(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024132266
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】ワイヤー連結具
(51)【国際特許分類】
F16G 11/04 20060101AFI20240920BHJP
F16G 11/10 20060101ALI20240920BHJP
E04H 17/10 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
F16G11/04 A
F16G11/10 A
F16G11/10 B
E04H17/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023042980
(22)【出願日】2023-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】391001239
【氏名又は名称】浅野金属工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091373
【弁理士】
【氏名又は名称】吉井 剛
(72)【発明者】
【氏名】浅野 良喜
【テーマコード(参考)】
2E142
【Fターム(参考)】
2E142BB01
2E142HH13
2E142MM01
(57)【要約】
【課題】本発明は、従来に無い非常に実用的なワイヤー連結具を提供することを目的とする。
【解決手段】対向する被取付部60間にワイヤー50を張設する際に使用され、前記被取付部60に前記ワイヤー50の端部を連結するためのワイヤー連結具であって、前記ワイヤー50の端部に設けられ前記ワイヤー50を挿通する挿通孔2aを有する筒状ケース本体2と、この筒状ケース本体2内にスライド自在に設けられ前記挿通孔2aから挿通した前記ワイヤー50を連結するワイヤー連結体3と、前記ワイヤー連結体3と前記筒状ケース本体2の先端開口壁部2Aとの間で支承され、前記ワイヤー50が貫挿する付勢体10とを有するものである。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向する被取付部間にワイヤーを張設する際に使用され、前記被取付部に前記ワイヤーの端部を連結するためのワイヤー連結具であって、前記ワイヤーの端部に設けられ前記ワイヤーを挿通する挿通孔を有する筒状ケース本体と、この筒状ケース本体内にスライド自在に設けられ前記挿通孔から挿通した前記ワイヤーを連結するワイヤー連結体と、前記ワイヤー連結体と前記筒状ケース本体の先端開口壁部との間で支承され、前記ワイヤーが貫挿する付勢体とを有し、前記ワイヤー連結体は、前記ワイヤーが挿通可能であり周壁に貫通孔が設けられた内筒と、前記貫通孔に内外移動自在に設けられ一部が内側開口部から突状態となることで前記内筒に挿通した前記ワイヤーに圧接して該ワイヤーを抜け止め固定するワイヤー固定部材と、前記内筒に相対スライド自在に被嵌され前記ワイヤー固定部材の外方への移動を阻止する外筒とを有する構成であり、前記付勢体により前記筒状ケース本体の前記先端開口壁部に前記ワイヤー連結体の先端が当接しないように構成されていることを特徴とするワイヤー連結具。
【請求項2】
対向する被取付部間にワイヤーを張設する際に使用され、前記ワイヤーの両端部に設けられるもので前記被取付部夫々に該ワイヤーの両端部を連結するためのワイヤー連結具であって、前記ワイヤーの端部に設けられ前記ワイヤーを挿通する挿通孔を有する筒状ケース本体と、この各筒状ケース本体内にスライド自在に設けられ前記挿通孔から挿通した前記ワイヤーを連結するワイヤー連結体と、前記ワイヤー連結体と前記筒状ケース本体の先端開口壁部との間で支承され、前記ワイヤーが貫挿する付勢体とを有し、前記ワイヤー連結体は、前記ワイヤーが挿通可能であり周壁に貫通孔が設けられた内筒と、前記貫通孔に内外移動自在に設けられ一部が内側開口部から突状態となることで前記内筒に挿通した前記ワイヤーに圧接して該ワイヤーを抜け止め固定するワイヤー固定部材と、前記内筒に相対スライド自在に被嵌され前記ワイヤー固定部材の外方への移動を阻止する外筒とを有する構成であり、前記付勢体により前記筒状ケース本体の前記先端開口壁部に前記ワイヤー連結体の先端が当接しないように構成されていることを特徴とするワイヤー連結具。
【請求項3】
