(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024132303
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】発音器
(51)【国際特許分類】
H04R 1/00 20060101AFI20240920BHJP
【FI】
H04R1/00 311
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023043035
(22)【出願日】2023-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】390001812
【氏名又は名称】株式会社デンソーエレクトロニクス
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】弁理士法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】早川 孝志郎
【テーマコード(参考)】
5D017
【Fターム(参考)】
5D017AB07
(57)【要約】
【課題】部品点数の低減を図ることができる発音器を提供する。
【解決手段】発音器は、筐体と、筐体の内部に配置された発音体と、筐体の内部の空間を2つに分ける隔壁22と、隔壁22を貫通する通気孔26を覆う通気膜27と、を備え、隔壁22には、通気膜27に付着した水を排水する排水部28が形成されている。筐体内部の隔壁22に排水部28が形成されているため、筐体にカバーが設けられていなくても通気膜27に付着した水を排水することができる。したがって、カバーを削減することが可能となり、部品点数の低減を図ることができる。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発音器であって、
筐体(1)と、
前記筐体の内部に配置された発音体(6)と、
前記筐体の内部の空間を2つに分ける隔壁(22)と、
前記隔壁を貫通する通気孔(26)を覆う通気膜(27)と、を備え、
前記隔壁には、前記通気膜に付着した水を排水する排水部(28)が形成されている発音器。
【請求項2】
前記排水部は、前記通気膜に付着した水を毛細管現象によって排水する構成とされている請求項1に記載の発音器。
【請求項3】
前記排水部は、前記隔壁における前記通気孔の開口端から前記通気孔の内部に突出する複数の凸部(281)を備え、前記通気膜に付着した水が、隣り合う2つの前記凸部の間の隙間を通って排水される構成とされている請求項2に記載の発音器。
【請求項4】
前記筐体は、
筒状のベース(2)と、
前記ベースの一方側開口部を覆うカバー(3)と、
前記ベースの他方側開口部を覆うケース(4)と、を備え、
前記隔壁は前記ベースに形成されており、
前記通気孔は前記カバーによって覆われている請求項1ないし3のいずれか1つに記載の発音器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発音器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両の接近通報用の発音器として、例えば特許文献1に記載されたものがある。この発音器は、筐体と、筐体の内部に配置された発音体とを備えている。筐体は、筒状のベースと、ベースの一方側開口部を覆うカバーと、他方側開口部を覆うケースとで構成されている。ベースの内部には、筐体の内部の空間を2つに分ける隔壁が形成されており、隔壁を貫通する通気孔に張られた防水シートによって、筐体内部の空間の圧力が調整される。
【0003】
このような発音器は車室外に搭載されることが多く、搭載角度によっては筐体内部に水が入ることがある。そして、防水シートに水が付着すると内圧調整機能が低下し、発音器の音響特性が変化するおそれがある。
【0004】
特許文献1に記載の発音器では、カバーに毛細管現象を利用した排水構造が形成されており、防水シートに付着した水をカバーの排水構造によって排出することにより、音響特性の維持を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
発音体の保護等の観点からは、発音器の配置場所によってはカバーを削減し、ベースとケースのみで筐体を構成することも可能である。しかしながら、特許文献1のようにカバーに排水部を設けると、防水シートに付着した水の排水のためにカバーが必要であり、部品点数の低減が困難である。
