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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024013236
(43)【公開日】2024-01-31
(54)【発明の名称】生物学的検出チップとその適用
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/34 20060101AFI20240124BHJP
   C12N 15/40 20060101ALI20240124BHJP
   C12N 15/50 20060101ALI20240124BHJP
   C12Q 1/6834 20180101ALI20240124BHJP
   C12Q 1/6825 20180101ALI20240124BHJP
   C07K 16/18 20060101ALI20240124BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20240124BHJP
   G01N 27/414 20060101ALI20240124BHJP
   G01N 27/327 20060101ALI20240124BHJP
   G01N 33/569 20060101ALI20240124BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20240124BHJP
   C07K 16/10 20060101ALN20240124BHJP
【FI】
C12M1/34 Z
C12M1/34 F ZNA
C12N15/40
C12N15/50
C12Q1/6834 Z
C12Q1/6825 Z
C07K16/18
C12N15/13
G01N27/414 301P
G01N27/414 301V
G01N27/414 301R
G01N27/327 357
G01N27/414 301N
G01N33/569 L
G01N33/53 F
C07K16/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023117711
(22)【出願日】2023-07-19
(31)【優先権主張番号】63/390,347
(32)【優先日】2022-07-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】501201465
【氏名又は名称】凌陽科技股▲ふん▼有限公司
(71)【出願人】
【識別番号】523045766
【氏名又は名称】高熹騰
(74)【代理人】
【識別番号】100201329
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 真二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100167601
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 信之
(74)【代理人】
【識別番号】100220917
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 忠大
(72)【発明者】
【氏名】邱明堂
(72)【発明者】
【氏名】林韋豪
(72)【発明者】
【氏名】高熹騰
(72)【発明者】
【氏名】鄭采和
(72)【発明者】
【氏名】林師緯
(72)【発明者】
【氏名】李奕蝉
【テーマコード(参考)】
4B029
4B063
4H045
【Fターム(参考)】
4B029AA07
4B029BB17
4B029BB20
4B029CC01
4B029FA15
4B029GA03
4B029GA08
4B029GB06
4B029GB10
4B063QQ03
4B063QQ08
4B063QQ52
4B063QQ96
4B063QR35
4B063QR72
4B063QR77
4B063QS33
4B063QS34
4B063QS36
4B063QS39
4B063QX05
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA50
4H045EA53
4H045FA72
4H045FA74
(57)【要約】      (修正有)
【課題】感度が低い、検出時間が長い、操作が複雑といった多くの欠点が改善された新しい生物学的検出チップ、および生物学的検出チップを使用する検出方法を提供する。
【解決手段】本発明は、生物学的検出チップとその適用を開示する。生物学的検出チップは、並列した複数のトランジスタを含む。トランジスタはそれぞれ、基板層、浮遊ゲート、延長金属コネクタ、延長ゲート、および生物学的検出層を含む。生物学的検出チップは、生物学的検出のための表面修飾方法実施後に生物学的プローブと組み合わせる。生物学的検出に、ブタ繁殖・呼吸障害症候群ウイルス(PRRSV)、ブタ流行性下痢ウイルス(PEDV)、およびコルチゾール検出がある。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の行と複数の列とを有するアレイに配置された複数のトランジスタを含み、前記複数のトランジスタのそれぞれは、前記複数の行の1つと前記複数の列の1つの中に配置され、ならびに前記複数のトランジスタのそれぞれは、
共用ソース、共用ドレイン、および前記共用ソースと前記共用ドレインの間に配置されたチャネル領域を含む基板層、
前記チャネル領域上に配置され、かつ酸化ポリシリコン層を含む浮遊ゲート、
前記浮遊ゲート上に配置された延長金属コネクタ、
前記延長金属コネクタ上に配置され、かつ前記延長金属コネクタを通して前記浮遊ゲートと電気的に接続された延長ゲート、ならびに、
前記延長ゲート上に配置され、かつ固定化領域および前記固定化領域上に固定化された少なくとも1つの生物学的プローブを含む生物学的検出層、を含む生物学的検出チップであって、
複数の前記生物学的検出層は、前記生物学的検出チップの表面に、並列した複数の生物学的検出領域を形成し、ならびに、
前記複数の行の同一行に配置された前記複数のトランジスタは、並列に接続されており、ならびに、
前記複数の列の同一列に配置された隣接する2つのトランジスタの前記浮遊ゲートは、前記隣接する2つのトランジスタ間の共用ソースもしくは共用ドレインまでの距離がほぼ同じであるか、または前記複数の列の同一列に配置された隣接する2つのトランジスタの前記浮遊ゲートは、前記隣接する2つのトランジスタ間の共用ソースもしくは共用ドレインと重なる距離がほぼ同じであることを特徴とする、
生物学的検出チップ。
【請求項2】
前記固定化領域は、表面修飾方法によって前記延長ゲートの表面に作製され、前記表面修飾方法は、3-アミノプロピルトリメトキシシラン-グルタルアルデヒド(APTES-GA)修飾法、3-アミノプロピルトリメトキシシラン-N-ヒドロキシスクシンイミド(APTES-NHS)修飾法、3-アミノプロピルトリメトキシシラン-ビオチン(APTES-ビオチン)修飾法、および3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(GPTMS)修飾法からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の生物学的検出チップ。
【請求項3】
