(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024132267
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】歪みゲージ部品、ロードセル及びロードセルの製造方法
(51)【国際特許分類】
G01L 1/22 20060101AFI20240920BHJP
【FI】
G01L1/22 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023042982
(22)【出願日】2023-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】000147833
【氏名又は名称】株式会社イシダ
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100180851
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼口 誠
(72)【発明者】
【氏名】有光 佑紀哉
(72)【発明者】
【氏名】武市 真治
【テーマコード(参考)】
2F049
【Fターム(参考)】
2F049AA12
2F049CA04
2F049DA01
(57)【要約】
【課題】温度特性に優れたロードセルの製造工程の簡易化を図ることができる歪みゲージ部品、ロードセル及びロードセルの製造方法を提供する。
【解決手段】歪みゲージ部品1は、絶縁性を有する絶縁体4と、絶縁体4上に配置されると共に、起歪体102の変形に伴って電気抵抗値が変化する抵抗体5と、を有する歪みゲージ2と、歪みゲージ2の絶縁体4が配置される基体3と、を備え、基体3は、起歪体102と同じ性質を有するアルミニウム又はステンレスを含む金属で形成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷重が加えられると変形する起歪体に取り付けられる歪みゲージ部品であって、
絶縁性を有する絶縁体と、前記絶縁体上に配置されると共に、前記起歪体の変形に伴って電気抵抗値が変化する抵抗体と、を有する歪みゲージと、
前記歪みゲージの前記絶縁体が配置される基体と、を備え、
前記基体は、前記起歪体と同じ性質を有するアルミニウム又はステンレスを含む金属で形成されている、歪みゲージ部品。
【請求項2】
前記絶縁体及び前記基体の少なくとも一方には、前記歪みゲージの温度特性に係る情報を取得可能な情報が設けられている、請求項1に記載の歪みゲージ部品。
【請求項3】
前記絶縁体と前記基体との間に配置され、加熱処理によって硬化している接着部を備える、請求項1又は2に記載の歪みゲージ部品。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の歪みゲージ部品と、
前記歪みゲージ部品が取り付けられる起歪体であって、荷重が加えられると変形するアルミニウム又はステンレスを含む金属で形成されている該起歪体と、を備える、ロードセル。
【請求項5】
前記起歪体は、前記歪みゲージ部品が配置される位置に、前記基体が収容される凹部を有する、請求項4に記載のロードセル。
【請求項6】
前記起歪体は、前記歪みゲージ部品が配置される位置において、前記基体に向かって開口する開口部を有する、請求項4に記載のロードセル。
【請求項7】
前記起歪体には、複数の前記歪みゲージ部品が取り付けられており、
複数の前記歪みゲージ部品のそれぞれの抵抗温度係数の差が0.5ppm/℃である、請求項4に記載のロードセル。
【請求項8】
絶縁性を有する絶縁体及び前記絶縁体上に配置されると共に荷重が加えられると変形する起歪体の変形に伴って電気抵抗値が変化する抵抗体を有する歪みゲージと、アルミニウム又はステンレスを含む金属で形成されている基体と、荷重が加えられると変形し、前記基体と同じ性質を有するアルミニウム又はステンレスを含む金属で形成されている起歪体と、を備える、ロードセルの製造方法であって、
前記歪みゲージを前記基体に接着し、歪みゲージ部品を作製する工程と、
前記歪みゲージ部品を加熱処理する工程と、
前記歪みゲージ部品を前記起歪体に接合する工程と、を含む、ロードセルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歪みゲージ部品、ロードセル及びロードセルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
