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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024132392
(43)【公開日】2024-10-01
(54)【発明の名称】X線診断装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/40 20240101AFI20240920BHJP
   A61B 6/00 20240101ALI20240920BHJP
【FI】
A61B6/00 300D
A61B6/00 320M
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023043134
(22)【出願日】2023-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001380
【氏名又は名称】弁理士法人東京国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】杜 儒霖
(72)【発明者】
【氏名】西塚 誠一
(72)【発明者】
【氏名】屋代 正二
【テーマコード(参考)】
4C093
【Fターム(参考)】
4C093AA01
4C093CA17
4C093EC03
4C093EC34
4C093EC53
4C093FA53
4C093FA54
4C093FA55
4C093FA57
(57)【要約】
【課題】X線管のポジショニングを効率的に、かつ、効果的に行うこと。
【解決手段】実施形態に係るX線診断装置は、X線管を登録位置まで自動的に移動させるオートポジショニングと、操作ハンドルを介したX線管の手動移動を補助するパワーアシストとからなるX線管の2つの駆動モードを実行可能である。当該X線診断装置は、情報取得部と、移動制御部とを有する。情報取得部は、オートポジショニングの実行中に操作ハンドルに加わる外力を示す外力情報を取得する。移動制御部は、外力情報が、オートポジショニングによるX線管の移動方向とは異なる方向への外力を示すものである場合に、X線管の現在位置と登録位置との間の距離に基づいて、登録位置までのX線管の移動制御の変更を行う。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線管を登録位置まで自動的に移動させるオートポジショニングと、操作ハンドルを介した前記X線管の手動移動を補助するパワーアシストとからなるX線管の2つの駆動モードを実行可能なX線診断装置であって、
前記オートポジショニングの実行中に前記操作ハンドルに加わる外力を示す外力情報を取得する情報取得部と、
前記外力情報が、前記オートポジショニングによる前記X線管の移動方向とは異なる方向への外力を示すものである場合に、前記X線管の現在位置と前記登録位置との間の距離に基づいて、前記登録位置までの前記X線管の移動制御の変更を行う移動制御部と、
を有するX線診断装置。
【請求項2】
前記移動制御の変更は、前記駆動モードと、前記登録位置までの前記X線管の移動速度と、前記登録位置までの前記X線管の移動ルートとの少なくとも1つの変更である、
請求項1に記載のX線診断装置。
【請求項3】
前記移動制御部は、前記外力情報が、前記オートポジショニングによる前記X線管の移動方向とは異なる方向への閾値以上の外力を示すものである場合に、前記X線管の現在位置と前記登録位置との間の距離が閾値以上であるとき、前記オートポジショニングを終了し、前記パワーアシストに切り替える、
請求項1又は2に記載のX線診断装置。
【請求項4】
前記移動制御部は、前記パワーアシストに切り替えると、前記X線管に備えられた操作パネルに前記X線管の変更後の移動ルートを表示する、
請求項3に記載のX線診断装置。
【請求項5】
前記移動制御部は、操作者情報に基づいて、前記パワーアシストにおける外力とモータ出力との比例関係式を決定する、
請求項3に記載のX線診断装置。
【請求項6】
前記移動制御部は、前記外力の大きさと駆動部の出力との比例関係式を変更できるダイヤルつまみの操作に基づいて、前記パワーアシストにおける前記比例関係式を決定する、
請求項3に記載のX線診断装置。
【請求項7】
前記移動制御部は、前記情報取得部により前記外力情報が取得された場合で、前記X線管の現在位置と前記登録位置との間の距離が閾値未満であるとき、前記オートポジショニングを終了し、前記X線管を手動で移動させる微調整モードに切り替える、
請求項1又は2に記載のX線診断装置。
【請求項8】
前記移動制御部は、前記微調整モードを、進行中の検査オーダが完了し、異なる検査オーダが送られてくるまで維持する、
請求項7に記載のX線診断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書及び図面に開示の実施形態は、X線診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
