(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024132312
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】液体加熱装置
(51)【国際特許分類】
F24H 1/10 20220101AFI20240920BHJP
【FI】
F24H1/10 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023043052
(22)【出願日】2023-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】505113632
【氏名又は名称】ヴァレオ システム テルミク
(74)【代理人】
【識別番号】100115794
【弁理士】
【氏名又は名称】今下 勝博
(74)【代理人】
【識別番号】100187045
【弁理士】
【氏名又は名称】梅澤 奈菜
(74)【代理人】
【識別番号】100119677
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 賢治
(72)【発明者】
【氏名】荒木 大助
【テーマコード(参考)】
3L034
【Fターム(参考)】
3L034BA01
3L034BB07
(57)【要約】
【課題】本開示は、異なる温度の液状熱媒体を供給できる液体加熱装置を提供することを目的とする。
【解決手段】本開示に係る液体加熱装置100は、液状熱媒体が流れるタンク102と、液状熱媒体を加熱するヒータ103と、を備える液体加熱装置において、タンク102は、一つの流路110と、少なくとも一つの流路入口111と、複数の流路出口112(112
1~112
n)と、を有し、ヒータ103は、流路110内に配置され、複数の流路出口112(112
1~112
n)は、流路110の流れ方向に沿って、流れ方向の上流側から順に配置された第1~第n流路出口(nは2以上の自然数である。)を含み、流路入口111と第n流路出口112
nとの流れ方向の間に、第1流路出口112
1がある。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液状熱媒体が流れるタンク(102)と、
前記液状熱媒体を加熱するヒータ(103)と、を備える液体加熱装置(100)において、
前記タンク(102)は、一つの流路(110)と、少なくとも一つの流路入口(111)と、複数の流路出口(112(1121~112n))と、を有し、
前記ヒータ(103)は、前記流路(110)内に配置され、
該複数の流路出口(112(1121~112n))は、前記流路(110)の流れ方向に沿って、該流れ方向の上流側から順に配置された第1~第n流路出口(nは2以上の自然数である。)を含み、
前記流路入口(111)と前記第n流路出口(112n)との前記流れ方向の間に、前記第1流路出口(1121)があることを特徴とする液体加熱装置。
【請求項2】
前記液体加熱装置(100)は、前記ヒータ(103)として前記流れ方向に沿って直列に配置された複数のヒータ部(103a1,103a2)を有し、
該複数のヒータ部(103a1,103a2)は、前記流れ方向の上流側から順に配置された第1ヒータ部(103a1)及び第2ヒータ部(103a2)を含むことを特徴とする請求項1に記載の液体加熱装置。
【請求項3】
前記第1ヒータ部(103a1)の発熱量は、前記第2ヒータ部(103a2)の発熱量よりも多いことを特徴とする請求項2に記載の液体加熱装置。
【請求項4】
前記第1流路出口(1121)は、前記第1ヒータ部(103a1)と前記第2ヒータ部(103a2)との境界及び該境界に近接する領域を含む境界領域を囲む前記タンク(102)の壁(114)に設けられていることを特徴とする請求項2に記載の液体加熱装置。
【請求項5】
前記液体加熱装置(100)は、複数本の前記ヒータ(103A,103B)を有し、
該複数本のヒータ(103A,103B)は、前記第1ヒータ部(103a1)として第1発熱部と該第1発熱部に送電する第1端子部(103b1)とを有するヒータ(103A)と、前記第2ヒータ部(103a2)として第2発熱部と該第2発熱部に送電する第2端子部(103b2)とを有するヒータ(103B)と、を含み、
前記第1ヒータ部(103a1)は、前記第1端子部(103b1)から電力が供給されることで発熱し、かつ、
前記第2ヒータ部(103a2)は、前記第2端子部(103b2)から電力が供給されることで発熱することを特徴とする請求項2に記載の液体加熱装置。
