(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024132252
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】ポリウレタンフォームの分解処理方法及びポリウレタンフォームの分解処理装置
(51)【国際特許分類】
C08J 11/18 20060101AFI20240920BHJP
【FI】
C08J11/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023042963
(22)【出願日】2023-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】000119232
【氏名又は名称】株式会社イノアックコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】原 智隆
【テーマコード(参考)】
4F401
【Fターム(参考)】
4F401AA22
4F401AA24
4F401AA26
4F401AD09
4F401BA06
4F401CA51
4F401CA53
4F401CA69
4F401CA74
4F401CA75
4F401EA60
4F401EA67
(57)【要約】
【課題】減容状態を維持することでポリウレタンフォームの分解処理の効率を高める。
【解決手段】圧縮状態で結束具3によって保持されたポリウレタンフォーム1を、分解処理を行う装置5に投入し、分解処理する工程を備えるポリウレタンフォーム1の分解処理方法である。結束具3は、ポリウレタンフォーム1の分解処理条件下で分解する材料からなる。分解処理する工程において、結束具3の少なくとも一部も分解処理する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮状態で結束具によって保持されたポリウレタンフォームを、分解処理を行う装置に投入し、分解処理する工程を備え、
前記結束具は、前記ポリウレタンフォームの分解処理条件下で分解する材料からなり、
前記分解処理する工程において、前記結束具も分解処理する、ポリウレタンフォームの分解処理方法。
【請求項2】
前記材料は、ポリエステル、ポリアミド、及びポリウレタンからなる群より選択される1種以上である、請求項1に記載のポリウレタンフォームの分解処理方法。
【請求項3】
圧縮状態で結束具によって保持されたポリウレタンフォームと分解剤とを入れる容器と、
前記容器内を加熱する加熱部と、
を備え、
前記容器は、前記ポリウレタンフォームの分解物と前記分解剤とを含む液状物を滞留させる滞留部を有し、
前記滞留部内の前記液状物に前記ポリウレタンフォームの少なくとも一部を浸るように構成され、
前記結束具は、前記ポリウレタンフォームの分解処理条件下で分解する材料からなる、ポリウレタンフォームの分解処理装置。
【請求項4】
前記容器の内底面よりも高い位置には、前記液状物の排出口が形成されており、
前記容器のうち前記排出口の下端よりも低い部分が、前記滞留部とされている、請求項3に記載のポリウレタンフォームの分解処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ポリウレタンフォームの分解処理方法及びポリウレタンフォームの分解処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリウレタンフォームの分解回収方法が検討されている(例えば、特許文献1参照)。ポリウレタンフォームは発泡体であるため、体積を減らした減容状態で、反応容器に供給することによって、分解回収の効率を高めることが望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、ポリウレタンフォームは弾性があるため、一度減容化したとしても、体積が戻るおそれがある。
【0005】
本開示は、上記事情に鑑みてなされたものであり、減容状態を維持することでポリウレタンフォームの分解処理の効率を高めることを目的とする。本開示は、以下の形態として実現することが可能である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[1]
圧縮状態で結束具によって保持されたポリウレタンフォームを、分解処理を行う装置に投入し、分解処理する工程を備え、
前記結束具は、前記ポリウレタンフォームの分解処理条件下で分解する材料からなり、
