されるように、車速センサ126で検知されている車速が閾値TH未満になった場合に鞍乗型車両10が停止すると予測することができる。閾値THは、鞍乗型車両10の停止を予測することができる値であれば任意に設定することができるが、本実施形態では一例として10km/hに設定されうる。ここで、制御部110は、車速(閾値TH)に加えて或いは代わりに、車速の低下率に基づいて、鞍乗型車両10の停止を予測してもよい。例えば、図5に示されるように一定の低下率で車速が低下している場合、制御部110は、当該低下率に基づいて、鞍乗型車両10が停止すること、および、鞍乗型車両10の停止タイミングを予測することができる。
【0027】
ステップS112で、制御部110は、ステップS104で鞍乗型車両10の停止が予測されたか否かを判定する。鞍乗型車両10の停止が予測されなかった場合(即ち、鞍乗型車両10が停止しないと予測された場合)にはステップS118に進み、鞍乗型車両10の停止が予測された場合にはステップS113に進む。
【0028】
ステップS113で、制御部110は、エンジン11の停止中においてギヤ段検知センサ123で検知された変速機12の変速段が低速側の所定の変速段であるか否かを判定する。所定の変速段とは、前述したように、変速機12における複数の変速段のうち鞍乗型車両10を安定して発進させることができる低速側(即ち、高変速比側)の変速段に設定されうる。変速機12の変速段が低速側の所定の変速段である場合にはステップS118に進み、変速機12の変速段が低速側の所定の変速段でない場合にはステップS114に進む。
【0029】
ステップS114で、制御部110は、報知部130により、変速機12の変速段を低速側の所定の変速段に変更することを運転者に指示するための報知を行う。当該報知は、エンジン11を再始動させる際に行われうる。次いで、ステップS115で、制御部110は、エンジン11を再始動させる。例えば、制御部110は、図5に示されるように、車速が閾値THに達した(即ち、車速が閾値TH未満になった)タイミングt2においてエンジン11を再始動させる。このようにエンジン11を再始動させることにより、コースティングの実行中に鞍乗型車両10が停止した場合であっても、変速機12の変速段を変更し易くすることが可能となる。
【0030】
ここで、ステップS113~S115は、エンジン11の停止中における変速機12の変速段に応じてエンジン11を再始動させる工程として理解されてもよい。即ち、制御部110は、エンジン11の停止中における変速機12の変速段が低速側の所定の変速段でないと判定した場合(S113のNo)には、変速段の変更指示の報知(S114)およびエンジン11の再始動(S115)を実行する。一方で、制御部110は、エンジン11の停止中における変速機12の変速段が低速側の所定の変速段であると判定した場合(S113のYes)には、鞍乗型車両10が停止すると予測した場合(S112のYes)であっても、変速段の変更指示の報知(S114)およびエンジン11の再始動(S115)を実行しない。
【0031】
また、ステップS115でエンジン11を再始動させる際のエンジン11の回転数は、エンジン11の停止中における変速機12の変速段に応じて変更されるとよい。具体的には、制御部110は、エンジン11の停止中における変速機12の変速段が高速側(即ち、低変速比側)であるほどエンジン11の回転数が高くなるように、エンジン11を再始動させる際のエンジン11の回転数を変更するとよい。一例として、制御部110は、図5に示されるように、エンジン11の停止中における変速機12の変速段が4速の場合と5速の場合とで、エンジン11を再始動させる際のエンジン11の回転数を変更する。エンジン11の回転数が高いほど再始動後に変速段を変更できるまでの時間を短くすることができるので、変速段が高い場合ほどエンジン回転数を高く設定することで、低速段までの変更を素早く行うことができる。また、低速段までの変更回数が多くない場合に不要にエンジン回転数を高くする必要がないため、鞍乗型車両10の燃費向上の点で有利になる。ただし、変速段に応じて再始動時のエンジン11の回転数を必ずしも変更する必要はなく、変速段によらず一定のエンジン回転数(たとえばアイドル回転数)としても良い。
【0032】