X線診断装置は、被検体にX線を照射し、透過X線をX線検出器で検出することで被検体の画像信号を得る。そして、画像処理部で画像信号を処理することにより、表示部にX線画像を表示する。一般的なX線診断装置では、X線検出器を立位検査台及び臥位検査台に組み合わせたシステムが知られており、天井に設けられた稼動式の支持器を用いてX線管を懸垂し、操作部により立位検査台又は臥位検査台に対して適切な撮影部位に移動、回転させて撮影を行っている。
【0003】
X線診断装置には、大略の目標位置である登録位置までX線管を自動的に移動させるオートポジショニングと、操作ハンドルを介したX線管の手動移動を補助するパワーアシストとがある。例えば、X線診断装置は、立位/臥位撮影のようなFPD(Flat Panel Detector)の位置が明確な場合は、オートポジショニングにて、X線管を精度よくポジショニング可能である。しかしながら、車いす、担架を使った撮影や、臥位テーブルの上でポータブルPDFを用いて行うポータブル撮影のように、FPDや被写体の位置が固定でない場合等には、X線管のポジショニングに手間がかかる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015-173951号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本明細書及び図面に開示の実施形態が解決しようとする課題の一つは、X線管のポジショニングを効率的に、かつ、効果的に行うことである。ただし、本明細書及び図面に開示の実施形態により解決しようとする課題は上記課題に限らない。後述する各実施形態に示す各構成による各効果に対応する課題を他の課題として位置付けることもできる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態に係るX線診断装置は、X線管を登録位置まで自動的に移動させるオートポジショニングと、操作ハンドルを介したX線管の手動移動を補助するパワーアシストとからなるX線管の2つの駆動モードを実行可能である。当該X線診断装置は、情報取得部と、移動制御部とを有する。情報取得部は、オートポジショニングの実行中に操作ハンドルに加わる外力を示す外力情報を取得する。移動制御部は、外力情報が、オートポジショニングによるX線管の移動方向とは異なる方向への外力を示すものである場合に、X線管の現在位置と登録位置との間の距離に基づいて、登録位置までのX線管の移動制御の変更を行う。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、実施形態に係るX線診断装置の構成を示す概略図。
図2図2は、実施形態に係るX線診断装置の全体構成図。
図3図3は、実施形態に係るX線診断装置に設けられる撮影装置の斜視図。
図4図4は、実施形態に係るX線診断装置の動作の一部を示すフローチャート。
図5図5は、実施形態に係るX線診断装置の動作の一部を示すフローチャート。
図6図6は、実施形態に係るX線診断装置の動作の一部を示すフローチャート。
図7図7は、実施形態に係るX線診断装置において、外力の向きと方向を説明するための図。
図8図8は、実施形態に係るX線診断装置において、パワーアシストモードにおける外力と、駆動部のモータ出力との関係を示す図。
図9図9は、実施形態に係るX線診断装置において、比例関係式を変更するためのダイヤルつまみを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しながら、X線診断装置の実施形態について詳細に説明する。
【0009】
図1図3は、実施形態に係るX線診断装置1を示す。X線診断装置1は、大略の目標位置である登録位置までX線管11aを自動的に移動させるオートポジショニングと、操作ハンドルを介したX線管11aの手動移動を補助するパワーアシストとからなるX線管11aの2つの駆動モードを実行可能である。X線診断装置1は、撮影装置10と、画像処理装置(例えば、コンソール)30とを備える。撮影装置10は通常、検査室に備えられる一方、画像処理装置30は、検査室に隣接する制御室に備えられる。
【0010】
撮影装置10は、管球保持部11と、操作ハンドル12と、立位検査台13と、立位検出器ユニット14と、立位検査台としての寝台15と、臥位検出器ユニット16と、天井レール17と、台車部18と、支柱部19と、高電圧発生部20と、保持部駆動部21と、外力センサ22とを備える。
【0011】
管球保持部11は、X線管11aのX線焦点Fを通り、支柱部19の伸縮方向に直交する軸(例えば、X軸)を中心にして方向Mrに管球保持部11を回転可能なように支柱部19に係合される。管球保持部11は、画像処理装置30の処理回路31による制御の下、保持部駆動部21の動作により、X線焦点Fを通るX軸(又は、Y軸、Z軸)を中心とした回転方向Mrに、-180°~+180°の範囲で回転可能である。