歪みゲージは、起歪体に取り付けられる絶縁性のベース(絶縁体)と、ベースに取り付けられ、起歪体の変更の程度に応じて電気抵抗値が変化する抵抗体と、を備えている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
歪みゲージは、温度特性(抵抗温度係数)を有している。歪みゲージは、起歪体に取り付けられる(接合される)前と、起歪体に取り付けられた後と、において温度特性に変化が生じる。そのため、起歪体に取り付けられる前に複救の歪みゲージの温度特性をそれぞれ取得し、温度特性が同等の複数の歪みゲージを起歪体に取り付けたとしても、起歪体への取り付け後の複数の歪みゲージの温度特性が同等になるとは限らず、複数の歪みゲージのそれぞれにおいて温度特性にばらつきが生じ得る。そこで、従来のロードセルの製造工程においては、複数の歪みゲージを起歪体に取り付けた後、複数の歪みゲージのそれぞれの温度特性を計測し、出力電圧の温度依存性における一次成分及び二次成分を補正して、温度特性を補償している。
【0005】
上記のように、従来のロードセルの製造工程では、歪みゲージを起歪体に取り付けた後に、温度特性を補償する工程が必要となる。そのため、温度特性に優れたロードセルを製造するためには、手間を要していた。
【0006】
本発明の一側面は、温度特性に優れたロードセルの製造工程の簡易化を図ることができる歪みゲージ部品、ロードセル及びロードセルの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明の一側面に係る歪みゲージ部品は、荷重が加えられると変形する起歪体に取り付けられる歪みゲージ部品であって、絶縁性を有する絶縁体と、絶縁体上に配置されると共に、起歪体の変形に伴って電気抵抗値が変化する抵抗体と、を有する歪みゲージと、歪みゲージの絶縁体が配置される基体と、を備え、基体は、起歪体と同じ性質を有するアルミニウム又はステンレスを含む金属で形成されている。
【0008】
本発明の一側面に係る歪みゲージ部品では、歪みゲージが配置される基体は、起歪体と同じ性質を有するアルミニウム又はステンレスを含む金属で形成されている。このように、歪みゲージ部品は、起歪体と同じ性質を有する金属で形成されている基体に歪みゲージが配置されているため、起歪体に取り付けられる前後において温度特性の変化が小さい。そのため、歪みゲージの温度特性を取得し、例えば温度特性が同等(抵抗温度係数が所定の範囲内)の複数の歪みゲージ部品を選択して起歪体に取り付けることにより、ロードセルにおける歪みゲージの温度特性を同等にすることができる。これにより、ロードセルの製造工程において、零点への温度影響を補償するための工程を省略できる。したがって、歪みゲージ部品は、温度特性に優れたロードセルの製造工程の簡易化を図ることができる。
【0009】
(2)上記(1)の歪みゲージ部品において、絶縁体及び基体の少なくとも一方には、歪みゲージの温度特性に係る情報を取得可能な情報が設けられていてもよい。この構成では、歪みゲージ部品の温度特性を容易に取得して確認(認識)することができる。そのため、例えば、温度特性が同等である複数の歪みゲージ部品を選択してロードセルに取り付ける作業を容易に行える。また、歪みゲージ部品の上記情報をロボット等がカメラ等で取得し、当該情報に基づいてロボットが適切な複数の歪みゲージ部品を選択して、起歪体に取り付けることが可能となる。そのため、ロードセルの製造の自動化を図ることができる。
【0010】
(3)上記(1)又は(2)の歪みゲージ部品において、歪みゲージ部品は、絶縁体と基体との間に配置され、加熱処理によって硬化している接着部を備えていてもよい。歪みゲージ部品は、絶縁体と基体とを接着する接着部が加熱処理によって硬化している、すなわち歪みゲージ部品が既に加熱処理されている。加熱処理された接着部を備えることで、歪みゲージ部品において、歪みゲージの温度特性に変化が生じることを抑制できる。
【0011】
(4)本発明の一側面に係るロードセルは、上記(1)から(3)のいずれか一つの歪みゲージ部品と、歪みゲージ部品が取り付けられる起歪体であって、荷重が加えられると変形するアルミニウム又はステンレスを含む金属で形成されている該起歪体と、を備える。
【0012】
本発明の一側面に係るロードセルでは、上記歪みゲージ部品を備えている。したがって、ロードセルでは、温度特性に優れたロードセルの製造工程の簡易化を図ることができる。
【0013】
