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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024132352
(43)【公開日】2024-10-01
(54)【発明の名称】電子部品
(51)【国際特許分類】
   H01F 27/29 20060101AFI20240920BHJP
   H01F 17/00 20060101ALI20240920BHJP
   H01G 4/005 20060101ALI20240920BHJP
   H01G 4/30 20060101ALI20240920BHJP
   H01G 4/228 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
H01F27/29 123
H01F17/00 C
H01G4/005
H01G4/30 516
H01G4/30 513
H01G4/228 A
H01G4/30 201F
H01G4/30 201G
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023043080
(22)【出願日】2023-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(72)【発明者】
【氏名】奥澤 信之
(72)【発明者】
【氏名】田久保 悠一
(72)【発明者】
【氏名】橋本 龍司
(72)【発明者】
【氏名】高橋 悠太
(72)【発明者】
【氏名】保坂 弘輝
【テーマコード(参考)】
5E001
5E070
5E082
【Fターム(参考)】
5E001AC01
5E001AF00
5E001AJ01
5E070AA01
5E070CB15
5E070EA01
5E070EB04
5E082AA01
5E082GG01
5E082GG11
5E082GG21
(57)【要約】      (修正有)
【課題】外部電極の電極層のはんだ食われを抑制できる電子部品を提供する。
【解決手段】電子部品の主面2aと直交するZ軸方向において、電極層11の主面11aは、開口部20において主面2aを仮想的に延長した仮想平面21よりも素体2の内側に配置される。これにより、電極層11は、素体2の主面2aに対して素体2の内側へ向かって奥まった位置に形成される。これに対し、メッキ層10は、電極層11の主面11a上に形成されると共に、仮想平面21から素体2の主面2aまで及ぶように、電極層11を覆う。そのため、素体2内の電極層11の主面11aと、メッキ層10の表面との間の距離がいずれの箇所においても十分に確保される。メッキ層10の剥がれが発生した場合などに電極層11が露出することを抑制できる。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
実装面である主面を有する素体と、
前記素体の開口部の内部に埋め込まれた電極層、及び前記電極層上に形成されるメッキ層を有する一対の外部電極と、を備え、
前記主面と直交する第1の方向において、前記電極層の主面は、前記開口部において前記主面を仮想的に延長した仮想平面よりも前記素体の内側に配置され、
前記メッキ層は、前記電極層の主面上に形成されると共に、前記仮想平面から前記素体の主面まで及ぶように、前記電極層を覆う、電子部品。
【請求項2】
前記素体は、前記第1の方向に直交する第2の方向に対向する一対の端面と、前記第1の方向及び前記第2の方向と直交する第3の方向に対向する一対の側面と、を有し、
前記第1の方向から見て、前記一対の端面と前記外部電極との間、及び前記一対の側面と前記外部電極との間には、前記素体が配置される、請求項1に記載の電子部品。
【請求項3】
前記メッキ層は、前記電極層の両側において前記素体の前記主面まで延在する、請求項1に記載の電子部品。
【請求項4】
前記メッキ層は、Niを含有する第1の層と、前記第1の層上に形成されAuを含有する第2の層と、を有する、請求項1に記載の電子部品。
【請求項5】
前記第1の層は、前記第2の層より厚い、請求項4に記載の電子部品。
【請求項6】
前記電極層は、前記主面の縁部において、前記第1の方向における前記素体の内側へ向かい、
前記電極層の前記縁部と前記素体との間に前記第1の層が介在する、請求項4に記載の電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
