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特開2024-132353表示装置用マザー基板、表示装置、及び、表示装置の製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024132353
(43)【公開日】2024-10-01
(54)【発明の名称】表示装置用マザー基板、表示装置、及び、表示装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H10K 59/122 20230101AFI20240920BHJP
   H10K 50/805 20230101ALI20240920BHJP
   H10K 71/16 20230101ALI20240920BHJP
   H10K 77/10 20230101ALI20240920BHJP
   G09F 9/30 20060101ALI20240920BHJP
   H10K 59/131 20230101ALI20240920BHJP
   H10K 59/12 20230101ALI20240920BHJP
   H10K 59/173 20230101ALI20240920BHJP
   H10K 59/179 20230101ALI20240920BHJP
   H10K 50/84 20230101ALI20240920BHJP
   G09F 9/00 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
H10K59/122
H10K50/805
H10K71/16
H10K77/10
G09F9/30 310
G09F9/30 365
H10K59/131
H10K59/12
H10K59/173
H10K59/179
H10K50/84
G09F9/00 338
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023043081
(22)【出願日】2023-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】502356528
【氏名又は名称】株式会社ジャパンディスプレイ
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】飯澤 和美
(72)【発明者】
【氏名】高崎 良太
(72)【発明者】
【氏名】柳澤 昌
【テーマコード(参考)】
3K107
5C094
5G435
【Fターム(参考)】
3K107AA01
3K107BB01
3K107CC21
3K107CC45
3K107DD11
3K107DD21
3K107DD26
3K107DD89
3K107DD97
3K107EE48
3K107GG04
3K107GG11
3K107GG12
3K107GG28
3K107GG52
5C094AA31
5C094AA42
5C094BA27
5C094EB10
5C094EC04
5C094EC10
5C094HA05
5C094HA08
5G435BB05
5G435HH14
5G435KK05
(57)【要約】
【課題】信頼性の低下を抑制する。
【解決手段】一実施形態によれば、表示装置用マザー基板は、直線状の第1辺を有する基板と、複数のパネル部と、前記パネル部よりも外側の余白部と、前記余白部に配置された第1下部と、前記第1下部の上に配置され前記第1下部の側面から突出した第1上部と、を有する第1隔壁と、を備え、前記第1隔壁は、前記第1辺の延出方向に対して直交しない形状を有している。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直線状の第1辺を有する基板と、
複数のパネル部と、
前記パネル部よりも外側の余白部と、
前記余白部に配置された第1下部と、前記第1下部の上に配置され前記第1下部の側面から突出した第1上部と、を有する第1隔壁と、を備え、
前記第1隔壁は、前記第1辺の延出方向に対して直交しない形状を有している、表示装置用マザー基板。
【請求項2】
前記パネル部の各々は、
導電材料で形成された第2下部と、前記第2下部の上に配置され前記第2下部の側面から突出した第2上部と、を有する第2隔壁と、
前記第2隔壁で囲まれた下電極と、
前記下電極の上に配置され発光層を含む有機層と、
前記有機層を覆い前記第2隔壁の前記第2下部に接触する上電極と、
を備えている、請求項1に記載の表示装置用マザー基板。
【請求項3】
さらに、前記パネル部及び前記余白部に亘って配置され、前記下電極に重なる開口を有する無機絶縁層を備え、
前記第1隔壁及び前記第2隔壁は、前記無機絶縁層の上に配置されている、請求項2に記載の表示装置用マザー基板。
【請求項4】
前記第1隔壁は、線状に形成された複数のセグメントを有している、請求項1に記載の表示装置用マザー基板。
【請求項5】
前記第1辺の延出方向に並んだ第1セグメント及び第2セグメントは、互いに異なる方向に延出し、
前記第1辺の延出方向に直交する方向に並んだ前記第1セグメント及び第3セグメントは、互いに異なる方向に延出している、請求項4に記載の表示装置用マザー基板。
【請求項6】
前記第1辺の延出方向に並んだ第1セグメント及び第2セグメントは、互いに異なる方向に延出し、
前記第1辺の延出方向に直交する方向に並んだ前記第1セグメント及び第3セグメントは、互いに平行である、請求項4に記載の表示装置用マザー基板。
【請求項7】
前記第1隔壁は、独立したループ状に形成されている、請求項1に記載の表示装置用マザー基板。
【請求項8】
前記第1隔壁は、多角形状に形成され、前記第1辺の延出方向に交差する少なくとも1つの辺を有している、請求項7に記載の表示装置用マザー基板。
【請求項9】
前記第1隔壁は、円形状に形成されている、請求項7に記載の表示装置用マザー基板。
【請求項10】
前記第1隔壁は、格子状に形成されている、請求項1に記載の表示装置用マザー基板。
【請求項11】
前記第1隔壁は、前記第1辺の延出方向に交差する少なくとも1つの辺を有している、請求項10に記載の表示装置用マザー基板。
【請求項12】
前記第1隔壁は、少なくとも1つの円弧部を有している、請求項10に記載の表示装置用マザー基板。
【請求項13】
画像を表示する表示領域と、
前記表示領域よりも外側の周辺領域と、
前記周辺領域において、一方向に並んだ複数の端子と、
前記周辺領域に配置された第1下部と、前記第1下部の上に配置され前記第1下部の側面から突出した第1上部と、を有する第1隔壁と、を備え、
前記第1隔壁は、前記複数の端子の並び方向、及び、前記並び方向に直交する垂線方向の少なくとも一方に対して直交しない形状を有している、表示装置。
【請求項14】
さらに、
前記表示領域に配置され、導電材料で形成された第2下部と、前記第2下部の上に配置され前記第2下部の側面から突出した第2上部と、を有する第2隔壁と、