前記固定化領域は、次式からなる群から選択される化学構造を複数含むことを特徴とする、請求項1に記載の生物学的検出チップ。
【化1】
【請求項4】
前記生物学的検出チップはブタ繁殖・呼吸障害症候群ウイルス(PRRSV)を検出するためのものであり、前記生物学的プローブは、SEQ ID NO:1からSEQ ID NO:11の合成オリゴヌクレオチドのうち少なくとも1つを含むことを特徴とする、請求項1に記載の生物学的検出チップ。
【請求項5】
前記生物学的検出チップはブタ流行性下痢ウイルス(PEDV)を検出するためのものであり、前記生物学的プローブは、SEQ ID NO:12からSEQ ID NO:15の合成オリゴヌクレオチドのうち少なくとも1つを含むことを特徴とする、請求項1に記載の生物学的検出チップ。
【請求項6】
前記生物学的検出チップはコルチゾールを検出するためのものであり、前記生物学的プローブは抗コルチゾール抗体であることを特徴とする、請求項1に記載の生物学的検出チップ。
【請求項7】
生物学的標的を検出する方法であって、
請求項1に記載の生物学的検出チップを提供するステップ、
並列に接続された前記複数の生物学的検出領域にブランク試料を載置し、前記複数のトランジスタのゲート電圧およびドレイン電流を測定して基準線を定めるステップ、
前記複数の生物学的検出領域に試験試料を所定時間載置するステップ、
前記複数の生物学的検出領域を前記ブランク試料で洗浄するステップ、
前記複数のトランジスタのゲート電圧およびドレイン電流を測定して測定線を定めるステップ、ならびに、
前記測定線を前記基準線と比較して、前記試験試料が前記生物学的標的を含有しているかを決定するステップ、を含む、
生物学的検出法。
【請求項8】
前記生物学的標的はブタ繁殖・呼吸障害症候群ウイルス(PRRSV)であり、前記生物学的プローブはSEQ ID NO:1からSEQ ID NO:11の合成オリゴヌクレオチドのうち少なくとも1つを含むことを特徴とする、請求項7に記載の生物学的検出法。
【請求項9】
前記生物学的標的はブタ流行性下痢ウイルス(PEDV)であり、前記生物学的プローブは、SEQ ID NO:12からSEQ ID NO:15の合成オリゴヌクレオチドのうち少なくとも1つを含むことを特徴とする、請求項7に記載の生物学的検出法。
【請求項10】
前記生物学的標的はコルチゾールであり、前記生物学的プローブは抗コルチゾール抗体であることを特徴とする、請求項7に記載の生物学的検出法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
配列表はASCIIテキストファイルで提出
本願は、XML形式で電子的に提出された配列表を含む。XMLファイルは、2023年7月14日に作成された、サイズが17,193バイトの「P23-0152JP Sequence Listing.xml」という名称の配列表を含む。このXMLファイルに含まれる配列表は、本明細書の一部であり、その全体が本明細書に援用される。
【0002】
本発明は、生物学的検出チップとその適用、特に、並列した複数のトランジスタを有する生物学的検出チップ、および生物学的検出チップを使用する検出方法に関する。
【背景技術】
【0003】
生物学的検出技術は、多くの場合、検出対象となる物理的または化学的変化をもたらす抗原抗体結合や核酸ハイブリダイゼーションといった生体分子間の特異的な相互作用に依存して、試験試料中の生物学的標的の存在を決定する。しかし、イムノアッセイや逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)などの従来の生物学的検出方法は、実験室以外での実施が困難な場合が多い。これらの方法は複雑で時間がかかり、特殊機器や専門知識が必要となる。例えば、ブタ関連ウイルスの従来の検出方法の場合、養豚場で試料を採取し、検査室に輸送して検査しなければならない。一部の東南アジア諸国など検査施設が限られている地域では、検査結果が出るまでの待ち時間が1週間を超えることもあり、疾病対策が遅れる危険がある。
【0004】
このように、従来の生物学的検出法には、感度が低い、検出時間が長い、操作が複雑といった多くの欠点があり、生物学的検出法を改善する必要がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
一態様では、本発明は、複数の行と複数の列とを有するアレイに配置された複数のトランジスタを含み、複数のトランジスタのそれぞれが、複数の行の1つと複数の列の1つの中に配置され、ならびに複数のトランジスタのそれぞれが、共用ソース、共用ドレイン、および共用ソースと共用ドレインの間に配置されたチャネル領域を含む基板層、チャネル領域上に配置され、かつ酸化ポリシリコン層を含む浮遊ゲート、浮遊ゲート上に配置された延長金属コネクタ、延長金属コネクタ上に配置され、かつ延長金属コネクタを通して浮遊ゲートと電気的に接続された延長ゲート、ならびに延長ゲート上に配置され、かつ固定化領域および固定化領域上に固定化された少なくとも1つの生物学的プローブを含む生物学的検出層を含む生物学的検出チップを提供する。
【0006】
いくつかの実施形態では、同一行に配置された複数のトランジスタは、並列に接続される。同一列にある複数のトランジスタのうち、隣接するトランジスタの各浮遊ゲートは、ほぼ同じ距離で互いに近接して配置される。隣接するトランジスタの各浮遊ゲートは、2つのトランジスタ間の共用ソースまたは共用ドレイン領域のごく近傍に位置しており、すなわち、同一列に配置された隣接する2つのトランジスタの浮遊ゲートは、隣接する2つのトランジスタ間の共用ソースまたは共用ドレインまでの距離がほぼ同じである。別法として、隣接するトランジスタの各浮遊ゲートは、2つのトランジスタ間の共用ソースまたは共用ドレイン領域の少なくとも一部と部分的に重なり、すなわち、同一列に配置された隣接する2つのトランジスタの浮遊ゲートは、隣接する2つのトランジスタ間の共用ソースまたは共用ドレインと重なる距離がほぼ同じである。
【0007】
いくつかの実施形態では、複数の生物学的検出層は、並列した複数の生物学的検出領域を生物学的検出チップの表面に形成する。
【0008】
いくつかの実施形態では、複数の生物学的検出領域は、マイクロ流路または試料タンクを含み得る。
【0009】
いくつかの実施形態では、固定化領域は、表面修飾方法によって延長ゲートの表面に作製され、表面修飾方法は、3-アミノプロピルトリエトキシシラン-グルタルアルデヒド(APTES-GA)、3-アミノプロピルトリエトキシシラン-N-ヒドロキシスクシンイミド(APTES-NHS)、3-アミノプロピルトリエトキシシラン-ビオチン(APTES-ビオチン)、および3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(GPTMS)表面修飾法からなる群から選択される。
【0010】
いくつかの実施形態では、固定化領域は、次式からなる群から選択される化学構造を複数含む。
【0011】
【化1】
【0012】
いくつかの実施形態では、生物学的プローブは、デオキシリボ核酸、リボ核酸、抗体、およびアプタマーのうち少なくとも1つを含む。生物学的プローブは、生物学的コンジュゲーションによって固定化領域に固定化される。
【0013】
いくつかの実施形態では、生物学的検出チップはブタ繁殖・呼吸障害症候群ウイルス(PRRSV)を検出するためのものであり、生物学的プローブは、SEQ ID NO:1からSEQ ID NO:11の合成オリゴヌクレオチドのうち少なくとも1つを含む。
