(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024132285
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】菌検査装置および菌検査方法
(51)【国際特許分類】
G01N 27/22 20060101AFI20240920BHJP
G01N 33/48 20060101ALI20240920BHJP
G01N 33/483 20060101ALI20240920BHJP
C12M 1/34 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
G01N27/22 Z
G01N33/48 M
G01N33/483 E
C12M1/34 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023043013
(22)【出願日】2023-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(71)【出願人】
【識別番号】506208908
【氏名又は名称】学校法人兵庫医科大学
(71)【出願人】
【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩田 祐士
(72)【発明者】
【氏名】後藤 洋臣
(72)【発明者】
【氏名】菊池 正二郎
(72)【発明者】
【氏名】小川 雄一
【テーマコード(参考)】
2G045
2G060
4B029
【Fターム(参考)】
2G045AA28
2G045CB21
2G045FA34
2G045GC30
2G060AA05
2G060AA15
2G060AA19
2G060AD06
2G060AE20
2G060AF03
2G060AF10
2G060FA17
2G060HA02
2G060JA07
2G060KA09
4B029AA07
4B029BB06
4B029CC01
4B029CC02
4B029DG08
4B029DG10
4B029FA01
4B029FA11
4B029GB06
(57)【要約】
【課題】センサが菌液中の菌を確実に検出できるようにすることである。
【解決手段】菌検査装置(菌検査装置1)は、菌(菌7)が含まれる菌液(菌液23)を貯留する貯留体(貯留体2)と、貯留体(貯留体2)の底部に設けられ、貯留体(貯留体2)の内部において菌液(菌液23)に含まれる菌(菌7)を検出するセンサ(センサ22)と、貯留体(貯留体2)に貯留された菌液(菌液23)の液面上に載せられ、菌液(菌液23)を透過させるフィルタ(フィルタ32)とを備え、フィルタ(フィルタ32)が菌液(菌液23)を透過させることに応じて、センサ(センサ22)の検出領域(検出領域S)内における前記菌液(菌液23)に含まれる菌(菌7)の濃度を増加させる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
菌と液体とが含まれる菌液を貯留する貯留体と、
前記貯留体の底部に設けられ、前記貯留体の内部において前記菌液に含まれる前記菌を検出するセンサと、
前記貯留体に貯留された前記菌液の液面上に載せられ、前記菌液中の液体を選択的に透過させる開口部を有するフィルタとを備え、
前記フィルタは、前記菌液中の液体を選択的に透過させることに応じて、前記センサの検出領域内における前記菌液に含まれる前記菌の濃度を増加させるように構成されている、菌検査装置。
【請求項2】
前記フィルタの上方に設けられ、前記フィルタを選択的に透過した前記菌液中の液体を収容する収容部材をさらに備える、請求項1に記載の菌検査装置。
【請求項3】
前記収容部材は、筒状体であって、底部に前記フィルタが設けられ、前記フィルタを選択的に透過した前記菌液中の液体を前記筒状体の内部に貯留することにより収容する、請求項2に記載の菌検査装置。
【請求項4】
前記収容部材は、吸水材であって、前記フィルタ上に載せられ、前記フィルタを選択的に透過した前記菌液中の液体を前記吸水材に吸収することにより収容する、請求項2に記載の菌検査装置。
【請求項5】
前記フィルタは、親水性メンブレンフィルタである、請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の菌検査装置。
【請求項6】
前記貯留体に貯留される前記菌液は、さらに抗菌薬が含まれる、請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の菌検査装置。
【請求項7】
菌と液体とが含まれる菌液を前記菌を検出するセンサに接触させるステップと、
開口部を有するフィルタが前記開口部から前記菌液中の液体を選択的に透過させることに応じて、前記菌液中の液体を選択的に前記センサの検出領域外に排出し、前記センサの検出領域内における前記菌液に含まれる前記菌の濃度を増加させるステップとを含む、菌検査方法。
【請求項8】
前記フィルタが前記センサの検出領域に到達した状態で、前記センサにより前記菌液に含まれる前記菌を検出するステップをさらに含む、請求項7に記載の菌検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、菌検査装置および菌検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の菌検査装置としては、結核菌および大腸菌などの生菌を一例とした菌の存在を検出するものがある。このような菌検査装置には、CMOS発振器センサを用いて菌を検出するものが含まれる。
【0003】
