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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024132286
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】電圧電流検出装置及び電力計
(51)【国際特許分類】
   G01R 15/20 20060101AFI20240920BHJP
【FI】
G01R15/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023043014
(22)【出願日】2023-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】000001292
【氏名又は名称】株式会社京三製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001151
【氏名又は名称】あいわ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 涼太
【テーマコード(参考)】
2G025
【Fターム(参考)】
2G025AA07
2G025AA11
2G025AB01
2G025AC01
(57)【要約】
【課題】インピーダンス整合装置の内部の電圧電流検出センサにおいて、リターン電流による検出電圧と検出電流との間の位相誤差を低減すること、電圧電流検出センサの配置の自由度を高めること。
【解決手段】本発明の電圧電流検出装置及び電力計は、高周波電源と負荷との間に設けられたインピーダンス整合装置の出力の電圧及び電流を検出する電圧電流検出装置であり、電磁誘導による電流検出、及び空間分圧による電圧検出の各検出値を出力する少なくも1組の一対の電圧電流検出センサを備え、前記各一対の電圧電流検出センサは、インピーダンス整合装置の出力電流が流れる出力電流路に対して対称配置とし、各電圧電流検出センサのセンサ端子を直列接続とし、直列接続の一端を検出端として電圧電流検出センサの検出値の合計を出力する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高周波電源と負荷との間に設けられたインピーダンス整合装置の出力の電圧及び電流を検出する電圧電流検出装置であって、
電磁誘導による電流検出、及び空間分圧による電圧検出の各検出値を出力する少なくも1組の一対の電圧電流検出センサを備え、
前記各一対の電圧電流検出センサは、
(a)前記インピーダンス整合装置の出力電流が流れる出力電流路に対して対称に配置され、
(b)前記出力電流により生成される測定磁界、及び前記インピーダンス整合装置の内部を流れるリターン電流により生成されるノイズ磁界を検出し、
(c)各電圧電流検出センサのセンサ端子は直列接続され、当該直列接続の一端を検出端とし、
(d)前記検出端から前記各電圧電流検出センサの検出値の合計を出力する、
電圧電流検出装置。
【請求項2】
前記各一対の電圧電流検出センサは前記出力電流路に対して線対称であり、
前記リターン電流のリターン電流路は、負荷と接地で接続された接続点と前記インピーダンス整合装置のコンデンサの接地点との間を結ぶ電流路である、
請求項1に記載の電圧電流検出装置。
【請求項3】
前記各一対の電圧電流検出センサは前記出力電流路に対して線対称であり、
前記一対の電圧電流検出センサを複数組備え、各組の電圧電流検出センサは、前記インピーダンス整合装置の出力電流の出力電流路と垂直な面において等角度で配置される配置構成である、
請求項1に記載の電圧電流検出装置。
【請求項4】
前記各一対の電圧電流検出センサは前記出力電流路に対して線対称であり、
前記一対の電圧電流検出センサを1組備え、当該一対の電圧電流検出センサの配置方向は、リターン電流により生成される磁界方向と同方向の配置構成である、
請求項1に記載の電圧電流検出装置。
【請求項5】
前記一対の電圧電流検出センサを3組備え、当該3組の一対の電圧電流検出センサのうち、前記各一対の電圧電流検出センサは出力電流路に対して線対称であり、
1組の一対の電圧電流検出センサの配置方向は、リターン電流により生成される磁界方向と同方向であり、
残りの2組の一対の電圧電流検出センサの配置は、前記1つの一対の電圧電流検出センサから等角度で互いに反対方向の配置構成である、
請求項1に記載の電圧電流検出装置。
【請求項6】
前記一対の電圧電流検出センサを3組備え、当該3組の一対の電圧電流検出センサのうち、前記各一対の電圧電流検出センサは前記出力電流路に対して線対称であり、
中央の1組の一対の電圧電流検出センサの配置方向はリターン電流により生成される磁界方向に対して任意の方向であり、
残りの両側の2組の一対の電圧電流検出センサの配置は、前記中央の1組の一対の電圧電流検出センサから等角度で互いに反対方向の配置構成である、
請求項1に記載の電圧電流検出装置。
【請求項7】
前記一対の電圧電流検出センサを複数組備え、
前記各一対の電圧電流検出センサは前記出力電流路に対して線対称であり、
前記複数組の一対の電圧電流検出センサは、前記インピーダンス整合装置の出力電流の出力電流路からの距離が異なる組を備える配置構成である、
請求項1に記載の電圧電流検出装置。
【請求項8】
前記一対の電圧電流検出センサを複数組備え、
前記複数組の一対の電圧電流検出センサは、前記リターン電流のリターン電流路を形成する基板の表裏に互いに対向し、出力電流路に対して対称となるように、同数の組を配置する配置構成である、
請求項1に記載の電圧電流検出装置。
【請求項9】
前記出力電流路と前記リターン電流のリターン電流路は互いに平行な面内にある、
請求項1に記載の電圧電流検出装置。
【請求項10】
請求項1から請求項9の何れか一つに記載の電圧電流検出装置と、
前記電圧電流検出センサから検出される検出値の合計に基づいて電圧と電流の位相差を演算する位相演算部と、
前記検出値の合計の電圧電流、及び前記位相演算部で得られた前記位相差に基づいて前記インピーダンス整合装置の出力電流の電力値を演算する電力演算部と、
を備える電力計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インピーダンス整合装置に取り付けて、インピーダンス整合装置の出力の電圧及び電流を検出する電圧電流検出装置、及び電力計に関する。
【背景技術】
【0002】
インピーダンス整合装置と負荷との間に電圧電流検出センサを設け、この電圧電流検出センサによりインピーダンス整合装置の出力の電圧及び電流を検出するとともに、検出した電圧及び電流から位相差を求めて電力を算出することが知られている。
【0003】
半導体製造装置のプラズマ解析において、高周波電源とプラズマ負荷との間にインピーダンス整合装置を設け、インピーダンス整合装置の出力を電圧電流検出センサで検出し、検出した電圧及び電流を用いてプラズマ負荷に投入する電力やインピーダンスを解析することも知られている(特許文献1)。
【0004】
インピーダンス整合装置の出力側に設けた電圧電流検出センサは、インピーダンス整合装置の電力損失を考慮した電力をモニタしているため、プラズマ負荷に投入する電力の解析をより精度良く行うことが可能となる。
【0005】
また、高周波発生装置を含めた高周波システムのプラズマ投入電力の監視ができるため、複数台の高周波システムにより複数の半導体製造装置への電力投入を行う構成では、各高周波発生装置がそれぞれのプラズマ負荷に投入する電力間に生じる微小な電力差を解析することができる。これにより、各半導体製造装置において成膜、スパッタ、エッチングの各工程における生成物の装置間の機差を監視することができる。
【0006】
