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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024132274
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】車両制御装置
(51)【国際特許分類】
   B62D 6/00 20060101AFI20240920BHJP
   B60R 99/00 20090101ALI20240920BHJP
   B60W 30/10 20060101ALI20240920BHJP
   B62D 101/00 20060101ALN20240920BHJP
   B62D 113/00 20060101ALN20240920BHJP
【FI】
B62D6/00
B60R99/00 340
B60W30/10
B62D101:00
B62D113:00
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023042996
(22)【出願日】2023-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 大介
(72)【発明者】
【氏名】荻野 淳人
【テーマコード(参考)】
3D232
3D241
【Fターム(参考)】
3D232CC20
3D232DA03
3D232DA23
3D232DA24
3D232DA27
3D232DA32
3D232DA88
3D232DA92
3D232DA95
3D232DB11
3D232DC05
3D232DC12
3D232DC38
3D232EB04
3D241BA15
3D241BA60
3D241BB03
3D241CC01
3D241CC08
3D241CC17
3D241CE01
3D241CE05
3D241DA13Z
3D241DA23Z
3D241DA52Z
3D241DA58Z
3D241DB02Z
3D241DB32Z
(57)【要約】
【課題】車両を目標経路に沿って走行させる場合の経路追従性を向上させる。
【解決手段】車両を目標経路に沿って走行させる車両制御装置は、現在から所定時間だけ後の車両の位置を推定して推定位置を出力する車両位置推定部と、目標経路および推定位置に基づいて、車両の実ヨー角と目標経路に対応する目標ヨー角の偏差であるヨー角偏差を算出するヨー角偏差算出部と、目標経路および推定位置に基づいて、車両の実横方向位置と目標経路に対応する目標横方向位置の偏差である横方向偏差を算出する横方向偏差算出部と、目標経路に基づく目標曲率と、ヨー角偏差と、横方向偏差と、に基づいて、目標操舵角を算出する目標操舵角算出部と、車両を走行させるときに、目標操舵角に基づいて操舵を制御する制御部と、を備える。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両を目標経路に沿って走行させる車両制御装置であって、
現在から所定時間だけ後の前記車両の位置を推定して推定位置を出力する車両位置推定部と、
前記目標経路および前記推定位置に基づいて、前記車両の実ヨー角と前記目標経路に対応する目標ヨー角の偏差であるヨー角偏差を算出するヨー角偏差算出部と、
前記目標経路および前記推定位置に基づいて、前記車両の実横方向位置と前記目標経路に対応する目標横方向位置の偏差である横方向偏差を算出する横方向偏差算出部と、
前記目標経路に基づく目標曲率と、前記ヨー角偏差と、前記横方向偏差と、に基づいて、目標操舵角を算出する目標操舵角算出部と、
前記車両を走行させるときに、前記目標操舵角に基づいて操舵を制御する制御部と、を備える車両制御装置。
【請求項2】
前記車両位置推定部は、前記車両の現在位置と、前記車両の移動速度および移動方向と、に基づいて、現在から前記所定時間だけ後の前記車両の位置を推定して前記推定位置を出力する、請求項1に記載の車両制御装置。
【請求項3】
前記車両の前記現在位置は、前記車両の自車位置推定部のステア応答遅れ適合時間を予め考慮して算出されており、
前記車両位置推定部は、前記ステア応答遅れ適合時間が大きいほど、前記所定時間として小さな値を用いる、請求項2に記載の車両制御装置。
【請求項4】
