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特開2024-132361スペクトラムアナライザおよびその機能を備える無線機
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024132361
(43)【公開日】2024-10-01
(54)【発明の名称】スペクトラムアナライザおよびその機能を備える無線機
(51)【国際特許分類】
   G01R 23/16 20060101AFI20240920BHJP
   H04B 1/40 20150101ALI20240920BHJP
   H04B 1/16 20060101ALI20240920BHJP
   G06F 17/14 20060101ALI20240920BHJP
   G06F 17/10 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
G01R23/16 D
H04B1/40
H04B1/16 A
G06F17/14
G06F17/10 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023043097
(22)【出願日】2023-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】000100746
【氏名又は名称】アイコム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076406
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 勝徳
(74)【代理人】
【識別番号】100171941
【弁理士】
【氏名又は名称】辻 忠行
(72)【発明者】
【氏名】美麗 忠宗
(72)【発明者】
【氏名】小寺 宏
【テーマコード(参考)】
5B056
5K011
5K061
【Fターム(参考)】
5B056AA06
5B056BB12
5K011HA03
5K011JA03
5K061DD03
5K061DD04
(57)【要約】      (修正有)
【課題】スペクトラムアナライザ機能を実現するにあたってFFT演算量を削減する。
【解決手段】アマチュア無線機などでスペアナ機能を実現するにあたって、データ解析部225では、A/D変換回路21の出力を、切換え手段2251で、掃引周波数帯域幅SPANが狭い場合には、ダウンサンプリング回路2255を介してFFT回路2257へ入力することで演算量を減少する。これに対して、SPANが広い場合は、A/Dのサンプリング周波数fsの増大によって、周波数解析を行うべき所定掃引周期の内のデータも増大するが、周波数分解能は下げられるので、前記切換え手段2251から切出し手段2256で所定の連続する時間窓長T分だけ切出し、バッファ2258を介してFFT回路2257へ入力することで、T0-T分のデータを解析に使用せず、演算量を減少する。こうして、FFTの演算量の増加を抑えつつ、fsを上げ、SPANをより広くできる。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
周波数解析部が、入力信号を、予め定める掃引周波数帯域幅に亘り、予め定める微小帯域幅毎の成分強度を求めるスペクトラムアナライザにおいて、
掃引周期をT0、前記掃引周波数帯域幅に基づき前記入力信号をアナログ/デジタル変換すべきサンプリング周波数をfs、そのサンプリング周波数fsで得られるサンプリングデータ数をNとするとき、時間窓長Tを、
T<N/fsとし、
前記掃引周期T0毎に、前記時間窓長T分だけ、連続してサンプリングデータを切出して前記周波数解析部に入力する切出し手段を備えることを特徴とするスペクトラムアナライザ。
【請求項2】
前記切出し手段は、前記周波数解析部における解析結果を再現すべき周波数をFとするとき、前記掃引周期T0を、
T0<1/Fとすることを特徴とする請求項1記載のスペクトラムアナライザ。
【請求項3】
前記切出し手段の後段に、切出された前記時間窓長T分の連続するデータを、前記掃引周期T0に亘り保持して前記周波数解析部に入力するバッファをさらに備えることを特徴とする請求項1または2記載のスペクトラムアナライザ。
【請求項4】
前記切出し手段の前段に介在される切換え手段と、
前記切換え手段により切換えられる経路に介在されるダウンサンプリング手段と、