【0012】
管球保持部11は、X線管11aと、X線可動絞り11b(図2に図示)とを保持する。X線管11aは、高電圧発生部20から電力供給を受けて、立位検査台13の前、又は、寝台15の上に配置された被検体(例えば、受診者)の撮影部位にX線を照射する。X線可動絞り11bは、例えば複数の絞り羽根により構成される。複数の絞り羽根のそれぞれは、平板状の鉛羽などにより構成されてX線を遮蔽する。複数の絞り羽根により囲まれた領域は、X線が通過する開口を形成する。
【0013】
操作ハンドル12は、保持軸U(図2に図示)を介して管球保持部11に取り付けられる。操作ハンドル12は、操作パネル12aと、操作ボタン12bとを備える。操作パネル12aは、受診者の画像や、操作スイッチ(ソフトスイッチ)の画像や、後述する移動方向を示す画像を表示するディスプレイである。操作パネル12aは、操作者に対するディスプレイへの情報の表示にグラフィックを多用し、基礎的な操作を入力インターフェースによって行うことができるGUI(Graphical User Interface)を採用することができる。操作ボタン12bは、オートポジショニングボタンや、オートポジショニングのスタートボタン等により構成される。
【0014】
立位検査台13は、管球保持部11に対向する位置に鉛直向きに配置される。
【0015】
立位検出器ユニット14は、立位検査台13によって支持され、X線管11aからのX線を検出可能なように配置される。立位検出器ユニット14は、画像処理装置30の処理回路31による制御の下、管球保持部11の高さの変更に従って、立位検査台13に沿って高さが変更される。ここで、立位検査台13の高さ方向をY軸方向とし、立位検査台13に立つ受診者の左右方向をX軸方向とし、X軸方向とY軸方向に直交する方向をZ軸方向とする。
【0016】
立位検出器ユニット14は、立位FPD14aと、立位FPD14aを収納可能な立位用収納部(ブッキー)(図示省略)と、立位FPD14aの出力信号をデジタル変換するA/D(Analog to digital)変換回路(図示省略)などを備える。立位FPD14aは、二次元に配列された複数の検出素子を有しX線を検出する立位FPD本体と、立位FPD本体の前面に、グリッド(図示省略)が備えられる。グリッドは、立位FPD本体に入射する散乱線を吸収してX線画像のコントラストを改善するために、X線吸収の大きい鉛などによって形成されるグリッド板と透過しやすいアルミニウムや木材などとが交互に配置される。立位FPD14aは、単純撮影により立位の受診者からの透過X線を検出して画像信号として画像処理装置30に出力する。また、立位検出器ユニット14は、画像処理装置30の処理回路31による制御の下、立位用収納部内で立位FPD14aをZ軸、Y軸、及びZ軸に沿ってスライド可能である。
【0017】
寝台15は、臥位又は座位の受診者を載置可能なように横向きに配置される。寝台15は、その上部に受診者を保持する天板15aを備え、画像処理装置30の処理回路31による制御の下、天板15aをZ軸、Y軸、及びZ軸に沿ってスライド可能である。
【0018】
臥位検出器ユニット16は、寝台15によって支持される。臥位検出器ユニット16は、臥位FPD16aと、臥位FPD16aを収納可能な臥位用収納部(ブッキー)(図示省略)と、臥位FPD16aの出力信号をデジタル変換するA/D変換回路などを備える。臥位FPD16aは、前述の立位FPD14aと同等の構造及び機能を有する。臥位FPD16aは、X線撮影により臥位の受診者からの透過X線を検出して画像信号として画像処理装置30に出力する。
【0019】
天井レール17は、Z軸に沿って天井Cに敷設される。なお、管球保持部11をX軸に沿って移動させるために、天井レール17自体をX軸方向に移動させるためにX軸に沿って第2のレールが敷設されていていてもよい。その場合、車輪付きの天井レール17がX軸に沿って敷設された第2のレールに沿って移動する。
【0020】
台車部18は、支柱部19を介して管球保持部11を支持する。台車部18は、天井レール17に沿ったZ軸に平行な方向Mzに移動可能なように天井レール17に係合される。台車部18は、画像処理装置30の処理回路31による制御の下、又は手動で、管球保持部11が立位検査台13の側と寝台15の側との間を移動可能である。すなわち、台車部18は、X線管11a(X線焦点F)と、立位FPD14aとの間の距離(SID:Source image Receptor Distance)を変更可能である。なお、台車部18は、天井レール17に沿った方向Mzに加え、X軸に平行な方向に移動可能なように設置されてもよい。
【0021】
支柱部19は、台車部18に支持され、その下端に管球保持部11を支持する。支柱部19は、Y軸に平行な方向Myに移動可能なように台車部18に係合される。支柱部19は、画像処理装置30の処理回路31による制御の下、方向Myに沿って伸縮自在である。すなわち、支柱部19は、X線管11a(X線焦点F)と、臥位FPD16aとの間の距離(SID)を変更可能である。