【請求項6】
前記液体加熱装置(100)は、1本の前記ヒータ(103)を有し、
前記1本のヒータ(103)は、前記流れ方向に沿って配置された複数の発熱領域と、該複数の発熱領域に送電する端子部(103b)と、を有し、
前記複数の発熱領域は、前記第1ヒータ部(103a1)と前記第2ヒータ部(103a2)とを有し、
前記第1ヒータ部(103a1)及び前記第2ヒータ部(103a2)は、前記端子部(103b)から電力が供給されることで発熱することを特徴とする請求項2に記載の液体加熱装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、液体加熱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液状熱媒体として温水が流通するタンク内に電熱式ヒータが収容された液体加熱装置が開示されている(例えば、特許文献1,2を参照。)。特許文献1,2の液体加熱装置は、車両用空調装置に適用されて、暖房運転を実行するために熱媒体として温水を加熱する装置であり、温水が流入口からタンク内へ供給されて加熱され、加熱された温水が一つの流出口から流出される。
【0003】
走行用エンジンの冷却水の循環ループに2つのヒーターコア(放熱用熱交換器)が接続された車両用空調装置が開示されている(例えば、特許文献3を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014-31069号公報
【特許文献2】特開2017-211093号公報
【特許文献3】特開平7-25219号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献3のように複数の放熱用熱交換器に液状熱媒体を供給するにあたり、各放熱用熱交換器で相互に異なる温度の液状熱媒体を要求される場合がある。しかし、特許文献1,2に開示されたような従来の液体加熱装置では、複数の放熱用熱交換器に供給される液状熱媒体の温度は相互に同じであり、前記の要求に応えられなかった。
【0006】
本開示は、異なる温度の液状熱媒体を供給できる液体加熱装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る液体加熱装置は、液状熱媒体が流れるタンクと、前記液状熱媒体を加熱するヒータと、を備える液体加熱装置において、前記タンクは、一つの流路と、少なくとも一つの流路入口と、複数の流路出口と、を有し、前記ヒータは、前記流路内に配置され、該複数の流路出口は、前記流路の流れ方向に沿って、該流れ方向の上流側から順に配置された第1~第n流路出口(nは2以上の自然数である。)を含み、前記流路入口と前記第n流路出口との前記流れ方向の間に、前記第1流路出口があることを特徴とする。
【0008】
本発明に係る液体加熱装置は、前記ヒータとして前記流れ方向に沿って直列に配置された複数のヒータ部を有し、該複数のヒータ部は、前記流れ方向の上流側から順に配置された第1ヒータ部及び第2ヒータ部を含むことが好ましい。より精密な温度制御をすることができる。
【0009】
本発明に係る液体加熱装置では、前記第1ヒータ部の発熱量は、前記第2ヒータ部の発熱量よりも多いことが好ましい。液状熱媒体をより効率的に加熱することができる。
【0010】
本発明に係る液体加熱装置では、前記第1流路出口は、前記第1ヒータ部と前記第2ヒータ部との境界及び該境界に近接する領域を含む境界領域を囲む前記タンクの壁に設けられていることが好ましい。より精密な温度制御をすることができる。
【0011】
本発明に係る液体加熱装置は、複数本の前記ヒータを有し、該複数本のヒータは、前記第1ヒータ部として第1発熱部と該第1発熱部に送電する第1端子部とを有するヒータと、前記第2ヒータ部として第2発熱部と該第2発熱部に送電する第2端子部とを有するヒータと、を含み、前記第1ヒータ部は、前記第1端子部から電力が供給されることで発熱し、かつ、前記第2ヒータ部は、前記第2端子部から電力が供給されることで発熱することが好ましい。第1ヒータ部と第2ヒータ部とにそれぞれ電力を供給し制御することで、より精密な温度制御をすることができる。
【0012】
本発明に係る液体加熱装置は、1本の前記ヒータを有し、前記1本のヒータは、前記流れ方向に沿って配置された複数の発熱領域と、該複数の発熱領域に送電する端子部と、を有し、前記複数の発熱領域は、前記第1ヒータ部と前記第2ヒータ部とを有し、前記第1ヒータ部及び前記第2ヒータ部は、前記端子部から電力が供給されることで発熱することが好ましい。端子部の数を増やさず、液体加熱装置を製作することができる。