前記掃引周波数帯域幅が設定されて、その設定値に応じて前記切換え手段を切換え、前記掃引周波数帯域幅が予め定める帯域幅よりも、狭い場合は前記入力信号を前記ダウンサンプリング手段を介する経路で前記周波数解析部に入力し、広い場合は前記入力信号を前記切出し手段およびバッファを介する経路で前記周波数解析部に入力する帯域選択手段とを含むことを特徴とする請求項3記載のスペクトラムアナライザ。
【請求項5】
前記請求項1記載のスペクトラムアナライザによる解析結果を表示することで、スペクトラムスコープ機能を実現することを特徴とする無線機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スペクトラムアナライザに関し、特に無線機において、所定周波数範囲(掃引周波数帯域幅)の信号分布を表示するスペクトラムスコープ機能を実現するために好適なスペクトラムアナライザおよびその機能を備える無線機に関する。
【背景技術】
【0002】
無線機の使用者は、予め法令などで定められている144MHz、430MHz、1200MHz・・・などの使用範囲(バンド)と無線モードの中から通信の目的に適切なものを選定する。前記スペクトラムアナライザによるスペクトラムスコープ表示が搭載されていると、視覚的に確認しながら、目的とする信号の周波数に同調させ、また空き周波数等の情報を把握することが可能になる。そして、前記スペクトラムスコープ表示を実現するには、高速フーリエ変換(FFT)による周波数解析が用いられる。
【0003】
そのFFTによる周波数解析を行うにあたって、入力信号は、アナログ/デジタル変換処理された後、デジタルデータで解析演算が行われる。ここで、アナログ/デジタル変換処理のサンプリング周波数fsを上げると、扱える周波数帯域も広くなるが、FFTの演算処理量も多くなる。
【0004】
そこで、このような問題に対応するために、典型的な従来技術は、図6で示す周波数解析装置9で提案されている。それによれば、入力されたアナログ信号は、アナログ/デジタル変換回路91において、前記サンプリング周波数fsでデジタル信号に変換され、混合器92において局部発振回路93からの発振信号と混合されて中間周波信号に変換されるとともに、折返し雑音を防止するローパスフィルタ94を介し、さらにダウンサンプリング回路95において、1/nに周期的にデータが間引かれ、ファーストイン・ファーストアウトのメモリ96に一旦蓄積された後、所定の時間窓長T分ずつ適宜読出されて、周波数解析部であるFFT回路97で高速フーリエ変換されて周波数解析が行われる。
【0005】
なお、入力信号の周波数が低ければ、混合器92による周波数変換が省略されることがある。また、データ量が少なければ、メモリ96を使用せずに、ダウンサンプリング回路95からFFT回路97へ直接データが入力されることもある。そして、スペクトラムアナライザや、無線機のスペクトラムスコープ機能では、前記FFT回路97による解析結果が、スコープ98に表示される。前記アナログ/デジタル変換回路91を前記サンプリング周波数fsで動作させる発振回路90および前記局部発振回路93は、基準となる発振回路99からの周波数f0の信号を基に発振を行う。
【0006】
上述のような周波数解析装置9では、ダウンサンプリング回路95において、データを1/nに間引いているので、FFT回路97のサンプリング周波数を、前記アナログ/デジタル変換回路91でのサンプリング周波数fsより下げ、演算量を減らすことができる。しかしながら、掃引周波数帯域幅SPANが狭くなるという問題がある。つまり、ダウンサンプリング回路95によって、実質的に解析周波数(SPAN)の帯域制限が行われることになってしまう。
【0007】
ところで、使用する周波数帯が低いときは、使用できる周波数範囲が狭いので掃引周波数帯域幅SPANが狭くても使用範囲全域を解析することができるが、周波数帯が高くなると使用できる周波数範囲も広くなるため、使用範囲全域を解析することが困難となってしまう。また、使用範囲(バンド)によっては、占有帯域幅が数MHz以上となる無線モードも存在するため、広い掃引周波数帯域幅SPANを解析できるスペクトラムアナライザが望まれている。
【0008】
そこで、FFTの処理方法で、演算量を低減することが示されている。たとえば特許文献1のスペクトラムアナライザでは、FFTで最大値が検出されると、以後のFFT処理を停止することで、演算量を減らしている。また、特許文献2では、FFTの順番を変えることで、メモリの削減および高速化を図っている。さらにまた、特許文献3では、FFTのタスクを分割し、優先度に応じて行うようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2014-2588号公報