請求項1,2いずれか1項に記載のワイヤー連結具において、前記外筒の基端部には蓋体が設けられ、この蓋体と前記内筒との間には、前記外筒に対して基端方向へスライドさせた前記内筒を先端方向へ戻り付勢する戻り付勢体が設けられていることを特徴とするワイヤー連結具。
【請求項4】
請求項1,2いずれか1項に記載のワイヤー連結具において、前記ワイヤー固定部材は、前記貫通孔の外側開口部から一部が突状態となり、この突状態となる部位が前記外筒の内面に当接して外方への移動が阻止される構成であり、前記外筒の内面には先端側程径小となるテーパー面部が設けられ、前記外筒に対して前記内筒をスライドさせることで前記ワイヤー固定部材を前記テーパー面部の基端側方向に移動させた場合に、該ワイヤー固定部材の外方への移動が許容されるように構成されていることを特徴とするワイヤー連結具。
【請求項5】
請求項3記載のワイヤー連結具において、前記ワイヤー固定部材は、前記貫通孔の外側開口部から一部が突状態となり、この突状態となる部位が前記外筒の内面に当接して外方への移動が阻止される構成であり、前記外筒の内面には先端側程径小となるテーパー面部が設けられ、前記外筒に対して前記内筒をスライドさせることで前記ワイヤー固定部材を前記テーパー面部の基端側方向に移動させた場合に、該ワイヤー固定部材の外方への移動が許容されるように構成されていることを特徴とするワイヤー連結具。
【請求項6】
請求項1,2いずれか1項に記載のワイヤー連結具において、前記ワイヤー固定部材は、球体や円柱体などの転動体であることを特徴とするワイヤー連結具。
【請求項7】
請求項3記載のワイヤー連結具において、前記ワイヤー固定部材は、球体や円柱体などの転動体であることを特徴とするワイヤー連結具。
【請求項8】
請求項4記載のワイヤー連結具において、前記ワイヤー固定部材は、球体や円柱体などの転動体であることを特徴とするワイヤー連結具。
【請求項9】
請求項5記載のワイヤー連結具において、前記ワイヤー固定部材は、球体や円柱体などの転動体であることを特徴とするワイヤー連結具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤー連結具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
本出願人は、手すりや柵などの支柱や壁(対向する被取付部)の間にワイヤーを張設する際に使用するものとして、特許文献1に開示されるワイヤー張設具(以下、「従来例」と言う。)を提案している。
【0003】
この従来例は、一方の被取付部に設けるワイヤー挟持部と他方の被取付部に設けるワイヤー固定部とで構成されている。
【0004】
具体的には、ワイヤー挟持部は、一方の被取付部に設けた取付螺子部に螺着する取付ベース部と、この取付ベース部の外周に設けた外周螺子部に螺着するケース部と、このケース部の先端孔からケース部内に挿通するワイヤーの挿通先端部に、挿通後被嵌する複数の可動爪から成る可動爪管とから成り、取付ベース部の先端部に突き当たり受部を設け、ケース部の挿通部を先細り形状にしてこの挿通部内面にテーパー面を形成し、ケース部を取付ベース部の外周螺子部に被嵌螺着して取付部側へ螺動することで、可動爪管の基端が突き当たり受部に突き当たり先端孔側へ相対移動しテーパー面によって各可動爪が内方へ可動することでワイヤーを締め付け、このワイヤーが引き抜き不能状態に固定されるように構成されたものである。
【0005】
一方、ワイヤー固定部は、ワイヤーの基端部に設ける抜け止め部と、この抜け止め部に当接しこの抜け止め部を押圧付勢してワイヤーに張りを持たせ得るバネ部と、このバネ部の他端が当接しワイヤーが挿通する挿通孔を有するバネ当接部と、抜け止め部、バネ部及びバネ当接部を収納する反対側ケース部とから成り、基端部に抜け止め部を設けたワイヤーをバネ部に貫通状態に挿通し、バネ部の他端が当接するバネ当接部を反対側ケース部の内側先端部に設け、この反対側ケース部に設けたバネ当接部にワイヤーを貫通状態に挿通して、ワイヤーを反対側ケース部より挿通突出する構成とし、バネ当接部を、反対側ケース部の内側先端部に進退自在に設け、このバネ当接部の進退移動により反対側ケース部より挿通突出するワイヤーの長さを調整し得る構成としたものである。
【0006】
