(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024132298
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】画像デ-タの生成方法、および画像データを生成するコンピュータープログラム
(51)【国際特許分類】
H01L 21/66 20060101AFI20240920BHJP
【FI】
H01L21/66 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023043028
(22)【出願日】2023-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】弁理士法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】關 大地
(72)【発明者】
【氏名】眞柄 慎司
【テーマコード(参考)】
4M106
【Fターム(参考)】
4M106AA01
4M106BA20
4M106CA27
4M106DA15
4M106DJ14
4M106DJ20
4M106DJ23
(57)【要約】
【課題】予想されていない不良要因によってウエハー上にそれまでに存在しなかったパターンで不良チップが発生している場合にも、不良集中領域を表示する。
【解決手段】ウエハー上に形成された複数のチップのうちの不良チップが集中している前記ウエハー上の領域を表示する不良集中領域の表示方法が提供される。この表示方法は、複数のチップが形成されたウエハーに関する入力情報を受け取る工程であって、前記入力情報は、前記ウエハー上に形成された複数のチップのうちの不良チップの位置を表す不良位置情報を含む、受領工程と、前記入力情報に基づいて、あらかじめ定められた処理を行うことにより、前記ウエハーにおいて不良チップが集中している領域である1以上の不良集中領域の外縁を画定し、前記ウエハーにおける前記1以上の不良集中領域の前記外縁を表す画像を表示する画像表示工程と、を含む。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウエハー上に形成された複数のチップのうちの不良チップが集中している前記ウエハー上の領域を表示する不良集中領域の表示方法であって、
複数のチップが形成されたウエハーに関する入力情報を受け取る工程であって、前記入力情報は、前記ウエハー上に形成された複数のチップのうちの不良チップの位置を表す不良位置情報を含む、受領工程と、
前記入力情報に基づいて、あらかじめ定められた処理を行うことにより、前記ウエハーにおいて不良チップが集中している領域である1以上の不良集中領域の外縁を画定し、前記ウエハーにおける前記1以上の不良集中領域の前記外縁を表す画像を表示する画像表示工程と、を含む、表示方法。
【請求項2】
請求項1記載の表示方法であって、
前記受領工程を繰り返すことにより、複数のウエハーについての複数セットの前記入力情報を受け取る工程と、
前記複数セットの入力情報に基づいて定められたウエハー閾値よりも多い数の不良チップを含む1以上のチップ位置を、ウエハー上の複数のチップ位置の中から抽出する工程と、
前記抽出された1以上のチップ位置の情報に基づいて定められた判定基準に基づいて、前記複数のウエハーにおいて不良チップの位置に集中傾向があるか否かを判定する工程と、を含み、
前記画像表示工程は、不良チップの位置に集中傾向があると判定された前記複数のウエハーについて実行される、表示方法。
【請求項3】
請求項2記載の表示方法であって、
前記画像表示工程は、
前記入力情報に含まれる前記不良位置情報に基づいて、あらかじめ定められた処理を行うことにより、前記ウエハーにおけるチップ毎の不良発生確率の分布を規定する複数のパラメーターを推定する工程と、
前記複数のパラメーターに基づいて、前記ウエハーにおける前記1以上の不良集中領域の外縁を画定する工程と、を含む、表示方法。
【請求項4】
請求項3記載の表示方法であって、
前記複数のパラメーターを推定する工程は、前記チップ毎の不良発生確率の分布を表す混合ガウスモデルを決定する工程であり、
前記複数のパラメーターは、前記決定された混合ガウスモデルが有する1以上の正規分布の平均と分散との組み合わせを含み、
前記不良集中領域の外縁を画定する工程は、前記決定された混合ガウスモデルに基づいて定められる確率楕円を、前記不良集中領域の外縁として決定する工程を含む、表示方法。
【請求項5】
請求項2記載の表示方法であって、
前記画像表示工程は、
前記ウエハーの前記不良位置情報に基づいて、ウエハー上においてチップが配される各位置における不良チップの数を取得する工程と、
前記各位置における不良チップの数に基づいて、あらかじめ定められた処理を行うことにより、前記複数のウエハーにおける不良チップの発生の頻度の分布を規定する複数の不良パターンパラメーターを推定する工程と、
前記複数の不良パターンパラメーターに基づいて、前記複数のウエハーにおいて不良チップが集中している領域である1以上の不良集中パターンの外縁を画定する工程と、
前記不良集中領域を有するウエハーについて、前記1以上の不良集中領域の前記外縁とともに、前記1以上の不良集中パターンの少なくとも一つの外縁を表す前記画像を表示する工程と、を含む、表示方法。
【請求項6】
請求項5記載の表示方法であって、
前記画像表示工程は、
前記各位置における不良チップの数の分布に対して平滑化フィルターを適用することにより、前記各位置における不良チップの数の前記分布を平滑化する平滑化工程と、
前記平滑化後の前記各位置における不良チップの数のうち、前記各位置における不良チップの数の前記分布に基づいて定められた頻度閾値よりも少ない数を、0に置き換えるノイズ除去工程と、を含み、
前記複数の不良パターンパラメーターを推定する工程は、前記ノイズ除去工程後の前記各位置における不良チップの数に基づいて、前記複数の不良パターンパラメーターを推定する工程である、表示方法。
【請求項7】
請求項5記載の表示方法であって、
前記複数の不良パターンパラメーターを推定する工程は、前記複数のウエハーにおける不良チップの発生の頻度の分布を表す混合ガウスモデルを決定する工程であり、
前記複数の不良パターンパラメーターは、前記決定された頻度の分布を表す混合ガウスモデルが有する1以上の正規分布の平均と分散との組み合わせを含み、
前記不良集中パターンの外縁を画定する工程は、前記決定された頻度の分布を表す混合ガウスモデルに基づいて定められる確率楕円を、前記不良集中パターンの外縁として決定する工程を含む、表示方法。
【請求項8】
請求項5記載の表示方法であって、
前記画像表示工程は、
前記複数のウエハーのそれぞれについて、前記1以上の不良集中領域が、前記1以上の不良集中パターンのいずれかと類似するか否かを判定する工程と、
前記1以上の不良集中パターンのそれぞれについて、前記不良集中領域を有する1以上のウエハーから、前記類似すると判定された前記不良集中領域を有するウエハーを特定する工程と、を含み、
前記表示方法は、
前記1以上の不良集中パターンごとに、前記類似すると判定された前記不良集中領域を有するウエハーを表す情報を表示する工程を含む、表示方法。
【請求項9】
請求項5記載の表示方法であって、
前記画像表示工程は、
前記複数のウエハーのうち前記不良集中領域を有さないウエハーについて、不良チップの位置とともに、前記1以上の不良集中パターンの少なくとも一つの外縁を表す前記画像を表示する工程を含む、表示方法。
【請求項10】
コンピューターを使用して、ウエハー上に形成された複数のチップのうちの不良チップが集中している前記ウエハー上の領域を表示させるコンピュータープログラムであって、
複数のチップが形成されたウエハーに関する入力情報を受け取る機能であって、前記入力情報は、前記ウエハー上に形成された複数のチップのうちの不良チップの位置を表す不良位置情報を含む、受領機能と、
前記入力情報に基づいて、あらかじめ定められた処理を行うことにより、前記ウエハーにおいて不良チップが集中している領域である1以上の不良集中領域の外縁を画定し、前記ウエハーにおける前記1以上の不良集中領域の前記外縁を表す画像を表示する画像表示機能と、を前記コンピューターに実現させる、コンピュータープログラム。
【請求項11】
請求項10記載のコンピュータープログラムであって、
前記受領機能を繰り返し実現することにより、複数のウエハーについての複数セットの前記入力情報を受け取る機能と、
前記複数セットの入力情報に基づいて定められたウエハー閾値よりも多い数の不良チップを含む1以上のチップ位置を、ウエハー上の複数のチップ位置の中から抽出する機能と、
前記抽出された1以上のチップ位置の情報に基づいて定められた判定基準に基づいて、前記複数のウエハーにおいて不良チップの位置に集中傾向があるか否かを判定する機能と、を前記コンピューターに実現させ、
前記画像表示機能は、不良チップの位置に集中傾向があると判定された前記複数のウエハーについて実現される、コンピュータープログラム。
【請求項12】
請求項11記載のコンピュータープログラムであって、
前記画像表示機能は、
