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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024132270
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】電子部品
(51)【国際特許分類】
   H01F 27/29 20060101AFI20240920BHJP
   H01F 17/00 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
H01F27/29 123
H01F17/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023042989
(22)【出願日】2023-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(72)【発明者】
【氏名】奥澤 信之
(72)【発明者】
【氏名】田久保 悠一
(72)【発明者】
【氏名】橋本 龍司
(72)【発明者】
【氏名】高橋 悠太
(72)【発明者】
【氏名】保坂 弘輝
【テーマコード(参考)】
5E070
【Fターム(参考)】
5E070AA01
5E070CB15
5E070EA01
5E070EB04
(57)【要約】      (修正有)
【課題】素体と外部電極との固着強度を確保しつつ、浮遊容量の発生を抑制できる、電子部品を提供する。
【解決手段】電子部品1において、第1の電極層10は、Z軸方向から見て、第2の電極層11と重なる第1の領域E1と、第2の電極層11と重ならない第2の領域E2と、を有する。第2の領域E2は、Z軸方向から見てコイル導体7と重なる。第2の領域E2に対応する箇所のコイル導体7は、第2の電極層11よりも遠い位置に配置される第1の電極層10と対向する。従って、当該箇所における浮遊容量の発生を抑制することができる。これにより、第2の領域E2の分だけ、コイル導体7全体と外部電極3A,3Bとの間に発生する浮遊容量を抑制することができる。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
実装面である主面を有する素体と、
前記素体内において、複数のコイル導体によってコイルのパターンが形成されたコイル部と、
前記素体の前記主面に形成され、前記コイル部に電気的に接続される一対の外部電極と、を備え、
前記外部電極は、前記素体の主面から露出する第1の電極層と、前記素体内に埋まった第2の電極層と、を有し、
前記第1の電極層は、前記主面と直交する第1の方向から見て、前記第2の電極層と重なる第1の領域と、前記第2の電極層と重ならない第2の領域と、を有し、
前記第1の方向から見て、前記第2の領域は前記コイル導体と重なり、
前記第2の電極層は、前記第1の電極層の外縁からはみ出る拡張部を有する、電子部品。
【請求項2】
前記素体は、前記第1の方向と直交する第2の方向に対向する一対の端面と、前記第1の方向及び前記第2の方向と直交する第3の方向に対向する一対の側面と、を有し、
前記第1の方向から見て、前記一対の端面と前記外部電極との間、及び前記一対の側面と前記外部電極との間には、前記素体が配置される、請求項1に記載の電子部品。
【請求項3】
前記一対の外部電極は、当該一対の外部電極の対向方向における内側において、前記第2の電極層を有しない領域を有する、請求項1に記載の電子部品。
【請求項4】
前記第2の電極層の前記拡張部は、前記素体から露出する、請求項1に記載の電子部品。
【請求項5】
前記コイル導体は、前記第1の電極層から引き出される、請求項1に記載の電子部品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
素体と、当該素体の主面に形成した外部電極と、を備える電子部品が知られている(例えば、特許文献1)。特許文献1において、電子部品は、素体内に形成されたコイル部を有する。この電子部品は、外部電極に開口部を設けることで、アンカー効果によって素体との密着性を向上している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-61409号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような構成を有する電子部品では、外部電極と素体との固着強度を確保するために、工程上、ある程度の外部電極の厚みが必要となる。しかしながら、外部電極の厚みを確保することで、外部電極とコイルとが近くなり、浮遊容量が発生するという問題が生じる。
