(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024013225
(43)【公開日】2024-01-31
(54)【発明の名称】光学フィルター素地、光学フィルターおよび撮像装置
(51)【国際特許分類】
G02B 5/22 20060101AFI20240124BHJP
G02B 5/26 20060101ALI20240124BHJP
G02B 5/28 20060101ALI20240124BHJP
G02B 1/113 20150101ALI20240124BHJP
【FI】
G02B5/22
G02B5/26
G02B5/28
G02B1/113
【審査請求】有
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023117103
(22)【出願日】2023-07-18
(31)【優先権主張番号】10-2022-0089109
(32)【優先日】2022-07-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2023-0085127
(32)【優先日】2023-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】509179087
【氏名又は名称】エルエムエス・カンパニー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】LMS Co.,Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】弁理士法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】ジュン,ジュンホ
(72)【発明者】
【氏名】キム,ヒキョン
(72)【発明者】
【氏名】カン,ナムウ
【テーマコード(参考)】
2H148
2K009
【Fターム(参考)】
2H148CA01
2H148CA05
2H148CA12
2H148CA13
2H148CA17
2H148CA23
2H148CA24
2H148CA26
2H148CA29
2H148FA01
2H148FA05
2H148FA09
2H148FA12
2H148FA24
2H148GA01
2H148GA04
2H148GA09
2H148GA19
2H148GA32
2H148GA61
2K009AA02
2K009BB02
2K009CC03
2K009CC06
2K009DD03
(57)【要約】 (修正有)
【課題】可視光透過率に優れ、可視光領域でリップル現象を防止できる光学フィルター素地および光学フィルターを提供する。
【解決手段】赤外線吸収基板と、前記基板の一面または両面に形成された耐湿層と、を含み、波長範囲450nm~560nmでの入射角0度リップル値が7%以下であり、下記式1による△TVの絶対値が30%以下である、光学フィルター素地。
[式1]△TV=100×(TV.f-TV.i)/TV.i
(式1中、TV.fは、前記素地を85℃の温度および85%の相対湿度で120時間の間維持した後の前記素地の425nm~560nmの波長範囲での平均透過率であり、TV.iは、前記温度および湿度に維持する前の前記素地の425nm~560nmの波長範囲での平均透過率である。)
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
赤外線吸収基板と、
前記基板の一面または両面に形成された耐湿層と、を含み、
波長範囲450nm~560nmでの入射角0度リップル値が7%以下であり、
下記式1による△TVの絶対値が30%以下である、光学フィルター素地。
[式1]
△TV=100×(TV.f-TV.i)/TV.i
(式1中、TV.fは、前記素地を85℃の温度および85%の相対湿度で120時間の間維持した後の前記素地の425nm~560nmの波長範囲での平均透過率であり、TV.iは、前記温度および湿度に維持する前の前記素地の425nm~560nmの波長範囲での平均透過率である。)
【請求項2】
800nm~1000nmの波長範囲での平均透過率が6%以下である、請求項1に記載の光学フィルター素地。
【請求項3】
T50% cut off波長が590nm~660nmの範囲内にある透過バンドを有する、請求項1に記載の光学フィルター素地。
【請求項4】
透過バンドの425nm~560nmの波長範囲内での平均透過率が75%以上である、請求項3に記載の光学フィルター素地。
【請求項5】
耐湿層は、赤外線吸収基板に接しており、ASTM D3359規格による前記耐湿層の付着力が3B以上である、請求項1に記載の光学フィルター素地。
【請求項6】
赤外線吸収基板は、CuO含有フッ化リン酸塩ガラス基板またはCuO含有リン酸塩ガラス基板である、請求項1に記載の光学フィルター素地。
【請求項7】
耐湿層は、ポリシラザン、シラン化合物、ポリシルセスキオキサン、ポリシロキサン、ポリシラン、ポリカルボシラン、シリコーン樹脂、シリカ、フッ素樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂およびポリカーボネートからなる群から選ばれた1つ以上を含む、請求項1に記載の光学フィルター素地。
【請求項8】
耐湿層は、厚さが0.01μm~10μmの範囲内にある、請求項1に記載の光学フィルター素地。
【請求項9】
光吸収層を赤外線吸収基板の一面または両面にさらに含む、請求項1に記載の光学フィルター素地。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一項に記載の光学フィルター素地と、
前記光学フィルター素地の赤外線吸収基板の一面または両面に形成されている誘電体膜と、を含む光学フィルター。
【請求項11】
誘電体膜は、互いに屈折率が異なっており、交互に積層した第1サブ層および第2サブ層を含む、請求項10に記載の光学フィルター。
【請求項12】
第1および第2サブ層は、下記式2によるV値が17以下となるように形成されている、請求項11に記載の光学フィルター。
[式2]
V=K×{[(n1/n2)2p×(n1
2/ns)-1]/[(n1/n2)2p×(n1
2/ns)+1]}2
(式2中、n1は、第1サブ層の屈折率であり、n2は、第2サブ層の屈折率であり、nsは、透明基板の屈折率であり、Kは、誘電体膜内の第1および第2サブ層の合計層数であり、pは、K=(2p+1)を満たす数である。)
【請求項13】
第1サブ層の屈折率n1と第2サブ層の屈折率n2の比n1/n2は、1.4~2.0の範囲内にある、請求項12に記載の光学フィルター。
【請求項14】
第1サブ層の屈折率n1は、1.8~3.5の範囲内にある、請求項13に記載の光学フィルター。
【請求項15】
第1サブ層の屈折率n1と透明基板の屈折率nsの比n1/nsは、1.4~2.0の範囲内にある、請求項12に記載の光学フィルター。
【請求項16】
式2のKは、15以下である、請求項12に記載の光学フィルター。
【請求項17】
第1および第2サブ層の厚さは、それぞれ5nm~200nmの範囲内にあり、誘電体膜に含まれる第1サブ層の厚さと第2サブ層の厚さの平均値は、5nm~70nmの範囲内である、請求項12に記載の光学フィルター。
【請求項18】
誘電体膜は、厚さが100nm~500nmの範囲内である、請求項10に記載の光学フィルター。
【請求項19】
誘電体膜が赤外線吸収基板の両面に形成されている、請求項10に記載の光学フィルター。
【請求項20】
請求項10に記載の光学フィルターを含む、撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光学フィルター素地および光学フィルターに関する。
【背景技術】
【0002】
CCD(Charge-Coupled Device)やCMOS(complementary metal-oxide-semiconductor)イメージセンサーなどを用いた撮像装置において、光学フィルターが使用されている。前記光学フィルターは、良好な色再現性と鮮明な画像を得るために使用され、可視光を透過し、近赤外光などの赤外光を遮蔽する特性を有する。このような光学フィルターは、近赤外カットフィルターとも呼ばれる。
【0003】
このような光学フィルターには、できるだけ可視光領域の光のみを透過させる特性が要求される。したがって、前記光学フィルターには、可視光をできるだけ高い透過率で透過させ、紫外光および赤外光を遮断する透過率曲線を示すことが要求される。
【0004】
しかしながら、可視光の短波長領域近傍の紫外光と可視光長波長領域の赤外光を正確に遮断しつつ、可視光の透過率が高い透過率曲線を得ることが容易ではない。
【0005】
公知の光学フィルターとして、吸収剤を含有する吸収層と、誘電体膜である反射層を具備するものが知られている。前記誘電体膜を適用すると、紫外線および/または赤外線領域帯の光を遮断することができる。しかしながら、誘電体膜は、入射角によって透過率曲線が変化(シフト)する特性を有する。したがって、前記従来の光学フィルターは、前記誘電体膜の短所を補完するために、透過率の入射角依存性が小さい近赤外吸収色素を含有する吸収層を適用する。
【0006】
基板としてそれ自体で近赤外線吸収特性を有するいわゆる赤外線吸収ガラス(Blue glassとも呼ばれる)を適用した光学フィルターも知られている。赤外線吸収ガラスは、近赤外線波長領域の光を選択的に吸収するように、ガラスにCuOなどを添加したガラスフィルターである。
【0007】
しかしながら、従来の赤外線吸収ガラスは、前記吸収特性を示すが、長波長の赤外線に対する吸収能が低いため、依然として誘電体膜などを適用しなければならない。
【0008】
近年、前記赤外線吸収ガラスの組成などを調節して、前記長波長の赤外線に対しても優れた吸収特性を示す赤外線吸収ガラスが知られている。このようなガラスを適用する場合には、誘電体膜を形成しないか、あるいは、少なく形成することによって、入射角によるシフトが抑制された光学フィルターを形成するのに有利である。
【0009】
ところが、このようなガラスは、長波長の赤外線に対しても優れた吸収特性を示すが、耐湿性や耐熱性に劣る問題がある。
【0010】
図5は、前述のようなガラスの透過率スペクトルを示す。このようなガラスは、
図5に点線で示されたように、長波長の赤外線に対しても適切な吸収能を示すが、耐湿/耐熱の条件で維持された後に、その特性が急速に失われる(
図5の実線表示)。
【0011】
光学フィルターにおいて、いわゆるリップル(ripple)現象と呼ばれる現象が抑制される必要がある。リップル現象は、光学フィルターの可視光透過領域で周期的な透過率の変動が発生する現象であり、具体的には、所定領域での実際の透過率が当該領域の平均透過率と比べて大きくなり、小さくなる現象が周期的に観察される現象である。
【0012】
撮像装置は、光学フィルターを透過した可視光をRGB(Red、Green、Blue)別にセンサーでセンシングする。RGBの各センサーの感度などは、波長別平均透過率を考慮して調節するが、リップル現象が起こると、センサーが認識する光で変動(fluctuation)が発生し、色再現性が低下する。
【0013】
リップル現象は、可視光領域の透過率が瞬間的に低下する区域(いわゆるbunk区域)を発生させることができ、これは、ゴースト現象を誘発し、このようなゴースト現象も、色再現性を低下させる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本開示は、光学フィルター素地および光学フィルターを提供することを目的とする。本開示は、耐湿層を含んでいて、優れた耐久性を示しながらも、光学特性に優れた光学フィルター素地および光学フィルターを提供することを目的とする。
【0015】
本開示は、紫外線と赤外線のように遮断が必要な波長帯域に対して遮断特性に優れ、可視光透過率に優れ、可視光領域でリップル現象を防止できる光学フィルター素地および光学フィルターを提供することを目的とする。
【0016】
本開示は、基板として赤外線吸収基板、特に耐湿性と耐熱性に劣ると知られたガラスのような赤外線吸収基板を適用する場合にも、前記特性を確保できる光学フィルター素地および光学フィルターを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本明細書において言及する物性のうち、測定温度および/または測定圧力が結果に影響を及ぼす物性は、特に明記しない限り、常温および/または常圧で測定した結果である。
【0018】
本明細書において用語「常温」は、加温または減温されない自然そのままの温度であり、例えば、10℃~30℃の範囲内のいずれか1つの温度であってもよく、約23℃または約25℃程度の温度を意味する。また、本明細書において温度の単位は、別段の定めがない限り、摂氏(℃)である。
【0019】
本明細書において用語「常圧」は、加圧または減圧されない自然そのままの圧力であり、通常、大気圧レベルの約740mmHg~780mmHg程度の程度を意味する。
【0020】
本明細書において測定湿度が結果に影響を及ぼす物性の場合、当該物性は、前記常温および/または常圧状態で特に調節されない自然そのままの湿度で測定した物性である。
【0021】
本開示において言及する光学特性(例えば、屈折率)が波長によって変わる特性である場合に、別段の定めがない限り、当該光学特性は、波長520nmの光に対して得られた結果である。