(5)上記(4)のロードセルにおいて、起歪体は、歪みゲージ部品が配置される位置に、基体が収容される凹部を有してもよい。この構成では、起歪体において、歪みゲージ部品を容易に取り付けることができる。
【0014】
(6)上記(4)のロードセルにおいて、起歪体は、歪みゲージ部品が配置される位置において、基体に向かって開口する開口部を有していてもよい。起歪体と基体との間において、起歪体と基体とが十分に接合されていない部分が存在すると、その部分において摩擦が生じ得る。起歪体と基体との間に摩擦が生じると、起歪体の変形が抵抗体に正確に反映されず、抵抗体の出力に影響を及ぼし、正確な計量ができなくなり得る。ロードセルでは、歪みゲージ部品の基体は、開口部に跨がって配置される。これにより、起歪体と基体との接合面積が小さくなるため、起歪体と基体とが十分に接合されていない部分を小さく(無くす)ことができる。そのため、ロードセルでは、起歪体と基体との間に摩擦が生じることを抑制できるため、正確な計量を行うことができる。
【0015】
(7)上記(4)から(6)のいずれか一つのロードセルにおいて、起歪体には、複数の歪みゲージ部品が取り付けられており、複数の歪みゲージ部品のそれぞれの抵抗温度係数の差が0.5ppm/℃であってもよい。この構成では、温度特性に優れたロードセルとすることができる。
【0016】
(8)本発明の一側面に係るロードセルの製造方法は、絶縁性を有する絶縁体及び絶縁体上に配置されると共に荷重が加えられると変形する起歪体の変形に伴って電気抵抗値が変化する抵抗体を有する歪みゲージと、アルミニウム又はステンレスを含む金属で形成されている基体と、荷重が加えられると変形し、基体と同じ性質を有するアルミニウム又はステンレスを含む金属で形成されている起歪体と、を備える、ロードセルの製造方法であって、歪みゲージを基体に接着し、歪みゲージ部品を作製する工程と、歪みゲージ部品を加熱処理する工程と、歪みゲージ部品を起歪体に接合する工程と、を含む。
【0017】
本発明の一側面に係るロードセルの製造方法では、歪みゲージが配置される基体は、起歪体と同じ性質を有するアルミニウム又はステンレスを含む金属で形成する。このように、ロードセルの製造方法によって製造される歪みゲージ部品は、起歪体と同じ性質を有する金属で形成されている基体に歪みゲージが配置されているため、起歪体に取り付けられる前後において温度特性の変化が小さい。そのため、歪みゲージの温度特性を取得し、例えば温度特性が同等(抵抗温度係数が所定の範囲内)の複数の歪みゲージ部品を選択して起歪体に取り付けることにより、ロードセルにおける歪みゲージの温度特性を同等にすることができる。これにより、ロードセルの製造工程において、零点への温度影響を補償するための工程を省略できる。したがって、ロードセルの製造方法では、温度特性に優れたロードセルの製造工程の簡易化を図ることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の一側面によれば、温度特性に優れたロードセルの製造工程の簡易化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、一実施形態に係る歪みゲージ部品の斜視図である。
【
図3】
図3は、
図2におけるIII-III線に沿った断面構成を示す図である。
【
図6】
図6は、起歪体に取り付けられた歪みゲージ部品を示す図である。
【
図7】
図7は、他の実施形態に係るロードセルの斜視図である。
【
図8】
図8(a)及び
図8(b)は、他の実施形態に係る歪みゲージ部品の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明において同一又は相当要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0021】
図1は、一実施形態に係る歪みゲージ部品を示す斜視図である。
図2は、歪みゲージ部品の平面図である。
図1及び
図2に示されるように、歪みゲージ部品1は、歪みゲージ2と、基体3と、を備えている。
【0022】
歪みゲージ2は、絶縁体4と、抵抗体5と、接着部6と、を有している。
【0023】
絶縁体4は、抵抗体5を支持する。絶縁体4は、例えば、長方形状を呈している。絶縁体4は、互いに対向している一対の主面4a,4bを有している。絶縁体4は、電気的絶縁性を有している。絶縁体4は、例えば、ポリイミドである。ポリイミドは、例えば、分子構造の観点からは芳香族ポリエステルに分類される高分子であることが好ましい。絶縁体4の厚みは、例えば、10μm~50μmである。
【0024】