【発明の効果】
【0013】
本開示によれば、異なる温度の液状熱媒体を供給できる液体加熱装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本実施形態に係る液体加熱装置の一例を示す概略斜視図である。
【
図2】本実施形態に係る液体加熱装置の変形例を示す概略斜視図である。
【
図3】本実施形態に係る液体加熱装置におけるタンクの一例を示す概略平面図であり、ヒータが1本である形態を示す。
【
図4】本実施形態に係る液体加熱装置におけるタンクの一例を示す概略平面図であり、ヒータが2本である形態を示す。
【
図5】本実施形態に係る液体加熱装置におけるタンクの変形例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付の図面を参照して本発明の一態様を説明する。以下に説明する実施形態は本発明の実施例であり、本発明は、以下の実施形態に制限されるものではない。なお、本明細書及び図面において符号が同じ構成要素は、相互に同一のものを示すものとする。本発明の効果を奏する限り、種々の形態変更をしてもよい。
【0016】
図1は、本実施形態に係る液体加熱装置の一例を示す概略斜視図である。本実施形態に係る液体加熱装置100は、
図1に示すように、液状熱媒体が流れるタンク102と、液状熱媒体を加熱するヒータ103と、を備える液体加熱装置において、タンク102は、一つの流路110と、少なくとも一つの流路入口111と、複数の流路出口112(112
1~112
n)と、を有し、ヒータ103は、流路110内に配置され、複数の流路出口112(112
1~112
n)は、流路110の流れ方向に沿って、流れ方向の上流側から順に配置された第1~第n流路出口(nは2以上の自然数である。)を含み、流路入口111と第n流路出口112
nとの流れ方向の間に、第1流路出口112
1がある。
【0017】
本実施形態に係る液体加熱装置100は、液状熱媒体を加熱する装置であり、例えば、車両用空調装置に適用される。液状熱媒体は、常温で液体の熱媒体であり、例えば、水又はクーラントである。
【0018】
液体加熱装置100は、
図1に示すように、少なくとも電子回路基板を収容する電装室130を更に備えることが好ましい。電装室130は、タンク102の上部に設けられる。電子回路基板は、例えば、トランジスタ(例えばIGBT)などの電装部品が接続され、ヒータ103の通電を制御する制御部となる。
【0019】
タンク102は、液状熱媒体を流通可能な1つの内部空間を有し、この内部空間が流路110となる。流路110は周壁113で囲まれており、空間内にはヒータ103が配置されて上流側から下流側に向けて液状熱媒体が通流する。周壁113の材質は、一定の剛性を有し、加熱された液状熱媒体による腐食及び含浸に耐えられる材質であればよく特に限定されないが、例えば、ナイロン6又はナイロン6,6が好適に用いられる。これによって、液体加熱装置100を軽量化できる。あるいは、周壁113の材質は、アルミニウム合金が好適に用いられる。これによって、液体加熱装置100の剛性をより十分に確保できる。周壁113は、両端が閉塞した筒状であることが好ましく、筒状の側壁114と一対の端壁115a,115bとを有する。側壁114の形状は、特に限定されないが、例えば、略円筒形状又は略楕円筒形状であることが好ましい。本明細書において、略円筒又は略楕円筒とは、細部にこだわらずおおよその外形状が円柱若しくは楕円柱又はこれらを傾斜させた柱状であることを意味しており、断面形状が真円又は真楕円である形状に限定されず、断面形状が歪んだ円若しくは楕円である形状、又は外形状が中心軸に対して内径を変化させた円錐台若しくは楕円錐台のような形状を包含することを意味している。また、側壁114は、筒の一部が欠けている形状を包含する。
【0020】
流路入口111及び流路出口112(112
1~112
n)は、周壁113に設けられ流路110に連通する開口であり、該開口から延びる筒状の接続部111a,112a(
図1に図示)を包含する。流路出口112(112
1~112
n)は、流路入口111と比較して電装室130に近い位置に配置されていることが好ましい。このように、流路入口111を下側、流路出口112(112
1~112
n)を上側に配置することで、設置時又はメンテナンス時に流路110内に混入した気泡を効率的に排出することができる。
図1では一例として、流路入口111が端壁115bに設けられ、流路出口112(112
1~112