前記車両位置推定部は、前記移動速度として、目標車速を用いる、請求項2に記載の車両制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、車両制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両を目標経路に沿って走行させる技術の開発が進められている。その技術では、車両がカーブ走行する場合、例えば、目標経路に基づく目標曲率を用いたFF(フィードフォワード)制御を行うとともに、車両の横方向偏差とヨー角偏差を用いたFB(フィードバック)制御を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-30482号公報
【特許文献2】特開2016-199080号公報
【特許文献3】特開2018-39293号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述の従来技術では、車両の経路追従性が良くない場合がある。理由の1つとしては、制御周期やCAN(Controller Area Network)周期などによる制御遅れによって、横方向偏差とヨー角偏差を用いたFB制御が遅れていることが考えられる。
【0005】
そこで、本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、車両を目標経路に沿って走行させる場合の経路追従性を向上させることができる車両制御装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、実施形態の車両制御装置は、車両を目標経路に沿って走行させる車両制御装置であって、現在から所定時間だけ後の前記車両の位置を推定して推定位置を出力する車両位置推定部と、前記目標経路および前記推定位置に基づいて、前記車両の実ヨー角と前記目標経路に対応する目標ヨー角の偏差であるヨー角偏差を算出するヨー角偏差算出部と、前記目標経路および前記推定位置に基づいて、前記車両の実横方向位置と前記目標経路に対応する目標横方向位置の偏差である横方向偏差を算出する横方向偏差算出部と、前記目標経路に基づく目標曲率と、前記ヨー角偏差と、前記横方向偏差と、に基づいて、目標操舵角を算出する目標操舵角算出部と、前記車両を走行させるときに、前記目標操舵角に基づいて操舵を制御する制御部と、を備える。
【0007】
上記構成によれば、現在から所定時間だけ後の車両の推定位置に基づいてヨー角偏差と横方向偏差を算出し、それらを用いて目標操舵角を算出することで、車両の経路追従性を向上させることができる。
【0008】
また、車両制御装置において、前記車両位置推定部は、前記車両の現在位置と、前記車両の移動速度および移動方向と、に基づいて、現在から前記所定時間だけ後の前記車両の位置を推定して前記推定位置を出力する。
【0009】
上記構成によれば、具体的に、車両の現在位置と、車両の移動速度および移動方向と、に基づいて、現在から所定時間だけ後の車両の位置を推定することができる。
【0010】
また、車両制御装置において、前記車両の前記現在位置は、前記車両の自車位置推定部のステア応答遅れ適合時間を予め考慮して算出されており、前記車両位置推定部は、前記ステア応答遅れ適合時間が大きいほど、前記所定時間として小さな値を用いる。
【0011】
上記構成によれば、所定時間としてより適切な値を用いることができ、車両の経路追従性をさらに向上させることができる。
【0012】
また、車両制御装置において、前記車両位置推定部は、前記移動速度として、目標車速を用いる。
【0013】
上記構成によれば、実際の車速よりも目標車速のほうがより安定しているので、車両位置の推定結果をより安定させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、実施形態の車両の車室の一部が透視された状態が示された例示的な斜視図である。
図2図2は、実施形態の車両の例示的な平面図(俯瞰図)である。
図3図3は、実施形態の車両のダッシュボードの一例の車両後方からの視野での図である。
図4図4は、実施形態の車両制御システムの構成の例示的なブロック図である。
図5図5は、実施形態における制御遅れと先読み時間の関係を示す図である。
図6図6は、実施形態におけるヨー角偏差と横方向偏差の説明図である。
図7図7は、実施形態における操舵制御ブロック線図である。
図8図8は、実施形態において、車両の前進時に関して、異なる先読み時間ごとの横方向偏差とヨー角偏差とを示すグラフである。
図9図9は、実施形態において、車両の後退時に関して、異なる先読み時間ごとの横方向偏差とヨー角偏差とを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の例示的な実施形態が開示される。以下に示される実施形態の構成、ならびに当該構成によってもたらされる作用、結果、および効果は、例である。本発明は、以下の実施形態に開示される構成以外によっても実現可能であるとともに、基本的な構成に基づく種々の効果や、派生的な効果のうちの少なくとも一つを得ることが可能である。