【0014】
いくつかの実施形態では、生物学的検出チップはブタ流行性下痢ウイルス(PEDV)を検出するためのものであり、生物学的プローブは、SEQ ID NO:12からSEQ ID NO:15の合成オリゴヌクレオチドのうち少なくとも1つを含む。
【0015】
いくつかの実施形態では、生物学的検出チップはコルチゾールを検出するためのものであり、生物学的プローブは抗コルチゾール抗体である。
【0016】
別の態様では、本発明は、生物学的標的を検出する方法であって、本発明の生物学的検出チップを提供するステップ、並列に接続された複数の生物学的検出領域にブランク試料を載置し、複数のトランジスタのゲート電圧およびドレイン電流を測定して基準線を定めるステップ、複数の生物学的検出領域に試験試料を所定時間載置するステップ、複数の生物学的検出領域をブランク試料で洗浄するステップ、複数のトランジスタのゲート電圧およびドレイン電流を測定して測定線を定め、この測定線を基準線と比較して、試験試料が生物学的標的を含有しているかを決定するステップを含む方法を提供する。
【0017】
いくつかの実施形態では、生物学的標的は、ブタ繁殖・呼吸障害症候群ウイルス(PRRSV)、ブタ流行性下痢ウイルス(PEDV)、またはコルチゾールである。
【0018】
別の態様では、本発明は、前述の生物学的検出チップを使用してブタ繁殖・呼吸障害症候群ウイルス(PRRSV)を検出する方法を提供する。方法は、生物学的検出チップを使用して試験試料でPRRSV検出を実施することを含む。生物学的プローブは、SEQ ID NO:1からSEQ ID NO:11の合成オリゴヌクレオチドのうち少なくとも1つを含む。また、生物学的プローブは、ブタ繁殖・呼吸障害症候群ウイルス(PRRSV)に対する抗体であってもよい。
【0019】
別の態様では、本発明は、前述の生物学的検出チップを使用してブタ流行性下痢ウイルス(PEDV)を検出する方法を提供する。方法は、生物学的検出チップを使用して試験試料でPEDV検出を実施することを含む。生物学的プローブは、SEQ ID NO:12からSEQ ID NO:15の合成オリゴヌクレオチドのうち少なくとも1つを含む。また、生物学的プローブは、ブタ流行性下痢ウイルス(PEDV)に対する抗体であってもよい。
【0020】
別の態様では、本発明は、前述の生物学的検出チップを使用してコルチゾールを検出する方法を提供する。方法は、生物学的検出チップを使用して試験試料でコルチゾール検出を実施することを含む。生物学的プローブは抗コルチゾール抗体である。
【0021】
本発明で提供する生物学的検出チップには、感度が高い、検出が迅速、操作が簡単、精度が極めて高いといったいくつもの利点がある。生物学的検出層をトランジスタ構造と一体化することにより、生物学的検出の感度と利便性が向上する。検出機能が向上し、信号解析により検出時間が短縮される。また、ゲート電極の延在部が、部材の外部環境への曝露を防ぎ、それにより生物学的検出チップの安定性が向上し、使用期間が延長する。さらに、異なる生物学的プローブに置き換えることで、チップでさまざまな生物学的標的の検出が可能となり、生物学的検出チップの汎用性が高まるとともに、多様な産業での実装が促進される。
【0022】
添付の図面は、本発明の1つまたは複数の実施形態を示すものであり、書面による説明とともに、本発明の原理を説明するのに役立つ。可能な限り、実施形態の同一または類似の要素については、参照のために図面全体を通して同じ参照番号を使用する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本開示の一実施形態に従った生物学的検出チップの概略図である。
図2A】本開示の一実施形態における、図1の生物学的検出チップの点線AA’に沿った断面図である。
図2B】本開示の別の実施形態における、図1の生物学的検出チップの点線AA’に沿った断面図である。
図3A】本開示の一実施形態に従った3-アミノプロピルトリエトキシシラン-グルタルアルデヒド(APTES-GA)修飾法の概略図である。
図3B】本開示の別の実施形態に従った3-アミノプロピルトリエトキシシラン-N-ヒドロキシスクシンイミド(APTES-NHS)修飾法の概略図である。
図3C】本開示の別の実施形態に従った3-アミノプロピルトリエトキシシラン-ビオチン(APTES-ビオチン)修飾法の概略図である。
図4】本開示の別の実施形態に従った、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(GPTMS)修飾法の概略図である。
図5】本開示の一実施形態に従った生物学的検出法の流れ図である。
図6】本開示の一実施形態に従った生物学的検出法の回路図である。
図7A】本開示の実施例1に従った抗体プローブを備える生物学的検出チップで検出したブタ繁殖・呼吸障害症候群ウイルス(PRRSV)の電気曲線図である。
図7B】本開示の実施例1に従った抗体プローブを備える生物学的検出チップで検出したブタ繁殖・呼吸障害症候群ウイルス(PRRSV)の信号量子化グラフである。
図7C】本開示の実施例1に従ったDNAプローブを備える生物学的検出チップで検出したブタ繁殖・呼吸障害症候群ウイルス(PRRSV)の電気曲線図である。
図7D】本開示の実施例1に従ったDNAプローブを備える生物学的検出チップで検出したブタ繁殖・呼吸障害症候群ウイルス(PRRSV)の信号量子化グラフである。
図8A】本開示の実施例2に従った生物学的検出チップでブタ流行性下痢ウイルス(PEDV)を検出する特異性試験の信号量子化グラフである。
図8B】本開示の実施例2に従った生物学的検出チップでブタ流行性下痢ウイルス(PEDV)を検出する背景信号試験の信号量子化グラフである。
図8C】本開示の実施例2に従った生物学的検出チップでブタ流行性下痢ウイルス(PEDV)を検出する感度試験の信号量子化グラフである。
図9A】本開示の実施例3に従った生物学的検出チップで検出したコルチゾールの電気曲線図である。
図9B】本開示の実施例3に従った生物学的検出チップで検出したコルチゾールの信号量子化グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
生物学的検出の従来技術の欠点を踏まえ、本発明は、チップを生物学的検出技術に組み込み、生物学的検出を最適化する。本発明の生物学的チップは、認識要素を通じて標的物質と相互作用し、エネルギー変化をもたらす。これらのエネルギー変化は、続いて、その後の検出と解析のために信号に変換される。生物学的チップには、検出が迅速、操作が簡便、感度が高いといった利点がある。
【0025】
当然のことながら、上記の全般的な説明および以下の詳細な説明は、いずれも例示的かつ説明的なものであり、本発明を限定することを意図したものではない。本発明の1つまたは複数の実施形態の特定の詳細を以下の開示に記載する。本発明の他の特徴または利点は、以下の代表的な実施形態の非網羅的なリストおよび添付の特許請求の範囲から明らかになろう。
【0026】
本明細書において別段の定義がない限り、本開示に関連して使用される科学用語および技術用語は、当業者が一般的に理解する意味を有するものとする。さらに、文脈上別段の要求がない限り、単数形の用語は複数形を含み、複数形の用語は単数形を含むものとする。本開示の方法および技術は、一般に、当技術分野で周知の従来法に従って実施される。一般に、本明細書に記載する生化学、酵素学、分子生物学、細胞生物学、微生物学、遺伝学、タンパク質化学、核酸化学、およびハイブリダイゼーションに関連して使用される命名法ならびにこれらの技術は、当該技術分野において周知であり、一般的に使用されるものである。本開示の方法および技術は、一般に、当該技術分野で周知の従来法に従って実施され、別段の指示がない限り、本明細書を通して引用および検討されるさまざまな一般的およびより具体的な参考文献に記載されている通りである。