前記分解処理する工程において、前記結束具の少なくとも一部も分解処理する、ポリウレタンフォームの分解処理方法。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、減容状態を維持することでポリウレタンフォームの分解処理の効率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】圧縮状態で結束具によって保持されたポリウレタンフォームの一例を示す模式図である。
【
図2】圧縮状態で結束具によって保持されたポリウレタンフォームの一例を示す模式図である。
【
図3】圧縮状態で結束具によって保持されたポリウレタンフォームの一例を示す模式図である。
【
図4】分解処理装置の好適な一例を模式的に示す図である。
【
図5】分解処理装置の動作を模式的に示す図である。
【
図6】分解処理装置の動作を模式的に示す図である。
【
図7】他の実施形態の分解処理装置の動作を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
ここで、本開示の望ましい例を示す。
[2]
前記材料は、ポリエステル、ポリアミド、及びポリウレタンからなる群より選択される1種以上である、[1]に記載のポリウレタンフォームの分解処理方法。
[3]
圧縮状態で結束具によって保持されたポリウレタンフォームと分解剤とを入れる容器と、
前記容器内を加熱する加熱部と、
を備え、
前記容器は、前記ポリウレタンフォームの分解物と前記分解剤とを含む液状物を滞留させる滞留部を有し、
前記滞留部内の前記液状物に前記ポリウレタンフォームの少なくとも一部が浸るように構成され、
前記結束具は、前記ポリウレタンフォームの分解処理条件下で分解する材料からなる、ポリウレタンフォームの分解処理装置。
[4]
前記容器の内底面よりも高い位置には、前記液状物の排出口が形成されており、
前記容器のうち前記排出口の下端よりも低い部分が、前記滞留部とされている、[3]に記載のポリウレタンフォームの分解処理装置。
【0010】
以下、本開示を詳しく説明する。尚、本明細書において、数値範囲について「-」を用いた記載では、特に断りがない限り、下限値及び上限値を含むものとする。例えば、「10-20」という記載では、下限値である「10」、上限値である「20」のいずれも含むものとする。すなわち、「10-20」は、「10以上20以下」と同じ意味である。また、本明細書において、各数値範囲の上限値及び下限値は、任意に組み合わせることができる。
【0011】
1.ポリウレタンフォーム1の分解処理方法
ポリウレタンフォーム1の分解処理方法は、圧縮状態で結束具3によって保持されたポリウレタンフォーム1を、分解処理を行う分解処理装置5に投入し、分解処理する工程を備える。結束具3は、ポリウレタンフォーム1の分解処理条件下で分解する材料からなる。ポリウレタンフォーム1を分解処理する工程において、結束具3の少なくとも一部も分解処理される。
【0012】
(1)ポリウレタンフォーム1
ポリウレタンフォーム1は、軟質ポリウレタンフォーム、半硬質ポリウレタンフォーム、及び硬質ポリウレタンフォームのいずれであってもよい。ポリウレタンフォーム1は、連続気泡構造のポリウレタンフォームであってもよく、独立気泡構造のポリウレタンフォームであってもよい。ポリウレタンフォーム1は、所定の大きさに粉砕された粉砕物であってもよい。また、ポリウレタンフォーム1は、所定の大きさに切断された切断物であってもよい。
ポリウレタンフォーム1としては、例えば、ポリウレタンフォーム1の製造過程で排出される端材、又は、破棄される予定の使用済みポリウレタンフォーム1が挙げられる。
【0013】
(2)結束具3
ポリウレタンフォーム1は、圧縮状態で結束具3によって保持される。ポリウレタンフォーム1は、圧力を加えられて、容積が小さくなった状態で結束具3によって保持される。結束具3は、特に限定されず、ポリウレタンフォーム1を結び束ねる機能を有すれば形態は限定されない。結束具3は、紐3A、フィルム3B、結束バンド3C、織物、編み物、及び不織布からなる群より選ばれた少なくとも1種以上が好適に例示される(
図1,2,3参照)。フィルム3Bは、厚手のシートも含む概念である。フィルム3Bの形状は、特に限定されず、帯状のテープとしてもよい。
結束具3が、紐3A、フィルム3B、織物、編み物、及び不織布からなる群より選ばれた少なくとも1種以上である場合には、紐3A、フィルム3B、織物、編み物、及び不織布からなる群より選ばれた少なくとも1種以上が袋又はネットを構成していてもよい。