【0005】
本発明の一態様は、素体と外部電極との固着強度を確保しつつ、浮遊容量の発生を抑制できる、電子部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一つの態様における電子部品は、実装面である主面を有する素体と、素体内において、複数のコイル導体によってコイルのパターンが形成されたコイル部と、素体の主面に形成され、コイル部に電気的に接続される一対の外部電極と、を備え、外部電極は、素体の主面から露出する第1の電極層と、素体内に埋まった第2の電極層と、を有し、第1の電極層は、主面と直交する第1の方向から見て、第2の電極層と重なる第1の領域と、第2の電極層と重ならない第2の領域と、を有し、第1の方向から見て、第2の領域はコイル導体と重なり、第2の電極層は、前記第1の電極層の外縁からはみ出る拡張部を有する。
【0007】
電子部品は、素体の主面から露出する第1の電極層と、素体内に埋まった第2の電極層と、を有する。これにより、主面から露出する第1の電極層にて他の電子機器の端子との接合を行う一方、素体内に埋まった第2の電極層にて外部電極の厚みを確保し、素体との固着性を向上することができる。更に、第2の電極層は、第1の電極層の外縁からはみ出る拡張部を有する。従って、拡張部が素体に食い込むことでアンカー効果によって、素体に対する固着性を向上することができる。ここで、第1の電極層は、主面と直交する第1の方向から見て、第2の電極層と重なる第1の領域と、第2の電極層と重ならない第2の領域と、を有する。更に、第1の方向から見て、第2の領域はコイル導体と重なる。この場合、第2の領域に対応する箇所のコイル導体は、第2の電極層よりも遠い位置に配置される第1の電極層と対向する。従って、当該箇所における浮遊容量の発生を抑制することができる。これにより、第2の領域の分だけ、コイル導体全体と外部電極との間に発生する浮遊容量を抑制することができる。以上より、素体と外部電極との固着強度を確保しつつ、浮遊容量の発生を抑制できる。
【0008】
素体は、第1の方向と直交する第2の方向に対向する一対の端面と、第1の方向及び第2の方向と直交する第3の方向に対向する一対の側面と、を有し、第1の方向から見て、一対の端面と外部電極との間、及び一対の側面と外部電極との間には、素体が配置されてよい。この場合、外部電極の縁部が素体から露出する構造に比して、素体との固着強度を向上することができる。
【0009】
一対の外部電極は、当該一対の外部電極の対向方向における内側において、第2の電極層を有しない領域を有してよい。この場合、一対の外部電極同士の間の離間距離を確保できるため、電子部品の実装時におけるハンダによるショートなどを抑制できる。
【0010】
第2の電極層の拡張部は、素体から露出してよい。この場合、電子部品の実装時において、ハンダとの接合面の表面積を増加することができる。
【0011】
コイル導体は、例えば第2の電極層と十分な接続面積が確保出来ない場合、第1の電極層から引き出されてよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、素体と外部電極との固着強度を確保しつつ、浮遊容量の発生を抑制できる、電子部品の製造方法、及び電子部品を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本実施形態における電子部品の斜視図である。
図2図2(a)は、図1のIIa-IIa線に沿った断面図であり、図2(b)は、図1のIIb-IIb線に沿った断面図であり、図2(c)は、図1のIIc-IIc線に沿った断面図である。
図3図3(a)は、電子部品の平面図であり、図3(b)は、図2(c)の拡大図である。
図4】浮遊容量について説明するための図である。
図5】電子部品の製造方法を示す概略図である。
図6】比較例を示す図である。
図7】変形例を示す図である。
図8】変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の実施形態が詳細に説明される。図面の説明において、同一又は同等の要素には同一符号が用いられ、重複する説明は省略される。
【0015】
まず、図1図3を参照して、本実施形態における電子部品1の概略構成を説明する。図1は、本実施形態における電子部品1の斜視図である。図2(a)は、図1のIIa-IIa線に沿った断面図である。図2(b)は、図1のIIb-IIb線に沿った断面図である。図2(c)は、図1のIIc-IIc線に沿った断面図である。図3(a)は、電子部品1の平面図であり、図3(b)は、図2(c)の拡大図である。本実施形態における電子部品は、複数の層をZ軸方向に積層することによって形成されている。層間の境界は、視認できない程度に一体化されている。本実施形態において、X軸方向、Y軸方向、及び、Z軸方向は、互いに直交している。Z軸方向が請求項における「第1の方向」に該当し、Z軸方向と直交するX軸方向が請求項における「第2の方向」に該当し、Z軸方向及びX軸方向と直交するY軸方向が請求項における「第3の方向」に該当する。