【0027】
本明細書で使用する単数形「a」、「an」、および「the」は、別段の指示がない限り、複数の言及を含む。例えば、「an excipient(賦形剤)」は、1つまたは複数の賦形剤を含む。
【0028】
本明細書で使用する語句「を含む」はオープンエンド形式であり、かかる実施形態が追加の要素を含み得ることを示す。これに対し、「からなる」という語句はクローズドエンド形式であり、かかる実施形態が追加の要素を含まない(微量不純物を除く)ことを示す。「から本質的になる」という語句は部分的にクローズドであり、かかる実施形態が、かかる実施形態の基本的特性を実質的に変化させない要素をさらに含み得ることを示す。
【0029】
本明細書において同義で使用する用語「ポリヌクレオチド」および「オリゴヌクレオチド」は、一本鎖DNA(ssDNA)、二本鎖DNA(dsDNA)、一本鎖RNA(ssRNA)、二本鎖RNA(dsRNA)、修飾オリゴヌクレオチドおよびオリゴヌクレオシド、またはこれらの組み合せを含む。オリゴヌクレオチドは、直鎖状または環状に構成されていてよい、または直鎖状および環状の両方のセグメントを含んでよい。オリゴヌクレオチドは、一般にホスホジエステル結合を介して結合したヌクレオシドのポリマーであるが、ホスホロチオエートエステルなどの代替結合もオリゴヌクレオチドに使用され得る。ヌクレオシドは、プリン(アデニン(A)もしくはグアニン(G)、もしくはそれらの誘導体)またはピリミジン(チミン(T)、シトシン(C)、もしくはウラシル(U)、もしくはそれらの誘導体)塩基が糖に結合したものである。DNAの4つのヌクレオシド単位(または塩基)は、デオキシアデノシン、デオキシグアノシン、チミジン、およびデオキシシチジンと呼ばれる。ヌクレオチドはヌクレオシドのリン酸エステルである。
【0030】
本明細書において同義で使用する「およそ」、「約」、および「ほぼ」は、一般に、併記されている数値のプラスマイナス10%を意味する。したがって、約1%は0.9~1.1%の範囲であることを意味する。本書に記載する数量は概算であり、明記されていない場合、用語「およそ」、「約」、または「ほぼ」が暗示されている可能性があることを意味する。
【0031】
本明細書で使用する用語「ほぼ同じ距離」は、2つの距離が等しいか、または第2の距離が第1の距離のプラスマイナス10%であることを指す。例えば、第1の距離が1cmであり、第2の距離が1cmまたは0.9~1.1cmである。
【0032】
本明細書で使用する用語「APTES-GA修飾法」は、3-アミノプロピルトリエトキシシラン(APTES)の処理に続いてグルタルアルデヒド(GA)の処理を行う表面修飾方法を指す。APTES-GA修飾法の詳細については、以下のB項「表面修飾方法」の説明を参照されたい。
【0033】
本明細書で使用する用語「APTES-NHS修飾法」は、3-アミノプロピルトリエトキシシラン(APTES)を用いたチップ表面の修飾とともに、N-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)で生物学的プローブの処理を行い、次いで、生物学的コンジュゲーションによってチップ表面に生物学的プローブをコンジュゲートする表面修飾方法を指す。APTES-NHS修飾法の詳細については、以下のB項「表面修飾方法」の説明を参照されたい。
【0034】
本明細書で使用する用語「APTES-ビオチン修飾法」は、3-アミノプロピルトリエトキシシラン(APTES)を用いたチップ表面の修飾とともに、ビオチンで生物学的プローブの処理を行い、次いで、生物学的コンジュゲーションによってチップ表面に生物学的プローブをコンジュゲートする表面修飾方法を指す。APTES-ビオチン修飾法の詳細については、以下のB項「表面修飾方法」の説明を参照されたい。
【0035】
本明細書で使用する用語「GPTMS修飾法」は、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(GPTMS)の処理を行う表面修飾方法を指す。GPTMS修飾法の詳細については、以下のB項「表面修飾方法」の説明を参照されたい。
【0036】
本明細書で使用する用語「生物学的標的」は、本発明の生物学的検出チップで検出する対象を指す。生物学的標的に、ブタ繁殖・呼吸障害症候群ウイルス(PRRSV)およびブタ流行性下痢ウイルス(PEDV)などの病原体、またはコルチゾールなどの生体分子があるがこれらに限定されない。
【0037】
本開示の技術的特徴、内容、および利点、ならびに達成が可能なこれらの効果を容易に理解できるよう、添付の図面を参照しながら、以下に、実施形態により本開示を詳細に説明する。一方で、本明細書で使用する図表は、概略的で本明細書を補助するためのものにすぎず、本開示の実施後に、実際の縮尺および正確な構成である必要はない。よって、添付の図面の縮尺および構成に従って、実際の実施に関する本開示の範囲を限定するように解釈すべきでない。
【0038】
A.生物学的検出チップの構造
本開示の一実施形態に従った生物学的検出チップの概略図である図1を参照されたい。図1に示すように、生物学的検出チップ1は、アレイの行に配列されたn個のトランジスタT1~Tnを含む。アレイは複数の行と複数の列とを有する。各トランジスタは、行の1つと列の1つの中に配置される。同一行にあるトランジスタは並列に接続される。トランジスタの量は、生物学的検出チップ1の必要に応じて決定できる。並列に接続されたトランジスタT1~Tnの構造は、上層ULと下層LLとを含む。トランジスタT1を例にとると、基板層10は、共用ソースS、共用ドレインD、および共用ソースSと共用ドレインDの間に配置されたチャネル領域を含む。浮遊ゲートFGは、共用ソースSと共用ドレインDの間のチャネル領域上に配置される。酸化ポリシリコン層PLは、浮遊ゲートFGの下に配置される。延長金属コネクタMTは、浮遊ゲートFG上のXブロックの位置に配置され、浮遊ゲートFGを通じて、X’ブロックの位置にある延長ゲートEGまで延在する。延長ゲートEGは延長金属コネクタMT上に配置される。これにより、延長ゲートEGは、上層ULの延長ゲートEGおよび下層LLの浮遊ゲートFGと電気的に接続される。
【0039】
さらに、図1に示すように、トランジスタT1の浮遊ゲートFGと、下の行にある隣接するトランジスタT1’の浮遊ゲートFGは、それぞれほぼ同じ距離で同一の共用ドレインDに近接していてよく、また、下の行にある隣接するトランジスタT1’の浮遊ゲートFGと、下の行の下にある隣接するトランジスタT1’’の浮遊ゲートFGは、それぞれほぼ同じ距離で同一の共用ソースSに近接していてよい。すなわち、トランジスタT1、T1’、およびT1’’は同一列に配置されており、トランジスタT1の浮遊ゲートFGとトランジスタT1’の浮遊ゲートFGは、トランジスタT1とT1’の間にある共用ドレインDまでの距離がほぼ同じである。同様に、トランジスタT1’の浮遊ゲートFGとトランジスタT1’’の浮遊ゲートFGは、トランジスタT1’とT1’’の間にある共用ソースSまでの距離がほぼ同じである。