【0022】
本開示において用語「透過率」は、別段の定めがない限り、特定波長で確認した実際の透過率(実測透過率)を意味する。
【0023】
本開示において用語「平均透過率」は、別段の定めがない限り、所定波長領域内での最短波長から波長を1nmずつ増加させながら、各波長の透過率を測定した後に測定された透過率の算術平均を求めた結果である。例えば、350nm~360nmの波長範囲内の平均透過率は、350nm、351nm、352nm、353nm、354nm、355nm、356nm、357nm、358nm、359nmおよび360nmの波長で測定した透過率の算術平均である。
【0024】
本明細書において用語「最大透過率」は、所定波長領域内での最短波長から波長を1nmずつ増加させながら、各波長の透過率を測定したときの最大透過率である。例えば、350nm~360nmの波長範囲内の最大透過率は、350nm、351nm、352nm、353nm、354nm、355nm、356nm、357nm、358nm、359nmおよび360nmの波長で測定した透過率のうち、最も高い透過率である。
【0025】
本明細書において入射角は、評価対象表面の法線を基準とする角度である。例えば、光学フィルターの入射角0度での透過率は、前記光学フィルター表面の法線に実質的に平行な方向に入射した光に対する透過率を意味する。また、例えば、入射角40度は、前記法線と時計または反時計回りの方向に実質的に40度の角度を成す入射光に対する値である。このような入射角の定義は、透過率など他の特性にも同一に適用される。
【0026】
本明細書において用語「光学フィルター素地(material layer for optical filter)」は、誘電体膜が形成される前の光学フィルターを意味する。 前記光学フィルター素地は、前記誘電体膜を除いた他の光学フィルターの構成を含んでもよい。
【0027】
本明細書において用語「光学フィルター」は、前記素地の一面または両面に誘電体膜が形成された構造を意味する。
【0028】
本開示の光学フィルター素地および光学フィルターは、優れた耐久性を示し、光学特性に優れている。
【0029】
本開示の光学フィルター素地および/または光学フィルターは、短波長可視光領域近傍の紫外光と長波長可視光領域近傍の赤外光を効率的かつ正確に遮断することができ、高い透過率で可視光透過バンドを具現することができる。
【0030】
本開示において用語「可視光」は、略400nm~700nmの範囲内の光を意味する。
【0031】
本開示において用語「可視光透過バンド」は、425nm~560nmの波長範囲内での平均透過率が75%以上である分光スペクトルの特性を意味する。前記425nm~560nmの波長範囲内での平均透過率は、別の例では、約77%以上、79%以上、81%以上、83%以上、85%以上、87%以上、89%以上または91%以上であってもよい。前記平均透過率の上限は、特に限定されない。例えば、前記平均透過率は、約100%以下、95%以下、90%以下、85%以下、80%以下または75%以下程度であってもよい。
【0032】
本開示において用語「Tn% cut on」は、所定波長領域の範囲内でn%の透過率を示す最短波長を意味し、「Tn% cut off」は、所定波長領域の範囲内でn%の透過率を示す最長波長を意味する。例えば、T50% cut onは、所定波長領域の範囲内で50%の透過率を示す最短波長を意味し、T50% cut offは、所定波長領域の範囲内で50%の透過率を示す最長波長を意味する。
【0033】
本開示の光学フィルター素地は、一例において、透明基板を含み、前記透明基板の一面または両面に耐湿層を含んでもよい。
【0034】
本開示において用語「耐湿層」は、前記光学フィルター素地または光学フィルターが後述する式1の△TVの絶対値の範囲を示すようにする層を意味する。
【0035】
本開示の光学フィルター素地または光学フィルターは、低いリップル値(Ripple value)を示すことができる。一例において、前記光学フィルター素地または光学フィルターは、450nm~560nmの波長領域で入射角0度を基準として所定の範囲内のリップル値を持っていってもよい。
【0036】
用語「リップル値」は、前記波長領域450nm~560nmでの平均透過率Tave.i(i=1~n)と実際の透過率Ti(i=1~n)との差Tdiff.i=Ti-Tave.i(i=1~n)を全て求めた後、求められた差の最大値Max(Tdiff.i)と最小値Min(Tdiff.i)を差し引きして求めた値である。前記で1からnまでの範囲に定められる添え字iは、波長を示す序数である。例えば、450nm~560nmの範囲でリップル値を確認するとき、450nmは、iが1である場合と指定され、波長が1nmずつ増加すると、iも1ずつ増加する。すなわち451nmは、iが2である場合と指定され、560nmは、iが111である場合と指定される。前記リップル値は、下記式Aによって定められるR値である。
【0037】
[式A]
R=Max(Tdiff.i)-Min(Tdiff.i)
【0038】
式A中、Rは、前記リップル値であり、Max(Tdiff.i)は、前記平均透過率と実際の透過率との差のうち最大値であり、Min(Tdiff.i)は、前記平均透過率と実際の透過率との差のうち最小値である。
【0039】
前記リップル値は、3次スプライン方式の回帰方程式で計算することができる。
【0040】
前記リップル値の上限は、約7.0%、6.8%、6.6%、6.4%、6.2%、6.0%、5.8%、5.6%、5.4%、5.2%、5%、4.8%、4.6%、4.4%、4.2%、4%、3.8%、3.6%、3.4%、3.2%、3%、2.9%、2.8%、2.7%、2.6%、2.5%、2.4%、2.3%、2.2%、2.1%、2.0%、1.9%、1.8%、1.7%、1.6%または1.5%程度であり、その下限は、0%、0.2%、0.4%、0.6%、0.8%、1%、1.2%、1.4%、1.6%、1.8%、2%、2.2%または2.4%程度であることができる。前記リップル値は、前記記載の上限から選択された任意のいずれかの一つの上限の以下又は未満の範囲であるか、又は、前記記載の上限から選択された任意のいずれかの一つの上限の以下又は未満でありながら、前記記載の下限から選択された任意のいずれかの一つの下限の以上又は超過である範囲内にあることができる。
【0041】
前記リップル値は、光学フィルターが多層の誘電体膜(例えば、いわゆるIRやARと呼ばれる層)を含まない状態での値、すなわち前記光学フィルター素地に対する値である。通常、多層の誘電体膜が存在しない場合には、リップル現象がひどく発生しない。しかしながら、耐久性の確保のために、前記耐湿層を形成する場合に、耐湿層の特性によってリップル現象が発生する場合が多い。しかしながら、本開示は、前記のような範囲でリップル現象を最小化したり防止することができる。
【0042】
本開示の光学フィルター素地は、また、優れた耐久性を示すことができ、例えば、下記の式1による△TVの絶対値が所定の範囲の内にあってもよい。
【0043】
[式1]
△TV=100×(TV.f-TV.i)/TV.i
【0044】
式1中、TV.fは、前記光学フィルター素地を85℃の温度および85%の相対湿度で120時間の間維持した後に確認した前記光学フィルター素地の425nm~560nmの波長範囲での平均透過率であり、TV.iは、前記温度および湿度で維持する前の前記光学フィルター素地の425nm~560nmの波長範囲での平均透過率である。
【0045】
前記△TVの絶対値の上限は、30%、28%、26%、24%、22%、20%、18%、16%、14%、12%、10%、8%、6%、4%、2%、1.5%、1%、0.8%、0.6%または0.4%程度であってもよい。前記△TVは、正数または負数であってもよい。前記△TVの絶対値の下限は、例えば、0%、0.5%、1%、1.5%、2%、2.5%、3%、3.5%、4%、4.5%、5%または5.5%程度であってもよい。前記△TVの絶対値は、前記記載の上限から選択された任意のいずれかの一つの上限の以下又は未満の範囲であるか、又は、前記記載の上限から選択された任意のいずれかの一つの上限の以下又は未満でありながら、前記記載の下限から選択された任意のいずれかの一つの下限の以上又は超過である範囲内にあることができる。
【0046】
前記特性も、前記光学フィルターが前記多層の誘電体膜(例えば、いわゆるIRやARと呼ばれる層)を含まない状態(光学フィルター素地)での特性であってもよい。
【0047】
本開示の光学フィルター素地は、上記のように低いリップル値と優れた耐久性を満足しながらも、全体的に優れた光学特性を示すことができる。
【0048】
例えば、前記光学フィルター素地は、T50% cut on波長が約390nm~430nmの範囲内である透過バンドを示すことができる。前記T50% cut on波長は、300nm~700nmの波長範囲内で50%の透過率を示す波長のうち最短波長である。前記50%の透過率を示す波長は、前記390nm~430nmの範囲内に1つまたは2つ存在することができ、1つが存在する場合に、当該波長、二つ以上存在する場合に、それらのうちの最短波長が前記T50% cut on波長となる。前記T50% cut on波長の下限は、390nm、392nm、394nm、396nm、398nm、400nm、402nm、404nm、406nm、408nm、410nmまたは412nm程度であり、その上限は、430nm、428nm、426nm、424nm、422nm、420nm、418nm、416nm、414nm、412nmまたは410nmの程度であることができる。前記T50% cut on波長は、前記記載の上限から選択された任意のいずれかの一つの上限の以下又は未満でありながら、前記記載の下限から選択された任意のいずれかの一つの下限の以上又は超過である範囲内にあることができる。
【0049】
前記光学フィルター素地は、T50% cut off波長が約590nm~660nmの範囲内である透過バンドを示すことができる。前記T50% cut off波長は、500nm~800nmの波長範囲内で50%の透過率を示す波長のうち最長波長である。前記50%の透過率を示す波長は、前記500nm~800nmの範囲内に1つまたは2つ以上存在することができ、1つが存在する場合に、当該波長、2つ以上存在する場合に、最長波長が前記T50% cut off波長となる。前記T50% cut off波長の下限は、590nm、592nm、594nm、596nm、598nm、600nm、602nm、604nm、606nm、608nm、610nm、612nm、614nm、616nm、618nm、620nm、622nm、624nm、626nm、628nmまたは630nmの程度であり、その上限は、660nm、658nm、656nm、654nm、652nm、650nm、648nm、646nm、644nm、642nm、640nm、638nm、636nm、634nm、632nm、630nm、628nm、626nm、624nm、622nm、620nmまたは618nmの程度であることができる。 前記T50% cut off波長は、前記記載の上限から選択された任意のいずれかの一つの上限の以下又は未満でありながら、前記記載の下限から選択された任意のいずれかの一つの下限の以上又は超過である範囲内にあることができる。
【0050】
前記光学フィルターは、425nm~560nmの範囲内において、所定の範囲の平均透過率を示す透過バンドを有していてもよい。前記425nm~560nmの範囲内においての平均透過率の下限は、75%、77%、79%、81%、83%、85%、87%、89%または91%の程度であり、その上限は、98%、96%、94%、92%、90%、88%、86%、84%または82%の程度であることができる。 前記平均透過率は、前記記載の下限から選択された任意のいずれかの一つの下限の以上又は超過であるか、又は前記記載の上限から選択された任意のいずれかの一つの上限の以下又は未満でありながら、前記記載の下限から選択された任意のいずれかの一つの下限の以上又は超過である範囲内にあることができる。
【0051】
本開示の光学フィルターは、425nm~560nmの範囲内において、所定の範囲の最大透過率を示す透過バンドを有していてもよい。前記最大透過率の下限は、79%、81%、83%、85%、87%、89%、91%、93%または95%の程度であり、その上限は、100%、98%、96%、94%、92%、90%または88%の程度であることができる。前記最大透過率は、前記記載の下限から選択された任意のいずれかの一つの下限の以上又は超過であるか、又は前記記載の上限から選択された任意のいずれかの一つの上限の以下又は未満でありながら、前記記載の下限から選択された任意のいずれかの一つの下限の以上又は超過である範囲内にあることができる。
【0052】
本開示の光学フィルター素地は、350nm~390nmの範囲内において、所定の範囲の平均透過率を示す透過バンドを有していてもよい。前記平均透過率の下限は、0%、0.5%、1%、1.5%又は2%の程度であり、その上限は、6%、5.5%、5%、4.5%、4%、3.5%、3%又は2.5%の程度であることができる。 前記平均透過率は、前記記載の上限から選択された任意のいずれかの一つの上限の以下又は未満であるか、又は前記記載の上限から選択された任意のいずれかの一つの上限の以下又は未満でありながら、前記記載の下限から選択された任意のいずれかの一つの下限の以上又は超過である範囲内にあることができる。