CMOS発振器センサを用いる従来の菌検査装置の一例としては、誘電率を検出可能なセンサの検出領域内において、菌と液体とが含まれる培養液である菌液の中に菌が存在すると誘電率が変化することを考慮し、菌液の誘電率を検出することに応じて、菌液中における菌の存在を検出するものが考えられている(非特許文献1)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】“Near-field sensor array with 65-GHz CMOS oscillators for rapid detection of viable Escherichia coli”, Y. Ogawa et al. Biosensors and Bioelectronics 176 (2021) 112935.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、センサが菌液の誘電率を検出することに応じて菌液中における菌を検出する場合には、次のような問題が生じることが考えられる。例えば、ウェルのような貯留体に貯留された菌液の深さが貯留体の深さ方向におけるセンサの検出領域を超えている状態では、検出領域外の菌液中の菌をセンサが検出できない。これにより、センサが菌液中の菌を確実に検出することが困難であった。
【0006】
この発明は、かかる問題を解決するためになされたものであり、その目的は、センサが菌液中の菌を確実に検出できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明のある局面に従う菌検査装置は、菌と液体とが含まれる菌液を貯留する貯留体と、貯留体の底部に設けられ、貯留体の内部において菌液に含まれる菌を検出するセンサと、前記貯留体に貯留された菌液の液面上に載せられ、菌液の液体を選択的に透過させる開口部を有するフィルタとを備え、フィルタは、菌液中の液体を選択的に透過させることに応じて、センサの検出領域内における菌液に含まれる菌の濃度を増加させるように構成されている。
【0008】
この発明の別の局面に従う菌検査方法は、菌と液体とが含まれる菌液を前記菌を検出するセンサに接触させるステップと、開口部を有するフィルタが開口部から菌液中の液体を選択的に透過させることに応じて、菌液中の液体を選択的にセンサの検出領域外に排出し、センサの検出領域内における菌液に含まれる菌の濃度を増加させるステップとを含む。
【発明の効果】
【0009】
フィルタが菌液中の液体を選択的に透過させることに応じて、菌液中の液体を選択的にセンサの検出領域外に排出し、センサの検出領域内における菌液に含まれる菌の濃度が増加させられるので、センサが菌液中の菌を確実に検出できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】第1実施形態の菌検査装置1の構成を示す図である。
【
図2】第1実施形態の菌検査装置1による菌検査時における収容部材3の動作状態を示す貯留体2および収容部材3の断面図である。
【
図3】第1実施形態の菌検査装置1の検査対象となるマルチウェルシート20の平面図である。
【
図4】複数の貯留体2を対象として菌検査をする第1実施形態の菌検査装置1の構成例を示す図である。
【
図5】菌検査方法の処理手順を示すフローチャートである。
【
図6】第2実施形態の菌検査装置1Aによる菌検査時における収容部材6の動作状態を示す貯留体2の断面図である。
【
図7】薬剤感受性検査に用いるマルチウェルシート20の平面図である。
【
図8】菌液中に結核菌が存在した場合の検査結果を示すグラフである。
【
図9】菌液中に結核菌が存在しない場合の検査結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、以下では図中の同一または相当部分には同一の符号を付して、その説明は原則的に繰返さないものとする。以下では、複数の実施の形態について説明するが、各実施の形態で説明された構成を適宜組み合わせることは出願当初から予定されている。
【0012】
以下の実施の形態では、基本的な構成として、菌7と液体とが含まれる菌液23の上に載せられたフィルタ32が菌液23中の液体を選択的に透過させることによりセンサ22の検出領域内における菌液23に含まれる菌7の濃度を増加させる菌検査装置の構成を説明する。
<第1実施形態>
第1実施形態では、前述した基本的構成に加え、フィルタ32を選択的に透過した菌液23中の液体をフィルタ32の上方に設けられた筒状体の収容部材3の内部に貯留させることにより、フィルタ32を選択的に透過した菌液23中の液体を収容部材3の内部に収容する菌検査装置1の構成を説明する。
【0013】
[菌検査装置1の全体構成]
図1は、第1実施形態の菌検査装置1の構成を示す図である。
図1を参照して、菌検査装置1の構成を説明する。菌検査装置1は、貯留体2、センサ22、フィルタ32、収容部材3、分析装置4、入力装置43、および、表示装置44を含む。
【0014】
図1において、貯留体2、センサ22、フィルタ32、および、収容部材3は、断面図が示されている。貯留体2は、円筒形状のウェルである。貯留体2は、透明な樹脂により形成され、上部が開口しており、下底部に円盤形状のセンサ22が設けられる。貯留体2は、菌7と液体とが含まれる培養液である菌液23を貯留させるために底部が封止されている。
【0015】
菌検査装置1において、例えば結核菌または大腸菌などの生菌の培養検査(以下、菌検査と呼ぶ場合がある)が行われる場合に、貯留体2では、このような菌7と液体とを含む菌液23が上部から注入される。貯留体2では、注入された菌液23が、下底部のセンサ22から壁部21に沿って上方に貯まる態様で、貯留される。
【0016】
センサ22は、CMOS発振器センサにより構成され、菌液23中の誘電率が変化することに応じて菌液23中の菌7を検出する。貯留体2の内部におけるセンサ22の検出領域(検出範囲)Sは、例えばセンサ22の上面から上方に10μm~20μmなどの範囲に限られた範囲である。センサ22の検出領域は、感度域とも呼ばれる。
【0017】
なお、
図1中における検出領域Sの幅、センサ22の厚さ、貯留体2の大きさ、フィルタ32の厚さ、菌7の大きさ、および、収容部材3の大きさなどの各部のサイズ比は、菌検査装置1の技術的な特徴をわかりやすく示すために、実際のサイズ比とは異なるものとなっている。
【0018】