以上の構成から、従来例は、それまで提案されていた連結構造(例えばフックによる連結構造)に比し、被取付部にワイヤーの両端部を堅固に連結でき、しかも、ワイヤー固定部に設けたバネ部の付勢により、使用時においてワイヤーに作用する引き抜き力を吸収して良好な張設状態を維持することができ、更に、各パーツがケース部に収納されたシンプルなデザインであり体裁も良い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、従来例は、前述したワイヤー固定部を構成する抜け止め部におけるワイヤーへの連結は、この円筒状の抜け止め部をワイヤーの端部に被嵌した状態で加締め固定して行われるものであり、この連結作業は、施工現場とは別の製造工場において専用の加締め固定装置を用いて行われる。
【0009】
従って、従来例を用いる場合、予め製造工場において、設置箇所に対応した長さにワイヤーを切断し、この切断したワイヤーの端部に抜け止め部を加締め固定装置にて連結し、この抜け止め部付きのワイヤーを必要な量だけ用意して施工現場に搬送し、施工することになるが、この施工現場とは別の製造工場におけるワイヤーの加工作業と、この加工済みワイヤーの施工現場までの搬送作業が必要であり、これが工期全体の遅延の原因となってしまう場合がある。
【0010】
また、実際に施工してみてワイヤーの長さが足りない場合もあり、これに対応すべく、ワイヤーの長さを長め目に切断しておくこともあるが、それだけワイヤーの無駄が生じてしまう。
【0011】
本発明は、前述した問題点に鑑みてなされたものであり、従来に無い非常に実用的なワイヤー連結具を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
添付図面を参照して本発明の要旨を説明する。
【0013】
対向する被取付部60間にワイヤー50を張設する際に使用され、前記被取付部60に前記ワイヤー50の端部を連結するためのワイヤー連結具であって、前記ワイヤー50の端部に設けられ前記ワイヤー50を挿通する挿通孔2aを有する筒状ケース本体2と、この筒状ケース本体2内にスライド自在に設けられ前記挿通孔2aから挿通した前記ワイヤー50を連結するワイヤー連結体3と、前記ワイヤー連結体3と前記筒状ケース本体2の先端開口壁部2Aとの間で支承され、前記ワイヤー50が貫挿する付勢体10とを有し、前記ワイヤー連結体3は、前記ワイヤー50が挿通可能であり周壁に貫通孔4bが設けられた内筒4と、前記貫通孔4bに内外移動自在に設けられ一部が内側開口部4b’から突状態となることで前記内筒4に挿通した前記ワイヤー50に圧接して該ワイヤー50を抜け止め固定するワイヤー固定部材6と、前記内筒4に相対スライド自在に被嵌され前記ワイヤー固定部材6の外方への移動を阻止する外筒5とを有する構成であり、前記付勢体10により前記筒状ケース本体2の前記先端開口壁部2Aに前記ワイヤー連結体3の先端が当接しないように構成されていることを特徴とするワイヤー連結具に係るものである。
【0014】
また、対向する被取付部60間にワイヤー50を張設する際に使用され、前記ワイヤー50の両端部に設けられるもので前記被取付部60夫々に該ワイヤー50の両端部を連結するためのワイヤー連結具であって、前記ワイヤー50の端部に設けられ前記ワイヤー50を挿通する挿通孔2aを有する筒状ケース本体2と、この各筒状ケース本体2内にスライド自在に設けられ前記挿通孔2aから挿通した前記ワイヤー50を連結するワイヤー連結体3と、前記ワイヤー連結体3と前記筒状ケース本体2の先端開口壁部2Aとの間で支承され、前記ワイヤー50が貫挿する付勢体10とを有し、前記ワイヤー連結体3は、前記ワイヤー50が挿通可能であり周壁に貫通孔4bが設けられた内筒4と、前記貫通孔4bに内外移動自在に設けられ一部が内側開口部4b’から突状態となることで前記内筒4に挿通した前記ワイヤー50に圧接して該ワイヤー50を抜け止め固定するワイヤー固定部材6と、前記内筒4に相対スライド自在に被嵌され前記ワイヤー固定部材6の外方への移動を阻止する外筒5とを有する構成であり、前記付勢体10により前記筒状ケース本体2の前記先端開口壁部2Aに前記ワイヤー連結体3の先端が当接しないように構成されていることを特徴とするワイヤー連結具に係るものである。
【0015】
また、請求項1,2いずれか1項に記載のワイヤー連結具において、前記外筒5の基端部には蓋体5’が設けられ、この蓋体5’と前記内筒4との間には、前記外筒5に対して基端方向へスライドさせた前記内筒4を先端方向へ戻り付勢する戻り付勢体9が設けられていることを特徴とするワイヤー連結具に係るものである。
【0016】