【0053】
本開示の光学フィルター素地は、350nm~390nmの範囲内において、所定の範囲の最大透過率を示す透過バンドを有していてもよい。前記最大透過率の下限は、0%、0.5%、1%、1.5%、2%、2.5%、3%、3.5%、4%、4.5%、5%、5.5%、6%または6.5%の程度であり、その上限は、10%、9.5%、9%、8.5%、8%、7.5%、7%、6.5%、6%、5.5%、5%、4.5%、4%、3.5%、3%、2.5%または2%程度であることができる。前記最大透過率は、前記記載の上限から選択された任意のいずれかの一つの上限の以下又は未満であるか、又は前記記載の上限から選択された任意のいずれかの一つの上限の以下又は未満でありながら、前記記載の下限から選択された任意のいずれかの一つの下限の以上又は超過である範囲内にあることができる。
【0054】
本開示の光学フィルター素地は、波長700nmでの透過率が所定の範囲であってもよい。前記透過率の下限は、0%、0.2%、0.4%、0.6%または0.8%の程度であり、その上限は、4%、3.8%、3.6%、3.4%、3.2%、3.0%、2.8%、2.6%、2.4%、2.2%、2.0、1.8%、1.6%、1.4%、1.2%または1.0%の程度であることができる。前記透過率は、前記記載の上限から選択された任意のいずれかの一つの上限の以下又は未満であるか、又は前記記載の上限から選択された任意のいずれかの一つの上限の以下又は未満でありながら、前記記載の下限から選択された任意のいずれかの一つの下限の以上又は超過である範囲内にあることができる。
【0055】
本開示の光学フィルター素地は、700nm~800nmの範囲内において、所定の範囲の平均透過率を示す透過バンドを有していてもよい。前記平均透過率の下限は、0%、0.1%、0.3%、0.4%または0.5%の程度であり、その上限は、2%、1.8%、1.6%、1.4%、1.2%、1.0%、0.8%または0.6%の程度であることができる。前記平均透過率は、前記記載の上限から選択された任意のいずれかの一つの上限の以下又は未満であるか、又は前記記載の上限から選択された任意のいずれかの一つの上限の以下又は未満でありながら、前記記載の下限から選択された任意のいずれかの一つの下限の以上又は超過である範囲内にあることができる。
【0056】
本開示の光学フィルター素地は、700nm~800nmの範囲内において、所定の範囲の最大透過率を示す透過バンドを有していてもよい。前記最大透過率の下限は、0%、0.2%、0.4%、0.6%または0.8%の程度であり、その上限は、4%、3.8%、3.6%、3.4%、3.2%、3.0%、2.8%、2.6%、2.4%、2.2%、2.0、1.8%、1.6%、1.4%、1.2%または1.0%の程度であることができる。前記最大透過率は、前記記載の上限から選択された任意のいずれかの一つの上限の以下又は未満であるか、又は前記記載の上限から選択された任意のいずれかの一つの上限の以下又は未満でありながら、前記記載の下限から選択された任意のいずれかの一つの下限の以上又は超過である範囲内にあることができる。
【0057】
本開示の光学フィルター素地は、800nm~1000nmの範囲内において、所定の範囲平均透過率を示す透過バンドを有していてもよい。前記平均透過率の下限は、0%、0.1%、0.3%、0.4%または0.5%の程度であり、その上限は、6%、5.5%、5.0%、4.5%、4.0%、3.5%、3.0%、2.5%、2.0%、1.5%、1.0%、0.8%、0.6%、0.4%または0.2%の程度であることができる。前記平均透過率は、前記記載の上限から選択された任意のいずれかの一つの上限の以下又は未満であるか、又は前記記載の上限から選択された任意のいずれかの一つの上限の以下又は未満でありながら、前記記載の下限から選択された任意のいずれかの一つの下限の以上又は超過である範囲内にあることができる。
【0058】
本開示の光学フィルター素地は、800nm~1000nmの範囲内において、所定の範囲の最大透過率を示す透過バンドを有していてもよい。前記最大透過率の下限は、0%、0.5%、1.0%、1.5%、2.0%、2.5%、3.0%、3.5%、4.0%、4.5%、5.0%、5.5%又は6.0%の程度であり、その上限は、10%、9.5%、9.0%、8.5%、8.0%、7.5%、7.0%または6.5%の程度であることができる。前記最大透過率は、前記記載の上限から選択された任意のいずれかの一つの上限の以下又は未満であるか、又は前記記載の上限から選択された任意のいずれかの一つの上限の以下又は未満でありながら、前記記載の下限から選択された任意のいずれかの一つの下限の以上又は超過である範囲内にあることができる。
【0059】
本開示の光学フィルター素地は、1000nm~1050nmの範囲内において、所定の範囲の平均透過率を示す透過バンドを有していてもよい。前記平均透過率の下限は、0%、0.5%、1%または1.5%の程度であり、その上限は、12%、11.5%、11.0%、10.5%、10.0%、9.5%、9.0%、8.5%、8.0%、7.5%、7.0%、6.5%、6.0%、5.5%、5.0%、4.5%、4%、3.5%、3%、2.5%、2%、1.5%、1%、0.8%、0.6%、0.4%または0.2%の程度であることができる。前記平均透過率は、前記記載の上限から選択された任意のいずれかの一つの上限の以下又は未満であるか、又は前記記載の上限から選択された任意のいずれかの一つの上限の以下又は未満でありながら、前記記載の下限から選択された任意のいずれかの一つの下限の以上又は超過である範囲内にあることができる。
【0060】
本開示の光学フィルター素地は、1000nm~1050nmの範囲内において、所定の範囲の最大透過率を示す透過バンドを有していてもよい。前記最大透過率の下限は、0%、0.5%、1%または1.5%の程度であり、その上限は、12%、11%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1.5%、1%、0.8%、0.6%、0.4%または0.2%の程度であることができる。前記最大透過率は、前記記載の上限から選択された任意のいずれかの一つの上限の以下又は未満であるか、又は前記記載の上限から選択された任意のいずれかの一つの上限の以下又は未満でありながら、前記記載の下限から選択された任意のいずれかの一つの下限の以上又は超過である範囲内にあることができる。
【0061】
本開示の光学フィルター素地は、波長1050nmでの透過率が所定の範囲であってもよい。前記透過率の下限は、0%、0.5%、1%または1.5%の程度であり、その上限は、13%、12%、11%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1.5%、1%、0.5%または0.1%の程度であることができる。前記透過率は、前記記載の上限から選択された任意のいずれかの一つの上限の以下又は未満であるか、又は前記記載の上限から選択された任意のいずれかの一つの上限の以下又は未満でありながら、前記記載の下限から選択された任意のいずれかの一つの下限の以上又は超過である範囲内にあることができる。
【0062】
本開示の光学フィルター素地は、上述した光学特性のうちいずれか1つ、2つ以上の組み合わせを示すことができ、好適には、上述した光学特性を全部満たすことができる。
【0063】
前記光学フィルター素地の透過率特性は、前記光学フィルター素地が後述する誘電体膜を含まない状態での特性である。このような素地を適用することによって、簡単かつ薄い構造でも好適であり、非常に精密に制御された光学特性を優れた耐久性と共に示す光学フィルターを提供することができる。
【0064】
前述したように、光学フィルター素地は、一例において、透明基板を含み、前記透明基板の一面または両面に耐湿層を含む。
【0065】
図1および
図2は、透明基板100の一面または両面に耐湿層200、201、202が形成された場合を示す。
【0066】
光学フィルター素地に適用される透明基板の種類は、特に限定されず、適切な種類を選択して使用することができる。
【0067】
用語「透明基板」は、可視光を透過する特性を有する基板を意味し、例えば、約425nm~560nmの波長範囲での平均透過率が70%以上である基板を意味する。前記透明基板の平均透過率の下限は、70%、75%、80%または85%の程度であり、その上限は、95%または90%であることができる。前記平均透過率は、前記記載の下限から選択された任意のいずれかの一つの下限の以上又は超過であるか、又は前記記載の上限から選択された任意のいずれかの一つの上限の以下又は未満でありながら、前記記載の下限から選択された任意のいずれかの一つの下限の以上又は超過である範囲内にあることができる。
【0068】
透明基板としては、前記透過率を示し、基板としての適切な剛性などの物性を示すものであれば、公知の多様な素材からなる基板を適用することができ、例えば、ガラスや結晶などの無機材料や、樹脂などの有機材料からなる基板が使用できる。
【0069】
透明基板に使用できる樹脂材料としては、PET(poly(ethylene terephthalate))またはPBT(poly(butylene terephthalate))などのポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレンまたはEVA(ethylene-vinyl acetate copolymer)などのポリオレフィン、ノルボルネンポリマー、PMMA(poly(methyl methacrylate))などのアクリルポリマー、ウレタンポリマー、塩化ビニルポリマー、フッ素ポリマー、ポリカーボネート、ポリビニルブチラル、ポリビニルアルコールまたはポリイミドなどを例示できるが、これに限定されるものではない。
【0070】
透明基板に使用できるガラス材料としては、ソーダ石灰ガラス、ホウケイ酸ガラス、無アルカリガラスまたは石英ガラスなどが挙げられる。
【0071】
透明基板に使用できる結晶材料としては、水晶、ニオブ酸リチウムまたはサファイアなどの複屈折性結晶が挙げられる。
【0072】
透明基板の厚さは、例えば、約0.03mm~5mmの範囲内で調節することができるが、これに限定されるものではない。
【0073】
透明基板としては、近赤外線および/または近紫外領域の光を吸収できる機能を有する基板を適用することができる。このような基板は、本明細書において赤外線吸収基板と呼ばれることがある。
【0074】
このような基板は、公知となっており、例えば、前記のような機能をする素材として、いわゆる赤外線吸収ガラスが知られている。このようなガラスは、フッ化リン酸塩系ガラスやリン酸塩系ガラスなどにCuOなどを添加した吸収型ガラスと知られている。
【0075】
本開示において前記透明基板である赤外線吸収基板としては、CuO含有フッ化リン酸塩ガラス基板またはCuO含有リン酸塩ガラス基板が使用されることもできる。
【0076】
前記でリン酸塩ガラスには、ガラスの骨格の一部がSiO2で構成される珪酸リン酸塩ガラス(silicophosphate glass)も含まれる。
【0077】
前記吸収型のガラスを透明基板として使用する場合、CuOなどの添加濃度や基板の厚さを調節することによって、近赤外領域における吸収型ガラスの透過率を低減することができる。これによって、近赤外光に対する遮光性を改善することができる。このような吸収型ガラスは、公知となっており、例えば、韓国特許登録第10-2056613号などに開示されたガラスやその他市販の吸収型ガラス(例えば、HOYA、SCHOTT、PTOT社などの市販製品)が使用できる。
【0078】
CuOを含むリン酸塩系ガラスは、赤外線の吸収性能に非常に優れていることが知られており、したがって、単独で800nm~1000nmの波長領域で前述した透過率特性を示す光学フィルターを提供することができる。
【0079】
しかしながら、このようなガラスは、耐久性が大きく劣り、高湿および/または高温条件に露出すると、光学特性が大きく損傷する問題がある。
【0080】
しかしながら、本開示は、適切な耐湿層の適用を通じて、前記ガラスの短所を解決しながらも、その長所を活用することができる。
【0081】
前記のような透明基板の厚さは、特に限定されず、目的に応じて適正な厚さ範囲の基板を適用することができる。
【0082】
光学フィルターは、前記透明基板の一面または両面に形成された耐湿層を含んでもよい。耐湿層の定義は、前述した通りである。
【0083】
耐湿層としては、前記透明基板への湿気の浸透などを抑制できる素材の層を適用することができる。
【0084】
一例において、前記耐湿層は、前記のような素材としては、ポリシラザン、シリカ(SiOx)、シラン化合物、環状オレフィン系樹脂(COP:Cyclic Olefin Polymer)、ポリシルセスキオキサン、ポリアリレート系樹脂、ポリイソシアネート系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリエーテルイミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリアクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエチレンフタレート系樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、ポリシロキサン、ポリシラン、及びフッ素樹脂からなる群から選ばれた1種または2種以上を含んでもよい。
