(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024132284
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】コイル部品
(51)【国際特許分類】
H01F 17/00 20060101AFI20240920BHJP
【FI】
H01F17/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023043012
(22)【出願日】2023-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(72)【発明者】
【氏名】橋本 龍司
(72)【発明者】
【氏名】奥澤 信之
(72)【発明者】
【氏名】高橋 悠太
(72)【発明者】
【氏名】保坂 弘輝
(72)【発明者】
【氏名】高久 宗裕
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 進之介
【テーマコード(参考)】
5E070
【Fターム(参考)】
5E070AA01
5E070AB01
5E070CB13
5E070CB17
(57)【要約】
【課題】接続部において二つの導体が接触する部分の接合強度の向上が図れるコイル部品を提供する。
【解決手段】コイル部品1は、複数の絶縁層が積層されて形成されており、主面2c及び主面2dを含む素体2と、素体2の主面2dに配置されている第一端子電極3及び第二端子電極4と、素体2内に配置されており、第一端子電極3及び第二端子電極4と電気的に接続されているコイル5と、を備え、コイル5は、主面2c側に配置されている第一配線部6と、主面2d側に配置されている第二配線部7と、第二方向D2において延在していると共に、第一配線部6と第二配線部7とを接続しているピラー部8と、を含み、ピラー部8において、二つの導体が接触している接触面8Sには、フィラー15が配置されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の絶縁層が積層されて形成されており、実装面と当該実装面と対向する主面とを含む素体と、
前記素体の前記実装面に配置されている一対の端子電極と、
前記素体内に配置されており、一対の前記端子電極と電気的に接続されているコイルと、を備え、
前記コイルは、前記主面側に配置されている第一配線部と、前記実装面側に配置されている第二配線部と、前記実装面と前記主面との対向方向において延在していると共に、前記第一配線部と前記第二配線部とを接続している接続部と、を含み、
前記接続部において、二つの導体が接触している接触面には、フィラーが配置されている、コイル部品。
【請求項2】
前記接触面を前記対向方向から見たときに、前記接触面の外縁領域に配置されている前記フィラーの密度は、前記接触面の内側領域に配置されている前記フィラーの密度よりも高い、請求項1に記載のコイル部品。
【請求項3】
前記フィラーは、前記接触面において、前記対向方向における±5μmの範囲内に配置されている、請求項1又は2に記載のコイル部品。
【請求項4】
前記接触面の面積に対する前記フィラーの存在割合は、0.05%以上である、請求項1又は2に記載のコイル部品。
【請求項5】
複数の前記フィラーは、通常フィラーと、前記通常フィラーの一部が破断している破断フィラーと、を含んでいる、請求項1又は2に記載のコイル部品。
【請求項6】
前記フィラーは、電気的な絶縁性を有している絶縁性フィラーである、請求項1又は2に記載のコイル部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コイル部品に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、樹脂からなる絶縁体と、絶縁体内に設けられたコイルと、コイルと電気的に接続されており、素体の実装面に配置されている端子電極と、を備えるコイル部品が開示されている。