前記第2隔壁で囲まれた下電極と、
前記下電極の上に配置され発光層を含む有機層と、
前記有機層を覆い前記第2隔壁の前記第2下部に接触する上電極と、
を備えている、請求項13に記載の表示装置。
【請求項15】
さらに、前記表示領域及び前記周辺領域に亘って配置され、前記下電極に重なる開口を有する無機絶縁層を備え、
前記第1隔壁及び前記第2隔壁は、前記無機絶縁層の上に配置されている、請求項14に記載の表示装置。
【請求項16】
前記第1隔壁は、線状に延出した複数のセグメントを有している、請求項13に記載の表示装置。
【請求項17】
前記第1隔壁は、独立したループ状に形成されている、請求項13に記載の表示装置。
【請求項18】
前記第1隔壁は、格子状に形成されている、請求項13に記載の表示装置。
【請求項19】
画像を表示する表示領域において、下電極を形成し、
前記表示領域及び前記表示領域よりも外側の周辺領域に亘り、無機絶縁層を形成し、
前記周辺領域において、前記無機絶縁層の上に位置する第1下部と、前記第1下部の上に位置し前記第1下部の側面から突出した第1上部と、を有する第1隔壁を形成し、
レジストを塗布し、
前記第1隔壁は、前記レジストの塗布方向に対して直交しない形状を有している、表示装置の製造方法。
【請求項20】
前記レジストを塗布する前に、前記表示領域において、前記無機絶縁層の上に位置する第2下部と、前記第2下部の上に位置し前記第2下部の側面から突出した第2上部と、を有する第2隔壁を形成し、
前記レジストを塗布した後に、前記レジストをパターニングし、
前記レジストをマスクとしたエッチングを行い、前記下電極に重なる前記無機絶縁層に開口を形成し、
前記第2隔壁をマスクとした蒸着を行い、前記下電極の上に発光層を含む有機層を形成し、
前記第2隔壁をマスクとした蒸着を行い、前記有機層を覆い前記第2隔壁の前記第2下部に接触する上電極を形成する、
請求項19に記載の表示装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、表示装置用マザー基板、表示装置、及び、表示装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、表示素子として有機発光ダイオード(OLED)を適用した表示装置が実用化されている。この表示素子は、薄膜トランジスタを含む画素回路と、画素回路に接続された下電極と、下電極を覆う有機層と、有機層を覆う上電極と、を備えている。有機層は、発光層の他に、正孔輸送層や電子輸送層などの機能層を含んでいる。
このような表示素子を製造する過程において、信頼性の低下を抑制する技術が必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000-195677号公報
【特許文献2】特開2004-207217号公報
【特許文献3】特開2008-135325号公報
【特許文献4】特開2009-32673号公報
【特許文献5】特開2010-118191号公報
【特許文献6】国際公開第2018/179308号
【特許文献7】米国特許出願公開第2022/0077251号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、信頼性の低下を抑制することが可能な表示装置用マザー基板、表示装置、及び、表示装置の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一実施形態によれば、表示装置用マザー基板は、
直線状の第1辺を有する基板と、複数のパネル部と、前記パネル部よりも外側の余白部と、前記余白部に配置された第1下部と、前記第1下部の上に配置され前記第1下部の側面から突出した第1上部と、を有する第1隔壁と、を備え、前記第1隔壁は、前記第1辺の延出方向に対して直交しない形状を有している。
【0006】
一実施形態によれば、表示装置は、
画像を表示する表示領域と、前記表示領域よりも外側の周辺領域と、前記周辺領域において、一方向に並んだ複数の端子と、前記周辺領域に配置された第1下部と、前記第1下部の上に配置され前記第1下部の側面から突出した第1上部と、を有する第1隔壁と、を備え、前記第1隔壁は、前記複数の端子の並び方向、及び、前記並び方向に直交する垂線方向の少なくとも一方に対して直交しない形状を有している。
【0007】
一実施形態によれば、表示装置の製造方法は、
画像を表示する表示領域において、下電極を形成し、前記表示領域及び前記表示領域よりも外側の周辺領域に亘り、無機絶縁層を形成し、前記周辺領域において、前記無機絶縁層の上に位置する第1下部と、前記第1下部の上に位置し前記第1下部の側面から突出した第1上部と、を有する第1隔壁を形成し、レジストを塗布し、前記第1隔壁は、前記レジストの塗布方向に対して直交しない形状を有している。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、表示装置DSPの構成例を示す図である。
図2図2は、副画素SP1、SP2、SP3のレイアウトの一例を示す図である。
図3図3は、図2中のA-B線に沿う表示装置DSPの概略的な断面図である。
図4図4は、表示装置用マザー基板100の一例を示す平面図である。
図5図5は、図4におけるC-D線に沿う表示装置用マザー基板100の断面図である。
図6図6は、表示装置DSPの製造方法を説明するための図である。
図7図7は、表示装置DSPの製造方法を説明するための図である。
図8図8は、表示装置DSPの製造方法を説明するための図である。
図9図9は、レジストR1の塗布方向DXを説明するための図である。
図10図10は、レジストR1の塗布方向DYを説明するための図である。
図11図11は、表示装置DSPの製造方法を説明するための図である。
図12図12は、表示装置DSPの製造方法を説明するための図である。
図13図13は、表示装置DSPの製造方法を説明するための図である。
図14図14は、表示装置DSPの製造方法を説明するための図である。
図15図15は、表示装置DSPの製造方法を説明するための図である。
図16図16は、表示装置DSPの製造方法を説明するための図である。
図17図17は、表示装置DSPの製造方法を説明するための図である。
図18図18は、隔壁7の他の構成例を示す図である。
図19図19は、隔壁7の他の構成例を示す図である。
図20図20は、隔壁7の他の構成例を示す図である。
図21図21は、隔壁7を備えていない比較例を説明するための断面図である。
図22図22は、隔壁7を備えた実施形態を説明するための断面図である。
図23図23は、隔壁7の他の構成例を示す図である。
図24図24は、隔壁7の他の構成例を示す図である。
図25図25は、隔壁7の他の構成例を示す図である。
図26図26は、隔壁7の他の構成例を示す図である。
図27図27は、隔壁7の他の構成例を示す図である。
