(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024132314
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】半導体素子の駆動回路
(51)【国際特許分類】
H03K 17/00 20060101AFI20240920BHJP
H03K 17/687 20060101ALI20240920BHJP
H02M 1/08 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
H03K17/00 B
H03K17/687 A
H02M1/08 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023043057
(22)【出願日】2023-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】弁理士法人サトー
(72)【発明者】
【氏名】戸森 雅広
(72)【発明者】
【氏名】山内 一輝
【テーマコード(参考)】
5H740
5J055
【Fターム(参考)】
5H740BA12
5H740BC01
5H740BC02
5H740HH05
5H740JA01
5H740JB01
5H740KK01
5J055AX40
5J055BX16
5J055DX13
5J055DX22
5J055DX55
5J055EX07
5J055EX14
5J055EY01
5J055EY21
5J055EZ09
5J055EZ24
5J055EZ39
5J055GX01
5J055GX05
(57)【要約】
【課題】リーク電流を検出する経路にトランジスタを含むことなく検出できる半導体素子の駆動回路を提供する。
【解決手段】駆動回路7において、駆動用電源とFET1のゲートとの間にハイサイドスイッチM1~M3及び充電用ゲート抵抗R1~R3の直列回路を接続する。リーク電流検出部2は、ハイサイドスイッチM3がオンされた際に充電用ゲート抵抗R3を含む通電経路に発生する電圧を検出する。制御部5は、ハイサイドスイッチM1~M3及びローサイドスイッチM4のオンオフを制御すると共に、リーク電流検出部2により検出された電圧に基いてゲートよりFET1のソースに流れるリーク電流の有無を判定する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動用電源と電圧駆動型の半導体素子(1)のゲートとの間に接続される、ハイサイドスイッチ(M1、M2、M3)及び充電用ゲート抵抗(R1,R2,R3)の直列回路を複数備え、
前記複数の充電用ゲート抵抗の抵抗値は互いに異なる値に設定され、それらのうち、抵抗値が最も高いものを含む直列回路を構成するものを、それぞれ検出用スイッチ(M3)、検出用ゲート抵抗(R3)とし、
前記検出用スイッチがオンされた際に、前記検出用ゲート抵抗を含む通電経路に発生する電圧を検出する電圧検出部(2)と、
前記複数のハイサイドスイッチのオンオフを制御すると共に、前記電圧検出部により検出された電圧に基いて、前記ゲートより前記半導体素子の低電位側導通端子に流れるリーク電流の有無を判定する制御部(5)と、を備える半導体素子の駆動回路。
【請求項2】
前記ハイサイドスイッチは、半導体素子で構成され、
前記検出用スイッチのオン抵抗は、その他のハイサイドスイッチのオン抵抗よりも高く設定されている請求項1記載の半導体素子の駆動回路。
【請求項3】
第1駆動用電源(V1)と、
この第1駆動用電源よりも電圧が高い第2駆動用電源(V2)と、
前記1駆動用電源と電圧駆動型の半導体素子のゲートとの間に接続される、逆流防止素子(M8)、第1ハイサイドスイッチ(M1)及び第1充電用ゲート抵抗(R1)の直列回路と、