n)が側壁114に設けられる形態を示したが、本発明はこれに限定されず、例えば、
図2に示すように、流路入口111及び流路出口112(112
1~112
n)の両方が側壁114に設けられてもよい。
図2に示すように流路入口111を側壁114に設けることで、流路110を流れる液状熱媒体の流れを側壁114の内面に沿った旋回流とすることができ、液状熱媒体をより効率的に加熱することができる。
【0021】
複数の流路出口112(112
1~112
n)は、流路110の流れ方向に沿って、流れ方向の上流側から順に第1流路出口112
1、第2流路出口112
2、・・・第n流路出口112
nが配置される。nは2以上の自然数であり、
図1では一例として、nが2である形態を示したが、本発明はこれに限定されず、nが3以上であってもよい。
図1に例示する形態では、上流側の流路出口112は第1流路出口112
1であり、下流側の流路出口112は第2流路出口112
2である。ここで、流路110の流れ方向に沿って配置されるとは、流路110の上流側から下流側に向かって、第1流路出口112
1、・・第n流路出口112
nの順番が、nが小さい順に並んでいることをいう。第1流路出口112
1は、流路入口111と第n流路出口112
nとの流れ方向の間に配置される。これによって、第1流路出口112
1から流出される液状熱媒体を適度に加熱することができる。第1流路出口112
1から流出される液状熱媒体を過度に加熱しないことができる、とも言える。流路出口112(112
1~112
n)は、流路入口111よりも流路110の下流側に設けられることが好ましい。側壁114の軸方向X3で流路入口111の位置及び流路出口112の位置を相互にずらすことがより好ましく、流路入口111を側壁114の軸方向X3の一方の端部側に設け、第n流路出口112
nを側壁114の軸方向X3の他方の端部側に設けることが特に好ましい。流路110を長く確保することができる。ここで、側壁114の軸方向X3とは、側壁114の延在方向、言い換えると側壁114を構成する筒の長さ方向をいう。
【0022】
図3は、本実施形態に係る液体加熱装置におけるタンクの一例を示す概略平面図であり、ヒータが1本である形態を示す。
図3は、タンク102の内部が見えるように側壁114の一部を透視して図示している。ヒータ103は、電気発熱式のヒータであり、液状熱媒体と熱交換して加熱可能なものであれば特に限定されないが、例えば、シーズヒータ又はPTCヒータである。ヒータ103は、発熱部103aと端子部103bとを有する。発熱部103aは、例えば、側壁114の軸方向X3に沿って配置されることが好ましい。発熱部103aの形状は、特に限定されないが、
図3に示すようにコイル状であるか、直線状(不図示)又は流路110内を往復する形状(不図示)であってもよい。端子部103bは、例えば、端壁115aを貫通して固定される。端子部103bには、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)などのトランジスタを介して電力が供給される。トランジスタはスイッチング動作によってヒータ103への電力の供給を制御する。これによって、ヒータ103は所望の温度に調整される。その結果、各流路出口112(112
1~112
n)から流出される液状熱媒体が所望の温度に調整される。
【0023】
液体加熱装置100は、側壁114の軸方向X3を略水平方向に配置した状態が設置状態とされることが好ましい。ここで、略水平方向とは、側壁114と流路出口112(1121~112n)との接続部分がタンク102の概ね上方に位置する状態であれば特に限定はしないが、水平方向及び水平に対してなす角の大きさが20度以内の範囲にある向きを含む。液体加熱装置100をこのように配置することで、タンク102の内部に意図せずに発生、あるいは侵入した気泡を円滑に排出することができる。本明細書では、上記設置状態における上下方向を、上方、下方ということがある。
【0024】