【0085】
前記耐湿層は、前記素材にさらに必要な添加剤、例えば、硬化剤や界面活性剤のようなその他添加剤を含んでもよい。
【0086】
優れた耐湿特性を示し、前述した光学特性(例えば、低いリップル値、及び/又は透過率特性など)を確保するために耐湿層の素材が選択できる。
【0087】
一例において、前記耐湿層としては、前記素材のうち、ポリシラザンおよびシラン化合物を含む層を適用することができる。前記耐湿層は、前記素材を含むか、あるいは、前記素材から形成される素材を含んでもよい。一例において、前記耐湿層は、前記ポリシラザンおよびシラン化合物を含む混合物の硬化層であってもよい。このような材料の適用を通じて、目的とする耐湿性を確保しながらも、光学特性も良好に維持される光学フィルターを提供することができる。
【0088】
一例において、本開示において使用されるポリシラザンは、下記化学式1で表される単位を含んでもよい。
【0089】
【0090】
化学式1中、R1、R2およびR3は、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アルキルシリル基、アルキルアミド基またはアルコキシ基であってもよい。
【0091】
前記でアルキル基は、炭素数1~20、炭素数1~16、炭素数1~12、炭素数1~8または炭素数1~4のアルキル基であってもよい。前記アルキル基は、直鎖状、分枝鎖状または環状であってもよい。前記アルキル基は、任意に1つ以上の置換基で置換されていてもよい。
【0092】
前記でアルケニル基は、炭素数2~20、炭素数2~16、炭素数2~12、炭素数2~8または炭素数2~4のアルケニル基であってもよい。前記アルケニル基は、直鎖状、分枝鎖状または環状であってもよく、任意に1つ以上の置換基で置換されていてもよい。
【0093】
前記でアルキニル基は、炭素数2~20、炭素数2~16、炭素数2~12、炭素数2~8または炭素数2~4のアルキニル基であってもよい。前記アルキニル基は、直鎖状、分枝鎖状または環状であってもよく、任意に1つ以上の置換基で置換されていてもよい。
【0094】
前記でアリール基は、ベンゼン環または2つ以上のベンゼン環が連結されているか、または1つまたは2つ以上の炭素原子を共有しつつ、縮合または結合された構造を含む化合物またはその誘導体に由来する1価残基であってもよい。前記アリール基の範囲には、通常、アリール基と呼ばれる官能基はもちろん、いわゆるアラルキル基(aralkyl group)またはアリールアルキル基なども含まれ得る。アリール基は、例えば、炭素数6~25、炭素数6~21、炭素数6~18または炭素数6~12のアリール基であってもよい。アリール基としては、フェニル基、ジクロロフェニル、クロロフェニル、フェニルエチル基、フェニルプロピル基、ベンジル基、トリル基、キシリル基(xylyl group)またはナフチル基などが例示されうる。
【0095】
前記でアルコキシ基は、炭素数1~20、炭素数1~16、炭素数1~12、炭素数1~8または炭素数1~4のアルコキシ基であってもよい。前記アルコキシ基は、直鎖状、分枝鎖状または環状であってもよい。また、前記アルコキシ基は、任意に1つ以上の置換基で置換されていてもよい。前記化学式1において、nは、特別にその範囲が限定されていない任意の数である。通常、前記化学式1において、nは、10から100,000までの範囲内の数である。
【0096】
前記化学式1で表される単位を含むと、ポリシラザンの具体的な種類は、特に限定されない。
【0097】
一例において、変性したポリシラザン層の緻密度などを考慮して、本開示のポリシラザンとしては、R1~R3が全て水素原子である化学式1の単位を含むポリシラザン、例えば、パーヒドロポリシラザンが使用できる。
【0098】
このようなポリシラザンは多様に知られており、本開示では、このように知られたポリシラザンのうち適正な種類を選択して使用することができる。
【0099】
耐湿層は、前記ポリシラザンと共にシラン化合物を含んでもよい。理由は明確でないが、ポリシラザンまたはシラン化合物を適用する場合に、そのうちいずれか1種のみを使用すると、本開示の光学フィルターにおいて好適な効果を示さない傾向が強い。通常、ポリシラザンは、単独でも変性して水分などに対するバリアー特性を示すことができることが知られているが、本開示では、ポリシラザン単独で好適な耐湿層が形成されない場合が多く、理由は明確でないが、これは、適用される透明基板との相互作用が関与すると判断される。
【0100】
シラン化合物の種類は、特に限定されず、例えば、当業界においていわゆるシランカップリング剤と知られているシラン化合物が使用できる。
【0101】
このようなシラン化合物の種類は、特に限定されないが、例えば、下記化学式2で表されるシラン化合物を適用することができる。
【0102】
[化学式2]
XnSiY(4-n)
【0103】
化学式2中、Xは、ケイ素原子に結合している置換基である。このようなXは、例えば、アルケニル基、エポキシ基(例えば、グリシジル基、グリシドキシアルキル基または脂環式エポキシ基など)、アミノ基、(メタ)アクリル基、(メタ)アクリロイルオキシ基、(メタ)アクリロイルオキシアルキル基、メルカプト基、メルカプトアルキル基、ウレイド基、イソシアネート基またはイソシアネートアルキル基などであるか、前記を含む官能基であることができる。化学式2において、Xが複数である場合、前記複数のXは、お互い同じであるか、又はお互い相違であることができる。化学式2において、Yは、ケイ素原子に結合している置換基である。前記Yは、アルキル基またはアルコキシ基であることができる。化学式2において、Yが複数である場合、前記複数のYは、お互い同じであるか、又はお互い相違であることができる。化学式2において、nは、1~3の範囲内の数である。
【0104】
前記化学式2の定義において、アルキル基、アルケニル基およびアルコキシ基の具体的な種類は、前記化学式1で説明した通りである。
【0105】
化学式2の化合物は、Yとして、少なくとも1つ、例えば1個~3個のアルコキシ基を含んでもよい。
【0106】
化学式2中、nは、1または2であってもよい。
【0107】
耐湿層は、前記ポリシラザンとシラン化合物を含む層であるか、あるいは、それらを含む混合物の反応物の層であってもよい。
【0108】
このような場合に、前記ポリシラザンとシラン化合物を含む層またはそれらを含む混合物において前記ポリシラザンとシラン化合物の合計重量の下限は、全層または混合物の重量を基準として、55重量%、60重量%、65重量%、70重量%、75重量%、80重量%、85重量%、90重量%または95重量%程度であり、その上限は、全層または混合物の重量を基準として、100重量%又は99重量%であることができる。前記合計重量は、前記記載の下限から選択された任意のいずれかの一つの下限の以上又は超過であるか、又は前記記載の上限から選択された任意のいずれかの一つの上限の以下又は未満でありながら、前記記載の下限から選択された任意のいずれかの一つの下限の以上又は超過である範囲内にあることができる。すなわち、前記層または混合物は、実質的に前記ポリシラザンとシラン化合物を主成分として含んでもよい。前記ポリシラザンとシラン化合物の含有量は、前記層または混合物が溶媒を含む場合に、溶媒を除いて確認した値である。
【0109】
前記層または混合物において前記シラン化合物の前記ポリシラザン100重量部に対する重量比率(重量部)の下限は、1重量部、5重量部、10重量部、15重量部、20重量部、25重量部または30重量部程度であり、その上限は、100重量部、95重量部、90重量部、85重量部、80重量部、75重量部、70重量部、65重量部、60重量部、55重量部、50重量部、45重量部、40重量部、35重量部または30重量部程度であってもよい。 前記重量比率は、前記記載の上限から選択された任意のいずれかの一つの上限の以下又は未満でありながら、前記記載の下限から選択された任意のいずれかの一つの下限の以上又は超過である範囲内にあることができる。
【0110】
一例において、前記耐湿層としては、前記素材のうち、ポリシロキサンを含む層を適用することができる。前記耐湿層は、前記素材を含むか、あるいは、前記素材から形成される素材を含んでもよい。ポリシロキサンは、知られているように、ケイ素原子と酸素原子からなるシロキサン結合が複数連なった骨格を有する高分子であり、前記シロキサン結合のケイ素原子の一つ以上には、有機基が結合されていることもある。このような高分子は、知られているように、所謂ヒドロシリル化(hydrosilylation)硬化型材料、又は縮合硬化型材料などを硬化させて形成することができる。このような材料の適用を通じて、目的とする耐湿性を確保しながらも、光学特性も良好に維持される光学フィルターを提供することができる。
【0111】
一例において、前記ポリシロキサンとして、下記の化学式3の平均単位をもつポリシロキサンを使用することができる。用語ポリシロキサンの平均単位は、前記ポリシロキサンに含まれているすべてのケイ素原子のモル数を1とし、それを基準とし、前記ポリシロキサンに含まれている官能基と酸素原子のモル数を換算した結果を表示するのである。このような平均単位は、一つのポリシロキサンにたいする平均単位であるか、又は、二つ以上のポリシロキサンにたいする平均単位であることができる。即ち、前記耐湿層に一つのポリシロキサンが存在する場合、前記平均単位は、前記一つのポリシロキサンに対するのであり、前記耐湿層に二つ以上のポリシロキサンが存在する場合、前記平均単位は、前記二つ以上のポリシロキサンの混合物に対するのである。
【0112】
[化学式3]
RaSiO(4-a)/2
【0113】
化学式3において、Rは、ポリシロキサンにおいて、ケイ素原子に結合されておる官能基である。このような官能基は、例えば、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アルキルシリル基、アルキルアミド基、アルコキシ基、又は機能性官能基であってもよい。前記化学式3の定義において、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基及びアルコキシ基の具体的な種類は、前記化学式1で説明した通りである。
【0114】
化学式3において、前記機能性官能基の例には、エポキシ基(例えば、グリシジル基、グリシドキシアルキル基、又は脂環式エポキシ基など)、アミノ基、(メタ)アクリル基、(メタ)アクリロイルオキシ基、(メタ)アクリロイルオキシアルキル基、メルカプト基、メルカプトアルキル基、ウレイド基、イソシアネート基、ヒドロキシ基又はイソシアネートアルキル基などであるか、又は、前記官能基のいずれかの一つを含む官能基であることができる。
【0115】
前記機能性官能基において、アルキル基の具体的な種類は、前記化学式1で説明した通りである。
【0116】
化学式3の平均単位を有するポリシロキサンにおいて、Rは、複数であることができ、前記複数のRは、お互い同じであるか、又はお互い相違であることができる。
【0117】
化学式3の平均単位を有するポリシロキサンにおいて、前記Rは、少なくとも前記機能性官能基を含むことができる。即ち、化学式3の平均単位を有するポリシロキサンにおいて、Rは、複数であることができ、前記複数のRの中、少なくとも一つは、前記機能性官能基であることができる。
【0118】
化学式3の平均単位において、aは、前記ポリシロキサンに含まれているすべてのケイ素原子のモル数を1とし、それを基準として換算した前記官能基Rのモル数である。前記aの下限は、0.01、0.05、0.1、0.5、1、1.5又は2の程度であり、その上限は、10、9、8、7、6、5、4、3、2、1.5、1、0.5又は0.05の程度であることができる。前記aは、前記記載の上限から選択された任意のいずれかの一つの上限の以下又は未満でありながら、前記記載の下限から選択された任意のいずれかの一つの下限の以上又は超過である範囲内にあることができる。
【0119】
化学式3の平均単位を有するポリシロキサンは、所定の範囲の重量平均分子量を有することができる。例えば、重量平均分子量は、約1000g/molから1000000g/molの範囲内にあることができる。
【0120】
前記ポリシロキサンは、業界に知られている方法で形成することができる。例えば、知られているポリシロキサンの材料の中で、前記平均単位を有することができるように選択された材料を使用し、前記ポリシロキサンを形成することができる。
【0121】
前記のような場合に、前記耐湿層又は、その耐湿層を形成する材料の中で、前記ポリシロキサンの合計重量の下限は、全耐湿層または材料の重量を基準として、55重量%、60重量%、65重量%、70重量%、75重量%、80重量%、85重量%、90重量%または95重量%程度であり、その上限は、全耐湿層または材料の重量を基準として、100重量%又は99重量%であることができる。前記合計重量は、前記記載の下限から選択された任意のいずれかの一つの下限の以上又は超過であるか、又は前記記載の上限から選択された任意のいずれかの一つの上限の以下又は未満でありながら、前記記載の下限から選択された任意のいずれかの一つの下限の以上又は超過である範囲内にあることができる。すなわち、前記耐湿層または材料は、実質的に前記ポリシロキサンを主成分として含んでもよい。前記ポリシロキサンの含有量は、前記耐湿層または材料が溶媒を含む場合に、溶媒を除いて確認した値である。