収容部材3は、貯留体2の内径よりもわずかに小径の筒状体であり、上部が開口しており、下底部に収容部材3の外径と同様の直径の円盤形状のフィルタ32が取付けられている。フィルタ32は、菌液23中の液体を選択的に透過させるが、菌7を透過させないような微小な孔径の孔形状の開口部を多数有する親水性のメンブレンフィルタよりなる。フィルタ32は、菌液23中の液体を選択的に透過させる場合に、変形しないように形成された枠体に取付けられている。
【0019】
なお、フィルタ32は、菌7を全く透過させないものであってもよく、基本的に菌7が透過することが困難であるが微小な菌7を透過させる場合があるものであってもよい。菌7のサイズの一例は、0.5~10μmである。このような菌7のサイズに対して、フィルタ32の孔径のサイズの一例は、0.1~0.45μmである。なお、菌7のサイズ、および、フィルタ32の孔径のサイズは、このように例示したサイズに限られるものではない。
【0020】
菌検査装置1により菌検査が行なわれる場合に、収容部材3は、図中の破線の矢印で示すように、貯留体2の内部空間24に同軸的に挿入される。収容部材3の上部には、収容部材3を貯留体2の内部空間24内で一定速度で徐々に押下げるための錘5が取付けられる。錘5は、収容部材3に対して着脱可能である。
【0021】
収容部材3においては、壁部31の下底部の外周にOリングなどよりなる封止部材34が設けられている。これにより、収容部材3が貯留体2の内部空間24に挿入され、フィルタ32が貯留体2内の菌液23上に載った状態で押下げられても、封止部材34により、収容部材3の壁部31の外周と貯留体2の壁部21の内周との間から菌液23が上方に漏れない。
【0022】
収容部材3が貯留体2の壁部21に沿って貯留体2の内部空間24に挿入されていくと、フィルタ32が貯留体2の内部空間24に貯留された菌液23の液面上に載った状態となる。フィルタ32が菌液23と接触すると、貯留体2内の菌液23が収容部材3のフィルタ32を透過する。
【0023】
フィルタ32が菌液23の液面上に載った状態では、錘5の重量により、収容部材3が徐々に押下げられていく。このように収容部材3が徐々に押下げられると、フィルタ32に下向きの力が作用することに応じて、貯留体2の内部空間24に貯留された菌液23中の液体がフィルタ32を選択的に透過して収容部材3の内部空間33に流入する。このような状態において、壁部31の内側とフィルタ32の上側とにより囲まれた内部空間33は、フィルタ32を選択的に透過した菌液23の液体を収容して貯留する空間となる。
【0024】
菌検査装置1により菌検査が行われる場合において、収容部材3を具体的にどのように貯留体2に挿入して菌7の検出を行なうのかについては、
図2を用いて後述する。
【0025】
センサ22は、共振器を構成する素子がマトリクス状に隣接配置されたアレイセンサにより構成される。アレイセンサは、例えばCMOSにより構成される。
【0026】
センサ22の検出信号は、分析装置4に入力される。分析装置4は、CPU(Central Processing Unit)41、メモリ42(ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory、および、フラッシュメモリなどの不揮発性メモリなどを含む各種記憶装置)、および、各種信号を入出力するための入出力バッファ(図示せず)などを含むコンピュータにより構成される。
【0027】
CPU41は、ROMに格納されているソフトウェアプログラムをRAM等に展開して実行する。ROMには、分析装置4での分析に関する処理手順が示された各種のプログラムを含む。分析装置4は、このようなプログラムに従って動作し、センサ22から入力される検出信号に応じて、菌検査に関する分析を行なう。菌検査に関する分析については、ソフトウェアによる処理に限られず、専用のハードウェア(電子回路)で処理することも可能である。
【0028】
分析装置4には、菌検査に関する各種の分析に用いるデータなどの各種のデータの入力、および、菌検査に関する各種の分析を実行する場合に必要となる操作入力などの入力をするための入力装置43が接続されている。入力装置43は、例えばキーボードおよびマウスなどの各種の入力機器を含む。
【0029】
分析装置4には、菌検査における分析結果などの各種の画像を表示する表示装置44が接続されている。表示装置44は、例えば液晶表示装置などの各種の表示機器を含む。
【0030】
分析装置4は、センサ22から入力される検出信号により、センサ22を構成するアレイセンサにおける各素子の共振周波数に応じて、菌液23中の菌7の増殖度合いを分析し、分析結果を表示装置44に表示する。アレイセンサにおける各素子は、例えばギガヘルツ帯の周波数で共振させられることにより、菌液23中の菌7を検出することが可能である。アレイセンサにおける各素子を共振させる周波数は、例えば30GHz~300GHzのようなギガヘルツ帯が用いられる。このような周波数は、例えば60GHz前後の周波数を用いるのが好ましい。
【0031】
分析装置4は、菌液23中において菌7の周囲の水の誘電率が菌7の増殖に応じて変化することを利用して、菌7が増殖したことを判定する。例えば、分析装置4は、センサ22を構成するアレイセンサの各素子における共振周波数の変化を時系列で取得し、取得した共振周波数の変化量に応じて、菌液23中における菌7の増殖度合いを判定する。
【0032】
[菌検査時における収容部材3の動作状態]
次に、菌検査装置1により菌検査が行われる場合における収容部材3の動作状態について説明する。
図2は、第1実施形態の菌検査装置1による菌検査時における収容部材3の動作状態を示す貯留体2および収容部材3の断面図である。
【0033】
図2において、第1状態Aは、収容部材3を貯留体2に挿入する前の状態である。
図2において、第2状態Bは、収容部材3が貯留体2の内部に挿入され、錘5の重量により収容部材3が押下げられることにより、フィルタ32が貯留体2の内部における菌液23の液面上に載って菌液23中の液体を選択的に透過させている状態である。