【0040】
本実施形態では、延長ゲートEGは金属板電極である。延長ゲートEGは、延長金属コネクタMTを通じて被覆酸化ポリシリコン層PLと接続し、これにより、上層ULの延長ゲートEGは、浮遊ゲートFGに電気的に接続し得る。別の実施形態では、延長ゲートEGは、別の形状の金属電極であり得る。例えば、延長ゲートEGは、らせん状の電極であり得る。また、並列に接続されたn個のトランジスタT1~Tnのいくつかの行を、複数の検出層を備える構造を形成するよう配列できる。隣接する検出層は、各検出層間で共用ソースSまたは共用ドレインDを共有する。トランジスタT1~Tnを測定する場合、トランジスタT1~Tnは並列に接続する。共用ソースSはグランドに接続し、共用ドレインDは電流測定端子に接続し得る。延長ゲートEGに印加する電圧に基づいて、ドレイン電流の和を、生物学的検出の結果を判定するための検出データとして測定できる。
【0041】
生物学的検出を行うために、生物学的検出層BLはトランジスタT1~Tnの延長ゲートEG上に配置される。生物学的検出層BLは、特定の生物学的標的BTと結合できる。生物学的検出層BLが特定の生物学的標的BTと結合すると、トランジスタの電子的特徴が変化する。電流の測定を用いて、特定の生物学的標的BTが存在するかを決定する。生物学的検出層BLに関して、図2Aおよび2Bは、図1の生物学的検出チップの点線AA’に沿った断面図の2つの実施形態を示す。図2Aおよび2Bに示すように、生物学的検出チップ1は、複数の検出層を含む。複数の検出層はそれぞれ上層ULと下層LLとを含み、生物学的検出層BLは上層UL上に配置される。
【0042】
図2Aおよび2Bに示すように、トランジスタTnを例にとると、トランジスタTnは、共用ソースSと共用ドレインDとを含む。浮遊ゲートFGは、共用ソースSと共用ドレインDの間のチャネル領域上に配置される。浮遊ゲートFGは、延長金属コネクタMTを通じて延長ゲートEGと電気的に接続される。図2Aに示すように、一実施形態では、トランジスタTnの浮遊ゲートFGおよび隣接するトランジスタTn’の浮遊ゲートFGはそれぞれ、同一の共用ドレインDの少なくとも一部を覆い得、隣接するトランジスタTn’の浮遊ゲートFG、および隣接するトランジスタTn’に接する別のトランジスタTn’’の浮遊ゲートFGはそれぞれ、同一の共用ソースSの少なくとも一部を覆い得る。好ましい実施形態では、トランジスタTn、Tn’、およびTn’’は同一列に配置され、かつトランジスタTnの浮遊ゲートFGおよびトランジスタTn’の浮遊ゲートFGは、トランジスタTnとトランジスタTn’の間の共用ドレインDと重なる距離がほぼ同じである。同様に、トランジスタTn’の浮遊ゲートFGおよびトランジスタTn’’の浮遊ゲートFGは、トランジスタTn’とTn’’の間の共用ソースSと重なる距離がほぼ同じである。図2Bに示すように、別の実施形態では、トランジスタTnの浮遊ゲートFGおよび隣接するトランジスタTn’の浮遊ゲートFGはそれぞれ、同一の共用ドレインDのごく近傍に位置し得、トランジスタTn’の浮遊ゲートFGおよび他の隣接するトランジスタTn’’の浮遊ゲートFGはそれぞれ、同一の共用ソースSのごく近傍に位置し得る。好ましい実施形態では、トランジスタTn、Tn’、およびTn’’は同一列に配置され、かつトランジスタTnの浮遊ゲートFGおよびトランジスタTn’の浮遊ゲートFGは、トランジスタTnとトランジスタTn’の間の共用ドレインDまでの距離がほぼ同じである。同様に、トランジスタTn’の浮遊ゲートFGおよびトランジスタTn’’の浮遊ゲートFGは、トランジスタTn’とTn’’の間の共用ソースSまでの距離がほぼ同じである。
【0043】
生物学的検出層BLは延長ゲートEG上に配置される。固定化領域11は、表面修飾方法によって延長ゲートEGの表面に作製される。複数の生物学的プローブBPは、固定化領域11上に固定化され得る。
【0044】
本明細書で使用する生物学的プローブBPは、デオキシリボ核酸(DNA)、リボ核酸(RNA)、抗体、およびアプタマーを含むがこれらに限定されない生体分子であり得る。生物学的プローブBPは、生物学的コンジュゲーションによって固定化領域11上に固定化される。生物学的検出を実施すると、生物学的プローブBPが試料中の生物学的標的BTと結合し、生じた変化が、トランジスタTnから検出されるレイン電流信号に作用し得る。それにより、ドレイン電流信号に基づいて、特定の生物学的プローブBPに対応する生物学的標的BT、または生物学的標的BTの量を決定できる。
【0045】
生物学的検出チップ1は、並列に接続されたいくつかのトランジスタによって検出層を形成し得る。複数の検出層は、生物学的検出チップ1の表面に複数の生物学的検出領域BAを形成するために、さらに検出アレイを形成し得る。生物学的検出領域BAに生物学的検出溶液を包含するために、生物学的検出層BLに試料タンクTAを設置し、収容スペースを設け得る。これにより、生物学的検出溶液中の生物学的標的BTを、生物学的検出領域BA内に収容できる。生物学的検出溶液で生物学的検出チップ1の表面を覆い得ることにより、生物学的標的BTと、生物学的検出層BLの生物学的プローブBPとが接触し、互いに結合できる。本実施形態では、収容スペースは試料タンクTAである。しかしながら、収容スペースは異なる形状、例えば生物学的検出層BLに配置されたマイクロ流路であり得るがこれに限定されない。
【0046】
つまり、本発明は、複数の行と複数の列とを有するアレイに配置された複数のトランジスタを含み、複数のトランジスタのそれぞれが、複数の行の1つと複数の列の1つの中に配置され、ならびに複数のトランジスタのそれぞれが、
共用ソース、共用ドレイン、および共用ソースと共用ドレインの間に配置されたチャネル領域を含む基板層、チャネル領域上に配置され、かつ酸化ポリシリコン層を含む浮遊ゲート、浮遊ゲート上に配置された延長金属コネクタ、延長金属コネクタ上に配置され、かつ延長金属コネクタを通して浮遊ゲートと電気的に接続された延長ゲート、ならびに延長ゲート上に配置され、かつ固定化領域および固定化領域上に固定化された少なくとも1つの生物学的プローブを含む生物学的検出層を含む生物学的検出チップを提供する。
【0047】
いくつかの実施形態では、同一行に配置された複数のトランジスタは、並列に接続される。同一列にある複数のトランジスタのうち、隣接するトランジスタの各浮遊ゲートは、ほぼ同じ距離で互いに近接して配置される。同一列に配置された隣接する2つのトランジスタの浮遊ゲートは、隣接する2つのトランジスタ間の共用ソースまたは共用ドレインまでの距離がほぼ同じである。別法として、同一列に配置された隣接する2つのトランジスタの浮遊ゲートは、隣接する2つのトランジスタ間の共用ソースまたは共用ドレインと重なる距離がほぼ同じである。
【0048】
いくつかの実施形態では、複数の生物学的検出層は、並列した複数の生物学的検出領域を生物学的検出チップの表面に形成する。
【0049】
いくつかの実施形態では、固定化領域は、次式からなる群から選択される化学構造を複数含む。
【0050】
【化2】
【0051】
B.表面修飾方法
本開示の生物学的検出チップの固定化領域は、表面修飾方法によって、延長ゲートの表面に作製される。いくつかの実施形態では、表面修飾方法は、APTES-GA修飾法、APTES-NHS修飾法、APTES-ビオチン修飾法、およびGPTMS修飾法の1つである。表面修飾方法のそれぞれに関する詳細を以下に記載する。
【0052】