コイルは、第一配線部と、第二配線部と、第一配線部と第二配線部とを接続している接続部と、を含んでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の一側面は、接続部において二つの導体が接触する部分の接合強度の向上が図れるコイル部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(1)本発明の一側面に係るコイル部品は、複数の絶縁層が積層されて形成されており、実装面と当該実装面と対向する主面とを含む素体と、素体の実装面に配置されている一対の端子電極と、素体内に配置されており、一対の端子電極と電気的に接続されているコイルと、を備え、コイルは、主面側に配置されている第一配線部と、実装面側に配置されている第二配線部と、実装面と主面との対向方向において延在していると共に、第一配線部と第二配線部とを接続している接続部と、を含み、接続部において、二つの導体が接触している接触面には、フィラーが配置されている。
【0006】
本発明の一側面に係るコイル部品では、接続部において、二つの導体が接触している接触面には、フィラーが配置されている。接触面は、接続部(導体)と第一配線部(導体)とが接触する面であってもよいし、接続部が複数の部材が積層されて構成されている場合には、二つの部材(導体)が接触面であってもよい。コイル部品では、接触面にフィラーが配置されているため、接触面に凹凸が設けられる。そのため、コイル部品では、アンカー効果によって、二つの導体の密着性が向上する。したがって、コイル部品では、接続部において二つの導体が接触する部分の接合強度の向上が図れる。
【0007】
(2)上記(1)のコイル部品において、接触面を対向方向から見たときに、接触面の外縁領域に配置されているフィラーの密度は、接触面の内側領域に配置されているフィラーの密度よりも高くてもよい。この構成では、接触面の外縁領域に多くのフィラーが配置されているため、二つの導体の接続部分に外力が加わった場合に、フィラーによって応力を効果的に緩和(吸収)することができる。したがって、コイル部品では、接続部において二つの導体が接触する部分の接合強度の向上が図れる。
【0008】
(3)上記(1)又は(2)のコイル部品において、フィラーは、接触面において、対向方向における±5μmの範囲内に配置されていてもよい。この構成では、アンカー効果を効果的に得ることができる。
【0009】
(4)上記(1)~(3)のいずれか一つのコイル部品において、接触面の面積に対するフィラーの存在割合は、0.05%以上であってもよい。この構成では、フィラーによって、アンカー効果を得ることができる。
【0010】
(5)上記(1)~(4)のいずれか一つのコイル部品において、複数のフィラーは、通常フィラーと、通常フィラーの一部が破断している破断フィラーと、を含んでいてもよい。通常フィラーは、フィラーの原型を保持しているフィラーであり、たとえば球状を呈している。破断フィラーは、通常フィラーの一部が破断しているものである。破断フィラーは、破断によって角部などを有している。この構成では、アンカー効果を効果的に得ることができる。
【0011】
(6)上記(1)~(5)のいずれか一つのコイル部品において、フィラーは、電気的な絶縁性を有している絶縁性フィラーであってもよい。絶縁性フィラーは、導電性を有する導電性フィラーよりも硬度が高い。そのため、フィラーが変形し難いため、高いアンカー効果を得ることができる。したがって、接続部において二つの導体が接触する部分の接合強度の向上がより一層図れる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の一側面によれば、接続部において二つの導体が接触する部分の接合強度の向上が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】一実施形態に係るコイル部品の斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1に示すコイル部品を端面側から見た図である。
【
図3】
図3(a)は、第一配線部とピラー部との接続部分を拡大して示す概略断面図であり、
図3(b)は、接触面を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明において同一又は相当要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0015】
