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特開2024-132309組電池、溶接方法および組電池の製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024132309
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】組電池、溶接方法および組電池の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/553 20210101AFI20240920BHJP
   H01M 50/533 20210101ALI20240920BHJP
   H01M 50/211 20210101ALI20240920BHJP
   H01M 50/50 20210101ALI20240920BHJP
【FI】
H01M50/553
H01M50/533
H01M50/211
H01M50/50 201Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023043047
(22)【出願日】2023-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮澤 和利
(72)【発明者】
【氏名】杉田 康成
【テーマコード(参考)】
5H040
5H043
【Fターム(参考)】
5H040AA03
5H040AT04
5H040DD02
5H040JJ02
5H043AA19
5H043CA08
5H043DA02
5H043FA02
5H043HA11D
5H043JA02D
5H043JA03D
5H043JA04D
5H043JA14
(57)【要約】
【課題】ラミネート型単電池のタブリードの長さが短くても容易にタブリード間を抵抗溶接する組電池を提供する。
【解決手段】組電池は、第1の単電池と、第1の単電池と重ねて配置される第2の単電池と、第1の単電池に接続され、切り欠きを有する第1のタブリードと、第2の単電池に接続された第2のタブリードと、を備える。
【選択図】図7A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の単電池と、
前記第1の単電池と重ねて配置される第2の単電池と、
前記第1の単電池に接続され、切り欠きを有する第1のタブリードと、
前記第2の単電池に接続された第2のタブリードと、
を備える組電池。
【請求項2】
前記切り欠きは、前記タブリードの幅方向に垂直な方向に延びた形状を有する請求項1に記載の組電池。
【請求項3】
前記切り欠きは、複数形成されている請求項2に記載の組電池。
【請求項4】
前記切り欠きは、前記タブリードの幅方向に延びた形状を有する請求項1に記載の組電池。
【請求項5】
前記切り欠きは、T字状の形状を有する請求項1に記載の組電池。
【請求項6】
第1の単電池と、
前記第1の単電池と重ねて配置される第2の単電池と、
前記第1の単電池に接続され、孔を有する第1のタブリードと、
前記第2の単電池に接続された第2のタブリードと、
を備える組電池。
【請求項7】
第1の単電池と、
前記第1の単電池と重ねて配置される第2の単電池と、
前記第1の単電池に接続され、表面に溝を有する第1のタブリードと、
前記第2の単電池に接続された第2のタブリードと、
を備える組電池。
【請求項8】
第1の単電池に接続された第1のタブリードに切り欠きを形成する第1の工程と、
前記第1のタブリードに対して溶接棒を押し付けて電流を流す第2の工程と、
前記第1のタブリードと第2の単電池に接続された第2のタブリードとを溶接する第3の工程と
を有する溶接方法。
【請求項9】
第1の単電池に接続された第1のタブリードに切り欠きを形成する第1の工程と、
前記第1のタブリードに対して溶接棒を押し付けて電流を流す第2の工程と、
前記第1のタブリードと、第2の単電池に接続された第2のタブリードとを溶接して組電池を作製する第3の工程と
を有する組電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、組電池、溶接方法および組電池の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ラミネート型電池においては、多様な負荷電圧、負荷容量に対応するため、単電池を接続して組電池を形成する。ラミネート型電池としては、リチウイオン電池や全固体電池などがある。
【0003】