図2において、第3状態Cは、収容部材3が貯留体2の内部に挿入されていくことにより、フィルタ32がセンサ22の検出領域Sに到達した状態である。
【0034】
図2を参照して、菌検査装置1により菌検査が行われる場合は、まず、第1状態Aのように収容部材3が貯留体2の内部に挿入されていない状態において、菌7を含む菌液23を貯留体2の内部空間24に貯留させる。第1状態Aでは、貯留された菌液23の液面の位置がセンサ22の検出領域Sよりも高い位置となっている。この状態では、センサ22の検出領域Sよりも上方の菌液23中に菌7が存在している。
【0035】
次に、収容部材3が貯留体2の内部空間24に挿入されて押下げられていくと、第2状態Bのように、フィルタ32が貯留体2の内部空間24における菌液23の液面上に載る。第2状態Bでは、図中の矢印に示すようにフィルタ32下方の菌液23中の液体がフィルタ32を選択的に透過し、フィルタ32下方の菌7がフィルタ32を透過しない。これにより、フィルタ32が開口部から菌液23中の液体を選択的に透過させることに応じて、菌液23中の液体が選択的にセンサ22の検出領域Sの外に排出される。
【0036】
そして、第2状態Bでは、貯留体2の内部空間24において、収容部材3が下方に押下げられることにともないフィルタ32が押下げられていくに従って、フィルタ32を透過した菌液23中の液体が、収容部材3の内部空間33に移動し、内部空間33に貯留されていく。
【0037】
フィルタ32下方の菌液23中の液体が収容部材3に貯留されていくことにより、フィルタ32下方の菌液23の貯留量が減少する。このように、貯留体2の内部空間24において、収容部材3に伴ってフィルタ32が押下げられていくに従って、貯留体2の内部空間24に貯留された菌液23が減少していき、収容部材3の内部空間33に貯留される菌液23が増加していく。
【0038】
その後、第3状態Cのように、収容部材3のフィルタ32がセンサ22の検出領域Sに到達すると、
図1の錘5が収容部材3から取外され、貯留体2の内部空間24での収容部材3の押下げが停止させられる。第3状態Cでは、菌液23中に存在する菌7のすべてがセンサ22の検出領域S内に集められる。このような状態において、センサ22により、菌液23中に存在する菌7が検出される。
【0039】
このように、収容部材3が貯留体2の内部空間24で押下げられていくと、センサ22の検出領域S内における菌液23に含まれる菌7の濃度が増加させられていく。そして、センサ22の検出領域S内における菌液23に含まれる菌7の濃度が増加させられた状態で、菌液23中に存在する菌7がセンサ22により検出されるので、センサが菌液23中の菌7を確実に検出できるようになる。
【0040】
なお、収容部材3の押下げは、錘5を収容部材3に取り付けることに限らず、機械的な押圧装置により一定速度で収容部材3を押下げる構成により実現させてもよい。また、収容部材3の押下げは、錘5を収容部材3に取り付けることに限らず、人が人力により一定速度で収容部材3を押下げる構成により実現させてもよい。また、収容部材3の押下げは、一定速度ではなく、フィルタ32がセンサ22の検出領域Sに近づくに従って速度が遅くなるようにしてもよい。
【0041】
また、収容部材3のフィルタ32が検出領域Sに到達したことは、光学的なセンサにより検出してもよく、目視により検出してもよい。また、収容部材3のフィルタ32が検出領域Sに到達した場合の錘5の取外しは、検出領域Sに到達したことが検出されたことに応じて、人が人力により行なってもよく、機械的な取外し装置により行なってもよい。
【0042】
また、フィルタ32がセンサ22の検出領域Sに到達した状態で、収容部材3の押下げを停止させることは、貯留体2の内部空間24内の底部において、フィルタ32が検出領域Sに到達した位置でフィルタ32の移動を停止させるストッパ部材を設けることにより実現されてもよい。
【0043】
[菌検査装置1で複数の貯留体2を対象として菌検査をする構成例]
次に、第1実施形態の菌検査装置1で複数の貯留体2を対象として菌検査をする場合の構成例を説明する。
【0044】
マルチウェルシートに設けられた複数のウェルのように複数の貯留体2を対象として菌検査装置1で菌検査をする場合には、各貯留体2に1つのフィルタ32および収容部材3を挿入可能とする構成を採用すればよい。
【0045】
図3は、第1実施形態の菌検査装置1の検査対象となるマルチウェルシート20の平面図である。マルチウェルシート20は、平板状のシート部材25に、複数の貯留体2が設けられる。
【0046】
図4は、複数の貯留体2を対象として菌検査をする第1実施形態の菌検査装置1の構成例を示す図である。
図4においては、マルチウェルシート20に設けられた複数の貯留体2のうち一部の貯留体2が代表的に示されている。
【0047】
図4を参照して、第1実施形態の菌検査装置1で複数の貯留体2を対象として菌検査をする場合には、各貯留体2に1つの収容部材3を挿入可能とするように複数の収容部材3が設けられる。各貯留体2には、1つのセンサ22が設けられている。
【0048】
図4の構成では、複数の貯留体2を対象として菌検査をする場合に、各貯留体2において、
図2に示したように1つの収容部材3が挿入された後、対応するセンサ22により菌液23中における菌7の検出が行なわれる。各貯留体2への収容部材3の挿入、および、各貯留体2におけるセンサ22による菌7の検出は、複数の貯留体を対象として、同時に実行されてもよく、予め定められた順番で実行されてもよい。
【0049】
分析装置4には、複数のセンサ22からの検出信号が入力される。分析装置4においては、複数のセンサ22から入力される検出信号に応じて、各貯留体2の菌検査に関する分析をするプログラムがROMに記憶されており、当該プログラムが実行されることにより、複数の貯留体2に貯留された菌液23を対象として、各貯留体2別に菌検査が実行される。
【0050】
図4のような構成によれば、複数の貯留体2を対象として菌検査を実行することが可能となる。
【0051】
[菌検査装置1における菌検査方法の処理手順]
図5を参照して、菌検査装置1における菌検査方法について説明する。