結束バンド3Cは、例えば、ラック歯付きのバンド部と、バンド部の末端に設けられた突起付きの角穴とを有してなる。
尚、ポリウレタンフォーム1の圧縮状態での圧縮率は特に限定されない。また、圧縮率は、ポリウレタンフォーム1の全体で均一であってもよく、部分的に圧縮率が異なっていてもよい。例えば、ポリウレタンフォーム1のうち、結束具3に接触している部分は、圧縮率が、他の部分よりも高い状態で保持され得る。
【0014】
結束具3は、ポリウレタンフォーム1の分解処理条件下で分解する材料から構成されている。
ポリウレタンフォーム1の分解処理条件下とは、ウレタン結合を化学的に分解する条件である。
ポリウレタンフォーム1の分解処理条件下で分解する材料は、ポリエステル、ポリアミド、及びポリウレタンからなる群より選択される1種以上が好ましい。
ポリエステルとしては、芳香族ポリエステル及び脂肪族ポリエステルからなる群より選ばれた少なくとも1種以上が好ましい。芳香族ポリエステルは、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレンテレフタレート(PPT)、及びポリブチレンテレフタラート(PBT)からなる群より選ばれた少なくとも1種以上が好ましい。
尚、ポリエステルは、ジカルボン酸とジオールに分解される。ジカルボン酸は、イソシアネートに由来する副生アミンの除去剤として作用する。ジオールは、分解剤として作用する。また、ジオールは、ウレタン結合を精製することが可能なため、再生原料としても利用され得る。よって、ポリエステルの分解生成物は、ポリウレタンフォームの分解生成物を再利用する際に、再利用への悪影響が極めて少ない。
ポリアミドとして、ポリアミド66(ナイロン66、PA66)、ポリアミド6(ナイロン6、PA6)、ポリアミド610(PA610)、ポリアミド612(PA612)、ポリアミド11(PA11)、ポリアミド12(PA12)、及びポリアミド46からなる群より選ばれた少なくとも1種以上が好ましい。
尚、ポリアミドは、ジカルボン酸とジアミン等に分解される。ジカルボン酸は、イソシアネートに由来する副生アミンの除去剤として作用する。ジアミンは、イソシアネートに由来する副生アミンを除去する際に一緒に除去可能である。よって、ポリアミドの分解生成物は、ポリウレタンフォームの分解生成物を再利用する際に、再利用への悪影響が極めて少ない。ポリアミドの中には、アミノカルボン酸に分解されるものもあるが、この場合であっても、アミノカルボン酸は再利用への悪影響が極めて少ないと推測される。
結束具3の材料としてのポリウレタンは、特に限定されない。ポリウレタンとして、例えばポリエーテル系ポリウレタン、ポリエステル系ポリウレタン、ポリカーボネート系ポリウレタンなどが挙げられる。これらは1種単独で、または2種以上組み合わせて用いることができる。結束具3の材料としてポリウレタンを用いた場合には、結束具3の分解生成物はポリオールを含む。この結束具3由来のポリオールも、ポリウレタンフォーム1由来のポリオールとともに再利用され得るため、結束具3の分解生成物は再利用への悪影響を与えにくいと考えられる。
【0015】
ポリウレタンフォーム1の分解処理には、通常、後述する分解剤13を用いることが好ましい。
ポリウレタンフォーム1の分解処理方法では、後述する分解処理装置5の容器30に、ポリウレタンフォーム1と分解剤13とを入れ、ポリウレタンフォーム1と分解剤13が入った容器30内を加熱し、ポリウレタンフォーム1の分解物と分解剤13とを含む液状物10を容器30内に滞留させ、未分解のポリウレタンフォーム1を下方に向けて押圧して、滞留した液状物10に押し込むことが好ましい。
【0016】
(3)分解処理装置5
分解処理は、分解処理装置5で行う。
分解処理装置5は、ポリウレタンフォーム1を分解処理できれば、構造は特に限定されない。
ここで、分解処理装置5の好適な実施形態について説明する。本実施形態のポリウレタンフォーム1の分解処理装置5は、
図4から
図6に示すように、圧縮状態で結束具3によって保持されたポリウレタンフォーム1と分解剤13とを入れる容器30と、容器30内を加熱する加熱部23と、を備える。分解処理装置5は、容器30内のポリウレタンフォーム1を押圧する押圧部21を備えてもよい。容器30は、ポリウレタンフォーム1の分解物と分解剤13とを含む液状物10を滞留させる滞留部31を有する。分解処理装置5は、滞留部31内の液状物10にポリウレタンフォーム1の少なくとも一部を浸るように構成されている。押圧部21は、ポリウレタンフォーム1を下方に向けて押圧して、滞留部31内の液状物10にポリウレタンフォーム1を押し込むように構成されている。各図において、Y軸方向は上下方向であり、X軸方向はY軸方向と直交する方向である。