電流センサとして、導体中を流れる電流によって生じる磁界の磁界強度を検出して電流値を測定する磁気検出素子が知られている。電流センサに用いられる磁気検出素子としてフラックスゲート(FR)素子、ホール素子、磁気抵抗効果(MR)素子、磁気インピーダンス(MI)素子等の各種磁気検出素子が知られている。
【0007】
電圧センサとして、直列接続したコンデンサの分圧点から電圧を検知する容量電圧方式によるセンサが知られている(特許文献2)。
【0008】
磁気検出素子を用いた電流センサではノイズ磁界による誤差が問題となる。このノイズ磁界による誤差を低減して導体中を流れる電流を測定する構成として、被測定電流が流れる方向と直交する方向に対称な位置に磁気検出素子を配置してノイズ磁界の影響を相殺する構成(特許文献2)が提案され、測定導体の長手方向に垂直な面内において円周上に等角度に磁気検出素子を配置し、測定値の総和により磁界ノイズを除去する構成(特許文献3、4)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特表2002-530856号公報
【特許文献2】特開2013-196861号公報
【特許文献3】特開2014-219320号公報
【特許文献4】特開2005-61980号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
インピーダンス整合装置の出力電流を測定するには、電圧電流検出センサをインピーダンス整合装置の内部あるいは近接させて取り付けることが求められる。このようなインピーダンス整合装置における電圧電流検出センサを設置する際に求められる要件により、ノイズ磁界によって検出する位相に誤差が生じるという問題があるとともに、電圧電流検出センサの配置が制限されるという課題もある。
【0011】
インピーダンス整合装置の内部において、負荷とインピーダンス整合装置の素子との間にはリターン電流が流れる電流路が形成される。このリターン電流による磁界は、電圧電流検出センサに対してノイズ磁界として作用し、電圧電流検出センサが検出する検出電流と検出電圧との間に位相誤差が生じる。この位相誤差は出力電力の測定に誤差を生じさせる。
【0012】
先に示した特許文献は何れも電圧あるいは電流を検出する技術であり、リターン電流によるノイズ磁界によって検出位相に誤差が生じる点については開示していない。
【0013】
特許文献3には、測定導体の長手方向に垂直な面内において円周上に等角度に磁気検出素子を配置し、各磁気検出素子で測定された電流値を加算して総和を求め、磁気検出素子の個数で除算して測定導体を流れる電流値を算出することによりノイズ磁界の影響を低減することが開示されているが、ノイズ磁界がリターン電流によるものである点は開示されていない。
【0014】
インピーダンス整合装置の内部には、整合器を構成するLC回路等の回路素子が配置されている。インピーダンス整合装置の小型化に伴って、インピーダンス整合装置の内部に電圧電流検出センサを配置する空間的な余裕は少ない。そのため、磁気検出素子を円周上に等角度に配置し、各磁気検出素子の出力ポートを配置する空間的配置が制限されることになる。
【0015】
したがって、従来の電圧電流検出装置は、電圧電流検出センサをインピーダンス整合装置の内部あるいは近接させた位置に取り付ける為には、インピーダンス整合装置の内部で流れるリターン電流により電圧電流間に位相誤差が生じるという問題があるとともに、電圧電流検出センサの配置がインピーダンス整合装置の回路素子等により物理的に制限されるという配置上の問題も有している。
【0016】
さらに、インピーダンス整合装置を備えた電圧電流検出装置で検出した電圧値、電流値、及び位相値を用いて電力値を測定する電力計では、検出した位相に誤差が含まれることにより測定した電力値に誤差が生じるという問題がある。
【0017】
本発明は前記した従来の課題を解決して、インピーダンス整合装置の内部の電圧電流検出センサにおいて、リターン電流による検出電圧と検出電流との間の位相誤差を低減することを目的とし、インピーダンス整合装置の内部において、電圧電流検出センサの配置の自由度を高めることを目的とする。
また、電圧電流検出装置において、位相誤差により生じる測定電力値の誤差を低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の電圧電流検出装置は、高周波電源と負荷との間に設けられたインピーダンス整合装置の出力の電圧及び電流を検出する電圧電流検出装置であり、電磁誘導による電流検出、及び空間分圧による電圧検出の各検出値を出力する少なくも1組の一対の電圧電流検出センサを備える。
【0019】
各一対の電圧電流検出センサは以下の(a)配置構成、(b)磁界検出、(c)接続構成、及び(d)合計出力の各構成を備える。
【0020】
(a)配置構成
各一対の電圧電流検出センサは、インピーダンス整合装置の出力電流が流れる出力電流路に対して対称な位置に配置される構成である。少なくも1組の一対の電圧電流検出センサによりインピーダンス整合装置の出力の電圧及び電流を検出することができるため、インピーダンス整合装置の内部における電圧電流検出センサの配置の自由度を高めることができ、インピーダンス整合装置の内部に設けられる回路素子の配置の余剰空間に配置することができる。
【0021】
(b)磁界検出
各一対の電圧電流検出センサが検出する磁界は、出力電流により生成される被測定磁界、及びインピーダンス整合装置の内部を流れるリターン電流により生成されるノイズ磁界である。電圧電流検出センサは、その電圧電流検出センサが配置された位置における被測定磁界とノイズ磁界の合成磁界を検出する。一対の電圧電流検出センサが検出する磁界のうち、被測定磁界は互いに逆方向であるのに対して、ノイズ磁界は同方向である。そのため、一対の電圧電流検出センサが検出する合成磁界はノイズ磁界の分だけ増減することになる。
【0022】
さらに、ノイズ磁界を生成するリターン電流は、負荷が容量性負荷であるか誘導性負荷であるかによって電圧に対して位相進み又は位相遅れとなる。これにより、一対の電圧電流検出センサの磁界検出で得られる検出電流の一方は位相進みとなり、他方は位相遅れとなって互いに逆相の関係となる。一般に、負荷が平行平板型のプラズマ装置である場合、容量性負荷となる。
【0023】
このように、一対の電圧電流検出センサの磁界検出で得られる2つの検出電流の位相は互いに逆相の関係にあるため、2つの電圧電流検出センサの検出電流を合わせることにより互いの位相は相殺され、検出される電流の位相差は解消される。
【0024】
(c)接続構成
電圧電流検出装置が備える全ての電圧電流検出センサのセンサ端子を直列接続し、この直列接続された接続構成の一端を検出端とする。
【0025】
(d)合計出力
直列接続の検出端から全ての各電圧電流検出センサの検出出力を合計し、合計出力を出力する。直列接続された接続構成の一端を検出端とすることにより、この検出端からは電圧電流検出センサの検出値の合計出力が得られる。この直列接続により、各電圧電流検出センサのセンサ出力毎に検出端を設けることが不要となり、インピーダンス整合装置の内部に設ける検出端の個数を削減することができる。
【0026】
コンデンサとインダクタのLC回路で構成されるインピーダンス整合装置では、インピーダンス整合装置の内部でのリターン電流のリターン電流路は、インピーダンス整合装置に接続される負荷に対してグランドを介して接地される接続点と、LC回路のコンデンサがグランドに接地される接続点との間を結ぶ電流路であり、リターン電流路を流れるリターン電流の電流方向は高周波電源の交流信号の正負に応じて、負荷側からコンデンサ側あるいはコンデンサ側から負荷側に切り替わる。
【0027】