図28図28は、隔壁7の他の構成例を示す図である。
図29図29は、隔壁7の他の構成例を示す図である。
図30図30は、隔壁7の他の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
一実施形態について図面を参照しながら説明する。
開示はあくまで一例に過ぎず、当業者において、発明の主旨を保っての適宜変更について容易に想到し得るものについては、当然に本発明の範囲に含有されるものである。また、図面は、説明をより明確にするため、実際の態様に比べて、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同一または類似した機能を発揮する構成要素には同一の参照符号を付し、重複する詳細な説明を適宜省略することがある。
【0010】
なお、図面には、必要に応じて理解を容易にするために、互いに直交するX軸、Y軸およびZ軸を記載する。X軸に沿った方向を第1方向Xと称し、Y軸に沿った方向を第2方向Yと称し、Z軸に沿った方向を第3方向Zと称する。第3方向Zと平行に各種要素を見ることを平面視という。
【0011】
本実施形態に係る表示装置は、表示素子として有機発光ダイオード(OLED)を備える有機エレクトロルミネッセンス表示装置であり、テレビ、パーソナルコンピュータ、車載機器、タブレット端末、スマートフォン、携帯電話端末等に搭載され得る。
【0012】
図1は、表示装置DSPの構成例を示す図である。
【0013】
表示装置DSPは、絶縁性の基板10の上に、画像を表示する表示領域DAと、表示領域DAよりも外側の周辺領域SAと、を有する表示パネルPNLを備えている。基板10は、ガラスであってもよいし、可撓性を有する樹脂フィルムであってもよい。
【0014】
本実施形態においては、平面視における基板10の形状が長方形である。ただし、基板10の平面視における形状は長方形に限らず、正方形、円形あるいは楕円形などの他の形状であってもよい。
【0015】
表示領域DAは、第1方向X及び第2方向Yにマトリクス状に配列された複数の画素PXを備えている。画素PXは、複数の副画素SPを含む。一例では、画素PXは、第1色の副画素SP1、第2色の副画素SP2、及び、第3色の副画素SP3を含む。第1色、第2色、及び、第3色は、互いに異なる色である。なお、画素PXは、副画素SP1、SP2、SP3とともに、あるいは副画素SP1、SP2、SP3のいずれかに代えて、白色などの他の色の副画素SPを含んでもよい。
【0016】
副画素SPは、画素回路1と、画素回路1によって駆動される表示素子20と、を備えている。画素回路1は、画素スイッチ2と、駆動トランジスタ3と、キャパシタ4と、を備えている。画素スイッチ2及び駆動トランジスタ3は、例えば薄膜トランジスタにより構成されたスイッチング素子である。
【0017】
画素スイッチ2のゲート電極は、走査線GLに接続されている。画素スイッチ2のソース電極及びドレイン電極の一方は信号線SLに接続され、他方は駆動トランジスタ3のゲート電極及びキャパシタ4に接続されている。駆動トランジスタ3において、ソース電極及びドレイン電極の一方は電源線PL及びキャパシタ4に接続され、他方は表示素子20のアノードに接続されている。
【0018】
なお、画素回路1の構成は図示した例に限らない。例えば、画素回路1は、より多くの薄膜トランジスタ及びキャパシタを備えてもよい。
【0019】
表示素子20は、発光素子としての有機発光ダイオード(OLED)であり、有機EL素子と称する場合がある。
【0020】
周辺領域SAは、ICチップやフレキシブルプリント回路基板を接続するための複数の端子TEを有している。複数の端子TEは、一方向に並んでいる。図示した例では、複数の端子TEは、第1方向Xに沿って並んでいる。端子TEが並ぶ並び方向ADは、例えば、各端子TEの中心を通る線分と平行な方向である。並び方向ADは第1方向Xに平行であり、並び方向ADに直交する垂線方向PDは第2方向Yに平行である。
また、図示した例では、端子TEの各々は、いずれも第2方向Yに延出しているが、これに限らない。例えば、複数の端子TEのうちの一部が、斜め方向に延出していてもよい。
【0021】
図2は、副画素SP1、SP2、SP3のレイアウトの一例を示す図である。
【0022】
図2の例においては、副画素SP2及び副画素SP3が第2方向Yに並んでいる。副画素SP1及び副画素SP2が第1方向Xに並び、副画素SP1及び副画素SP3が第1方向Xに並んでいる。
【0023】
副画素SP1、SP2、SP3がこのようなレイアウトである場合、表示領域DAには、副画素SP2及び副画素SP3が第2方向Yに交互に配置された列と、複数の副画素SP1が第2方向Yに配置された列とが形成される。これらの列は、第1方向Xに交互に並ぶ。
【0024】
なお、副画素SP1、SP2、SP3のレイアウトは図2の例に限られない。他の一例として、各画素PXにおける副画素SP1、SP2、SP3が第1方向Xに順に並んでいてもよい。
【0025】
表示領域DAには、無機絶縁層5及び隔壁6が配置されている。無機絶縁層5は、副画素SP1、SP2、SP3においてそれぞれ開口AP1、AP2、AP3を有している。これらの開口AP1、AP2、AP3を有する無機絶縁層5は、リブと称する場合がある。
隔壁6は、平面視において無機絶縁層5と重なっている。隔壁6は、開口AP1、AP2、AP3を囲う格子状に形成されている。隔壁6は、無機絶縁層5と同様に副画素SP1、SP2、SP3において開口を有するということもできる。
【0026】
副画素SP1、SP2、SP3は、表示素子20として、それぞれ表示素子201、202、203を備えている。
副画素SP1の表示素子201は、開口AP1とそれぞれ重なる下電極LE1、上電極UE1、及び、有機層OR1を備えている。下電極LE1の周縁部は、無機絶縁層5で覆われている。下電極LE1、有機層OR1、及び、上電極UE1を備える表示素子201は、平面視において隔壁6で囲まれている。有機層OR1及び上電極UE1のそれぞれの周縁部は、平面視において無機絶縁層5に重なっている。有機層OR1は、例えば青波長域の光を放つ発光層を含む。
【0027】
副画素SP2の表示素子202は、開口AP2とそれぞれ重なる下電極LE2、上電極UE2、及び、有機層OR2を備えている。下電極LE2の周縁部は、無機絶縁層5で覆われている。下電極LE2、有機層OR2、及び、上電極UE2を備える表示素子202は、平面視において隔壁6で囲まれている。有機層OR2及び上電極UE2のそれぞれの周縁部は、平面視において無機絶縁層5に重なっている。有機層OR2は、例えば緑波長域の光を放つ発光層を含む。
【0028】