前記2駆動用電源と、第1ハイサイドスイッチ及び第1充電用ゲート抵抗の共通接続点との間に接続される、第2ハイサイドスイッチ(M7)及び前記第1充電用ゲート抵抗よりも抵抗値が高く設定された第2充電用ゲート抵抗(R7)の直列回路と、
前記第2ハイサイドスイッチがオンされた際に、前記第1及び第2ゲート抵抗を含む通電経路に発生する電圧を検出する電圧検出部(2)と、
前記第1及び第2のハイサイドスイッチのオンオフを制御すると共に、前記電圧検出部により検出された電圧に基いて、前記ゲートより前記半導体素子の低電位側導通端子に流れるリーク電流の有無を判定する制御部(16)と、を備える半導体素子の駆動回路。
【請求項4】
前記第1及び第2ハイサイドスイッチは、半導体素子で構成され、
前記第2ハイサイドスイッチのオン抵抗は、前記第1ハイサイドスイッチのオン抵抗よりも高く設定されている請求項3記載の半導体素子の駆動回路。
【請求項5】
電圧駆動型の半導体素子(1)のゲートと低電位基準点との間に接続される、放電用ゲート抵抗(R4,R5,R6)及びローサイドスイッチ(M4,M5,M6)の直列回路を複数備え、
前記複数の放電用ゲート抵抗の抵抗値は互いに異なる値に設定され、それらのうち、抵抗値が最も高いものを含む直列回路を構成するものを、それぞれ検出用スイッチ(M6)、検出用ゲート抵抗(R6)とし、
前記検出用スイッチがオンされた際に、前記検出用ゲート抵抗を含む通電経路に発生する電圧を検出する電圧検出部(2)と、
前記複数のローサイドスイッチのオンオフを制御すると共に、前記電圧検出部により検出された電圧に基いて、前記半導体素子の高電位側導通端子より前記ゲートに流れるリーク電流の有無を判定する制御部(13)と、を備える半導体素子の駆動回路。
【請求項6】
前記ローサイドスイッチは、半導体素子で構成され、
前記検出用スイッチのオン抵抗は、その他のローサイドスイッチのオン抵抗よりも高く設定されている請求項4記載の半導体素子の駆動回路。
【請求項7】
前記電圧検出部は、前記通電経路に発生する電圧を差動により検出する請求項1から6の何れか一項に記載の半導体素子の駆動回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電圧駆動型の半導体素子を駆動する回路に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばNチャネルMOSFET等の電圧駆動型の半導体素子について、ゲートからソースへ、又はドレインからゲートへリークする電流を検出する回路は、様々なものが提案されている。例えば、特許文献1では、半導体素子を駆動する回路内で駆動能力を切り替えることで、抵抗値が高いゲート抵抗を用いてリーク電流を検出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の構成では、リーク電流を検出する経路に上記のゲート抵抗に直列に接続されているMOSFETがあるため、そのMOSFETのオン抵抗も含めて検出を行っている。したがって、リーク電流の検出精度がその分だけ低下するという問題がある。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、リーク電流を検出する経路にトランジスタを含むことなく検出できる半導体素子の駆動回路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の半導体素子の駆動回路によれば、駆動用電源と電圧駆動型の半導体素子(1)のゲートとの間に、ハイサイドスイッチ(M1、M2、M3)及び充電用ゲート抵抗(R1,R2,R3)の直列回路を複数接続する。複数の充電用ゲート抵抗のうち、抵抗値が最も高いものを含む直列回路を構成するものを、それぞれ検出用スイッチ(M3)、検出用ゲート抵抗(R3)とする。電圧検出部(2)は、検出用スイッチがオンされた際に、検出用ゲート抵抗を含む通電経路に発生する電圧を検出する。制御部(5)は、複数のハイサイドスイッチのオンオフを制御すると共に、電圧検出部により検出された電圧に基いて、ゲートより半導体素子の低電位側導通端子に流れるリーク電流の有無を判定する。