本発明の電圧電流検出装置は、一対の電圧電流検出センサの配置として複数の構成例を備える。第1の構成例~第6の構成例、及び第8の構成例は、電圧電流検出センサの対を出力電流路に対して線対称に配置する構成であり、第7の構成例は、電圧電流検出センサの対を基板の表裏に対向して配置する構成である。
【0028】
(第1の構成例)
配置構成の第1の構成例は、一対の電圧電流検出センサが等角度に配置される構成である。一対の電圧電流検出センサを複数組備え、各一対の電圧電流検出センサは、インピーダンス整合装置の出力電流の出力電流路と垂直な面において等角度で配置される。
【0029】
(第2の構成例)
配置構成の第2の構成例は、一対の電圧電流検出センサがリターン電流の磁界に対して平行に配置される構成である。一対の電圧電流検出センサを1組備え、この一対の電圧電流検出センサの配置方向はリターン電流により生成される磁界方向と同方向である。
【0030】
(第3の構成例)
配置構成の第3の構成例は、一対の電圧電流検出センサがリターン電流の磁界に対して任意の方向に配置される構成である。一対の電圧電流検出センサを1組備え、この一対の電圧電流検出センサの配置方向はリターン電流により生成される磁界方向に対して任意の方向である。
【0031】
(第4の構成例)
配置構成の第4の構成例は、3組の電圧電流検出センサ対が配置される構成である。一対の電圧電流検出センサを3組備え、この3組の一対の電圧電流検出センサのうち、1組の一対の電圧電流検出センサの配置方向はリターン電流により生成される磁界方向と同方向であり、残りの2組の一対の電圧電流検出センサの配置は1つの一対の電圧電流検出センサから等角度で互いに反対方向である。
【0032】
(第5の構成例)
配置構成の第5の構成例は、3組の電圧電流検出センサ対が配置される構成である。一対の電圧電流検出センサを3組備え、この3組の一対の電圧電流検出センサのうち、中央の1組の一対の電圧電流検出センサの配置方向はリターン電流により生成される磁界方向に対して任意の方向であり、残りの両側の2組の一対の電圧電流検出センサの配置は、中央の1組の一対の電圧電流検出センサから等角度で互いに反対方向である。
【0033】
(第6の構成例)
配置構成の第6の構成例は、電圧電流検出センサ対の各電圧電流検出センサが出力電流路に対する線対称配置において、電圧電流検出センサ対毎に出力電流路からの距離を異ならせて配置される構成である。一対の電圧電流検出センサを複数組備え、この複数組の一対の電圧電流検出センサは、インピーダンス整合装置の出力電流の出力電流路からの距離が異なる組を備える。
【0034】
(第7の構成例)
配置構成の第7の構成例は、電圧電流検出センサ対が基板に対して両面に配置される構成である。一対の電圧電流検出センサを複数組備え、複数組の一対の電圧電流検出センサは、リターン電流のリターン電流路を形成する基板の表裏に互いに対向し、出力電流路に対して対称となるように同数の組が配置される。
【0035】
(第8の構成例)
配置構成の第8の構成例は、複数組の一対の電圧電流検出センサを出力電流路に対して線対称に配置する構成であり、出力電流路とリターン電流路は互いに平行な面内である。
【0036】
本発明の電力計は、本発明の電圧電流検出装置と、電圧電流検出センサから検出される検出値の合計に基づいて電圧と電流の位相差を演算する位相演算部と、検出値の合計の電圧電流、及び位相演算部で得られた位相差に基づいてインピーダンス整合装置の出力電流の電力値を演算する電力演算部とを備える。
【0037】
本発明の電圧電流検出装置が測定する電圧値及び電流値は、位相誤差が低減されているため、位相演算部が演算により得られる電流の位相はリターン電流で電磁誘導される磁界により影響が低減される。位相演算部で求められた位相を用いることによりリターン電流による影響が低減された電力値を求めることができる。
【発明の効果】
【0038】
以上説明したように、本発明によれば、インピーダンス整合装置の内部の電圧電流検出センサにおいて、リターン電流による検出電圧と検出電流との間の位相誤差を低減することができ、インピーダンス整合装置の内部において、電圧電流検出センサの配置の自由度を高めることができる。
また、本発明によれば、電圧電流検出装置において位相誤差により生じる測定電力値の誤差を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1】本発明の電圧電流検出装置を備えた高周波システムの概略を説明するための図である。
図2】インピーダンス整合装置を構成するLC回路の構成例を説明するための図である。
図3】インピーダンス整合装置の内部のリターン電流のパターンを説明するための図である。
図4】電圧電流検出装置の構成を説明するための図である。
図5】電圧電流検出装置の構成を説明するための図である。
図6】本発明の電圧電流検出装置によるノイズ磁界の低減を説明するための図である。
図7】本発明の電圧電流検出装置の第1構成例を説明するための図である。
図8】本発明の電圧電流検出装置の第1構成例のインピーダンス整合装置の内部の配置例を説明するための図である。
図9】電圧電流検出センサの構成例を説明するための図である。
図10】本発明の電圧電流検出センサの接続形態を説明するための図である。
図11】本発明の電圧電流検出装置の第2構成例~第6構成例を説明するための図である。
図12】本発明の電圧電流検出装置の第7構成例を説明するための図である。
図13】本発明の電圧電流検出装置の第8構成例を説明するための図である。
図14】本発明の電圧電流検出装置の第8構成例の測定磁界とノイズ磁界を説明するための図である。
図15】インピーダンス整合装置を構成するLC回路の例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
(1)高周波システムの構成
図1は、本発明の電圧電流検出装置3を備えた高周波システム10の概略を示す図である。高周波システム10は、高周波電源1で発生した高周波電力を負荷7に供給する。
【0041】
高周波電源1の高周波電力は、インピーダンス整合装置2を介して負荷7に供給される。インピーダンス整合装置2はコンデンサとインダクタからなるLC回路により構成することができ、整合出力が負荷インピーダンスに整合するようにLC回路の素子値を調整する。
【0042】
インピーダンス整合装置2と負荷7との間には、負荷7に供給する出力電力を測定する電力計6が設けられる。電力計6は電圧電流検出装置3、位相演算部4、電力演算部5を備える。電圧電流検出装置3は、インピーダンス整合装置2の出力の電圧及び電流を測定し、位相演算部4は電圧電流検出装置3の検出で得られた電圧値と電流値を用いて電圧電流間の位相値を演算する。位相演算部4による位相演算は、フーリエ変換やヒルベルト変換等の演算手法を用いて行うことができる。電力演算部5は、電圧値、電流値、及び位相値を用いて電力を演算する。
【0043】
図2は、LC回路によるインピーダンス整合装置の構成例を示している。図2に示すインピーダンス整合装置は、LC回路構成の一例として逆L型と呼ばれる回路構成を示している。インピーダンス整合装置2は、インピーダンス整合に用いる2つの可変成分である可変素子として、高周波電源1に対して負荷7とそれぞれ並列及び直列に接続された第1の可変コンデンサC1及び第2の可変コンデンサC2を有している。第1の可変コンデンサC1及び第2の可変コンデンサC2は、一般的なバリアブルコンデンサを用いることで容量が可変である。
【0044】
図2に示すインピーダンス整合装置2は、コンデンサの定数や負荷条件によって異なる4パターンの電流経路を形成する。図3は、この4パターンのうちでインピーダンス整合装置2の内部のコンデンサを介してリターン電流が流れる2パターンを示している。
【0045】