図5は、菌検査方法の処理手順を示すフローチャートである。
【0052】
菌検査装置1において菌検査をする場合には、まず、ステップS0により、貯留体2の内部空間24に、菌7と液体とを含む菌液23を注入することにより、菌液23をセンサ22に接触させる。その後、ステップS1により、貯留体2の内部空間24内において、菌液23の液面上にフィルタ32が載せられる。これにより、菌液23中の液体がフィルタ32を選択的に透過してフィルタ32の上部における収容部材3の内部空間33内に入ることにより、収容部材3に菌液23中の液体が収容される状態が開始される。
【0053】
ステップS2では、貯留体2の内部空間24において収容部材3およびフィルタ32を徐々に押下げていくことにより、フィルタ32を選択的に透過した菌液23中の液体を、フィルタ32の上部における収容部材3の内部空間33内に収容していき、フィルタ32の下方の菌液23中の菌7の濃度を増加させる。これにより、フィルタ32の開口部から菌液23中の液体が選択的に透過することに応じて、フィルタ32の下方の菌液23中の液体が選択的にセンサ22の検出領域Sの外に排出され、フィルタ32を選択的に透過した菌液23中の液体が増加することに応じて、収容部材3の内部空間33内の菌液23中の液体の液量が増加していき、一方、フィルタ32の下方の菌液23の貯留量が減少していく。
【0054】
ステップS3では、フィルタ32がセンサ22の検出領域Sに到達した状態で、収容部材3およびフィルタ32の押下げを停止し、フィルタ32の下方の菌液23中の菌7をセンサ22により検出する。
【0055】
このような菌検査方法が実行されることにより、
図1および
図4に示したような構成の菌検査装置1による菌液23中の菌7の検出が行なわれる。このような菌検査方法によれば、センサ22の検出領域S内における菌液23に含まれる菌7の濃度が増加させられた状態で、菌液23中に存在する菌7がセンサ22により検出されるので、センサが菌液23中の菌7を確実に検出できるようになる。また、センサ22の検出領域S内における菌液23に含まれる菌7の濃度を増加させることができることにより、全体的に少な目の菌数の生育状態を検出することが可能となるので、培養検査をする場合に要する時間を短縮することができる。
<第2実施形態>
第2実施形態では、フィルタ32を選択的に透過した菌液23中の液体をフィルタ32の上方に設けられた吸水部材よりなる収容部材6の内部に貯留させることにより、フィルタ32を選択的に透過した菌液23中の液体を収容部材6の内部に収容する菌検査装置1Aの構成を説明する。
【0056】
図6は、第2実施形態の菌検査装置1Aによる菌検査時における収容部材6の動作状態を示す貯留体2の断面図である。第2実施形態の菌検査装置1Aが第1実施形態の菌検査装置1と異なるのは、フィルタ32が下底部に設けられた収容部材3の代わりに、フィルタ32の上部に収容部材6が設けられたことである。
【0057】
収容部材6は、吸水部材よりなり、フィルタ32の上に載せられる態様でフィルタ32の上部に設けられる。フィルタ32は、菌液23を透過させる場合に変形せず、かつ、上部に設けられた収容部材6の重量により変形しないように形成された枠体に取付けられている。
【0058】
第2実施形態の菌検査装置1Aにおいては、1つの貯留体2を対象として菌検査をする場合には、
図1に示すような接続状態でセンサ22、分析装置4、入力装置43、および、表示装置44が設けられる。第2実施形態の菌検査装置1Aにおいては、複数の貯留体2を対象として菌検査をする場合には、
図4に示すような接続状態でセンサ22、分析装置4、入力装置43、および、表示装置44が設けられる。
【0059】
図6において、第1状態Aは、フィルタ32および収容部材6を貯留体2に挿入する前の状態である。
図6において、第2状態Bは、フィルタ32および収容部材6が貯留体2の内部空間24内に挿入され、フィルタ32が貯留体2の内部空間24における菌液23の液面上に載って菌液23中の液体を選択的に透過させている状態である。
図6において、第3状態Cは、フィルタ32および収容部材6が貯留体2の内部空間24で押下げられていくことにより、フィルタ32がセンサ22の検出領域Sに到達した状態である。
【0060】
図6を参照して、菌検査装置1Aにより菌検査が行われる場合は、まず、第1状態Aのように、フィルタ32および収容部材6が貯留体2の内部空間24に挿入されていない状態において、菌7と液体とを含む菌液23を貯留体2の内部空間24に貯留させる。第1状態Aでは、貯留された菌液23の液面の位置がセンサ22の検出領域Sよりも高い位置となっている。この状態では、センサ22の検出領域Sよりも上方の菌液23中に菌7が存在している。
【0061】
次に、フィルタ32および収容部材6が内部空間24に挿入され、第2状態Bのように、フィルタ32が貯留体2の内部における菌液23の液面上に載る。第2状態Bでは、図中の矢印に示すように菌液23中の液体がフィルタ32を選択的に透過し、菌7がフィルタ32を透過しない。これにより、フィルタ32が開口部から菌液23中の液体を選択的に透過させることに応じて、菌液23中の液体が選択的にセンサ22の検出領域Sの外に排出される。
【0062】
そして、フィルタ32を選択的に透過した菌液23中の液体は、収容部材6に吸水され、収容部材6の内部に貯留されていく。
図6の収容部材6においては、菌液23中の液体がどの程度貯留されているかを明確に示すために、菌液23中の液体が貯留された領域に菌液23の参照番号が付されている。
【0063】
収容部材6は、予め定められた限度量まで菌液23中の液体を吸水するものであり、菌液23中の液体の吸水量が増加していくことに応じて、重量が増加する。そして、収容部材6は、重量が増加することに応じて、自重によりフィルタ32を押下げる力が働く。
【0064】
収容部材6においては、吸水量が最大吸水量となるまではフィルタ32下方の菌液23中の液体がフィルタ32を選択的に透過して収容部材6の内部に移動していく。フィルタ32下方の菌液23中の液体が収容部材6に吸水されることにより、フィルタ32下方の菌液23の貯留量が減少する。これにより、収容部材6は、貯留体2の内部空間24において、自重によりフィルタ32を押下げていく。