前記入力情報に含まれる前記不良位置情報に基づいて、あらかじめ定められた処理を行うことにより、前記ウエハーにおける不良チップの分布を規定する複数のパラメーターを推定する機能と、
前記複数のパラメーターに基づいて、前記ウエハーにおける前記1以上の不良集中領域の外縁を画定する機能と、を含む、コンピュータープログラム。
【請求項13】
請求項12記載のコンピュータープログラムであって、
前記複数のパラメーターを推定する機能は、前記チップ毎の不良発生確率の分布を表す混合ガウスモデルを決定する機能であり、
前記複数のパラメーターは、前記決定された混合ガウスモデルが有する1以上の正規分布の平均と分散との組み合わせを含み、
前記不良集中領域の外縁を画定する機能は、前記決定された混合ガウスモデルに基づいて定められる確率楕円を、前記不良集中領域の外縁として決定する機能を含む、コンピュータープログラム。
【請求項14】
請求項11記載のコンピュータープログラムであって、
前記画像表示機能は、
前記ウエハーの前記不良位置情報に基づいて、ウエハー上においてチップが配される各位置における不良チップの数を取得する機能と、
前記各位置における不良チップの数に基づいて、あらかじめ定められた処理を行うことにより、前記複数のウエハーにおける不良チップの発生の頻度の分布を規定する複数の不良パターンパラメーターを推定する機能と、
前記複数の不良パターンパラメーターに基づいて、前記複数のウエハーにおいて不良チップが集中している領域である1以上の不良集中パターンの外縁を画定する機能と、
前記不良集中領域を有するウエハーについて、前記1以上の不良集中領域の前記外縁とともに、前記1以上の不良集中パターンの少なくとも一つの外縁を表す前記画像を表示する機能と、を含む、コンピュータープログラム。
【請求項15】
請求項14記載のコンピュータープログラムであって、
前記画像表示機能は、
前記各位置における不良チップの数の分布に対して平滑化フィルターを適用することにより、前記各位置における不良チップの数の前記分布を平滑化する平滑化機能と、
前記平滑化後の前記各位置における不良チップの数のうち、前記各位置における不良チップの数の前記分布に基づいて定められた頻度閾値よりも少ない数を、0に置き換えるノイズ除去機能と、を含み、
前記複数の不良パターンパラメーターを推定する機能は、前記ノイズ除去機能後の前記各位置における不良チップの数に基づいて、前記複数の不良パターンパラメーターを推定する機能である、コンピュータープログラム。
【請求項16】
請求項14記載のコンピュータープログラムであって、
前記複数の不良パターンパラメーターを推定する機能は、前記複数のウエハーにおける不良チップの発生の頻度の分布を表す混合ガウスモデルを決定する機能であり、
前記複数の不良パターンパラメーターは、前記決定された頻度の分布を表す混合ガウスモデルが有する1以上の正規分布の平均と分散との組み合わせを含み、
前記不良集中パターンの外縁を画定する機能は、前記決定された頻度の分布を表す混合ガウスモデルに基づいて定められる確率楕円を、前記不良集中パターンの外縁として決定する機能を含む、コンピュータープログラム。
【請求項17】
請求項14記載のコンピュータープログラムであって、
前記画像表示機能は、
前記複数のウエハーのそれぞれについて、前記1以上の不良集中領域が、前記1以上の不良集中パターンのいずれかと類似するか否かを判定する機能と、
前記1以上の不良集中パターンのそれぞれについて、前記不良集中領域を有する1以上のウエハーから、前記類似すると判定された前記不良集中領域を有するウエハーを特定する機能と、を含み、
前記コンピュータープログラムは、
前記1以上の不良集中パターンごとに、前記類似すると判定された前記不良集中領域を有するウエハーを表す情報を表示する機能を、前記コンピューターに実現させる、コンピュータープログラム。
【請求項18】
請求項14記載のコンピュータープログラムであって、
前記画像表示機能は、
前記複数のウエハーのうち前記不良集中領域を有さないウエハーについて、不良チップの位置とともに、前記1以上の不良集中パターンの少なくとも一つの外縁を表す前記画像を表示する機能を含む、コンピュータープログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、画像デ-タの生成方法、および画像データを生成するコンピュータープログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体チップが生成される際には、一つのウエハー上に多数の同一のチップが形成される。従来、ウエハー上の複数のチップのうちの不良チップの分布態様を、あらかじめ定められた複数のパターンに分類し、表示する技術が存在する。特許文献1の技術においては、あらかじめ用意された複数のパターンの中から、対象であるウエハー上の不良チップの位置と90%以上一致するパターンが、選択される。そのような処理がすべてのウエハーについて行われ、パターンの発生情報が生成される。そのパターンの発生情報に基づいて、ウエハーの不良要因が推定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1の技術においては、不良チップの分布態様を表すパターンはあらかじめ定められている。すなわち、あらかじめ分かっている不良チップの分布態様のパターンのみが用意される。よって、予想されていない不良要因によってウエハー上にそれまでに存在しなかったパターンで不良チップが発生している場合には、特許文献1の技術は、その不良要因の分析に貢献できない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一形態によれば、ウエハー上に形成された複数のチップのうちの不良チップが集中している前記ウエハー上の領域を表示する不良集中領域の表示方法が提供される。この表示方法は、複数のチップが形成されたウエハーに関する入力情報を受け取る工程であって、前記入力情報は、前記ウエハー上に形成された複数のチップのうちの不良チップの位置を表す不良位置情報を含む、受領工程と、前記入力情報に基づいて、あらかじめ定められた処理を行うことにより、前記ウエハーにおいて不良チップが集中している領域である1以上の不良集中領域の外縁を画定し、前記ウエハーにおける前記1以上の不良集中領域の前記外縁を表す画像を表示する画像表示工程と、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】本開示の第1実施形態の画像表示システム1のブロック図である。
【
図2】ウエハーSC上に形成された複数のチップのうちの不良チップDCを表す図である。
【
図4】不良位置情報Idpに含まれるチップレイアウト情報IcLを示す図である。
【
図5】複数のチップが形成されたウエハーの検査において、コンピューター100のCPU110が実行する処理を表すフローチャートである。
【
図6】チップ位置ごとの不良チップ数の数Npdcを示す表である。
【
図7】ウエハーの各チップ位置における不良チップ数Npdcを、ウエハー上の各チップ位置に表記した図である。
【
図8】不良チップ数Npdcごとのチップ位置の数の分布を示すヒストグラムである。
【
図9】ウエハー閾値Thwよりも多い数の不良チップDCを含む1以上のチップ位置Pdcを示した図である。
【
図10】ウエハーにおける不良チップ位置Pdcの例を示した図である。
【
図12】ランダムに不良チップ位置Pdcが配されたウエハーの例を示す図である。
【
図13】横軸にr、縦軸にKをとったときのK(r)のグラフである。
【
図14】ウエハー上において最適化された、不良チップDCの分布を表す混合ガウスモデルの例GMM1,GMM2,GMM3を示す図である。
【
図15】ステップS342における処理を示す説明図である。
【
図16】ノイズ除去処理を経た、各チップ位置における不良チップ数Npdcm2を、濃淡で表した図である。
【
図17】ステップS350における類似判定の手法を説明するための説明図である。
【
図18】不良集中パターンごとに、該当する不良集中領域を有するウエハーを表す表である。
【
図19】ステップS362における表示を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
A.第1実施形態:
図1は、本開示の第1実施形態の画像表示システム1のブロック図である。画像表示システム1は、複数のチップが形成された半導体ウエハーの検査において、検査結果を表す画像を表示する。より具体的には、画像表示システム1は、ウエハー上に形成された複数のチップのうちの不良チップDCが集中しているウエハー上の領域を、表示する。画像表示システム1は、コンピューター100と、検査装置200と、表示装置300と、を備える。
【0008】
表示装置300は、コンピューター100に制御されて、画像を表示する。複数のチップが形成されたウエハーの検査において、表示装置300は、検査結果を表す画像を出力する。表示装置300は、具体的には、液晶ディスプレイである。
【0009】