素体と、当該素体の主面に形成した外部電極と、を備える電子部品が知られている(例えば、特許文献1)。特許文献1において、電子部品は、素体内に形成されたコイル部を有する。この電子部品の外部電極は、はんだを介して他の電子機器の端子に接合される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-113299号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような構成を有する電子部品では、外部電極は、電極層と、当該電極層の表面にメッキ処理によって形成されたメッキ層と、を有する。実装時には、メッキ層にはんだが塗布された状態で、他の電子機器の端子に接合される。しかしながら、外部電極の中には、メッキ層が薄くなることで、はんだが電極層に到達してしまう箇所が発生する可能性がある。この場合、当該箇所において電極層のはんだ食われが発生するという問題があった。
【0005】
本発明の一態様は、外部電極の電極層のはんだ食われを抑制できる電子部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一つの態様における電子部品は、実装面である主面を有する素体と、素体の開口部の内部に埋め込まれた電極層、及び電極層上に形成されるメッキ層を有する一対の外部電極と、を備え、主面と直交する第1の方向において、電極層の主面は、開口部において主面を仮想的に延長した仮想平面よりも素体の内側に配置され、メッキ層は、電極層の主面上に形成されると共に、仮想平面から素体の主面まで及ぶように、電極層を覆う。
【0007】
電子部品は、素体の開口部の内部に埋め込まれた電極層、及び電極層上に形成されるメッキ層を有する一対の外部電極を有する。外部電極をはんだ付けによって他の電子機器に実装するときには、電極層とはんだとの間にメッキ層が介在する。従って、メッキ層が、電極層のはんだ食われを抑制することができる。ここで、主面と直交する第1の方向において、電極層の主面は、開口部において主面を仮想的に延長した仮想平面よりも素体の内側に配置される。これにより、電極層は、素体の主面に対して素体の内側へ向かって奥まった位置に形成される。これに対し、メッキ層は、電極層の主面上に形成されると共に、仮想平面から素体の主面まで及ぶように、電極層を覆う。そのため、素体内の電極層の主面と、メッキ層の表面との間の距離がいずれの箇所においても十分に確保される。メッキ層の剥がれが発生した場合などに電極層が露出することを抑制できる。以上より、外部電極の電極層のはんだ食われを抑制できる。
【0008】
素体は、第1の方向に直交する第2の方向に対向する一対の端面と、第1の方向及び第2の方向と直交する第3の方向に対向する一対の側面と、を有し、第1の方向から見て、一対の端面と外部電極との間、及び一対の側面と外部電極との間には、素体が配置されてよい。この場合、素体内の電極層に対して、素体の側面側及び端面側からはんだが浸入することを抑制できる。
【0009】
メッキ層は、電極層の両側において素体の主面まで延在してよい。この場合、メッキ層によって、素体の開口部の縁部付近の主面ごと、電極層を覆うことができる。これにより、開口部の縁部付近において電極層が露出することを抑制することができる。
【0010】
メッキ層は、Niを含有する第1の層と、第1の層上に形成されAuを含有する第2の層と、を有してよい。この場合、表面側の第2の層によって、はんだと外部電極との接合性を向上できる。
【0011】
第1の層は、第2の層より厚くてよい。この場合、Auの量を抑制することでコストの増加を抑制できる。
【0012】
電極層は、主面の縁部において、第1の方向における素体の内側へ向かい、電極層の縁部と素体との間に第1の層が介在してよい。この場合、電極層の主面の縁部において、第1の層の厚みを確保することができる。これにより、メッキ層の剥がれを抑制することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、外部電極の電極層のはんだ食われを抑制できる電子部品を提供する電子部品を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本実施形態における電子部品の斜視図である。
図2図2(a)は、図1のIIa-IIa線に沿った断面図であり、図2(b)は、図1のIIb-IIb線に沿った断面図であり、図2(c)は、図1のIIc-IIc線に沿った断面図である。
図3】電子部品の平面図である。
図4図2(c)の拡大図である。
図5】電子部品の製造方法を示す概略図である。