副画素SP3の表示素子203は、開口AP3とそれぞれ重なる下電極LE3、上電極UE3、及び、有機層OR3を備えている。下電極LE3の周縁部は、無機絶縁層5で覆われている。下電極LE3、有機層OR3、及び、上電極UE3を備える表示素子203は、平面視において隔壁6で囲まれている。有機層OR3及び上電極UE3のそれぞれの周縁部は、平面視において無機絶縁層5に重なっている。有機層OR3は、例えば赤波長域の光を放つ発光層を含む。
【0029】
図2の例においては、下電極LE1、LE2、LE3の外形は点線で示し、有機層OR1、OR2、OR3、及び、上電極UE1、UE2、UE3の外形は一点鎖線で示している。なお、図示した下電極、有機層、上電極のそれぞれの外形は、正確な形状を反映したものとは限らない。
【0030】
下電極LE1、LE2、LE3は、例えば、表示素子のアノードに相当する。上電極UE1、UE2、UE3は、表示素子のカソード、あるいは、共通電極に相当する。
【0031】
下電極LE1は、コンタクトホールCH1を通じて副画素SP1の画素回路1(図1参照)に接続されている。下電極LE2は、コンタクトホールCH2を通じて副画素SP2の画素回路1に接続されている。下電極LE3は、コンタクトホールCH3を通じて副画素SP3の画素回路1に接続されている。
【0032】
図2の例においては、開口AP1の面積、開口AP2の面積、及び、開口AP3の面積は、互いに異なる。開口AP1の面積が開口AP2の面積よりも大きく、開口AP2の面積が開口AP3の面積よりも大きい。換言すると、開口AP1から露出した下電極LE1の面積は開口AP2から露出した下電極LE2の面積よりも大きく、開口AP2から露出した下電極LE2の面積は開口AP3から露出した下電極LE3の面積よりも大きい。
【0033】
図3は、図2中のA-B線に沿う表示装置DSPの概略的な断面図である。
【0034】
回路層11は、基板10の上に配置されている。回路層11は、図1に示した画素回路1などの各種回路と、走査線GL、信号線SL、電源線PLなどの各種配線と、を含む。回路層11は、絶縁層12により覆われている。絶縁層12は、回路層11により生じる凹凸を平坦化する有機絶縁層である。
【0035】
下電極LE1、LE2、LE3は、絶縁層12の上に配置され、互いに離間している。無機絶縁層5は、絶縁層12及び下電極LE1、LE2、LE3の上に配置されている。無機絶縁層5の開口AP1は下電極LE1に重なり、開口AP2は下電極LE2に重なり、開口AP3は下電極LE3に重なっている。下電極LE1、LE2、LE3の周縁部は、無機絶縁層5で覆われている。下電極LE1、LE2、LE3のうち、互いに隣接する下電極の間では、絶縁層12が無機絶縁層5により覆われている。下電極LE1、LE2、LE3は、絶縁層12に設けられたコンタクトホールを通じて副画素SP1、SP2、SP3のそれぞれの画素回路1に接続されている。なお、絶縁層12のコンタクトホールは、図3では省略するが、図2のCH1、CH2、CH3に相当する。
【0036】
隔壁6は、無機絶縁層5の上に配置された導電性を有する下部(茎)61と、下部61の上に配置された上部(笠)62と、を含む。図の右側に示した隔壁6の下部61は、開口AP1と開口AP2との間に位置している。図の左側に示した隔壁6の下部61は、開口AP2と開口AP3との間に位置している。上部62は、下部61よりも大きい幅を有している。上部62の両端部は、下部61の側面よりも突出している。このような隔壁6の形状は、オーバーハング状と呼ばれる。
【0037】
有機層OR1は、開口AP1を通じて下電極LE1に接触し、開口AP1から露出した下電極LE1を覆うとともに、その周縁部が無機絶縁層5の上に位置している。上電極UE1は、有機層OR1を覆い、下部61に接触している。
【0038】
有機層OR2は、開口AP2を通じて下電極LE2に接触し、開口AP2から露出した下電極LE2を覆うとともに、その周縁部が無機絶縁層5の上に位置している。上電極UE2は、有機層OR2を覆い、下部61に接触している。
【0039】
有機層OR3は、開口AP3を通じて下電極LE3に接触し、開口AP3から露出した下電極LE3を覆うとともに、その周縁部が無機絶縁層5の上に位置している。上電極UE3は、有機層OR3を覆い、下部61に接触している。
【0040】
図3の例においては、副画素SP1はキャップ層CP1及び封止層SE1を有し、副画素SP2はキャップ層CP2及び封止層SE2を有し、副画素SP3はキャップ層CP3及び封止層SE3を有している。キャップ層CP1、CP2、CP3は、それぞれ有機層OR1、OR2、OR3から放たれた光の取り出し効率を向上させる光学調整層としての役割を有している。
【0041】
キャップ層CP1は、上電極UE1の上に配置されている。
キャップ層CP2は、上電極UE2の上に配置されている。
キャップ層CP3は、上電極UE3の上に配置されている。
【0042】
封止層SE1は、キャップ層CP1の上に配置され、隔壁6に接触し、副画素SP1の各部材を連続的に覆っている。
封止層SE2は、キャップ層CP2の上に配置され、隔壁6に接触し、副画素SP2の各部材を連続的に覆っている。
封止層SE3は、キャップ層CP3の上に配置され、隔壁6に接触し、副画素SP3の各部材を連続的に覆っている。
【0043】
図3の例においては、有機層OR1、上電極UE1、及び、キャップ層CP1のそれぞれの一部は、副画素SP1の周囲の隔壁6の上に位置している。これらの部分は、有機層OR1、上電極UE1、及び、キャップ層CP1のうち開口AP1に位置する部分(表示素子201を構成する部分)から離間している。
同様に、有機層OR2、上電極UE2、及び、キャップ層CP2のそれぞれの一部は、副画素SP2の周囲の隔壁6の上に位置し、これらの部分は、有機層OR2、上電極UE2、及び、キャップ層CP2のうち開口AP2に位置する部分(表示素子202を構成する部分)から離間している。
同様に、有機層OR3、上電極UE3、及び、キャップ層CP3のそれぞれの一部は、副画素SP3の周囲の隔壁6の上に位置し、これらの部分は、有機層OR3、上電極UE3、及び、キャップ層CP3のうち開口AP3に位置する部分(表示素子203を構成する部分)から離間している。
【0044】
封止層SE1、SE2、SE3の端部は、隔壁6の上に位置している。図3の例においては、副画素SP1、SP2間の隔壁6の上に位置する封止層SE1、SE2の端部同士が離間し、副画素SP2、SP3間の隔壁6の上に位置する封止層SE2、SE3の端部同士が離間している。
【0045】
封止層SE1、SE2、SE3は、樹脂層13によって覆われている。樹脂層13は、封止層14によって覆われている。封止層14は、樹脂層15によって覆われている。
【0046】
無機絶縁層5、封止層SE1、SE2、SE3、及び、封止層14は、例えば、シリコン窒化物(SiNx)、シリコン酸化物(SiOx)、シリコン酸窒化物(SiON)、または、酸化アルミニウム(Al)などの他の無機絶縁材料で形成されている。
【0047】