図3(a),図3(b)に示す電流経路は、インダクタL及び第2コンデンサC2と負荷7との間で出力電流が流れる出力電流路11と、グランドを介して負荷7と第2コンデンサC2との間でリターン電流が流れるリターン電流路12を備える。
【0046】
図3(a)の電流経路では、出力電流路11を通して負荷7に向かって出力電流が流出し、リターン電流路12を通して負荷7から第1コンデンサC1に向かってリターン電流Ireが流入する。他方、図3(b)に示す電流経路では、出力電流路11を通して負荷7から出力電流が流入し、リターン電流路12を通して第1コンデンサC1から負荷7に向かってリターン電流Ireが流出する。
【0047】
インピーダンス整合装置を構成するLC回路は、上記した逆L型構成の他にL型構成やπ型構成を用いることができる。図15は、インピーダンス整合装置を構成するLC回路の一例を示している。
【0048】
図15(a),図15(b)は逆L型の構成例を示し、図15(c),図15(d)はL型の構成例を示し、図15(e),図15(f)はπ型の構成例を示している。
【0049】
(2)電圧電流検出装置の構成
図4図5は、電圧電流検出装置の構成を説明するための図である。図4において、電圧電流検出装置3は、インピーダンス整合装置2の出力端と負荷7の入力端との間に接続される。電圧電流検出装置3は、電圧検出センサ42と電流検出センサ43からなる電圧電流検出センサ41を備える。
【0050】
図5において、電圧検出センサ42は、その一例として、直列接続された空間容量42aとコンデンサ42bにより構成される。コンデンサ42bには出力電流路11との間で空間容量42aを介して電圧分が蓄積され、コンデンサ42bの端点からコンデンサの分圧容量に相当する電圧を検出する。
【0051】
電流検出センサ43は、その一例として、2次コイル43aとシャント抵抗43bとの並列回路により構成され、出力電流路11に流れる出力電流を被測定電流とし、この被測定電流により発生する磁界が電磁誘導によって2次コイル43aに誘起される2次電流を検出する。シャント抵抗43bは、2次電流の電流値を電圧値に変換して出力する。2次コイル43aは、例えば空芯コイルで構成することができる。
【0052】
(3)測定磁界、ノイズ磁界
次に、本発明の電圧電流検出装置3による磁界検出においてノイズ磁界による影響の低減について図6を用いて説明する。図6(a)は測定電流による測定磁界とリターン電流によるノイズ磁界、図6(b)は測定電流による測定磁界、図6(c)はリターン電流によるノイズ磁界、図6(d),図6(e)は測定磁界とノイズ磁界との合成磁界を示している。
【0053】
図6(b)において、z軸方向に出力電流Ioutが流れると、出力電流路11に垂直なx-y面に環状の測定磁界31が形成される。図6(b)中の矢印は測定磁界31の磁界方向を示している。
【0054】
図6(c)において、y軸方向にリターン電流Ireが流れると、リターン電流路12に垂直なx-z面にノイズ磁界32が形成される。図6(c)中の矢印はノイズ磁界32の磁界方向を示している。
【0055】
図6(d)は測定磁界とノイズ磁界との合成磁界を示している。出力電流Ioutとリターン電流Ireとが直交関係にあるとき、測定磁界31が形成される面とノイズ磁界32が形成される面とは直交関係となる。y軸に沿ってリターン電流Ireが流れる場合には、原点に対してy軸上で互いに対称な位置にある2点では、出力電流Ioutによる測定磁界の磁界方向は互いに逆方向であるのに対して、リターン電流Ireによるノイズ磁界の磁界方向は同一方向であるため、一方の点の測定磁界はノイズ磁界の磁界成分が加わり、他方の点の測定磁界はノイズ磁界の磁界成分が減る。
【0056】
リターン電流路12は、グランドに接地される基板を2次元的に流れる電流路となるため、ノイズ磁界32の磁界パターンは基板に平行な面ではほぼ同一方向の磁界と見なせる。図6(e)に示す磁界は、ノイズ磁界32が同一方向の磁界と見なせる場合の合成磁界を示している。
【0057】
ノイズ磁界32の磁界方向がほぼ同一方向と見なせるため、ノイズ磁界32の磁界方向は測定磁界31の任意の位置においてほぼ同一方向となる。例えば、リターン電流Ireがy軸に流れる場合には、ノイズ磁界32の磁界方向はx-y平面においてx軸方向となる。一方、z軸に沿って流れる出力電流Ioutにより形成される測定磁界31の磁界方向はx-y平面上において原点を挟んで互いに対称な位置で反対方向となる。
【0058】
これにより、原点を挟んで互いに対称の位置にある任意の2点の合成磁界は、一方の点では測定磁界に対してノイズ磁界の磁界成分が加わって磁界強度が増加され、他方の点では測定磁界に対してノイズ磁界の磁界成分が減って磁界強度が減少する。
【0059】
対称位置にある2点において、測定磁界に対するノイズ磁界の寄与分はx-y平面上の角度位置に応じて変化し、図6(e)に示す磁界関係では、y軸上の2点で最も大きくなり、x軸上の2点で最も小さくなる。x軸を挟む両側ではノイズ磁界の寄与分の正負の極性は反対となる。
【0060】
図6(a)において、インピーダンス整合装置2の内部の出力電流路11に流れる出力電流Ioutにより、出力電流路11に垂直な面に環状の測定磁界31が形成され、一方、同じ面には、リターン電流路12に流れるリターン電流Ireによりノイズ磁界32が形成される。
【0061】
一対の電圧電流検出センサ41は、出力電流路11を中心とする線対称な位置に配置され測定磁界31を測定する。図6(a)は、x軸方向に一対の電圧電流検出センサ41Aa,41Abを対称な位置に配置し、y軸方向に一対の電圧電流検出センサ41Ba,41Bbを対称な位置に配置した状態を示している。
【0062】
電圧電流検出センサ41Baの位置では、測定磁界31とノイズ磁界32の磁界方向が逆方向であり、磁界強度が互いに相殺される方向であるため合成磁界の磁界強度は弱まる。一方、電圧電流検出センサ41Bbの位置では、測定磁界31とノイズ磁界32の磁界方向が同方向であり、磁界強度が互いに強まる方向であるため合成磁界の磁界強度は強まる。
【0063】
電圧電流検出センサ41Aaの位置では、測定磁界31とノイズ磁界32の磁界方向が直交する方向であるため、合成磁界の磁界方向は両磁界がベクトル合成された方向となる。一方、電圧電流検出センサ41Abの位置においても、測定磁界31とノイズ磁界32の磁界方向が直交する方向であるため、合成磁界の磁界方向は両磁界がベクトル合成された方向となる。電圧電流検出センサ41Aa,41Ab,41Ba,及び41Bbは、この合成磁界から電圧及び電流を検出する。
【0064】
一対の電圧電流検出センサ41が合成磁界を検出して得る電圧値は、測定磁界31による電圧値とノイズ磁界32による電圧値との加算値となる。一方、合成磁界の検出で得られる電流値は、電圧に対して電流の位相がずれる。負荷特性によってリターン電流Ireに出力電流路11の電圧に対して位相進みあるいは位相遅れの位相ずれが発生すると、この位相ずれによって合成磁界の検出で得られる電流値に差異が生じる。
【0065】
電圧電流検出センサ41Ba,41Bbが合成磁界を検出して得られる電流値は、測定磁界31による電流値とノイズ磁界32による電流値との加算値となるが、リターン電流Ireには位相ずれがあり、その位相ずれの方向は位相進み及び位相遅れの反対方向である。このため、電圧電流検出センサ41Baが検出する電流値の位相ずれと電圧電流検出センサ41Bbが検出する電流値の位相ずれは互いに逆方向となる。
【0066】
同様に、電圧電流検出センサ41Aaが検出する電流値の位相ずれと、電圧電流検出センサ41Abが検出する電流値の位相ずれと、についても互いに逆方向となる。
【0067】
電圧電流検出装置は、互いに対称な位置にある一対の電圧電流検出センサの検出値を合計することにより、電圧電流検出センサが検出する電流値に含まれる位相誤差を相殺し、低減する。
【0068】