図1を参照して、本実施形態に係るコイル部品を説明する。
図1は、一実施形態に係るコイル部品の斜視図である。
図1に示されるように、コイル部品1は、素体2と、第一端子電極3及び第二端子電極4と、コイル5と、第一接続導体10(
図2参照)及び第二接続導体11と、を備えている。
図1及び
図2では、素体2を二点鎖線で示している。
図1では、コイル5を透過させて示している。
【0016】
素体2は、直方体形状を呈している。直方体形状には、角部及び稜線部が面取りされている直方体の形状、及び、角部及び稜線部が丸められている直方体の形状が含まれる。素体2は、外面として、一対の端面2a,2bと、一対の主面2c,2dと、一対の側面2e,2fと、を有している。端面2a,2bは、互いに対向している。主面2c,2dは、互いに対向している。側面2e,2fは、互いに対向している。以下では、端面2a,2bの対向方向を第一方向D1、主面2c,2dの対向方向を第二方向D2、及び、側面2e,2fの対向方向を第三方向D3とする。第一方向D1、第二方向D2、及び第三方向D3は互いに略直交している。
【0017】
端面2a,2bは、主面2c,2dを連結するように第二方向D2に延在している。端面2a,2bは、側面2e,2fを連結するように第三方向D3にも延在している。主面2c,2dは、端面2a,2bを連結するように第一方向D1に延在している。主面2c,2dは、側面2e,2fを連結するように第三方向D3にも延在している。側面2e,2fは、端面2a,2bを連結するように第一方向D1に延在している。側面2e,2fは、主面2c,2dを連結するように第二方向D2にも延在している。
【0018】
主面2dは、実装面であり、たとえばコイル部品1を図示しない他の電子機器(たとえば、回路基材、又はコイル部品)に実装する際、他の電子機器と対向する面である。端面2a,2bは、実装面(すなわち主面2d)から連続する面である。
【0019】
図1及び
図2に例示する形態の場合、素体2の第一方向D1における長さは、素体2の第二方向D2における長さ及び素体2の第三方向D3における長さよりも長い。素体2の第二方向D2における長さは、素体2の第三方向D3における長さよりも短い。すなわち、本実施形態では、端面2a,2b、主面2c,2d及び側面2e,2fは、長方形状を呈している。素体2の第二方向D2における長さは、素体2の第三方向D3における長さと同等であってもよいし、素体2の第三方向D3における長さよりも長くてもよい。
【0020】
なお、本実施形態で「同等」とは、等しいことに加えて、予め設定した範囲での微差又は製造誤差などを含んだ値を同等としてもよい。たとえば、複数の値が、当該複数の値の平均値の±5%の範囲内に含まれているのであれば、当該複数の値は同等であると規定する。
【0021】
素体2は、複数の素体層(絶縁層)が第二方向D2において積層されてなる。つまり、素体2の積層方向は、第二方向D2である。実際の素体2では、複数の素体層は、その層間の境が視認できない程度に一体化されていてもよいし、層間の境が視認できるように一体化されていてもよい。
【0022】
素体層は、たとえば、樹脂層であってもよい。素体層の材料は、たとえば、液晶ポリマー、ポリイミド樹脂、結晶性ポリスチレン、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂、ビスマレイド系樹脂及びフッ素系樹脂から選択された少なくとも一つを含んでいる。素体層は、フィラーを含んでいてもよい。フィラーは、たとえば、無機フィラーであってもよい。無機フィラーとしては、たとえば、シリカ(SiO2)が挙げられる。なお、素体層において、フィラーが含まれていなくてもよい。
【0023】
なお、素体層は、磁性材料を含んで構成されていてもよい。素体層の磁性材料は、たとえば、Ni-Cu-Zn系フェライト材料、Ni-Cu-Zn-Mg系フェライト材料、又はNi-Cu系フェライト材料を含んでいる。素体層の磁性材料は、たとえば、Fe合金を含んでいていてもよい。素体層は、たとえば、非磁性材料を含んでいてもよい。素体層の非磁性材料は、たとえば、ガラスセラミック材料又は誘電体材料を含んでいる。
【0024】