【0007】
本発明は上記点に鑑みて、部品点数の低減を図ることができる発音器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明によれば、発音器は、筐体(1)と、筐体の内部に配置された発音体(6)と、筐体の内部の空間を2つに分ける隔壁(22)と、隔壁を貫通する通気孔(26)を覆う通気膜(27)と、を備え、隔壁には、通気膜に付着した水を排水する排水部(28)が形成されている。
【0009】
これによれば、筐体内部の隔壁に排水部が形成されているため、筐体にカバーが設けられていなくても通気膜に付着した水を排水することができる。したがって、カバーを削減することが可能となり、部品点数の低減を図ることができる。
【0010】
なお、各構成要素等に付された括弧付きの参照符号は、その構成要素等と後述する実施形態に記載の具体的な構成要素等との対応関係の一例を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1A】第1実施形態にかかる発音器の正面図である。
【
図1B】第1実施形態にかかる発音器の左側面図である。
【
図1C】第1実施形態にかかる発音器の下面図である。
【
図3】
図1Aの発音器におけるカバーを外した状態の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、同一符号を付して説明を行う。
【0013】
(第1実施形態)
本実施形態の発音器は、例えば自動車の車室外に設置され、警報音を発生させるために使用される。
【0014】
図1A~
図1C、
図2に示すように、発音器は、内部に空間が形成された筐体1を備えている。筐体1は、それぞれ樹脂製のベース2と、カバー3と、ケース4とで構成されている。また、発音器は、ターミナル5と、筐体1の内部に配置された発音体6とを備えている。
【0015】
図2、
図3に示すように、ベース2は、発音器の正面側と背面側で開口する略円筒状のベース筒部21を備えている。ベース筒部21の正面側開口部には、この開口部を覆う板状のカバー3が嵌合されており、ベース筒部21の背面側開口部には、板状のケース4が接着にて気密的に接合されている。
【0016】
ベース筒部21内の空間は、ベース筒部21内に設けられた隔壁22によって、正面側と背面側に2分割されている。すなわち、筐体1の内部は、ベース筒部21、隔壁22、カバー3によって形成された空間と、ベース筒部21、隔壁22、ケース4によって形成された空間とに分かれている。
【0017】
隔壁22の内周部には、円形の貫通孔23が形成されている。貫通孔23は、発音体6によって塞がれている。具体的には、隔壁22は、貫通孔23の開口端において、カバー3に向かって突出している。この突出した部分の先端部は内側に折り返されており、これにより形成された凹部に後述するフレーム61が嵌合されている。
【0018】
発音体6の正面側には、遮蔽板24が配置されている。遮蔽板24は、カバー3の表面に付着した水等が発音体6に到達することを抑制し、水等の付着による発音体6の破損を防止するためのものである。遮蔽板24は、正面方向に広がる中空の円錐台形状の外周部と、正面側に凸となるドーム状の内周部とで構成されている。遮蔽板24は、梁状の連結部25によって隔壁22に連結されている。
【0019】
発音体6によって発生した音は、隔壁22の突出部と、遮蔽板24との間を通って筐体1の外部へ向かう。この隔壁22と遮蔽板24とで構成された音の通路を、音通路71とする。
【0020】
遮蔽板24は、音通路71を通過した音の音圧を増幅するための構成を備えている。具体的には、遮蔽板24には、内周部の外縁からカバー3に向かって突出した円筒部241が形成されている。そして、遮蔽板24の外周部と、円筒部241と、カバー3とによって共鳴室72が形成されている。また、遮蔽板24の内周部と、円筒部241と、カバー3とによって共鳴室73が形成されている。
【0021】
図3に示すように、隔壁22には、貫通孔23および発音体6から離れた場所に通気孔26が形成されている。通気孔26は、正面側からカバー3に間隔を空けて覆われている。隔壁22のうち通気孔26の背面側開口端部には、空気を通し水を遮断する通気膜27が接合されており、通気孔26は通気膜27によって塞がれている。通気膜27としては、例えばゴアテックス(登録商標)が用いられる。このような構成により、ベース筒部21、隔壁22、カバー3によって形成された空間と、ベース筒部21、隔壁22、ケース4によって形成された空間との間に、温度変化によって圧力差が発生することが抑制される。