検査装置200は、ウエハーの検査において、複数のチップが形成されたウエハーを撮像し、そのウエハーに関する入力情報Iiを生成する。ウエハーに関する入力情報Iiは、不良位置情報Idpを含む。不良位置情報Idpは、ウエハー上に形成された複数のチップのうちの不良チップの位置を表す。「不良チップ」とは、設計どおりの性能を発揮しないことが検査によって判明したチップである。ウエハー上に不良チップが存在しない場合には、不良位置情報Idpは、不良チップが存在しない旨の情報を含むこととなる。検査装置200は、ウエハーの検査において、複数のウエハーを撮像し、それらのウエハーに関する入力情報Iiを生成する(
図1の上段右部参照)。
【0010】
図2は、ウエハーSC上に形成された複数のチップのうちの不良チップDCを表す説明図である。
図2において、ウエハーSC上に形成された4個のチップの位置CPを、それぞれ正方形のマスで表す。複数のチップの位置CPのうちの不良チップDCの位置を、ハッチを付したマスで表す。なお、
図2は、技術の理解を容易にするために示す説明図である。実際には、半導体ウエハー上には多数のチップが形成される。入力情報Iiに含まれる不良位置情報Idpは、チップ不良情報Idcと、チップレイアウト情報IcLとを含む。チップ不良情報Idcと、チップレイアウト情報IcLにより、不良チップDCの位置が表される(
図2のDC参照)。
【0011】
図3は、チップ不良情報Idcを示す図である。チップ不良情報Idcは、検査対象である複数のウエハーに形成されたすべてのチップの検査結果を表す情報である。
図3の例においては、チップ不良情報Idcは、検査対象である2枚のウエハーに形成されたチップの検査結果を表している。
【0012】
検査対象であるウエハーには、それぞれ固有のウエハーIDが割り当てられている(
図3の左端の列参照)。
図3においては、2枚のウエハーに割り当てられた2個のウエハーIDとして、Wafer_1,Wafer_2が示されている。
図2に示したウエハーSCは、ウエハーIDとして、Wafer_1が割り当てられているウエハーに相当する。
【0013】
1枚のウエハー内のチップの位置CPに対しては、それぞれ固有のポジションIDが割り当てられている(
図3の右から2列目参照)。
図3においては、ポジションIDとして、Posi_1~Posi_4の4個のポジションIDが示されている。ウエハーが異なっていても、ウエハー内の同じ位置CPは、同じポジションIDで表される。
【0014】
検査対象であるウエハーに形成されたすべてのチップには、それぞれ固有のチップIDが割り当てられている(
図3の左から2列目参照)。
図3においては、チップIDとして、Chip_11~Chip24が割り当てられている。
【0015】
チップ不良情報Idcは、検査対象であるウエハーに形成されたすべてのチップと対応づけられた検査結果を含む。より具体的には、各チップに対して、良または不良のいずれかの検査結果が対応づけられている(
図3の右端の列参照)。
【0016】
図4は、不良位置情報Idpに含まれるチップレイアウト情報IcLを示す図である。チップレイアウト情報IcLは、それぞれのポジションIDが与えられたチップの具体的な位置を表す情報である。ポジションIDとして、Posi_1が割り当てられているチップの位置は、
図2に示したX軸およびY軸にしたがって、(1,1)で表される(
図4の1行目参照)。ポジションIDとして、Posi_2が割り当てられているチップの位置は、
図2に示したX軸およびY軸にしたがって、(1,2)で表される(
図4の2行目参照)。ポジションIDとして、Posi_3,Posi_4が割り当てられているチップの位置も同様に、X軸およびY軸上の位置にしたがって、表される(
図2も参照)。
【0017】
図4に示すチップレイアウト情報IcLと、
図3に示すチップ不良情報Idcのうちのウエハー1枚分の情報と、が組み合わされることにより、ウエハー1枚分の不良位置情報Idpが得られる。チップレイアウト情報IcLについては、同一のチップレイアウトを有するウエハー群に対して、1セットのチップレイアウト情報IcLが、コンピューター100に対して入力されればよい。
【0018】
コンピューター100は、ウエハー上に形成された複数のチップのうちの不良チップDCが集中しているウエハー上の領域を表す画像を、表示装置300に表示させる(
図1の中央参照)。コンピューター100は、具体的な構成として、プロセッサーであるCPU110と、RAM120と、ROM130と、を備えている。RAM120は、半導体メモリーであるメインメモリーと、補助記憶装置であるハードディスクとを含む。ハードディスクには、オペレーティングシステム、アプリケーションプログラム等が格納されている。CPU110は、ハードディスクに記憶されたコンピュータープログラムを、メインメモリーにロードして実行することによって、後述する各種の機能を実現する。コンピューター100は、さらに、入力機器180として、キーボードとマウスとを備える(
図1の上段中央部参照)。
【0019】
図5は、複数のチップが形成されたウエハーの検査においてコンピューター100のCPU110が実行する処理を表すフローチャートである。
図5の処理により、ウエハー上に形成された複数のチップのうちの不良チップDCが集中しているウエハー上の領域が、表示される。
【0020】
ステップS100において、CPU110は、複数のチップが形成されたウエハーに関する入力情報Iiを、検査装置200から受け取る(
図1の上段右部参照)。入力情報Iiには、ウエハー上に形成された複数のチップのうちの不良チップDCの位置を表す不良位置情報Idpが含まれている。不良位置情報Idpは、具体的には、チップ不良情報Idcと、チップレイアウト情報IcLである(
図3および
図4参照)。
【0021】
より具体的には、CPU110は、1枚のウエハーに関する入力情報Iiを検査装置200から受け取る受領工程S110を、少なくとも部分的に繰り返すことにより、複数のウエハーからなるウエハー群についての複数セットの入力情報Iiを受け取る。受領工程S110を繰り返すことにより複数セットの入力情報Iiを受け取る工程を、
図5において、ステップS120として示す。ステップS120の処理を実行するCPU110の機能部を、受領部M120として、
図1に示す。
【0022】
図6は、チップ位置ごとの不良チップ数Npdcを示す表である。その後、CPU110は、チップ不良情報Idcと、チップレイアウト情報IcLと、に基づいて、ウエハー上においてチップが配される各位置(x,y)における不良チップDCの数Npdcを取得する。
【0023】
ステップS200において、CPU110は、複数組の入力情報Iiが表す複数のウエハーにおいて不良チップDCの位置に集中傾向があるか否かを判定する。ステップS200は、ステップS210と、ステップS220と、を含む。
【0024】
図7は、ウエハーの各チップ位置における不良チップ数Npdcを、ウエハー上の各チップ位置に表記した図である。
図7は、チップ位置ごとの不良チップ数の数Npdcを、実際のウエハーの座標上の各チップ位置に表示したものである(
図6参照)。なお、
図7に示されたウエハー上のチップ位置の配置は、
図2~
図4、および
図6に示されたウエハーに設けられるチップの位置の配置とは異なる。
【0025】
ステップS210において、CPU110は、ウエハー閾値Thwよりも多い数の不良チップDCを含む1以上のチップ位置Pdcを、ウエハー上の複数のチップ位置の中から抽出する。ウエハー閾値Thwは、複数セットの入力情報Iiに基づいて定められる。
【0026】
図8は、1個のチップ位置に含まれる不良チップ数Npdcごとの、チップ位置の数の分布を示すヒストグラムである。不良チップ数Npdcごとのチップ位置の数の分布は、ポアソン分布に従うことが知られている。ステップS210においては、不良チップ数Npdcごとのチップ位置の数の分布に対応するポアソン分布において累積確率が95%になる不良チップ数を、ウエハー閾値Thwとする。各チップ位置における不良チップ数Npdcの分布に基づいて定められるウエハー閾値Thwは、言い換えれば、検査装置200からから入力された複数セットの入力情報Iiに基づいて定められる。CPU110は、ウエハー閾値Thwよりも多い数の不良チップDCを含む1以上のチップ位置Pdcを、ウエハー上の複数のチップ位置の中から抽出する。ウエハー閾値Thwよりも多い不良チップ数の範囲を
図8において、Rpdcで示す。
【0027】
図9は、ウエハー閾値Thwよりも多い数の不良チップDCを含む1以上のチップ位置Pdcを示した図である。ウエハー閾値Thwよりも多い数の不良チップDCを含むチップ位置を、本明細書において「不良チップ位置Pdc」と呼ぶ。ステップS210の処理を実行するCPU110の機能部を、抽出部M210として、
図1に示す。
【0028】
ステップS220において、CPU110は、抽出された1以上のチップ位置Pdcの情報に基づいて定められた判定基準に基づいて、複数のウエハーにおいて不良チップDCの位置Pdcに集中傾向があるか否かを判定する。ステップS220においては、K関数法を用いて、複数のウエハーにおいて不良チップDCの位置に集中傾向があるか否かが判定される。
【0029】
図10は、ウエハーにおける不良チップ位置Pdcの例を示した図である。
図10は、