【0016】
本実施形態の車両1は、例えば、不図示の内燃機関を駆動源とする自動車、すなわち内燃機関自動車であってもよいし、不図示の電動機を駆動源とする自動車、すなわち電気自動車や燃料電池自動車等であってもよいし、それらの双方を駆動源とするハイブリッド自動車であってもよいし、他の駆動源を備えた自動車であってもよい。また、車両1は、種々の変速装置を搭載することができるし、内燃機関や電動機を駆動するのに必要な種々の装置、例えばシステムや部品等を搭載することができる。また、車両1における車輪3の駆動に関わる装置の方式や、数、レイアウト等は、種々に設定することができる。
【0017】
図1は、実施形態の車両の車室の一部が透視された状態が示された例示的な斜視図である。図2は、実施形態の車両の例示的な平面図(俯瞰図)である。
【0018】
図1に例示されるように、車体2は、不図示の乗員が乗車する車室2aを構成している。車室2a内には、乗員としてのドライバーの座席2bに臨む状態で、操舵部4、加速操作部5、制動操作部6、変速操作部7等が設けられている。
【0019】
操舵部4は、例えば、ダッシュボード24から突出したステアリングホイールである。加速操作部5は、例えば、ドライバーの足下に位置されたアクセルペダルである。制動操作部6は、例えば、ドライバーの足下に位置されたブレーキペダルである。変速操作部7は、例えば、センターコンソールから突出したシフトレバーである。なお、操舵部4、加速操作部5、制動操作部6、変速操作部7は、これらに限定されない。
【0020】
また、車室2a内には、表示出力部としての表示装置8や、音声出力部としての音声出力装置9が設けられている。表示装置8は、例えば、LCD(liquid crystal display)や、OELD(organic electroluminescent display)等である。音声出力装置9は、例えば、スピーカである。また、表示装置8は、例えば、タッチパネル等、透明な操作入力部10で覆われている。乗員は、操作入力部10を介して表示装置8の表示画面に表示される画像を視認することができる。また、乗員は、表示装置8の表示画面に表示される画像に対応した位置において手指等で操作入力部10を触れたり押したり動かしたりして操作することで、操作入力を実行することができる。
【0021】
これらの表示装置8、音声出力装置9、操作入力部10等は、例えば、ダッシュボード24の車幅方向すなわち左右方向の中央部に位置されたモニタ装置11に設けられている。モニタ装置11は、スイッチ、ダイヤル、ジョイスティック、押しボタン等の不図示の操作入力部を有することができる。また、モニタ装置11とは異なる車室2a内の他の位置に不図示の音声出力装置を設けることができる。また、モニタ装置11の音声出力装置9と他の音声出力装置から音声を出力することができる。なお、モニタ装置11は、例えば、ナビゲーションシステムやオーディオシステムと兼用されうる。
【0022】
また、車室2a内には、表示装置8とは別の表示装置12(図3参照)が設けられている。図3は、実施形態の車両のダッシュボードの一例の車両後方からの視野での図である。図3に例示されるように、表示装置12は、例えば、ダッシュボード24の計器盤部25に設けられ、計器盤部25の略中央で、速度表示部25aと回転数表示部25bとの間に位置されている。表示装置12の画面の大きさは、表示装置8の画面(図1)の大きさよりも小さい。この表示装置12には、主として車両1の走行制御(例えば駐車支援制御)に関する情報を示す画像が表示されうる。表示装置12で表示される情報量は、表示装置8で表示される情報量より少なくてもよい。表示装置12は、例えば、LCDや、OELD等である。なお、表示装置8に、表示装置12で表示される情報が表示されてもよい。
【0023】
また、図1及び図2に例示されるように、車両1は、例えば、四輪自動車であり、左右二つの前輪3Fと、左右二つの後輪3Rとを有する。これら四つの車輪3は、いずれも転舵可能に構成されうる。
【0024】
図4は、実施形態の車両制御システムの構成の例示的なブロック図である。図4に例示されるように、車両1は、少なくとも二つの車輪3を操舵するEPS13(電動パワーステアリングシステム)を有している。EPS13は、アクチュエータ13aと、トルクセンサ13bとを有する。EPS13は、ECU14(electronic control unit)等によって電気的に制御されて、アクチュエータ13aを動作させる。以下の説明においては、EPS13は、電動パワーステアリングシステムや、SBW(steer by wire)システム等である。EPS13は、アクチュエータ13aによって操舵部4にトルク、すなわちアシストトルクを付加して操舵力を補ったり、アクチュエータ13aによって車輪3を転舵したりする。この場合、アクチュエータ13aは、一つの車輪3を転舵してもよいし、複数の車輪3を転舵してもよい。また、トルクセンサ13bは、例えば、ドライバーが操舵部4に与えるトルクを検出する。