【0122】
このような成分を含む耐湿層を形成する方法は、特に限定されない。例えば、前記耐湿層は、前記材料を含む組成物を前記透明基板上にコートして形成することができ、必要な場合に、前記コート後に乾燥工程や材料の変性ないし硬化工程が進行されることもできる。この際、前記変性ないし硬化工程は、公知のポリシラザンに対する変性ないし硬化方式で進行されることができる。
【0123】
必要な場合に、前記コート工程において材料は、適切な溶媒を含むこともできる。適用可能な溶媒の種類は、特に限定されず、例えば、脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素、芳香族炭化水素などの炭化水素溶媒、ハロゲン化炭化水素溶媒、脂肪族エーテル、脂環式エーテルなどのエーテル類が使用できる。
【0124】
前記耐湿層は、目的に応じて適正な厚さで形成されることができる。例えば、前記耐湿層の厚さの下限は、0.01μm、0.03μm、0.05μm、0.07μmまたは0.09μmであり、その上限は、20μm、18μm、16μm、14μm、12μm、10μm、9μm、8μm、7μm、6μm、5μm、4μm、3μm、2μm、1μm、0.95μm、0.9μm、0.85μm、0.8μm、0.75μm、0.7μm、0.65μm、0.6μm、0.55μm、0.5μm、0.45μm、0.4μm、0.35μm、0.3μm、0.25μm、0.2μm、0.15μm、0.14μm、0.13μm、0.12μm、0.11μmまたは0.1μm程度であることができる。
前記厚さは、前記記載の上限から選択された任意のいずれかの一つの上限の以下又は未満でありながら、前記記載の下限から選択された任意のいずれかの一つの下限の以上又は超過である範囲内にあることができる。
【0125】
前記耐湿層は、前述した厚さ範囲で優れた効果を示すことができる。
【0126】
このような本開示の耐湿層は、一例において、前記透明基板に接していてもよい。このような場合に、前記耐湿層は、前記透明基板に対して優れた付着力を示すことができる。一例において、前記耐湿層の前記透明基板に対する付着力は、3B以上、4B以上または5B以上であってもよい。別の例では、前記付着力は、3B~5B、4B~5Bまたは5Bであってもよい。前記付着力は、ASTM D3359規格によって測定することができ、具体的な測定方法は、本明細書の実施例に記載されている。また、前記規格によって測定できる付着力の最大値は、5Bである。
【0127】
本開示の光学フィルター素地は、前記透明基板と耐湿層を基本的に含む限り、多様な任意の層をさらに含むこともできる。
【0128】
例えば、前記光学フィルターは、前記透明基板および/または耐湿層の一面または両面に形成された吸収層をさらに含んでもよい。前記吸収層は、光吸収層であり、例えば、赤外線および/または紫外線領域の少なくとも一部の波長範囲内の光を吸収する層である。このような吸収層は、光学フィルター素地に1層または2層以上形成されていてもよい。
【0129】
図3は、
図2の光学フィルター素地の耐湿層201上に前記光吸収層300が形成された場合を示す図である。
【0130】
一例において、前記吸収層は、赤外線吸収層および/または紫外線吸収層であってもよい。前記吸収層は、また、赤外線吸収性と紫外線吸収性を全て有する層であってもよい。このような層は、通常、吸収剤(顔料、染料など)と透明樹脂を含む層であり、近紫外線領域および/または近赤外線領域の光をカットして、よりシャープな透過率バンドを具現するために適用することができる。
【0131】
一例において、前記紫外線吸収層は、約300nm~390nmの波長領域で吸収極大を示すように設計することができ、赤外線吸収層は、600nm~800nmの波長領域で吸収極大を示すように設計することができる。
【0132】
一例において、前記光吸収層が紫外線および赤外線に対する吸収性を同時に示す層である場合に、前記光吸収層は、約300nm~390nmの波長領域で吸収バンドと600nm~800nmの波長領域で吸収バンドを同時に示すように設計することができる。
【0133】
赤外線吸収層と紫外線吸収層は、1つの層で構成されることもでき、別途の層でそれぞれ構成されることもできる。例えば、1つの層が前記紫外線吸収層の吸収極大と赤外線吸収層の吸収極大を全て示すように設計されたり、前記それぞれの吸収極大を示す2つの層が形成されてもよい。また、複数の赤外線吸収層および/または紫外線吸収層が存在することもできる。
【0134】
各吸収層は、1種の吸収剤のみを含むこともでき、必要な場合、赤外線および/または紫外線の適切なカットのために、2種以上の吸収剤を含むこともできる。
【0135】
例えば、前記赤外線吸収層は、吸収極大波長が700nm~720nmの範囲内であり、半値幅が50nm~60nmの範囲内である第1吸収剤;吸収極大波長が730nm~750nmの範囲内であり、半値幅が60nm~70nmの範囲内である第2吸収剤;および吸収極大波長が760nm~780nmの範囲内であり、半値幅が90nm~100nmの範囲内である第3吸収剤を少なくとも含んでもよく、紫外線吸収層は、吸収極大波長が340nm~350nmの範囲内である第1吸収剤および吸収極大波長が360nm~370nmの範囲内である第2吸収剤を少なくとも含んでもよい。
【0136】
吸収層を構成する材料および構成方式は、特に限定されず、公知の材料および構成方式を適用することができる。
【0137】
通常、吸収層は、目的とする吸収極大を示すことができるようにする吸収剤(染料または顔料など)を透明な樹脂と配合した材料を使用して形成する。
【0138】
例えば、紫外線吸収剤としては、約300nm~390nmの波長領域で吸収極大を示す公知の吸収剤を適用することができ、その例としては、Exiton社のABS 407;QCR Solutions Corp社のUV381A、UV381B、UV382A、UV386A、VIS404A;H.W.Sands社のADA1225、ADA3209、ADA3216、ADA3217、ADA3218、ADA3230、ADA5205、ADA3217、ADA2055、ADA6798、ADA3102、ADA3204、ADA3210、ADA2041、ADA3201、ADA3202、ADA3215、ADA3219、ADA3225、ADA3232、ADA4160、ADA5278、ADA5762、ADA6826、ADA7226、ADA4634、ADA3213、ADA3227、ADA5922、ADA5950、ADA6752、ADA7130、ADA8212、ADA2984、ADA2999、ADA3220、ADA3228、ADA3235、ADA3240、ADA3211、ADA3221、ADA5220、ADA7158;CRYSTALYN社のDLS 381B、DLS 381C、DLS 382A、DLS 386A、DLS 404A、DLS 405A、DLS 405C、DLS 403Aなどがあるが、これに限定されるものではない。
【0139】
また、赤外線吸収剤として、600nm~800nmの波長領域で吸収極大を示す適切な染料または顔料などが使用でき、例えば、スクアリリウム(squarylium)系染料、シアニン系化合物、フタロシアニン系化合物、ナフタロシアニン系化合物またはジチオール金属錯体系化合物などが使用できるが、これに限定されるものではない。
【0140】
また、吸収層に適用される透明樹脂は、公知の樹脂が使用でき、例えば、環状オレフィン系樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリパラフェニレン樹脂、ポリアリレンエーテルホスフィンオキシド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂および多様な有機・無機ハイブリッド系樹脂のうち1種以上が使用できる。
【0141】
光学フィルター素地は、上述した層の他にも、必要な多様な層を目的とする効果を害しない範囲で追加することができる。
【0142】
本開示は、また、光学フィルターに関する。前記光学フィルターは、前記光学フィルター素地と、前記素地の一面または両面に形成された誘電体膜とを含んでもよい。前記誘電体膜は、前記光学フィルター素地の透明基板の一面または両面に形成されていてもよい。
【0143】
図4は、このような光学フィルターの1つの例示的な構造であり、
図3の光学フィルター素地の両面に前記誘電体膜401、402が形成された場合を示す。
【0144】
前記誘電体膜は、互いに屈折率が異なる第1サブ層および第2サブ層を少なくとも含む多層構造であってもよい。一具体例において、前記第1および第2サブ層は、互いに屈折率が異なっており、第1サブ層が、第2サブ層と比べて、高い屈折率を有していてもよい。誘電体膜は、前記第1および第2サブ層を交互に繰り返し積層した構造を含んでもよい。
【0145】
通常、誘電体膜は、低屈折率の誘電体材料と高屈折率の誘電体材料を繰り返し積層して構成された膜であり、いわゆるIR反射層およびAR(Anti-reflection)層を形成するために使用され、本開示でも、このような公知のIR反射層やAR層の形成のための誘電体膜を適用することができる。
【0146】
一例において、本開示では、前記のような公知の誘電体膜とは異なる層であり、光学フィルターの光学特性をより改善できる誘電体膜を適用することもできる。このような誘電体膜を適用できることは、前述したように、本開示の光学フィルターが透明基板と耐湿層を含む構造単独でもフィルターの特性を示すためである。
【0147】
すなわち、前記誘電体膜の各サブ層の屈折率と前記透明基板の屈折率およびサブ層の層数を調節して、従来の誘電体膜とは異なる層を形成することによって、前述のような光学フィルターの優れた特性、例えば、低いリップル値の特性が、誘電体膜が形成された状態でも低く維持されながらも、透明基板として赤外線吸収ガラスのように相対的に透過率特性が多少劣る基板を適用する場合にも、優れた透過率特性を確保することができる。
【0148】
このような本開示の誘電体膜は、前記IR反射層およびAR層としての誘電体膜とは異なっており、それによって、実際的な層構成なども異なっている。
【0149】
例えば、前記誘電体膜の下記式2によるV値が17以下となるように形成されることができる。
【0150】
[式2]
V=K×{[(n1/n2)2p×(n1
2/ns)-1]/[(n1/n2)2p×(n1
2/ns)+1]}2
【0151】
式2中、n1は、第1サブ層の屈折率であり、n2は、第2サブ層の屈折率であり、nsは、透明基板の屈折率であり、Kは、誘電体膜内の第1および第2サブ層の合計層数であり、pは、K=(2p+1)を満たす数である。
【0152】
式2のVは、IR反射層およびAR層を設計するとき、前記IR反射層などが遮断しようとする光を効果的に遮断するための理論反射率などを確認するための式に基づいて作成されたものである。数式を通じて確認されるように、第1および第2サブ層が同じ場合に、Kおよびpの値が大きくなるほどV値が大きくなる。したがって、従来IR反射層やAR層の設計時には、目的性能の確保のために、第1および第2サブ層の層数Kが最小20層以上となるようにし、この場合、V値は、少なくとも20超過の値を示す。
【0153】
しかしながら、このような層の設計は、本開示において目的とする低いリップル値などの光学特性を確保することに寄与しない。
【0154】
すなわち、本開示の目的の達成のためには、前記式2のV値が17以下となるように、各層の屈折率と層数を調節する必要がある。
【0155】
理由は明確でないが、上記のような設計を満たす誘電体膜は、透明基板の光学特性(例えば、屈折率)と組み合わせられて、全体的な光学フィルターの透過率を高め、低いリップル値を確保できる光の干渉現象を誘導すると見られる。
【0156】
前記式2のV値は、別の例では、16以下、15以下、14以下、13以下、12以下、11以下、10以下、9以下、8以下、7以下または6以下程度であるか、1以上、2以上、3以上、4以上、5以上または6以上であってもよい。
【0157】
式2中、第1サブ層の屈折率n1と第2サブ層の屈折率n2の比n1/n2は、一例において、約1.4~2.0の範囲内にありえる。前記割合は、別の例では、1.45以上、1.5以上、1.55以上、1.6以上、1.65以上、1.7以上または1.75以上であるか、1.95以下、1.9以下、1.85以下または1.8以下程度であってもよい。
【0158】
式2中、第1サブ層の屈折率n1は、約1.8~3.5の範囲内にありえる。前記屈折率n1は、別の例では、2.0以上、2.2以上、2.4以上、2.5以上または2.55以上であるか、3.3以下、3.1以下、2.9以下または2.7以下程度であってもよい。
【0159】
式2中、第2サブ層の屈折率n2は、約1.1~1.7の範囲内にありえる。前記屈折率n2は、別の例では、1.2以上、1.3以上または1.4以上であるか、1.65以下、1.6以下、1.55以下または1.5以下程度であってもよい。
【0160】