絶縁体4には、特性情報Mが設けられている。本実施形態では、特性情報Mは、絶縁体4の主面4aに設けられている。特性情報Mは、例えば、主面4aの端部に設けられている。特性情報Mは、絶縁体4の主面4aに印刷(印字)されて設けられていてもよいし、主面4aに特性情報Mが印刷されたシール等が貼付されることによって設けられていてもよい。特性情報Mの大きさ、配置位置は限定されない。
【0025】
特性情報Mは、歪みゲージ部品1の温度特性に係る情報を取得可能な情報である。特性情報Mは、温度特性の測定値、識別文字、バーコード(一次元コード、二次元コード)等であり得る。識別文字は、文字、数字、記号又はその組み合わせであり得る。識別文字は、歪みゲージ部品1の温度特性の測定値と紐付けられている。バーコードは、歪みゲージ部品1の温度特性の測定値と紐付けられている。識別文字を確認又はバーコードを読み取ることにより、歪みゲージ部品1の温度特性を取得することができる。例えば、歪みゲージ部品1の特性情報Mが識別文字である場合、識別文字を端末(例えば、スマートフォン、タブレット等)に入力したり端末のカメラで撮像したりする。端末は、取得した識別文字に紐付けられた温度特性をデータベース等から抽出(取得)し、温度特性を表示する。
【0026】
抵抗体5は、絶縁体4の主面4a上に配置されている。抵抗体5は、絶縁体4に固定(固着)されている。抵抗体5は、絶縁体4の変形に伴って伸縮する。抵抗体5は、伸縮によって電気抵抗値が変化する。抵抗体5は、導電性を有している。抵抗体5は、金属材料で形成されている。金属材料としては、例えば、Cu-Ni等を用いることができる。抵抗体5は、例えば、フォトリソグラフィ法によって絶縁体4の主面4a上に形成され得る。抵抗体5の厚みは、例えば、2μm~5μmである。
【0027】
抵抗体5は、受感部50と、第一接続部51と、第二接続部52と、を有している。抵抗体5では、受感部50、第一接続部51及び第二接続部52は、一体に形成されている。
【0028】
受感部50は、絶縁体4の変形に伴って、主として抵抗値が変化する部分である。受感部50は、直線部分50aと、折り返し部分50bと、を有している。直線部分50aは、一方向に直線状に延在している。直線部分50aは、一方向に交差する方向に複数並置されている。折り返し部分50bは、隣り合う直線部分50aの端を連結する。受感部50は、複数の直線部分50a及び複数の折り返し部分50bにより、蛇行形状を呈している。
【0029】
第一接続部51は、受感部50のうち一方の端部に接続される。第一接続部51は、外部回路への配線(図示省略)が接続される。第一接続部51は、接続部分51aと、連結部分51bと、を有している。接続部分51aは、配線が接続される部分である。連結部分51bは、受感部50の一方の端部と接続部分51aとを連結している。
【0030】
第二接続部52は、受感部50のうち他方の端部に接続される。第二接続部52は、外部回路への配線(図示省略)が接続される。第二接続部52は、接続部分52aと、連結部分52bと、を有している。接続部分52aは、配線が接続される部分である。連結部分52bは、受感部50の他方の端部と接続部分52aとを連結している。
【0031】
図3は、
図2におけるIII-III線に沿った断面構成を示す図である。
図3に示されるように、接着部6は、絶縁体4と基体3との間に配置されている。具体的には、接着部6は、絶縁体4の主面4bと基体3の主面3aとの間に配置されている。接着部6は、絶縁体4と基体3とを接着(接合)している。接着部6は、熱硬化性接着剤が加熱処理によって硬化することによって形成されている。熱硬化性接着剤としては、例えば、エポキシ系接着剤等が挙げられる。
【0032】
歪みゲージ2は、カバー(図示省略)を備えていてもよい。カバーは、絶縁体4の主面4a及び抵抗体5を覆う。カバーとしては、Ta2O5とSiNの複合膜を用いることができる。
【0033】
図1に示されるように、基体3は、歪みゲージ2(絶縁体4)を支持する。基体3は、板状部材であり、例えば、長方形状を呈している。本実施形態では、基体3と絶縁体4とは、同じ形状を呈している。基体3は、互いに対向している一対の主面3a,3bを有している。本実施形態では、主面3a,3bは、平坦面である。
【0034】
基体3は、起歪体102(後述)と同じ性質を有するアルミニウム又はステンレスを含む金属で形成されている。本実施形態では、例えば、基体3は、アルミニウム合金で形成されている。アルミニウム合金は、例えば、日本工業規格(JIS)で定められる2000番台のアルミニウム合金(Al-Cu系合金)である。基体3の厚みは、絶縁体4の厚みよりも大きい。基体3の厚みは、例えば、0.3mm~1.0mmである。