また、請求項1,2いずれか1項に記載のワイヤー連結具において、前記ワイヤー固定部材6は、前記貫通孔4bの外側開口部4b”から一部が突状態となり、この突状態となる部位が前記外筒5の内面に当接して外方への移動が阻止される構成であり、前記外筒5の内面には先端側程径小となるテーパー面部5aが設けられ、前記外筒5に対して前記内筒4をスライドさせることで前記ワイヤー固定部材6を前記テーパー面部5aの基端側方向に移動させた場合に、該ワイヤー固定部材6の外方への移動が許容されるように構成されていることを特徴とするワイヤー連結具に係るものである。
【0017】
また、請求項3記載のワイヤー連結具において、前記ワイヤー固定部材6は、前記貫通孔4bの外側開口部4b”から一部が突状態となり、この突状態となる部位が前記外筒5の内面に当接して外方への移動が阻止される構成であり、前記外筒5の内面には先端側程径小となるテーパー面部5aが設けられ、前記外筒5に対して前記内筒4をスライドさせることで前記ワイヤー固定部材6を前記テーパー面部5aの基端側方向に移動させた場合に、該ワイヤー固定部材6の外方への移動が許容されるように構成されていることを特徴とするワイヤー連結具に係るものである。
【0018】
また、請求項1,2いずれか1項に記載のワイヤー連結具において、前記ワイヤー固定部材6は、球体や円柱体などの転動体であることを特徴とするワイヤー連結具に係るものである。
【0019】
また、請求項3記載のワイヤー連結具において、前記ワイヤー固定部材6は、球体や円柱体などの転動体であることを特徴とするワイヤー連結具に係るものである。
【0020】
また、請求項4記載のワイヤー連結具において、前記ワイヤー固定部材6は、球体や円柱体などの転動体であることを特徴とするワイヤー連結具に係るものである。
【0021】
また、請求項5記載のワイヤー連結具において、前記ワイヤー固定部材6は、球体や円柱体などの転動体であることを特徴とするワイヤー連結具に係るものである。
【発明の効果】
【0022】
本発明は上述のように構成したから、前述した従来例で生じる問題点、即ち、工期全体の遅延の原因を有する点や、ワイヤーに無駄が生じる点を解消することができ、しかも、被取付部に対するワイヤーの連結及び取り外しが極めて簡易に行え、そして更に、ワイヤーにおける強い引き抜き力が作用した際に懸念される破損を防止できるなど、従来に無い非常に実用的なワイヤー連結具となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図3】本実施例の要部を説明する分解斜視図である。
【
図6】本実施例の取付状態を示す説明断面図である。
【
図7】本実施例の取付状態を示す説明断面図である。
【
図8】本実施例の取付状態を示す説明断面図である。
【
図9】本実施例の取付状態を示す説明断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
好適と考える本発明の実施形態を、図面に基づいて本発明の作用を示して簡単に説明する。
【0025】
被取付部60間にワイヤー50を張設するに際し、本発明に係るワイヤー連結具を用いて被取付部60へワイヤー50の端部を連結する場合、例えば、被取付部60に筒状ケース本体2を取り付け、この状態で筒状ケース本体2の挿通孔2aへワイヤー50を挿通してそのまま奥へワイヤー50を差し込むと、ワイヤー50はワイヤー連結体3に連結される。
【0026】
具体的には、ワイヤー50をワイヤー連結体3の内筒4へ挿通すると、この内筒4が外筒5に対してスライドし、ワイヤー固定部材6が貫通孔4b’の外方向へ移動し、ワイヤー50の挿通が許容され、ワイヤー50は適宜な位置まで挿通され該ワイヤー50はワイヤー固定部材6により固定される。この状態で、挿通したワイヤー50に引き抜き力が作用すると、内筒4は外筒5に対して先端方向にスライドし、ワイヤー固定部材6が更に貫通孔4b’の内方向へ移動し、ワイヤー固定部材6における内筒4の貫通孔4bからの突量が多くなり、それだけワイヤー固定部材6がワイヤー50に圧接し、ワイヤー50は堅固に抜け止め固定される。この際、ワイヤー固定部材6は外筒5により外方への移動が阻止される為、ワイヤー50の抜け止め固定は維持される。
【0027】
一方、ワイヤー連結体3からワイヤー50を取り外す場合、例えば、被取付部60から筒状ケース本体2を取り外し、この状態で内筒4を外筒5に対して押し込みスライドさせると、ワイヤー固定部材6の外方への移動が許容されてワイヤー50に対するワイヤー固定部材6の抜け止め固定が解除され、この状態でワイヤー50をワイヤー連結体3(内筒4)から引き抜くことができる。
【0028】
