(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024132264
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
G03F 9/00 20060101AFI20240920BHJP
C23C 14/34 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
G03F9/00 H
C23C14/34 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023042977
(22)【出願日】2023-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】520124752
【氏名又は名称】株式会社ミライズテクノロジーズ
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平松 佳奈
(72)【発明者】
【氏名】津間 博基
【テーマコード(参考)】
2H197
4K029
【Fターム(参考)】
2H197EB08
2H197EB09
2H197EB10
2H197EB23
2H197HA03
4K029AA06
4K029AA24
4K029BA01
4K029BC03
4K029BD01
4K029CA05
4K029DC02
(57)【要約】
【課題】アライメントマークが適切に認識されるための技術を提供すること。
【解決手段】本明細書によって開示される半導体装置の製造方法は、半導体基板(10)の表面(10a)に第1溝(12)を形成する第1工程と、前記半導体基板の前記表面に電極膜(20)をスパッタリングによって成膜する第2工程であって、前記第1溝に沿って前記電極膜の表面に第2溝(24)が形成される、前記第2工程と、前記第2溝をアライメントマークとして認識する第3工程と、を備える。前記第2工程では、前記第1溝に対応する位置で前記電極膜内にボイド(22)が形成される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体装置の製造方法であって、
半導体基板(10)の表面(10a)に第1溝(12)を形成する第1工程と、
前記半導体基板の前記表面に電極膜(20)をスパッタリングによって成膜する第2工程であって、前記第1溝に沿って前記電極膜の表面に第2溝(24)が形成される、前記第2工程と、
前記第2溝をアライメントマークとして認識する第3工程と、
を備え、
前記第2工程では、前記第1溝に対応する位置で前記電極膜内にボイド(22)が形成される、製造方法。
【請求項2】
前記第2工程では、Atanθ<2B+2Cが満たされるように前記電極膜を前記スパッタリングで成膜し、
Aは前記第1溝の幅、Bは前記第1溝の高さ、Cは前記スパッタリングで成膜される前記電極膜の厚さ、θは前記スパッタリングにおいてスパッタ粒子が前記半導体基板に向けて入射する角度である、請求項1に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、アライメントマークの認識に関する技術を開示する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、N+型基板の表面にN型層が形成された半導体基板が開示されている。N+型基板の内部にはボイドが形成されている。N+型基板とN型層は透明であるので、ボイドを外部から光学的に認識することができる。当該ボイドは、アライメントマークとして用いられる。なお、一般的には、アライメントマークは、半導体基板の表面に設けられた溝によって構成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
半導体基板の表面に、金属膜を成膜する場合がある。溝によって構成されたアライメントマーク上に金属膜が形成されると、溝がなだらかになる。即ち、金属膜の表面に形成される溝は、半導体基板の表面に形成された溝よりもなだらかになる。溝がなだらかになると、アライメントマークとして認識され難くなる。
【0005】
本明細書では、アライメントマークが適切に認識されるための技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書は、半導体装置の製造方法を開示する。製造方法は、半導体基板(10)の表面(10a)に第1溝(12)を形成する第1工程と、前記半導体基板の前記表面に電極膜(20)をスパッタリングによって成膜する第2工程であって、前記第1溝に沿って前記電極膜の表面に第2溝(24)が形成される、前記第2工程と、前記第2溝をアライメントマークとして認識する第3工程と、を備える。前記第2工程では、前記第1溝に対応する位置で前記電極膜内にボイド(22)が形成される。
【0007】