図6】ハンダ実装時の様子を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の実施形態が詳細に説明される。図面の説明において、同一又は同等の要素には同一符号が用いられ、重複する説明は省略される。
【0016】
まず、図1図3を参照して、本実施形態における電子部品1の概略構成を説明する。図1は、本実施形態における電子部品1の斜視図である。図2(a)は、図1のIIa-IIa線に沿った断面図である。図2(b)は、図1のIIb-IIb線に沿った断面図である。図2(c)は、図1のIIc-IIc線に沿った断面図である。図3(a)は、電子部品1の平面図であり、図3(b)は、図2(c)の拡大図である。本実施形態における電子部品は、複数の層をZ軸方向に積層することによって形成されている。層間の境界は、視認できない程度に一体化されている。本実施形態において、X軸方向、Y軸方向、及び、Z軸方向は、互いに直交している。Z軸方向が請求項における「第1の方向」に該当し、Z軸方向と直交するX軸方向が請求項における「第2の方向」に該当し、Z軸方向及びX軸方向と直交するY軸方向が請求項における「第3の方向」に該当する。
【0017】
図1に示すように、電子部品1は、素体2と、外部電極3A,3Bと、を備える。
【0018】
素体2は、直方体形状を呈している。素体2は、その外表面として、Z軸方向に互いに対向する主面2a,2bと、X軸方向に互いに対向する一対の端面2c及び端面2dと、Y軸方向に互いに対向する一対の側面2e及び側面2fと、を有する。主面2aはZ軸方向の正側に配置され、主面2bはZ軸方向の負側に配置される。端面2cはX軸方向の正側に配置され、端面2dはX軸方向の負側に配置される。側面2eはY軸方向の正側に配置され、側面2fはY軸方向の負側に配置される。主面2aは、例えば電子部品1を図示しない他の電子機器(例えば、回路基板又は電子部品)に実装する際、他の電子機器と対向する実装面として規定される。
【0019】
外部電極3A,3Bは、素体2の主面2aに形成される。また、外部電極3A,3Bは、素体2内の後述のコイル部に電気的に接続される。電子部品1を電子機器へ実装する際には、外部電極3A,3Bをハンダ付けなどによって、電子機器の端子へ接合する。
【0020】
図2に示されるように、電子部品1は、素体2の内部に、コイル部4と、引出部6A,6Bと、を備える。コイル部4は、素体2内において、複数のコイル導体7によってコイルのパターンが形成された部分である。なお、引出部6A,6Bもコイル導体7の一部である。本実施形態では、コイル部4は、Y軸方向に平行な中心線CLを軸として巻回されたコイルである。
【0021】
コイル部4は、Y軸方向から見て矩形環状のパターンを形成するように巻回されている。コイル部4は、コイル導体7として、中心線CLに対してZ軸方向の正側に配置されてX軸方向に延びる第1の辺部8Aと、中心線CLに対してZ軸方向の負側に配置されてX軸方向に延びる第2の辺部8Bと、中心線CLに対してX軸方向の正側に配置されてZ軸方向に延びる第3の辺部8Cと、中心線CLに対してX軸方向の負側に配置されてZ軸方向の延びる第4の辺部8Dと、を有する。
【0022】
引出部6Aは、コイル部4の一方の端部からZ軸方向に延びて、外部電極3Aに接続される。引出部6Bは、コイル部4の他方の端部からZ軸方向に延びて、外部電極3Bに接続される。引出部6Aは、Y軸方向の最も負側に配置される第4の辺部8Dにおいて、Z軸方向の正側の端部に接続される。引出部6Bは、Y軸方向の最も正側に配置される第3の辺部8Cにおいて、Z軸方向の正側の端部に接続される。
【0023】
次に、図3及び図4を参照して、外部電極3A,3Bの詳細な構成について説明する。図3は、電子部品1の平面図である。図4は、図2(c)の拡大図である。なお、外部電極3Aと外部電極3Bとは、Z軸方向から見たときに、中心線CLを基準として線対称な関係にある。よって、以降は外部電極3Aの構成について説明し、外部電極3Bの説明を省略する。外部電極3Aは、電極層11と、メッキ層10と、を有する。
【0024】
図3に示すように、電極層11は、素体2の主面2a側に配置され、素体2内に埋まった状態で形成される層である(図4参照)。電極層11は、Y軸方向を長手方向とする長方形の形状を有する。電極層11は、主面11a,11b(図4参照)と、側面11c,11dと、端面11e,11fと、を有する。主面11a,11bは、Z軸方向に互いに対向する面である。主面11aは、Z軸方向の正側に配置される。主面11bは、Z軸方向の負側に配置される。側面11c,11dは、X軸方向において互いに対向する面である。側面11cは、X軸方向の正側に配置される。側面11dは、X軸方向の負側に配置される。端面11e,11fは、Y軸方向において互いに対向する面である。端面11eは、Y軸方向の正側に配置される。端面11fは、Y軸方向の負側に配置される。