【0016】
図1に示すように、電子部品1は、素体2と、外部電極3A,3Bと、を備える。
【0017】
素体2は、直方体形状を呈している。素体2は、その外表面として、Z軸方向に互いに対向する主面2a,2bと、X軸方向に互いに対向する一対の端面2c及び端面2dと、Y軸方向に互いに対向する一対の側面2e及び側面2fと、を有する。主面2aはZ軸方向の正側に配置され、主面2bはZ軸方向の負側に配置される。端面2cはX軸方向の正側に配置され、端面2dはX軸方向の負側に配置される。側面2eはY軸方向の正側に配置され、側面2fはY軸方向の負側に配置される。主面2aは、例えば電子部品1を図示しない他の電子機器(例えば、回路基板又は電子部品)に実装する際、他の電子機器と対向する実装面として規定される。
【0018】
外部電極3A,3Bは、素体2の主面2aに形成される。また、外部電極3A,3Bは、素体2内の後述のコイル部に電気的に接続される。電子部品1を電子機器へ実装する際には、外部電極3A,3Bをハンダ付けなどによって、電子機器の端子へ接合する。
【0019】
図2に示されるように、電子部品1は、素体2の内部に、コイル部4と、引出部6A,6Bと、を備える。コイル部4は、素体2内において、複数のコイル導体7によってコイルのパターンが形成された部分である。なお、引出部6A,6Bもコイル導体7の一部である。本実施形態では、コイル部4は、Y軸方向に平行な中心線CLを軸として巻回されたコイルである。
【0020】
コイル部4は、Y軸方向から見て矩形環状のパターンを形成するように巻回されている。コイル部4は、コイル導体7として、中心線CLに対してZ軸方向の正側に配置されてX軸方向に延びる第1の辺部8Aと、中心線CLに対してZ軸方向の負側に配置されてX軸方向に延びる第2の辺部8Bと、中心線CLに対してX軸方向の正側に配置されてZ軸方向に延びる第3の辺部8Cと、中心線CLに対してX軸方向の負側に配置されてZ軸方向の延びる第4の辺部8Dと、を有する。
【0021】
引出部6Aは、コイル部4の一方の端部からZ軸方向に延びて、外部電極3Aに接続される。引出部6Bは、コイル部4の他方の端部からZ軸方向に延びて、外部電極3Bに接続される。引出部6Aは、Y軸方向の最も負側に配置される第4の辺部8Dにおいて、Z軸方向の正側の端部に接続される。引出部6Bは、Y軸方向の最も正側に配置される第3の辺部8Cにおいて、Z軸方向の正側の端部に接続される。
【0022】
次に、図3を参照して、外部電極3A,3Bの詳細な構成について説明する。なお、外部電極3Aと外部電極3Bとは、Z軸方向から見たときに、中心線CLを基準として線対称な関係にある。よって、以降は外部電極3Aの構成について説明し、外部電極3Bの説明を省略する。外部電極3Aは、第1の電極層10と、第2の電極層11と、を有する。
【0023】
第1の電極層10は、Y軸方向を長手方向とする長方形の形状を有する。第1の電極層10は、主面10a,10bと、側面10c,10dと、端面10e,10fと、を有する。主面10a,10bは、Z軸方向に互いに対向する面である。主面10aは、Z軸方向の正側に配置される。主面10bは、Z軸方向の負側に配置される。側面10c,10dは、X軸方向において互いに対向する面である。側面10cは、X軸方向の正側に配置される。側面10cは、X軸方向の負側に配置される。端面10e,10fは、Y軸方向において互いに対向する面である。端面10eは、Y軸方向の正側に配置される。端面10fは、Y軸方向の負側に配置される。
【0024】
第1の電極層10の側面10cは、中心線からX軸方向の負側に離間する位置に配置される。側面10dは、素体2の端面2dからX軸方向の正側に離間する位置に配置される。端面10eは、素体2の側面2eからY軸方向の負側に離間する位置に配置される。端面10fは、素体2の側面2fからY軸方向の正側に離間する位置に配置される。
【0025】
第1の電極層10は、素体2の主面2aから露出する電極層である。第1の電極層10において、少なくともZ軸方向の正側の主面10aが素体2の主面2aから露出する。また、本実施形態では、側面10c,10d及び端面10e,10fも主面2aから露出する(図3(b)参照)。
【0026】