【特許文献2】特開2013-25468号公報
【特許文献3】特開2005-235045号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記の特許文献1~3は、いずれもFFT演算の手法に着目したものであって、対象データそのものを減少させるものではない。
【0011】
本発明の目的は、FFTの処理方法を変更するのではなく、対象データを必要十分なものとすることで、演算量の増加を抑えながら、サンプリング周波数を上げ、掃引周波数帯域幅をより広くすることができるスペクトラムアナライザおよびその機能を備える無線機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明のスペクトラムアナライザは、周波数解析部が、入力信号を、予め定める掃引周波数帯域幅SPANに亘り、予め定める微小帯域幅ΔW毎の成分強度を求めるスペクトラムアナライザにおいて、掃引周期をT0、前記掃引周波数帯域幅SPANに基づき前記入力信号をアナログ/デジタル変換すべきサンプリング周波数をfs、そのサンプリング周波数fsで得られるサンプリングデータ数をNとするとき、時間窓長Tを、T<N/fs(要は、T=N/fsではなく)とし、前記掃引周期T0毎に、前記時間窓長T分だけ、連続してサンプリングデータを切出して前記周波数解析部に入力する切出し手段を備えることを特徴とする。
【0013】
上記の構成によれば、スペクトラムアナライザは、周波数解析部において、入力信号を、予め定める掃引周波数帯域幅SPANに亘り、予め定める微小帯域幅(周波数分解能)ΔWに分割して、それぞれの成分強度を求める、つまり所定周波数範囲の信号分布を求める。そして、前記掃引周波数帯域幅SPANに基づき前記入力信号をアナログ/デジタル変換すべきサンプリング周波数fsが決定されるが、前記掃引周波数帯域幅SPANを広くしようとすると、サンプリング周波数fsも高くする必要があり、解析すべきデータの量が多くなる。
【0014】
一方、周波数解析を行うにあたっても、特定の周波数の信号を受信し、復調して音声や画像を再生するような場合では、周波数解析を行うサンプリング点数Nを多くし(=時間窓長Tを長くし)、かつデータ間にも所定の連続性が求められるのに対して、スペクトラムアナライザで用いられるフーリエ変換に代表される周波数解析では、瞬時瞬時で前記信号分布を求めればよいので、解析すべき入力信号には、長時間の連続性は必要無い。また、スペクトラムアナライザでは、前記掃引周波数帯域幅SPANからスコープの表示領域に対応できる前記微小帯域幅(周波数分解能)ΔWによって決定されることになる解析に必要な所定のサンプリング点数分のデータがあればよい。
【0015】
そこで本発明では、周波数解析部の前段に切出し手段を設け、前記掃引周波数帯域幅SPANから決定されるアナログ/デジタル変換回路のサンプリング周波数をfs、そのサンプリング周波数fsで得られるサンプリングデータ数をNとするとき、前記微小帯域幅(周波数分解能)ΔWに必要な時間窓長T(T<N/fs)だけ、連続してデータを切出すことにする。すなわち、T=N/fsではなくし、該時間窓長T内におけるサンプリング点数を少なくする。そうすることで、前記周波数解析部が周波数解析を行うべき予め定める周期T0(>T)内で、前記時間窓長Tに係らない(結果的に周波数解析のためにサンプリングしない)連続した期間(T0-T)が生じることになり、周波数解析部は、その間に生じるデータの解析処理を行わなくてよくなる。
【0016】
したがって、ダウンサンプルのように周期的にサンプリングすることによりデータ量が低下して実質的に掃引周波数帯域幅SPANが狭くなるようなこともなく、また特にFFTの処理方法を変更することもなく、周波数解析部の演算量の増加を抑えながら、サンプリング周波数fsを上げ、掃引周波数帯域幅SPANを、より広くすることができるようになる。
【0017】
また、本発明のスペクトラムアナライザでは、前記切出し手段は、前記周波数解析部における解析結果を再現すべき周波数をFとするとき、前記掃引周期T0を、T0<1/Fとすることを特徴とする。
【0018】
上記の構成によれば、周波数解析部における解析結果を画像などで再現すべきとき、その再現の周波数、すなわち前記画像の場合はフレームレートをFとするとき、前記周期T0を、T0<1/Fとする。これによって、再現性能に影響を及ぼすことなく、周期T0を長く、したがって時間窓長Tの割合を短くすることができる。
【0019】