【0022】
図4、
図5に示すように、隔壁22には排水部28が形成されている。排水部28は、通気膜27のうち通気孔26から露出したカバー3側の面に付着した水を排水するためのものである。排水部28は、複数の凸部281を備えている。
【0023】
凸部281は、隔壁22と一体に構成されており、隔壁22における通気孔26の開口端から通気孔26の内部、具体的には中心部に向かって突出している。凸部281は、通気孔26の中心部に近づくにつれて幅が小さくなる略台形状とされている。複数の凸部281は、円形状とされた通気孔26の開口端の周方向に沿って並んでおり、隣り合う2つの凸部281の間には、通気孔26の中心部から開口端部に向かって延設された隙間が形成されている。この隙間の幅は、例えば約1mmとされる。通気膜27に付着した水は、毛細管現象によって、この隙間を通って通気孔26の外側へ排出される。
【0024】
図1C、
図3に示すように、ベース筒部21の下面には排水孔74が形成されている。通気孔26の外側へ排出された水は、隔壁22を伝ってベース筒部21の下部に到達し、排水孔74を通って筐体1の外側へ排出される。排水孔74は、発音体6が発生させた音を外部に放出するための放音孔としても機能する。
【0025】
図1Aに示すように、カバー3は、ベース筒部21に対応して略円形状とされている。カバー3の内周部には、遮蔽板24の外周部に対応する位置に、円周状の貫通孔31が形成されている。貫通孔31は、音通路71を通って共鳴室72、73により音圧が増幅された音を筐体1の外部に放出するためのものである。
【0026】
図1A、
図2に示すように、貫通孔31の内側と外側は、梁状の連結部32によって連結されている。連結部32は複数形成されており、複数の連結部32によって貫通孔31が複数に分けられている。この複数に分けられた貫通孔31によって、筐体1の内部の空間を大気に開放し、発音体6が発生させた音を外部に放出するための放音孔75が構成されている。
【0027】
図2に示すように、カバー3の外周部には、筐体1の内部に向かって突出する円筒状の筒部33が形成されている。筒部33は、ベース筒部21と、隔壁22と、カバー3の側壁とで囲まれた空間に突出するように配置されている。ベース筒部21と、隔壁22と、カバー3の側壁とで囲まれた空間のうち、筒部33の内側の部分および外側の部分がそれぞれ共鳴室76、77とされている。
【0028】
発音体6が発生させた音は、音通路71を通り、共鳴室72、73、76、77によって音圧が増幅されて、排水孔74、放音孔75から筐体1の外部に放出される。
【0029】
ベース筒部21の外側には、筒状のコネクタ29が形成されている。コネクタ29は、ベース筒部21の下面に配置されており、筐体1の下方向に開口している。
【0030】
コネクタ29の内部には、ターミナル5が配置されている。ターミナル5は、筐体1の内部と外部とを電気的に接続するものである。ターミナル5は、ベース筒部21の側壁を貫通しており、ターミナル5のうちベース筒部21の内壁面から露出した部分は、接着剤81によって根元が覆われ、ベース筒部21に固定されている。
【0031】
ターミナル5はL字状とされており、ターミナル5のうちベース筒部21の内壁面および接着剤81から露出した部分は、ケース4に向かって突出している。ターミナル5は、この突出した部分において、後述する端子金具64に接続されている。
【0032】
発音体6は、フレーム61と、ダイヤフラム62と、駆動部63と、端子金具64とを備えている。
【0033】
フレーム61は、ダイヤフラム62および駆動部63を支持するものである。フレーム61は、略段付円筒状とされており、正面側において背面側よりも大きく開口している。フレーム61の正面側の開口部は、ダイヤフラム62によって塞がれている。発音体6は、フレーム61の正面側の開口端部において、隔壁22の凹部に嵌合され、接着にて気密的に接合されている。フレーム61は、樹脂で構成されている。
【0034】
ダイヤフラム62は、正面方向に広がる中空の円錐台形状の外周部と、正面側に凸となるドーム状の内周部とで構成されている。前述したように、遮蔽板24も同様の形状とされており、遮蔽板24の内周部、外周部は、それぞれ、ダイヤフラム62の内周部、外周部に対向している。ダイヤフラム62の背面には、駆動部63が接続されている。