【0007】
このように構成すれば、電圧検出部が電圧を検出するための通電経路に例えばMOSFET等のスイッチは含まない。そして、充電用ゲート抵抗のうち抵抗値が最も高いものを検出用ゲート抵抗とするので、リーク電流の発生をより高い電圧で検出できる。総じて、リーク電流をより高い精度で検出できる。
【0008】
請求項3記載の半導体素子の駆動回路によれば、第1駆動用電源(V1)と電圧駆動型の半導体素子(1)のゲートとの間に逆流防止素子(M8)、第1ハイサイドスイッチ(M1)及び第1充電用ゲート抵抗(R1)の直列回路を接続する。また、電圧がより高い第2駆動用電源(V2)と、第1ハイサイドスイッチ及び第1充電用ゲート抵抗の共通接続点との間に、第2ハイサイドスイッチ(M7)及び抵抗値がより高い第2充電用ゲート抵抗(M7)の直列回路を接続する。電圧検出部(2)は、第2ハイサイドスイッチがオンされた際に、第1及び第2ゲート抵抗を含む通電経路に発生する電圧を検出する。制御部(16)は、第1及び第2のハイサイドスイッチのオンオフを制御すると共に、電圧検出部により検出された電圧に基いて、ゲートより半導体素子の低電位側導通端子に流れるリーク電流の有無を判定する。
【0009】
このように構成すれば、オンさせる際に高い電圧を必要とする半導体素子を駆動する際に、最初は第1充電用ゲート抵抗のみで高速でオン動作させ、次は第1及び第2充電用ゲート抵抗により低速でオン動作させるように2段階で駆動できる。そして、電圧検出部は、スイッチを含まず、第1及び第2ゲート抵抗を含む通電経路に発生する電圧を検出するので、リーク電流の発生をより高い電圧で高精度に検出できる。
【0010】
請求項5記載の半導体素子の駆動回路によれば、電圧駆動型の半導体素子(1)のゲートと低電位基準点との間に、放電用ゲート抵抗(R4,R5,R6)及びローサイドスイッチ(M4,M5,M6)の直列回路を複数接続する。複数の放電用ゲート抵抗のうち、抵抗値が最も高いものを含む直列回路を構成するものを、それぞれ検出用スイッチ(M6)、検出用ゲート抵抗(R6)とし、電圧検出部(2)は、検出用スイッチがオンされた際に、検出用ゲート抵抗を含む通電経路に発生する電圧を検出する。制御部(13)は、複数のローサイドスイッチのオンオフを制御すると共に、電圧検出部により検出された電圧に基いて、半導体素子の高電位側導通端子よりゲートに流れるリーク電流の有無を判定する。したがって、請求項1と同様にして、半導体素子の高電位側導通端子よりゲートに流れるリーク電流を高精度に検出できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】第1実施形態であり、半導体素子の駆動回路の構成を示す図
【
図2】ハイサイドスイッチM1をオンにした場合のゲート電圧の変化を示す図
【
図3】ハイサイドスイッチM3をオンにした場合のゲート電圧の変化を示す図
【
図4】第2実施形態であり、半導体素子の駆動回路の構成を示す図
【
図5】第3実施形態であり、半導体素子の駆動回路の構成を示す図
【
図6】ハイサイドスイッチM1、M7を順次オンにした場合のゲート電圧の変化を示す図(リーク電流発生無しの場合)
【
図7】ハイサイドスイッチM1、M7を順次オンにした場合のゲート電圧の変化を示す図(リーク電流発生有りの場合)
【
図8】第4実施形態であり、半導体素子の駆動回路の構成を示す図
【発明を実施するための形態】
【0012】
(第1実施形態)
図1に示すように、本実施形態の駆動回路は、電圧駆動型の半導体素子であるNチャネルMOSFET1を駆動対象としている。FET1は、例えばブリッジ回路の下アーム側を構成するもので、ソースは低電位側基準点であるグランドに接続され、ドレインは、図示しない例えば上アーム側のFET等に接続されている。FET1のドレインは高電位側導通端子であり、ソースは低電位側導通端子である。