図11、
図12とともにステップS220の処理を説明するために設けられた図である。このため、
図10は
図9に相当するが、
図10に示されたウエハー上のチップ位置の配置は、
図9に示されたチップ位置の配置とは異なっている。
図10の例においては、ステップS210の処理を経た15個の不良チップ位置Pdcが、ハッチを付して示されている。
【0030】
図11は、K関数法を説明する図である。ステップS220におけるK関数法を用いた判定においては、不良チップ位置Pdci(iは1からnまでの整数)のそれぞれについて、その不良チップ位置Pdciを中心として半径r内に含まれる不良チップ位置Pdcの数Ki(r)が計算され、すべての不良チップ位置Pdc1~PdcnについてのKi(r)の平均値K(r)が算出される。半径rは、チップ位置1個分の寸法の整数倍の大きさを有し、0から、各チップ位置を中心とする円にウエハー上のすべての不良チップ位置Pdcが含まれる半径に対応する数まで、用意される。
【0031】
【0032】
【数2】
n:不良チップ位置の数
N:チップ位置の数
【0033】
図12は、ランダムに不良チップ位置Pdcが配されたウエハーの例を示す図である。ステップS220においては、モンテカルロシミュレーションにより、K関数値の95%信頼区間が算出される。まず、検査対象のウエハー群と同じチップ位置の配置を有し、検査対象のウエハー群と同数nの不良チップ位置Pdcが配されたウエハーが、1000枚、仮想的に用意される(
図12参照)。それらについて同様に、K(r)が算出される。
【0034】
図13は、横軸にr、縦軸にKをとったときのK(r)のグラフである。
図13において、検査対象のウエハー群についてのK関数値を、実線K(r)で示す。仮想的に用意されたランダムな不良チップ位置を有する1000枚のウエハーについてのK関数値を一点鎖線Km(r)で示す。仮想的に用意されたランダムな不良チップ位置を有する1000枚のウエハーに基づいて定められた95%信頼区間を破線Kc(r)で示す。CPU110は、K(r)がKc(r)を上回る場合に、検査対象のウエハー群の不良チップDCの位置に集中傾向があると判定する。
図2のステップS300の処理は、不良チップDCの位置に集中傾向があると判定されたウエハー群について、実行される。ステップS220の処理を実行するCPU110の機能部を、判定部M220として、
図1に示す。
【0035】
このような処理を行うことにより、低い頻度でランダムに発生する不良チップDCを有するウエハー群の影響を低減して、不良チップの位置に集中傾向があるウエハー群について、不良集中領域の外縁を画定することができる。
【0036】
また、本実施形態においては、チップ位置Pdcを抽出する処理を、受け取った複数セットの入力情報Iiに基づいて定められたウエハー閾値Thwに基づいて、行っている(
図8参照)。このため、受け取った複数セットの入力情報Iiとは無関係に定められた閾値に基づいてチップ位置Pdcの抽出を行う態様とは異なり、検査対象である複数のウエハーの集合の特性を反映して、1以上のチップ位置Pdcを抽出する処理を行うことができる。その結果、たとえば、抽出されるチップ位置Pdcの数が0となったり、抽出されないチップ位置Pdcの数が0となったりする事態を回避できるように、ウエハー閾値Thwを定めて、チップ位置Pdcの抽出を行うことができる。
【0037】
また、本実施形態においては、不良チップの位置Pdcに集中傾向があるか否かを判定する処理を、抽出された1以上のチップ位置Pdcの情報に基づいて定められた判定基準に基づいて、行っている(
図10~
図13参照)。このため、抽出された1以上のチップ位置Pdcの情報とは無関係に定められた判定基準に基づいて、不良チップの位置Pdcに集中傾向があるか否かが判定される態様とは異なり、抽出されたチップ位置Pdcの特性を反映して、複数のウエハーにおいて不良チップの位置Pdcに集中傾向があるか否かを判定することができる。
【0038】
ステップS300においては、CPU110は、入力情報Iiに基づいて、あらかじめ定められた処理を行うことにより、ウエハーにおいて不良チップDCが集中している領域である1以上の不良集中領域の外縁を画定し、ウエハーにおける1以上の不良集中領域の外縁を表す画像を表示する。ステップS300は、ステップS330,S340,S350,S360を含む。
【0039】
ステップS330においては、CPU110は、個々のウエハーにおける不良集中領域を画定する。「不良集中領域」は、1枚のウエハーにおいて、ランダムな分布に比べてより高い密度で不良チップが存在する領域である。あるウエハーにおいて、不良集中領域が存在しない場合もあるし、1個の不良集中領域が存在する場合もあるし、複数の不良集中領域が存在する場合もある。ステップS330は、ステップS336,S338を含む。
【0040】
ステップS336においては、CPU110は、ウエハーの入力情報Iiに含まれる不良位置情報Idpに基づいて、あらかじめ定められた処理を行うことにより、それぞれのウエハーにおける不良チップDCの分布を規定する1組以上のパラメーターμe,Σeを推定する。
【0041】
CPU110は、不良チップDCの分布を表す混合ガウスモデルを決定する。すなわち、不良チップDCのウエハー上の分布を、2次元における1以上の正規分布の組み合わせで表す。1以上の正規分布は、それぞれ2次元上の平均μeと分散Σeによって、特定される。
【0042】
(i)まず、1枚のウエハー上の不良チップDCの分布を表すのに使用される正規分布の数kが、固定される。そして、k個の正規分布について、1枚のウエハーにおける不良チップの分布に対して、尤度Lが最大となるように、k個のガウス分布のそれぞれの平均μeと分散Σeとが最適化される。
【0043】
(ii)固定された正規分布の数kと、算出された尤度Lと、からベイズ情報量基準BICが算出される。
【0044】
【数3】
【数4】
n:不良チップ位置の数
θ:正規分布のパラメーター
k:固定された正規分布の数
f:混合ガウスモデルの分布
xi:不良チップ位置の座標
【0045】
ベイズ情報量基準BIC中の第1項に含まれる尤度は、正規分布の数kが大きくなるほど小さくなる。一方、BICでは、第1項とは逆の符号を有するペナルティ項として、正規分布の数kが大きくなるほど大きくなる第2項を有する。このため、正規分布の数kが異なる混合ガウスモデルについて、BICに基づいて最適化を行うことができる。
【0046】
使用される正規分布の数kが、1から順に、ステップS336の処理の負荷が許容される最大数まで、増大され、上記(i)および(ii)の処理が実行される。
【0047】
正規分布の数kごとに算出されたBICのうち、BICが最小となるkが選択され、上記(i)で決定された平均μeと分散Σeとをそれぞれ有するk個の正規分布が、最適な混合ガウスモデルとして、決定される。すなわち、ステップS336においては、不良チップDCの分布をもっともよく表す混合ガウスモデルが決定される。不良集中領域を有するそれぞれのウエハーにおける不良チップDCの分布を規定するパラメーターμe,Σeとして、決定された混合ガウスモデルが有する1以上の正規分布の平均μeと分散Σeとの組み合わせが含まれる。
【0048】
図14は、ウエハー上において最適化された、不良チップDCの分布を表す混合ガウスモデルの例GMM1,GMM2,GMM3を示す図である。ステップS336の処理を実行するCPU110の機能部を、第1GMM推定部M336として、
図1に示す。
【0049】
ステップS338においては、CPU110は、ステップS336で特定されたパラメーターμe, Σeに基づいて、そのウエハーにおける1以上の不良集中領域の外縁を画定する。より具体的には、ステップS336で決定された混合ガウスモデルGMM1,GMM2,GMM3に基づいて定められる確率楕円が、不良集中領域の外縁として決定される。確定される不良集中領域の外縁は、
図14の例において、Σeに対応する高さを有する平面で、混合ガウスモデルGMM1,GMM2,GMM3を切ったときの断面に相当する。ステップS338の処理を実行するCPU110の機能部を、不良領域確定部M338として、
図1に示す。
【0050】
このような処理が行われることにより、恣意的に定められる基準にしたがって不良集中領域が画定されることがない。すなわち、不良集中領域の外縁を高い信頼性を伴って、決定することができる。その結果、ステップS360において、不良要因の分析に貢献できる画像を、表示装置300に表示できる。
【0051】
ステップS340においては、CPU110は、検査対象のウエハー群における不良集中パターンの外縁を画定する。「不良集中パターン」は、不良集中領域を有する複数のウエハーから統計的に得られる、ランダムな分布に比べてより高い密度で不良チップが存在する領域である。不良集中領域を有する複数のウエハーにおいて、1個の不良集中パターンが存在する場合もあるし、複数の不良集中パターンが存在する場合もある。ステップS340は、ステップS342,S344,S346,S348を含む。
【0052】
ステップS342においては、CPU110は、ウエハー上の各チップ位置における、ウエハー群の不良チップDCの数の分布に対して、平滑化処理を行う(
