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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024132358
(43)【公開日】2024-10-01
(54)【発明の名称】ホース
(51)【国際特許分類】
   F16L 11/02 20060101AFI20240920BHJP
   F16L 21/00 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
F16L11/02
F16L21/00 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023043091
(22)【出願日】2023-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】000215822
【氏名又は名称】帝国繊維株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】523098957
【氏名又は名称】装研株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 誠
(72)【発明者】
【氏名】岡田 健
(72)【発明者】
【氏名】米澤 誠治
【テーマコード(参考)】
3H111
【Fターム(参考)】
3H111BA15
3H111BA18
3H111CB03
3H111CB14
3H111CB27
3H111CC12
3H111DB04
3H111EA04
(57)【要約】
【課題】ホースの連結部の構造を工夫することにより、ホースの連結部からの漏水を防止しながら、ホースの連結部の軽量化を図ると共に、ホースの連結作業を容易に行うことを可能にしたホースを提供する。
【解決手段】ホース本体2と、ホース本体2の長手方向の両端部2a,2bに配設された非金属を主体とするホース連結用の連結部材3と、ホース本体2の長手方向の一方の端部2aに配設された樹脂製の筒状体10とを備えており、この筒状体10は、一方の端部10aがホース本体2に固定され、他方の端部10bが自由端である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホース本体と、このホース本体の長手方向の両端部に配設された非金属を主体とするホース連結用の連結部材と、このホース本体の長手方向の一方の端部に配設された樹脂製の筒状体とを備えており、この筒状体は、一方の端部が前記ホース本体に固定され、他方の端部が自由端であることを特徴とするホース。
【請求項2】
前記筒状体の突き出し長さが50mm~2000mmの範囲にあることを特徴とする請求項1に記載のホース。
【請求項3】
前記ホースの内径が150mm~400mmの範囲にあり、前記ホースが低水圧用ホースであることを特徴とする請求項1又は2に記載のホース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は低水圧用ホースとして好適なホースに関し、詳しくは、ホースの連結部の構造を工夫することにより、ホースの連結部からの漏水を防止しながら、ホースの連結部の軽量化を図ると共に、ホースの連結作業を容易に行うことを可能にしたホースに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ホースは、一方のホースの継手を他方のホースの継手に差し込むことによって、継手同士を嵌合させ、一方のホースと他方のホースとを連結して使用する(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、消防用ホースでは、遠方まで放水するために高圧(例えば1.3MPa程度)の条件下で使用され、こうした高圧に耐えられるように金属製の継手が使用される。これに対して、例えば排水用ホースでは、大量の水を排出することが目的であるので、低圧(例えば0.2MPa程度)の条件下で使用され、必ずしも金属製の継手を使用する必要はない。特に、金属製の継手を有し、ホースの口径が大きい場合には、継手が非常に重くなるため容易に連結することができず、複数人で連結作業を行う必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3107507号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、ホースの連結部の構造を工夫することにより、ホースの連結部からの漏水を防止しながら、ホースの連結部の軽量化を図ると共に、ホースの連結作業を容易に行うことを可能にしたホースを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための本発明のホースは、ホース本体と、このホース本体の長手方向の両端部に配設された非金属を主体とするホース連結用の連結部材と、このホース本体の長手方向の一方の端部に配設された樹脂製の筒状体とを備えており、この筒状体は、一方の端部が前記ホース本体に固定され、他方の端部が自由端であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明では、ホース本体の長手方向の両端部に配設された非金属を主体とする連結部材を備えているので、従来の金属製の連結部(継手)に比べて、連結部の重量を大幅に低減することができる。また、ホース本体の長手方向の一方の端部に配設された樹脂製の筒状体は一方の端部のみがホースに対して固定されているので、他方の端部は柔軟に可動することができ、連結されたホースに通水した際、一方側のホースの筒状体が水圧により径方向に拡張又は膨張し、他方側のホースの内壁面に密着する。これにより、連結部において十分な密閉性を確保できるので、連結部からの漏水を防止することができる。更に、その際、一方側のホースの筒状体と他方側のホースの内壁面との間には摩擦力が生じ、連結部材への負荷が軽減されるので、非金属を主体とする連結部材を用いた場合であってもホース本体の連結状態を良好に維持することができる。本発明では比較的簡便な連結構造により、連結部からの漏水を防ぎながら、ホースの連結部の軽量化を図ると共に、ホースの連結作業を容易に行うことが可能になる。