(4)電圧電流検出装置の構成例及び測定例
以下、図7図14を用いて、電圧電流検出装置の構成例及び測定例について説明する。なお、第1構成例~第6構成例,第8構成例は、電圧電流検出センサの対を出力電流路に対して線対称に配置する構成例であり、第7構成例は、電圧電流検出センサの対を出力電流路の方向に対称に配置する構成例である。
【0069】
(4-1)第1構成例
電圧電流検出装置の第1構成例及び測定例について図7図9を用いて説明する。図7に示す第1構成例は、その一例として、出力電流路11を中心として環状の一対の電圧電流検出センサ41を複数組配置した構成である。一対の電圧電流検出センサ41は、電圧電流検出センサ41Aaと電圧電流検出センサ41Abの2つの電圧電流検出センサからなる組、電圧電流検出センサ41Baと電圧電流検出センサ41Bbの2つの電圧電流検出センサからなる組、電圧電流検出センサ41Caと電圧電流検出センサ41Cbの2つの電圧電流検出センサからなる組、及び電圧電流検出センサ41Daと電圧電流検出センサ41Dbの2つの電圧電流検出センサからなる組の合計8個の電圧電流検出センサで構成される。これらの8個の電圧電流検出センサ41を出力電流路11の周囲に配置して構成される。各組の一対の電圧電流検出センサ41は、出力電流路11に対して対称な位置にある。図7に示す第1構成例では、出力電流路11を中心とする円周上に8個の電圧電流検出センサ41を等間隔で配置した例を示している。
【0070】
図7(a)は、出力電流Ioutが図面の手前から奥に向かって出力電流路11を流れる場合を示している。出力電流Ioutによって形成される測定磁界31の磁界方向は出力電流路11を中心に右回りであり、矢印方向に流れるリターン電流Ireによって形成されるノイズ磁界32の磁界方向は図面の右下方から左上方に向かう。
【0071】
図7(b)は、出力電流Ioutが図面の奥から手前に向かって出力電流路11を流れる場合を示している。出力電流Ioutによって形成される測定磁界31の磁界方向は出力電流路11を中心に左回りであり、矢印方向に流れるリターン電流Ireによって形成されるノイズ磁界32の磁界方向は図面の左上方から右下方に向かう。
【0072】
図8は、図7(a)に示す電圧電流検出装置の構成をインピーダンス整合装置2の内部に配置した例を示している。図8(a)は上方から見た平面図を示し、図8(b)は側面から見た正面図を示し、図8(c)は測定例を示している。
【0073】
図8(a),(b)において、インピーダンス整合装置2を構成する第1コンデンサC1、第2コンデンサC2、及びインダクタLは基板50上に配置され、第2コンデンサC2からは出力電流路11を介して負荷側(図示していない)と接続する出力ポートに向かって出力電流Ioutが出力される。基板50の負荷側はグランドを介して接地される。負荷からのリターン電流Ireは、負荷側との接地点と第1コンデンサC1との間のリターン電流路12を通って流れる。出力電流Ioutは出力電流路11を中心とする環状の測定磁界31を形成し、リターン電流Ireはリターン電流路12を中心としてノイズ磁界32を形成する。ノイズ磁界32の磁界方向は、基板50を挟んでインピーダンス整合装置2の内側と外側で逆方向となり、インピーダンス整合装置2の内のノイズ磁界方向は、図8(c)に示すように、図面上で右下から左上に向かう一方向の磁界と見なすことができる。
【0074】
電圧電流検出装置3の電圧電流検出センサ41は、インピーダンス整合装置2の内部において出力電流路11の周囲に配置され、測定磁界31とノイズ磁界32が合成された合成磁界を検出する。図8(c)において、電圧電流検出センサ41Aaと41Abの組、電圧電流検出センサ41Baと41Bbの組、電圧電流検出センサ41Caと41Cbの組、及び電圧電流検出センサ41Daと41Dbの組は、それぞれ出力電流路11を挟んで対称な位置に配置される。図8(c)は、各電圧電流検出センサ41が45°で等角度間隔で配置される例を示している。
【0075】
負荷7が容量性負荷であるとき、負荷7からインピーダンス整合装置2の第1コンデンサC1に向かってリターン電流路12を流れるリターン電流Ireは、容量性となり電圧に対して位相進みとなる。
【0076】
リターン電流Ireに位相進みあるいは位相遅れがある場合には、ノイズ磁界は位相の影響を受ける。合成磁界は測定磁界とノイズ磁界との合成であるため、合成磁界においてもリターン電流Ireの位相の影響を受ける。
【0077】
測定磁界31がノイズ磁界32の影響を受ける磁界方向は、ノイズ磁界の磁界方向が出力電流路11を通る直線を挟んで反対方向となる。図8(c)において、直線A-Bを挟んで右側の範囲では、測定磁界31はノイズ磁界32から逆方向の磁界の影響を受け、リターン電流Ireが位相進みの場合には、測定磁界31はノイズ磁界32から位相が遅れる方向の影響を受けて相対的に位相遅れとなり、電圧電流検出センサ41は位相が遅れた電流を検出する。
【0078】
一方、直線A-Bを挟んで左側の範囲では、測定磁界31はノイズ磁界32から同方向の磁界の影響を受け、リターン電流Ireが位相進みの場合には、測定磁界31はノイズ磁界32から位相が進む方向の影響を受けて相対的に位相進みとなり、電圧電流検出センサ41は位相が進んだ電流を検出する。
【0079】
一対の電圧電流検出センサの検出電流は、一方の検出電流が位相遅れであり他方の検出電流は位相進みであるため、両方の検出電流を合計した検出電流は位相差が相殺され、位相誤差が低減される。
【0080】
図8(c)において、電圧電流検出センサ41Caと電圧電流検出センサ41Cbの組からなる一対の電圧電流検出センサ41Cは、測定磁界とノイズ磁界とが平行しているため、測定磁界がノイズ磁界から受ける影響は大きい。一方、この一対の電圧電流検出センサ41Cと直交して配置される電圧電流検出センサ41Aaと電圧電流検出センサ41Abの組からなる一対の電圧電流検出センサ41Aは、測定磁界とノイズ磁界とが直交しているため、測定磁界はノイズ磁界から受ける影響は小さい。
【0081】
図9は、図8と同様に、図7に示す電圧電流検出装置の構成をインピーダンス整合装置2の内部に配置した例を示している。図9(a)は上方から見た平面図を示し、図9(b)は側面から見た正面図を示し、図9(c)は測定例を示している。
図9の構成は、測定電流及びリターン電流の電流方向が異なる点で図8の構成と相違しているが、電流方向及び磁界方向の点以外は図8と同様である。
【0082】
図9(a),(b)において、インピーダンス整合装置2を構成する第1コンデンサC1、第2コンデンサC2、及びインダクタLは基板50上に配置され、負荷側に接続される出力ポートから第2コンデンサC2に向けて出力電流路11を介して出力電流Ioutが流れる。基板50はグランドを介して接地される。負荷に流れるリターン電流Ireは、第1コンデンサC1と負荷側の接地点との間のリターン電流路12を通って流れる。出力電流Ioutは出力電流路11を中心とする環状の測定磁界31を形成し、リターン電流Ireはリターン電流路12を中心としてノイズ磁界32を形成する。ノイズ磁界32の磁界方向は、基板50を挟んでインピーダンス整合装置2の内側と外側で逆方向となり、インピーダンス整合装置2の内部のノイズ磁界方向は、図9(c)に示すように、図面上で左上から右下に向かう一方向の磁界と見なすことができる。
【0083】
電圧電流検出装置3の電圧電流検出センサ41は、その一例として、インピーダンス整合装置2の内部において出力電流路11の周囲に配置され、測定磁界31とノイズ磁界32が合成された合成磁界を検出する。図9(c)において、電圧電流検出センサ41Aaと41Abの組、電圧電流検出センサ41Baと41Bbの組、電圧電流検出センサ41Caと41Cbの組、及び電圧電流検出センサ41Daと41Dbの組は、それぞれ出力電流路11を挟んで対称位置に配置される。図9(c)は、各電圧電流検出センサ41が45°で等角度間隔で配置される例を示している。