図3A~4に示すように、生物学的検出チップの製造方法では、最初にソース領域101、ドレイン領域102、およびチャネル領域103を形成する。次いで、チャネル領域103上に浮遊ゲートFGを形成する。酸化ポリシリコン層PLは浮遊ゲートFGの下に配置し、金属コネクタは浮遊ゲートFG上に配置して、さらに延長ゲートEGに接続する。
【0053】
図3Aに示すように、APTES-GA修飾法に関わるステップを以下に記載する。最初に、パッケージングされたチップをアセトン中で超音波処理し、次いで95%エタノール中で超音波処理した後、90~120℃で乾燥させてエタノールを除去した。続いて、チップに酸素プラズマ処理を行って、ヒドロキシル基(-OH)を延長ゲートEGSの表面に組み込んだ。その後、エタノールに溶解した3-アミノプロピルトリエトキシシラン(APTES)にチップを約30分間浸漬した後、超音波処理を行った。次いで、チップを90~120℃で乾燥させてエタノールを除去し、APTESのアミン基(-NH)を延長ゲートEGSのヒドロキシル化表面に結合させた。次に、チップをグルタルアルデヒド(GA)溶液に約30分間浸漬することにより、延長ゲートEGSの表面をアルデヒド基(-CHO)で修飾した。続いて、アミノ基(-NH)を有する多数の生物学的プローブBPを、固定化領域11のアルデヒド基にコンジュゲートすることで、生物学的プローブBPをチップ上に固定化した。ウシ血清アルブミン(BSA)などの遮断剤で処理した後、チップを洗浄し、窒素ガスで乾燥させ、真空貯蔵またはさらなる使用のために型内に載置した。
【0054】
上述したAPTES-GA修飾法による表面修飾後、固定化領域は、次式に示す化学構造を複数含む。
【0055】
【化3】
【0056】
図3Bに示すように、APTES-NHS修飾法に関わるステップを以下に記載する。最初に、パッケージングされたチップをアセトン中で超音波処理し、次いで95%エタノール中で超音波処理した後、90~120℃で乾燥させてエタノールを除去した。続いて、チップに酸素プラズマ処理を行って、ヒドロキシル基(-OH)を延長ゲートEGSの表面に組み込んだ。その後、エタノールに溶解した3-アミノプロピルトリエトキシシラン(APTES)にチップを約30分間浸漬した後、超音波処理を行った。次いで、チップを90~120℃で乾燥させてエタノールを除去し、APTESのアミン基(-NH)を延長ゲートEGSのヒドロキシル化表面に結合させた。続いて、N-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)基を有する多数の生物学的プローブBPを、固定化領域11のアミン基に約30分間コンジュゲートすることで、生物学的プローブBPをチップ上に固定化した。BSAなどの遮断剤で処理した後、チップを洗浄し、窒素ガスで乾燥させ、真空貯蔵またはさらなる使用のために型内に載置した。
【0057】
上述したAPTES-NHS修飾法による表面修飾後、固定化領域は、次式に示す化学構造を複数含む。
【0058】
【化4】
【0059】
図3Cに示すように、APTES-ビオチン修飾法に関わるステップを以下に記載する。最初に、パッケージングされたチップをアセトン中で超音波処理し、次いで95%エタノール中で超音波処理した後、90~120℃で乾燥させてエタノールを除去した。続いて、チップに酸素プラズマ処理を行って、ヒドロキシル基(-OH)を延長ゲートEGSの表面に組み込んだ。その後、エタノールに溶解した3-アミノプロピルトリエトキシシラン(APTES)にチップを約30分間浸漬した後、超音波処理を行った。次いで、チップを90~120℃で乾燥させてエタノールを除去し、APTESのアミン基(-NH)を延長ゲートEGSのヒドロキシル化表面に結合させた。続いて、ビオチン基を有する多数の生物学的プローブBPを、固定化領域11のアミン基に約30分間コンジュゲートすることで、生物学的プローブBPをチップ上に固定化した。BSAなどの遮断剤で処理した後、チップを洗浄し、窒素ガスで乾燥させ、真空貯蔵またはさらなる使用のために型内に載置した。
【0060】
上述したAPTES-ビオチン修飾法による表面修飾後、固定化領域は、次式に示す化学構造を複数含む。
【0061】
【化5】
【0062】
いくつかの実施形態では、3-アミノプロピルトリエトキシシラン(APTES)をエポキシ樹脂溶液に置き換えて、チップ上の延長ゲートEGSの表面を修飾できる。
【0063】
図4に示すように、GPTMS修飾法に関わるステップを以下に記載する。最初に、パッケージングされたチップをアセトン中で超音波処理し、次いで95%エタノール中で超音波処理した後、90~120℃で乾燥させてエタノールを除去した。続いて、チップに酸素プラズマ処理を行って、ヒドロキシル基(-OH)を延長ゲートEGSの表面に組み込んだ。その後、無水エタノールに溶解した3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(GPTMS)にチップを浸漬した後、無水エタノール中で超音波処理を行った。次いで、チップを90~120℃で乾燥させてエタノールを除去し、GPTMSのエポキシド基を延長ゲートEGSのヒドロキシル化表面に結合させた。続いて、アミノ基(-NH)を有する多数の生物学的プローブBPを、固定化領域11のエポキシド基にコンジュゲートすることで、生物学的プローブBPをチップ上に固定化した。BSAなどの遮断剤で処理した後、チップを洗浄し、窒素ガスで乾燥させ、真空貯蔵またはさらなる使用のために型内に載置した。
【0064】
上述したGPTMS修飾法による表面修飾後、固定化領域は、次式に示す化学構造を複数含む。
【0065】
【化6】
【0066】
C.生物学的検出法
本発明は、図5に示す以下のステップ(S1~S5)を含む生物学的検出法も提供する。
【0067】
ステップS1:本発明の生物学的検出チップを提供する。
【0068】
ステップS2:並列に接続された複数の生物学的検出領域にブランク試料を載置し、複数のトランジスタのゲート電圧およびドレイン電流を測定して基準線を定める。本開示の一実施形態に従った生物学的検出法の回路図である図6に示すように、生物学的検出チップは、並列に接続されたトランジスタnmosによって形成された検出層を含む。トランジスタnmosの共用ソースSはグランドに接続し、共用ドレインDは電流計測器Mに接続する。ゲート電極は延長ゲートEGまで延在する。中性緩衝液などのブランク試料を生物学的検出領域に配置して生物学的検出層の延長ゲートEGを覆った後、延長ゲートEGにさまざまなゲート電圧、例えば0~2Vを印加する。次いで、電流計測器Mで共用ドレインDの出力電流I1~Inを測定する。トランジスタnmosは並列に接続されているため、出力電流I1~Inの和は電圧変換器ADCを通じてデジタル信号に変換できる。ドレイン電流の情報は出力端子OUTPUTから出力され、それに応じて測定の基準線が設定される。
【0069】
本実施形態では、生物学的検出チップはさらに増幅器OPを含む。増幅器OPの入力端子は、基準電圧VREFおよび共用ドレインDと並列して接続する。増幅器OPの出力端子はトランジスタnmosの制御端末に連結する。トランジスタnmosは電流計測器Mに連結する。別の実施形態では、共用ソースSおよび共用ドレインDは、接点を通じて電源および信号収集装置に接続し得る。ソース電流の情報は、外部装置で収集できる。
【0070】