【0025】
また、図2に例示されるように、車体2には、複数の撮像部15として、例えば四つの撮像部15a~15dが設けられている。撮像部15は、例えば、CCD(charge coupled device)やCIS(CMOS image sensor)等の撮像素子を内蔵するデジタルカメラである。撮像部15は、所定のフレームレートで動画データを出力することができる。撮像部15は、それぞれ、広角レンズまたは魚眼レンズを有し、水平方向には例えば140°~190°の範囲を撮影することができる。また、撮像部15の光軸は斜め下方に向けて設定されている。よって、撮像部15は、車両1が移動可能な路面や車両1が駐車可能な領域を含む車体2の周辺の外部の環境を逐次撮影し、撮像画像データとして出力する。
【0026】
撮像部15aは、例えば、車体2の後側の端部2eに位置され、リヤトランクのドア2hの下方の壁部に設けられている。撮像部15bは、例えば、車体2の右側の端部2fに位置され、右側のドアミラー2gに設けられている。撮像部15cは、例えば、車体2の前側、すなわち車両前後方向の前方側の端部2cに位置され、フロントバンパー等に設けられている。撮像部15dは、例えば、車体2の左側、すなわち車幅方向の左側の端部2dに位置され、左側の突出部としてのドアミラー2gに設けられている。ECU14は、複数の撮像部15で得られた画像データに基づいて演算処理や画像処理を実行し、より広い視野角の画像を生成したり、車両1を上方から見た仮想的な俯瞰画像(平面画像)を生成したりすることができる。
【0027】
また、ECU14は、撮像部15の画像から、車両1の周辺の路面に示された区画線等を識別し、区画線等に示された駐車区画を検出(抽出)する。
【0028】
また、図1及び図2に例示されるように、車体2には、複数の測距部16,17として、例えば四つの測距部16a~16dと、八つの測距部17a~17hとが設けられている。測距部16,17は、例えば、超音波を発射してその反射波を捉えるソナーである。ソナーは、ソナーセンサ、あるいは超音波探知器とも称されうる。ECU14は、測距部16,17の検出結果により、車両1の周囲に位置された障害物等の物体の有無や当該物体までの距離を測定することができる。すなわち、測距部16,17は、物体を検出する検出部の一例である。なお、測距部17は、例えば、比較的近距離の物体の検出に用いられ、測距部16は、例えば、測距部17よりも遠い比較的長距離の物体の検出に用いられうる。また、測距部17は、例えば、車両1の前方および後方の物体の検出に用いられ、測距部16は、車両1の側方の物体の検出に用いられうる。
【0029】
また、図4に例示されるように、車両を目標経路に沿って走行させる車両制御システム100では、ECU14、モニタ装置11、EPS13、測距部16,17等の他、ブレーキシステム18、舵角センサ19、アクセルセンサ20、シフトセンサ21、車輪速センサ22等が、電気通信回線としての車内ネットワーク23を介して電気的に接続されている。
【0030】
車内ネットワーク23は、例えば、CAN(controller area network)として構成されている。ECU14は、車内ネットワーク23を通じて制御信号を送ることで、EPS13、ブレーキシステム18等を制御することができる。また、ECU14は、車内ネットワーク23を介して、トルクセンサ13b、ブレーキセンサ18b、舵角センサ19、測距部16、測距部17、アクセルセンサ20、シフトセンサ21、車輪速センサ22等の検出結果や、操作入力部10等の操作信号等を、受け取ることができる。
【0031】
ECU14は、図4に示すように、例えば、CPU14a(central processing unit)や、ROM14b(read only memory)、RAM14c(random access memory)、表示制御部14d、音声制御部14e、SSD14f(solid state drive、フラッシュメモリ)等を有している。
【0032】
CPU14aは、例えば、表示装置8,12で表示される画像に関連した画像処理や、車両1の移動目標位置の決定、車両1の移動経路の演算、物体との干渉の有無の判断、車両1の自動制御、自動制御の解除等の、各種の演算処理および制御を実行することができる。CPU14aは、ROM14b等の不揮発性の記憶装置にインストールされ記憶されたプログラムを読み出し、当該プログラムにしたがって演算処理を実行することができる。