【0084】
負荷7が容量性負荷であるとき、インピーダンス整合装置2の第1コンデンサC1から負荷7に向かってリターン電流路12を流れるリターン電流Ireは容量性となり、電圧に対して位相進みとなる。
【0085】
リターン電流Ireに位相進みあるいは位相遅れがある場合には、ノイズ磁界は位相の影響を受ける。合成磁界は測定磁界とノイズ磁界との合成であるため、合成磁界においてもリターン電流Ireの位相の影響を受ける。
【0086】
測定磁界31がノイズ磁界32の影響を受ける磁界方向は、ノイズ磁界の磁界方向が出力電流路11を通る直線を挟んで反対方向となる。図9(c)において、直線A-Bを挟んで右側の範囲では、測定磁界31はノイズ磁界32から逆方向の磁界の影響を受け、リターン電流Ireが位相進みの場合には、測定磁界31はノイズ磁界32から位相が遅れる方向の影響を受けて相対的に位相遅れとなり、電圧電流検出センサ41は位相が遅れた電流を検出する。
【0087】
一方、直線A-Bを挟んで左側の範囲では、測定磁界31はノイズ磁界32から同方向の磁界の影響を受け、リターン電流Ireが位相進みの場合には、測定磁界31はノイズ磁界32から位相が進む方向の影響を受けて相対的に位相進みとなり、電圧電流検出センサ41は位相が進んだ電流を検出する。
【0088】
一対の電圧電流検出センサの検出電流は、一方の検出電流が位相遅れであり他方の検出電流は位相進みであるため、両方の検出電流を合計した検出電流は位相差が相殺され、位相誤差が低減される。
【0089】
図9(c)において、電圧電流検出センサ41Caと電圧電流検出センサ41Cbの組からなる一対の電圧電流検出センサ41Cは測定磁界とノイズ磁界とが平行しているため、測定磁界がノイズ磁界から受ける影響は大きい。一方、この一対の電圧電流検出センサ41Cと直交して配置される電圧電流検出センサ41Aaと電圧電流検出センサ41Abの組からなる一対の電圧電流検出センサ41Aは、測定磁界とノイズ磁界とが直交しているため、測定磁界はノイズ磁界から受ける影響は小さい。
【0090】
(4-2)電圧電流検出センサの直列接続
図10は、電圧電流検出センサの接続形態を説明するための図である。電圧電流検出装置を構成する複数個の電圧電流検出センサ41を直列接続することによって、各電圧電流検出センサ41の検出出力が合計された値を検出値として求める。図10(a)では、隣接する電圧電流検出センサ41を直列接続し、隣接する電圧電流検出センサ41間の接続点を計測点61とする。直列接続された電圧電流検出センサ41の端部の計測点を検出端62として、各電圧電流検出センサ41の検出出力が合計された検出値を出力する。
【0091】
図10(b)は、電圧検出センサ42の接続例を示している。電圧検出センサ42が分圧容量で構成される場合には、隣接する分圧容量の分圧端を計測点61aとし、これらを順次接続し、一端の計測点61aを電圧検出端62aとする。電圧検出端62aからは各電圧検出センサ42の検出電圧が加算された合計電圧が検出される。
【0092】
図10(c)は、電流検出センサ43の接続例を示している。電流検出センサ43が2次コイルとシャント抵抗の並列接続で構成される場合には、隣接するシャント抵抗の端部を計測点61bとし、これらを順次接続し、一端の計測点61bを電流検出端62bとする。電流検出端62bからは各電流検出センサ43の検出電流が加算された合計電流が検出される。
【0093】
電圧電流検出センサを直列接続することにより、電圧電流検出センサ毎に計測値をする構成で必要となるフィードバックポートを不要とすることができる。また、各電圧電流検出センサを繋ぐ接続点を計測点とすることにより、各接続点から各電圧電流検出センサの検出値を求めることができ、各電圧電流検出センサが配置された点における電圧値、電流値、及び磁界強度を求めることができる。
【0094】
(4-3)第2構成例~第8構成例
本発明の電圧電流検出装置の第2構成例~第8構成例について、図11図14を用いて説明する。
【0095】
(a)第2構成例
図11(a)は第2構成例を示している。第2構成例では、電圧電流検出センサ41Aa及び41Abからなる一対の電圧電流検出センサ41Aの1組のみがノイズ磁界方向の線上A-Bに沿って配置される。図中で右下方から左上方に向かう矢印は、ノイズ磁界方向を示している。出力電流路11を中心にノイズ磁界方向に対称な位置では、測定磁界31に対してノイズ磁界32が直交しているため、測定磁界31に対するノイズ磁界32の影響は小さく、かつ対称位置において、ノイズ磁界32が測定磁界31に影響する方向は逆方向となる。これにより、一対の電圧電流検出センサ41Aa及び41Abが検出する検出電流のうち、ノイズ磁界32による検出電流分は逆位相となり、合計した検出電流ではノイズ磁界32による影響は相殺される。一方、測定磁界31による検出電流分は合計することで加算される。検出電圧については、ノイズ磁界32による位相ずれの影響を受けないため、合計することにより2つの電圧センサの検出電圧を加算した値が得られる。
【0096】
したがって、ノイズ磁界方向が既知である場合には、第2構成例の配置を採用することにより検出電圧、検出電流を十分な精度で検出することが可能となる。さらに、電圧電流検出センサの個数を低減することができる他、インピーダンス整合装置の内部で電圧電流検出センサを配置する自由度を高めることができる。
【0097】
(b)第3構成例
図11(b)は第3構成例を示している。第3構成例は、第2構成例と同様に一対の電圧電流検出センサ41Aの1組のみ用いる構成であり、1組の一対の電圧電流検出センサ41Aa,41Abをノイズ磁界方向の線上A-Bに対して任意の角度θだけずれた角度位置に配置する。
【0098】
電圧電流検出センサ41Aaと電圧電流検出センサ41Abは、出力電流路11に対して互いに対称な位置に配置されているため、この配置位置では測定磁界がノイズ磁界から受ける磁界の影響は第2構成例の配置位置の場合と比較して大きくなるが、その影響の程度は同程度であり、かつ逆方向である。そのため、電圧電流検出センサ41Aaと電圧電流検出センサ41Abが検出する検出値において、ノイズ磁界による検出電流の位相は逆方向となり、検出電流を合計することにより互いに相殺される。検出電圧については、ノイズ磁界32による位相ずれの影響を受けないため、合計することにより2つの電圧センサの検出電圧を加算した値が得られる。
【0099】
したがって、ノイズ磁界方向が既知である場合には、第3構成例の配置を採用することにより検出電圧、検出電流を十分な精度で検出することが可能となる。さらに、電圧電流検出センサの個数を低減することができる他、設置角度を任意に設定することができるため、さらにインピーダンス整合装置の内部で電圧電流検出センサを配置する自由度が高まる。
【0100】
(c)第4構成例
図11(c)は第4構成例を示している。第4構成例では、3組の一対の電圧電流検出センサ41A,41B,及び41Cがノイズ磁界方向に沿って配置される。3組の電圧電流検出センサ対のうち、1組の一対の電圧電流検出センサ41Aa,41Abは、出力電流路11を通るノイズ磁界方向の線上A-Bに配置され、残る2組の一対の電圧電流検出センサ41Ba,41Bb、及び一対の電圧電流検出センサ41Ca,41Cbは、電圧電流検出センサ41Aa,41Abが配置された角度位置から所定角度Δθだけ互いに逆方向に角度がずれた位置に配置される。中央に配置された電圧電流検出センサ41Aa,41Abはノイズ磁界の影響が最も少ない合成磁界を検出し、両側に配置された電圧電流検出センサ41Ba,41Bb,及び電圧電流検出センサ41Ca,41Cbは、ノイズ磁界の影響を互いに逆方向で受ける。