上記の構成によると、半導体基板の表面に電極膜をスパッタリングによって成膜する際に、第1溝に対応する位置で電極膜内にボイドが形成される。その後、さらに電極膜をスパッタリングによって成膜すると、第1溝に沿って電極膜の表面に第2溝が形成される。半導体基板の表面上に成膜された金属膜の側面からも金属膜が成長するので、電極膜内にボイドが形成されるときには、電極膜の表面に形成される第2溝がなだらかになることが抑制される。従って、アライメントマークが適切に認識される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図2】マスク膜形成工程を説明するための図である。
【
図3】レジスト膜形成工程を説明するための図である。
【
図4】マスク膜エッチング工程を説明するための図である。
【
図5】半導体基板エッチング工程を説明するための図である。
【
図7】金属膜成膜工程の開始時の状態を示す図である。
【
図8】スパッタリングの途中の状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本技術の一実施形態では、前記第2工程では、Atanθ<2B+2Cが満たされるように前記電極膜を前記スパッタリングで成膜してもよい。Aは前記第1溝の幅、Bは前記第1溝の高さ、Cは前記スパッタリングで成膜される前記電極膜の厚さ、θは前記スパッタリングにおいてスパッタ粒子が前記半導体基板に向けて入射する角度である。この構成により、第1溝に対応する位置で電極膜内にボイドが形成される。
【0010】
(実施例)
図1は、半導体装置2の一部の断面図を示す。半導体装置2は、半導体基板10と、金属膜20とを備える。半導体基板10は、例えば、炭化シリコン(SiC)、シリコン(Si)、窒化ガリウム(GaN)等によって構成されている。金属膜20は、例えば、アルミニウムシリコン合金(AlSi)、チタン(Ti)、モリブデン(Mo)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、タングステン(W)、銅(Cu)、金(Au)等によって構成されている。金属膜20は、半導体装置2の電極として利用される。なお、
図1では図示省略しているが、半導体装置2には、半導体素子を構成する素子構造(例えばイオン注入領域)等が形成されている。
【0011】
半導体基板10の表面10aには、複数の第1溝12が形成されている。第1溝12は、金属膜20によって覆われている。金属膜20の内部には、ボイド22が存在している。ボイド22は、第1溝12の上部に配置されている。金属膜20の表面であってボイド22の上部には、第2溝24が形成されている。複数の第2溝24によって、アライメントマークが構成される。
【0012】
続いて、半導体装置2の製造方法について説明する。半導体装置2の製造方法は、アライメントマークを形成する工程を有する。アライメントマークを形成する工程は、マスク膜形成工程、レジスト膜形成工程、マスク膜エッチング工程、半導体基板エッチング工程、マスク膜除去工程及び金属膜成膜工程を有する。
【0013】
マスク膜形成工程では、
図2に示されるように、半導体基板10の表面にマスク膜30を形成する。マスク膜30は、例えばCVD(Chemical Vapor Deposition)等によって形成される。本実施例のマスク膜30は、酸化シリコン(SiO
2)によって形成される。なお、変形例では、酸化シリコンに代えて、レジストを用いてマスク膜30を形成してもよい。
【0014】
レジスト膜形成工程では、
図3に示されるように、マスク膜30の上にレジスト膜40を形成する。レジスト膜40は開口部42を有する。本実施例のレジスト膜40は、フォトリソグラフィによって形成される。具体的には、まず、マスク膜30の上に、開口部42を有さないレジスト膜40が形成される。次いで、マスク(図示省略)を使用して、レジスト膜40の一部に光を照射して、レジスト膜40を露光する。そして、現像液を使用して、レジスト膜40の露光された箇所を除去することによって、開口部42を有するレジスト膜40が形成される。
【0015】
マスク膜エッチング工程では、
図4に示されるように、マスク膜30をエッチングして、マスク膜30に開口部32を形成する。開口部32を形成する際には、レジスト膜40がマスクとして使用される。即ち、マスク膜30の開口部32は、レジスト膜40の開口部42の直下に形成される。開口部32の形成後に、レジスト膜40を除去する。
【0016】
半導体基板エッチング工程では、
図5に示されるように、半導体基板10をエッチングして、半導体基板10に第1溝12を形成する。第1溝12を形成する際には、マスク膜30がマスクとして使用される。即ち、第1溝12は、マスク膜30の開口部32の直下に形成される。半導体基板エッチング工程が、「第1工程」の一例である。第1溝12の形成後に、マスク膜30を除去する。
【0017】
金属膜成膜工程では、
図6に示されるように、スパッタリングによって、半導体基板10の表面に金属膜20を成膜する。スパッタリングでは、スパッタ粒子Pが半導体基板10に向かって角度θで入射することによって、金属膜20が成膜される。ここでは、第1溝12の幅A、第1溝12の深さB及び金属膜20の厚さCが、関係式Atanθ<2B+2Cを満たすように金属膜20が形成される。上記の関係式が満たされている場合、金属膜20の内部にボイド22が形成される。ボイド22が形成される条件については、後述する。また、金属膜20の表面には、ボイド22の上側に第2溝24が形成される。金属膜20の表面に形成された複数の第2溝24によって、アライメントマークが形成される。金属膜成膜工程が、「第2工程」の一例である。また、金属膜20が、「電極膜」の一例である。