従って、本発明は、例えば施工現場へ切断加工前のワイヤー50を持ち込み、このワイヤー50を施工現場にて最適な長さに切断して張設するという施工箇所の条件に対応した柔軟な施工が行えることになり、前述した従来例で必要とされていた製造工場でのワイヤーの加工作業及び製造工場から施工現場への加工済みワイヤーの搬送作業が不要となり、よって、工期の遅延の原因を解消することができる。
【0029】
また、本発明は、前述したように被取付部60に対するワイヤー50の連結が、ワイヤー50の差し込み操作だけで完了するから極めて簡易であり、一方、被取付部60に連結されたワイヤー50の取り外しは、内筒4をスライド操作してワイヤー50を引き抜くだけで完了するから極めて簡易であり、よって、極めて迅速な施工が可能となる。
【0030】
ところで、前述した構造のワイヤー連結体3を具備するにあたり、仮に筒状ケース本体2の先端開口壁部2Aにワイヤー連結体3の先端が当接する構造であった場合、ワイヤー50に強い引き抜き力が作用した際、この両者の当接部位にてワイヤー50の引き抜き力を直接受けることになるが、この衝撃によりワイヤー50に対するワイヤー固定部材6の固定位置がずれて、ワイヤー50が弛んだ状態となってしまうという問題や、上記の当接部位が破損するなどの問題が生じてしまう。
【0031】
そこで、本発明は、ワイヤー連結体3を筒状ケース本体2内にスライド自在に設けると共に、ワイヤー連結体3と筒状ケース本体2の先端開口壁部2Aとの間で支承され、ワイヤー50が貫挿する付勢体10を有し、この付勢体10により筒状ケース本体2の先端開口壁部2Aにワイヤー連結体3の先端が当接しないように構成することにより、ワイヤー50に強い引き抜き力が作用しても、この強い引き抜き力を吸収してワイヤー50に対するワイヤー固定部材6の固定位置がずれることは無く良好な張設状態を維持でき、しかも、筒状ケース本体2やワイヤー連結体3の破損を防止することができる。
【0032】
また、本発明は、例えば、ワイヤー50の両端部に設けられて対向する被取付部60夫々に該ワイヤー50の両端部を連結する使用形態が可能であり、この場合、ワイヤー50の張設が簡易且つ迅速に行え、また、ワイヤー50に対する連結や取り外しが簡易であるなどの前述した作用効果をより効果的に享受することができ、しかも、前述した従来例において、片側一方の被取付部60に取り付けられるワイヤー固定部(バネ部)が担っていた機能(使用時においてワイヤー50に作用する引き抜き力を吸収して良好な張設状態を維持する機能)を左右に振り分けた状態とすることができ、更に、ワイヤー50に作用する引き抜き力を左右バランスよく吸収することができ、そして、筒状ケース本体2に収納する付勢構造として小型の付勢体10を採用できるから、ワイヤー連結具自体を小型軽量化することができることになる。
【0033】
また、付勢体10は、筒状ケース本体2内に収納されることで、雨水や生物(例えば鳥)の糞尿などに触れることがなく、腐食などの劣化が抑止される為、この点においても良好な張設状態を維持できる。
【実施例0034】
本発明の具体的な実施例について図面に基づいて説明する。
【0035】
本実施例は、対向する被取付部60間にワイヤー50を張設する際に使用され、被取付部60にワイヤー50の端部を連結するためのワイヤー連結具Xである。
【0036】
具体的には、本実施例は、ワイヤー50の端部に設けられ、ワイヤー50を挿通する挿通孔2aを有する筒状ケース本体2と、この筒状ケース本体2内にスライド自在に抜け止め状態で設けられ挿通孔2aから挿通したワイヤー50を連結するワイヤー連結体3と、ワイヤー連結体3と筒状ケース本体2の先端開口壁部2Aとの間で支承され、ワイヤー50が貫挿する付勢体10とを有している。
【0037】
筒状ケース本体2は、
図2に図示したように適宜な金属製の部材で形成した細長筒状体であり、先端部には中央にワイヤー50を挿通する挿通孔2aを有する先端開口壁部2Aが設けられ、基端部には後述する連結部材11を介して被取付部60に取り付ける取付部2B(取り付け開口部)が設けられている。
【0038】
先端開口壁部2Aは、筒状ケース本体2の先端部に設けられた閉塞壁中央位置に円形の挿通孔2aを形成して構成されており、その内壁面2a’にして挿通孔2aの周囲は後述する付勢体10の一端部を支承する支承面として構成されている。
【0039】
取付部2Bは、基端が開口する筒状ケース本体2の筒孔基端側部位に螺子溝2bを設けて構成された雌螺子部であり、連結部材11の雄螺子部(第一雄螺子部11a及び第二雄螺子部11b)に被嵌螺着するように構成されている。
【0040】
連結部材11は、