【0033】
RAM14cは、CPU14aでの演算で用いられる各種のデータを一時的に記憶する。また、表示制御部14dは、ECU14での演算処理のうち、主として、撮像部15で得られた画像データを用いた画像処理や、表示装置8,12で表示される画像データの合成等を実行する。また、音声制御部14eは、ECU14での演算処理のうち、主として、音声出力装置9で出力される音声データの処理を実行する。また、SSD14fは、書き換え可能な不揮発性の記憶部であって、ECU14の電源がオフされた場合にあってもデータを記憶することができる。
【0034】
なお、CPU14a、ROM14b、RAM14c等は、同一パッケージ内に集積されうる。また、ECU14は、CPU14aに替えて、DSP(digital signal processor)等の他の論理演算プロセッサや論理回路等が用いられる構成であってもよい。また、SSD14fに替えてHDD(hard disk drive)が設けられてもよいし、SSD14fやHDDは、ECU14とは別に設けられてもよい。
【0035】
ブレーキシステム18は、例えば、ブレーキのロックを抑制するABS(anti-lock brake system)や、コーナリング時の車両1の横滑りを抑制する横滑り防止装置(ESC:electronic stability control)、ブレーキ力を増強させる(ブレーキアシストを実行する)電動ブレーキシステム、BBW(brake by wire)等である。ブレーキシステム18は、アクチュエータ18aを介して、車輪3ひいては車両1に制動力を与える。
【0036】
また、ブレーキシステム18は、左右の車輪3の回転差などからブレーキのロックや、車輪3の空回り、横滑りの兆候等を検出して、各種制御を実行することができる。ブレーキセンサ18bは、例えば、制動操作部6の可動部の位置を検出するセンサである。ブレーキセンサ18bは、制動操作部6の可動部としてのブレーキペダルの位置を検出することができる。ブレーキセンサ18bは、変位センサを含む。
【0037】
舵角センサ19は、例えば、ステアリングホイール等の操舵部4の操舵量を検出するセンサである。舵角センサ19は、例えば、ホール素子などを用いて構成される。ECU14は、ドライバーによる操舵部4の操舵量や、自動操舵時の各車輪3の操舵量等を、舵角センサ19から取得して各種制御を実行する。なお、舵角センサ19は、操舵部4に含まれる回転部分の回転角度を検出する。舵角センサ19は、角度センサの一例である。
【0038】
アクセルセンサ20は、例えば、加速操作部5の可動部の位置を検出するセンサである。アクセルセンサ20は、加速操作部5の可動部としてのアクセルペダルの位置を検出することができる。アクセルセンサ20は、変位センサを含む。
【0039】
シフトセンサ21は、例えば、変速操作部7の可動部の位置を検出するセンサである。シフトセンサ21は、変速操作部7の可動部としての、レバーや、アーム、ボタン等の位置を検出することができる。シフトセンサ21は、変位センサを含んでもよいし、スイッチとして構成されてもよい。
【0040】
車輪速センサ22は、車輪3の回転量や単位時間当たりの回転数を検出するセンサである。車輪速センサ22は、検出した回転数を示す車輪速パルス数をセンサ値として出力する。車輪速センサ22は、例えば、ホール素子などを用いて構成されうる。ECU14は、車輪速センサ22から取得したセンサ値に基づいて車両1の移動量などを演算し、各種制御を実行する。なお、車輪速センサ22は、ブレーキシステム18に設けられている場合もある。その場合、ECU14は、車輪速センサ22の検出結果を、ブレーキシステム18を介して取得する。
【0041】
なお、上述した各種センサやアクチュエータの構成や、配置、電気的な接続形態等は、一例であって、種々に設定(変更)することができる。
【0042】
本実施形態では、ECU14は、ハードウェアとソフトウェア(制御プログラム)が協働することにより、車両制御装置としての機能の少なくとも一部を実現している。
【0043】
以下、このような車両1を目標経路に沿って走行させる場合に、経路追従性を向上させることができる技術について、まず、図5図7を参照して説明する。
【0044】
図5は、実施形態における制御遅れと先読み時間の関係を示す図である。図6は、実施形態におけるヨー角偏差と横方向偏差の説明図である。図7は、実施形態における操舵制御ブロック線図である。
【0045】