隔壁6の下部61は、導電材料で形成され、上電極UE1、UE2、UE3と電気的に接続されている。隔壁6の上部62は、例えば導電材料によって形成されているが、絶縁材料で形成されもよい。下部61は、上部62とは異なる材料で形成されている。
【0048】
下電極LE1、LE2、LE3は、例えば、インジウム錫酸化物(ITO)などの酸化物導電材料で形成された透明電極と、銀などの金属材料で形成された金属電極とを含む多層体である。
【0049】
有機層OR1は、発光層EM1を含む。有機層OR2は、発光層EM2を含む。有機層OR3は、発光層EM3を含む。発光層EM1、発光層EM2、及び、発光層EM3は、互いに異なる材料で形成されている。一例では、発光層EM1は、青波長域の光を放つ材料によって形成され、発光層EM2は、緑波長域の光を放つ材料によって形成され、発光層EM3は、赤波長域の光を放つ材料によって形成されている。
また、有機層OR1、OR2、OR3の各々は、正孔注入層、正孔輸送層、電子ブロック層、正孔ブロック層、電子輸送層、電子注入層などの複数の機能層を含む。
上電極UE1、UE2、UE3は、例えば、マグネシウム及び銀の合金(MgAg)などの金属材料で形成されている。
【0050】
キャップ層CP1、CP2、CP3は、複数の薄膜の多層体である。複数の薄膜は、いずれも透明であり、しかも、互いに異なる屈折率を有している。
【0051】
図3に示した回路層11、絶縁層12、及び、無機絶縁層5は、表示領域DA及び周辺領域SAに亘って配置されている。
【0052】
次に、複数の表示装置DSPを一括して製造するための表示装置用マザー基板100について説明する。
【0053】
図4は、表示装置用マザー基板100の一例を示す平面図である。
【0054】
表示装置用マザー基板100は、大型の基板10の上に、複数のパネル部PPと、これらのパネル部PPよりも外側の余白部MPと、を備えている。大型の基板10は、矩形状に形成され、直線状の第1辺10X及び第2辺10Yを有している。第1辺10Xは、第1方向Xに延出している。第2辺10Yは、第2方向Yに延出している。
【0055】
複数のパネル部PPは、第1方向X及び第2方向Yにマトリクス状に配列されている。パネル部PPの各々は、表示装置用マザー基板100をカットラインCLに沿って割断することで取り出される。取り出されたパネル部PPの各々は、図1に示した表示パネルPNLに相当する。図4に一点鎖線で示すカットラインCLは、表示パネルPNLの外形に相当する。パネル部PPの各々は、表示領域DAと、端子TEなどが配置される周辺領域SAと、を備えている。
【0056】
図4において拡大して示すように、隔壁7は、余白部MPに配置されている。隔壁7は、第1辺10Xの延出方向である第1方向Xあるいは複数の端子TEの並び方向ADに対して直交しない形状を有している。また、隔壁7は、第2辺10Yの延出方向である第2方向Yあるいは垂線方向PDや、カットラインCL(表示パネルの外形)に対しても直交しない形状を有している。
【0057】
図4に示す例では、隔壁7は、線状に形成された複数のセグメントSG1、SG2、SG3…を有している。セグメントSG1、SG2、SG3…の各々は、第1方向X及び第2方向Yに対して交差する斜め方向に延出している。しかも、第1方向Xに並んだセグメントSG1及びセグメントSG2は、互いに異なる方向に延出している。また、第2方向Yに並んだセグメントSG1及びセグメントSG3も、互いに異なる方向に延出している。
【0058】
図中の4つのセグメントSG1、SG2、SG3、SG4に着目すると、セグメントSG1及びセグメントSG2は、第1方向Xに延出した直線LXに関して、セグメントSG3及びセグメントSG4とそれぞれ線対称である。また、セグメントSG1及びセグメントSG3は、第2方向Yに延出した直線LYに関して、セグメントSG2及びセグメントSG4とそれぞれ線対称である。セグメントSG1及びセグメントSG4は互いに平行であり、また、セグメントSG2及びセグメントSG3は互いに平行である。
【0059】
なお、第1方向Xに並ぶ複数のセグメントがつながっていてもよいし、第2方向Yに並ぶ複数のセグメントがつながっていてもよい。
【0060】
また、隔壁7は、余白部MPのみならず、パネル部PPの周辺領域SAに配置されてもよい。
【0061】
図5は、図4におけるC-D線に沿う表示装置用マザー基板100の断面図である。
【0062】
図示した例では、絶縁層12及び無機絶縁層5は、余白部MPに延出している。
【0063】
隔壁7は、無機絶縁層5の上に配置された下部71と、下部71の上に配置された上部72とを含む。上部72は、下部71よりも大きい幅を有している。上部72の両端部は、下部71の側面よりも突出している。このように、隔壁7は、図3に示した隔壁6と同様のオーバーハング状である。隔壁7は、隔壁6と同一工程で形成することができる。この場合、下部71は下部61と同一材料で形成され、上部72は上部62と同一材料で形成される。
【0064】
次に、図6乃至図17を参照して、表示装置DSPの製造方法について説明する。なお、図6乃至図8図11乃至図17においては、絶縁層12よりも下方の図示を省略している。以下の説明では、隔壁7が余白部MP及び周辺領域SAに形成される場合について説明するが、周辺領域SAには隔壁7が形成されない場合もあり得る。
【0065】
まず、図6に示すように、表示領域DAにおいて、絶縁層12の上に、副画素SP1の下電極LE1、副画素SP2の下電極LE2、副画素SP3の下電極LE3を形成する。その後、表示領域DA、周辺領域SA、及び、余白部MPに亘り、無機絶縁層5を形成する。表示領域DAにおいては、下電極LE1、LE2、LE3は、無機絶縁層5で覆われる。
【0066】
続いて、図7に示すように、表示領域DAにおいて、無機絶縁層5の上に位置する下部61と、下部61の上に位置する上部62と、を有する隔壁6を形成する。同時に、周辺領域SA及び余白部MPにおいて、無機絶縁層5の上に位置する下部71と、下部71の上に位置する上部72と、を有する隔壁7を形成する。
【0067】
これらの隔壁6及び隔壁7は、例えば以下の工程を経て形成される。すなわち、無機絶縁層5の上に第1層(導電層)を形成し、第1層の上に第2層を形成し、第2層をパターニングすることで上部62及び上部72を形成し、その後、第1層をパターニングすることで下部61及び下部71を形成する。
【0068】
続いて、図8に示すように、表示領域DA、周辺領域SA、及び、余白部MPに亘り、レジストR1を塗布する。レジストR1は、無機絶縁層5、隔壁6、隔壁7を覆っている。
【0069】
以下に、レジストR1を塗布する工程について説明する。
【0070】
図9に示す例では、レジストR1を塗布するための塗布装置200は、第2方向Yに並んだ複数のノズル200Aを有している。塗布装置200は、表示装置用マザー基板100に向けて有機材料を吐出しながら第1方向Xに移動する。つまり、塗布装置200によるレジストR1の塗布方向DXは、第1辺10Xと平行である。なお、固定された塗布装置200に対して、表示装置用マザー基板100が第1方向Xに移動してもよい。