第2の電極層11は、第1の電極層10よりもZ軸方向の負側に配置され、素体2内に埋まった電極層である(図3(b)参照)。第2の電極層11は、第1の部分12Aと、第2の部分12Bと、を有する。第1の部分12Aは、第1の電極層10のY軸方向の正側の端面10f付近の縁部に対して重なる部分である。第2の部分12Bは、第1の電極層10のY軸方向の負側の端面10f付近の縁部に対して重なる部分である。各部分12A,12Bは、Z軸方向の正側の主面12aにて、第1の電極層10のZ軸方向の負側の主面10bと接合される。
【0027】
第1の部分12A及び第2の部分12Bは、X軸方向に長手方向とする長方形の形状を有する。第1の部分12Aと第2の部分12Bとは、Y軸方向に隙間を形成するように、互いに離間している。両者のY軸方向における離間距離L1は特に限定されないが、各部分12A,12Bが第1の電極層10と重なる領域のY軸方向の寸法L2よりも大きくてよい。
【0028】
第2の電極層11の各部分12A,12Bは、第1の電極層10の外縁からはみ出る拡張部13A,13B,13Cを有する。拡張部13Aは、第1の電極層10のY軸方向における外側の外縁からはみ出る。第1の部分12Aの拡張部13Aは、端面10e側の外縁からはみ出る。第2の部分12Bの拡張部13Bは、端面10f側の外縁からはみ出る。拡張部13Bは、第1の電極層10の側面10c側の外縁からはみ出る。拡張部13Cは、第1の電極層10の側面10d側の外縁からはみ出る。
【0029】
また、本実施形態においては、第2の電極層11の各部分12A,12Bの拡張部13A,13B,13Cは、素体2から露出する。各部分12A,12Bの主面12aは、拡張部13A,13B,13Cにおいて素体2の主面2aから露出する。なお、各部分12A,12Bの四方の周面12bは、素体2に埋まっている。これにより、第2の電極層11は、一部が素体2の内部に埋め込まれつつ、一部が素体2から露出する構成を有する。
【0030】
第1の部分12Aの拡張部13Cは、素体2の端面2dからX軸方向の正側へ離間した位置に配置される。第1の部分12Aの拡張部13Aは、素体2の側面2eからY軸方向の負側へ離間した位置に配置される。第2の部分12Bの拡張部13Cは、素体2の端面2dからX軸方向の正側へ離間した位置に配置される。第2の部分12Bの拡張部13Aは、素体2の側面2fからY軸方向の正側へ離間した位置に配置される。これにより、Z軸方向から見て、一対の端面2c,2dと外部電極3A,3Bとの間、及び一対の側面2e,2fと外部電極3A,3Bとの間には、素体2が配置される。
【0031】
第1の電極層1の中心線CL側の側面10cでは、各部分12A,12Bの拡張部13Bがはみ出ているが、各部分12A,12Bが存在していない領域には第2の電極層11は存在していない。よって、一対の外部電極3A,3Bは、当該一対の外部電極3A,2Bの対向方向(X軸方向)における内側において、第2の電極層11を有しない領域を有する。
【0032】
以上のような構成により、図3(a)に示すように、第1の電極層11は、Z軸方向から見て、第2の電極層11と重なる第1の領域E1と、第2の電極層11と重ならない第2の領域E2と、を有する。第1の領域E1は、第1の電極層11が第1の部分12Aと重なる領域と、第1の電極層11が第2の部分12Bと重なる領域を有する。本実施形態では、第2の領域E2は、Y軸方向の正側の第1の領域E1と、Y軸方向の負側の第1の領域E2と、の間に形成される。図3(a)においては、第2の領域E2にグレースケールを付している。
【0033】
次に、図4を参照して、Z軸方向から見たときの外部電極3A,3Bと、コイル導体7との重なりについて説明する。図4においては、コイル部4のうち、外部電極3A,3Bに最も近く、浮遊容量を生じ得る複数の第1の辺部8Aが破線で示されている。Z軸方向から見て、外部電極3A,3Bのうちの第2の電極層11は、コイル導体7と重なっている。また、外部電極3A、3Bのうちの第2の領域E2はコイル導体7と重なっている。
【0034】
次に、図5を参照して、電子部品1の製造方法について説明する。
【0035】
まず、図5(a)に示すように、素体2の一部となるベース部材30を準備し、当該ベース部材30の上面に素体2の材料を塗布して絶縁層31Aを形成する。絶縁層31Aの上面に、コイル導体7の第2の辺部8Bを形成する。第2の辺部8Bは、絶縁層31Aの上面に電極膜を形成し、レジストを用いて露光し、導体にメッキを行った後でレジストを剥離して、エッチングを行うことで形成される。なお、以降のコイル導体7の形成においては、同趣旨の工程が実行される。
【0036】