ラミネート型の単電池の正極、負極の端子には、薄板でできたタブリードが用いられ、このタブリードを接続して組電池を形成する。タブリードの材料としては、アルミや銅が多く用いられる。
【0004】
タブリードの接続方法としては、抵抗溶接、超音波接合、ネジ、ハトメ、カシメなどによって接続する方法がある。抵抗溶接は、タブリード間に溶接機の溶接棒を押し付けて電流を流し、タブ間に流れる抵抗熱でタブリードの材料を溶かして溶接する。
【0005】
タブリードがアルミや銅の場合、導電性、熱伝導性が良いので、溶接時に抵抗熱が拡散して溶接箇所で発生する発熱がタブリードを溶解するには不十分となり、溶接を困難にしている。
【0006】
抵抗溶接は、アルミや銅のタブリードを溶接するために、大電流を流せることのできる比較的大きな抵抗溶接機が必要となる。また、大電流を流すため、スパッタが発生しやすくなったり、電流を流しすぎてタブリードが溶解して穴が開いたりするなど、溶接するための条件設定が難しい。
【0007】
超音波溶接は、溶接時にタブリード間に超音波振動を与えて、振動による摩擦熱でタブリードの材料を溶かして溶接する。超音波溶接には、超音波を与えた部分と与えてない部分との境界部がもろくなり、タブリードの根本が切れやすいという問題がある。
【0008】
また、ネジ、ハトメ、カシメは、機械的な接続となるため接触面が限られてしまい、導電抵抗が高くなり電池性能を低下させる要因となる。
【0009】
そこで、特許文献1には、比較的簡易にアルミや銅でできたタブリードについて抵抗溶接を用いて溶接する方法が提案されている。この方法では、アルミや銅よりも熱伝導性が低い金属製薄板をU字あるいはコの字に折り曲げて、タブリード間の接続部を挟み、この金属製薄板を介して抵抗溶接することで、タブリード間を溶接する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特許第5558878号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、組電池が用いられる各種小型機器においては、機器の小型化に対応して組み込むラミネート型の組電池もできるだけ小型化する必要がある。ラミネート型の組電池の小型化のためにアルミ製や銅製のタブリードの長さを短くし、この短いタブリード間を溶接して組電池を形成する必要がある。
【0012】
長さの短いタブリードを抵抗溶接で溶接する場合、抵抗溶接の溶接棒として直径が小さいものを使用する必要があるが、そのような溶接棒に大きな電流を流して溶接することは困難である。特許文献1の方法を用いる場合、タブリードに金属薄板を挟んで溶接するため、タブリードの長さが金属製薄板の長さで制限されてしまい、短尺化が困難である。
【0013】
本開示は、このような課題を解決するもので、ラミネート型単電池のタブリードの長さが短くても容易にタブリード間を抵抗溶接することができる組電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するために、本開示に係る組電池の一態様は、第1の単電池と、前記第1の単電池と重ねて配置される第2の単電池と、前記第1の単電池に接続され、切り欠きを有する第1のタブリードと、前記第2の単電池に接続された第2のタブリードと、を備える。
【0015】
また、上記課題を解決するために、本開示に係る組電池の一態様は、第1の単電池と、前記第1の単電池と重ねて配置される第2の単電池と、前記第1の単電池に接続され、孔を有する第1のタブリードと、前記第2の単電池に接続された第2のタブリードと、を備える。
【0016】
また、上記課題を解決するために、本開示に係る組電池の一態様は、第1の単電池と、前記第1の単電池と重ねて配置される第2の単電池と、前記第1の単電池に接続され、表面に溝を有する第1のタブリードと、前記第2の単電池に接続された第2のタブリードと、を備える。
【0017】
また、本開示に係る溶接方法の一態様は、第1の単電池に接続された第1のタブリードに切り欠きを形成する第1の工程と、前記第1のタブリードに対して溶接棒を押し付けて電流を流す第2の工程と、前記第1のタブリードと第2の単電池に接続された第2のタブリードとを溶接する第3の工程とを有する。
【0018】
また、本開示に係る組電池の製造方法の一態様は、第1の単電池に接続された第1のタブリードに切り欠きを形成する第1の工程と、前記第1のタブリードに対して溶接棒を押し付けて電流を流す第2の工程と、前記第1のタブリードと、第2の単電池に接続された第2のタブリードとを溶接して組電池を作製する第3の工程とを有する。
【発明の効果】
【0019】