【0017】
(3.1)分解剤13
分解剤13としては、ウレタン結合を化学的に分解、液状化するものであれば、特に限定されるものではないが、反応性やコストの点から水酸基を有する化合物やアミン化合物が好ましい。
水酸基を有する化合物としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタジオール、1,6-ヘキサンジオール、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、グリセリン、ポリエチレングリコール等が挙げられる。これらの水酸基を有する化合物は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。これらの中でも、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコールが好適である。
また、アミン化合物としては、例えば、エチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、プロパンジアミン、2-エチルヘキシルアミン、イソプロパノールアミン、2-(2-アミノエチルアミノ)エタノール、2-アミノ-2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオール、エチルアミノエタノール、アミノブタノール、n-プロピルアミン、ジ-n-プロピルアミン、n-アミルアミン、イソブチルアミン、メチルジエチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、シクロヘキシルアミン、ピペラジン、ピペリジン、アニリン、トルイジン、ベンジルアミン、フェニレンジアミン、トリレンジアミン、4-4’-ジフェニルメタンジアミン、キシリレンジアミン、クロロアニリン、ピリジン、ピコリン、N-メチルモルフォリン、エチルモルフォリン、ピラゾール等が挙げられる。これらのアミン化合物は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。これらの中でも、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンが好適である。
【0018】
分解剤13の添加量は、ポリウレタンフォーム100質量部に対して、5質量部以上50質量部以下であることが好ましく、10質量部以上30質量部以下であることがより好ましい。
【0019】
(3.2)分解触媒
分解剤13を使用する分解反応において、必要に応じて、さらに分解触媒(以下、「触媒」ともいう)を添加し、反応速度を上げることができる。
添加する触媒としては、ポリウレタンフォームの製造時に使われるものが好ましく、例えば、トリエチルアミン、N,N-ジメチルシクロヘキシルアミン、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラメチルプロパン1,3-ジアミン、N,N,N’,N’-テトラメチルヘキサン1,6-ジアミン、N,N,N’,N",N"-ペンタメチルジエチレントリアミン、N,N,N’,N",N"-ペンタメチルジプロピレントリアミン、テトラメチルグアニジン、トリエチレンジアミン、N,N’-ジメチルピペラジン、N,-メチル,N’-(2-ジメチルアミノ)エチルピペラジン、N-メチルモルホリン、N-(N’,N’-ジメチルアミノエチル)-モルホリン、1,2-ジメチルイミダゾール、ヘキサメチレンテトラミン、ジメチルアミノエタノール、ジメチルアミノエトキシエタノール、N,N,N’-トリメチルアミノエチルエタノールアミン、N-メチル-N’-(2-ヒドロキシエチル)-ピペラジン、N-(2-ヒドロキシエチル)モルホリン、ビス(2-ジメチルアミノエチル)エーテル、エチレングリコールビス(3-ジメチル)-アミノプロピルエーテル、ジアザビシクロウンデセン、スタナスオクトエート、ジブチルチンジアセテート、ジブチルチンジラウレート、ジブチルチンマーカプチド、ジブチルチンチオカルボキシレート、ジブチルインジマレエート、ジオクチルチンマーカプチド、ジオクチルチンチオカルボキシレート、オクタン酸鉛、オクタン酸亜鉛、オクタン酸カルシウム、酢酸カリウム、オクタン酸カリウム等が挙げられる。これらの中でも、トリエチレンジアミン、ジアザビシクロウンデセン、酢酸カリウム、オクタン酸カリウムが好適である。