【0065】
その後、第3状態Cのように、フィルタ32がセンサ22の検出領域Sに到達すると、収容部材6によるフィルタ32の下方への押下げが停止する。このように収容部材6によるフィルタ32の下方への押下げが停止するのは、収容部材6の吸水量が最大吸水量となり、フィルタ32下方の菌液23中の液体がフィルタ32を透過して収容部材6の内部に移動することがなくなるからである。
【0066】
このように、フィルタ32がセンサ22の検出領域Sに到達すると収容部材6によるフィルタ32の下方への押下げを停止させることは、貯留体2の内部空間24に当初貯留される菌液23の量と、収容部材6の最大吸水量との関係に応じて、フィルタ32がセンサ22の検出領域Sに到達した状態で収容部材6の吸水量が最大吸水量となるように、当初貯留される菌液23の量と、収容部材6の最大吸水量との少なくも一方の量を調整しておくことにより実現される。
【0067】
第3状態Cでは、菌液23中に存在する菌7のすべてがセンサ22の検出領域S内に集められる。このような状態において、センサ22により、菌液23中に存在する菌7が検出される。
【0068】
このように、フィルタ32および収容部材6を貯留体2の内部空間24において押下げていくと、センサ22の検出領域S内における菌液23に含まれる菌7の濃度が増加させられていく。そして、センサ22の検出領域S内における菌液23に含まれる菌7の濃度が増加させられた状態で、菌液23中に存在する菌7がセンサ22により検出されるので、センサ22が菌液23中の菌7を確実に検出できるようになる。
【0069】
なお、収容部材6のフィルタ32が検出領域Sに到達したことは、光学的なセンサにより検出してもよく、目視により検出してもよい。また、フィルタ32がセンサ22の検出領域Sに到達した状態で、収容部材6の押下げを停止させることは、貯留体2の内部空間24内の底部において、フィルタ32が検出領域Sに到達した位置でフィルタ32の移動を停止させるストッパ部材を設けることにより実現されてもよい。
【0070】
[菌検査装置1Aにおける菌検査方法の処理手順]
菌検査装置1Aにおける菌検査方法の処理手順は、
図5に示した処理手順と同様である。そこで、
図4および
図5を参照して、菌検査装置1Aにおける菌検査方法について説明する。
【0071】
菌検査装置1Aにおいて菌検査をする場合には、まず、ステップS0により、貯留体2の内部空間24に、菌7と液体とを含む菌液23を注入することにより、菌液23をセンサ22に接触させる。その後、ステップS1により、貯留体2の内部空間24内において、フィルタ32および収容部材6を挿入していくことにより、菌液23の液面上にフィルタ32が載せられる。これにより、菌液23中の液体がフィルタ32を選択的に透過してフィルタ32の上部における収容部材6内に吸水されることにより、収容部材6に菌液23中の液体が収容される状態が開始される。
【0072】
ステップS2では、収容部材6が菌液23中の液体を吸水して収容部材6の重量が増加することに応じて、収容部材6の自重によりフィルタ32を押下げる力が働くことにより、フィルタ32を選択的に透過した菌液23中の液体を、フィルタ32の上部における収容部材6の内部に収容していき、フィルタ32の下方の菌液23中の菌7の濃度を増加させる。これにより、フィルタ32の開口部から菌液23中の液体が選択的に透過することに応じて、フィルタ32の下方の菌液23中の液体が選択的にセンサ22の検出領域Sの外に排出され、フィルタ32を選択的に透過した菌液23中の液体が増加することに応じて、収容部材6内に吸水された菌液23中の液体の液量が増加していき、一方、フィルタ32の下方の菌液23中の液体の貯留量が減少していく。
【0073】
ステップS3では、フィルタ32がセンサ22の検出領域Sに到達した状態で、収容部材6の自重による押下げを停止し、フィルタ32の下方の菌液23中の菌7をセンサ22により検出する。
【0074】
このような菌検査方法が実行されることにより、
図6に示したような構成の菌検査装置1Aによる菌液23中の菌7の検出が行なわれる。このような菌検査方法によれば、センサ22の検出領域S内における菌液23に含まれる菌7の濃度が増加させられた状態で、菌液23中に存在する菌7がセンサ22により検出されるので、センサが菌液23中の菌7を確実に検出できるようになる。また、センサ22の検出領域S内における菌液23に含まれる菌7の濃度を増加させることができることにより、全体的に少な目の菌数の生育状態を検出することが可能となるので、培養検査をする場合において、培養養成を検出するまでの時間を短縮することができる。
【0075】
なお、貯留体2の内部空間24内において、菌液23の液面上にフィルタ32を載せる作業は、人が人力で行なってもよく、機械装置により行なってもよい。また、フィルタ32がセンサ22の検出領域Sに到達した状態で、収容部材6の自重による押下げを停止させることは、貯留体2の内部空間24内の底部において、フィルタ32が検出領域Sに到達した位置でフィルタ32の移動を停止させるストッパ部材を設けることにより実現させてもよい。
<薬剤感受性検査>
次に、前述した第1実施形態の菌検査装置1および第2実施形態の菌検査装置1Aにおいて、薬剤感受性検査を行なう例を説明する。
【0076】
図7は、薬剤感受性検査に用いるマルチウェルシート20の平面図である。
図7のマルチウェルシート20は、
図3に示すマルチウェルシート20と同様の構成を備える。
【0077】
第1実施形態の菌検査装置1で薬剤感受性検査をする場合は、各貯留体2に1つのフィルタ32および収容部材3を挿入可能とするように複数のフィルタ32および収容部材3が設けられる。各貯留体2には、前述したような1つのセンサ22が設けられる。センサ22の検出信号は、
図4に示すような分析装置4に入力される。分析装置4では、センサ22から入力される検出信号に応じて、薬剤感受性検査のための分析処理を実行する。