図1,2,6に図示したように適宜な金属製の部材で形成したネジ軸部材であり、ネジ軸11’の両端部に前述した筒状ケース本体2の取付部2B(雌螺子部)を被嵌螺着する雄螺子部11a,11bを設けたものである。
【0041】
具体的には、一端部に径大の第一雄螺子部11aを有し周面に螺子溝が形成されたネジ軸11’と、このネジ軸11’の他端部に被嵌螺着され第一雄螺子部11aと同一径の第二雄螺子部11bとで構成されている。
【0042】
従って、連結部材11は、被取付部60に設けた取付孔60aの一側からネジ軸11’を挿通し、このネジ軸11’における他側から突出した部位に第二雄螺子部11bを被嵌螺着することで、被取付部60に対して止着することができ、この被取付部60の表裏面に突出する第一雄螺子部11a及び第二雄螺子部11bを利用して該被取付部60にワイヤー連結体3を取り付けることができる。
【0043】
符号12は使用しない螺子部に被嵌螺着される袋ナットである。
【0044】
ワイヤー連結体3は、ワイヤー50が挿通可能であり周壁に貫通孔4bが設けられた内筒4と、貫通孔4bに設けられるワイヤー固定部材6と、内筒4に相対スライド自在に被嵌される外筒5と、外筒5内に配され蓋体7と内筒4との間に配される戻り付勢体9とを有するものである。
【0045】
内筒4は、
図3~5に図示したように適宜な金属製の部材で形成した円形筒状体であり、ワイヤー50を先端開口部4aから挿通して貫通可能に構成されている。
【0046】
また、内筒4の周壁には、周方向の等間隔の位置に3つの貫通孔4bが設けられ、この各貫通孔4bには、後述する球状のワイヤー固定部材6が内外移動自在にして自転自在に設けられ、この貫通孔4bの内側開口部4b’は、ワイヤー固定部材6が筒孔内に抜け落ちず係止して所定量だけ一部が突状態となる開口径に設定され、一方、貫通孔4bの外側開口部4b”は、ワイヤー固定部材6が出し入れ自在となる開口径に設定されている。
【0047】
また、内筒4の基端部には、金属製のコイルバネから成る戻り付勢体9を支承する付勢体支承部4cが設けられている。
【0048】
この付勢体支承部4cは、周面に突出する鍔状部4c’とこの鍔状部4c’の後方に突出する径小の筒状部4c”とから成り、この筒状部4c”に被嵌した戻り付勢体9の端部を鍔状部4c’で受けて当該戻り付勢体9を支承するように構成されている。
【0049】
また、内筒4の先端部は、その外形寸法が付勢体10(コイルバネ)の内方に嵌挿可能な径に設定されている。
【0050】
外筒5は、
図3~5に図示したように適宜な金属製の部材で形成した円形筒状体であり、筒孔の径は前述した内筒4に相対スライド自在に被嵌する径に設定され、外径は筒状ケース本体2内に相対スライド自在に嵌挿する径に設定されている。
【0051】
また、外筒5の先端開口部5bは、筒体4の先端部が突出するように構成されており、この外筒5の先端開口部5bから突出する内筒4の先端部は、内筒4に挿通したワイヤー50を引き抜く際に該内筒4を外筒5に対してスライドさせるべく押し込み操作する部位として用いられる。
【0052】
また、外筒5は、先端部位の内面に先端側程径小となるテーパー面部5aが設けられている。
【0053】
このテーパー面部5aの先端部は、内筒4の鍔状部4c’の外径よりも径小に設けられ、このテーパー面部5aに鍔状部4c’が当接係止することで内筒4は外筒5の先端開口部5bから抜け止め状態となるように構成されている。
【0054】
また、テーパー面部5aは、内筒4の貫通孔4bの外側開口部4b”から突出するワイヤー固定部材6に当接し、該ワイヤー固定部材6の外方向への移動を規制するように構成されている。
【0055】
具体的には、ワイヤー固定部材6がテーパー面部5aの先端側に位置するほど、ワイヤー固定部材6が貫通孔4bの内側開口部4b’から大きく突出した状態で支承されるように構成され、一方、外筒5に対して内筒4を基端側方向にスライドさせてワイヤー固定部材6がテーパー面部5aの基端側に位置するほど、ワイヤー固定部材6の外方への移動が許容されて、ワイヤー固定部材6における貫通孔4bの内側開口部4b’からの突出量が低減可能な状態となる。つまり、外筒5に対する内筒4のスライド位置に応じてワイヤー固定部材6の突出量が可変可能となる。
【0056】
また、外筒5は、基端部に蓋体5’が設けられており、この蓋体5’の内面は、前述した内筒4の付勢体支承部4cにより先端部が支承される戻り付勢体9の基端部を支承するように構成されている。
【0057】