尚、添加する触媒を、ポリウレタンフォームの製造時に使われるものにすることが好ましい理由は次の通りである。第1に、一連の分解工程後に当該触媒が残存している場合でも、再生ポリオールを使用してポリウレタンフォームを作製する(発泡させる)際に、悪影響を及ぼし難い。第2に、再生ポリオールを使用してポリウレタンフォームを作製する(発泡させる)際に、新たに添加する触媒量を節約し得る。
【0020】
触媒の添加量は、分解剤100質量部に対して、1質量部以上30質量部以下であることがより好ましく、5質量部以上20質量部以下であることが更に好ましい。
【0021】
(3.3)分解処理装置5の具体的構成例
分解処理装置5は、上述のように容器30、加熱部23を備える。分解処理装置5は、押圧部21を備えてもよい。分解処理装置5は、分解剤13を投入する分解剤投入部25を更に備えていてもよい。分解剤投入部25の構成は特に限定されない。分解剤投入部25は、例えば、分解剤13をポリウレタンフォーム1にスプレー塗布する方式ではなく、分解剤13を霧状にすることなくそのまま投入する方式が採用される。
図4及び
図5の容器30の上端近傍に分解剤投入部25が設けられている。分解剤13は、ポンプ等で分解剤投入部25に送られ、容器30内に直接投入される。
図5では、分解剤13を模式的に黒丸で示している。
【0022】
尚、ポリウレタンフォーム1と分解剤13とを入れる態様は特に限定されない。
分解処理を開始する前に滞留部31に分解剤13を入れておいてもよい。この場合には、その後、ポリウレタンフォーム1の投入量に応じて、分解剤投入部25から分解剤13を適量投入してもよい。このようにすれば、分解処理の初期段階から、滞留部31に十分な分解剤13を含む液状物10を滞留させることができる。
また、分解剤13をポリウレタンフォーム1に予め塗布してもよい。
また、簡便性の観点から、分解剤13をポリウレタンフォーム1に予め塗布することなく、そのまま容器30に投入してもよい。
ポリウレタンフォーム1と分解剤13を入れるタイミングは同時であっても同時でなくてもよい。
【0023】
容器30は、ポリウレタンフォーム1と分解剤13とを入れることができれば、その他の構成は特に限定されない。例えば、容器30は、底壁部33と、底壁部33の周囲から立ち上がる側壁部34と、を有する構成としてもよい。底壁部33は、例えば、円形、矩形等の平板状をなしている。側壁部34は、例えば、円筒、角筒等の筒状をなしている。容器30の高さは、加熱効率とポリウレタンフォーム1の投入頻度を考慮すると、底壁部33が円形の場合、底壁部33の直径の1倍以上5倍以下が好ましく、底壁部33が矩形の場合、底壁部33の対角線の長さの1倍以上5倍以下が好ましい。
【0024】
容器30は、ポリウレタンフォーム1の分解物と分解剤13とを含む液状物10を滞留させる滞留部31を有している。滞留部31は、液状物10を滞留させることができれば、その他の構成は特に限定されない。例えば、滞留部31は、容器30の内底面33Aから、容器30の所定の高さまでの部位によって構成できる。容器30の所定の高さとしては、容器30の高さの1/10以上1/2以下の高さとすることができる。
図5及び
図6では、滞留部31の範囲を矢印で示している。容器30のうち滞留部31よりも上方には、未分解のポリウレタンフォーム1を収容できる。本開示において、未分解のポリウレタンフォーム1というときには、一部が分解された、分解途中の固体状のポリウレタンフォーム1が含まれる。尚、未分解のポリウレタンフォーム1は滞留部31にも当然に存在し得る。
【0025】
本実施形態において、容器30の内底面33Aよりも高い位置には、液状物10の排出口35が形成されており、容器30のうち排出口35の下端よりも低い部分が、滞留部31とされている。排出口35の構成は特に限定されない。排出口35は、例えば、容器30の側壁部34に開口している。本実施形態の排出口35は、例えば、開閉機構等が設けられない簡便な構成であり、常時において開いた状態となっている。
図6に示すように、容器30内の液状物10の液面レベルが排出口35の下端に達すると、余剰の液状物10が排出口35から流出する。すなわち、排出口35の下端位置を調整することで、容器30内の液状物10の量を調整できる。分解効率を考慮すると、排出口35の下端位置は、容器30の高さの1/2の位置よりも下側であることが好ましく、容器30において加熱部23によって150℃以上に加熱され得る位置であることがより好ましい。