第一端子電極3及び第二端子電極4のそれぞれは、素体2に設けられている。第一端子電極3及び第二端子電極4のそれぞれは、素体2の主面2dに配置されている。第一端子電極3と第二端子電極4とは、第一方向D1において互いに離間して素体2に設けられている。具体的には、第一端子電極3は、素体2の端面2a側に配置されている。第二端子電極4は、素体2の端面2b側に配置されている。
【0025】
第一端子電極3及び第二端子電極4のそれぞれは、たとえば、長方形状(矩形状)を呈していてもよい。第一端子電極3及び第二端子電極4のそれぞれは、各辺が第一方向D1又は第三方向D3に沿うように配置されている。
図2に示されるように、第一端子電極3及び第二端子電極4は、主面2dよりも突出している。すなわち、本実施形態では、第一端子電極3及び第二端子電極4のそれぞれの表面は、主面2dと面一ではない。第一端子電極3及び第二端子電極4は、導電材料(たとえば、Cu)により構成されている。
【0026】
第一端子電極3及び第二端子電極4のそれぞれには、電解めっき又は無電解めっきが施されることにより、たとえばNi、Sn、Auなどを含むめっき層(不図示)が設けられてもよい。めっき層は、たとえばNiを含み第一端子電極3及び第二端子電極4を覆うNiめっき膜と、Auを含み、Niめっき膜を覆うAuめっき膜と、を有していてもよい。
【0027】
図1及び
図2に示されるように、コイル5は、素体2内に配置されている。コイル5は、複数の第一配線部6と、複数の第二配線部7と、複数のピラー部(接続部)8と、を有している。コイル5は、第一配線部6、第二配線部7及びピラー部8が電気的に接続されることによって構成されている。コイル5のコイル軸は、第三方向D3に沿って設けられている。複数の第一配線部6、複数の第二配線部7及び複数のピラー部8は、導電材料(たとえば、Cu)により構成されている。第一配線部6、第二配線部7及びピラー部8は、端面2a,2b、主面2c,2d及び側面2e,2fから離間して配置されている。
【0028】
第一配線部6のそれぞれは、素体2の主面2c側に配置されている。第一配線部6のそれぞれは、第一方向D1に沿って延在している。第一配線部6のそれぞれは、二つのピラー部8を接続している。第一配線部6は、二つのピラー部8に掛け渡されている。第一配線部6の延在方向の一方の端部(端面2a側の端部)は、ピラー部8の一方の端部(主面2c側の端部)に接続されている。第一配線部6の延在方向の他方の端部(端面2b側の端部)は、ピラー部8の一方の端部(主面2c側の端部)に接続されている。
【0029】
第二配線部7のそれぞれは、素体2の主面2d(実装面)側に配置されている。第二配線部7のそれぞれは、第一方向D1において延在している。第二配線部7のそれぞれは、二つのピラー部8を接続している。第二配線部7は、二つのピラー部8に掛け渡されている。第二配線部7の延在方向の一方の端部(端面2a側の端部)は、ピラー部8の他方の端部(主面2d側の端部)に接続されている。第二配線部7の延在方向の他方の端部(端面2b側の端部)は、ピラー部8の他方の端部(主面2d側の端部)に接続されている。複数の第二配線部7は、複数の第一配線部6よりも数が一本少ない。すなわち、第一配線部6がn本である場合には、第二配線部7はn-1本となる。
【0030】
第一接続導体10は、第一端子電極3とコイル5の一端部とを接続している。第一接続導体10は、コイル5のピラー部8の他方の端部に接続されている。第一接続導体10は、端面2a寄りで且つ側面2e寄りの位置に配置されている。第一接続導体10は、導電材料により構成されている。第一接続導体10は、たとえば、Cuにより形成されている。
【0031】
第二接続導体11は、第二端子電極4とコイル5の他端部とを接続している。第二接続導体11は、コイル5のピラー部8の他方の端部に接続されている。第二接続導体11は、端面2b寄りで且つ側面2f寄りの位置に配置されている。第二接続導体11は、導電材料により構成されている。第二接続導体11は、たとえば、Cuにより形成されている。
【0032】
図3は、第一配線部6とピラー部8との接続部分を拡大して示す概略断面図であり、
図3(b)は、接触面を示す概略図である。
図3(a)及び
図3(b)に示されるように、ピラー部8は、接触面8Sを有している。接触面8Sは、ピラー部8において、二つの導体が接触している面である。