さらにまた、本発明のスペクトラムアナライザでは、前記切出し手段の後段に、切出された前記時間窓長T分の連続するデータを、前記掃引周期T0に亘り保持して前記周波数解析部に入力するバッファをさらに備えることを特徴とする。
【0020】
上記の構成によれば、掃引周期T0分のデータから、その一部である時間窓長Tの連続するデータを切出して、周波数解析部で解析するデータ量を少なくしているので、さらにバッファを介在することで、解析期間を掃引周期T0の一杯としても、問題は無い。
【0021】
したがって、周波数解析部の演算処理能力を抑え、低コスト化を図ることができる。
【0022】
また、本発明のスペクトラムアナライザでは、前記切出し手段の前段に介在される切換え手段と、前記切換え手段により切換えられる経路に介在されるダウンサンプリング手段と、前記掃引周波数帯域幅SPANが設定されて、その設定値に応じて前記切換え手段を切換え、前記掃引周波数帯域幅SPANが予め定める帯域幅よりも、狭い場合は前記入力信号を前記ダウンサンプリング手段を介する経路で前記周波数解析部に入力し、広い場合は前記入力信号を前記切出し手段およびバッファを介する経路で前記周波数解析部に入力する帯域選択手段とを含むことを特徴とする。
【0023】
上記の構成によれば、ダウンサンプリング手段を、上記の切出し手段およびバッファの経路と並列に設け、アナログ/デジタル変換回路の後段に設けられる切換え手段によって、それらの経路を択一的に選択し、何れかの経路を経由したデータを周波数解析部に入力する。そして、その切換え手段の切換えは、帯域選択手段が行う。該帯域選択手段には、使用者が自身の経験などに基づき、好ましい掃引周波数帯域幅SPANを設定し、該該帯域選択手段は、その設定値が予め定める帯域幅よりも、狭い場合は前記入力信号を前記ダウンサンプリング手段を介する経路で前記周波数解析部に入力し、広い場合は前記入力信号を前記切出し手段およびバッファを介する経路で前記周波数解析部に入力する。
【0024】
つまり、掃引周波数帯域幅SPANが狭い場合、その狭い掃引周波数帯域幅SPANを、スコープの表示領域内で一杯に拡大して表示することになり、それぞれの成分強度を求めるべき前記予め定める微小帯域幅ΔW、すなわち周波数分解能(表示1ドットで表せる幅)も狭く(細かく)なる。しかしながら、前記掃引周波数帯域幅SPANが狭いので、周波数解析部のサンプリング周波数を下げることができるので、ダウンサンプリングでサンプリング周波数を下げ、演算量を少なくしても問題は無い。
【0025】
これに対して、前記周波数帯域幅SPANが広い表示をする場合、周波数解析部のサンプリング周波数は高くする必要があるものの、微小帯域幅(周波数分解能)ΔWも広く(粗く)なる。そうすると、周波数解析のために必要なデータ量(サンプリング点数)は、高くなったアナログ/デジタル変換のサンプリング周波数fsで得られたサンプリングデータ数Nよりも少なくでき、そのため前記時間窓長Tを短くし、これによってもまた、周波数解析のための演算量を少なくすることができる。
【0026】
こうして、スペクトラムアナライザやスペクトラムスコープの表示を、周波数解析のための演算量を抑えつつ、使用者に好ましい周波数帯域幅SPANおよび微小帯域幅ΔW(周波数分解能)で行うことができる。
【0027】
さらにまた、本発明の無線機は、前記のスペクトラムアナライザによる解析結果を表示することで、スペクトラムスコープ機能を実現することを特徴とする。
【0028】
上記の構成によれば、無線機のスペクトラムスコープには、上記のように瞬時瞬時で信号分布を求めればよいので、解析すべき入力信号に連続性はさほど必要無い。そのため、周波数解析を行うべき周期T0に対して、時間窓長Tを短くして、演算量を削減する本発明が効果的である。
【発明の効果】
【0029】
本発明のスペクトラムアナライザおよびその機能を備える無線機は、以上のように、周波数解析部が、入力信号を、予め定める掃引周波数帯域幅SPANに亘り、予め定める微小帯域幅ΔW毎の成分強度を求めるスペクトラムアナライザにおいて、周波数解析部の前段に切出し手段を設け、該周波数解析部が周波数解析を行うべき掃引周期をT0、前記掃引周波数帯域幅SPANに基づき前記入力信号をアナログ/デジタル変換すべきサンプリング周波数をfs、前記サンプリング周波数fsで得られるサンプリングデータ数をNとするとき、時間窓長Tを、T<N/fs、すなわちT=N/fsではなくし、その時間窓長T(<T0)だけ、連続してデータを切出すことで、該時間窓長T内におけるサンプリング点数を少なくする。
【0030】