【0026】
容器30は、上方が開口しており、ここからポリウレタンフォーム1を投入する。本実施形態の容器30は、滞留部31の上方に未分解のポリウレタンフォーム1を充填できる。滞留部31の上方に位置するポリウレタンフォーム1が滞留部31を覆うことで、滞留部31内の熱が上方に逃げることを抑制したり、滞留部31で発生したガスを容器30内に留めたりする作用を奏し得る。
【0027】
容器30は、排出口35から未分解のポリウレタンフォーム1が流出することを規制する規制部37を有していてもよい。規制部37は、未分解のポリウレタンフォーム1が排出口35を覆って塞ぐこと、未分解のポリウレタンフォーム1が排出口35内に詰まること等を規制する役目も果たし得る。本実施形態の規制部37は、
図6に示すように、未分解のポリウレタンフォーム1が滞留部31から排出口35に向かう経路を狭めるように、排出口35を滞留部31側から覆っている。
【0028】
押圧部21は、容器30内のポリウレタンフォーム1を押圧する。押圧部21は、ポリウレタンフォーム1を下方に向けて押圧して、滞留部31内の液状物10にポリウレタンフォーム1を押し込むように構成されている。押圧部21のその他の構成は、特に限定されない。例えば、押圧部21は、ポリウレタンフォーム1を押圧する平面状の押圧面21Aを有している。押圧部21は、押圧面21Aと容器30の内底面33Aとの間で、ポリウレタンフォーム1を圧縮するように構成されているとよい。このような構成によれば、押圧面21Aと容器30の内底面33Aとの間でポリウレタンフォーム1を略均等に圧縮でき、圧縮や加熱の程度の違いによってポリウレタンフォーム1の分解の進行に差が生じ難い。
【0029】
押圧部21は、ポリウレタンフォーム1に対して、せん断力を加えることなく下方に向けて力を付与する。「せん断力を加えることなく」とは、押出機によって押し出す際に掛かるせん断力が掛からないことを意味する。せん断力を加えることなく力を付与する手段としては、固体状のポリウレタンフォーム1が破断せず、一方向に圧縮されるように力を付与する手段が挙げられる。具体的には、動力シリンダーを用いて押圧面21Aを下方に移動させる手段が例示される。押圧部21は、押圧面21Aの位置が排出口35の下端よりも低くならない範囲で、上下に移動可能に構成されている。
押圧部21による圧縮応力は特に限定されない。押圧部21による圧縮応力はポリウレタンフォーム1を十分に押圧できる大きさであればよく、例えば、軟質ポリウレタンフォームの場合には2kPa以上30kPa以下とすることができる。
【0030】
加熱部23は、容器30内を加熱する。加熱部23は、容器30の高さの1/2の位置よりも下側の部位に接触して設けられていることが好ましい。例えば、加熱部23は、ヒーター(発熱源)を有し、容器30の底壁部33の下面に接触して設けられている。他方、加熱部23は、容器30の上部位置には設けられていない。ポリウレタンフォーム1の分解処理において、滞留部31よりも上方、特に投入する付近において、ポリウレタンフォーム1を加熱しないことが好ましい。すなわち、容器30は、主に、下部(滞留部31側)において分解反応が行われ、上部においてポリウレタンフォーム1が貯留される構成であるとよい。上記の構成によれば、容器30における排出口35側においてはポリウレタンフォーム1の分解反応を促進しつつ、投入する付近においてはポリウレタンフォーム1の分解反応を抑制できる。例えば、分解剤13によるポリウレタンフォーム1の分解反応は、非加熱(例えば50℃以下)、10時間未満の条件下では、ほとんど進行しない。このため、ポリウレタンフォーム1の投入時にポリウレタンフォーム1の分解反応が意図せず進行して、投入する付近や押圧部21等に分解物が付着することを抑制できる。ポリウレタンフォーム1の分解処理において、安定した品質の分解物を得るためには、処理するポリウレタンフォーム1の種類毎に、分解処理装置5を洗浄することが有効である。上述のように、容器30における加熱部位と非加熱部位を分けることによって、分解物の付着を抑制でき、容器30の洗浄を容易にできる。また、ポリウレタンフォーム1の分解反応時において、ポリウレタンフォーム1がない部位を無駄に加熱しないことで、加熱時におけるエネルギー効率を向上できる。
【0031】