【0078】
第2実施形態の菌検査装置1Aで薬剤感受性検査をする場合は、各貯留体2に1つのフィルタ32および収容部材6を挿入可能とするように複数のフィルタ32および収容部材3が設けられる。各貯留体2には、前述したような1つのセンサ22が設けられる。センサ22の検出信号は、
図4に示すような分析装置4に入力される。分析装置4では、センサ22から入力される検出信号に応じて、薬剤感受性検査のための分析処理を実行する。
【0079】
図7を参照して、薬剤感受性検査を行なう場合は、例えば、2箇所のウェルである貯留体2A1,2A2をコントロールウェルとし、10箇所のウェルである貯留体2B1~2B10において、抗菌薬が入った菌液中で菌の培養をする。
【0080】
貯留体2B1~2B10では、貯留体ごとに異なる種類の抗菌薬または貯留体ごとに異なる濃度での抗菌薬が予め注入された菌液において菌の培養をする。なお、貯留体2B1~2B10では、抗菌薬が注入されていない菌液における菌の培養中のタイミングにおいて、このような抗菌薬の注入をしてもよい。
【0081】
図7に示すような構成において薬剤感受性検査が行われる場合には、前述のようにセンサ22の検出領域S内において、センサ22の検出領域内における菌液に含まれる菌の濃度が増加することにより、センサ22が、抗菌薬が含まれた菌液中での菌の生育状態を確実に検出できるようになる。これにより、この変形例の構成においては、抗菌薬が含まれた菌液中での菌の生育状態を正確に評価することができる。また、センサ22の検出領域S内における菌液23に含まれる菌7の濃度を増加させることができることにより、全体的に少な目の菌数を対象として生育状態を検出することが可能となるので、薬剤感受性検査をする場合に要する時間を短縮することができる。
<検査結果例>
次に、前述した第1実施形態の菌検査装置1および第2実施形態の菌検査装置1Aを用いて菌検査をした場合の検査結果の一例を説明する。以下においては、代表例として、第1実施形態の菌検査装置1を用いて菌検査をした場合の検査結果を代表例として説明する。
【0082】
図8は、菌液中に結核菌が存在した場合の検査結果を示すグラフである。
図9は、菌液中に結核菌が存在しない場合の検査結果を示すグラフである。
図8および
図9において、縦軸が共振周波数(MHz)であり、横軸が経過時間(H)である。
【0083】
図8および
図9においては、センサ22を構成するアレイセンサの各素子の共振周波数の時間経過による変化状態をわかりやく示すために、最も共振周波数が高い素子の共振周波数の変化と、最も共振周波数が低い素子の共振周波数の変化とが代表例として示されている。したがって、
図8においては、図中に示す幅W1の間にその他の素子の共振周波数の変化状態が含まれている。同様に、
図9においては、図中に示す幅W2の間にその他の素子の共振周波数の変化状態が含まれている。したがって、
図9においては、図中に示す幅W2の間にその他の素子の共振周波数の変化状態が含まれている。
【0084】
図8および
図9に示されるように、菌検査装置1では、センサ22が菌液23中の菌7の生育状態を明確に検出することができる。また、
図8および
図9に示されるように、菌検査装置1では、センサ22が菌液23中における菌7の存在の有無を明確に検出することができる。
【0085】
第2実施形態の菌検査装置1Aを用いて菌検査をした場合の検査結果としては、
図8および
図9に示す検査結果と同様の検査結果が得られる。
【0086】
[実施の形態の変形例]
(1) 第1実施形態ではフィルタ32を透過した菌液23をフィルタ32の上方に存在する収容部材3に収容する例を示し、第2実施形態ではフィルタ32を選択的に透過した菌液23中の液体をフィルタ32の上方に存在する収容部材6に収容する例を示した。しかし、これに限らず、フィルタ32を選択的に透過した菌液23は、フィルタ32の上方に収容せずに、貯留体2の外部に排出させるようにしてもよい。
【0087】
(2) 第1実施形態では貯留体2の内部で収容部材3によってフィルタ32を押下げてフィルタ32をセンサ22の検出領域Sに到達させる例を示し、第2実施形態では貯留体2の内部で収容部材6によってフィルタ32を押下げてフィルタ32をセンサ22の検出領域Sに到達させる例を示した。しかし、これに限らず、フィルタ32を固定された位置に設け、貯留体2の方を上方へ動作させることにより、フィルタ32をセンサ22の検出領域Sに到達させる構成を採用してもよい。
【0088】
(3)
図3および
図7に示すマルチウェルシート20については、複数の貯留体の各々の底部にセンサ22が固定的に取付けられている例を示した。しかし、これに限らず、センサ22は、着脱可能に複数の貯留体の各々の底部に取付けられるように構成してもよい。また、
図1に示す1つの貯留体2のセンサ22についても、着脱可能に貯留体の底部に取付けられるように構成してもよい。
【0089】
(4) 前述したフィルタ32としては、親水性のメンブレンフィルタを用いる例を示した。しかし、これに限らず、菌液23中の液体を透過させるが菌7を透過させない構造のフィルタであれば、その他の種類のフィルタを用いてもよい。
【0090】
(5) 前述した菌検査装置1,1Aでは、フィルタ32がセンサ22の検出領域Sに到達した状態で菌7を検出する例を示した。しかし、これに限らず、フィルタ32の押下げによってセンサ22の検出領域S内における菌7の濃度が向上した状態であれば、フィルタ32がセンサ22の検出領域Sに到達する前の状態でフィルタの押下げを停止して菌7を検出するようにしてもよい。また、菌検査装置1,1Aでは、フィルタ32がセンサ22の検出領域Sの内側に入った状態でフィルタの押下げを停止して菌7を検出するようにしてもよい。
【0091】
(6) 前述した貯留体2の形状としては、円筒形状のものであることを説明した。しかし、貯留体2は、筒状のものであればよく、断面が三角形の筒状、または、断面が四角形の筒状などであってもよい。その場合には、第1実施形態のフィルタ32および収容部材3の形状と、第2実施形態のフィルタ32の形状とは、貯留体2内部の形状に対応した形状とすればよい。