【0071】
隔壁7は、上記の通り、第1辺10Xの延出方向に対して直交せず、また、塗布方向DXに対しても直交しない。このため、塗布されたレジストR1は、隔壁7で堰き止められることなく、隔壁7に接しながら広がる。これにより、レジストR1に不所望な空隙が形成されたり、レジストR1に筋状のムラが形成されたりする不具合を抑制することができる。換言すると、図8に示したように、後のエッチングの際に保護すべき領域を確実にレジストR1で覆うことができる。したがって、信頼性の低下を抑制することができる。
【0072】
以下、レジストR1を塗布する他の工程について説明する。
【0073】
図10に示す例では、レジストR1を塗布するための塗布装置200は、第1方向Xに並んだ複数のノズル200Aを有している。塗布装置200は、表示装置用マザー基板100に向けて有機材料を吐出しながら第2方向Yに移動する。つまり、塗布装置200によるレジストR1の塗布方向DYは、第2辺10Yと平行である。なお、固定された塗布装置200に対して、表示装置用マザー基板100が第2方向Yに移動してもよい。
【0074】
隔壁7は、上記の通り、第2辺10Yの延出方向に対して直交せず、また、塗布方向DYに対しても直交しない。このため、図9を参照して説明したのと同様の効果が得られる。
【0075】
また、図示した隔壁7の各セグメントSG1、SG2、SG3、SG4は、上記の通り、直線LX及び直線LYに関して線対称に形成されている。このため、図示した隔壁7の形状は、図9に示した塗布方向DXが適用された場合であっても、図10に示した塗布方向DYが適用された場合であっても、レジストR1の広がり方に差がなく、好ましい。
【0076】
続いて、図11に示すように、レジストR1を所定の形状にパターニングする。このとき、図示した例では、周辺領域SA及び余白部MPにおいては、レジストR1は、無機絶縁層5及び隔壁7を覆っている。表示領域DAにおいては、レジストR1は、隔壁6を覆い、無機絶縁層5の一部(下電極LE1、LE2、LE3に重畳する部分)を露出している。
【0077】
続いて、図12に示すように、レジストR1をマスクとしたエッチングを行う。これにより、表示領域DAにおいて、無機絶縁層5に開口AP1、AP2、AP3が形成される。開口AP1は副画素SP1の下電極LE1に重なり、開口AP2は副画素SP2の下電極LE2に重なり、開口AP3は副画素SP3の下電極LE3に重なる。
その後、レジストR1を除去する。
【0078】
上記の通り、周辺領域SA及び余白部MPにおいて、無機絶縁層5及び隔壁7は、レジストR1で確実に覆われているため、エッチングによるダメージをほとんど受けない。
【0079】
続いて、表示素子201を形成する。表示素子201の形成工程については、周辺領域SA及び余白部MPの図示を省略する。
【0080】
まず、図13に示すように、隔壁6をマスクとして、下電極LE1の上に、正孔注入層、正孔輸送層、電子ブロック層、発光層(EM1)、正孔ブロック層、電子輸送層、電子注入層などの各層を形成するための材料を順次蒸着して、有機層OR1を形成する。
その後、隔壁6をマスクとして、有機層OR1の上に、マグネシウム及び銀の混合物を蒸着して、上電極UE1を形成する。上電極UE1は、有機層OR1を覆い、下部61に接触している。
その後、隔壁6をマスクとして、上電極UE1の上に、高屈折率材料及び低屈折率材料を順次蒸着して、キャップ層CP1を形成する。
これらの有機層OR1、上電極UE1、及び、キャップ層CP1は、真空環境を維持した状態で連続して形成される。
その後、キャップ層CP1及び隔壁6を連続的に覆うように、封止層SE1を形成する。
【0081】
有機層OR1、上電極UE1、キャップ層CP1、及び、封止層SE1は、少なくとも表示領域DAの全体に形成され、副画素SP1だけでなく副画素SP2、SP3にも配置されている。有機層OR1、上電極UE1、及び、キャップ層CP1は、オーバーハング状の隔壁6によって分断される。
【0082】
有機層OR1、上電極UE1、及び、キャップ層CP1がそれぞれ蒸着によって形成される際に、蒸着源から放たれた材料は、上部62によって遮られる。このため、上部62の上には、有機層OR1、上電極UE1、及び、キャップ層CP1のそれぞれの一部が積層される。上部62の上に位置する有機層OR1、上電極UE1、及び、キャップ層CP1の各々は、下電極LE1の直上に位置する有機層OR1、上電極UE1、及び、キャップ層CP1から離間している。
【0083】
続いて、図14に示すように、封止層SE1の上に、所定の形状にパターニングされたレジストR2を形成する。レジストR2は、副画素SP1とその周囲の隔壁6の一部に重なっている。
なお、詳述しないが、レジストR2が形成される際、レジストR1と同様に、レジストR2の塗布方向が設定される。図9に示した塗布方向DXまたは図10に示した塗布方向DYのいずれが選択された場合であっても、周辺領域SA及び余白部MPにおいて隔壁7でレジストR2の広がりが阻害されることがなく、レジストR2の不所望な欠落を抑制することができる。
【0084】
続いて、図15に示すように、レジストR2をマスクとしたエッチングを行うことにより、レジストR2から露出した封止層SE1、キャップ層CP1、上電極UE1、及び、有機層OR1を順次除去する。これにより、副画素SP2の下電極LE2及び副画素SP3の下電極LE3が露出する。
その後、レジストR2を除去する。これにより、副画素SP1に表示素子201が形成される。
【0085】
続いて、図16に示すように、表示素子202を形成する。表示素子202を形成する手順は、表示素子201を形成する手順と同様である。すなわち、下電極LE2の上に、発光層EM2を含む有機層OR2、上電極UE2、キャップ層CP2、及び、封止層SE2を順に形成する。その後、封止層SE2の上にレジストを形成し、このレジストをマスクとしたエッチングにより、封止層SE2、キャップ層CP2、上電極UE2、及び、有機層OR2が順次パターニングされる。このパターニングの後、レジストを除去する。これにより、副画素SP2に表示素子202が形成され、副画素SP3の下電極LE3が露出する。
【0086】
続いて、図17に示すように、表示素子203を形成する。表示素子203を形成する手順は、表示素子201を形成する手順と同様である。すなわち、下電極LE3の上に、発光層EM3を含む有機層OR3、上電極UE3、キャップ層CP3、及び、封止層SE3を順に形成する。その後、封止層SE3の上にレジストを形成し、このレジストをマスクとしたエッチングにより、封止層SE3、キャップ層CP3、上電極UE3、及び、有機層OR3が順次パターニングされる。このパターニングの後、レジストを除去する。これにより、副画素SP3に表示素子203が形成される。