容器30内の加熱温度は、特に限定されない。容器30内の加熱温度は、150℃以上250℃以下が好ましく、170℃以上230℃以下がより好ましい。容器30内の加熱温度とは、容器30内における最も高温の部位の温度である。本実施形態では、加熱部23の設定温度を容器30内の加熱温度とみなしてもよい。容器30内においてポリウレタンフォーム1と分解剤13が接触した部位が加熱されると、ポリウレタンフォーム1が分解され、液状の分解物が生成される。液状の分解物は、ポリウレタンフォーム1の原料ポリオール由来のポリオール15、原料イソシアネート由来のアミン成分16等を含む。液状の分解物は、下方に流下し、分解剤13とともに滞留部31に滞留する。
【0032】
また、結束具3は、ポリウレタンフォーム1の分解処理条件下で分解する材料からなるから、分解処理において、結束具3の少なくとも一部も分解処理される。
【0033】
未分解のポリウレタンフォーム1は、液状物10中で分解剤13と接触し、加熱される。すると、ポリウレタンフォーム1が分解され、液状の分解物がさらに生成される。ポリウレタンフォーム1の分解が進行して、液状物10の液面レベルが排出口35の下端に達すると、液状物10が排出口35から排出される。排出された液状物10を適宜回収する。例えば、排出口35の下方に回収容器40を配置して、排出口35から流下した分解物を回収容器40に回収する。回収した分解物から、公知の手法によりポリオール15を精製して、再生されたポリオール15を得ることができる。また、ポリオール15以外にも回収した分解物から種々の成分を精製して、再生原料を得てもよい。
【0034】
2.本実施形態の作用効果
本実施形態のポリウレタンフォーム1の分解処理方法では、体積を減らした減容状態で、分解処理装置5に供給できるから、分解処理の効率が高い。例えば、同じ容積の容器30であっても、より多くの質量のポリウレタンフォーム1を投入できるから分解処理の効率が高くなる。また、嵩高いポリウレタンフォーム1を減容状態で取り扱えるから、分解処理装置5への投入がし易くなる。また、分解処理装置5への投入回数(供給回数)の低減が可能となる。
また、結束具3によってポリウレタンフォーム1を分解処理装置5の容器30に合わせた圧縮形状を保つことができ、投入が容易となる。このため、機械化による自動投入もし易くなる。
体積を減らした減容状態で、分解処理装置5に供給するためには、金属製結束具を通常用いると想定される。本実施形態では、結束具3は、ポリウレタンフォーム1の分解処理条件下で分解する材料から構成されている。よって、結束具3もポリウレタンフォーム1とともに分解され、分解工程後の結束具3の分離作業の負担が減る。
また、結束具3によって減容状態を保つことができるから、分解処理するポリウレタンフォーム1が発生する場所と、分解処理装置5とが離れている場合であっても、ポリウレタンフォーム1を嵩が小さい減容状態で運ぶことができ、輸送コストを低減できる。
【0035】
本実施形態のポリウレタンフォーム1の分解処理装置5及び分解処理方法において、ポリウレタンフォーム1を下方に向けて押圧する場合には以下の効果を有する。滞留部31内の液状物10にポリウレタンフォーム1が押し込まれる。このようにすれば、液状物10中において、分解剤13とポリウレタンフォーム1を接触させることができる。このため、例えば、ポリウレタンフォーム1の表面に分解剤13をまんべんなく塗布したり、ポリウレタンフォーム1と分解剤13を所定の比率で同時に投入したりしなくても、ポリウレタンフォーム1と分解剤13との接触効率を向上できる。また、液状物10を介してポリウレタンフォーム1に伝熱でき、例えば、空気を介してポリウレタンフォーム1に伝熱する場合に比して、ポリウレタンフォーム1の加熱効率を向上できる。さらに、液状物10に含まれるポリオール15、アミン成分16の種類によっては、生成されたポリオール15及び/又はアミン成分16自体が分解剤13として作用して、ポリウレタンフォーム1の分解に寄与し得る。このようにして、ポリウレタンフォーム1を十分に分解することができ、安定した品質の分解物を得ることができる。
【0036】
従来、ポリウレタンフォーム1の分解処理に多用されてきた押出機又は混練機は、装置自体が比較的高価であり、また、装置内の分解物の除去が煩雑であった。他方、本実施形態の分解処理装置5は、押出機又は混練機よりも廉価で簡便な構成とすることができ、また、装置内の分解物の除去も容易である。さらに、本実施形態の分解処理装置5は、押出機のように、内容物を強制的に押し出す構成に比して、未分解のポリウレタンフォーム1が排出されにくい。このため、安定した品質の分解物を得ることができる。
【0037】