本開示によれば、ラミネート型電池の小型化を実現するために、長さの短いタブリードを容易に溶接することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1A図1Aは、本実施の形態における単電池を示す斜視図である。
図1B図1Bは、3つの単電池のタブリードの正極と負極を直列に接続した組電池を示す図である。
図2図2は、一般的な抵抗溶接によるタブリードの溶接を示す斜視図である。
図3図3は、従来技術の方法によるタブリードの溶接を示す図である。
図4A図4Aは、通常の単電池を示す図である。
図4B図4Bは、タブリードの長さを短くした単電池を示す図である。
図5A図5Aは、タブリードの長さを短くした単電池を示す斜視図である。
図5B図5Bは、タブリードの長さを短くした組電池を示す斜視図である。
図6図6は、タブリードの長さを短くしたときの抵抗溶接を示す部分拡大図である。
図7A図7Aは、本実施の形態1におけるタブリードの溶接方法を示す部分拡大図である。
図7B図7Bは、第1の単電池のタブリードの加工形状を示す図である。
図7C図7Cは、第1の単電池のタブリードの他の加工形状を示す図である。
図8A図8Aは、本実施の形態2におけるタブリードの溶接方法を示す部分拡大図である。
図8B図8Bは、第1の単電池のタブリードの加工形状を示す図である。
図8C図8Cは、第1の単電池のタブリードの他の加工形状を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、いずれも本開示の一具体例を示すものである。したがって、以下の実施の形態で示される、数値、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、並びに、ステップ及びステップの順序等は、一例であって本開示を限定する主旨ではない。よって、以下の実施の形態における構成要素のうち独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
【0022】
また、各図は、模式図であり、必ずしも厳密に図示されたものではない。なお、各図において、実質的に同一の構成に対しては同一の符号を付しており、重複する説明は省略又は簡略化する。
【0023】
まず、従来の技術の課題について説明する。図1Aは、本実施の形態における単電池1を示す斜視図である。この単電池1では、薄板状の単電池要素がアルミラミネートフィルムで封止されている。
【0024】
この単電池要素には、正極、負極の端子が形成されており、それぞれの端子はタブリード2,3に接続されている。タブリード2,3は、アルミラミネートフィルムの外部に引き出されている。この引き出されたタブリード2が単電池1の正極の端子であり、引き出されたタブリード3が単電池1の負極の端子である。
【0025】
図1Bは、3つの単電池11~13のタブリード14~19の正極と負極を直列に接続した組電池10を示す図である。組電池10は、複数の単電池を接続することで高負荷電圧、高負荷容量に対応できる。
【0026】
タブリード14が第1の単電池11の正極の端子であり、タブリード15が第1の単電池11の負極の端子である。タブリード16が第2の単電池12の正極の端子であり、タブリード17が第2の単電池12の負極の端子である。タブリード18が第3の単電池13の正極の端子であり、タブリード19が第3の単電池13の負極の端子である。
【0027】
組電池10では、第1の単電池11の負極と第2の単電池12の正極とを接続する。また、第2の単電池12の負極と第3の単電池13の正極とを接続する。このように接続することで第1の単電池11の正極と第3の単電池13の負極とがそれぞれ入出力端子となる。
【0028】
図2は、一般的な抵抗溶接によるタブリードの溶接を示す斜視図である。抵抗溶接は、溶接棒でタブリードを上下から挟んで電流を流して溶接する方法や溶接棒を並べてタブリードを溶接する方法など、いくつか方式がある。
【0029】
図2は、溶接棒21aと溶接棒21bとを2つ並べてタブリードを溶接する方法を示している。この方法では、溶接棒21aと溶接棒21bとを2つ並べて溶接するため、溶接部が一度に2か所形成され、溶接効率が良くなる。一般的に溶接は複数個所に行い、低抵抗化を図っている。
【0030】
また、複数の単電池から出ているタブリードを溶接する場合、上下方向のうち1方向のみから溶接した方が作業性が良くなる。
【0031】
図2に示す組電池は、第1の単電池22と第2の単電池23とを有し、第1の単電池22と第2の単電池23とはそれぞれタブリード24,25を備える。
【0032】