【0022】
高電圧発生部20は、画像処理装置30の処理回路31の制御に従って、管球保持部11のX線管11aに高電圧電力を供給可能である。
【0023】
保持部駆動部21は、オートポジショニング及びパワーアシストの実行中において、画像処理装置30の制御により、大略の目標位置である登録位置まで、管球保持部11(X線管11a)を上下、左右、前後、及び回転させる各動力部(モータ等)を動作させる。
【0024】
外力センサ22は、オートポジショニングの実行中において、外力、つまり、管球保持部11に対する操作ハンドル12の操作力を示す外力情報を検知する。そして、外力センサ22は、外力情報を画像処理装置30に提供する。
【0025】
画像処理装置30は、コンピュータをベースとして構成されており、X線診断装置1全体の動作制御や、撮影装置10によって取得された複数のX線画像(X線画像データ)に関する画像処理などを行う装置である。画像処理装置30は、処理回路31と、メモリ32と、ディスプレイ33と、入力インターフェース34と、ネットワークインターフェース35とを備える。
【0026】
処理回路31は、専用又は汎用のCPU(Central Processing Unit)、又は、MPU(Micro Processor Unit)などのプロセッサの他、特定用途向け集積回路(ASIC)、及び、プログラマブル論理デバイスなどの処理回路を意味する。プログラマブル論理デバイスとしては、例えば、単純プログラマブル論理デバイス(SPLD:Simple Programmable Logic Device)、複合プログラマブル論理デバイス(CPLD:Complex Programmable Logic Device)、及び、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)などの回路が挙げられる。なお、処理回路31は、処理部の一例である。
【0027】
また、処理回路31は、単一の処理回路によって構成されてもよいし、複数の独立した処理回路要素の組み合わせによって構成されてもよい。後者の場合、複数のメモリ32が複数の処理回路要素の機能に対応するプログラムをそれぞれ記憶するものであってもよいし、1個のメモリ32が複数の処理回路要素の機能に対応するプログラムを記憶するものであってもよい。
【0028】
メモリ32は、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ(Flash Memory)などの半導体メモリ素子、ハードディスク、光ディスクなどを備える。メモリ32は、USB(Universal Serial Bus)メモリ及びDVD(Digital Video Disk)などの可搬型メディアを備えてもよい。メモリ32は、処理回路31において用いられる各種処理プログラム(アプリケーションプログラムの他、OS(Operating System)なども含まれる)や、プログラムの実行に必要なデータや、X線画像を記憶する。また、OSに、操作者に対するディスプレイ33への情報の表示にグラフィックを多用し、基礎的な操作を入力インターフェース34によって行うことができるGUI(Graphical User Interface)を含めることもできる。なお、メモリ32は、記憶部の一例である。
【0029】
ディスプレイ33は、例えば液晶ディスプレイやOLED(Organic Light Emitting Diode)ディスプレイなどの一般的な表示出力装置により構成される。ディスプレイ33は、処理回路31の制御に従って、X線画像や各種情報を表示する。なお、ディスプレイ33は、表示部の一例である。
【0030】
入力インターフェース34は、操作者によって操作が可能な入力デバイスと、入力デバイスからの信号を入力する入力回路とを含む。入力デバイスは、トラックボール、スイッチ、マウス、キーボード、操作面に触れることで入力操作を行うタッチパッド、表示画面とタッチパッドとが一化されたタッチスクリーン、光学センサを用いた非接触入力デバイス、及び音声入力デバイスなどによって実現される。操作者により入力デバイスが操作されると、入力回路はその操作に応じた信号を生成して処理回路31に出力する。なお、入力インターフェース34は、入力部の一例である。
【0031】
続いて、X線診断装置1の機能について説明する。
【0032】
画像処理装置30の処理回路31がメモリ32、又は、処理回路31内のメモリに記憶されたコンピュータプログラムを実行することによって、図2に示すように、情報取得機能311と、移動制御機能312と、撮影制御機能313とを実現する。なお、機能311~313は、コンピュータプログラムを実行することによって実現されるものとして説明するが、その場合に限定されるものではない。機能311~313の全部又は一部は、画像処理装置30にASICなどのハードウェアとして実現されるものであってもよい。