【0008】
筒状体の突き出し長さは50mm~2000mmの範囲にあることが好ましい。これにより、一方側のホースの筒状体と他方側のホースの内壁面との密着面積を十分に確保することができ、密閉性が向上し、連結部からの漏水防止に寄与する。
【0009】
ホースの内径は150mm~400mmの範囲にあり、ホースは低水圧用ホースであると良い。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態からなるホースの実施形態の一例を示す側面図である。
図2図1のホースの要部を示す斜視図である。
図3図1のホースの要部を示す側面図である。
図4】本発明の実施形態からなるホースの使用時を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明のホースの実施形態を添付の図面を参照しながら詳細に説明する。図1図3は本発明の実施形態からなるホースを示すものである。図1において、矢印Cは通水時における水流の方向を示しており、図の左側(水源側)から右側に向かって流れる。
【0012】
図1図3に示すように、本発明のホース1は、筒状に織成された筒状織物からなるホース本体2を有する。このホース本体2の内面には、ゴム又は合成樹脂からなる被覆層が配設されている。この合成樹脂として、例えばポリウレタンを用いることが好ましい。
【0013】
ホース本体2の長手方向の両端部2a,2bの外周面には、ホース同士を連結するための複数の連結部材3がホース周方向に間隔をおいて配設されている。連結部材3は、一方のホース1に配設された連結部材3aと他方のホース1に配設された連結部材3bとが対をなす係合部材である。この実施形態では、ホース本体2の両端部2a,2bのそれぞれに連結部材3がホース周方向の4箇所に等間隔で配置されているが、連結部材3の個数や相互間隔はこれに限定されるものではなく、任意に設定することができる。
【0014】
また、連結部材3は、非金属を主体とする材料で構成されている。この非金属を主体とする材料は、一部に金属製の材料を含んでいても良く、全てが非金属製の材料であっても良い。具体的には、連結部材3として、一部に金属製の材料を含むフランスカンベルトや、全てが非金属製の材料からなる面ファスナー又は差し込み式のバックルを例示することができる。いずれの材料であっても、連結部材3は従来の金属製の継手に比べて重量が大幅に軽いもので構成される。
【0015】
ホース本体2の一方の端部2aのみに、筒状に形成された筒状体10が配設されている。この筒状体10は、ホース本体2の一方の端部2aに一端が係止され、他端が自由状態で突出している。具体的に、筒状体10は、一方の端部10aがホース本体2の一方の端部2aと一部が重複するように配置され、ホース本体2の一方の端部2aの内壁面(例えば被覆層)に固定されている一方で、他方の端部10bが固定されておらず、自由端となっている。筒状体10は、一方の端部10aと他方の端部10bの間で、連続的に同じ口径を有するように延在していると良い。
【0016】
また、筒状体10は、円環状のホース本体2の内部に配置されることから、ホース本体2の形状に沿うように、硬質な材料ではなく柔軟性及び伸縮性に優れた軟質な材料により構成されている。具体的に、筒状体10は樹脂で構成されている。筒状体10を構成する合成樹脂として、ポリウレタン(PU)、塩化ビニルを例示することができる。
【0017】
更に、筒状体10の厚さは、0.1mm~1.0mmの範囲にあることが好ましく、0.2mm~0.8mmの範囲にあることがより好ましい。また、筒状体10を構成する樹脂は、その破断伸びが50%~600%の範囲にあることが好ましく、200%~500%の範囲にあることがより好ましい。この破断伸びは、JIS K 6251に準拠した方法により測定されたものである。また、筒状体10を構成する樹脂の引張強度は、13MPa以上であることが好ましく、20MPa以上であることがより好ましい。これらを満たすことにより、筒状体10が適度な柔軟性を有することができるので、通水時に、一方側のホースの筒状体10と他方側のホースの内壁面とが密着し易くなる。
【0018】
このようなホース1を使用する場合、図4(a)に示すように、第1のホース1Xの筒状体10を第2のホース1Yの内部に差し込むようにして、第1のホース1Xのホース本体2の端部2aと第2のホース1Yのホース本体2の端部2bとを連結する。その際、図4(b)に示すように、第1のホース1Xの端部2aと第2のホース1Yの端部2bとを突き合わせるように配置する。そして、図4(c)に示すように、第1のホース1Xの連結部材3aと第2のホース1Yの連結部材3bとを係合させる。この実施形態では、連結部材3として面ファスナーを使用した場合を示したが、送水時の水圧に応じて、連結部材3の適切な長さやホース本体2の端部2a,2bに対する配置箇所が異なるため、連結部材3の長さや配設箇所を適宜変更した上で使用することができる。或いは、第1のホース1Xの端部2aと第2のホース1Yの端部2bとを突き合わせて配置せずに、第1のホース1Xを第2のホース1Yの内部に挿入して第1のホース1Xのホース本体2と第2のホース1Yのホース本体2とが一部で重なるように配置しても良い。いずれの方法を採用するかは連結部材3の種類や長さ、又は送水時の水圧等に応じて決まる。