溶接棒21aと溶接棒21bとは溶接機に接続されており、電極となっている。溶接棒21a,21b間に電流を流すことで、タブリード24,25間にも電流が流れる。このとき、タブリード24,25に発生する抵抗熱でタブリード24,25の材料が溶解して溶接される。
【0033】
タブリード24,25がアルミや銅でできている場合、導電性および熱伝導性が良いので、溶接棒21a,21bから電流を流したときに溶接時にタブリード24,25に発生する抵抗熱が拡散する。
【0034】
そのため、タブリード24,25の接合箇所での発熱が不十分となり、タブリード24,25を溶解するのが困難となる。よって、大電流を流せる溶接機が必要であり、溶接棒21a,21bのサイズも大きくなる。
【0035】
図3は、従来技術の方法によるタブリード33,34の溶接を示す図である。タブリード33,34の上下から溶接棒21aと溶接棒21bとを押し付けて、溶接棒21a,21b間に電流を流し、タブリード33,34に発生する抵抗熱で溶接を行う。
【0036】
組電池は第1の単電池31と第2の単電池32とを有し、第1の単電池31と第2の単電池32にはそれぞれ、タブリード33とタブリード34とが接続されている。
【0037】
このとき、従来技術においては、溶接棒21a,21bで直接タブリード33,34を押し付けるのではなく、アルミあるいは銅よりも熱伝導性が低い金属製薄板35をU字あるいはコの字に折り曲げてタブリード33,34を挟み、この金属製薄板35を介してタブリード33,34を溶接棒21a,21bで挟む。
【0038】
この状態で溶接棒21a,21b間に電流を流したとき、熱伝導が低い金属製薄板35を通じてタブリード33,34に電流が流れる。このとき、タブリード33,34の材料がアルミあるいは銅であっても、熱伝導の低い金属製薄板35を介して電流が流れるので、金属製薄板35で発生する抵抗熱によりタブリード33,34が溶解して溶接できる。
【0039】
図4Aは、通常の単電池41を示す図である。通常の長さのタブリード42が単電池41に接続されている。図4Bは、タブリード44の長さを短くした単電池43を示す図である。ここで、長さを測る方向は、単電池からタブリードが突出する方向である。以下、この方向を長さ方向と呼び、タブリードの表面において、長さ方向に直交する方向を幅方向と呼ぶことがある。
【0040】
図4Bに示すように、タブリード44の長さを短くすることで単電池43の大きさを小さくすることができる。また、単電池を複数組んで組電池にする場合も、電池の大きさを小さくできる。
【0041】
図5Aは、タブリード52,53の長さを短くした単電池51を示す斜視図である。タブリード52,53の長さを短くして単電池51は小型化されている。
【0042】
この単電池要素には、正極、負極の端子が形成されており、それぞれの端子はタブリード52,53に接続されている。タブリード52,53は、アルミラミネートフィルムの外部に引き出されている。この引き出されたタブリード52が単電池51の正極の端子であり、引き出されたタブリード53が単電池51の負極の端子である。
【0043】
図5Bは、タブリード57~62の長さを短くした組電池63を示す斜視図である。タブリード57~62の長さを短くして組電池63が小型化されている。
【0044】
タブリード57が第1の単電池54の正極の端子であり、タブリード58が第1の単電池54の負極の端子である。タブリード59が第2の単電池55の正極の端子であり、タブリード60が第2の単電池55の負極の端子である。タブリード61が第3の単電池56の正極の端子であり、タブリード62が第3の単電池56の負極の端子である。各タブリード57~62の幅方向の長さは長さ方向より長く形成されている。
【0045】
組電池63の接続は、第1の単電池54の負極と第2の単電池55の正極とを接続する。第2の単電池55の負極と第3の単電池56の正極とを接続する。このように接続することで、第1の単電池54の正極と第3の単電池56の負極とがそれぞれ入出力端子となる。
【0046】
図6は、タブリード74,75の長さを短くしたときの抵抗溶接を示す部分拡大図である。第1の単電池72および第2の単電池73はそれぞれ、タブリード74,75が接続されている。
【0047】
タブリード74,75の長さを短くしたので、溶接棒71a,71bの直径が小さく、溶接棒71a,71bの間隔も狭い溶接機を用いて溶接する必要がある。
【0048】
また、直径の小さい溶接棒71a,71bを用いて溶接する場合、大電流を流すことが困難である。よって、アルミや銅の薄板でできたタブリード74,75間に電流を流しても、タブリード74,75間で発生させる抵抗熱が拡散し、タブリード74,75を溶解することが難しい。したがって、タブリード74,75の長さを短くした場合、タブリード74,75間の溶接が難しくなる。