次に、図5(b)に示すように、第2の辺部8Bを絶縁層31Bで埋めると共に、これらの上面を研磨する。次に、図5(c)に示すように、コイル導体7の辺部8C,8Dが立ち上がるように形成する。なお、辺部8C,8Dの形成は、コイル導体7の一部の形成とラミネート層で埋設する工程を複数回繰り返すことで実行されてよい。ここでは、図5(d)に示すように、絶縁層31C,31Dの二層分の工程を実行することで、辺部8C,8Dを形成している。その後、コイル導体7の第1の辺部8A及び絶縁層31Eを形成する。第1の辺部8Aに対して、引出部6A,6Bを形成し、当該引出部6A,6Bを埋める絶縁層31F(図5(e)参照)を形成する。
【0037】
次に、図5(e)に示すように、第2の電極層11及び当該第2の電極層11を埋める絶縁層31Gを形成する。これにより、素体2が完成する。そして、図5(f)に示すように、第2の電極層11の主面に第1の電極層10を形成する。これにより、外部電極3A,3Bが完成する。
【0038】
次に、本実施形態に係る電子部品1の作用・効果について説明する。
【0039】
電子部品1は、素体2の主面2aから露出する第1の電極層10と、素体2内に埋まった第2の電極層11と、を有する。これにより、主面2aから露出する第1の電極層10にて他の電子機器の端子との接合を行う一方、素体2内に埋まった第2の電極層11にて外部電極3A,3Bの厚みを確保し、素体2との固着性を向上することができる。更に、第2の電極層11は、第1の電極層10の外縁からはみ出る拡張部13A,13B,13Cを有する。従って、拡張部13A,13B,13Cが素体2に食い込むことでアンカー効果によって、素体2に対する固着性を向上することができる。
【0040】
ここで、図6を参照して比較例に係る電子部品100の浮遊容量について説明する。電子部品100は、第1の電極層10と第2の電極層11が同形状であり、第1の電極層10の全面にわたり第2の電極層11と重なる第1の領域E1である点以外、本実施形態に係る電子部品1と同様な構成を有する。比較例に係る部品100では、コイル導体7のうち、外部電極3A,3Bと重なる箇所の全域において、コイル導体7から近い第2の電極層11と対向する。コイル導体7のうち、第2の電極層11と対向する箇所にハッチングが付してある。このように、第2の電極層11と対向するコイル導体7の面積が大きいことにより、浮遊容量が大きくなってしまう可能性がある。
【0041】
これに対し、本実施形態に係る電子部品1では、第1の電極層10は、Z軸方向から見て、第2の電極層11と重なる第1の領域E1と、第2の電極層11と重ならない第2の領域E2と、を有する。更に、Z軸方向から見て、第2の領域E2はコイル導体7と重なる。この場合、第2の領域E2に対応する箇所のコイル導体7は、第2の電極層11よりも遠い位置に配置される第1の電極層10と対向する。従って、当該箇所における浮遊容量の発生を抑制することができる。これにより、第2の領域E2の分だけ、コイル導体7全体と外部電極3A,3Bとの間に発生する浮遊容量を抑制することができる。具体的に、図4に示すハッチングの部分の面積は、図6に示すハッチングの部分の面積に比して少ない。当該減少分だけ、浮遊容量の発生が抑制できている。以上より、素体2と外部電極3A,3Bとの固着強度を確保しつつ、浮遊容量の発生を抑制できる。
【0042】
素体2は、X軸方向に対向する一対の端面2c,2dと、Y軸方向に対向する一対の側面2e,2fと、を有し、Z軸方向から見て、一対の端面2c,2dと外部電極3A,3Bとの間、及び一対の側面2e,2fと外部電極3A,3Bとの間には、素体2が配置されてよい。この場合、外部電極3A,3Bの縁部が素体から露出する構造に比して、素体2との固着強度を向上することができる。
【0043】
一対の外部電極3A,3Bは、当該一対の外部電極3A,3Bの対向方向(X軸方向)における内側において、第2の電極層11を有しない領域を有してよい。この場合、一対の外部電極3A,3B同士の間の離間距離を確保できるため、電子部品1の実装時におけるハンダによるショートなどを抑制できる。
【0044】
第2の電極層11の拡張部13A,13B,13Cは、素体2から露出してよい。この場合、電子部品1の実装時において、ハンダとの接合面の表面積を増加することができる。
【0045】
本発明は、上述の実施形態に限定されるものではない。
【0046】
例えば、コイル導体7(引出部6A,6B)は、図3の仮想線で示すように、第1の電極層10から引き出されてよい。電極層11の面積が小さく、引き出し部との接続部を十分に確保出来ない場合は第1の電極層10から引出部6A,6Bを引き出すことで、外部電極3A,3Bと引出部6A,6Bとの接続面積を確保することができる。