ステップS116で、制御部110は、エンジン11を再び停止させるための再停止条件を満たすか否かを判定する。再停止条件としては、例えば、運転者の操作により変速機12の変速段がニュートラルに変更されたとの条件、或いは、変速機12の変速段が低速側の所定の変速段に変更されたとの条件が挙げられる。再停止条件を満たさない場合にはステップS116を繰り返し行い、再停止条件を満たした場合にステップS117に進む。ここで、本ステップS116では、再停止条件を満たさなくとも、ステップS115でエンジン11を再始動させてから所定時間が経過した場合にステップS117に進んでもよい。
【0033】
ステップS117で、制御部110は、エンジン11を再び停止させる。次いで、ステップS118で、制御部110は、コースティングを終了するための終了条件を満たすか否かを判定する。終了条件としては、クラッチ検知センサ121によりクラッチの接続が検知されたとの条件、または、スロットル検知センサ122によりスロットル開度が所定開度以上であることが検知されたとの条件が挙げられる。終了条件を満たさない場合にはステップS111に戻り、終了条件を満たした場合に図3のステップS105に進む。
【0034】
図3のステップS105で、制御部110は、鞍乗型車両10のエンジン11を始動させてコースティングを終了する。なお、図3図4のフローチャートは繰り返し実行されうる。即ち、図3のフローチャートが終了したら、再び図3のフローチャートが開始されうる。
【0035】
上述したように、本実施形態の制御装置100は、エンジン11を停止させるコースティングの実行中に鞍乗型車両10が停止するか否かを予測し、鞍乗型車両10が停止すると予測された場合にエンジン11を再始動させる。これにより、コースティングの実行中に鞍乗型車両10が停止した場合であっても、変速機12の変速段を変更し易くすることができる。したがって、エンジン11の停止を伴うコースティングを鞍乗型車両10に適用することが可能となるため、鞍乗型車両10の燃費向上の点で有利になる。
【0036】
<実施形態のまとめ>
1.上記実施形態の制御方法は、
鞍乗型車両(例えば10)のコースティングを制御する制御方法であって、
前記鞍乗型車両のクラッチの切断状態を検知する第1検知工程(例えばS101)と、
前記鞍乗型車両のスロットル開度を検知する第2検知工程(例えばS102)と、
前記第1検知工程で前記クラッチの切断が検知され、且つ、前記第2検知工程で前記スロットル開度が所定開度未満であることが検知された場合に、前記鞍乗型車両のエンジン(例えば11)を停止させることによって前記コースティングを開始する開始工程(例えばS103)と、
前記コースティングの実行中に前記鞍乗型車両が停止するか否かを予測する予測工程(例えばS111)と、
前記予測工程で前記鞍乗型車両が停止すると予測された場合に、前記エンジンを再始動させる再始動工程(例えば115)と、を含む。
この実施形態によれば、コースティングの実行中に鞍乗型車両が停止した場合であっても、変速機の変速段を変更し易くすることができる。したがって、エンジンの停止を伴うコースティングを鞍乗型車両に適用することが可能となるため、鞍乗型車両の燃費向上の点で有利になる。
【0037】
2.上記実施形態において、
前記鞍乗型車両は、複数の変速段を有する手動式の変速機(例えば12)を備え、
前記再始動工程では、前記エンジンの停止中における前記変速機の変速段に応じて前記エンジンを再始動させる。
この実施形態によれば、エンジンの停止中における変速機の変速段によってはエンジンの再始動が不必要であるため、そのような場合にエンジンの再始動を省くことができる。即ち、鞍乗型車両の燃費向上の点で有利になる。
【0038】
3.上記実施形態において、
前記予測工程で前記鞍乗型車両が停止すると予測された場合であっても、前記エンジンの停止中における前記変速機の変速段が低速側の所定の変速段である場合には前記再始動工程を実行しない。
この実施形態によれば、エンジンの停止中における変速機の変速段が低速側の所定の変速段である場合にはエンジンの再始動が不必要であるため、そのような場合にエンジンの再始動を省くことができる。即ち、鞍乗型車両の燃費向上の点で有利になる。
【0039】
4.上記実施形態において、
前記再始動工程では、前記エンジンの停止中における前記変速機の変速段に応じて、前記エンジンを再始動させる際の前記エンジンの回転数を変更する。