図7参照)。より具体的には、CPU110は、各チップ位置における不良チップDCの数の分布に対して平滑化フィルターを適用する。
【0053】
図15は、ステップS342における処理を示す説明図である。
図15の左端において、ウエハーの各チップ位置における不良チップDCの数Npdcを、濃淡で表した図を示す。
図15の左端に示す例において、チップ位置は、9行×9列の配列に包含される略円形の配置を備えている。チップ位置CPの色が濃いほど、そのチップ位置CPの不良チップDCの数Npdcは大きい。各チップ位置は、不良チップの数Npdcとして、具体的には、0~3を有する。CPU110は、この不良チップDCの数の分布に対して、3行×3列のガウシアンフィルターGFを適用する(
図15の中央部参照)。なお、不良チップDCの数の分布に対して適用されるガウシアンフィルターGFのサイズは、チップ位置の縦または横の並びの数の1/3~1/5のサイズを有することが好ましい。
【0054】
各チップ位置の不良チップの数Npdcは、ガウシアンフィルターGFの各要素が有する重みにしたがって、対象であるチップ位置の不良チップの数Npdcに加えて、周辺のチップ位置の不良チップ数Npdcを使用して、再計算され、Npdcm1に置き換えられる。その結果、各チップ位置における不良チップDCの数の分布は、平滑化される。
図15の右端において、平滑化処理を経た各チップ位置における不良チップ数Npdcm1を、濃淡で表した図を示す。ステップS342の処理を実行するCPU110の機能部を、平滑化部M342として、
図1に示す。
【0055】
図16は、ステップS344におけるノイズ除去処理を経た、各チップ位置における不良チップ数Npdcm2を、濃淡で表した図である。ステップS344においては、CPU110は、ノイズ除去処理を行う。より具体的には、CPU110は、平滑化後の各チップ位置における不良チップの数Npdcm1のうち、頻度閾値Thfよりも少ない数を、0に置き換える(
図15の右端参照)。頻度閾値Thfは、平滑化前の各チップ位置における不良チップDCの数Npdcの分布に基づいて定められる。
【0056】
具体的には、頻度閾値Thfは、平滑化処理を経た不良チップ数Npdcm1ごとのチップ位置の数の分布のポアソン分布において、累積確率が65%になる不良チップ数である(
図8参照)。ノイズ除去処理を経た不良チップ数を、
図16において、不良チップ数Npdcm2と表記する。
【0057】
ステップS342,S344の処理を行うことにより、低い頻度でランダムに発生する不良チップの影響を低減した状態で、ステップS346,S348において、不良チップの発生の頻度の分布を表す混合ガウスモデルを特定し、不良集中パターンの外縁を画定することができる。
【0058】
また、本実施形態においては、平滑化前の各チップ位置における不良チップの数Npdcの分布に基づいて定められた頻度閾値Thfを使用して、ノイズ除去処理を実行している。このため、平滑化前の各位置における不良チップDCの数Npdcの分布とは無関係に定められた頻度閾値に基づいてノイズ除去処理を実行する態様とは異なり、検査対象である複数のウエハーの集合の特性を反映して、ノイズ除去処理を実行できる。たとえば、不良集中パターンの外縁の画定の際に考慮されるべき不良チップの発生が考慮の対象から除かれたり、ノイズの除去が不十分となったりしないように、頻度閾値が定められ、ノイズ除去処理が実行されることができる。
【0059】
ステップS346においては、CPU110は、ステップS342,S344の処理を経た各チップ位置における不良チップの数Npdcm2に基づいて、あらかじめ定められた処理を行うことにより、複数のウエハーにおける不良チップの発生の頻度の分布を規定する不良パターンパラメーターμf,σfを推定する。ステップS346の処理は、処理の対象が、個別のウエハーにおける不良チップの分布ではなく、ノイズ除去処理後の各チップ位置における集計された不良チップの数Npdcm2である点を除いて、ステップS336の処理と同じである。
【0060】
すなわち、ステップS346においては、複数のウエハーにおける不良チップDCの発生の頻度の分布を表す混合ガウスモデルが決定される(
図14参照)。すなわち、複数の不良パターンパラメーターは、決定された頻度の分布を表す混合ガウスモデルが有する1以上の正規分布の平均μfと分散Σfとの組み合わせである。ステップS346の処理を実行するCPU110の機能部を、第2GMM推定部M346として、
図1に示す。
【0061】
ステップS348においては、CPU110は、不良チップDCの発生の頻度の分布を規定する複数の不良パターンパラメーターμf,σfに基づいて、複数のウエハーにおいて不良チップDCが集中している領域である1以上の不良集中パターンの外縁を画定する。
【0062】
ステップS348の処理は、処理の対象が、個別のウエハーにおけるチップ毎の不良発生確率の分布を表す混合ガウスモデルではなく、ノイズ除去処理後の各チップ位置における集計された不良チップの数Npdcm2を表す混合ガウスモデルである点を除いて、ステップS338の処理と同じである。
【0063】
すなわち、ステップS348においては、決定された頻度の分布を表す混合ガウスモデルに基づいて定められる確率楕円が、不良集中パターンの外縁として決定される。確定される不良集中領域の外縁は、σfに対応する高さを有する平面で、混合ガウスモデルを切ったときの断面に相当する。ステップS348の処理を実行するCPU110の機能部を、不良パターン確定部M348として、
図1に示す。
【0064】
このような態様とすることにより、恣意的に定められる基準にしたがって、ウエハー群における不良集中パターンが画定されることがない。すなわち、不良集中パターンの外縁を高い信頼性を伴って、決定することができる。その結果、ステップS360において、不良要因の分析に貢献できる画像を表示できる。
【0065】
ステップS350において、CPU110は、ステップS340で得られた不良集中パターンのそれぞれについて、各不良集中パターンに当てはまる不良集中領域を有するウエハーを選別する。まず、CPU110は、ウエハー群に含まれるウエハーのそれぞれについて、その1以上の不良集中領域が、1以上の不良集中パターンのいずれかと類似するか否かを判定する。
【0066】
図17は、ステップS350における類似判定の手法を説明するための説明図である。ステップS350の類似判定においては、相互最近隣距離法とHotellingT2検定が併用される。相互最近隣距離法においては、不良集中領域に含まれるチップ位置と、不良集中パターンに含まれるチップ位置のうち、もっとも近いチップ位置同士の距離の平均値と、分布がランダムである場合のシミュレーション結果と、に基づいて、検定が行われる。HotellingT2検定においては、不良集中領域の中心位置と、不良集中パターンの中心位置と、の差に基づいて、検定が行われる。
【0067】
図17においては、表の1行目に示すウエハー上の群1が群2に対して「類似する」群として検出される場合、「A」と表記され、群1が群2に対して「類似する」群として検出されない場合、「B」と表記されている。ステップS350の類似判定においては、ある不良集中領域とある不良集中パターンの組み合わせについて、相互最近隣距離法とHotellingT2検定のいずれにおいても「A」と判定される場合に、「類似する」と判定される(
図17の表の最下段参照)。
【0068】
図18は、不良集中パターンごとに、該当する不良集中領域を有するウエハーを表す表である。
図18において、ウエハーはウエハーIDで表されている(
図3参照)。ウエハー上の各不良集中領域と不良集中パターンとの類似判定の後、CPU110は、ウエハーごとに、それぞれの不良集中パターンに該当する不良集中領域を有するか否かを判定する。
図18の例においては、ウエハー群は、2個の不良集中パターンDP1,DP2を有する(
図5のS348参照)。
【0069】
また、CPU110は、1以上の不良集中パターンDP1,DP2のそれぞれについて、不良集中領域を有する1以上のウエハーから、各不良集中パターンに対して類似すると判定された不良集中領域を有するウエハーを特定する。
図18の例においては、不良集中パターンDP1に類似する不良集中領域を有するウエハーとして、Wafer_3,Wafer_4,Wafer_7のウエハーが特定される。不良集中パターンDP2に類似する不良集中領域を有するウエハーとして、Wafer_1,Wafer_2,Wafer_7のウエハーが特定される。ステップS350の処理を実行するCPU110の機能部を、ウエハー選別部M350として、
図1に示す。
【0070】
ステップS360においては、ステップS330,S340,S350の処理の結果が、表示装置300に表示される。ステップS330,S340,S350の処理結果を示す画像のデータを、
図1において、画像データPDとして示す(
図1の上段左部参照)。ステップS360は、ステップS362,S364を含む。
【0071】