【0033】
情報取得機能311は、外力センサ22によって生成された外力情報を外力センサ22から取得する機能を含む。
【0034】
移動制御機能312は、X線管11aを登録位置(大略の目標位置)まで自動的に移動させるオートポジショニングと、操作ハンドル12を介したX線管11aの手動移動を補助するパワーアシストとを含む。また、移動制御機能312は、オートポジショニングによるX線管11aの移動方向とは異なる向きへの外力(例えば、閾値以上の外力)を示す外力情報が情報取得機能311により取得されると、X線管11aの登録位置と現在位置と間の距離に基づいて、登録位置までのX線管11aの移動制御を行う機能を含む。移動制御の変更は、駆動モードと、登録位置までのX線管11aの移動速度と、登録位置までのX線管11aの移動ルートとの少なくとも1つの変更である。ここで、X線管11aの移動ルートとは、オートポジショニングにおいて、検査室内を登録位置まで動くために予め設定された、X線管11aの移動経路を意味する。そして、オートポジショニングによるX線管11aの移動方向は、現在位置のX線管11aに対し、移動ルートによって決められた方向を意味する。なお、X線管11aの移動方向は、時系列に変化するX線管11aの複数位置から求められてもよいし、管球保持部11に設けられるセンサ(例えば、ジャイロセンサ)で求められてもよいし、管球保持部11の初期位置から登録位置に直線的に向かう方向として求められてもよい。
【0035】
なお、X線管11aの現在位置は、天井レール17に対して移動する台車部18の駆動部に設けられるロータリーエンコーダの出力と、支柱部19を伸縮する駆動部に設けられるエンコーダの出力と、管球保持部11の回転軸中心に回転させる駆動部に設けられるロータリーエンコーダの出力とに基づく、基準位置からの相対位置として求められる。なお、X線管11aの現在位置の取得はロータリーエンコーダを使用する場合に限定されるものではない。例えば、X線管11aの現在位置は、ポテンショメータ、リゾルバ等によって取得することもできる。
【0036】
撮影制御機能313は、検出器ユニット14,16に対して、受診者のX線撮影を実行させる機能と、検出器ユニット14,16から出力された投影データに対して対数変換処理(LOG処理)行って必要に応じて加算処理して、X線画像のデータを生成する機能と、生成されたX線画像に対して画像処理を施す機能とを含む。画像処理としては、データに対する拡大/階調/空間フィルタ処理や、時系列に蓄積されたデータの最小値/最大値トレース処理、及びノイズを除去するための加算処理などが挙げられる。なお、画像処理後のデータは、ディスプレイ33に出力されるとともに、メモリ32に記憶される。
【0037】
ここで、X線撮影は、単純撮影及び透視撮影に大別される。単純撮影は、比較的高い管電流にてX線を照射する撮影であり、主に、CR(Computed Radiography)画像を収集する1ショット撮影を意味するが、動画撮影に利用される場合もある。一方で、透視撮影は、比較的低い管電流にてX線を照射する撮影であり、主に、動画撮影を意味する。また、透視撮影は、連続透視及びパルス透視に大別される。パルス透視とは、連続透視と異なり、X線のパルスが断続的に繰り返し照射される透視方法を意味する。パルス透視によれば、連続透視に比べ、透視画像の連続性(フレームレート)がやや劣るが受診者に対する被ばく線量を抑えることができる。本実施形態において、X線撮影は、単純撮影及び透視撮影のいずれでも構わない。
【0038】
なお、機能311~313の詳細については、図4図9を用いて後述する。
【0039】
図4図6は、X線診断装置1の動作を示すフローチャートである。図4図6において、「ST」に数字を付した符号はフローチャートの各ステップを示す。なお、ここでは、オートポジショニングモードにより保持部駆動部21が大略の目標位置である登録位置に移動された後、詳細の目標位置である最適位置に移動される場合について説明する。例えば、図4図6において、登録位置が、保持部駆動部21のZ軸座標を含み、最適位置が、保持部駆動部21のY軸座標(高さ)とZ軸座標と回転角度(X線照射向き)とを含むものとして説明する。なお、上述したようにX軸に沿った第2の天井レールを備える場合には、最適位置は、保持部駆動部21のX軸座標をさらに含んでもよい。
【0040】
操作者により操作ボタン12bであるオートポジショニングボタンが押圧されると、駆動モードとしての管球保持部11のオートポジショニングをONにする(ステップST1)。
【0041】