ステップS3:複数の生物学的検出領域に試験試料を所定時間載置する。試験試料液は生物学的検出領域に載置する。例えば、試験試料を試料タンクに一定時間載置することにより、生物学的標的が生物学的検出層の生物学的プローブと結合できる。試験試料の反応時間は、生物学的標的種によって決定する。
【0071】
ステップS4:複数の生物学的検出領域をブランク試料で洗浄する。いくつかの実施形態では、試験試料中の生物学的標的が完全に生物学的プローブに結合するように、ステップS3およびS4を数回繰り返す。繰り返す回数は、試験試料の濃度や生物学的プローブの結合特性などさまざまなパラメータによって決定する。
【0072】
ステップS5:複数のトランジスタのゲート電圧およびドレイン電流を測定して測定線を定め、この測定線を基準線と比較して、試験試料が生物学的標的を含有しているかを決定する。反応(S3)および洗浄(S4)ステップの後、再び延長ゲートEGにさまざまなゲート電圧を印加する。電流計測器Mで共用ドレインDの出力電流I1~Inを測定し、出力電流I1~Inの和を、電圧変換器ADCを通じてデジタル信号に変換する。ドレイン電流の情報は出力端子OUTPUTから出力され、それに応じて測定の基準線が設定される。次いで、測定線を基準線と比較して、測定線が基準線からどの程度逸脱しているかを決定し、さらに、逸脱の程度に基づいて、試験試料が生物学的標的を含んでいるかを決定する。試験試料が生物学的標的を含んでいない場合、検出チップ上の生物学的プローブには何も結合せず、チップのゲート電荷には変化が生じないため、測定線は基準線から明らかに逸脱することはない。これに対し、試験試料が生物学的標的を含んでいる場合、検出チップ上の生物学的プローブは生物学的標的と結合し、チップのゲート電荷が変化するため、測定線は基準線から逸脱する。したがって、測定線に基準線からの明らかな逸脱がない場合、試験試料は生物学的標的を含有しないと決定される。しかし、測定線が基準線から所定のレベルを超えて逸脱している場合、試験試料は生物学的標的を含有すると決定される。
【0073】
いくつかの実施形態では、生物学的標的は、ブタ繁殖・呼吸障害症候群ウイルス(PRRSV)、ブタ流行性下痢ウイルス(PEDV)、およびコルチゾールの1つである。異なる生物学的プローブを使用することにより、本発明の生物学的検出チップを用いてさまざまな生物学的標的を検出できる。さらに、本発明の生物学的検出チップは、ヒトの唾液または血液中の病原体やタンパク質などの各種試験試料を検出できる。
【0074】
いくつかの実施形態では、電気測定時に、検出対象の生物学的標的に応じて0~2V(0、0.03、0.06...2V)または1.5~3Vの電圧を試料タンクに印加する。電圧値は全部で63ある。測定ソフトウェアは、各印加電圧の下で、センシング領域から半導体装置に伝達される電圧値を記録する。このプロセスにより63組の数値が生成され、続いてこれをプロットして電気曲線を作成する。また、本明細書で使用する用語「チップ信号値」は、信号を定量化することを指す。この定量化は台形公式によって計算し、これを用いて標準曲線と試料曲線の間の面積を計算する。計算は以下のように行う。|((標的2+標的1)*1/2)-((ベースライン2+ベースライン1)*1/2))|+|((標的3+標的2)*1/2)-((ベースライン3+ベースライン2)*1/2))|+...+|((標的63+標的62)*1/2)-((ベースライン63+ベースライン62)*1/2))|。
【0075】
以下の実施例によって本発明をさらに説明するが、これらは決してさらに限定するものとして解釈されるべきでない。本出願を通じて引用されるすべての参考文献(文献参照、発行された特許、公開された特許出願、および同時係属特許出願を含む)の内容全体が本明細書に明示的に援用される。
【実施例0076】
ブタ繁殖・呼吸障害症候群ウイルス(PRRSV)の検出
実施例1.1 抗体プローブの検出
本実施例では、生物学的標的はPRRSVである。本実施例では、APTES-GA修飾法を用いて生物学的検出チップの表面を修飾し、抗体(PRRSV-Nタンパク質抗体、カタログ番号:orb526689、Biorbyt Ltd.、英国ケンブリッジ)を生物学的プローブとして使用した。
【0077】
本実施例の試験試料は、精製PRRSVウイルスタンパク質および精製PEDVウイルスタンパク質であった。タンパク質試料は、リン酸緩衝食塩水(PBS)を用いた連続希釈によって調製した後、放射性免疫沈降アッセイ緩衝液(RIPA)を用いて15分間細胞溶解を行った。調製したタンパク質試料は、25mMのトリスHCl緩衝液でさらに希釈した。希釈後、試験試料中のウイルスタンパク質の濃度は以下の通りであった。PEDV:1fg/mL(試料1、陰性対照として)、PRRSV:0.1fg/mL(試料2)、PRRSV:100fg/mL(試料3)、PRRSV:100pg/mL(試料4)、およびPRRSV:100ng/mL(試料5)。これらの試料を調製して、PRRSV用の生物学的検出チップのタンパク質検出能を調べた。
【0078】
いくつかの実施形態では、生物学的プローブは抗PRRSV抗体であり、これはモノクローナルまたはポリクローナル抗体であり得る。抗PRRSV抗体の例に、PRRSV-Nタンパク質抗体(カタログ番号:orb526689、Biorbyt Ltd.)、組み替えマウス抗PRRSV ORF7抗体(ICA7)(カタログ番号:EPAF-0626LC、Creative Biolabs Inc.、米国ニューヨーク州シャーリー)、およびPRRSV-GP5ポリクローナル抗体(カタログ番号:BS-4504R、Bioss Antibodies、米国マサチューセッツ州ウーバン)があるがこれらに限定されない。
【0079】
本実施例の実験手順は以下のステップを含む。100μLのブランク試料(ビス-トリスプロパン、BTP)を試料タンクに添加し、約10分間室温でインキュベートする。電気測定を実施し、ベースライン(標準曲線)を作成する。100μLの試験試料を試料タンクに添加し、約30分間室温でインキュベートする。試験試料を除去し、試料タンクをブランク試料で洗浄する。再びブランク試料(BTP)を試料タンクに添加し、約10分間室温でインキュベートする。電気測定を実施し、試料測定結果の電気曲線(試料曲線)を得る。さらなる解析のために標準曲線と試料曲線を比較する。
【0080】
実験結果については、図7Aおよび7Bを参照されたい。図7Aに示すように、試料2~5(PRRSV精製ウイルスタンパク質を含有する試料)の電気曲線は、濃度依存的に標準曲線(ベースライン)から有意に逸脱し、本発明の生物学的検出チップに定量的効果の可能性があることを示している。また、PEDV試料(試料1、陰性対照)の電気曲線は試料2~5の電気曲線と比較して標準曲線に有意に近く、本発明の生物学的検出チップはPRRSVに対して特異性が高いことを示している。さらに、図7Bに示すように、信号を定量化したところ、結果から、本発明の生物学的検出チップが、0.1fg/mL(試料2)という極めて低い濃度でPRRSVウイルスタンパク質の存在を検出し、チップの感度の高さを実証していることがわかる。
【0081】
実施例1.2 核酸プローブの検出
本実施例では、生物学的標的はPRRSVである。本実施例では、GPTMS修飾法を用いて生物学的検出チップの表面を修飾し、核酸プローブを生物学的プローブとして使用した。核酸プローブは、SEQ ID NO:1からSEQ ID NO:11の合成オリゴヌクレオチドのうち少なくとも1つを含んでいた。
【0082】