図7に示す各部201~209は、例えば、ECU14(図4)の機能として実現される。
【0046】
自車位置推定部201(車両位置推定部)は、制御遅れ時間に基づいて予め設定された所定時間の情報を用いて、現在から所定時間だけ後の車両1の位置を推定して推定位置を出力する。
【0047】
ここで、図5の符号T1は、制御周期やCAN周期などによる制御遅れ時間である。従来技術では、車両1の経路追従性が良くない理由の1つとして、この制御遅れ時間(符号T1)によって、横方向偏差とヨー角偏差を用いたFB制御が遅れていることが考えられる。つまり、従来技術では、車両1の現在位置を用いて横方向偏差とヨー角偏差を算出してFB制御を行っている。
【0048】
そこで、本実施形態では、車両1の横方向偏差とヨー角偏差を算出する場合に、車両1の現在位置を用いるのではなく、車両1の現在から所定時間だけ後の推定位置を用いる。その場合に設定されている所定時間のことを、以下では「先読み時間」(符号T3)とも称する。
【0049】
なお、図5では、先読み時間(符号T3)と自車位置推定時のステア応答遅れ適合時間(符号T2)を足したものが、制御遅れ時間(符号T1)と等しくなることを示している。これは、自車位置推定時に、車両1の操舵制御時のステア応答遅れ時間(タイヤ角の応答遅れ時間)が予め考慮されているためである。したがって、自車位置推定部201は、自車位置推定時のステア応答遅れ時間が大きいほど、先読み時間として小さな値を用いる。
【0050】
また、自車位置推定部201は、車両1の現在位置と、車両1の移動速度および移動方向と、に基づいて、現在から所定時間だけ後の車両1の位置を推定して推定位置を出力する。具体的には、例えば、図6に示すように、車両1の現在位置(符号P1)を基準に、先読み時間に車速を乗算して得られた距離の分の移動先を、先読み位置(符号P2)(推定位置)とする。
【0051】
また、自車位置推定部201は、上述の移動速度として、実際の車速を用いてもよいし、あるいは、目標車速を用いるようにしてもよい。
【0052】
また、自車位置推定部201は、所定時間として、車両1の前進時には前進時用として予め設定された第1の所定時間を用いて、車両1の後退時には後退時用として予め設定された第2の所定時間を用いるようにしてもよい。
【0053】
また、自車位置推定部201は、上述の推定の際に、車両1が直線的に移動するものとしてもよいが、車両1が曲線的に移動するものとしてもよい。具体的には、自車位置推定部201は、さらに、車両1の現在曲率、目標曲率、操舵角の少なくともいずれかを用いて、車両1が曲線的に移動するものとして、現在から所定時間だけ後の車両1の位置を推定して推定位置を出力するようにしてもよい。
【0054】
なお、自車位置推定部201は、車両1の推定位置のほかに、車輪速、操舵角、車速などの各種情報も併せて出力する。
【0055】
偏差算出部202(ヨー角偏差算出部)は、目標経路(図6の符号B)および推定位置(図6の符号P2(先読み位置))に基づいて、車両1の実ヨー角(図6の符号V2)と目標経路(図6の符号B)に対応する目標ヨー角(図6の符号V1)の偏差であるヨー角偏差(図6のeθ_prv)を算出する。なお、図6において、符号A1、A2の点は、それぞれ、車両1の現在位置(符号P1)、先読み位置(符号P2)の基準点から目標経路(符号B)に対しておろした垂線の足である。
【0056】
また、偏差算出部202(横方向偏差算出部)は、目標経路(図6の符号B)および推定位置(図6の符号P2(先読み位置))に基づいて、車両1の実横方向位置(図6の符号P2の基準点)と目標経路(図6の符号B)に対応する目標横方向位置(符号A2の点)の偏差である横方向偏差(図6のey_prv)を算出する。
【0057】
乗算部203は、偏差算出部202から出力された横方向偏差に対して、ゲインKeを乗算する。
【0058】
乗算部204は、偏差算出部202から出力されたヨー角偏差に対して、ゲインKθを乗算する。
【0059】
なお、横方向偏差とヨー角偏差は、それぞれ、偏差算出部202で車両の進行方向に応じて適切な符号(例えば、車両の前進時と後進時で+/-の符号が逆)で算出される。
【0060】
加算部205は、乗算部203から出力された値と、乗算部204から出力された値と、を加算する。
【0061】
加減算部206は、入力した目標曲率(目標経路に基づく目標曲率)を加算するとともに、加算部205から出力された値を減算する。
【0062】
目標操舵角算出部207は、加減算部206から出力された目標曲率、および、曲率・操舵角マップ2071に基づいて、目標操舵角を算出する。曲率・操舵角マップ2071は、目標曲率と操舵角との関係を示す情報である。