【0025】
電極層11の側面11cは、中心線からX軸方向の負側に離間する位置に配置される。側面11dは、素体2の端面2dからX軸方向の正側に離間する位置に配置される。端面11eは、素体2の側面2eからY軸方向の負側に離間する位置に配置される。端面11fは、素体2の側面2fからY軸方向の正側に離間する位置に配置される。
【0026】
メッキ層10は、電極層11上に設けられる層である。メッキ層10は、Y軸方向を長手方向とする長方形の形状を有する。メッキ層10は、主面10a,10b(図4参照)と、側面10c,10dと、端面10e,10fと、を有する。主面10a,10bは、Z軸方向に互いに対向する面である。主面10aは、Z軸方向の正側に配置される。主面10bは、Z軸方向の負側に配置される。側面10c,10dは、X軸方向において互いに対向する面である。側面10cは、X軸方向の正側に配置される。側面10dは、X軸方向の負側に配置される。端面10e,10fは、Y軸方向において互いに対向する面である。端面10eは、Y軸方向の正側に配置される。端面10fは、Y軸方向の負側に配置される。
【0027】
メッキ層10は、電極層11を覆うとともに、メッキ層10の外縁が電極層11の外縁からはみ出るように設けられる。従って、メッキ層10の各面10c,10d,10e,10fは、電極層11の各面11c,11d,11e,11fよりも外周側に配置される。また、メッキ層10の側面10cは、中心線からX軸方向の負側に離間する位置に配置される。側面10dは、素体2の端面2dからX軸方向の正側に離間する位置に配置される。端面10eは、素体2の側面2eからY軸方向の負側に離間する位置に配置される。端面10fは、素体2の側面2fからY軸方向の正側に離間する位置に配置される。このような構成により、Z軸方向から見て、一対の端面2c,2dと外部電極3A,3Bとの間、及び一対の側面2e,2fと外部電極3A,3Bとの間には、素体2が配置される。
【0028】
メッキ層10は、素体2の主面2aから露出する層である。メッキ層10において、少なくともZ軸方向の正側の主面10aが素体2の主面2aから露出する。また、本実施形態では、側面10c,10d及び端面10e,10fも主面2aから露出する(図4参照)。
【0029】
図4を参照して、外部電極3Aについて更に詳細に説明する。素体2の主面2aには、Z軸方向の負側へ向かって窪む開口部20が形成されている。開口部20において主面2aを仮想的に延長した平面を仮想平面21とする。図4において、仮想平面21は二点鎖線で示されている。仮想平面21は、Z軸方向から見たときに、電極層11と同様の長方形をなしている(図3参照)。
【0030】
Z軸方向において、電極層11の主面11aは、仮想平面21よりも素体2の内側に配置される。すなわち、電極層11の主面11aは、仮想平面21よりもZ軸方向における負側の位置に配置される。主面11aと仮想平面21との間のZ軸方向における離間距離は特に限定されないが、例えば、0.1~5.0μm程度であってよい。
【0031】
電極層11は、主面11aの縁部において、Z軸方向における素体2の内側(負側)へ向かう。主面11aの縁部には、外周側へ向かうに従って、Z軸方向の負側へ向かう窪み25が形成される。
【0032】
メッキ層10は、電極層11の主面11a上に形成されると共に、仮想平面21から素体2の主面2aまで及ぶように、電極層11を覆う。メッキ層10は、素体2の主面2aから仮想平面21を介して開口部20内へ入り込み、Z軸方向の負側へ向かって延びることで、電極層11のZ軸方向の正側の主面11aまで及んでいる。メッキ層10のZ軸方向の負側の主面10bは、電極層11のZ軸方向の正側の主面11aに接合される。メッキ層10は、仮想平面21、すなわち主面2aよりもZ軸方向における正側まで突出する。従って、メッキ層10のZ軸方向の正側の主面10aは、仮想平面21及び主面2aよりもZ軸方向の正側へ離間した位置に配置される。
【0033】