本実施例では、PRRSVを含有する試料を使用した。試料はVLL緩衝液(LabTurbo Virus Mini Kit、LVN480-200、LabTurbo Biotech Corporation、台湾台北市)で15分間細胞溶解を行い、次いで、25mMのトリスHCl緩衝液でPRRSV(試料6)を0.24コピー/μLおよびPRRSV(試料7)を240コピー/μLの濃度まで希釈した。本実施例の品質対照(陰性対照)は緩衝液のみを含有していた。これらの試料を調製して、PRRSV用の生物学的検出チップのRNAフラグメント検出能を調べた。実験手順は、実施例1.1に記載したものと同一であった。
【0083】
実験結果については、図7Cおよび7Dを参照されたい。図7Cに示すように、試料6および7の電気曲線は、わずかに濃度依存的に、標準曲線(ベースライン)から有意に逸脱し、本発明の生物学的検出チップに定量的効果の可能性があることを示している。さらに、図7Dに示すように、信号を定量化したところ、結果から、本発明の生物学的検出チップが、試験試料中の少なくとも0.24コピー/μLの濃度でPRRSV RNAの存在を検出することがわかる。これに対し、従来のqPCRで0.24コピー/μLのPRRSV RNA試料の陽性信号を検出するには、36超のCt値が必要となる。これらの結果から、本発明の生物学的検出チップが従来の検出技術と比較して高い感度を示すことがわかる。
【実施例0084】
ブタ流行性下痢ウイルス(PEDV)の検出
本実施例では、生物学的標的はPEDVである。本実施例では、APTES-NHS修飾法を用いて生物学的検出チップの表面を修飾し、核酸プローブを生物学的プローブとして使用した。核酸プローブは、SEQ ID NO:12からSEQ ID NO:15の合成オリゴヌクレオチドのうち少なくとも1つを含む。
【0085】
実施例2.1 異なる病原体を含有する試料を用いた特異性試験
本実施例の試験試料は、大腸菌(E.coli)、豚コレラ菌(Sal.C)、豚デルタコロナウイルス(SDCoV)、伝染性胃腸炎ウイルス(TGEV)、ロタウイルス(RV)、およびPEDVを含むさまざまなブタ病原体を含有する試料であった。これらの試料はVLL溶解緩衝液(LabTurbo(登録商標)Virus Mini Kit、LVN480-200)で10分間細胞溶解を行い、各試料の溶解液を得た。次いで、25mMのトリスHCl緩衝液で希釈して試料の濃度を調節した。これらの試料を調製して、PEDV用の生物学的検出チップの検出特異性を調べた。
【0086】
本実施例では、ブランク試料(BTP)および試験試料のインキュベーション時間をそれぞれ5分間および15分間とした以外は、実施例1.1に記載したものと同一の実験手順であった。
【0087】
試験結果は図8Aに示す。PEDV試料が最強の信号を示したのに対し、E.coli、Sal.C、SDCoV、TGEV、およびRVなど他の溶解病原体の信号はすべて、PEDV試料よりも有意に低く、本発明の生物学的検出チップはPEDVに対して特異性が高いことを示している。
【0088】
実施例2.2 PEDVフリーブタのさまざまな部位の試料を用いた試験
本実施例では、PEDVフリーブタのさまざまな部位から採取した試料を試験し、これらのPEDV陰性試料の背景信号値を決定し、さらに、本発明の生物学的検出チップを用いてブタ病原体を検出するのに適した、背景信号が低い試料の種類を決定する。本実施例で使用するPEDV陰性試料に、直腸スワブ試料(RI)、回腸内容物試料(CI)、糞便試料(FC)、および小腸粘膜の乳濁液試料(SI)がある。陽性対照として溶解PEDV液を使用した。実験は6回繰り返した(n=6)。実験手順は、実施例2.1に記載したものと同一であった。
【0089】
試験結果は図8Bに示す。RI試料、CI試料、FC試料、およびSI試料の信号値はすべて、溶解PEDV液試料(PEDV)よりも有意に低く、本発明の生物学的検出チップが、背景信号の干渉を受けずにさまざまな種類の試料を正確に検出できることを示している。
【0090】
実施例2.3 感度試験
本実施例では、RNA濃度の異なるPEDV試料を使用して、本発明の生物学的検出チップの感度試験を実施した。PEDV原液のRNA濃度をqPCRで定量化した後に、段階希釈を行った。試験試料は、品質対照(陰性対照、緩衝液のみ)、1.5×10コピー/μLのPEDV(試料1)、1.5×10コピー/μLのPEDV(試料2)、および1.5×10コピー/μLのPEDV(試料3)であった。各試料を生物学的検出チップで試験した。実験手順は、実施例2.1に記載したものと同一であった。
【0091】
試験結果は図8Cに示す。本実施例で使用した生物学的検出チップは、少なくとも1.5×10コピー/μLのPEDV(試料1)の濃度で信号を検出でき、チップの感度の高さを実証している。さらに、信号値は濃度依存的に上昇し(すなわち、試料3>試料2>試料1)、本発明の生物学的検出チップに定量的効果の可能性があることを示している。
【実施例0092】
コルチゾールの検出
本実施例では、生物学的標的はコルチゾールである。本実施例では、APTES-ビオチン修飾法を用いて生物学的検出チップの表面を修飾し、コルチゾール特異抗体(抗コルチゾール抗体[F4P1A3]、Abcam、英国ケンブリッジ)を生物学的プローブとして使用した。
【0093】
試験試料は、品質対照(陰性対照、緩衝液のみ)、0.1μg/dLのコルチゾール(試料1)、および6μg/dLのコルチゾール(試料2)であった。これらの試験試料を調製して、コルチゾールに対する生物学的検出チップの検出能を調べた。本実施例では、試験試料のインキュベーション時間を15分間とした以外は、実施例1.1に記載したものと同一の実験手順であった。
【0094】
実験結果については、図9Aおよび9Bを参照されたい。図9Aに示すように、コルチゾールを含有する試料(試料1および試料2)の電気曲線は、濃度依存的に標準曲線(ベースライン)から有意に逸脱し、本発明の生物学的検出チップに定量的効果の可能性があることを示している。さらに、図9Bに示すように、信号を定量化したところ、結果から、本発明の生物学的検出チップが、試験試料(試料1)中の少なくとも0.1μg/dLの濃度でコルチゾールの存在を検出することが示され、チップの感度の高さを実証している。
【0095】
結論として、実施例の結果に基づいて、本発明の生物学的検出チップは、PRRSV、PEDV、およびコルチゾールの検出に有効であることを実証している。従来の検出法と比較して、本発明の生物学的検出チップは、高特異性、高感度、高精度、方法が簡素、操作が簡単、検出が迅速であり、定量的効果の可能性を示している。本発明の生物学的検出チップを使用して、生物学的現象を効果的に解析し、生理作用や疾病過程を探査し、さらに、治療法および/または改善法を開発できる。ライフサイエンス、臨床診断、および食品安全の分野で幅広い応用が期待されている。
【0096】
本発明の上述した実施形態は、当然のことながら、これらの範囲から逸脱することなく、多くの変更および修正が可能である。したがって、科学および有用な技術の進歩を促進するために本発明を開示し、また本発明は、添付の請求項の範囲によってのみ限定されることを意図する。
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図3C
図4
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図7D
図8A
図8B
図8C
図9A
図9B
【外国語明細書】