それゆえ、前記掃引周期T0内で、前記時間窓長Tに係らない(結果的に周波数解析のためにサンプリングしない)連続した期間(T0-T)が生じることになり、周波数解析部は、その間に生じるデータの解析処理を行わなくてよくなるので、ダウンサンプルのように周期的にサンプリングすることによりデータ量が低下して実質的に掃引周波数帯域幅SPANが狭くなるようなこともなく、また特にFFTの処理方法を変更することもなく、周波数解析部の演算量の増加を抑えながら、サンプリング周波数fsを上げ、掃引周波数帯域幅SPANを、より広くすることができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本発明の実施の一形態に係るスペクトラムアナライザ機能を備える無線機の外観を模式的に示す図である。
図2】前記無線機の電気的構成を示すブロック図である。
図3】前記無線機において本発明の実施の一形態に係るスペクトラムアナライザ機能を実現する周波数解析装置の電気的構成を示すブロック図である。
図4】サンプリング周波数と掃引周波数帯域幅との関係を示す図である。
図5】前記周波数解析装置における本発明の実施の一形態に係るサンプルデータの扱い方の概念を説明する図である。
図6】典型的な従来技術の無線機におけるスペクトラムアナライザ機能を実現する周波数解析装置の電気的構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
図1は、本発明の実施の一形態に係るスペクトラムアナライザ機能を備える無線機1の外観を模式的に示す図である。この無線機1は、広帯域の信号を受信可能なアマチュア無線機として特に好適に実施される。該無線機1は、通信装置2と、アンテナ4とを備え、それらの間を同軸ケーブル5で接続されて構成される。
【0033】
図2は、前記無線機1の電気的構成を示すブロック図である。図2の例は、無線信号の受信のための構成を示し、送信時の構成などは省略している。前記受信時において、前記アンテナ4からの受信信号は、アナログ回路20において、フィルタリングや中間周波への変換などが行われ、アナログ/デジタル変換回路21で受信デジタル信号に変換されて、信号処理回路22に入力される。信号処理回路22は、たとえばFPGAおよびDSPで構成され、外部の発振回路30のクロック(f0)を用いて、デジタル演算処理によって、最終的に、無線通信の音声信号Aと、スコープ信号Sとを作成するものである。
【0034】
前記音声信号Aに関して、受信デジタル信号は、混合器221において、前記発振回路30のクロック(f0)に基づく局部発振回路222からの局部発振信号と混合されてダウンコンバートされ、ローパスフィルタ223を介して音声成分が抽出された後、検波回路224においてデジタルデータの前記音声信号Aが作成される。この音声信号Aは、デジタル/アナログ変換回路23においてアナログ信号に復号され、低周波アンプ24で増幅された後、スピーカ25から音響化される。
【0035】
一方、前記スコープ信号Sには、後述のスペクトラムスコープ表示のための周波数解析結果が含まれる。そのため、前記受信デジタル信号は、信号処理回路22内のデータ解析部225において、高速フーリエ変換(FFT)された後、CPUなどで実現される外部の演算処理回路26において、前記スコープ信号Sに作成される。このスコープ信号Sは、必要に応じて、たとえば図1で示すように、表示装置27で表示される。
【0036】
無線通信にあたって、使用者は、先ず前記使用範囲(バンド)や使用する無線モードを決定し、入力操作部28から、該無線機1の全体の動作を制御する前記演算処理回路26に設定する。すると、演算処理回路26は、アナログ回路20内の局部発振回路や信号処理回路22内の局部発振回路222を制御して、前記使用範囲(バンド)に同調させることになる。
【0037】
このとき、使用者は、前記スペクトラムスコープ機能を使用するのであれば、前記入力操作部28から、前記使用範囲(バンド)や無線モードに適切と思われる掃引周波数帯域幅SPANを設定する。その設定に応じて、演算処理回路26は、前記アナログ/デジタル変換回路21のサンプリング信号(fs)の発振回路29や、後述するデータ解析部225内の切換え手段2251を切換える。
【0038】