また、メッキ層10は、電極層11の両側において素体2の主面2aまで延在する。メッキ層10は、X軸方向における電極層11の両側において素体2の主面2aまで延在する。メッキ層10は、Y軸方向における電極層11の両側において素体2の主面2aまで延在する。メッキ層10は、Z軸方向からみて、電極層11よりもX軸方向の両側及びY軸方向の両側へはみ出る拡張部23を有する。これにより、主面2aのうち、仮想平面21の四方の辺部付近の縁部は、メッキ層10の拡張部23で覆われる。なお、拡張部23の寸法L1は、特に限定されないが、0.5~5μm程度であってよい。
【0034】
メッキ層10は、Niを含有する第1の層26と、第1の層26上に形成されAuを含有する第2の層27と、を有する。第1の層26は、開口部20に入り込むと共に、当該開口部20からはみ出ることで上述の拡張部23を形成する。また、電極層11の縁部の窪み25と素体2との間に第1の層26が介在する。
【0035】
第2の層27は、第1の層26において主面2aから露出している表面を覆う。これにより、第2の層27は、メッキ層10の主面10a、側面10c,10d、及び端面10e,10f(図3参照)を形成する。なお、電極層11はCuを含有してよい。ただし、メッキ層10及び電極層11の材料は、上述で例示したものに限定されない。
【0036】
第1の層26は、第2の層27より厚い。第1の層26の厚みt1は、1.0~5.0μm程度であってよい。第2の層27の厚みt2は、0.03~1.5μm程度であってよい。
【0037】
次に、図5を参照して、電子部品1の製造方法について説明する。
【0038】
まず、図5(a)に示すように、素体2の一部となるベース部材30を準備し、当該ベース部材30の上面に素体2の材料を塗布して絶縁層31Aを形成する。絶縁層31Aの上面に、コイル導体7の第2の辺部8Bを形成する。第2の辺部8Bは、絶縁層31Aの上面に電極膜を形成し、レジストを用いて露光し、導体にメッキを行った後でレジストを剥離して、エッチングを行うことで形成される。なお、以降のコイル導体7の形成においては、同趣旨の工程が実行される。
【0039】
次に、図5(b)に示すように、第2の辺部8Bを絶縁層31Bで埋めると共に、これらの上面を研磨する。次に、図5(c)に示すように、コイル導体7の辺部8C,8Dが立ち上がるように形成する。なお、辺部8C,8Dの形成は、コイル導体7の一部の形成と絶縁層で埋設する工程を複数回繰り返すことで実行されてよい。ここでは、図5(d)に示すように、絶縁層31C,31Dの二層分の工程を実行することで、辺部8C,8Dを形成している。その後、コイル導体7の第1の辺部8A及び絶縁層31Eを形成する。第1の辺部8Aに対して、引出部6A,6Bを形成し、当該引出部6A,6Bを埋める絶縁層31F(図5(e)参照)を形成する。
【0040】
次に、図5(e)に示すように、電極層11及び当該電極層11を埋める絶縁層31Gを形成する。これにより、素体2が完成する。絶縁層31Gを形成して研磨した段階では、素体2の主面2aと電極層11の主面11aは、同一面となっている。これに対し、Cuエッチングを実行することで、電極層11の主面11aを主面11aよりも低い位置に配置されるように処理する。そして、図5(f)に示すように、電極層11の主面11aにメッキ層10を形成する。これにより、外部電極3A,3Bが完成する。
【0041】
次に、本実施形態に係る電子部品1の作用・効果について説明する。
【0042】
電子部品1は、素体2の開口部20の内部に埋め込まれた電極層11、及び電極層11上に形成されるメッキ層10を有する一対の外部電極3A,3Bを有する。外部電極3A,3Bをはんだ付けによって他の電子機器に実装するときには、電極層11とはんだとの間にメッキ層10が介在する。従って、メッキ層10が、電極層11のはんだ食われを抑制することができる。ここで、主面2aと直交するZ軸方向において、電極層11の主面11aは、開口部20において主面2aを仮想的に延長した仮想平面21よりも素体2の内側に配置される。これにより、電極層11は、素体2の主面2aに対して素体2の内側へ向かって奥まった位置に形成される。これに対し、メッキ層10は、電極層11の主面11a上に形成されると共に、仮想平面21から素体2の主面2aまで及ぶように、電極層11を覆う。そのため、素体2内の電極層11の主面11aと、メッキ層10の表面との間の距離がいずれの箇所においても十分に確保される。メッキ層10の剥がれが発生した場合などに電極層11が露出することを抑制できる。以上より、外部電極3A,3Bの電極層11のはんだ食われを抑制できる。
【0043】