【0101】
合成磁界を検出する電圧電流検出センサ41A,41B,及び41Cを互いに隣接するように所定角度Δθだけ設置角度をずらすことにより、電圧電流検出センサ41B及び41Cは、電圧電流検出センサ41Aとは配置角度のずれ分だけ異なるものの、ほぼ同様の合成磁界を検出することになる。
【0102】
第4構成例では、第3構成例と同様に、出力電流路11を通るノイズ磁界方向の線上A-Bで出力電流路11に対して対称な位置において、測定磁界31とノイズ磁界32が直交関係にあるため、測定磁界31に対するノイズ磁界32の影響は小さく、かつノイズ磁界32が測定磁界31に影響する方向は逆方向となる。そのため、ノイズ磁界による検出電流の位相ずれの方向は、位相進みと位相遅れで互いに逆方向となり、合成した検出電流では相殺される。
【0103】
したがって、ノイズ磁界方向が既知である場合には、第4構成例を用いることにより検出電圧、検出電流を十分な精度で検出することが可能であり、一対の電圧電流検出センサ41を3組用いることにより検出出力が高まる。
【0104】
(d)第5構成例
図11(d)は第5構成例を示している。第5構成例は、第4構成例と同様に、一対の電圧電流検出センサ41A,41B,及び41Cの3組を備える。第4構成例は3組の一対の電圧電流検出センサ41A,41B,及び41Cはノイズ磁界方向の線上A-Bに沿った配置としているのに対して、第5構成例の3組の一対の電圧電流検出センサ41A,41B,及び41Cは、出力電流路11を中心として磁界方向の線上A-Bから任意の角度θ,θ+Δθ,及びθ-Δθだけ配置角度をずらして配置される。
【0105】
電圧電流検出センサ41Aa及び41Ab、電圧電流検出センサ41Ba及び41Bb、並びに電圧電流検出センサ41Ca及び41Cbは、それぞれ出力電流路11に対して互いに対称な位置に配置されているため、測定磁界がノイズ磁界から受ける磁界の影響は第4構成例の配置位置の場合と比較して大きくなるが、その影響の程度は同程度であり、かつ逆方向である。そのため、例えば、電圧電流検出センサ41Aaと電圧電流検出センサ41Abが検出する検出値において、ノイズ磁界による検出電流の位相は逆方向となり、検出電流を合計することにより互いに相殺される。電圧電流検出センサ41Baと電圧電流検出センサ41Bb、及び電圧電流検出センサ41Caと電圧電流検出センサ41Cbについても、ノイズ磁界により影響を受けた検出電流の大きさは異なるが、ノイズ磁界による検出電流の位相は逆方向となり、検出電流を合計することにより互いに相殺される。
【0106】
検出電圧については、ノイズ磁界32による位相ずれの影響を受けないため、合計することにより2つの電圧センサの検出電圧を加算した値が得られる。
【0107】
したがって、ノイズ磁界方向が既知である場合には、第5構成例の配置を採用することにより検出電圧、検出電流を十分な精度で検出することが可能となる。さらに、電圧電流検出センサの個数を低減することができる他、設置角度を任意に設定することができるため、さらにインピーダンス整合装置の内部で電圧電流検出センサを配置する自由度が高まる。
【0108】
(e)第6構成例
図11(e)は第6構成例を示している。第6構成例は、一対の電圧電流検出センサ41Aa,41Ab,及び一対の電圧電流検出センサ41Ab,41Bbからなる2組の電圧電流検出センサ対を備える構成である。
【0109】
一方の一対の電圧電流検出センサ41Aa,41Abは、第2の構成例と同様に、ノイズ磁界方向の線上A-Bに沿って配置される。これに対して、他方の一対の電圧電流検出センサ41Ba,41Bbは、ノイズ磁界方向の線上A-Bと直交する方向に配置されるとともに、出力電流路11からの配置距離を一対の電圧電流検出センサ41Aa,41Abの配置距離と異なるように配置する。図11(e)に示す例では、電圧電流検出センサ41Ba,41Bbの出力電流路11からの配置距離が電圧電流検出センサ41Aa,41Abの配置距離よりも短い例を示している。なお、電圧電流検出センサ41Ba,41Bbの配置距離は、電圧電流検出センサ41Aa,41Abの配置距離よりも長くしてもよい。
【0110】
電圧電流検出センサ41Ba,41Bbが検出する電圧検出値及び電流検出値は、電圧電流検出センサ41Aa,41Abが検出する電圧検出値及び電流検出値よりも大きくなるが、合計した電流値の位相進み及び位相遅れが相殺される作用については、第2構成例と同様である。
【0111】
第6構成例によれば、一対の電圧電流検出センサの出力電流路11からの配置距離が互いに一致していれば、電圧電流検出センサ対毎に任意に設定することができる。
【0112】
また、図11(e)に示す構成例では、2つの電圧電流検出センサ対の角度間隔を90°としているが、任意の角度間隔としてもよい。また、配置する電圧電流検出センサ対の個数についても任意の個数としてもよい。
【0113】
(f)第7構成例
第7構成例は、複数組の一対の電圧電流検出センサを、リターン電流のリターン電流路を形成する基板の表裏に、互いに対向し、出力電流路に対称となるようにするように同数の組を配置する配置構成である。
【0114】
図12(a)は上方から見た平面図を示し、図12(b)は側面から見た正面図を示し、図12(c),図12(d)は測定例を示している。
【0115】
図12(a),(b)において、インピーダンス整合装置2を構成する第1コンデンサC1,第2コンデンサC2,及びインダクタLは基板50上に配置され、第2コンデンサC2からは、出力電流路11を介して負荷側(図示していない)と接続する出力ポートに向かって出力電流Ioutが出力される。基板50はグランドを介して負荷側と接続される。負荷からのリターン電流Ireは、負荷側との接地点と第1コンデンサC1との間のリターン電流路12を通って流れる。出力電流Ioutは出力電流路11を中心とする環状の測定磁界31を形成し、リターン電流Ireはリターン電流路12を中心としてノイズ磁界32を形成する。ノイズ磁界32の磁界方向は、基板50を挟んでインピーダンス整合装置2の内側と外側で逆方向となり、インピーダンス整合装置2の内側のノイズ磁界方向は、図12(c)に示すように、図面上で右下方から左上方に向かう一方向の磁界と見なすことができ、インピーダンス整合装置2の外側のノイズ磁界方向は、図12(d)に示すように、図面上で左上方からに右下方に向かう一方向の磁界と見なすことができる。
【0116】
電圧電流検出装置3の電圧電流検出センサは、インピーダンス整合装置2の内側と外側の両側において出力電流路11の周囲に配置され、測定磁界31とノイズ磁界32が合成された合成磁界を検出する。図12(c)、(d)において、電圧電流検出センサ41Aaと41Abの組、電圧電流検出センサ41Baと41Bbの組、電圧電流検出センサ41Caと41Cbの組、及び電圧電流検出センサ41Daと41Dbの組は、それぞれ基板50を挟んで対向して配置される。なお、図12(c),図12(d)に示す配置例では、インピーダンス整合装置2の内側及び外側において電圧電流検出センサ41Aと電圧電流検出センサ41Cとが出力電流路11に対して対称に配置され、電圧電流検出センサ41Bと電圧電流検出センサ41Dとが出力電流路11に対して対称に配置される例を示している。
【0117】
リターン電流Ireに位相進みあるいは位相遅れがある場合には、ノイズ磁界は位相の影響を受ける。合成磁界は測定磁界とノイズ磁界との合成であるため、合成磁界においてもリターン電流Ireの位相の影響を受ける。
【0118】