図19は、ステップS362における表示を示す図である。ステップS362においては、CPU110は、検査対象のあるウエハーにおける不良集中領域DA1,DA2の外縁を表す画像を、表示装置300に表示する(
図5のS338参照)。
図19において、チップ位置CPのうち不良チップDCが位置する不良チップ位置Pdcには、ハッチが付されている。不良集中領域DA1,DA2は破線で示されている。
【0072】
ステップS330およびステップS362の処理が行われることにより、ウエハーに関する入力情報Iiに基づいて、そのウエハーにおける不良集中領域DA1,DA2の外縁が画定され、その外縁を表す画像が表示される。このため、不良集中領域の例を表すあらかじめ定められた複数のパターンの中から一つが選択される態様とは異なり、予想されていない不良要因によってウエハー上に不良チップDCが発生している場合にも、その不良要因の分析に貢献できる画像を表示できる。
【0073】
ステップS362においては、CPU110は、また、不良集中領域を有する1以上のウエハーのそれぞれについて、1以上の不良集中領域の外縁とともに、それらの不良集中領域と類似すると判定された不良集中パターンDP1,DP2の外縁を表す画像を表示する。すなわち、CPU110は、ウエハー群に含まれる各ウエハーについて、
図19の画面を表示させる。
図19において、不良集中領域DA1,DA2が破線で示されているのに対して、不良集中パターンDP1,DP2は、実線で示されている。ステップS362においては、ユーザーからの指示に応じて、各ウエハーについて、
図19の画面が表示される。ステップS362の処理を実行するCPU110の機能部を、ウエハー画像表示部M362として、
図1に示す。
【0074】
このような処理を行うことにより、ステップS120で受け取られた入力情報Iiに対応する複数のウエハーにおいて典型的に生じ得る不良集中パターンDP1,DP2と、個別のウエハーの不良集中領域DA1,DA2と、を表す画像を表示できる。このため、不良要因の分析に貢献できる画像を表示できる。たとえば、集計された数値またはそれらの数値から得られるパラメーターから、不良チップの集中の分布をイメージしにくいユーザーにも、分かりやすく不良チップの集中の分布を提示できる。
【0075】
ステップS364においては、CPU110は、1以上の不良集中パターンDP1,DP2ごとに、類似すると判定された不良集中領域DA1,DA2を有するウエハーを表す情報を、表示装置300に表示する。具体的には、CPU110は、
図18の表を表示装置300に表示する。ステップS364の処理を実行するCPU110の機能部を、パターン分類表示部M364として、
図1に示す。
【0076】
このような処理を行うことにより、多数の不良チップDCを含むウエハーにおいて典型的に生じ得る不良集中パターンDP1,DP2に類似する態様で不良チップDCが発生したウエハーの情報を、提供することができる。よって、不良要因の分析に貢献できる情報を提供できる。
【0077】
B.他の実施形態:
B1.他の実施形態1:
(1)上記実施形態においては、ウエハーにおける不良チップの分布を規定する複数のパラメーターとして、正規分布の平均μeと分散Σeの1以上の組み合わせが使用される(
図14参照)。しかし、ウエハーにおける不良チップの分布を規定する複数のパラメーターとして、さらに、構成要素となる1以上の分布の重みが考慮されてもよい。
【0078】
また、上記実施形態においては、複数のウエハーにおける不良チップの発生の頻度の分布を規定する複数のパラメーターとして、正規分布の平均μfと分散Σfの1以上の組み合わせが使用される。しかし、複数のウエハーにおける不良チップの発生の頻度の分布を規定する複数のパラメーターとして、さらに、構成要素となる1以上の分布の重みが考慮されてもよい。
【0079】
(2)上記実施形態においては、不良チップが多数発生するチップ位置Pdcを特定位する際に、ポアソン分布において累積確率が95%になる不良チップ数を、ウエハー閾値Thwとする(
図8および
図9参照)。しかし、不良チップが多数発生するチップ位置Pdcを特定位する際のウエハー閾値は、ポアソン分布において累積確率が90%になる不良チップ数や、累積確率が85%になる不良チップ数など、他の値であってもよい。ただし、ウエハー閾値は、母集団となるウエハーにおいて不良チップが多数発生するチップ位置の分布に基づいて定められることが好ましい。
【0080】
(3)上記実施形態においては、各チップ位置における不良チップ数Npdcm2の分布を特定する際のノイズ除去処理において、不良チップの数Npdcm1のうち、頻度閾値Thfよりも少ない数が、0に置き換えられる。頻度閾値Thfは、不良チップ数Npdcm1ごとのチップ位置の数の分布のポアソン分布において、累積確率が65%になる不良チップ数である(
図8、
図15、および
図16参照)。しかし、ノイズ除去処理において、頻度閾値は、ポアソン分布において累積確率が60%になる不良チップ数や、累積確率が55%になる不良チップ数など、他の値であってもよい。ただし、ウエハー閾値は、母集団となるウエハーにおいて不良チップが多数発生するチップ位置の分布に基づいて定められることが好ましい。ウエハー閾値は、不良チップが多数発生するチップ位置の平滑化後の分布に基づいて定められてもよいし、平滑化前の分布に基づいて定められてもよい。
【0081】
(4)上記実施形態においては、ステップS350の類似判定においては、相互最近隣距離法とHotellingT2検定が併用される(
図5および
図17参照)。しかし、ステップS350の類似判定においては、(i)不良集中領域に含まれるそれぞれのチップ位置と、不良集中パターンに含まれるそれぞれのチップ位置と、の距離に基づいて類似度を評価する手法と、(ii)不良集中領域を代表する位置と、不良集中パターンを代表する位置と、の距離に基づいて類似度を評価する手法と、の両方が使用される手法であれば、他の手法を採用することもできる。
【0082】
(5)上記実施形態においては、混合ガウスモデルの最適化において、ベイズ情報量基準が採用される。しかし、混合ガウスモデルの最適化において、赤池情報量基準など、他の基準が使用されてもよい。
【0083】
B2.他の実施形態2:
上記実施形態においては、
図5のステップS300以下の処理は、不良チップDCの位置に集中傾向があると判定されたウエハー群について、実行される(
図5のS200参照)。しかし、画像表示工程は、複数のウエハーにおいて、不良チップの位置に集中傾向があるか否かによらず、実行されてもよい。
【0084】
B3.他の実施形態3:
上記実施形態においては、ウエハーの入力情報Iiに含まれる不良位置情報Idpに基づいて、あらかじめ定められた処理が行われ、それぞれのウエハーにおける不良チップDCの分布を規定するパラメーターμe,Σeが推定される(
図5のステップS336参照)。そして、特定されたパラメーターμe, Σeに基づいて、そのウエハーにおける不良集中領域の外縁が画定される(
図5のステップS338参照)。しかし、不良集中領域の外縁は、入力情報に基づいてあらかじめ定められた画像処理が行われることにより、画定されるなど、他の方法で画定されてもよい。
【0085】
B4.他の実施形態4:
上記実施形態においては、不良チップDCのウエハー上の分布は、1以上の正規分布の組み合わせで表される。そして、各正規分布は、それぞれ平均μeと分散Σeによって特定される。しかし、不良チップDCのウエハー上の分布は、有限の数のパラメーターで特定できる他の1以上の分布の組み合わせによって、表されてもよい。
【0086】
B5.他の実施形態5:
上記実施形態においては、ステップS342,S344の処理を経た各チップ位置における不良チップの数Npdcm2に基づいて、あらかじめ定められた処理を行うことにより、複数のウエハーにおける不良チップの発生の頻度の分布を規定する不良パターンパラメーターμf,σfが推定される(
図5のステップS346参照)。そして、不良パターンパラメーターμf,σfに基づいて、複数のウエハーにおいて不良チップDCが集中している領域である不良集中パターンの外縁が画定される。しかし、不良集中パターンの外縁は、不良チップの数の分布に対してあらかじめ定められた画像処理が行われることにより、画定されるなど、他の方法で画定されてもよい。
【0087】
B6.他の実施形態6:
上記実施形態においては、平滑化後の各チップ位置における不良チップの数Npdcm1のうち、頻度閾値Thfよりも少ない数が、0に置き換えられるノイズ除去処理が実行される(
図5のS3344、
図15、および
図16参照)。しかし、ノイズ除去処理を経ずに、不良集中パターンの外縁が画定されてもよい。また、平滑化処理を経ずに、不良集中パターンの外縁が画定されてもよい。
【0088】
B7.他の実施形態7:
上記実施形態においては、複数のウエハーにおける不良チップDCの発生の頻度の分布が1以上の正規分布の組み合わせで表される。そして、各正規分布は、それぞれ平均μfと分散Σfによって、特定される。しかし、複数のウエハーにおける不良チップDCの発生の頻度の分布は、有限の数のパラメーターで特定できる他の1以上の分布の組み合わせによって、表されてもよい。
【0089】
B8.他の実施形態8:
上記実施形態においては、不良集中パターンDP1,DP2ごとに、類似すると判定された不良集中領域DA1,DA2を有するウエハーを表す情報が、表示装置300に表示される(
図5のS364、および
図18参照)。しかし、そのような情報が表示されず、各ウエハーにおける不良集中領域DA1,DA2の外縁を表す画像のみが、表示装置300に表示されてもよい(
図5のS362、および
図19参照)。
【0090】
B9.他の実施形態9:
上記実施形態においては、不良集中領域DA1,DA2の外縁とともに、不良集中パターンDP1,DP2の外縁が表示される(
図19参照)。しかし、不良集中領域DA1,DA2の外縁は示されなくてもよい。たとえば、ステップS120で受け取られた入力情報Iiに対応する複数のウエハーのうち、不良集中領域を有さないウエハーについて、不良チップの位置とともに、1以上の不良集中パターンDP1,DP2の少なくとも一つの外縁を表す画像が、表示されてもよい。
【0091】
このような処理を行うことにより、入力情報を受け取った複数のウエハーにおいて典型的に生じ得る不良集中パターンDP1,DP2と、個別のウエハーの不良チップDCの位置と、を表す画像を表示できる。このため、不良要因の分析に貢献できる画像を表示できる。
【0092】
C.他の形態:
本開示は、上述した実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の形態で実現することができる。例えば、本開示は、以下の形態によっても実現可能である。以下に記載した各形態中の技術的特徴に対応する上記実施形態中の技術的特徴は、本開示の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、本開示の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【0093】
(1)本開示の一形態によれば、ウエハー上に形成された複数のチップのうちの不良チップが集中している前記ウエハー上の領域を表示する不良集中領域の表示方法が提供される。この表示方法は、複数のチップが形成されたウエハーに関する入力情報を受け取る工程であって、前記入力情報は、前記ウエハー上に形成された複数のチップのうちの不良チップの位置を表す不良位置情報を含む、受領工程と、前記入力情報に基づいて、あらかじめ定められた処理を行うことにより、前記ウエハーにおいて不良チップが集中している領域である1以上の不良集中領域の外縁を画定し、前記ウエハーにおける前記1以上の不良集中領域の前記外縁を表す画像を表示する画像表示工程と、を含む。
このような態様においては、ウエハーに関する入力情報に基づいて、そのウエハーにおける不良集中領域の外縁が画定され、その外縁を表す画像が表示される。このため、不良集中領域の例を表すあらかじめ定められた複数のパターンの中から一つが選択される態様とは異なり、予想されていない不良要因によってウエハー上に不良チップが発生している場合にも、その不良要因の分析に貢献できる画像を表示できる。
【0094】
(2)上記形態の表示方法において、前記受領工程を繰り返すことにより、複数のウエハーについての複数セットの前記入力情報を受け取る工程と、前記複数セットの入力情報に基づいて定められたウエハー閾値よりも多い数の不良チップを含む1以上のチップ位置を、ウエハー上の複数のチップ位置の中から抽出する工程と、前記抽出された1以上のチップ位置の情報に基づいて定められた判定基準に基づいて、前記複数のウエハーにおいて不良チップの位置に集中傾向があるか否かを判定する工程と、を含み、前記画像表示工程は、不良チップの位置に集中傾向があると判定された前記複数のウエハーについて実行される、態様とすることもできる。
このような態様とすることにより、低い頻度でランダムに発生する不良チップを有するウエハー群の影響を低減して、不良チップの位置に集中傾向があるウエハー群について、不良集中領域の外縁を画定することができる。
また、上記態様においては、チップ位置を抽出する処理を、受け取った複数セットの入力情報に基づいて定められたウエハー閾値に基づいて、行っている。このため、受け取った複数セットの入力情報とは無関係に定められた閾値に基づいてチップ位置の抽出を行う態様とは異なり、複数のウエハーの集合の特性を反映して、1以上のチップ位置を抽出する処理を行うことができる。
また、上記態様においては、不良チップの位置に集中傾向があるか否かを判定する処理を、前記抽出された1以上のチップ位置の情報に基づいて定められた判定基準に基づいて、行っている。このため、抽出された1以上のチップ位置の情報とは無関係に定められた判定基準に基づいて、不良チップの位置に集中傾向があるか否かが判定される態様とは異なり、抽出されたチップ位置の特性を反映して、複数のウエハーにおいて不良チップの位置に集中傾向があるか否かを判定することができる。
【0095】
(3)上記形態の表示方法において、前記画像表示工程は、前記入力情報に含まれる前記不良位置情報に基づいて、あらかじめ定められた処理を行うことにより、前記ウエハーにおける不良チップの分布を規定する複数のパラメーターを推定する工程と、前記複数のパラメーターに基づいて、前記ウエハーにおける前記1以上の不良集中領域の外縁を画定する工程と、を含む、態様とすることもできる。
このような態様とすることにより、恣意的に定められる基準にしたがって不良集中領域の外縁が画定されることがない。その結果、不良要因の分析に貢献できる画像を表示できる。
【0096】
(4)上記形態の表示方法において、前記複数のパラメーターを推定する工程は、前記チップ毎の不良発生確率の分布を表す混合ガウスモデルを決定する工程であり、前記複数のパラメーターは、前記決定された混合ガウスモデルが有する1以上の正規分布の平均と分散との組み合わせを含み、前記不良集中領域の外縁を画定する工程は、前記決定された混合ガウスモデルに基づいて定められる確率楕円を、前記不良集中領域の外縁として決定する工程を含む、態様とすることもできる。
不良集中領域の外縁を高い信頼性を伴って、決定することができる。
【0097】
(5)上記形態の表示方法において、前記画像表示工程は、前記ウエハーの前記不良位置情報に基づいて、ウエハー上においてチップが配される各位置における不良チップの数を取得する工程と、前記各位置における不良チップの数に基づいて、あらかじめ定められた処理を行うことにより、前記複数のウエハーにおける不良チップの発生の頻度の分布を規定する複数の不良パターンパラメーターを推定する工程と、前記複数の不良パターンパラメーターに基づいて、前記複数のウエハーにおいて不良チップが集中している領域である1以上の不良集中パターンの外縁を画定する工程と、前記不良集中領域を有するウエハーについて、前記1以上の不良集中領域の前記外縁とともに、前記1以上の不良集中パターンの少なくとも一つの外縁を表す前記画像を表示する工程と、を含む、態様とすることもできる。
このような態様とすることにより、入力情報を受け取った複数のウエハーにおいて典型的に生じ得る不良集中パターンと、個別のウエハーの不良集中領域と、を表す画像を表示できる。このため、不良要因の分析に貢献できる画像を表示できる。
このような態様とすることにより、恣意的に定められる基準にしたがって不良集中パターンの外縁が画定されることがない。その結果、不良要因の分析に貢献できる画像を表示できる。
【0098】
(6)上記形態の表示方法において、前記画像表示工程は、前記各位置における不良チップの数の分布に対して平滑化フィルターを適用することにより、前記各位置における不良チップの数の前記分布を平滑化する平滑化工程と、前記平滑化後の前記各位置における不良チップの数のうち、前記各位置における不良チップの数の前記分布に基づいて定められた頻度閾値よりも少ない数を、0に置き換えるノイズ除去工程と、を含み、前記複数の不良パターンパラメーターを推定する工程は、前記ノイズ除去工程後の前記各位置における不良チップの数に基づいて、前記複数の不良パターンパラメーターを推定する工程である、態様とすることもできる。
このような態様とすることにより、低い頻度でランダムに発生する不良チップの影響を低減して、不良集中パターンの外縁を画定することができる。
また、上記態様においては、平滑化前の各位置における不良チップの数の分布に基づいて定められた頻度閾値を使用して、ノイズ除去工程を実行している。このため、各位置における不良チップの数の分布とは無関係に定められた頻度閾値に基づいてノイズ除去工程を実行する態様とは異なり、複数のウエハーの集合の特性を反映して、ノイズ除去工程を実行できる。
【0099】
(7)上記形態の表示方法において、前記複数の不良パターンパラメーターを推定する工程は、前記複数のウエハーにおける不良チップの発生の頻度の分布を表す混合ガウスモデルを決定する工程であり、前記複数の不良パターンパラメーターは、前記決定された頻度の分布を表す混合ガウスモデルが有する1以上の正規分布の平均と分散との組み合わせを含み、前記不良集中パターンの外縁を画定する工程は、前記決定された頻度の分布を表す混合ガウスモデルに基づいて定められる確率楕円を、前記不良集中パターンの外縁として決定する工程を含む、態様とすることもできる。