本実施形態に係る液体加熱装置100は次のように作用する。液体加熱装置100では、液状熱媒体がタンク102を通流する。このとき、液状熱媒体は、流路入口111から流路110に流入する。流路110に流入した液状熱媒体は、ヒータ103によって加熱されて、上流側の各流路出口112(1121~112n)から順次流出される。液状熱媒体の温度は、流路110の下流へ行くほど高くなる傾向がある。本実施形態に係る液体加熱装置100はこの傾向を利用して、複数の流路出口112(1121~112n)を流路110の流れ方向に沿って、流れ方向の上流側から順に配置することで、各流路出口112(1121~112n)から流出される液状熱媒体の温度を相互に異なる温度とすることができる。より具体的には、各流路出口112(1121~112n)から排出される液状熱媒体の温度は、流路110の最上流側に配置された第1流路出口1121から流出する液状熱媒体の温度が最も低く、流路110の最下流側に配置された第n流路出口112nから流出する液状熱媒体の温度が最も高くなる。nが2である形態を例にとって説明すると、流路110に流入した液状熱媒体の一部は、第1流路出口1121から流出され、液状熱媒体の残りは第1流路出口1121よりも流路110の下流へ流れ、第2流路出口1122から流出される。第1流路出口1121から流出する液状熱媒体の温度は、第2流路出口1122から流出する液状熱媒体の温度よりも低い。以上の作用によって、液体加熱装置100は、一つの流路110から異なる温度の液状熱媒体を供給することができる。
【0025】
図4は、本実施形態に係る液体加熱装置におけるタンクの一例を示す概略平面図であり、ヒータが2本である形態を示す。
図4は、タンク102の内部が見えるように側壁114の一部を透視して図示している。本実施形態に係る液体加熱装置100は、ヒータ103として流れ方向に沿って直列に配置された複数のヒータ部103a1,103a2を有し、複数のヒータ部103a1,103a2は、流れ方向の上流側から順に配置された第1ヒータ部103a1及び第2ヒータ部103a2を含むことが好ましい。
【0026】
図4を参照して、ヒータが複数のヒータ部を有する形態の一例を説明する。本実施形態に係る液体加熱装置100は、
図4に示すように、複数本のヒータ103A,103Bを有し、該複数本のヒータ103A,103Bは、第1ヒータ部103a1として第1発熱部と第1発熱部に送電する第1端子部とを有するヒータ103Aと、第2ヒータ部103a2として第2発熱部と第2発熱部に送電する第2端子部103b2とを有するヒータ103Bと、を含み、第1ヒータ部103a1は、前記第1端子部103b1から電力が供給されることで発熱し、かつ、第2ヒータ部103a2は、第2端子部103b2から電力が供給されることで発熱することが好ましい。
図4ではヒータ103が2本である形態を示したが、本発明はこれに限定されず、ヒータ103が3本以上であってもよい。このように、複数のヒータ部103a1,103a2を、相互に異なるヒータ103A,103Bの発熱部とし、各ヒータ103A,103Bの電力供給を制御することで、より精密な温度制御をすることができる。例えば、次のような制御をすることができる。第1流路出口112
1から流出される液状熱媒体の温度として高めの温度が求められ、第n流路出口112
nから流出される液状熱媒体の温度として第1流路出口112
1から流出される液状熱媒体よりも高い温度が求められる場合は、第1ヒータ103A及び第2ヒータ103Bの両方へ電力を供給する。これによって、第1流路出口112
1から流出される液状熱媒体に与えられる熱量を例えば2kW/hとし、第n流路出口112
nから流出される液状熱媒体に与えられる熱量を例えば5kW/hとすることができる。また、第1流路出口112
1から流出される液状熱媒体の温度と第n流路出口112
nから流出される液状熱媒体の温度とを同程度とすることが求められる場合は、第1ヒータ103Aだけへ電力を供給し、第2ヒータ103Bへの電力供給を停止する。これによって、第1流路出口112
1から流出される液状熱媒体に与えられる熱量及びを例えば1kW/hとし、第n流路出口112
nから流出される液状熱媒体に与えられる熱量を例えば1kW/hとすることができる。あるいは、第1流路出口112
1から流出される液状熱媒体の温度として低めの温度が求められ、第n流路出口112
nから流出される液状熱媒体の温度を高めの温度とすることが求められる場合は、第1ヒータ103Aへの電力供給を停止し、第2ヒータ103Bだけへ電力を供給する。これによって、第1流路出口112
1から流出される液状熱媒体に与えられる熱量及びを例えば0.7kW/hとし、第n流路出口112
nから流出される液状熱媒体に与えられる熱量を例えば2.5kW/hとすることができる。
【0027】