誘電体膜のサブ層のうち第1サブ層は、前記範囲の屈折率を有する層であり、第2サブ層は、前記範囲の屈折率を有するか、第1サブ層の屈折率と前記範囲の屈折率の割合を満たす屈折率を有する層と定義することができる。
【0161】
式2は、交互に繰り返し積層した第1および第2サブ層を含む構造について計算することができるが、この際、2層以上存在する第1サブ層の屈折率が互いに異なるか、2層以上存在する第2サブ層の屈折率が互いに異なる場合に、式2の計算時には、第1サブ層の屈折率の算術平均値を式2のn1とし、第2サブ層の屈折率の算術平均値を式2のn2とすることができる。
【0162】
式2中、第1サブ層の屈折率n1と透明基板の屈折率nsの比n1/nsは、一例において、約1.4~2.0の範囲内にありえる。前記割合は、別の例では、1.45以上、1.5以上、1.55以上、1.6以上または1.65以上であるか、1.95以下、1.9以下、1.85以下、1.8以下、1.75以下または1.7以下程度であってもよい。
【0163】
透明基板の屈折率を考慮して、上記のような範囲を満たすように適切な材料が選択できる。
【0164】
式2中、pを決定するK、すなわち第1サブ層と第2サブ層の合計層数(第1サブ層の層数+第2サブ層の層数)は、17以下、16以下、15以下、14以下、13以下、12以下、11以下、10以下、9以下、8以下、7以下または6以下程度であってもよく、別の例では、2以上、3以上、4以上、5以上または6以上であってもよい。誘電体膜は、前記第1および第2サブ層の繰り返し積層構造を含んでもよく、したがって、このような場合に前記第1および第2サブ層それぞれの層数は、互いに同数であるか、いずれか1つの層が1層または2層程度多くてもよい。
【0165】
誘電体膜において前記第1および第2サブ層のそれぞれの厚さは、目的に応じて調節することができるが、略5nm~200nmの範囲内であってもよい。前記厚さは、別の例では、10nm以上、15nm以上、20nm以上、25nm以上、30nm以上、35nm以上、40nm以上、45nm以上、50nm以上、55nm以上、60nm以上、65nm以上、70nm以上、75nm以上または85nm以上程度であるか、190nm以下、180nm以下、170nm以下、160nm以下、150nm以下、140nm以下、130nm以下、120nm以下、110nm以下、100nm以下、90nm以下、80nm以下、70nm以下、60nm以下、50nm以下、40nm以下、30nm以下、20nm以下または15nm以下程度であってもよい。
【0166】
誘電体膜に含まれる第1サブ層の厚さと第2サブ層の厚さの平均値(算術平均)は、約5nm~70nmの範囲内であってもよい。前記平均値は、別の例では、10nm以上、15nm以上、20nm以上、25nm以上、30nm以上または35nm以上であるか、65nm以下、60nm以下、55nm以下、50nm以下、45nm以下または40nm以下程度であってもよい。
【0167】
誘電体膜は、前記第1および第2サブ層以外に、他のサブ層を含むこともできるが、このような場合にも、全体サブ層の厚さは、15層以下、14層以下、13層以下、12層以下、11層以下、10層以下、9層以下、8層以下、7層以下または6層以下程度に制御され、2層以上、3層以上、4層以上、5層以上または6層以上程度に制御されることが必要である。
【0168】
誘電体膜が前記第1および第2サブ層以外に、他のサブ層を含む場合にも、全体サブ層の層数に対して前記第1および第2サブ層の合計層数の割合は、80%以上、85%以上、90%以上または95%以上であることが必要であり、前記割合は、100%が上限である。
【0169】
このような誘電体膜は、全体厚さが約100nm~500nmの範囲内であってもよい。前記厚さは、別の例では、120nm以上、140nm以上、160nm以上、180nm以上または200nm以上であるか、480nm以下、460nm以下、440nm以下、420nm以下、400nm以下、380nm以下、360nm以下、340nm以下、320nm以下、300nm以下、280nm以下、260nm以下、240nm以下または220nm以下程度の範囲内であってもよい。
【0170】
前記式2を満たす、第1および第2サブ層を交互に含む誘電体膜の一方の表面は、第1サブ層で形成され、他方の表面は、第2サブ層で形成されることができる。例えば、誘電体膜の透明基板側の表面は、第1サブ層で形成され、反対側の表面は、第2サブ層で形成されることができる。ただし、このような積層順序は変更することができる。
【0171】
上記のような特性の誘電体膜の適用を通じて、目的とする低いリップル値を含む光学特性を確保することができる。このような誘電体膜は、透明基板の一面にのみ形成されることもできるが、適切に両面に全部形成されることもできる。また、光学フィルターは、前記式2のV値が17以下である誘電体膜以外には、他の誘電体膜は含まなくてもよい。すなわち、透明基板の両面に誘電体膜が形成される場合に、その誘電体膜のV値は、それぞれ17以下であることが好適である。
【0172】
誘電体膜を形成する材料、すなわち前記各サブ層を形成する材料の種類は、特に限定されず、公知の材料を適用することができる。通常、低屈折のサブ層の製造には、SiO2またはNa5Al3F14、Na3AlF6またはMgF2などのフッ化物を適用し、高屈折のサブ層の製造には、TiO2、Ta2O5、Nb2O5、ZnSまたはZnSeなどを適用することができるが、本開示において適用する材料が前記に限定されるものではない。
【0173】
前記のような誘電体膜を形成する方式は、特に限定されず、例えば、公知の蒸着方式を適用して形成することができる。
【0174】
前記のような本開示の光学フィルターは、優れた耐久性と共に、優れた光学特性を示すことができる。
【0175】
例えば、前記光学フィルターは、T50% cut on波長が約390nm~430nmの範囲内である透過バンドを示すことができる。前記T50% cut on波長は、300nm~700nmの波長範囲内で50%の透過率を示す波長のうち最短波長である。前記50%の透過率を示す波長は、前記390nm~430nmの範囲内に1つまたは2つ以上存在することができ、1つが存在する場合に、当該波長、2つ以上存在する場合に、それらのうちの最短波長が前記T50% cut on波長となる。前記T50% cut on波長は、392nm以上、394nm以上、396nm以上、398nm以上、400nm以上、402nm以上、404nm以上、406nm以上、408nm以上または410nm以上の範囲内および/または428nm以下、426nm以下、424nm以下、422nm以下、420nm以下、418nm以下、416nm以下、414nm以下、412nm以下または410nm以下の範囲内でさらに調節することができる。
【0176】
前記光学フィルターは、T50% cut off波長が約590nm~680nmの範囲内である透過バンドを示すことができる。前記T50% cut off波長は、500nm~800nmの波長範囲内で50%の透過率を示す波長のうち最長波長である。
前記50%の透過率を示す波長は、前記500nm~800nmの範囲内に1つまたは2つ以上存在することができ、1つが存在する場合に、当該波長、2つ以上存在する場合に、最長波長が前記T50% cut off波長となる。前記T50% cut off波長は、592nm以上、594nm以上、596nm以上、598nm以上、600nm以上、602nm以上、604nm以上、606nm以上、608nm以上、610nm以上、612nm以上、614nm以上、616nm以上、618nm以上、620nm以上、622nm以上、624nm以上または626nm以上の範囲内および/または678nm以下、676nm以下、674nm以下、672nm以下、670nm以下、668nm以下、666nm以下、664nm以下、662nm以下、660nm以下、658nm以下、656nm以下、654nm以下、652nm以下、650nm以下、648nm以下、646nm以下、644nm以下、642nm以下、640nm以下、638nm以下、636nm以下、634nm以下、632nm以下または630nm以下の範囲内でさらに調節することができる。
【0177】
前記光学フィルターは、425nm~560nmの範囲内で75%以上の平均透過率を示す透過バンドを有していてもよい。前記平均透過率は、別の例では、77%以上、79%以上、81%以上、83%以上、85%以上、87%以上、89%以上、91%以上、92%以上または92.5%以上の範囲内および/または98%以下、96%以下、94%以下、93%以下または92.5%以下の範囲内で調節することができる。
【0178】
本開示の光学フィルターは、425nm~560nmの範囲内で79%以上の最大透過率を示す透過バンドを有していてもよい。前記最大透過率は、別の例では、81%以上、83%以上、85%以上、87%以上、89%以上、91%以上、93%以上または95%以上の範囲内および/または100%以下、98%以下または96%以下の範囲内で調節することができる。
【0179】
本開示の光学フィルターは、350nm~390nmの範囲内で2%以下の平均透過率を示す透過バンドを有していてもよい。前記平均透過率は、別の例では、0%以上、0.1%以上または0.2%以上の範囲内および/または1.8%以下、1.6%以下、1.4%以下、1.2%以下、1.0%以下、0.8%以下、0.6%以下、0.4%以下、0.35%以下または0.3%以下の範囲内でさらに調節することができる。
【0180】
本開示の光学フィルターは、300nm~390nmの範囲内で10%以下の最大透過率を示す透過バンドを有していてもよい。前記最大透過率は、別の例では、0%以上、0.5%以上、1%以上、1.5%以上、2%以上または2.5%以上の範囲内および/または9.5%以下、9%以下、8.5%以下、8%以下、7.5%以下、7%以下、6.5%以下、6%以下、5.5%以下、5%以下、4.5%以下、4%以下、3.5%以下または3%以下の範囲内でさらに調節することができる。
【0181】
本開示の光学フィルターは、波長700nmでの透過率が2%以下であってもよい。前記透過率は、別の例では、0%以上、0.2%以上、0.4%以上、0.6%以上または0.8%以上の範囲内および/または1.8%以下、1.6%以下、1.4%以下、1.2%以下または1.0%以下の範囲内でさらに調節することができる。
【0182】
本開示の光学フィルターは、700nm~800nmの範囲内で2%以下の平均透過率を示す透過バンドを有していてもよい。前記平均透過率は、別の例では、0%以上、0.1%以上、0.3%以上、0.4%以上または0.5%以上の範囲内および/または1.8%以下、1.6%以下、1.4%以下、1.2%以下、1.0%以下、0.8%以下、0.6%以下または0.5%以下の範囲内でさらに調節することができる。
【0183】
本開示の光学フィルターは、700nm~800nmの範囲内で2%以下の最大透過率を示す透過バンドを有していてもよい。前記最大透過率は、別の例では、0%以上、0.2%以上、0.4%以上、0.6%以上または0.8%以上の範囲内および/または1.8%以下、1.6%以下、1.4%以下、1.2%以下または1.0%以下の範囲内でさらに調節することができる。
【0184】
本開示の光学フィルターは、800nm~1000nmの範囲内で2%以下の平均透過率を示す透過バンドを有していてもよい。前記平均透過率は、別の例では、0%以上、0.01%以上、0.03%以上、0.05%以上、0.07%以上または0.09%以上の範囲内および/または1.8%以下、1.6%以下、1.4%以下、1.2%以下、1.0%以下、0.8%以下、0.6%以下、0.4%以下、0.2%以下、0.15%以下または0.1%以下の範囲内でさらに調節することができる。
【0185】
本開示の光学フィルターは、800nm~1000nmの範囲内で2%以下の最大透過率を示す透過バンドを有していてもよい。前記最大透過率は、別の例では、0%以上、0.2%以上、0.4%以上、0.6%以上または0.8%以上の範囲内および/または1.8%以下、1.6%以下、1.4%以下、1.2%以下、1.0%以下、0.8%以下、0.6%以下または0.4%以下の範囲内でさらに調節することができる。
【0186】
本開示の光学フィルターは、1000nm~1050nmの範囲内で5%以下の平均透過率を示す透過バンドを有していてもよい。前記平均透過率は、別の例では、0%以上、0.5%以上、1%以上または1.5%以上の範囲内および/または4.5%以下、4%以下、3.5%以下、3%以下、2.5%以下、2%以下、1.5%以下、1%以下、0.8%以下、0.6%以下、0.4%以下または0.3%以下の範囲内でさらに調節することができる。
【0187】
本開示の光学フィルターは、1000nm~1050nmの範囲内で5%以下の最大透過率を示す透過バンドを有していてもよい。前記最大透過率は、別の例では、0%以上、0.5%以上、1%以上または1.5%以上の範囲内および/または4.5%以下、4%以下、3.5%以下、3%以下、2.5%以下、2%以下、1.5%以下、1%以下、0.8%以下、0.6%以下、0.4%以下または0.3%以下の範囲内でさらに調節することができる。
【0188】