【0013】
駆動用電源とFET1のゲートとの間には、ハイサイドスイッチM1~M3と、充電用ゲート抵抗R1~R3とがそれぞれ直列に接続されている。ハイサイドスイッチM1~M3は、例えばPチャネルMOSFETである。また、FET1のゲートとグランドとの間には、放電用ゲート抵抗R4とローサイドスイッチM4との直列回路が接続されている。ローサイドスイッチM4は、例えばNチャネルMOSFETである。
【0014】
尚、充電用ゲート抵抗R1~R3の抵抗値の大小関係は(R3>R2>R1)に設定されており、ハイサイドスイッチM1~M3のオン抵抗の大小関係は(M3>M2>M1)に設定されている。ハイサイドスイッチM3は検出用スイッチに相当し、充電用ゲート抵抗R3は検出用抵抗に相当する。
【0015】
ハイサイドスイッチM3のソースとローサイドスイッチM4のドレインとは、リーク電流検出部2を構成する差動増幅回路3の入力端子にそれぞれ接続されている。リーク電流検出部2は電圧検出部に相当する。差動増幅回路3の出力端子は、A/D変換器4を介して制御部5の入力端子に接続されている。制御部5は、例えばマイクロコンピュータで構成され、各スイッチM1~M4のオンオフを制御する。以上において、FET1及びゲート抵抗R1~R4を除いたものが駆動IC6を構成している。駆動IC6及びゲート抵抗R1~R4が駆動回路7を構成する。
【0016】
次に、本実施形態の作用について説明する。ハイサイドスイッチM1~M3は、FET1をオンさせる際に、充電用ゲート抵抗R1~R3に設定されている抵抗値の大小関係によって、オン動作の速度を変化させる目的で使い分けることができる。ローサイドスイッチM4をオフにして、FET1を、抵抗値が最小であるハイサイドスイッチM1及び充電用ゲート抵抗R1によってオンさせればオン動作の速度は高速となり、抵抗値が最大であるハイサイドスイッチM3及び充電用ゲート抵抗R3によってさせればオン動作の速度は低速となる。
【0017】
また、
図1に示しているように、ハイサイドスイッチM3をオンにして、ローサイドスイッチM4をオフにすれば、FET1のゲートは、駆動用電源により、ハイサイドスイッチM3及び充電用ゲート抵抗R3によって充電される。この時、FET1のゲートからソース側にリーク電流が流れなければ、
図3に示すように、FET1のゲートが充電された以降は充電用ゲート抵抗R3に電流が流れなくなる。一方、ゲートからソース側にリーク電流が流れていれば、ゲートが充電された以降も充電用ゲート抵抗R3に電流が流れる。制御部5は、FET1のゲートが充電されてゲート電圧が安定した以降の期間に、リーク電流検出部2により検出される電圧の大きさによってリーク電流が流れているか否かを判定する。
【0018】
図2に示すハイサイドスイッチM1をオンした場合よりも、
図3に示すハイサイドスイッチM3をオンした場合の方が充電経路の抵抗値が高いので、リーク電流が流れている場合の電圧がより高くなる。したがって、リーク電流をより高精度に検出できる。
【0019】
以上のように本実施形態によれば、駆動回路7において、駆動用電源とFET1のゲートとの間に、ハイサイドスイッチM1~M3及び充電用ゲート抵抗R1~R3の直列回路を接続する。リーク電流検出部2は、ハイサイドスイッチM3がオンされた際に、充電用ゲート抵抗R3を含む通電経路に発生する電圧を検出する。制御部5は、ハイサイドスイッチM1~M3、及びローサイドスイッチM4のオンオフを制御すると共に、リーク電流検出部2により検出された電圧に基いて、ゲートよりFET1のソースに流れるリーク電流の有無を判定する。
【0020】
このように構成すれば、リーク電流検出部2が電圧を検出するための通電経路に例えばMOSFET等のスイッチは含まない。そして、充電用ゲート抵抗R1~R3のうち抵抗値が最も高いものを検出用ゲート抵抗とするので、リーク電流の発生をより高い電圧で検出できる。総じて、リーク電流をより高い精度で検出できる。また、ハイサイドスイッチM1~M3のオン抵抗の大小関係を(M3>M2>M1)に設定することで、これらのスイッチ間の駆動能力を変化させることができる。