測定磁界31がノイズ磁界32の影響を受ける磁界方向は、リターン電流路12が形成される基板50を挟んで反対方向となる。図12(c),(d)において、基板50を挟んでインピーダンス整合装置2の内側に配置される電圧電流検出センサ41Aa,41Ba,41Ca,及び41Daと、インピーダンス整合装置2の外側に配置される電圧電流検出センサ41Ab,41Bb,41Cb,及び41Dbが配置される位置では、測定磁界31はノイズ磁界32から逆方向の磁界の影響を受ける。
【0119】
測定磁界31とノイズ磁界32が同方向であるとき、リターン電流Ireが位相進みの場合には、測定磁界31はノイズ磁界32から位相が進む方向の影響を受けて相対的に位相進みとなり、他方、測定磁界31とノイズ磁界32が逆方向であるとき、リターン電流Ireが位相進みの場合には、測定磁界31はノイズ磁界32から位相が遅れる方向の影響を受けて相対的に位相遅れとなる。
【0120】
電圧電流検出センサ41Aaと電圧電流検出センサ41Abの検出電流は、一方の検出電流が位相遅れであり、他方の検出電流は位相進みであるため、両方の検出電流を合計した検出電流は位相差が相殺され、位相誤差が低減される。
【0121】
電圧電流検出センサ41Baと電圧電流検出センサ41Bbの検出電流、電圧電流検出センサ41Caと電圧電流検出センサ41Cbの検出電流、及び電圧電流検出センサ41Daと電圧電流検出センサ41Dbの検出電流についても、同様に両方の検出電流を合計した検出電流は位相差が相殺され、位相誤差が低減される。
【0122】
なお、図12(c)、(d)において、電圧電流検出センサ41Caと電圧電流検出センサ41Abの組からなる一対の電圧電流検出センサ41A、及び電圧電流検出センサ41Caと電圧電流検出センサ41Cbの組からなる一対の電圧電流検出センサ41Cは、測定磁界とノイズ磁界とが直交しているため、測定磁界はノイズ磁界から受ける影響は小さい。一方、電圧電流検出センサ41Baと電圧電流検出センサ41Bbの組からなる一対の電圧電流検出センサ41B、及び電圧電流検出センサ41Daと電圧電流検出センサ41Dbの組からなる一対の電圧電流検出センサ41Dは、測定磁界とノイズ磁界とが平行しているため、測定磁界がノイズ磁界から受ける影響は大きい。
【0123】
(g)第8構成例
第8構成例は、出力電流路11とリターン電流路12とが互いに平行な面内にある場合の構成例であり、複数組の一対の電圧電流検出センサを第1構成例~第6構成例と同様に出力電流路11に対して線対称に配置する。
【0124】
図13(a)は上方から見た平面図を示し、図13(b)は側面から見た正面図を示し、図13(c)は測定例を示し、図14は測定磁界とノイズ磁界を示している。
【0125】
図13(a),(b)において、インピーダンス整合装置2を構成する第1コンデンサC1,第2コンデンサC2,及びインダクタLは基板50上に配置され、第2コンデンサC2からは、出力電流路11を介して負荷側(図示していない)と接続する出力ポートに向かって出力電流Ioutが出力される。基板50はグランドを介して負荷側と接続される。負荷からのリターン電流Ireは、負荷側との接地点と第1コンデンサC1との間のリターン電流路12を通って流れる。このとき、出力電流路11が形成される面とリターン電流路12が形成される基板50の面とは略平行となる。
【0126】
出力電流Ioutは、出力電流路11を中心とする環状の測定磁界31を形成し、リターン電流Ireは、リターン電流路12を中心としてノイズ磁界32を形成する。ノイズ磁界32の磁界方向は、基板50を挟んでインピーダンス整合装置2の内側と外側で逆方向となり、インピーダンス整合装置2の内側のノイズ磁界方向は、図13(c)に示すように、一方向の磁界と見なすことができる。なお、図13(c)は、図13(b)の右方の出力端側から見た図を示している。
【0127】
電圧電流検出装置3の電圧電流検出センサ41は、インピーダンス整合装置2の内側において出力電流路11の周囲に配置され、測定磁界31とノイズ磁界32が合成された合成磁界を検出する。
【0128】
図14(a)において、出力電流路11に対して対称に配置され電圧電流検出センサ41の対のうち、一方の電圧電流検出センサ41Aaの配置位置では測定磁界とノイズ磁界との磁界方向は逆方向となり、他方の電圧電流検出センサ41Abの配置位置では測定磁界とノイズ磁界との磁界方向は同方向となる。
【0129】
リターン電流Ireに位相進みあるいは位相遅れがある場合には、ノイズ磁界は位相の影響を受ける。合成磁界は測定磁界とノイズ磁界との合成であるため、合成磁界においてもリターン電流Ireの位相の影響を受ける。
【0130】
図14(b)は、出力電流路11を流れる出力電流Ioutによって生じる測定磁界を示し、図14(c)は、リターン電流路12を流れるリターン電流Ireによって生じるノイズ磁界を示している。図14(b),図14(c)は、出力電流路11及びリターン電流路12が共にx軸方向に配置された状態を示し、出力電流Ioutはx軸方向の正方向に流れ、リターン電流Ireはx軸方向の負方向に流れる状態を示している。出力電流Ioutによる測定磁界、及びリターン電流Ireによるノイズ磁界は、y-z平面に形成される。z軸の正方向において、測定磁界の磁界方向とノイズ磁界の磁界方向とは逆方向となる。z軸の正方向は、図13(b)において、基板50を挟んでインピーダンス整合装置の内側に対応している。
【0131】
図14(d)は、図14(b)の測定磁界と図14(c)のノイズ磁界とが合成された磁界を示している。測定磁界とノイズ磁界の磁界方向は逆方向であるとともに、ノイズ磁界は測定磁界に対して同一方向に磁界方向となるため、z軸の正方向の測定磁界に対してノイズ磁界は逆方向の磁界方向となり、z軸の負方向の測定磁界に対してノイズ磁界は同方向の磁界方向となる。
【0132】
したがって、図14(a)において、インピーダンス整合装置2の内側に配置され、出力電流路11に対してz軸方向において逆方向に配置された電圧電流検出センサ41Aaと電圧電流検出センサ41Abの配置位置では、測定磁界31はノイズ磁界32から逆方向の磁界の影響を受ける。
【0133】
測定磁界31とノイズ磁界32が同方向であるとき、リターン電流Ireが位相進みの場合には、測定磁界31はノイズ磁界32から位相が進む方向の影響を受けて相対的に位相進みとなり、測定磁界31とノイズ磁界32が逆方向であるとき、リターン電流Ireが位相進みの場合には、測定磁界31はノイズ磁界32から位相が遅れる方向の影響を受けて相対的に位相遅れとなる。
【0134】
電圧電流検出センサ41Aaと電圧電流検出センサ41Abの検出電流は、一方の検出電流が位相遅れであり他方の検出電流は位相進みであるため、両方の検出電流を合計した検出電流は位相差が相殺され、位相誤差が低減される。
【産業上の利用可能性】
【0135】
本発明の電圧電流検出装置、及び電力計は、半導体製造装置に適用することができる。
【符号の説明】
【0136】
1 高周波電源
2 インピーダンス整合装置
3 電圧電流検出装置
4 位相演算部
5 電力演算部
6 電力計
7 負荷
10 高周波システム
11 出力電流路
12 リターン電流路
31 測定磁界
32 ノイズ磁界
41 電圧電流検出センサ
41A,41B,41C,41D 電圧電流検出センサ
41Aa,41Ab,41Ba,41Bb,41Ca,41Cb,41Da,41Db 電圧電流検出センサ
42 電圧検出センサ
42a 空間容量
42b コンデンサ
43 電流検出センサ
43a 2次コイル
43b シャント抵抗
50 基板
61a 計測点
61b 計測点
62 検出端
62a 電圧検出端
62b 電流検出端
C1 第1の可変コンデンサ
C2 第2の可変コンデンサ
Iout 出力電流
Ire リターン電流
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
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図15