図3は、前記データ解析部225で実現される本発明の実施の一形態の周波数解析装置の電気的構成を示すブロック図である。注目すべきは、本実施形態のデータ解析部225では、前記アナログ/デジタル変換回路21の後段に、前記切換え手段2251が設けられていることである。切換え手段2251は、帯域選択手段でもある前記演算処理回路26によって、択一的に経路が切換え制御される。先述のように、或る程度の広さの帯域を一画面で確認できるようにするには、前記掃引周波数帯域幅SPANを広く設定する必要がある。そして、前記掃引周波数帯域幅SPANが広くなると、前記FFTのサンプリング周波数、したがって前記アナログ/デジタル変換回路21のサンプリング周波数fsを高く設定する必要がある。
【0039】
図4は、サンプリング周波数fsと前記掃引周波数帯域幅SPANの関係を表している。fs=100kHzのデータ(図4(a))をFFT演算することで、SPAN=100kHzのFFTデータ(図4(b))となる。ローパスフィルタ2254とダウンサンプリング回路2255を制御してサンプリング周波数fsを可変することにより、任意の掃引周波数帯域幅SPANのFFTデータを得ることができる。なお、実際に表示に使用するFFTデータは演算で得られるデータの一部だが、図4では、説明の簡略化のために、総て使うものとしている。また、FFTの入力データ数とFFT演算結果のデータ数は同じなので、サンプリング周波数100kHzとデータ数1000個から、周波数分解能100Hzが決まる。前記掃引周波数帯域幅SPANは、使用者によって、たとえば数kHz~数十MHzの範囲で設定可能である。
【0040】
前記掃引周波数帯域幅SPANが広くなると、サンプリング周波数fsも高くする必要がある。サンプリング周波数fsは1秒間あたりのデータ数なので、FFT演算の対象データが増大することになる。ここで、FFT演算で得られる描画データについて考える。描画は使用者が信号分布を視覚的に把握するのが目的なので、秒間10画面など断続的な更新で良い。また、表示装置の解像度以上に細かな周波数分解能も不要である。たとえば、掃引周波数帯域幅SPANが10MHzで表示装置の解像度が1000ドットであれば、1ドットは10kHz幅となる。これを示したのが図5である。この図では、0.1秒ごとに1000個のデータを取り出してFFT演算を行い、その間にあるデータは破棄できる。
【0041】
これを実現するのが、本実施形態で注目すべき前記掃引周波数帯域幅SPANが予め定める帯域幅(25MHz)以上の場合の信号経路である。アナログ/デジタル変換回路21からのデジタル信号は、前記切換え手段2251を介して、切出し手段2256に入力される。この切出し手段2256は、前記演算処理回路26からの切換え(接点の閉成)信号に応答して、周波数解析部であるFFT回路2257が周波数解析を行うべき予め定める周期T0毎に、その一部で、所定の時間窓長T分のデータを取込み、バッファであるファーストイン・ファーストアウトのメモリ2258に一旦蓄積させる。時間窓長T分のデータの取込みが終了すると、前記演算処理回路26は切出し手段2256を切換える(接点を開成させる)。メモリ2258からは、前記周期T0(=1/F)毎にデータが読出され、混合回路2259において局部発振回路2260からの発振信号と混合されることで、目的周波数の(前記掃引周波数帯域幅SPAN分の)データが抽出され、FFT回路2257に入力される。なお、切出し手段2256とFFT回路2257との間にはLPFなどの履歴現象を生じる構成がなく、切出し手段2256の動作に対する不連続性の配慮は不要であることをつけ加えておく。
【0042】
そして、注目すべきは、この場合、T<N/fsであり、FFT回路2257は、T0-Tの期間のデータについては、周波数解析に使用しない、すなわち破棄することである。なお、スペクトラムアナライザでは、前記入力操作部28から前記掃引周波数帯域幅SPANが設定されると、表示装置27のスコープ分解能(画素数)によって微小帯域幅(周波数分解能)ΔWが決定されることになる。そのため、前記所定の時間窓長Tは、前記掃引周波数帯域幅SPANに亘り、前記微小帯域幅(周波数分解能)ΔW毎に解析するのに充分なサンプリング点数が得られる時間に設定される。
【0043】
そこで本実施形態では、データ解析部225の入力段に前記切換え手段2251を設け、アナログ/デジタル変換回路21からのデジタル信号を、掃引周波数帯域幅SPANが狭い場合(<25MHz)はダウンサンプリング回路2255側に切換え、ダウンサンプリングを行いつつ、T0=T=N/fsで、全データから周期的に間引いたデータで周波数解析を行う一方、掃引周波数帯域幅SPANが広い場合(≧25MHz)は、切出し手段2256で前記時間窓長T分だけ連続したデータを切出してメモリ2258に入力することで、T0>T(図5のようなケースではT0≫T)であり、またT<N/fsであり、FFT回路2257は、T0-Tの期間分のデータは、周波数解析に使用しない、すなわち破棄する。