本開示の光学フィルターは、波長1050nmでの透過率が10%以下であってもよい。前記透過率は、別の例では、0%以上、0.5%以上、1%以上または1.5%以上の範囲内および/または9%以下、8%以下、7%以下、6%以下、5%以下、4%以下、3%以下、2%以下、1.5%以下、1%以下、0.5%以下または0.1%以下の範囲内でさらに調節することができる。
【0189】
本開示の光学フィルターは、上述した光学特性のうちいずれか1つ、2つ以上の組み合わせを示すことができ、好適には、上述した光学特性を全て満たすことができる。
【0190】
光学フィルターは、上述した層の他にも、必要な多様な層を目的とする効果を害しない範囲で追加することができる。
【0191】
前記光学フィルターも、前述した範囲の低いリップル値(Ripple value)を有し、入射角が変動しても、前記低いリップル値を維持することができる。
【0192】
すなわち、前記光学フィルターの入射角0度でのリップル値および前記入射角0度でのリップル値と入射角40度でのリップル値が上述した範囲内にありえる。
【0193】
本開示は、また、前記光学フィルターを含む撮像装置に関する。この際、前記撮像装置の構成方式や前記光学フィルターの適用方式は、特に限定されず、公知の構成と適用方式を適用することができる。
【0194】
また、本開示の光学フィルターの用途が前記撮像装置に限定されるものではなく、その他、近赤外線カットが必要な多様な用途(例えば、PDPなどのディスプレイ装置など)に適用することができる。
【発明の効果】
【0195】
本開示は、光学フィルター素地および光学フィルターとその用途を提供する。本開示は、耐湿層を含んでいて、優れた耐久性を示しながらも、光学特性に優れた光学フィルター素地および光学フィルターを提供する。本開示は、紫外線と赤外線のように遮断が必要な波長帯域に対して遮断特性に優れ、可視光透過率に優れ、可視光領域でリップル現象を防止できる光学フィルター素地および光学フィルターを提供する。本開示は、基板として赤外線吸収ガラス、特に耐湿性と耐熱性に劣ると知られたガラスを適用する場合にも、前記特性を確保できる光学フィルター素地および光学フィルターを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0196】
【
図1】光学フィルター素地の例示的な積層構造を示す図である。
【
図2】光学フィルター素地の例示的な積層構造を示す図である。
【
図3】光学フィルターの例示的な積層構造を示す図である。
【
図4】光学フィルターの例示的な積層構造を示す図である。
【
図5】実施例および比較例で適用された透明基板の耐久性試験前後の分光スペクトルである。
【
図6】実施例1~3と比較例1~3の光学フィルター素地の分光スペクトルである。
【
図7】実施例4~7の光学フィルター素地の分光スペクトルである。
【
図8】実施例4~7の光学フィルター素地のリップル値を確認するための分光スペクトルである。
【
図9】実施例4の光学フィルター素地のリップル値を確認するための分光スペクトルである。
【
図10】実施例5の光学フィルター素地のリップル値を確認するための分光スペクトルである。
【
図11】実施例6の光学フィルター素地のリップル値を確認するための分光スペクトルである。
【
図12】実施例7の光学フィルター素地のリップル値を確認するための分光スペクトルである。
【
図13】実施例8および9ならびに比較例4の光学フィルター素地の分光スペクトルである。
【
図14】実施例10~13の光学フィルター素地のリップル値を確認するための分光スペクトルである。
【
図15】実施例10の光学フィルター素地のリップル値を確認する過程に関する図面である。
【
図16】実施例11の光学フィルター素地のリップル値を確認する過程に関する図面である。
【
図17】実施例12の光学フィルター素地のリップル値を確認する過程に関する図面である。
【
図18】実施例13の光学フィルター素地のリップル値を確認する過程に関する図面である。
【
図19】実施例14の光学フィルターの分光スペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0197】
以下、実施例に基づいて本開示を具体的に説明するが、本開示の範囲が下記実施例によって限定されるものではない。
【0198】
1.透過率スペクトルの評価
透過率スペクトルは、測定対象を一定のサイズ(横および縦がそれぞれ10mmおよび10mm)に裁断して得られた試験片に対して分光光度計(メーカー:Perkinelmer社製、製品名:Lambda750分光光度計)を使用して測定した。透過率スペクトルは、前記装備のマニュアルに従って波長別および入射角別に測定した。試験片を分光光度計の測定ビームとディテクターとの間の直線上に位置させ、測定ビームの入射角を0度から40度まで角度を変更しながら、透過率スペクトルを確認した。特に明記しない限り、本実施例において言う透過率スペクトルの結果は、前記入射角が0度である場合の結果であり、この際、入射角0度は、試験片の表面法線方向に実質的に平行な方向である。
【0199】
透過率スペクトルで所定波長領域内での平均透過率は、前記波長領域での最短波長から波長を1nmずつ増加させながら各波長の透過率を測定した後に測定された透過率の算術平均を求めた結果であり、最大透過率は、前記1nmずつ波長を増加させながら測定した透過率のうち最大透過率である。例えば、350nm~360nmの波長範囲内の平均透過率は、350nm、351nm、352nm、353nm、354nm、355nm、356nm、357nm、358nm、359nmおよび360nmの波長で測定した透過率の算術平均であり、350nm~360nmの波長範囲内の最大透過率は、350nm、351nm、352nm、353nm、354nm、355nm、356nm、357nm、358nm、359nmおよび360nmの波長で測定した透過率のうち最も高い透過率である。
【0200】
以下本明細書において、実施例と比較例の特性を整理した表において、TMAXは、当該波長領域内での最大透過率であり、その単位は%であり、TAVGは、当該波長領域内での平均透過率であり、その単位は%である。また、前記表において、T50% cut onは、350nm~425nmの波長領域内で50%の透過率を示す最短波長(段位はnm)であり、T50% cut offは、560nm~700nmの波長領域内で50%の透過率を示す最長波長(単位はnm)である。
【0201】
2.リップル値の評価
リップル値は、450nm~560nmの波長領域での平均透過率Tave.i,i=1~nと実際の透過率Ti,i=1~nの差=Tdiff.i=Ti-Tave.i(i=1~n)を全部求めた後に求められた差の最大値Max(Tdiff.i)と最小値Min(Tdiff.i)を差し引きして求めた。前記で1からnまでの範囲に定められる添え字iは、波長を示す序数である。例えば、450nm~560nmの範囲でリップル値を確認するとき、450nmがiが1である場合と指定され、波長が1nmずつ増加すると、iも1ずつ増加する。すなわち451nmは、iが2である場合と指定され、560nmは、iが111である場合と指定される。
【0202】
前記リップル値は、下記式Aによって定められるR値である。
【0203】
[式A]
R=Max(Tdiff.i)-Min(Tdiff.i)
【0204】
式A中、Rは、前記リップル値であり、Max(Tdiff.i)は、前記平均透過率と実際の透過率の差のうち最大値であり、Min(Tdiff.i)は、前記平均透過率と実際の透過率の差のうち最小値である。前記リップル値は、3次スプライン方式の回帰方程式で計算した。
【0205】
3.屈折率の評価
赤外線吸収ガラスおよび誘電体サブ層の屈折率は、ウィーズオプティクス社のエリプソメーター(M-2000 Ellipsometer)装置を適用して波長520nmに対して測定した。
【0206】
4.付着力の評価
耐湿層の付着力は、ASTM D3359規格によるCross Hatch Cutter方式の剥離試験(Peel Test)で評価した。前記剥離試験は、前記素地の耐湿層に1mmの間隔で直線切開線を横および縦方向にそれぞれ11ラインずつ作成して、耐湿層上に直角の格子模様を形成し、前記格子模様の切開線が形成された耐湿層に接着テープを付着した後、これを剥離したとき、切開線が作成された耐湿層が前記接着テープとともに剥離するか否か、および剥離時におけるその割合を測定する試験である。前記接着テープとしては、3M社の810 Scotch Magic Tape製品を使用した。前記接着テープの剥離は、前記耐湿層から前記接着テープを約180度の剥離角度で約60秒~120秒の時間内に剥離して行った。前記方式で評価したとき、の付着力評価基準は、下記の通りである。
<付着力評価基準>
5B:剥離試験で格子模様の切開線が作成された部分で剥離が発生しない場合
4B:剥離試験で剥離する面積が、格子模様の切開線が作成された部分の全体面積の5%未満である場合
3B:剥離試験で剥離する面積が、格子模様の切開線が作成された部分の全体面積の5%以上、15%未満である場合
2B:剥離試験で剥離する面積が、格子模様の切開線が作成された部分の全体面積の15%以上、35%未満である場合
1B:剥離試験で剥離する面積が、格子模様の切開線が作成された部分の全体面積の35%以上、65%未満である場合
0B:剥離試験で剥離する面積が、格子模様の切開線が作成された部分の全体面積の65%以上である場合
【0207】
製造例1.耐湿層材料(A)の製造
耐湿層材料(A)は、10重量%ポリシラザン溶液とアクリル系シランカップリング剤を混合して製造した。前記ポリシラザン溶液は、H社のポリシラザン溶液とジブチルエーテル(DBE)を1:9の重量比(ポリシラザン溶液:DBE)で混合して製造した。前記アクリル系シランカップリング剤としては、3-{ジエトキシ(メチル)シリル}プロピルメタクリレートを使用した。前記混合は、ポリシラザン溶液と前記シランカップリング剤の重量比(ポリシラザン溶液:シランカップリング剤)が約10:3程度となるようにした。
【0208】
製造例2.耐湿層材料(B)の製造
シランカップリング剤として、3-イソシアネートプロピルトリメトキシシランを適用したことを除いて、製造例1と同一に耐湿層材料(B)を製造した。
【0209】
製造例3.耐湿層材料(C)の製造
シランカップリング剤として、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシランを適用したことを除いて、製造例1と同一に耐湿層材料(C)を製造した。
【0210】
製造例4.耐湿層材料(D)の製造
耐湿層材料(D)は、PDMS(polydimethylsiloxane)(Dow, Sylgard 184 Silicone Elastomer Base)、アミノ変性ポリシロキサン(Dow, OFX-8040 Fluid)及び硬化剤(Dow, Sylgard 184 Silicone Elastomer Curing Agent)を混合して製造した。前記材料は、前記PDMS(A)と前記アミノ変性ポリシロキサン(B)とを約2:8の重量比(A:B)で混合した混合物に前記硬化剤をさらに混合して製造した。この時、前記硬化剤は、前記PDMS(A)と前記アミノ変性ポリシロキサン(B)と前記硬化剤との全体重量を基準にした時、前記硬化剤の比率が約10重量%になるように混合した。
【0211】
製造例5.耐湿層材料(E)の製造
耐湿層材料(E)は、PDMS(polydimethylsiloxane)(Dow, Sylgard 184 Silicone Elastomer Base)、ヒドロキシ変性ポリシロキサン(Dow, PMX-0930 Silanol Fluid)及び硬化剤(Dow, Sylgard 184 Silicone Elastomer Curing Agent)を混合して製造した。前記材料は、前記PDMS(A)と前記ヒドロキシ変性ポリシロキサン(B)とを約2:8の重量比(A:B)で混合した混合物に前記硬化剤をさらに混合して製造した。この時、前記硬化剤は、前記PDMS(A)と前記ヒドロキシ変性ポリシロキサン(B)と前記硬化剤との全体重量を基準にした時、前記硬化剤の比率が約10重量%になるように混合した。
【0212】
製造例6.吸収層材料の製造
吸収層材料は、約340nm~390nm程度の範囲内で吸収極大を示す吸収剤1(トリアジン(triazine)系染料)、吸収極大波長が約700nm~720nmの範囲内であり、半値幅(FWHM)が約50nm~60nmレベルである赤外線吸収剤2(スクアリリウム(squarylium)系染料)、吸収極大波長が約730nm~750nm程度の範囲内であり、半値幅(FWHM)が約60nm~70nmレベルである赤外線吸収剤3(スクアリリウム(squarylium)系染料)および吸収極大波長が約760nm~780nm程度の範囲内であり、半値幅(FWHM)が約90nm~100nmレベルである赤外線吸収剤4(スクアリリウム(squarylium)系染料)を使用して製造した。前記吸収剤1~4とバインダー樹脂を配合して材料を製造した。バインダー樹脂としては、COP(Cycloolefin polymer)を使用した。
【0213】
前記バインダー樹脂100重量部に対して約5重量部の吸収剤1、約0.1重量部の吸収剤2、約0.2重量部の吸収剤3および約0.4重量部の吸収剤4をトルエン(toluene)に配合して、材料を製造した。
【0214】
実施例1.