【0018】
その後、複数の第2溝24をアライメントマークとして利用して、半導体基板10に対する加工(例えば、金属膜20のエッチング等)を行う。これにより、半導体装置2が完成する。この工程が、「第3工程」の一例である。
【0019】
続いて、金属膜20内にボイド22が形成される条件について説明する。
【0020】
図7は、金属膜成膜工程の開始時の状態を示している。
図7の破線矢印は、ターゲットから射出されたスパッタ粒子Pを示す。スパッタ粒子Pは、半導体基板10に対して角度θで入射する。なお、
図7では、右側から角度θで入射される粒子Pと、左側から角度θで入射される粒子Pとが示されている。このとき、
図7の破線矢印に示されるように、右側から入射される粒子Pは、第1溝12の右上の角部によって遮蔽されるので、第1溝12の底面の右側端部90には到達しない。同様に、左側から入射される粒子Pは、第1溝12の左上の角部によって遮蔽されるので、第1溝12の底面の左側端部92には到達しない。従って、第1溝12の底面の中央部94には、右側から入射する粒子P及び左側から入射する粒子Pの双方が到達する。
【0021】
図8は、スパッタリングの途中の状態を示している。スパッタリングが進んで金属膜20の厚さCが増加すると、表面10a上に成膜された金属膜20の側面からも金属膜20が成長するようになる。このため、第1溝12の上部に、金属膜20のオーバーハング部20aが形成される。なお、図面左側の金属膜20の側面には右側から入射するスパッタ粒子Pが到達するので、左側のオーバーハング部20aは入射角度θによって画定される三角形の形状になる。また、図面右側の金属膜20の側面には左側から入射するスパッタ粒子Pが到達するので、右側のオーバーハング部20aは入射角度θによって画定される三角形の形状になる。この結果、
図8に示されるように、金属膜20の表面では、オーバーハング部20aの間の間隔Fが、第1溝12の幅Aよりも狭くなる。
【0022】
オーバーハング部20aの間の間隔の幅をFとし、オーバーハング部20aの上端部の幅をDとすると、F=A-2Dが満たされる。また、D=C/tanθが満たされる。したがって、F=A-2C/tanθが満たされる。
【0023】
他方、オーバーハング部20aによって遮蔽されるので、第1溝12内に形成された金属膜20の表面においてスパッタ粒子Pが到達できない領域が形成される。例えば、
図8において、右側のオーバーハング部20a近傍の領域96には、右側から入射するスパッタ粒子Pが到達しない。領域96の幅Eは、E=B/tanθを満たす。同様に、左側のオーバーハング部20a近傍には、左から入射するスパッタ粒子Pが到達しない領域が形成され、この領域の幅EもE=B/tanθを満たす。したがって、F<2Eの場合に、第1溝12内に形成された金属膜20の表面の中央部において、左右から入射するスパッタ粒子Pのいずれもが到達できなくなり、金属膜20が成長しなくなる。このように、金属膜20が成長しない領域が発生すると、その後に金属膜20が成長したときに左右のオーバーハング部20aどうしが繋がって間隔Fが塞がれ、その下部にボイド22が形成される。すなわち、F<2Eの条件、言い換えると、Atanθ<2B+2C(以下、数式1という)の条件が満たされれば、金属膜20内にボイド22が形成される。
【0024】
上記のように、ボイド22が形成されるときには、左右のオーバーハング部20aどうしが繋がる。このため、
図1に示すように、金属膜20の表面にV字状の溝が形成される。
【0025】
図9は、比較例として、幅が広い第1溝12上に金属膜20を形成した場合を示している。第1溝12の幅が広い場合には、上記数式1が満たされることがないので、金属膜20内にボイド22が形成されない。このため、金属膜20の表面に形成される第2溝24の側面と底面がなだらかに接続される。このように第2溝24がなだらかな場合、第2溝24をアライメントマークとして認識することができない。これに対し、
図1に示すように、実施形態の第2溝24はV字状の断面を有するので、アライメントマークとして容易に認識することができる。
【0026】
以上、本明細書が開示する技術の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。本明細書または図面に説明した技術要素は、単独で、あるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0027】
2:半導体装置、10:半導体基板、10a:表面、12:第1溝、20:金属膜、20a:オーバーハング部、22:ボイド、24:第2溝、30:マスク膜、32,42:開口部、40:レジスト膜、90:右側端部、92:左側端部、94:中央部、96:領域