【0087】
その後、図3に示した樹脂層13、封止層14、及び、樹脂層15を順に形成する。これにより、表示装置DSPが完成する。
【0088】
なお、以上の製造工程においては、最初に表示素子201が形成され、次に表示素子202が形成され、最後に表示素子203が形成される場合を想定したが、表示素子201、202、203の形成順はこの例に限られない。
【0089】
次に、隔壁7の他の構成例について説明する。
【0090】
図18は、隔壁7の他の構成例を示す図である。
隔壁7は、線状に形成された複数のセグメントSG1、SG2、SG3…を有している。セグメントSG1、SG2、SG3…の各々は、第1方向X及び第2方向Yに対して交差する斜め方向に延出している。しかも、第1方向Xに並んだセグメントSG1及びセグメントSG2は、互いに異なる方向に延出している。また、第2方向Yに並んだセグメントSG1及びセグメントSG3は、互いに平行である。
このような構成例においても、レジストR1が形成される際、塗布方向DXまたは塗布方向DYのいずれが選択された場合であっても、隔壁7でレジストR1の広がりが阻害されることがなく、レジストR1の不所望な欠落を抑制することができる。
【0091】
図19は、隔壁7の他の構成例を示す図である。
隔壁7は、線状に形成された複数のセグメントSG1、SG2、SG3…を有している。セグメントSG1、SG2、SG3…の各々は、第1方向Xに延出している。
このような構成例においては、レジストR1が形成される際、塗布方向DXが選択された場合には、隔壁7でレジストR1の広がりが阻害されることがなく、レジストR1の不所望な欠落を抑制することができる。
【0092】
図20は、隔壁7の他の構成例を示す図である。
図20に示す構成例は、上記の構成例と比較して、隔壁7が独立したループ状に形成されている点で相違している。隔壁7の内側には、閉領域CAが形成される。図示した例では、隔壁7は、多角形状の一例である四角形状に形成され、しかも、その4辺がいずれも第1方向X及び第2方向Yに対して交差する斜め方向に延出している。
つまり、図4を参照して説明した例と同様に、隔壁7は、第1辺10Xの延出方向である第1方向Xあるいは複数の端子TEの並び方向ADに対して直交しない形状を有している。また、隔壁7は、第2辺10Yの延出方向である第2方向Yあるいは垂線方向PDや、カットラインCLに対しても直交しない形状を有している。
【0093】
したがって、このような構成例においても、レジストR1が形成される際、塗布方向DXまたは塗布方向DYのいずれが選択された場合であっても、隔壁7でレジストR1の広がりが阻害されることがなく、レジストR1の不所望な欠落を抑制することができる。
【0094】
加えて、隔壁7が閉領域CAを形成しているため、多層膜の離脱が抑制される。この効果については、図21及び図22を参照しながら以下に説明する。なお、ここでの多層膜とは、例えば、図13を参照して説明した蒸着によって形成される有機層OR1、上電極UE1、及び、キャップ層CP1を含んでいる。
【0095】
図21は、隔壁7を備えていない比較例を説明するための断面図である。
図中の(a)は、多層膜FL1及び封止層SE1が形成された後に、水分が浸入した状態を示している。多層膜FL1及び封止層SE1のパターニングに際しては、レジストR2の現像処理や洗浄処理などのウェット処理が行われる。このとき、封止層SE1に微小なピンホールが形成されている場合に、ウェット処理において水分が多層膜FL1に浸入しやすい。多層膜FL1に浸入した水分が有機層OR1と無機絶縁層5との界面に到達すると、有機層OR1が無機絶縁層5の表面から浮き上がり、空隙Gが生じ得る。
図中の(b)は、水分が有機層OR1で拡散され、空隙Gが拡大した状態を示している。空隙Gの拡大に伴って、多層膜FL1と無機絶縁層5との密着力が低下する。そして、不安定となった多層膜FL1は、封止層SE1とともに離脱しやすい状態となる。
図中の(c)は、多層膜FL1及び封止層SE1の一部が離脱した状態を示している。多層膜FL1が大きな面積を有する領域に形成されている場合、一部の多層膜FL1の離脱を起点として、大面積の多層膜FL1の離脱を招くおそれがある。また、離脱した多層膜FL1及び封止層SE1は、異物となって製造装置内を浮遊し、汚染源となり得る。また、浮遊した異物がマザー基板に付着すると、種々の欠陥を引き起こす原因となり得る。
【0096】
図22は、隔壁7を備えた実施形態を説明するための断面図である。
図中の(a)は、多層膜FL1及び封止層SE1が形成された後に、水分が浸入した状態を示している。水分の浸入により、多層膜FL1と無機絶縁層5との間に空隙Gが生じている。多層膜FL1を構成する有機層OR1、上電極UE1、及び、キャップ層CP1は、それぞれ隔壁7をマスクとした蒸着を行うことで形成される。このため、無機絶縁層5の上の多層膜FL1は、隔壁7の上の多層膜FL1から分断されている。
図中の(b)は、空隙Gが拡大した状態を示している。上記の通り、多層膜FL1が隔壁7によって分断されているため、空隙Gの拡大が抑制される。すなわち、図示したように、閉領域CAに空隙Gが生じた場合、空隙Gの広がりは、閉領域CAに留まる。また、隔壁7の上で空隙Gが生じた場合、空隙Gの広がりは、隔壁7の上に留まる。このように、空隙Gの拡大が抑制され、しかも、浮き上がった多層膜FL1は、封止層SE1によって抑え込まれているため、多層膜FL1及び封止層SE1の離脱が抑制される。これにより、製造装置の汚染や、不所望な異物の生成が抑制される。したがって、信頼性の低下が抑制される。
【0097】
図23は、隔壁7の他の構成例を示す図である。
図23に示す構成例は、図20に示した構成例と比較して、隔壁7が円形状に形成されている点で相違している。隔壁7の内側には、閉領域CAが形成される。
つまり、隔壁7は、第1辺10Xの延出方向である第1方向Xあるいは複数の端子TEの並び方向ADに対して直交しない形状を有している。また、隔壁7は、第2辺10Yの延出方向である第2方向Yあるいは垂線方向PDや、カットラインCLに対しても直交しない形状を有している。
このような構成例においても、図20に示した構成例と同様の効果が得られる。
【0098】
図24は、隔壁7の他の構成例を示す図である。
図24に示す構成例は、図20に示した構成例と比較して、隔壁7が多角形状の一例である六角形状に形成されている点で相違している。隔壁7の内側には、閉領域CAが形成される。図示した例では、隔壁7は、第1方向Xに平行な辺7Xを含み、その他の辺がいずれも第1方向X及び第2方向Yに対して交差する斜め方向に延出している。
つまり、隔壁7は、第1辺10Xの延出方向である第1方向X、あるいは、複数の端子TEの並び方向ADに対して直交しない形状を有している。