赤外線吸収基板としては、
図5のような透過率スペクトルを示すリン酸塩系吸収ガラス(PTOT社製)を使用した。
図5において、点線で示されたスペクトルは、前記リン酸塩系吸収ガラスの耐久性試験前のスペクトルであり、実線で表示されたものは、前記耐久性試験後のスペクトルである。前記耐久性試験は、前記ガラスを85℃および85%の相対湿度の条件で120時間の間維持する試験である。前記赤外線吸収ガラスのスペクトル特性(耐久性試験前)は、下記表1にまとめた通りである。
【0215】
前記赤外線吸収ガラスは、屈折率が約1.57程度であった。
【0216】
【0217】
前記赤外線吸収ガラス(耐久性試験前)の一面に製造例1の耐湿層材料(A)を塗布し、130℃で15分間程度熱処理して、厚さが約0.1μm程度の耐湿層を形成した。その後、前記赤外線吸収ガラス(耐久性試験前)の他面にも、同一に耐湿層材料(A)を使用して、厚さが約0.1μm程度の耐湿層を形成して、素地を製造した。
【0218】
実施例2.
製造例1の耐湿層材料(A)の代わりに、製造例2の耐湿層材料(B)を使用したことを除いて、実施例1と同一に素地を製造した。
【0219】
実施例3.
製造例1の耐湿層材料(A)の代わりに、製造例3の耐湿層材料(C)を使用したことを除いて、実施例1と同一に素地を製造した。
【0220】
比較例1.
トルエンにアクリル系シランカップリング剤(3-{ジエトキシ(メチル)シリル}プロピルメタクリレート)を分散させた溶液を耐湿層材料として使用した。実施例1と同じ赤外線吸収ガラス(耐久性試験前)の一面に前記耐湿層材料を塗布し、130℃で15分間程度熱処理して、厚さが約0.1μm程度の耐湿層を形成した。その後、前記赤外線吸収ガラス(耐久性試験前)の他面にも、同一に厚さが約0.1μm程度の耐湿層を形成して、素地を製造した。
【0221】
比較例2.
耐湿層材料として製造例1の耐湿層材料(A)の製造に適用されたポリシラザン溶液のみを適用した。実施例1と同じ赤外線吸収ガラス(耐久性試験前)の一面に前記耐湿層材料を塗布し、130℃で15分間程度熱処理して、厚さが約0.1μm程度の耐湿層を形成した。その後、前記赤外線吸収ガラス(耐久性試験前)の他面にも、同一に厚さが約0.1μm程度の耐湿層を形成して、素地を製造した。
【0222】
比較例3.
耐湿層を形成しない赤外線吸収ガラスを比較例3の素地とした。
【0223】
実施例および比較例の素地に対して耐久性試験を行った。前記耐久性試験は、前記各素地を85℃および85%の相対湿度で120時間の間維持する試験である。
【0224】
表2は、各素地に対して行われた前記耐久性試験後の透過率特性であり、表2の結果は、
図6にも示されている。
【0225】
【0226】
実施例1から3および比較例1から3耐湿層に対する付着力の評価結果を下記表3にまとめて記載した。
【0227】
【0228】
実施例4.
赤外線吸収ガラスの両面の耐湿層の厚さを0.05μm程度に調節したことを除いて、実施例1と同一に素地を製造した。
【0229】
次に、前記赤外線吸収ガラスの両面に形成された耐湿層のうちいずれか1つの耐湿層に製造例6の吸収層材料を塗布し、135℃で2時間の間熱処理して、吸収層が形成された素地を製造した。この際、前記吸収層の厚さは、約3μm程度で形成した。
【0230】
実施例5.
耐湿層の厚さを約0.1μm程度に変更したことを除いて、実施例4と同一に吸収層が形成された素地を製造した。
【0231】
実施例6.
耐湿層の厚さを約5μm程度に変更したことを除いて、実施例4と同一に吸収層が形成された素地を製造した。
【0232】
実施例7.
耐湿層の厚さを約10μm程度に変更したことを除いて、実施例4と同一に吸収層が形成された素地を製造した。
【0233】
下記表4~表7は、それぞれ実施例4~7の素地の耐久性試験前後の透過率スペクトルを整理した結果である。前記耐久性試験は、前記素地を85℃および85%の相対湿度の条件で120時間の間維持する試験である。
図7は、前記実施例4~7の光学フィルター素地の分光スペクトルである(耐久性試験前)。
【0234】
【0235】
【0236】
【0237】
【0238】
実施例4~7の素地の耐湿層の基板に対する付着力を前記表3の付着力の評価と同じ方式で評価し、その結果を下記表8にまとめて記載した。
【0239】
【0240】
図8は、実施例4~7の光学フィルター素地のリップル値を確認するために、450nm~560nmの波長範囲内での透過率スペクトルを拡大した図(入射角0度)であり、
図9~
図12は、それぞれ実施例4~7に対してリップル値を求める過程を示す図である。下記表9は、実施例4~7の光学フィルターの450nm~560nm波長領域でのリップル値をまとめたものである。
【0241】
【0242】
図面および前記表から確認されるように、リップル値は、実施例4から実施例7に行くほど大きくなり、したがって、リップル値の観点から、実施例4が最も良い結果を示す。しかしながら、実施例4は、耐湿層の付着力の観点やコーティング性の観点から、実施例5に比べて多少劣る結果を示し、実施例6および7は、耐湿層の付着力が実施例5に比べて劣った。また、実施例7は、可視光透過率が他の実施例に比べて多少劣る結果を示した。
【0243】
実施例8.
製造例1の耐湿層材料(A)の代わりに、製造例4の耐湿層材料(D)を使用したことを除いて、実施例1と同一に素地を製造した。
【0244】
実施例9.
製造例1の耐湿層材料(A)の代わりに、製造例5の耐湿層材料(E)を使用したことを除いて、実施例1と同一に素地を製造した。
【0245】
比較例4.
耐湿層材料として、製造例4と5の耐湿層材料に使用されたPDMS(polydimethylsiloxane)と硬化剤とだけを適用した。実施例1と同じ赤外線吸収ガラス(耐久性試験前)の一面に前記耐湿層材料を塗布し、130℃で15分間程度熱処理して、厚さが約0.1μm程度の耐湿層を形成した。その後、前記赤外線吸収ガラス(耐久性試験前)の他面にも、同一に厚さが約0.1μm程度の耐湿層を形成して、素地を製造した。
【0246】
実施例8および9ならびに比較例4との素地に対して耐久性試験を行った。前記耐久性試験は、前記各素地を85℃および85%の相対湿度で120時間の間維持する試験である。
【0247】
表10は、各素地に対して行われた前記耐久性試験後の透過率特性であり、表10の結果は、
図13にも示されている。
【0248】
【0249】
実施例8と9と比較例4との耐湿層の基板に対する付着力を前記付着力の評価と同じ方式で評価し、その結果を下記表11にまとめて記載した。
【0250】
【0251】
実施例10.
赤外線吸収ガラスの両面の耐湿層の厚さを0.05μm程度に調節したことを除いて、実施例8と同一に素地を製造した。
【0252】
次に、前記赤外線吸収ガラスの両面に形成された耐湿層のうちいずれか1つの耐湿層に製造例6の吸収層材料を塗布し、135℃で2時間の間熱処理して、吸収層が形成された素地を製造した。この際、前記吸収層の厚さは、約3μm程度で形成した。
【0253】
実施例11.
耐湿層の厚さを約0.1μm程度に変更したことを除いて、実施例10と同一に吸収層が形成された素地を製造した。
【0254】
実施例12.
耐湿層の厚さを約5μm程度に変更したことを除いて、実施例10と同一に吸収層が形成された素地を製造した。
【0255】
実施例13.
耐湿層の厚さを約10μm程度に変更したことを除いて、実施例10と同一に吸収層が形成された素地を製造した。
【0256】
下記表12から15は、実施例10から13の素地に対して行われた耐久性試験前後の透過率特性である。前記耐久性試験は、前記各素地を85℃および85%の相対湿度で120時間の間維持する試験である。
【0257】
【0258】
【0259】
【0260】
【0261】
実施例10~13の素地の耐湿層の基板に対する付着力を前記表3の付着力の評価と同じ方式で評価し、その結果を下記表16にまとめて記載した。
【0262】
【0263】
図14は、実施例10~13の光学フィルター素地のリップル値を確認するために、450nm~560nmの波長範囲内での透過率スペクトルを拡大した図(入射角0度)であり、
図15~
図18は、それぞれ実施例10~13に対してリップル値を求める過程を示す図である。下記表17は、実施例10~13の光学フィルターの450nm~560nm波長領域でのリップル値をまとめたものである。
【0264】
【0265】
図面および前記表から確認されるように、リップル値は、実施例10から実施例13に行くほど大きくなるのを確認できる。
【0266】
実施例14.
実施例5の素地に誘電体膜を形成した。誘電体膜は、イオンビームアシスト蒸着(Ion-beam assisted deposition)方式でサブ層を蒸着して形成した。蒸着時に、真空度および温度の条件は、それぞれ5.0E-5 Torrおよび120℃とし、IBS(Ion Beam Sputtering)ソース(source)電圧350Vおよび電流850mAの条件に設定した。前記方式で高屈折層であるTiO2層(屈折率約2.61)と低屈折層であるSiO2層(屈折率約1.46)を交互に形成して、誘電体膜を形成した。サブ層である前記高屈折層と低屈折層は、合計6層形成し、具体的には、赤外線吸収層上にTiO2層(厚さ約12.4nm)、SiO2層(厚さ約30.3nm)、TiO2層(厚さ約43.7nm)、SiO2層(厚さ約13nm)、TiO2層(厚さ約30.4nm)およびSiO2層(厚さ約85.3nm)を順次形成して、誘電体膜を形成した。このような誘電体膜は、下記式Aのn1が約2.61(TiO2層の屈折率)であり、n2が約1.46(SiO2層の屈折率)であり、nsが約1.57(赤外線吸収ガラスの屈折率)であり、pが2.5(=(6-1)/2)であり、これによって、V値は、約5.70である。
【0267】
[式2]
V=K×{[(n1/n2)2p×(n1
2/ns)-1]/[(n1/n2)2p×(n1
2/ns)+1]}2
【0268】
次に、赤外線吸収ガラスの赤外線吸収層が形成されていない面に同一にTiO2層(厚さ約12.4nm)、SiO2層(厚さ約30.3nm)、TiO2層(厚さ約43.7nm)、SiO2層(厚さ約13nm)、TiO2層(厚さ約30.4nm)およびSiO2層(厚さ約85.3nm)を順次形成することによって、両面に誘電体膜が存在し、最外層がSiO2層(厚さ約85.3nm)である光学フィルターを製造した。
【0269】
下記表18は、前記光学フィルターの透過率スペクトル特性をまとめたものである。
【0270】
【0271】
試験例1.
実施例14の光学フィルターに対して入射角0度、30度および40度でそれぞれ透過率スペクトルを評価し、その結果は、
図19に示されている。
図19から確認されるように、実施例14の光学フィルターは、入射角と関係なく、ほぼ同じスペクトルを示した。また、可視光透過バンドのT10% cut onおよびT10% cut offも、入射角によってシフトが実質的に発生しなかった。
【符号の説明】
【0272】
100 基板
200、201、202 耐湿層
300 光吸収層
401、402 誘電体膜