【0035】
図4は、ロードセルを示す斜視図である。
図5は、ロードセルの正面図である。
図4及び
図5に示されるように、ロードセル100は、歪みゲージ部品1と、起歪体102と、を備えている。なお、
図4では、歪みゲージ部品1を区別するために、歪みゲージ部品1A,1B,1C,1Dと示しているが、歪みゲージ部品1A,1B,1C,1Dの構成は歪みゲージ部品1と同様である。
【0036】
起歪体102は、直方体形状を呈する金属ブロックである。起歪体102は、ロバーバル型(平行四辺形型)の形状を呈している。起歪体102は、アルミ(アルミ合金)、ステンレス等の金属によって形成された弾性体である。起歪体102は、一対の主面(図示省略)と、主面を連結する四つの側面102a,102b,102c,102dを有する。起歪体102では、例えば、側面102cは、計量装置等のケースに固定される固定端であり、側面102dは、荷重が付与される自由端である。
【0037】
起歪体102には、貫通部104が設けられている。貫通部104は、起歪体102の一対の主面を貫通して形成されている。貫通部104は、略H字状を呈している。
【0038】
起歪体102には、第一ノッチ部106a、第二ノッチ部106b、第三ノッチ部106c及び第四ノッチ部106dが設けられている。第一ノッチ部106a、第二ノッチ部106b、第三ノッチ部106c及び第四ノッチ部106dは、起歪体102において、薄肉の部分である。第一ノッチ部106a及び第二ノッチ部106bは、側面102aと貫通部104との間の部分である。第三ノッチ部106c及び第四ノッチ部106dは、側面102bと貫通部104との間の部分である。
【0039】
図5に示されるように、起歪体102には、第一開口部108a、第二開口部108b、第三開口部108c及び第四開口部108dが設けられている。第一開口部108aは、第一ノッチ部106aに対応する位置に配置されており、側面102aと第一ノッチ部106aの内面とを貫通して形成されている。第二開口部108bは、第二ノッチ部106bに対応する位置に配置されており、側面102aと第二ノッチ部106bの内面とを貫通して形成されている。第三開口部108cは、第三ノッチ部106cに対応する位置に配置されており、側面102bと第三ノッチ部106cの内面とを貫通して形成されている。第四開口部108dは、第四ノッチ部106dに対応する位置に配置されており、側面102bと第四ノッチ部106dの内面とを貫通して形成されている。第一開口部108a、第二開口部108b、第三開口部108c及び第四開口部108dの開口は、例えば、矩形状を呈している。
【0040】
図4に示されるように、歪みゲージ部品1A(1)は、起歪体102の側面102aに配置されている。歪みゲージ部品1Aは、側面102aにおいて、第一ノッチ部106aに配置されている。
図6に示されるように、歪みゲージ部品1Aは、第一開口部108aを跨いで配置されている。すなわち、歪みゲージ部品1Aは、基体3の主面3bの全面が側面102aに接触しておらず(主面3bの一部が側面102aに接触しており)、両端部が起歪体102に支持されている。これにより、第一開口部108aは、歪みゲージ部品1Aの基体3に向かって開口する。歪みゲージ部品1Aは、起歪体102に接合されている。歪みゲージ部品1Aと起歪体102との接合には、様々な方法を採用することができる。歪みゲージ部品1Aと起歪体102とは、例えば、溶接、接着剤、拡散接合等によって接合することができる。
【0041】
図4に示されるように、歪みゲージ部品1B(1)は、起歪体102の側面102aに配置されている。歪みゲージ部品1Bは、側面102aにおいて、第二ノッチ部106bに配置されている。歪みゲージ部品1Bは、第二開口部108bを跨いで配置されている。歪みゲージ部品1C(1)は、起歪体102の側面102bに配置されている。歪みゲージ部品1Cは、側面102bにおいて、第三ノッチ部106cに配置されている。歪みゲージ部品1Cは、第三開口部108cを跨いで配置されている。歪みゲージ部品1D(1)は、起歪体102の側面102bに配置されている。歪みゲージ部品1Dは、側面102bにおいて、第四ノッチ部106dに配置されている。歪みゲージ部品1Dは、第四開口部108dを跨いで配置されている。
【0042】
続いて、歪みゲージ部品1の製造方法について説明する。