【0019】
このような連結作業を繰り返し行なうことで複数本のホースを1本の連続したホースとして使用することができる。その後、第1のホース1X側にある水源から、低圧の条件下(0.1MPa~0.5MPaの範囲内)で送水することにより、第1のホース1Xの筒状体10が水圧により径方向に拡張又は膨張し、第2のホース1Yの内壁面に密着する。これにより、第1のホース1Xと第2のホース1Yとが強固に連結した状態となる。
【0020】
上述したホースでは、ホース本体2の長手方向の両端部2a,2bに配設された非金属を主体とする連結部材3を備えているので、従来の金属製の連結部(継手)に比べて、連結部の重量を大幅に低減することができる。また、ホース本体2の長手方向の一方の端部2aに配設された樹脂製の筒状体10は一方の端部10aのみがホース1に対して固定されているので、他方の端部10bは柔軟に可動することができ、連結されたホース1に通水した際、一方側のホース1の筒状体10が水圧により径方向に拡張又は膨張し、他方側のホース1の内壁面に密着する。これにより、連結部において十分な密閉性を確保できるので、連結部からの漏水を防止することができる。更に、その際、一方側のホース1の筒状体10と他方側のホース1の内壁面との間には摩擦力が生じ、連結部材3への負荷が軽減されるので、非金属を主体とする連結部材3を用いた場合であってもホース本体2の連結状態を良好に維持することができる。本発明では比較的簡便な連結構造により、連結部からの漏水を防ぎながら、ホース1の連結部の軽量化を図ると共に、ホース1の連結作業を容易に行うことが可能になる。
【0021】
上記ホースにおいて、筒状体10を構成する樹脂はポリウレタン、塩化ビニルのいずれかであることが好ましい。このような樹脂で筒状体10を構成することで、通水時の水圧により一方側のホース1の筒状体10が径方向に拡張又は膨張して、他方側のホース1の内壁面との摩擦力が増大し、密閉性が向上し、連結部からの漏水防止に寄与する。
【0022】
筒状体10の突き出し長さL(図3参照)は、50mm~2000mmの範囲にあることが好ましく、800mm~1500mmの範囲にあることがより好ましく、800mm~1000mmの範囲にあることが最も好ましい。このように筒状体10の突き出し長さLを適度に設定することで、一方側のホース1の筒状体10と他方側のホース1の内壁面との密着面積を十分に確保することができ、密閉性が向上し、連結部からの漏水防止に寄与する。
【0023】
次に本発明のホースの製造方法について説明する。図1に例示したホースを製造する場合、サーキュラー(円型)織機を用いてホース本体2を構成する筒状の織物を織成する。そして、この織物(ホース本体2)に対して、被覆層を内周面側から張りつける。
【0024】
或いは、織物(ホース本体2)に対して、内側被覆層を内周面側から張りつけると共に、外側被覆層を外周面側から張りつけることができる。或いは、1圧入工程による方法(ワンショット押出成形法)により内側被覆層及び外側被覆層を形成することもできる。具体的には、ホース本体2の外周面側から内周面側に向けて、熱可塑性樹脂をホース本体2内に圧入することにより、内側被覆層及び外側被覆層を形成する。このワンショット押出成形法により内側被覆層及び外側被覆層を形成した場合、熱可塑性樹脂が外周面側から内周面側までホース本体2の内部を貫通して一体的に存在するようになるため、全体で強固な一体構造となる。これにより、ホースが折れ曲がってキンクが発生することを効果的に抑制することができる。
【0025】
上述したいずれかの方法で形成されたホース1に対して、ホース本体2の両端部2a,2bの外周面に連結部材3を固定し、ホース本体2の一方の端部2aの内周面に筒状体10を固定する。これらの固定方法は特に限定されるものではないが、例えば、ホース1に対して連結部材3及び筒状体10をそれぞれ所定の箇所に縫い合わせた上で、その縫製部を樹脂等で被覆して漏水防止処理を施すことや、ホース1に対して連結部材3及び筒状体10をそれぞれ所定の箇所に接着剤等で接着することができ、或いはホース1に対して筒状体10を所定の箇所に溶着することもできる。
【0026】
本発明のホースの口径(図3の内径D)は、特に限定されるものではないが、口径を150mm~400mmの範囲とするとよい。また、本発明のホースの用途は、特に限定されるものではないが、送水時や排水時、吸水時等に使用可能な低水圧用ホースであることが好ましい。
【0027】
本発明を適用したホースの試作品を作製した。連結部材としてフランスカンベルトを採用し、ポリウレタンからなる筒状体を備えたホースを用いて、水圧0.2MPaの条件下で送水試験を実施した。その結果、ホースの連結部からの漏水がないことが確認された。即ち、従来の金属製の連結部(継手)に比べ、軽量かつ簡便な連結構造により、ホースの連結部において十分な密閉性を確保できることが確認された。
【符号の説明】
【0028】
1 ホース
2 ホース本体
2a,2b 端部
3 連結部材
10 筒状体
10a,10b 端部
図1
図2
図3
図4