【0021】
(第2実施形態)
以下、第1実施形態と同一部分には同一符号を付して説明を省略し、異なる部分について説明する。
図4に示す第2実施形態の駆動回路11は、駆動IC6に替わる駆動IC12を備えている。駆動IC12は、ローサイドスイッチについても3つのスイッチM4~M6を備えており、これらのスイッチM4~M6の各ドレインは、それぞれ放電用ゲート抵抗R4~R6を介してFET1のゲートに接続されている。
【0022】
ローサイドサイドスイッチM4~M6のオン抵抗の大小関係は(M6>M5>M4)に設定されている。放電用ゲート抵抗R4~R6の大小関係は(R6>R5>R4)に設定されている。制御部13は、ハイサイドスイッチM1~M3に加えて、ローサイドスイッチM4~M6のオンオフを制御する。リーク電流検出部2の入力端子の一方は、ローサイドスイッチM4に替わって、ローサイドスイッチM6のドレインに接続されている。
【0023】
次に、第2実施形態の作用について説明する。制御部13は、ローサイドスイッチM4~M6を選択的にオンすることで、FET1をオフさせる際の動作速度を変化させることができる。また、ハイサイドスイッチM1~M3の何れか1つをオンにして、FET1のゲートを充電した後に、ローサイドスイッチM6をオンすることで、FET1のドレインからゲートに流れるリーク電流の有無を判定する。
【0024】
FET1のドレインからゲート側にリーク電流が流れなければ、FET1のゲートを放電させた以降は放電用ゲート抵抗R6に電流が流れなくなる。一方、ドレインからゲート側にリーク電流が流れていれば、ゲートを放電させた以降も放電用ゲート抵抗R6に電流が流れる。制御部13は、FET1のゲートを放電させた以降に、リーク電流検出部2により検出される電圧の大きさによってリーク電流が流れているか否かを判定する。
【0025】
以上のように第2実施形態によれば、FET1のドレインからゲート側に流れるリーク電流についても、高精度に検出できる。
【0026】
(第3実施形態)
図5に示す第3実施形態の駆動回路14は、第1実施形態の駆動IC6に替わる駆動IC15を備えている。駆動IC15には、第1駆動用電源V1と、第2駆動用電源V2とが供給され、両電圧の大小関係は(V2>V1)に設定されている。第1ハイサイドスイッチM1と第2ハイサイドスイッチM7とがあり、第1駆動用電源V1とFET1のゲートとの間には、PチャネルMOSFETである逆流防止スイッチM8、ハイサイドスイッチM1及び第1充電用ゲート抵抗R1の直列回路が接続されている。逆流防止スイッチM8のソースはハイサイドスイッチM1のソースに接続され、ドレインは第1駆動用電源V1に接続されている。
【0027】
第2駆動用電源V2とハイサイドスイッチM1のドレインとの間には、ハイサイドスイッチM7及び第2充電用ゲート抵抗R7の直列回路が接続されている。ゲート抵抗R1、R7の抵抗値の大小関係は、(R7>R1)に設定されている。ハイサイドスイッチM1、M7のオン抵抗の大小関係は、(M7>M1)設定されている。リーク電流検出部2の入力端子の一方は、ハイサイドスイッチM3に替わって、ハイサイドスイッチM7のドレインに接続されている。制御部16は、各スイッチM1,M4,M7及びM8のオンオフを制御する。
【0028】
次に、第3実施形態の作用について説明する。
図6及び
図7に示すように、FET1をオンさせる場合には、最初はハイサイドスイッチM1をオンにして、FET1のゲート電圧を高速にV1まで持ち上げる。続いて、ハイサイドスイッチM7をオンにしてゲート電圧を低速でV2にする。この時、ハイサイドスイッチM1のボディダイオードを介した第1駆動用電源V1への逆流を防止するため、逆流防止スイッチM8をオフにする。