したがって、このような構成例においては、レジストR1が形成される際、塗布方向DXが選択された場合に、隔壁7でレジストR1の広がりが阻害されることがなく、レジストR1の不所望な欠落を抑制することができる。
加えて、隔壁7が閉領域CAを形成しているため、多層膜の離脱が抑制される。
【0099】
図25は、隔壁7の他の構成例を示す図である。
図25に示す構成例は、図20に示した構成例と比較して、隔壁7が第1方向Xに平行な辺7X及び第2方向Yに平行な辺7Yを含む四角形状に形成されている点で相違している。
このような構成例においては、隔壁7が閉領域CAを形成しているため、多層膜の離脱が抑制される。
【0100】
図26は、隔壁7の他の構成例を示す図である。
図26に示す構成例は、上記の構成例と比較して、隔壁7が格子状に形成されている点で相違している。隔壁7の内側には、閉領域CAが形成される。図示した例では、1つの閉領域CAは、多角形状の一例である四角形状の隔壁7で囲まれ、しかも、その4つの辺がいずれも第1方向X及び第2方向Yに対して交差する斜め方向に延出している。
つまり、図4を参照して説明した例と同様に、隔壁7は、第1辺10Xの延出方向である第1方向Xあるいは複数の端子TEの並び方向ADに対して直交しない形状を有している。また、隔壁7は、第2辺10Yの延出方向である第2方向Yあるいは垂線方向PDや、カットラインCLに対しても直交しない形状を有している。
【0101】
したがって、このような構成例においても、レジストR1が形成される際、塗布方向DXまたは塗布方向DYのいずれが選択された場合であっても、隔壁7でレジストR1の広がりが阻害されることがなく、レジストR1の不所望な欠落を抑制することができる。
加えて、隔壁7が閉領域CAを形成しているため、多層膜の離脱が抑制される。
【0102】
図27は、隔壁7の他の構成例を示す図である。
図27に示す構成例は、図26に示した構成例と比較して、隔壁7が円弧部を有する格子状に形成されている点で相違している。隔壁7の内側には、閉領域CAが形成される。1つの閉領域CAは、円形状の隔壁7で囲まれている。
つまり、隔壁7は、第1辺10Xの延出方向である第1方向Xあるいは複数の端子TEの並び方向ADに対して直交しない形状を有している。また、隔壁7は、第2辺10Yの延出方向である第2方向Yあるいは垂線方向PDや、カットラインCLに対しても直交しない形状を有している。
このような構成例においても、図26に示した構成例と同様の効果が得られる。
【0103】
図28は、隔壁7の他の構成例を示す図である。
図28に示す構成例は、図26に示した構成例と比較して、1つの閉領域CAが多角形状の一例である六角形状の隔壁7で囲まれている点で相違している。図示した例では、隔壁7は、第1方向Xに平行な辺7Xを含み、その他の辺がいずれも第1方向X及び第2方向Yに対して交差する斜め方向に延出している。
つまり、隔壁7は、第1辺10Xの延出方向である第1方向X、あるいは、複数の端子TEの並び方向ADに対して直交しない形状を有している。
したがって、このような構成例においては、レジストR1が形成される際、塗布方向DXが選択された場合に、隔壁7でレジストR1の広がりが阻害されることがなく、レジストR1の不所望な欠落を抑制することができる。
加えて、隔壁7が閉領域CAを形成しているため、多層膜の離脱が抑制される。
【0104】
図29は、隔壁7の他の構成例を示す図である。
図29に示す構成例は、図26に示した構成例と比較して、隔壁7が斜め格子状に形成されている点で相違している。1つの閉領域CAを囲む隔壁7は、第1方向Xに平行な辺7Xと、第1方向X及び第2方向Yに対して交差するように屈曲した辺7Bと、を有している。
つまり、隔壁7は、第1辺10Xの延出方向である第1方向X、あるいは、複数の端子TEの並び方向ADに対して直交しない形状を有している。
したがって、このような構成例においては、レジストR1が形成される際、塗布方向DXが選択された場合に、隔壁7でレジストR1の広がりが阻害されることがなく、レジストR1の不所望な欠落を抑制することができる。
加えて、隔壁7が閉領域CAを形成しているため、多層膜の離脱が抑制される。
【0105】
図30は、隔壁7の他の構成例を示す図である。
図30に示す構成例は、図26に示した構成例と比較して、1つの閉領域CAを囲む隔壁7が第1方向Xに平行な辺7X及び第2方向Yに平行な辺7Yを含む四角形状に形成されている点で相違している。
このような構成例においては、隔壁7が閉領域CAを形成しているため、多層膜の離脱が抑制される。
【0106】
上記の実施形態において、例えば、隔壁7は第1隔壁に相当し、下部71は第1下部に相当し、上部72は第1上部に相当し、隔壁6は第2隔壁に相当し、下部61は第2下部に相当し、上部62は第2上部に相当し、セグメントSG1は第1セグメントに相当し、セグメントSG2は第2セグメントに相当し、セグメントSG3は第3セグメントに相当し、セグメントSG4は第4セグメントに相当する。
【0107】
以上説明したように、本実施形態によれば、信頼性の低下を抑制することが可能な表示装置用マザー基板、表示装置、及び、表示装置の製造方法を提供することができる。
【0108】
以上、本発明の実施形態として説明した表示装置用マザー基板、表示装置、及び、表示装置の製造方法を基にして、当業者が適宜設計変更して実施し得る全ての表示装置用マザー基板、表示装置、及び、表示装置の製造方法も、本発明の要旨を包含する限り本発明の範囲に属する。
【0109】
本発明の思想の範疇において、当業者であれば、各種の変形例に想到し得るものであり、それら変形例についても本発明の範囲に属するものと解される。例えば、上述の実施形態に対して、当業者が適宜、構成要素の追加、削除、もしくは設計変更を行ったもの、または、工程の追加、省略もしくは条件変更を行ったものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に含まれる。
【0110】
また、上述の実施形態において述べた態様によりもたらされる他の作用効果について、本明細書の記載から明らかなもの、または当業者において適宜想到し得るものについては、当然に本発明によりもたらされるものと解される。
【符号の説明】
【0111】
DSP…表示装置 10…基板 12…絶縁層(有機絶縁層)
5…無機絶縁層 AP1、AP2、AP3…開口
6…隔壁 61…下部 62…上部 7…隔壁 71…下部 72…上部
SP1、SP2、SP3…副画素
201、202、203…表示素子(有機EL素子)
LE1、LE2、LE3…下電極
UE1、UE2、UE3…上電極
OR1、OR2、OR3…有機層
DA…表示領域 SA…周辺領域 TE…端子
100…表示装置用マザー基板 PP…パネル部 MP…余白部
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