【0035】
駆動部63は、ダイヤフラム62を振動させるものである。駆動部63は、ボビン631と、ボイスコイル632と、磁気回路部633とを備えている。
【0036】
ボビン631は円筒状とされ、ダイヤフラム62の内周部の外縁に接合されている。ボビン631の外側には、ボイスコイル632が巻かれている。
【0037】
磁気回路部633は、ボイスコイル632に磁界を印加するものである。磁気回路部633は、有底筒状のヨークと、ヨークの内底面に配置された円板状の磁石と、磁石に積層された円板状のトッププレートとを備えている。ヨークおよびトッププレートは、磁性体で構成されている。ヨークは、ダイヤフラム62に向かって開口し、フレーム61の背面側の開口部を塞ぐように配置されている。
【0038】
磁石およびトッププレートとヨークの側壁との間には隙間が形成されており、この隙間にボイスコイル632が入ることで、トッププレートとヨークの側壁との間に発生する磁界がボイスコイル632に印加される。この状態でボイスコイル632に電流を流すことで、ボビン631が軸方向に変位し、ダイヤフラム62が振動して、音が発生する。
【0039】
ボイスコイル632は、図示しないリード線および端子金具64によってターミナル5に接続されている。このリード線の一端はボイスコイル632に接続されており、他端は端子金具64に接続されている。
【0040】
端子金具64は、インサート成型によってフレーム61と一体に構成されている。端子金具64の一方の端部はリード線にはんだ付けされている。端子金具64の他方の端部は、フレーム61から露出してターミナル5に向かって突出しており、はんだによってターミナル5に接続されている。
【0041】
本実施形態の効果について説明する。
図6、
図7に示す比較例では、隔壁22に排水部28が形成されておらず、カバー3に排水部100が形成されている。排水部100は、カバー3から通気孔26に向かって立設された2つの平板部101を備えている。2つの平板部101は、筐体1の上下方向および前後方向に平行となるように隙間を空けて配置されている。平板部101は、筐体1の上下方向において通気孔26の外側まで延設されており、通気膜27に付着した水は、毛細管現象によって上記の隙間を通って通気孔26の外側へ排出される。
【0042】
発音体6の保護等の観点からは、発音器の配置場所によってはカバー3を削減し、ベース2とケース4のみで筐体1を構成することも可能である。しかしながら、
図6、
図7に示す比較例では、通気膜28に付着した水の排水のためにカバー3が必要であり、部品点数の低減が困難である。
【0043】
これに対して本実施形態では、ベース2に排水部28が形成されており、通気膜28に付着した水をベース2のみで排水することができる。したがって、カバー3を削減することが可能となり、部品点数の低減および発音器の製造コスト低減を図ることができる。
【0044】
(他の実施形態)
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した範囲内において適宜変更が可能である。また、上記実施形態において、実施形態を構成する要素は、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。また、上記実施形態において、実施形態の構成要素の個数、数値、量、範囲等の数値が言及されている場合、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではない。また、上記実施形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に特定の形状、位置関係等に限定される場合等を除き、その形状、位置関係等に限定されるものではない。
【0045】
図4に示す排水部28では凸部281の数が16とされているが、凸部281は2つ以上形成されて毛細管現象による排水に適した幅の隙間を空けて配置されていればよく、凸部281の数が16より少なくてもよいし、多くてもよい。
【0046】
第1実施形態では凸部281が台形状とされているが、凸部281が他の形状とされていてもよい。
【0047】
カバー3を削減してベース2とケース4のみで筐体1を構成する場合には、通気膜27を正面側から保護する構成をベース2に設けてもよい。
【符号の説明】
【0048】
1 筐体
6 発音体
22 隔壁
26 通気孔
27 通気膜
28 排水部