複数のヒータ部を配置する場合、各ヒータ103A,103B(ヒータ部103a1,103a2)同士の発熱量は、それぞれ適宜設定することができる。例えば各ヒータ103A,103B(ヒータ部103a1,103a2)の発熱量を相互に異なる発熱量としてもよいし、各ヒータ103A,103B(ヒータ部103a1,103a2)の発熱量を相互に同じとしてもよい。各ヒータ103A,103B(ヒータ部103a1,103a2)の発熱量を相互に異なる発熱量とする場合、流路110の流れ方向に沿ったヒータ103A,103B(ヒータ部103a1,103a2)の並び順と発熱量の大小との組合せは特に限定されず、例えば、上流側へ向かうほど発熱量が多いヒータ部を配置してもよいし、上流側へ向かうほど発熱量が少ないヒータ部を配置してもよい。あるいは、相対的に発熱量が多いヒータ部同士の間に相対的に発熱量が少ないヒータ部を配置したり、相対的に発熱量が少ないヒータ部同士の間に相対的に発熱量が多いヒータ部を配置したりしてもよい。
【0028】
本実施形態に係る液体加熱装置100では、第1ヒータ部103a1の発熱量は、第2ヒータ部103a2の発熱量よりも多いことが好ましい。本実施形態は、下記に例示する液状熱媒体の流量及び液状熱媒体の温度に限定されず、液状熱媒体の流量及び液状熱媒体の温度は適宜設定することができる。第1ヒータ部103a1は、流路入口111から例えば10L/minの流量及び例えば30℃の温度で流入してきたすべての液状熱媒体の昇温を担う。そして、第1ヒータ部103a1で例えば60℃に加熱された液状熱媒体の一部が例えば3L/minの流量で第1流路出口1121から流出する。第2ヒータ部103a2は、第1ヒータ部103a1によって昇温され、かつ、第1流路出口1121から流出しなかった残りの液状熱媒体の更なる昇温を担う。第2ヒータ部103a2で加熱された液状熱媒体は例えば90℃まで昇温され、例えば7L/minの流量で第2流路出口1122から流出する。すなわち、この形態では、第1ヒータ部103a1は、10L/min及び温度差30℃の液状熱媒体の昇温を担うため、第1ヒータ部103a1が液状熱媒体に供給する熱量は300L・℃/minとなる。また、第2ヒータ部103a2は、7L/min及び温度差30℃の液状熱媒体の昇温を担うため、第2ヒータ部103a2が液状熱媒体に供給する熱量は210L・℃/minとなる。したがって、下流側に配置されるヒータ部(第2ヒータ部)103a2の発熱量は上流側に配置されるヒータ部(第1ヒータ部)103a1の発熱量よりも少なくすることで、より省電力化することができる。
【0029】
図4に示す本実施形態に係る液体加熱装置100のように、第1ヒータ部103a1と第2ヒータ部103a2とは、それぞれ流路110に配置された別個のヒータ103A,103Bの発熱部であり、各ヒータ103A,103Bは、それぞれ、端壁115a、115bのいずれかを貫通して固定される端子部103b1,103b2を有し、各端子部103b1,103b2には、それぞれ、電力が供給されることが好ましい。これにより、より精密な温度制御をすることができる。
【0030】
本実施形態に係る液体加熱装置では、第1流路出口112
1は、
図4に示すように、第1ヒータ部103a1と第2ヒータ部103a2との境界及び該境界に近接する領域を含む境界領域を囲むタンク102の側壁114に設けられていることが好ましい。これによって、第1流路出口112
1から流出される液状熱媒体の温度は、液状熱媒体の流量が一定である場合、第1ヒータ部103a1の発熱量によって一義的に決まるため、より精密な温度制御をすることができる。境界領域は、例えば、第1ヒータ部103a1の下流端を含む部分、第2ヒータ部103a2の上流端を含む部分、又は第2ヒータ部103a2の第1ヒータ部103a1に近接する部分である。
【0031】
図1~
図4では、タンク102を上下方向に縦断した縦断面積が流路110の流れ方向に沿って略一定である形態を示したが、タンク102の縦断面積は流路110の流れ方向に沿って不定であってもよい。
図5は、本実施形態に係る液体加熱装置におけるタンクの変形例を示す概略断面図である。
図5において、ヒータ103は断面ではなく、正面視した状態を示している。本実施形態に係る液体加熱装置100では、タンク102を上下方向に縦断した縦断面積が、流路110の下流へ行くほど小さくなることが好ましい。これによって、液体加熱装置の小型化及び軽量化を図ることができる。第1流路出口112
1から第2流路出口112
2までのタンク102の縦断面積が、流路入口111から第1流路出口112
1までのタンク102の縦断面積よりも小さいことがより好ましい。タンク102では、第1流路出口112
1から第2流路出口112
2までの領域は、流路入口111から第1流路出口112
1までの領域よりも液状熱媒体の流量が少ない。タンク102の断面積を液状熱媒体の流量に合わせて小さくすることで、液状熱媒体をより効率的に加熱することができるとともに、液体加熱装置の小型化及び軽量化を図ることができる。より好ましくは、