【0043】
最初に、歪みゲージ2を準備する。歪みゲージ2は、絶縁体4の主面4a上に抵抗体5を例えばフォトリソグラフィ法によって形成して作製する。続いて、歪みゲージ2を基体3に接着する。具体的には、歪みゲージ2の絶縁体4の主面4bと基体3の主面3aとの間に熱硬化性接着剤を塗布し、加熱処理する。加熱処理の温度は、例えば、100℃~200℃程度である。加熱処理によって、熱硬化性接着剤が硬化し、基体3と絶縁体4との間に接着部6が形成される。これにより、基体3と絶縁体4とが接着される。
【0044】
続いて、測定器(マルチメータ)を用いて、歪みゲージ2の温度特性を測定する。具体的には、所定温度における歪みゲージ2の抵抗値を測定する。所定温度は、低温(例えば0℃)、基準温度(例えば20℃)及び高温(例えば40℃)である。続いて、測定した歪みゲージ2の抵抗値に基づいて、抵抗温度係数を求める。そして、当該抵抗温度係数と特性情報Mとを紐付け、特性情報Mを絶縁体4の主面4aに設ける。以上により、歪みゲージ部品1が製造される。
【0045】
続いて、ロードセル100の製造方法について説明する。
【0046】
ロードセル100の製造方法では、起歪体102及び複数の歪みゲージ部品1を準備する。本実施形態では、起歪体102に四つの歪みゲージ部品1を取り付ける。四つの歪みゲージ部品1は、それぞれの抵抗温度係数の差が所定値となるものを選択する。本実施形態では、四つの歪みゲージ部品1のそれぞれの抵抗温度係数の差が0.5ppm/℃となるように、四つの歪みゲージ部品1を選択する。歪みゲージ部品1の選択は、特性情報Mに基づいて行う。各歪みゲージ部品1の特性情報Mに基づいて各歪みゲージ部品1の温度特性(抵抗温度係数)を取得する。取得した温度特性に基づいて、抵抗温度係数の差が0.5ppm/℃となる四つの歪みゲージ部品1を選択する。歪みゲージ部品1の選択は、ロードセル100の製造前に予め実施されていてもよい。
【0047】
続いて、四つの歪みゲージ部品1を起歪体102に取り付ける。具体的には、歪みゲージ部品1の基体3が、第一開口部108a、第二開口部108b、第三開口部108c及び第四開口部108dを跨ぐように、歪みゲージ部品1を起歪体102に取り付ける。歪みゲージ部品1は、例えば、溶接によって起歪体102に接合してもよいし、接着剤によって起歪体102に接合してもよい。以上により、ロードセル100が製造される。
【0048】
ロードセル100の製造は、作業者が行ってもよいし、ロボット等の作業装置が行ってもよい。
【0049】
以上説明したように、本実施形態に係る歪みゲージ部品1では、歪みゲージ2が配置される基体3は、起歪体102と同じ性質を有するアルミニウム又はステンレスを含む金属で形成されている。このように、歪みゲージ部品1は、起歪体102と同じ性質を有する金属で形成されている基体3に歪みゲージ2が配置されているため、起歪体102に取り付けられる前後において温度特性の変化が小さい。そのため、歪みゲージ2の温度特性を取得し、例えば温度特性が同等(抵抗温度係数が所定の範囲内)の複数の歪みゲージ部品1を選択して起歪体102に取り付けることにより、ロードセル100における歪みゲージ2の温度特性を同等にすることができる。これにより、ロードセル100の製造工程において、零点への温度影響を補償するための工程を省略できる。したがって、歪みゲージ部品1は、温度特性に優れたロードセル100の製造工程の簡易化を図ることができる。
【0050】
本実施形態に係る歪みゲージ部品1では、歪みゲージ2の絶縁体4には、歪みゲージ2の温度特性に係る情報を取得可能な特性情報Mが設けられている。この構成では、歪みゲージ部品1の温度特性を容易に取得して確認(認識)することができる。そのため、例えば、温度特性が同等である複数の歪みゲージ部品1を選択してロードセル100に取り付ける作業を容易に行える。また、歪みゲージ部品1の特性情報Mをロボット等がカメラ等で取得し、特性情報Mに基づいてロボットが適切な複数の歪みゲージ部品1を選択して、起歪体102に取り付けることが可能となる。そのため、ロードセル100の製造の自動化を図ることができる。
【0051】
本実施形態に係る歪みゲージ部品1は、歪みゲージ2の絶縁体4と基体3との間に配置され、加熱処理によって硬化している接着部6を備えている。歪みゲージ2における温度特性の変化要因の一つとして、歪みゲージ2を基体3に接着することで歪みゲージ2が基体3からの線膨張を受け変化することが挙げられる。歪みゲージ部品1では、絶縁体4と基体3とを接着する接着部6が加熱処理によって硬化している、すなわち歪みゲージ部品1が既に歪みゲージ2と基体3が接着され、加熱処理されている。そのため、歪みゲージ部品1において、歪みゲージ2の温度特性に変化が生じることを抑制できる。