素体2は、X軸方向に対向する一対の端面2c,2dと、Y軸方向に対向する一対の側面2e,2fと、を有し、Z軸方向から見て、一対の端面2c,2dと外部電極3A,3Bとの間、及び一対の側面2e,2fと外部電極3A,3Bとの間には、素体2が配置されてよい。この場合、素体2内の電極層11に対して、素体2の側面2e,2d側及び端面2c,2d側からはんだが浸入することを抑制できる。
【0044】
メッキ層10は、電極層11の両側において素体2の主面2aまで延在してよい。この場合、メッキ層10によって、素体2の開口部20の縁部付近の主面2aごと、電極層11を覆うことができる。これにより、開口部20の縁部付近において電極層11が露出することを抑制することができる。
【0045】
メッキ層10は、Niを含有する第1の層26と、第1の層26上に形成されAuを含有する第2の層27と、を有してよい。この場合、表面側の第2の層27によって、はんだと外部電極3A,3Bとの接合性を向上できる。
【0046】
第1の層26は、第2の層27より厚くてよい。この場合、Auの量を抑制することでコストの増加を抑制できる。
【0047】
電極層11は、主面11aの縁部において、Z軸方向における素体2の内側へ向かい、電極層11の縁部と素体2との間に第1の層26が介在してよい。この場合、電極層11の主面11aの縁部において、第1の層26の厚みを確保することができる。これにより、メッキ層10の剥がれを抑制することができる。
【0048】
図6(b)は、比較例に係る電子部品100の外部電極3Aにハンダ50を実装した様子を示す概略図である。図6(b)に示すように、比較例においては、電極層11が素体2の主面2a上に形成され、その電極層11の周囲にメッキ層10が形成される。このような構成では、外部電極3Aの付け根部分(図中の「A2」)にて素体2上のメッキ層10の密着性が低いため、メッキ層10の剥がれが生じ易い。また、メッキ層10の剥がれが生じた場合に、電極層11が露出し易くなる。そのため、ハンダ50の実装時に電極層11のハンダ食われが発生する。
【0049】
図6(a)は、本実施形態の電子部品1の外部電極3Aにハンダ50を実装した様子を示す概略図である。図6(a)に示すように、メッキ層10が電極層11に対して蓋をする様に形成される。図において「A1」で示すように、外部電極3Aの外縁付近において、電極層11と外部との間に、十分な厚みのメッキ層10が形成される。このため、ハンダ50の実装時にメッキ層10が剥がれても電極層11が露出しづらくなるためハンダ食われが低減される。
【0050】
本発明は、上述の実施形態に限定されるものではない。
【0051】
例えば、上述の実施形態では、電極層11の四方の辺部の全てからメッキ層10が主面2aへ延びていたが、少なくとも一つの辺部から主面2aへ延びていればよい。
【0052】
メッキ層10の層構造は、上述の実施形態のものに限定されない。
【0053】
[形態1]
実装面である主面を有する素体と、
前記素体の開口部の内部に埋め込まれた電極層、及び前記電極層上に形成されるメッキ層を有する一対の外部電極と、を備え、
前記主面と直交する第1の方向において、前記電極層の主面は、前記開口部において前記主面を仮想的に延長した仮想平面よりも前記素体の内側に配置され、
前記メッキ層は、前記電極層の主面上に形成されると共に、前記仮想平面から前記素体の主面まで及ぶように、前記電極層を覆う、電子部品。
[形態2]
前記素体は、前記第1の方向に直交する第2の方向に対向する一対の端面と、前記第1の方向及び前記第2の方向と直交する第3の方向に対向する一対の側面と、を有し、
前記第1の方向から見て、前記一対の端面と前記外部電極との間、及び前記一対の側面と前記外部電極との間には、前記素体が配置される、請求項1に記載の電子部品。
[形態3]
前記メッキ層は、前記電極層の両側において前記素体の前記主面まで延在する、形態1又は2に記載の電子部品。
[形態4]
前記メッキ層は、Niを含有する第1の層と、前記第1の層上に形成されAuを含有する第2の層と、を有する、形態1~3の何れか一項に記載の電子部品。
[形態5]
前記第1の層は、前記第2の層より厚い、形態4に記載の電子部品。
[形態6]
前記電極層は、前記主面の縁部において、前記第1の方向における前記素体の内側へ向かい、
前記電極層の前記縁部と前記素体との間に前記第1の層が介在する、形態4又は5に記載の電子部品。
【符号の説明】
【0054】
1…電子部品、2…素体、3A,3B…外部電極、10…メッキ層、11…電極層、26…第1の層、27…第2の層。
図1
図2
図3
図4
図5
図6