【0049】
さらに、図3に示す従来技術の場合、金属製薄板35を介する必要がある。タブリード33,34を小さくする場合、この金属製薄板35のサイズも小さくする必要があり、この金属製薄板35のサイズで組電池の小型化が制限される。
【0050】
また、タブリード33,34間に高抵抗の金属製薄板35を介して電流を流す必要があるが、直径の小さい溶接棒71a,71bを使う場合、十分な電流を流すことが困難である。また、根本的に金属製薄板35の準備、加工に手間がかかる。
【0051】
(実施の形態1)
図7Aは、本実施の形態1におけるタブリード83の溶接方法を示す部分拡大図である。ラミネート型電池の第1の単電池81と第2の単電池82との長さの短いタブリード83,84を溶接している。
【0052】
第1の単電池81は、単電池81の長さ方向に複数の矩形の切り欠き85a,85bを有するクシ形状のタブリード83を備える。切り欠き85a,85bは、タブリード83の幅方向に垂直な方向に延びた形状を有する。なお、切り欠き85a,85bは、タブリード83の幅方向に垂直な方向に延びた形状に限定されず、正方形や半円等の形状であってもよい。
【0053】
そして、第1の単電池81のタブリード83の切り欠き85a,85b以外の部分に対して、直径の小さい溶接棒71a,71bを押しつけ、溶接棒71a,71b間に電流を流すことでタブリード83,84を溶接する。
【0054】
このような切り欠き85a,85bを備えるタブリード83では、電流が流れる領域が切り込みで制限されているので、溶接棒71a,71bを押し当てて電流を流したときに、局所的に電流が流れて効率良く抵抗熱が発生し、また、発生した熱が外部に逃げないために直径の小さな溶接棒71a,71bであっても抵抗溶接が容易になる。
【0055】
具体的には、長さを短くしたタブリード83,84を直径の小さい溶接棒71a,71bで抵抗溶接するとき、タブリード83の溶接部をできるだけ孤立させて、電流を流したときに発生する抵抗熱を拡散させないようにする。抵抗熱の拡散を低減するので、大電流を流す必要はない。また、タブリード83の溶接部を孤立させるために、タブリードに83矩形の切り欠きを形成してクシ状にしている。
【0056】
タブリード83に電流を流したとき、タブリード83に切り欠き85a,85bがあるので、溶接棒71a,71b間に電流を流したときに電流が流れる領域が広がらず、局所的(溶接棒71a,71bの近傍のみ)に電流が流れる。そのため、高温の抵抗熱が発生し、その抵抗熱は切り欠き85a,85bがある方向には拡散しない。
【0057】
すなわち、タブリード83に切り欠き85a,85bがあるので、発生した抵抗熱の拡散が制限されて、溶接部の領域のみが加熱され、この領域での温度が高温になる。よって、溶接領域において、タブリード83が溶解するまで熱が加わるので、タブリード83,84の溶接をすることができる。
【0058】
次に、組電池80の製造方法について説明する。まず、第1の工程では、短いタブリード83の先端に切り欠き85a,85bを形成してクシ状にする。切り欠き85a,85bは、タブリードの長さ方向でも幅方向でもよい。
【0059】
切り欠き85a,85bの長さは、2本の直径の小さい溶接棒71a,71bの間隔と同程度以上となるように加工される。切り欠き85a,85bの間の幅である加工幅は溶接棒71a,71bの直径より大きく、加工幅は溶接棒71a,71bの直径の最大3倍程度が望ましい。また、切り欠き85a,85bを形成するのは、一方のタブリード83でよい。溶接困難である場合、タブリード84にも同じ加工を実施してもよい。
【0060】
第2の工程では、切り欠き85a,85bを形成したタブリード83に対して、溶接棒71a,71bを押し付けて電流を流す。具体的には、溶接棒71a,71bを形成された切り欠き85a,85bと隣接するタブリード83の部分に押し付ける。なお、溶接棒71a,71bの位置を少しずつ変えながら、タブリード83の複数個所において溶接をしてもよい。
【0061】
第3の工程では、第1の工程と第2の工程とを繰り返して、複数の単電池が備えるタブリードを溶接し、組電池80を作製する。
【0062】
図7Bは、第1の単電池81のタブリード83の加工形状を示す図である。タブリード83に複数の切り欠き85a,85bを形成する際、切り欠き85a,85bの間の幅である加工幅は、溶接棒71a,71bの直径以上の幅となるようにする。加工幅は、溶接棒71a,71bの直径の最大3倍程度が望ましい。