【0063】
フィルタ処理部208は、目標操舵角算出部207から出力された目標操舵角に対して、なまし処理(ローパスフィルタ処理)を行う。このなまし処理により、ノイズが除去され、舵角変化がなめらかになる。
【0064】
ガード処理部209は、フィルタ処理部208から出力された目標操舵角に対して、予め設定されている最大操舵角を超えないようにするガード処理を行う。
【0065】
EPS13は、車両1を走行させるときに、ガード処理部209から出力された目標操舵角に基づいて操舵を制御する。
【0066】
次に、図8図9を参照して、本実施形態の車両1に関する効果について説明する。図8は、実施形態において、車両の前進時に関して、異なる先読み時間ごとの横方向偏差とヨー角偏差とを示すグラフである。横軸は時間である。図9は、実施形態において、車両の後退時に関して、異なる先読み時間ごとの横方向偏差とヨー角偏差とを示すグラフである。
【0067】
図8図9において、(a)の縦軸は横方向偏差である。(b)の縦軸はヨー角偏差である。符号G1~G4のグラフは、それぞれ、先読み時間が0ms(ミリ秒)、12ms、24ms、36msの場合を示す。
【0068】
図8から、車両の前進時では、符号G4(先読み時間が36msの場合)で各偏差がゼロ付近となり、効果が大きいことがわかる。また、図9から、車両の後進時では、符号G2(先読み時間が12ms)で各偏差がゼロ付近となり、効果が大きいことがわかる。
【0069】
図8図9からわかるように、本実施形態の手法によって、車両1の経路追従性が向上する。また、車両1の前進時と後退時について、所定時間として別々の値を採用するのがよい場合があることがわかる。
【0070】
このように、本実施形態の車両1によれば、現在から所定時間だけ後の車両の推定位置に基づいてヨー角偏差と横方向偏差を算出し、それらを用いて目標操舵角を算出することで、車両1の経路追従性を向上させることができる。
【0071】
また、自車位置推定部201は、具体的に、車両1の現在位置と、車両の移動速度および移動方向と、に基づいて、現在から所定時間だけ後の車両1の位置を推定することができる。
【0072】
また、自車位置推定部201は、車両1の位置推定に使用されたステア応答遅れ適合時間が大きいほど、所定時間として小さな値を用いることで、所定時間としてより適切な値を用いることができ、車両1の経路追従性をさらに向上させることができる。
【0073】
また、自車位置推定部201は、移動速度として目標車速を用いるようにすれば、実際の車速よりも目標車速のほうがより安定しているので、車両1の位置推定結果をより安定させることができる。
【0074】
また、所定時間として、前進時用として予め設定された第1の所定時間と、後退時用として予め設定された第2の所定時間と、を使い分けることで、車両1の前進時と後退時で所定時間としての適切な値が異なる場合に対応することができる。
【0075】
また、車両1がカーブ走行している場合に、車両1が曲線的に移動するものとして現在から所定時間だけ後の車両1の位置を推定することで、より正確な計算結果を得ることができる。
【0076】
なお、車両1で実行されるプログラムは、インストール可能な形式または実行可能な形式のファイルでCD-ROM、CD-R、メモリカード、DVD(Digital Versatile Disk)、フレキシブルディスク(FD)等のコンピュータで読み取り可能な記憶媒体に記憶されてコンピュータプログラムプロダクトとして提供されるようにしてもよい。また、当該プログラムを、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供するようにしてもよい。また、当該プログラムを、インターネット等のネットワーク経由で提供または配布するようにしてもよい。
【0077】
以上、本発明の実施形態を説明したが、上記実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。この実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0078】
1…車両、10…操作入力部、11…モニタ装置、12…表示装置、13…EPS、14…ECU、100…車両制御システム、201…自車位置推定部、202…偏差算出部、203…乗算部、204…乗算部、205…加算部、206…加減算部、207…目標操舵角算出部、208…フィルタ処理部、209…ガード処理部
図1
図2
図3
図4
図5
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図7
図8
図9