【0052】
本実施形態に係るロードセル100は、歪みゲージ部品1が配置される位置において、基体3に向かって開口する第一開口部108a、第二開口部108b、第三開口部108c及び第四開口部108dを有している。起歪体102と基体3との間において、起歪体102と基体3とが十分に接合されていない部分が存在すると、その部分において摩擦が生じ得る。起歪体102と基体3との間に摩擦が生じると、起歪体102の変形が抵抗体5に正確に反映されず、抵抗体5の出力に影響を及ぼし、正確な計量ができなくなり得る。ロードセル100では、歪みゲージ部品1の基体3は、第一開口部108a、第二開口部108b、第三開口部108c及び第四開口部108dに跨がって配置される。これにより、起歪体102と基体3との接合面積が小さくなるため、起歪体102と基体3とが十分に接合されていない部分を小さく(無くす)ことができる。そのため、ロードセル100では、起歪体102と基体3との間に摩擦が生じることを抑制できるため、正確な計量を行うことができる。
【0053】
本実施形態に係るロードセル100では、起歪体102には、複数の歪みゲージ部品1(1A,1B,1C,1D)が取り付けられている。複数の歪みゲージ部品1のそれぞれの抵抗温度係数の差は、0.5ppm/℃である。この構成では、温度特性に優れたロードセル100とすることができる。
【0054】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明は必ずしも上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
【0055】
上記実施形態では、絶縁体4がポリイミドで形成されている形態を一例に説明した。しかし、絶縁体4は、樹脂で形成されていてもよい。樹脂としては、例えば、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエチレン(PE)、ポリエーテルエーテルケトン、液晶ポリマー等を用いることができる。
【0056】
上記実施形態では、特性情報Mが絶縁体4に設けられている形態を一例に説明した。しかし、特性情報Mは、基体3に設けられていてもよいし、基体3及び絶縁体4の両方に設けられていてもよい。
【0057】
上記実施形態では、起歪体102の第一開口部108a、第二開口部108b、第三開口部108c及び第四開口部108dが、側面102a,102bと貫通部104とを貫通して形成されている形態を一例に説明した。しかし、第一開口部108a、第二開口部108b、第三開口部108c及び第四開口部108dは、有底の構成(凹部)であってもよい。
【0058】
上記実施形態では、起歪体102が第一開口部108a、第二開口部108b、第三開口部108c及び第四開口部108dを有し、歪みゲージ部品1が第一開口部108a、第二開口部108b、第三開口部108c及び第四開口部108dを跨いで配置される形態を一例に説明した。しかし、
図7に示されるように、ロードセル110では、歪みゲージ部品1は、起歪体102の凹部112に配置(収容)されてもよい。凹部112は、第一ノッチ部106a、第二ノッチ部106b、第三ノッチ部106c及び第四ノッチ部106dに対応する位置に配置されている。凹部112は、基体3と同じ寸法で形成されている。凹部112の深さは、例えば、基体3の厚みと同等である。この構成では、起歪体102において、歪みゲージ部品1を容易に取り付けることができる。
【0059】
上記実施形態では、歪みゲージ部品1の基体3の主面3bが平坦面である形態を一例に説明した。しかし、
図8(a)に示されるように、基体3Aの主面3Aaに窪み3Adが形成されていてもよい。すなわち、主面3Aaの一部が湾曲面であってもよい。また、上記実施形態では、基体3が矩形状を呈している形態を一例に説明した。しかし、
図8(b)に示されるように、基体3Bは、両端部が略台形状に大きくなっている形状であってもよい。この構成では、基体3Bにくびれ部3Bcが設けられている。
【符号の説明】
【0060】
1,1A,1B,1C,1D…歪みゲージ部品、2…歪みゲージ、3,3A,3B…基体、4…絶縁体、5…抵抗体、6…接着部、100,110…ロードセル、102…起歪体、112…凹部、M…特性情報。