従って、内筒4の先端部を押し操作すると、内筒4は戻り付勢体9の付勢に抗して外筒5に対して基端側方向にスライド移動することになり、押し操作を解除すると内筒4は戻り付勢体9の戻り付勢により先端側方向にスライドして元の位置へ戻ることになる。
【0058】
また、蓋体5’の中央位置にはワイヤー50を貫挿する孔が設けられている。
【0059】
従って、ワイヤー連結体3に対してワイヤー5を貫通させることができ、ワイヤー5の任意の位置でワイヤー連結体3を固定することができる。
【0060】
ワイヤー固定部材6は、
図3に図示したように適宜な金属製の部材で形成した球体であり、内筒4の周壁の肉厚(貫通孔4bの長さ)よりも大きな径に設定され、貫通孔4b内を内外移動自在にして回転自在に設けられている。
【0061】
尚、ワイヤー固定部材は、球体に限らず、円柱体や円盤体などテーパー面部5aを円滑に転動する構造であれば良いが、その他の形状の物でも良い。
【0062】
また、外筒5の先端面にして先端開口部5bの周囲は、付勢体10の基端部を支承する支承面として構成されている。
【0063】
以下、ワイヤー連結体3にワイヤー50を連結する際の動作を説明する。
【0064】
先ず、ワイヤー50をワイヤー連結体3の内筒4(先端開口部4a)へ挿通すると、ワイヤー50がワイヤー固定部材6を押すことで内筒4が外筒5に対して基端側方向にスライドし、ワイヤー固定部材6がテーパー面部5aを転動しながら徐々に貫通孔4b’の外方向へ移動することでワイヤー50の挿通が許容され、ワイヤー50は適宜な位置まで挿通可能となり、内筒4が戻り付勢体9によって先端側方向に付勢されていることもあり、ワイヤー固定部材6がワイヤー50に圧接して固定状態(仮固定状態)となる(
図4中(a),(b)参照)。この状態で、挿通したワイヤー50に引き抜き力が作用すると、内筒4は先端側方向(戻り方向)にスライドし、ワイヤー固定部材6が更に貫通孔4bの内側方向へ移動し、ワイヤー固定部材6における内筒4の貫通孔4bからの突量が多くなり、それだけ、ワイヤー固定部材6がワイヤー50に圧接し、ワイヤー50は堅固に抜け止め固定される。この際、ワイヤー固定部材6は外筒5により外方への移動が阻止される為、ワイヤー50の抜け止め固定は維持される(
図4中(c)参照)。
【0065】
一方、ワイヤー連結体3からワイヤー50を取り外す場合、筒体4の先端部を押し操作して外筒5に対して基端側方向にスライドさせると(
図5中(a),(b)参照)、ワイヤー固定部材6の外方への移動が許容されてワイヤー50に対するワイヤー固定部材6の抜け止め固定が解除され、この状態でワイヤー50をワイヤー連結体3(内筒4)から引き抜くことができる(
図5中(c),(d)参照)。符号50aはワイヤー固定部材6の圧接により変形して形成された凹部である。
【0066】
付勢体10は、
図2に図示したように適宜な金属製の部材で形成したコイルバネであり、先端部が筒状ケース本体2の先端開口壁部2Aで支承され、基端部がワイヤー連結体3の先端部(外筒5の先端面)で支承され、筒状ケース本体2にスライド自在に設けられるワイヤー連結体3を常時基端側方向へ付勢するように構成されている。
【0067】
また、付勢体10は、筒状ケース本体2にワイヤー50を挿通した際、この付勢体10(コイルバネ)の内方をワイヤー50が貫挿するように設けられている。
【0068】
従って、付勢体10により、使用時においてワイヤー50に作用する引き抜き力を吸収して良好な張設状態を維持する機能を発揮することができ、筒状ケース本体2の先端開口壁部2Aにワイヤー連結体3の先端が当接することも防止し、しかも、ワイヤー50を貫挿する構成故に無駄が無くコンパクトに形成することができる。
【0069】
以上の構成から成る本実施例に係るワイヤー連結具Xを一対使用して対向する被取付部60にワイヤー50を張設する施工方法について説明する。尚、本実施例では、対向する被取付部60として柵の支柱を採用したが、これに限られるものではない。
【0070】
先ず、対向する被取付部60夫々に連結部材11を介してワイヤー連結具X(筒状ケース本体2)を取り付ける。この際、完全に螺着するのではなく少しだけ螺着する(
図6参照)。
【0071】
続いて、ワイヤー連結具X(ワイヤー連結体3)夫々に対し、所定長さのワイヤー50の両端部を連結する(
図7,8参照)。
【0072】
続いて、ワイヤー連結具X(筒状ケース本体2)を最後まで螺着するとワイヤー50は張設される(
図9参照)。
【0073】
例えばワイヤー50の張設度合いが足りない場合、被取付部60からワイヤー連結具Xを取り外して、ワイヤー連結体3からワイヤー50を引き抜き、ワイヤー50を切断して改めて取り付ければ良い。