【0063】
図7Bの×印は、溶接棒71a,71bを押しつけて溶接する溶接ポイント86a~86fを示している。図7Bには最低限の溶接ポイント86a~86fが示されている。なお、溶接棒71a,71bの位置を少しずつ変えながら、位置をずらしてさらに複数溶接してもよい。
【0064】
また、第1の単電池81のタブリード83だけでなく、第2の単電池82のタブリード84にも、切り欠き85a,85bと同様の切り欠きを形成してもよい。タブリード84の切り欠きは、あっても無くてもよいが、タブリード84に切り欠きを入れることで、より効果的に溶接できる。もし、タブリード84の切り欠きが無い場合で溶接しにくい場合は、切り欠きを形成して溶接できるようにしてもよい。これにより、更に溶接部が孤立するので、溶接しやすくなる。
【0065】
図7Cは、第1の単電池81のタブリード83の他の加工形状を示す図である。この例では、タブリード83の内部に複数の孔87a,87bが形成されている。切り欠きではなく、このような孔87a,87bを形成する場合であっても、局所的に電流が流れるため、高温の抵抗熱により溶接部の領域を加熱することができ、タブリード83,84の溶接を行うことができる。
【0066】
(実施の形態2)
実施の形態1では、タブリード83の長さ方向に延びる切り欠き85a,85bを形成する場合について説明したが、タブリード83の幅方向に延びる切り欠きを形成することとしてもよい。
【0067】
図8Aは、本実施の形態2におけるタブリード93,94の溶接方法を示す部分拡大図である。図8Aは、ラミネート型電池の第1の単電池91と第2の単電池92との長さの短いタブリード93,94を溶接する場合を示している。
【0068】
第1の単電池91のタブリード93には、単電池91の幅方向に矩形状の切り欠き95を形成している。切り欠き95は、タブリード93の幅方向に延びた形状を有する。タブリード93には、切り欠き95が1か所形成されているが、複数の切り欠きが形成されてもよい。
【0069】
図8Bは、第1の単電池91のタブリード93の加工形状を示す図である。×印は、溶接棒71a,71bを押しつけて溶接する溶接ポイント96a,96bを示している。
【0070】
図8Cは、第1の単電池91のタブリード101の他の加工形状を示す図である。タブリード101に形成された切り欠き102は、T字形状に形成されている。×印は、溶接棒71a,71bを押しつけて溶接する溶接ポイント103a~103dを示している。
【0071】
このような切り欠き95,102を形成する場合であっても、局所的に電流が流れるため、高温の抵抗熱により溶接部の領域を加熱することができ、タブリード93,94,101の溶接を行うことができる。
【0072】
(変形例)
上記実施の形態のタブリードには、タブリードを貫通する切り欠きまたは孔を形成していたが、これらに限定されず、タブリードを貫通しない溝が形成されていてもよい。この場合でも、電流が流れる領域が広がることを抑制できるため、高温の抵抗熱により溶接部の領域を加熱することができ、タブリードの溶接をおこなうことができる。
【0073】
また、例えば、図7Bに示したタブリードでは、3箇所(6つの溶接ポイント)で溶接することとしているが、中央の1箇所、又は、両端の2箇所の溶接であってもよい。溶接ポイントは確実に溶接できていれば、溶接ポイント数は問題にならない。なお、剥がれなどが起こらないよう溶接の信頼性を高めたり、溶接部の低抵抗化を図るためには、複数個所の溶接をした方がよい。
【0074】
また、上記実施の形態において、図3に示すように、タブリードの上下から溶接棒を押し付ける方法を適用してもよい。2つの単電池を溶接する場合は、第1の単電池のタブリードだけでなく、第2の単電池のタブリードにも切り欠きを形成し、上下で挟んで溶接してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本開示の技術は、アルミや銅などの薄板を抵抗溶接するときに使用できる。また、タブリードのサイズが小さい場合に有用であり、極細の溶接棒で溶接する組電池に広く利用することができる。
【符号の説明】
【0076】
1 単電池
2 タブリード
10 組電池
21a 溶接棒
51 単電池
52 タブリード
63 組電池
71a 極細の溶接棒
85a 切り欠き
86a 溶接ポイント
図1A
図1B
図2
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
図6
図7A
図7B
図7C
図8A
図8B
図8C