【0044】
以上の通り、特定の周波数の信号を受信し、復調して音声や画像を再生するような場合では、周波数解析を行うサンプリング点数Nを多くし(=時間窓長Tを長くし)、かつデータ間にも所定の連続性が求められるのに対して、スペクトラムアナライザで用いられるフーリエ変換に代表される周波数解析では、瞬時瞬時で信号分布を求めればよいので、長時間の連続性は必要無く、また掃引周波数帯域幅SPANが広くなると、スコープ分解能(画素数)から、微小帯域幅ΔW(周波数分解能)も広く(粗く)なるので、必要なデータ量が少なくてもよくなる。本実施形態の無線機1は、この点に着目し、以下のように解析データのサンプリングを行う。すなわち、表示部27へのスペクトラムスコープ表示を実現するにあたって、入力(受信)信号の高周波化などに伴う掃引周波数帯域幅SPANおよびそれに合せたアナログ/デジタル変換回路21のサンプリング周波数fsの高周波化に対して、データ解析部225の入力段に切換え手段2251を設け、前記アナログ/デジタル変換回路21からのデジタル信号を、掃引周波数帯域幅SPANが狭い場合は従前通りダウンサンプリング回路2255でダウンサンプリングを行い、全データから周期的に間引いたデータで周波数解析を行う一方、掃引周波数帯域幅SPANが広い場合は、それに対応して微小帯域幅ΔW(周波数分解能)も広く(粗く)なるので、次段の切出し手段2256で、サンプリング周期T0の内、連続する一部の時間窓長T分だけ切出して周波数解析を行う。
【0045】
つまり、同じスコープ画面(表示装置27)で、掃引周波数帯域幅SPANが狭い場合、その狭い掃引周波数帯域幅SPANをスコープ画面一杯に拡大して表示することになり、それぞれの成分強度を求めるべき前記予め定める微小帯域幅ΔW、すなわち周波数分解能(表示1ドットで表せる幅)も狭く(細かく)なる。したがって、FFT回路2257の実際のサンプリング周波数を下げることができるので、ダウンサンプリング回路2255でサンプリング周波数を下げ、演算量を少なくしても問題は無い。
【0046】
これに対して、前記同じスコープ画面(表示装置27)で、前記周波数帯域幅SPANが広い表示をする場合、FFT回路2257のサンプリング周波数は高くする必要があるものの、微小帯域幅(周波数分解能)ΔWも広く(粗く)なる。そうすると、周波数解析のために必要なデータ量(サンプリング点数)は、高くなったアナログ/デジタル変換のサンプリング周波数fsで得られたサンプリングデータ数Nよりも少ない連続するデータであればよく、そのため前記時間窓長Tを短くし、これによってもまた、周波数解析のための演算量を少なくすることができる。
【0047】
こうして、スペクトラムアナライザやスペクトラムスコープの表示を、FFT回路2257での周波数解析のための演算量を抑えつつ、使用者の所望する周波数帯域幅SPANで行うことができる。特に、スペクトラムスコープ機能では、前記のように瞬時瞬時で信号分布を求めればよいので、解析すべき入力信号に前記長時間の連続性は必要無く、効果的である。さらに、そのスコープのフレームレートをFとするとき、前記掃引周期T0を、T0<1/Fとすることによって、スコープ画面の再現性能に影響を及ぼすことなく、周期T0を長く、したがって時間窓長Tの割合を短くすることができ、より演算量を減らすことができる。
【0048】
さらに、上述のように、掃引周期T0分のデータから、その一部である連続する時間窓長T分のデータを切出して、FFT回路2257で解析するデータ量を少なくしている上に、バッファとなるメモリ2258を介在することで、解析期間を掃引周期T0の一杯として、該FFT回路2257の演算処理能力を抑え、低コスト化を図ることができる。
【符号の説明】
【0049】
1 無線機
2 通信装置
20 アナログ回路
21 アナログ/デジタル変換回路
22 信号処理回路
221 混合器
222 局部発振回路
223 ローパスフィルタ
224 検波回路
225 データ解析部
2251 切換え手段
2252 混合器
2253 局部発振回路
2254 ローパスフィルタ
2255 ダウンサンプリング回路
2256 切出し手段
2257 FFT回路
2258 メモリ
2259 混合回路
2260 局部発振回路
23 デジタル/アナログ変換回路
24 低周波アンプ
25 スピーカ
26 演算処理回路
27 表示装置
28 入力操作部
29 発振回路
30 発振回路
4 アンテナ
5 同軸ケーブル
図1
図2
図3
図4
図5
図6