図3(a)に示す例では、第一配線部6とピラー部8が接触する接触面8Sを示しているが、ピラー部8は、他の接触面を有していてもよい。具体的には、ピラー部8が複数の部材(部品)によって構成されている(複数の部材が積層されて行構成されている)場合には、二つの部材(導体)が接触している接触面を有している。ピラー部8において、第一配線部6と接触している接触面8Sは、ピラー部8の上端面である。
【0033】
接触面8Sには、複数のフィラー15が配置されている。複数のフィラー15は、電気的絶縁性を有する絶縁性フィラーであってもよいし、導電性を有する導電性フィラーであってもよい。本実施形態では、複数のフィラー15は、絶縁性フィラーである。絶縁性フィラーとしては、シリカ(SiO2)が挙げられる。複数のフィラー15は、通常フィラー15Aと、破断フィラー15Bと、を含んでいてもよい。通常フィラー15Aは、フィラーの原型を保持しているフィラーである。通常フィラー15Aは、たとえば球状を呈している。破断フィラー15Bは、通常フィラー15Aの一部が破断しているもの(原型を留めていなもの)である。破断フィラー15Bは、角部などを有している。フィラー15の平均粒径は、たとえば0.5μmである。
【0034】
図3(b)に示されるように、接触面8Sを第二方向D2から見たときに、接触面8Sの外縁領域A1に配置されているフィラー15の密度は、接触面8Sの内側領域A2に配置されているフィラー15の密度よりも高い。すなわち、接触面8Sにおいて、フィラー15は、内側領域A2よりも外縁領域A1に多く配置されている。言い換えれば、接触面8Sの内側領域A2に配置されているフィラー15の密度は、接触面8Sの外縁領域A1に配置されているフィラー15の密度よりも低い。接触面8Sにおいて、外縁領域A1における単位面積当たりのフィラー15の面積は、内側領域A2における単位面積当たりのフィラー15の面積よりも大きいとも言える。
【0035】
フィラー15は、接触面8Sよりも主面2c側に突出している部分と、接触面8Sよりも主面2d側に埋設されている部分と、を有する。
図3(a)に示されるように、フィラー15は、接触面8Sにおいて、第二方向D2における所定範囲R内に配置されている。所定範囲Rは、接触面8Sに対して、±5μmである。接触面8Sにおいて、フィラー15の周囲の部分は、接触面8Sよりも窪んでいてもよい。接触面8Sは、フィラー15が配置されることによって、凹凸状となっている。
【0036】
本実施形態では、接触面8Sの面積に対するフィラー15の存在割合は、0.05%以上88.9%以下である。ピラー部8において、接触面8S以外の部分(所定範囲R以外の部分)には、フィラー15は配置されていない。すなわち、フィラー15は、ピラー部8の全体には配置されていない。
【0037】
コイル部品1は、たとえば、以下ように製造することができる。素体2は、素体層を構成するシートをラミネートすることにより形成することができる。コイル5(第一配線部6、第二配線部7、ピラー部8)、第一接続導体10及び第二接続導体11は、フォトリソグラフィ法を用いて製造することができる。「フォトリソグラフィ法」とは、感光性材料を含む加工対象の層を露光及び現像することにより、所望のパターンに加工するものであればよく、マスクの種類などに限定されない。
【0038】
たとえば、ピラー部8を構成する導体をフォトリソグラフィ法によって形成した後、素体層を構成するシートをラミネートする。続いて、シートをグラインド研磨によって研磨し、導体を露出させると共に平坦化する。続いて、導体の露出面を含むように、フィラー15を含有するシートをラミネートする。そして、シートをグラインド研磨によって研磨する。これにより、シートに含まれるフィラー15が導体の露出面に入り込み(刺さり)、露出面(接触面8S)にフィラー15が配置される。グラインド研磨の際、フィラー15の一部が破断されて、破断フィラー15Bが設けられる。この処理を所定回数繰り返すことにより、ピラー部8を形成する。
【0039】