【0029】
図7に示すように、制御部16は、FET1のゲート電圧がV2で安定している期間に、第1実施形態と同様にして、ゲートからソースに流れるリーク電流の有無を判定する。尚、制御部16の内部において、ハイサイドスイッチM1をスイッチ駆動とし、ハイサイドスイッチM7を定電圧駆動としても良い。
【0030】
例えば、FET1に替えて、電圧駆動型の半導体素子がSiC(シリコンカーバイド)のように、フルオン状態とするのにより高いゲート電圧を必要とする素子の場合には、SiCによるスイッチング損失を低減するため、電圧が低い第1電源用電圧V1によりSiCを高速でオン動作させ、ゲートが十分充電された後に電圧が高い第2電源用電圧V2により低速でオン動作させる。
【0031】
以上のように第3実施形態によれば、第1駆動用電源V1とFET1のゲートとの間に逆流防止スイッチM8、第1ハイサイドスイッチM1及び第1充電用ゲート抵抗R1の直列回路を接続する。また、電圧がより高い第2駆動用電源V2と、第1ハイサイドスイッチM1のドレインとの間に、第2ハイサイドスイッチM7及び第2充電用ゲート抵抗R7の直列回路を接続する。リーク電流検出部2は、第2ハイサイドスイッチM7がオンされた際に、第1及び第2ゲート抵抗R7及びR1を含む通電経路に発生する電圧を検出する。制御部16は、第1及び第2のハイサイドスイッチM1及びM7のオンオフを制御すると共に、リーク電流検出部2により検出された電圧に基いて、ゲートよりFET1のソースに流れるリーク電流の有無を判定する。
【0032】
このように構成すれば、SiCのようにオンさせる際に高い電圧を必要とする半導体素子を駆動する際に、最初は第1充電用ゲート抵抗R1のみで高速でオン動作させ、次は第1及び第2充電用ゲート抵抗R1及びR7により低速でオン動作させるように2段階で駆動できる。そして、リーク電流検出部2は、スイッチを含まず、第1及び第2ゲート抵抗R1及びR7を含む通電経路に発生する電圧を検出するので、リーク電流の発生をより高い電圧で高精度に検出できる。
【0033】
(第4実施形態)
図8に示す第4実施形態は、第2実施形態の駆動IC12の低電位基準点を、0Vであるグランドに替えて負電位としたものである。FET1の低電位基準点は、第2実施形態と同様にグランドである。このように、FET1の低電位基準点と駆動IC12の低電位基準点とが異なる電位であっても良い。上述のように、半導体素子がFET1に替えてSiCである場合、SiCの閾値電圧Vtはより低いので、駆動IC12の低電位基準点を負電位にすることで、オフ時のゲート電圧をソースよりも低い電圧にして確実にオフ状態にできる。
【0034】
(その他の実施形態)
ハイサイドスイッチ及び充電用ゲート抵抗の組数や、放電用ゲート抵抗及びローサイドスイッチの組数は、「2」又は「4」以上でも良い。
ハイサイドスイッチ、ローサイドスイッチのオン抵抗に必ずしも大小関係を設定する必要はなく、オン抵抗は同一でも良い。
【0035】
電圧検出部は、通電経路に発生する電圧を必ずしも差動により検出する必要はない。
逆流防止素子は、ハイサイドスイッチM1のソースにカソードが接続されるダイオードでも良い。
電圧駆動型の半導体素子はNチャネルMOSFETに限らず、PチャネルMOSFETやIGBT等でも良い。
本開示は、実施例に準拠して記述されたが、本開示は当該実施例や構造に限定されるものではないと理解される。本開示は、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態、さらには、それらに一要素のみ、それ以上、あるいはそれ以下、を含む他の組み合わせや形態をも、本開示の範疇や思想範囲に入るものである。
【符号の説明】
【0036】
図面中、1はNチャネルMOSFET、2はリーク電流検出部、3は差動増幅器、5は制御部、6は駆動IC、7は駆動回路、M1~M3はハイサイドスイッチ、R1~R3は充電用ゲート抵抗を示す。