この実施形態によれば、エンジンの停止中における変速機の変速段に応じた回転数でエンジンを効率よく再始動させることができるため、鞍乗型車両の燃費向上の点で有利になる。
【0040】
5.上記実施形態において、
前記再始動工程では、前記エンジンの停止中における前記変速機の変速段が高速側であるほど前記エンジンの回転数が高くなるように、前記エンジンを再始動させる際の前記エンジンの回転数を変更する。
この実施形態によれば、エンジンの停止中における変速機の変速段に応じた回転数でエンジンを効率よく再始動させることができるため、鞍乗型車両の燃費向上の点で有利になる。
【0041】
6.上記実施形態において、
前記再始動工程で前記エンジンを再始動させた後、前記変速機の変速段がニュートラルまたは低速側の所定の変速段になった場合に前記エンジンを再び停止する再停止工程(例えばS116~S117)を更に含む。
この実施形態によれば、変速機において適切な変速段になった場合にエンジンが再び停止されるため、鞍乗型車両の燃費向上の点で有利になる。
【0042】
7.上記実施形態において、
前記再停止工程では、前記変速機の変速段がニュートラルまたは前記所定の変速段になった場合でなくとも、前記再始動工程で前記エンジンを再始動させてから所定時間が経過した場合に前記エンジンを再び停止する。
この実施形態によれば、変速機においてニュートラルまたは所定の変速段になった場合でなくとも、時間に応じてエンジンが再び停止されるため、鞍乗型車両の燃費向上の点で有利になる。
【0043】
8.上記実施形態において、
前記再始動工程で前記エンジンを再始動させる際に、前記変速機の変速段を低速側の所定の変速段に変更することを前記鞍乗型車両の運転者に指示するための報知を行う報知工程(例えばS114)を更に含む。
この実施形態によれば、変速機における変速段の変更を運転者に促すことができる。
【0044】
9.上記実施形態において、
前記予測工程では、前記鞍乗型車両の速度が閾値(例えばTH)未満になった場合に前記鞍乗型車両が停止すると予測する。
この実施形態によれば、鞍乗型車両の停止を的確に且つ精度よく予測することができる。
【0045】
10.上記実施形態において、
前記コースティングの実行中に前記クラッチの接続が検知された場合、または、前記スロットル開度が前記所定開度以上であることが検知された場合に、前記エンジンを始動させて前記コースティングを終了する終了工程(ステップS118、S105)を更に含む。
この実施形態によれば、鞍乗型車両のコースティングを適切に終了させることができる。
【0046】
11.上記実施形態の制御装置は、
鞍乗型車両(例えば10)のコースティングを制御する制御装置(例えば100)であって、
前記鞍乗型車両のクラッチの切断状態を検知するクラッチ検知手段(例えば121)と、
前記鞍乗型車両のスロットル開度を検知するスロットル検知手段(例えば122)と、
前記コースティングを制御する制御手段(例えば110)と、
を備え、
前記制御手段は、
前記クラッチ検知手段により前記クラッチの切断が検知され、且つ、前記スロットル検知手段により前記スロットル開度が所定開度未満であることが検知された場合に、前記鞍乗型車両のエンジンを停止させることによって前記コースティングを開始し(例えばS103)、
前記コースティングの実行中に前記鞍乗型車両が停止すると予測した場合に、前記エンジンを再始動させる(例えばS111~S115)。
この実施形態によれば、コースティングの実行中に鞍乗型車両が停止した場合であっても、変速機の変速段を変更し易くすることができる。したがって、エンジンの停止を伴うコースティングを鞍乗型車両に適用することが可能となるため、鞍乗型車両の燃費向上の点で有利になる。
【0047】
本発明は上記実施の形態に制限されるものではなく、本発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。
【符号の説明】
【0048】
10:鞍乗型車両、11:エンジン、12:変速機、13:左側のハンドルグリップ、14:クラッチレバー、15:シフトペダル、16:右側のハンドルグリップ(スロットル操作部)、17:ブレーキレバー、100:制御装置、110:制御部、120:各種センサ、121:クラッチ検知センサ、122:スロットル検知センサ、123:ギヤ段検知センサ、124:バンク角検知センサ、125:エンジン回転数センサ、126:車速センサ
図1
図2
図3
図4
図5