【0092】
[付記]
以上のように、本実施形態は以下のような開示を含む。
【0093】
[構成1]
菌(菌7)と液体とが含まれる菌液(菌液23)を貯留する貯留体(貯留体2)と、
前記貯留体(貯留体2)の底部に設けられ、前記貯留体(貯留体2)の内部において前記菌液(菌液23)に含まれる前記菌(菌7)を検出するセンサ(センサ22)と、
前記貯留体(貯留体2)に貯留された前記菌液(菌液23)の液面上に載せられ、前記菌液(菌液23)菌液中の液体を選択的に透過させる開口部を有するフィルタ(フィルタ32)とを備え、
前記フィルタ(フィルタ32)は、前記菌液(菌液23)の液体を選択的に透過させることに応じて、前記センサ(センサ22)の検出領域(検出領域S)内における前記菌液(菌液23)に含まれる前記菌(菌7)の濃度を増加させるように構成されている、菌検査装置(菌検査装置1、菌検査装置1A)。
【0094】
このような構成によれば、フィルタ(フィルタ32)が菌液(菌液23)中の液体を選択的に透過させることに応じて、菌液(菌液23)中の液体を選択的にセンサ(センサ22)の検出領域(検出領域S)外に排出し、センサ(センサ22)の検出領域(検出領域S)内における菌液(菌液23)に含まれる菌(菌7)の濃度が増加させられるので、菌液(菌液23)中の菌(菌7)を確実に検出することができる。
【0095】
[構成2]
前記フィルタ(フィルタ32)の上方に設けられ、前記フィルタ(フィルタ32)を選択的に透過した前記菌液(菌液23)中の液体を収容する収容部材(収容部材3,6)をさらに備える、構成1に記載の菌検査装置(菌検査装置1、菌検査装置1A)。
【0096】
このような構成によれば、フィルタ(フィルタ32)を選択的に透過した菌液中の液体が、フィルタ(フィルタ32)の上方に設けられた収容部材(収容部材3,6)に収容されるので、フィルタ(フィルタ32)を選択的に透過した菌液(菌液23)中の液体をフィルタ(フィルタ32)の上方で保持することができる。
【0097】
[構成3]
前記収容部材(収容部材3)は、筒状体であって、底部に前記フィルタ(フィルタ32)が設けられ、前記フィルタ(フィルタ32)を選択的に透過した前記菌液(菌液23)中の液体を前記筒状体の内部に貯留することにより収容する、構成2に記載の菌検査装置(菌検査装置1)。
【0098】
このような構成によれば、フィルタ(フィルタ32)を選択的に透過した菌液(菌液23)中の液体が筒状体の内部に貯留されるので、フィルタ(フィルタ32)を選択的に透過した菌液(菌液23)中の液体をフィルタ(フィルタ32)の上方で貯留することができる。
【0099】
[構成4]
前記収容部材(収容部材6)は、吸水材であって、前記フィルタ(フィルタ32)上に載せられ、前記フィルタ(フィルタ32)を選択的に透過した前記菌液(菌液23)中の液体を前記吸水材に吸収することにより収容する、構成2に記載の菌検査装置(菌検査装置1A)。
【0100】
このような構成によれば、フィルタ(フィルタ32)を選択的に透過した菌液(菌液23)中の液体がフィルタ(フィルタ32)上に載せられた吸水材に吸収されるので、フィルタ(フィルタ32)を選択的に透過した菌液(菌液23)中の液体をフィルタ(フィルタ32)の上方で吸水された状態で保持することができる。
【0101】
[構成5]
前記フィルタ(フィルタ32)は、親水性メンブレンフィルタである、構成1~構成4のいずれかに記載の菌検査装置(菌検査装置1、菌検査装置1A)。
【0102】
このような構成によれば、フィルタ(フィルタ32)が菌液(菌液23)を透過させやすいようにすることができる。
【0103】
[構成6]
前記貯留体(貯留体2B1~2B10)に貯留される前記菌液(菌液23)は、さらに抗菌薬が含まれる、構成1~構成5のいずれかに記載の菌検査装置(菌検査装置1、菌検査装置1A)。
【0104】
このような構成によれば、貯留体(貯留体2B1~2B10)に貯留される前記菌液(菌液23)は、薬剤感受性検査をすることができる。
【0105】
[構成7]
菌(菌7)と液体とが含まれる菌液(菌液23)を前記菌を検出するセンサに接触させるステップ(ステップS0)と、
開口部を有するフィルタ(フィルタ32)が前記開口部から前記菌液(菌液23)中の液体を選択的に透過させることに応じて、前記菌液(菌液23)中の液体を選択的に前記センサ(センサ22)の検出領域(検出領域S)外に排出し、前記センサ(センサ22)の検出領域(検出領域S)内における前記菌液(菌液23)に含まれる前記菌(菌7)の濃度を増加させるステップ(ステップS2)とを含む、菌検査方法。
【0106】
このような構成によれば、フィルタ(フィルタ32)が菌液(菌液23)中の液体を選択的に透過させることに応じて、菌液(菌液23)中の液体を選択的にセンサ(センサ22)の検出領域(検出領域S)外に排出し、センサ(センサ22)の検出領域(検出領域S)内における菌液(菌液23)に含まれる菌(菌7)の濃度が増加させられるので、菌液(菌液23)中の菌(菌7)を確実に検出することができる。
【0107】
[構成8]
前記フィルタ(フィルタ32)が前記センサ(センサ22)の検出領域(検出領域S)に到達した状態で、前記センサ(センサ22)により前記菌液(菌液23)に含まれる前記菌(菌7)を検出するステップ(ステップS3)とを含む、構成7に記載の菌検査方法。
【0108】
このような構成によれば、フィルタ(フィルタ32)がセンサ(センサ22)の検出領域(検出領域S)に到達した状態で、センサ(センサ22)により菌液(菌液23)に含まれる菌(菌7)を検出するので、菌液(菌液23)中の菌(菌7)をより一層確実に検出することができる。
【0109】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0110】
7 菌、23 菌液、2,2B1~2B10 貯留体、22 センサ、32 フィルタ、S 検出領域、1,1A 菌検査装置、3,6 収容部材。