また、本実施形態の分解処理装置5は、容器30の内底面33Aよりも高い位置には、液状物10の排出口35が形成されており、容器30のうち排出口35の下端よりも低い部分が、滞留部31とされている。この構成によれば、簡易な構成で、滞留部31を構成できる。また、ポリウレタンフォーム1の分解物を排出口35から順次排出させることができ、反応の進行状況(終点)と排出のタイミングを整合させる手間が掛からない。また、容器の底に排出口が形成される構成に比して、排出口35に未分解のポリウレタンフォーム1が押し込まれにくい。このため、排出口35に未分解のポリウレタンフォーム1が詰まりにくい。
【0038】
3.実施例
(1)実施例1
(1.1)分解反応
ポリエーテル系ポリウレタンフォーム(商品名「カラーフォームECA」(イノアックコーポレーション社製)、密度25kg/m3、以下、単に「ポリウレタンフォーム」という。)を減容化した。すなわち、ポリウレタンフォームを圧縮した。圧縮状態のポリウレタンフォームを、ポリエチレンテレフタレート製の紐3Aで結束し減容状態を維持した。容器30に紐3Aで結束したポリウレタンフォームを投入した。容器30にジエタノールアミンを加え、210℃で3時間反応させた。触媒としてジアザビシクロウンデセンを用いた。実施例1において触媒は、ポリウレタンフォームを100質量部とした場合、1質量部入れた。
尚、ポリウレタンフォームとジエタノールアミンの割合は、以下のようにした(質量比)。
ポリウレタンフォーム:ジエタノールアミン=100:15(質量比)
(1.2)実験結果
圧縮状態のポリウレタンフォームを結束具(紐3A)ごと分解して液状化できた。
【0039】
(2)実施例2
(2.1)分解反応
ポリエチレンテレフタレート製の紐3Aに代えて、ポリエチレンテレフタレート製のフィルム3B(幅50mm、厚み38μm)を用いた以外は実験例1と同様に分解反応を行った。
(2.2)実験結果
圧縮状態のポリウレタンフォームを結束具(フィルム3B)ごと分解して液状化できた。
【0040】
(3)実施例3
(3.1)分解反応
ポリエチレンテレフタレート製の紐3Aに代えて、ポリアミド66製の結束バンド3C(450mm長さ×8mm幅×2mm厚み)を用いた以外は実験例1と同様に分解反応を行った。
(3.2)実験結果
結束バンド3Cの一部が分解されずに残ったが、圧縮状態のポリウレタンフォームは結束具(結束バンド3C)の大部分と共に分解して液状化できた。
【0041】
4.他の実施形態
本開示は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本開示の技術的範囲に含まれる。
(1)滞留部は、容器のうち排出口の下端よりも低い部分である構成に限定されない。例えば、排出口にバルブ等の開閉機構を設け、バルブを閉じた状態とすることで、液状物を滞留させる滞留部を構成してもよい。この場合には、必要に応じてバルブを開けて、余剰な液状物を排出すればよい。
(2)押圧部は油圧シリンダー等の手段以外にも、重りを用いてポリウレタンフォームに荷重を掛ける手段等であってもよい。また、
図7の容器130のように、押圧部21の押圧面21Aが下がる位置を規定するスペーサー138を設けてもよい。
(3)
図7の容器130のように、排出口35から未分解のポリウレタンフォームが流出することを規制する規制部137は、スクリーンで構成されてもよい。スクリーンは、未分解のポリウレタンフォームを通過させず、液状物を通過させるように構成すればよい。また、規制部を設ける代わりに、排出口の径を、ポリウレタンフォームよりも小さくすることで、未分解のポリウレタンフォームの排出を抑制してもよい。
(4)容器の形状は適宜変更可能である。例えば、底壁部は平板状に限定されず、熱伝達を上げるために突起や凹凸を設けてもよい。
(5)加熱部として、リボンヒータ等の発熱源が側壁部に接触して、さらに設けられていてもよい。
【0042】
本開示は上記で詳述した実施形態に限定されず、様々な変形又は変更が可能である。
【符号の説明】
【0043】
1 …ポリウレタンフォーム
3 …結束具
3A …紐
3B …フィルム
3C …結束バンド
5 …分解処理装置
10 …液状物
13 …分解剤
15 …ポリオール
16 …アミン成分
21 …押圧部
21A…押圧面
23 …加熱部
25…分解剤投入部
30…容器
31 …滞留部
33 …底壁部
33A…内底面
34 …側壁部
35 …排出口
36 …投入口
37 …規制部
40 …回収容器
125…分解剤投入部
130…容器
137…規制部
138…スペーサー