図5に示すように、タンク102を上下方向に縦断した縦断面積が、流路110の下流へ行くほど小さくなり、かつ、ヒータ103として流れ方向に沿って直列に配置された複数のヒータ部103a1,103a2を有し、複数のヒータ部103a1,103a2は、流れ方向の上流側から順に配置された第1ヒータ部103a1及び第2ヒータ部103a2を含む形態である。更に好ましくは、当該形態において、
図5に示すように、第1流路出口112
1が第1ヒータ部103a1と第2ヒータ部103a2との境界及び該境界に近接する領域を含む境界領域を囲むタンク102の側壁114に設けられている形態である。
【0032】
ここまで、液体加熱装置100が2個の流路出口112を有する形態を例にとって説明してきたが、これらは例示に過ぎず、本発明はこれらの構成のみに限定されない。本発明は、本発明の効果を奏する限り、種々の変形形態を包含する。変形形態の一例としては、液体加熱装置100が、複数の流路出口112として、流れ方向の上流側から順に配置された第1流路出口1121、第2流路出口1122及び第3流路出口1123を含み、複数のヒータ103として、流れ方向の上流側から順に配置された第1ヒータ部、第2ヒータ部及び第3ヒータ部を含む形態である。この形態において、第1ヒータ部の発熱量は、第2ヒータ部の発熱量よりも多く、かつ、第2ヒータ部の発熱量は、第3ヒータ部の発熱量よりも多いことが好ましい。また、第1流路出口1121は、第1ヒータ部と第2ヒータ部との境界及び該境界に近接する領域を含む境界領域を囲むタンク102の側壁114に設けられ、第2流路出口1122は、第2ヒータ部と第3ヒータ部との境界及び該境界に近接する領域を含む境界領域を囲むタンク102の側壁114に設けられることが好ましい。
【0033】
図4ではヒータが複数のヒータ部を有する形態の一例として、液体加熱装置100が、複数本のヒータ103A,103Bを備えており、該複数本のヒータ103A,103Bのそれぞれの発熱部が複数のヒータ部103a1,103a2である形態を示したが、本発明はこれに限定されず、例えば、液体加熱装置100が、
図3に示すように1本のヒータ103を備え、該1本のヒータ103が流れ方向に沿って複数の発熱領域(不図示)を有しており、該複数の発熱領域を複数のヒータ部103a1,103a2としてもよい。すなわち、ヒータが複数のヒータ部を有する形態の別の例について、
図3を参照して説明すると、本実施形態に係る液体加熱装置100は、1本のヒータ103を有し、1本のヒータ103は、流れ方向に沿って配置された複数の発熱領域(不図示)と、複数の発熱領域に送電する端子部103bと、を有し、複数の発熱領域は、第1ヒータ部と第2ヒータ部とを有し、第1ヒータ部及び第2ヒータ部は、端子部103bから電力が供給されることで発熱することが好ましい。これによって、構造及び制御の複雑化を防止した液体加熱装置とすることができる。1本のヒータ103に複数の発熱領域を設ける方法は、特に限定されないが、1本の発熱体の中で発熱線の密度を変えて発熱分布を形成する方法、又は発熱量の相互に異なる複数の発熱体同士を電気的に接続する方法である。図示しないが、別な変形形態の一例としては、
図4を参考にして説明すると、第1ヒータ部103a1は、流路110に配置される第1発熱部であり、かつ、
図4に示す第1端子部103b1に代えて被接続部(不図示)を有し、第2ヒータ部103a2は、流路110に配置される第2発熱部であり、かつ、第1ヒータ部103a1の被接続部と電気的に接続される接続部と、端壁115a、115bのいずれかを貫通して固定される端子部103b2とを有し、当該端子部103b2には、電力が供給されることが好ましい。このように、第1ヒータ部103a1と第2ヒータ部103a2とを直列状に連結し、第2ヒータ部a2に電力を供給することで、第1ヒータ部a1にも電力が供給される。端子部の数を増やさず、また、タンク102の端壁を貫通する端子部の数を増やさないので、端壁の構造が複雑化せず、液体加熱装置を製作することができる。
【符号の説明】
【0034】
100 液体加熱装置
102 タンク
103 ヒータ
103A,103B ヒータ
103a 発熱部
103a1,103a2 ヒータ部(発熱部)
103b,103b1,103b2 端子部
110 流路
111 流路入口
111a,112a 接続部
112(1121~112n) 流路出口
113 周壁
114 側壁
115a,115b 端壁
130 電装室