以上説明したように、本実施形態に係るコイル部品1では、ピラー部8において、二つの導体が接触している接触面8Sには、フィラー15が配置されている。接触面8Sは、ピラー部8と第一配線部6とが接触する面であってもよいし、ピラー部8を構成する複数の部材のうちの二つの部材が接触面である。コイル部品1では、接触面8Sにフィラーが配置されているため、接触面8Sに凹凸が設けられる。そのため、コイル部品1では、アンカー効果によって、二つの導体の密着性が向上する。したがって、コイル部品1では、ピラー部8において二つの導体が接触する部分の接合強度の向上が図れる。
【0040】
本実施形態に係るコイル部品1では、接触面8Sを対向方向から見たときに、接触面8Sの外縁領域A1に配置されているフィラー15の密度は、接触面8Sの内側領域A2に配置されているフィラー15の密度よりも高い。この構成では、接触面8Sの外縁領域A1に多くのフィラー15が配置されているため、二つの導体の接続部分に外力が加わった場合に、フィラー15によって応力を効果的に緩和(吸収)することができる。したがって、コイル部品1では、ピラー部8において二つの導体が接触する部分の接合強度の向上が図れる。
【0041】
本実施形態に係るコイル部品1では、フィラー15は、接触面8Sにおいて、第二方向D2における±5μmの範囲内に配置されている。この構成では、アンカー効果を効果的に得ることができる。
【0042】
本実施形態に係るコイル部品1では、接触面8Sの面積に対するフィラー15の存在割合は、0.05%以上88.9%以下である。フィラー15の存在割合を0.05%以上とすることによって、アンカー効果を得ることができる。フィラー15の存在割合を88.9%以下とすることによって、フィラー15が絶縁性フィラーである場合であっても、ピラー部8の導電性を確保することができる。
【0043】
本実施形態に係るコイル部品1では、複数のフィラー15は、通常フィラー15Aと、通常フィラー15Aの一部が破断している破断フィラー15Bと、を含んでいる。通常フィラー15Aは、フィラーの原型を保持しているフィラーであり、たとえば球状を呈している。破断フィラー15Bは、通常フィラー15Aの一部が破断しているものである。破断フィラー15Bは、破断によって角部などを有している。この構成では、アンカー効果を効果的に得ることができる。
【0044】
本実施形態に係るコイル部品1では、フィラー15は、電気的な絶縁性を有している絶縁性フィラーである。絶縁性フィラーは、導電性を有する導電性フィラーよりも硬度が高い。そのため、フィラー15が変形し難いため、高いアンカー効果を得ることができる。したがって、ピラー部8において二つの導体が接触する部分の接合強度の向上がより一層図れる。
【0045】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明は必ずしも上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
【0046】
上記実施形態において、ピラー部8が複数の接触面8Sを有している場合、少なくとも一つの接触面8Sにおいて、フィラー15が配置されていればよい。
【0047】
上記実施形態では、フィラー15が絶縁性フィラーである形態を一例に説明した。しかし、フィラー15は、導電性フィラーであってもよい。
【0048】
上記実施形態では、接触面8Sを対向方向から見たときに、接触面8Sの外縁領域A1に配置されているフィラー15の密度が、接触面8Sの内側領域A2に配置されているフィラー15の密度よりも高い形態を一例に説明した。しかし、接触面8Sにおけるフィラー15の配置形態は、これに限定されない。たとえば、フィラー15は、接触面8Sにおいて均等に配置されていてもよい。
【0049】
上記実施形態において、コイル5の構成は、
図1及び2に示される形態に限定されない。
【0050】
上記実施形態では、第一端子電極3及び第二端子電極4のそれぞれが、素体2の主面2dに配置されている形態を一例に説明した。しかし、第一端子電極3及び第二端子電極4は、主面2dに設けられた開口部の内部に一部が埋め込まれていてもよい。
【符号の説明】
【0051】
1…コイル部品、2…素体、2c…主面、2d…主面(実装面)、5…コイル、6…第一配線部、7…第二配線部、8…ピラー部(接続部)、8S…接触面、15…フィラー、15A…通常フィラー、15B…破断フィラー、A1…外縁領域、A2…内側領域。