【0047】
例えば、第2の電極層11の形状は、発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜変更可能である。
【0048】
また、上述の実施形態では、第2の電極層12の主面12aが素体2の主面2aから露出していたが、素体2内に埋まっていてもよい。この場合、第2の電極層12によるアンカー効果を更に向上できる。
【0049】
具体的に、図7に示すような第2の電極層112を採用してもよい。図7(a)は、外部電極3Aの平面図である。図7(b)は、第2の電極層112を省略した様子を示し、図7(c)は、第1の電極層10を省略した様子を示す。図7(d)は、図3(b)に対応する箇所の断面図を示す。図7(a)に示すように、第2の電極層112は、第1の電極層10の端面10eに沿ってX軸方向に延びる第1の部分112aと、端面10fに沿ってX軸方向に延びる第2の部分112bと、側面10dに沿ってY軸方向に延びる第3の部分112cと、を備える。また、第2の電極層112は、第1の電極層10の各々の縁部からはみ出る拡張部113A,113B,113Cを有する。なお、第2の電極層112は、側面10c側からはみ出る部分を有していない。
【0050】
このような構造により、第1の電極層10は、端面10e,10f及び側面10d付近の第1の領域E1と、各部分112a,112b,112cで囲まれる第2の領域E2と、を有する。なお、図7(d)に示すように、第2の電極層112全体が素体2に埋まり、第1の電極層10の各面10c,10d,10e,10fも素体2に埋まっている。これにより、外部電極3Aの素体2に対する固着強度が向上する。
【0051】
また、図8に示すような外部電極3Aを採用してもよい。図8(a)は、外部電極3Aの平面図である。図8(b)は、第2の電極層11を省略した様子を示し、図8(c)は、第1の電極層110を省略した様子を示す。図8(d)は、図3(b)に対応する箇所の断面図を示す。図8(b)に示すように、第1の電極層110は、図7に示すような長方形状の電極層10における四つ角に矩形状の切欠部115A,115B,115C,115Dを形成すると共に、Y軸方向の中央部の各縁部に矩形状の切欠部115E,115Fを形成した形状を有する。これに対し、第2の電極層11は、各切欠部115A,115B,115C,115D,115E,115Fに対応する位置に、矩形状の電極部120A,120B,120C,120D,120E,120Fを有している。電極部120A,120B,120C,120D,120E,120Fは、各切欠部115A,115B,115C,115D,115E,115Fの縁部と重なると共に、切り欠かれた箇所から露出する部分を拡張部としている。
【0052】
[形態1]
実装面である主面を有する素体と、
前記素体内において、複数のコイル導体によってコイルのパターンが形成されたコイル部と、
前記素体の前記主面に形成され、前記コイル部に電気的に接続される一対の外部電極と、を備え、
前記外部電極は、前記素体の主面から露出する第1の電極層と、前記素体内に埋まった第2の電極層と、を有し、
前記第1の電極層は、前記主面と直交する第1の方向から見て、前記第2の電極層と重なる第1の領域と、前記第2の電極層と重ならない第2の領域と、を有し、
前記第1の方向から見て、前記第2の領域は前記コイル導体と重なり、
前記第2の電極層は、前記第1の電極層の外縁からはみ出る拡張部を有する、電子部品。
[形態2]
前記素体は、前記第1の方向と直交する第2の方向に対向する一対の端面と、前記第1の方向及び前記第2の方向と直交する第3の方向に対向する一対の側面と、を有し、
前記第1の方向から見て、前記一対の端面と前記外部電極との間、及び前記一対の側面と前記外部電極との間には、前記素体が配置される、形態1に記載の電子部品。
[形態3]
前記一対の外部電極は、当該一対の外部電極の対向方向における内側において、前記第2の電極層を有しない領域を有する、形態1又は2に記載の電子部品。
[形態4]
前記第2の電極層の前記拡張部は、前記素体から露出する、形態1~3の何れか一項に記載の電子部品。
[形態5]
前記コイル導体は、前記第1の電極層から引き出される、形態1~4のいずれか一項に記載の電子部品。
【符号の説明】
【0053】
1…電子部品、2…素体、3A,3B…外部電極、4…コイル部、7…コイル導体、10…コイル部、10…第1の電極層、11…第2の電極層、13A,13B,13C…拡張部、E1…第1の領域、E2…第2の領域。
図1
図2
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図5
図6
図7
図8