このような態様とすることにより、不良集中パターンの外縁を高い信頼性を伴って、決定することができる。
【0100】
(8)上記形態の表示方法において、前記画像表示工程は、前記複数のウエハーのそれぞれについて、前記1以上の不良集中領域が、前記1以上の不良集中パターンのいずれかと類似するか否かを判定する工程と、前記1以上の不良集中パターンのそれぞれについて、前記不良集中領域を有する1以上のウエハーから、前記類似すると判定された前記不良集中領域を有するウエハーを特定する工程と、を含み、前記表示方法は、前記1以上の不良集中パターンごとに、前記類似すると判定された前記不良集中領域を有するウエハーを表す情報を表示する工程を含む、態様とすることもできる。
このような態様とすることにより、複数セットの入力情報に対応する複数のウエハーにおいて典型的に生じ得る不良集中パターンに類似する態様で不良チップが発生したウエハーの情報を、提供することができる。よって、不良要因の分析に貢献できる情報を提供できる。
【0101】
(9)上記形態の表示方法において、前記画像表示工程は、前記複数のウエハーのうち前記不良集中領域を有さないウエハーについて、不良チップの位置とともに、前記1以上の不良集中パターンの少なくとも一つの外縁を表す前記画像を表示する工程を含む、態様とすることもできる。
このような態様とすることにより、入力情報を受け取った複数のウエハーにおいて典型的に生じ得る不良集中パターンと、個別のウエハーの不良チップの位置と、を表す画像を表示できる。このため、不良要因の分析に貢献できる画像を表示できる。
【0102】
(10)本開示の他の形態によれば、コンピューターを使用して、ウエハー上に形成された複数のチップのうちの不良チップが集中している前記ウエハー上の領域を表示させるコンピュータープログラムが提供される。このコンピュータープログラムは、複数のチップが形成されたウエハーに関する入力情報を受け取る機能であって、前記入力情報は、前記ウエハー上に形成された複数のチップのうちの不良チップの位置を表す不良位置情報を含む、受領機能と、前記入力情報に基づいて、あらかじめ定められた処理を行うことにより、前記ウエハーにおいて不良チップが集中している領域である1以上の不良集中領域の外縁を画定し、前記ウエハーにおける前記1以上の不良集中領域の前記外縁を表す画像を表示する画像表示機能と、を前記コンピューターに実現させる。
【0103】
(11)上記形態のコンピュータープログラムにおいて、前記受領機能を繰り返し実現することにより、複数のウエハーについての複数セットの前記入力情報を受け取る機能と、前記複数セットの入力情報に基づいて定められたウエハー閾値よりも多い数の不良チップを含む1以上のチップ位置を、ウエハー上の複数のチップ位置の中から抽出する機能と、前記抽出された1以上のチップ位置の情報に基づいて定められた判定基準に基づいて、前記複数のウエハーにおいて不良チップの位置に集中傾向があるか否かを判定する機能と、を前記コンピューターに実現させ、前記画像表示機能は、不良チップの位置に集中傾向があると判定された前記複数のウエハーについて実現される、態様とすることもできる。
【0104】
(12)上記形態のコンピュータープログラムにおいて、前記画像表示機能は、前記入力情報に含まれる前記不良位置情報に基づいて、あらかじめ定められた処理を行うことにより、前記ウエハーにおける不良チップの分布を規定する複数のパラメーターを推定する機能と、前記複数のパラメーターに基づいて、前記ウエハーにおける前記1以上の不良集中領域の外縁を画定する機能と、を含む、態様とすることもできる。
【0105】
(13)上記形態のコンピュータープログラムにおいて、前記複数のパラメーターを推定する機能は、前記チップ毎の不良発生確率の分布を表す混合ガウスモデルを決定する機能であり、前記複数のパラメーターは、前記決定された混合ガウスモデルが有する1以上の正規分布の平均と分散との組み合わせを含み、前記不良集中領域の外縁を画定する機能は、前記決定された混合ガウスモデルに基づいて定められる確率楕円を、前記不良集中領域の外縁として決定する機能を含む、態様とすることもできる。
【0106】
(14)上記形態のコンピュータープログラムにおいて、前記画像表示機能は、前記ウエハーの前記不良位置情報に基づいて、ウエハー上においてチップが配される各位置における不良チップの数を取得する機能と、前記各位置における不良チップの数に基づいて、あらかじめ定められた処理を行うことにより、前記複数のウエハーにおける不良チップの発生の頻度の分布を規定する複数の不良パターンパラメーターを推定する機能と、前記複数の不良パターンパラメーターに基づいて、前記複数のウエハーにおいて不良チップが集中している領域である1以上の不良集中パターンの外縁を画定する機能と、前記不良集中領域を有するウエハーについて、前記1以上の不良集中領域の前記外縁とともに、前記1以上の不良集中パターンの少なくとも一つの外縁を表す前記画像を表示する機能と、を含む、態様とすることもできる。
【0107】
(15)上記形態のコンピュータープログラムにおいて、前記画像表示機能は、前記各位置における不良チップの数の分布に対して平滑化フィルターを適用することにより、前記各位置における不良チップの数の前記分布を平滑化する平滑化機能と、前記平滑化後の前記各位置における不良チップの数のうち、前記各位置における不良チップの数の前記分布に基づいて定められた頻度閾値よりも少ない数を、0に置き換えるノイズ除去機能と、を含み、前記複数の不良パターンパラメーターを推定する機能は、前記ノイズ除去機能後の前記各位置における不良チップの数に基づいて、前記複数の不良パターンパラメーターを推定する機能である、態様とすることもできる。
【0108】
(16)上記形態のコンピュータープログラムにおいて、前記複数の不良パターンパラメーターを推定する機能は、前記複数のウエハーにおける不良チップの発生の頻度の分布を表す混合ガウスモデルを決定する機能であり、前記複数の不良パターンパラメーターは、前記決定された頻度の分布を表す混合ガウスモデルが有する1以上の正規分布の平均と分散との組み合わせを含み、前記不良集中パターンの外縁を画定する機能は、前記決定された頻度の分布を表す混合ガウスモデルに基づいて定められる確率楕円を、前記不良集中パターンの外縁として決定する機能を含む、態様とすることもできる。
【0109】
(17)上記形態のコンピュータープログラムにおいて、前記画像表示機能は、前記複数のウエハーのそれぞれについて、前記1以上の不良集中領域が、前記1以上の不良集中パターンのいずれかと類似するか否かを判定する機能と、前記1以上の不良集中パターンのそれぞれについて、前記不良集中領域を有する1以上のウエハーから、前記類似すると判定された前記不良集中領域を有するウエハーを特定する機能と、を含み、前記コンピュータープログラムは、前記1以上の不良集中パターンごとに、前記類似すると判定された前記不良集中領域を有するウエハーを表す情報を表示する機能を、前記コンピューターに実現させる、態様とすることもできる。
【0110】
(18)上記形態のコンピュータープログラムにおいて、前記画像表示機能は、前記複数のウエハーのうち前記不良集中領域を有さないウエハーについて、不良チップの位置とともに、前記1以上の不良集中パターンの少なくとも一つの外縁を表す前記画像を表示する機能を含む、態様とすることもできる。
【0111】
本開示は、不良集中領域の表示方法以外の種々の形態で実現することも可能である。例えば、不良集中領域を表す画像の生成方法、ウエハーの検査方法、それらの方法を実現するコンピュータープログラム、そのコンピュータープログラムを記録した一時的でない記録媒体等の形態で実現することができる。
【符号の説明】
【0112】
1…画像表示システム、100…コンピューター、110…CPU、120…RAM、130…ROM、180…入力機器、200…検査装置、300…表示装置、CP…チップ位置、DA1…不良集中領域、DA2…不良集中領域、DC…不良チップ、DP1…不良集中パターン、DP2…不良集中パターン、GF…ガウシアンフィルター、GMM1…混合ガウスモデル、GMM2…混合ガウスモデル、GMM3…混合ガウスモデル、IcL…チップレイアウト情報、Idc…チップ不良情報、Idp…不良位置情報、Ii…入力情報、K(r)…検査対象のウエハー群についてのK関数値、Km(r)…仮想的なウエハーについてのK関数値、Kc(r)…仮想的なウエハーに基づいて定められた95%信頼区間、M120…受領部、M210…抽出部、M220…判定部、M336…第1GMM推定部、M338…不良領域確定部、M342…平滑化部、M346…第2GMM推定部、M348…不良パターン確定部、M350…ウエハー選別部、M362…ウエハー画像表示部、M364…パターン分類表示部、Npdc…不良チップ数、Npdcm1…修正された不良チップ数、Npdcm2…修正された不良チップ数、PD…画像データ、Pdc…不良チップ位置、Posi_1…ポジションID、Posi_2…ポジションID、Posi_3…ポジションID、Posi_4…ポジションID、Rpdc…ウエハー閾値より多い不良チップ数の範囲 、SC…ウエハー、Thf…頻度閾値、Thw…ウエハー閾値、r…K関数法における半径