【0074】
尚、本実施例は、前述したように予め被取付部60に取り付けた状態のワイヤー連結具Xに対してワイヤー50を連結しているが、予めワイヤー50の端部に連結したワイヤー連結具Xを被取付部60に取り付けるようにしても良い。
【0075】
本実施例は上述のように構成したから、例えば施工現場へ切断加工前のワイヤー50を持ち込み、このワイヤー50を施工現場にて最適な長さに切断して張設するという施工箇所の条件に対応した柔軟な施工が行えることになり、前述した従来例で必要とされていた製造工場でのワイヤーの加工作業及び製造工場から施工現場への加工済みワイヤーの搬送作業が不要となり、よって、工期の遅延の原因を解消することができ、しかも、施工現場とは別の場所で予めワイヤー50を切断する場合に比し、ワイヤー50の無駄を防止することができる。
【0076】
また、本実施例は、被取付部60に対するワイヤー50の連結が、ワイヤー50の差し込み操作だけで完了するから極めて簡易であり、一方、被取付部60に連結されたワイヤー50の取り外しは、内筒4をスライド操作してワイヤー50を引き抜くだけで完了するから極めて簡易であり、よって、極めて迅速な施工が可能となる。
【0077】
また、本実施例は、ワイヤー連結体3を筒状ケース本体2内にスライド自在に設けると共に、ワイヤー連結体3と筒状ケース本体2の先端開口壁部2Aとの間で支承され、ワイヤー50が貫挿する付勢体10を有し、この付勢体10により筒状ケース本体2の先端開口壁部2Aにワイヤー連結体3の先端が当接しないように構成することにより、ワイヤー50に強い引き抜き力が作用しても、この強い引き抜き力を吸収してワイヤー50に対するワイヤー固定部材6の固定位置がずれることは無く良好な張設状態を維持でき、しかも、筒状ケース本体2やワイヤー連結体3の破損を防止することができる。
【0078】
また、本実施例は、付勢体10の存在により、筒状ケース本体2に対してワイヤー連結体3が圧嵌(噛んだ状態)したり、ワイヤー固定部材6と該ワイヤー固定部材6に当接する部位とが圧嵌したりせず、スライド構造がスライド不能になったりすることはが防止される。
【0079】
また、本実施例は、ワイヤー50の両端部に設けられて対向する被取付部60夫々に該ワイヤー50の両端部を連結する使用形態が可能であり、ワイヤー50の張設が簡易且つ迅速に行え、また、ワイヤー50に対する連結や取り外しが簡易であるなどの前述した作用効果をより効果的に享受することができ、しかも、前述した従来例において、片側一方の被取付部60に取り付けられるワイヤー固定部(バネ部)が担っていた機能(使用時においてワイヤー50に作用する引き抜き力を吸収して良好な張設状態を維持する機能)を左右に振り分けた状態とすることができ、更に、ワイヤー50に作用する引き抜き力を左右バランスよく吸収することができ、そして、筒状ケース本体2に収納する付勢構造として小型の付勢体10を採用できるから、ワイヤー連結具自体を小型軽量化することができることになる。
【0080】
また、本実施例は、付勢体10は、筒状ケース本体2内に収納されることで、雨水や生物(例えば鳥)の糞尿などに触れることがなく、腐食などの劣化が抑止される為、この点においても良好な張設状態を維持できる。
【0081】
また、本実施例は、外筒5の基端部には蓋体5’が設けられ、この蓋体5’と内筒4との間には、外筒5に対して基端方向へスライドさせた内筒4を先端方向へ戻り付勢する戻り付勢体9が設けられているから、ワイヤー連結体3が良好に機能し、前述した作用効果を確実に奏することになる。
【0082】
また、本実施例は、ワイヤー固定部材6は、貫通孔4bの外側開口部4b”から一部が突状態となり、この突状態となる部位が外筒5の内面に当接して外方への移動が阻止される構成であり、外筒5の内面には先端側程径小となるテーパー面部5aが設けられ、外筒5に対して内筒4をスライドさせることでワイヤー固定部材6をテーパー面部5aの基端側方向に移動させた場合に、該ワイヤー固定部材6の外方への移動が許容されるように構成されているから、この点においてもワイヤー連結体3が良好に機能し、前述した作用効果を確実に奏することになる。
【0083】
また、本実施例は、ワイヤー固定部材6は、球体や円柱体などの転動体であるから、この点においてもワイヤー連結体3が良好に機能し、前述した作用効果を確実に奏することになる。
【0084】
尚、本発明は、本実施例に限られるものではなく、各構成要件の具体的構成は適宜設計し得るものである。