ステップST1によりオートポジショニングモードに設定されている状態で、操作者により操作ボタン12bであるスタートボタンが押圧されると、管球保持部11のオートポジショニングの登録位置に向かって管球保持部11が移動される(ステップST2)。ここでは、登録位置はZ軸座標のみを含むものとして仮定しているので、管球保持部11はZ軸に沿って当該Z軸座標に向かって移動する。なお、操作ハンドル12が静電式の操作ハンドルである場合、ステップST2におけるスタートボタンの押圧は、操作者が操作ハンドルを掴むこと自体で行われる。なお、オートポジショニングを途中でやめたい場合は、操作者は、操作ハンドル12を離し、ステップST1によるONを解除してオートポジショニングをOFFにする。
【0042】
外力センサ22は、オートポジショニングの実行中に操作ハンドル12に加わる外力を示す外力情報を生成する。情報取得機能311は、オートポジショニングの実行中に外力情報を取得する(ステップST3)。移動制御機能312は、ステップST3によって取得された外力情報に基づいて、外力の大きさが閾値(以下、「外力閾値」と呼ぶ)以上になったか否かを判断する(ステップST4)。ステップST4の判断にてYES、つまり、外力の大きさが外力閾値以上になったと判断された場合、移動制御機能312は、管球保持部11の現在位置と登録位置との距離が閾値(以下、「距離閾値」と呼ぶ)以上か否かを判断する(ステップST5)。
【0043】
ステップST5の判断にてYES、つまり、管球保持部11の現在位置と登録位置との距離が距離閾値以上と判断された場合、移動制御機能312は、その外力の方向が、オートポジショニングによるX線管11a(つまり、管球保持部11)の移動方向と同じか否かを判断する(ステップST6)。
【0044】
X線管11aの移動方向について図7を用いて説明する。図7(A)は、オートポジショニングにおけるX線管11aの位置及び移動方向と、外力の大きさ及び外力方向とを示す側面(Y-Z平面)図である。図7(B)は、オートポジショニングにおけるX線管11aの位置及び移動方向と、外力の大きさ及び外力方向とを示す上面(X-Z平面)図である。図7(A),(B)に示すように、オートポジショニングにおいてX線管11aはZ軸に沿って、登録位置に含まれるZ軸座標に向かって移動するものとする。
【0045】
図7(A),(B)に示すように、移動方向が同じであるか否かの判断は、厳密に同一の場合に限定されるものではなく、外力閾値T以上で、ある程度の幅をもっている。例えば、外力V1の方向は、X線管11aの移動方向と厳密には異なるが、移動制御機能312は、外力V1の方向をX線管11aの移動方向と同じと判断してよい。一方で、移動制御機能312は、外力V2の方向を、X線管11aの移動方向と異なると判断する。なお、図7(A),(B)に、外力閾値T未満の外力V3も示す。
【0046】
図4の説明に戻って、ステップST6の判断にてYES、つまり、外力の方向が、オートポジショニングによるX線管11aの移動方向と同じであると判断された場合(図7に図示する外力V1)、移動制御機能312は、移動方向はそのままで、オートポジショニングにおけるX線管11a(つまり、管球保持部11)の移動速度を速くする(ステップST7)。なお、ステップST6の判断にてYESの場合は、移動制御機能312は、一旦、ステップST2によって開始されたオートポジショニングを終了して、パワーアシストを実行するように制御してもよい。
【0047】
移動制御機能312は、外力の大きさが外力閾値未満になったか否かを判断する(ステップST8)。ステップST8の判断にてYES、つまり、外力の大きさが外力閾値未満になった場合、移動速度を元に戻して(ステップST9)、ステップST3に戻る。一方で、ステップST8の判断にてNO。つまり、外力の大きさが外力閾値以上である場合、X線診断装置1の動作は、ステップST5まで戻る。
【0048】
他方、ステップST6の判断でNO、つまり、外力の方向が、オートポジショニングによる移動方向と異なると判断された場合(図7に図示する外力V2)、図5に進んで、移動制御機能312は、パワーアシスト(半自動)による移動に切り替え(ステップST11)、外力の方向に沿って管球保持部11を移動させる(ステップST12)。移動制御機能312は、ステップST12において、外力に応じた駆動部のモータ出力を得るように制御する。
【0049】
図8に、パワーアシストモードにおける外力と、駆動部のモータ出力との関係を示す。図8(A),(C)は、1つの外力閾値をもつ場合を示す。外力が外力閾値未満である場合は、駆動部のモータ出力、つまり、X線管11aの移動操作の補助は行われない。一方で、外力が外力閾値以上である場合は、移動制御機能212は、駆動部のモータ出力を上げてX線管11aの移動操作の補助を行う。
【0050】
図8(B)は、2つの外力閾値をもつ場合を示す。外力が第1外力閾値未満、及び、第2外力閾値以上である場合は、駆動部のモータ出力、つまり、X線管11aの移動操作の補助は行われない。一方で、外力が第1外力閾値以上、かつ、第2外力閾値未満である場合は、移動制御機能212は、駆動部のモータ出力を上げてX線管11aの移動操作の補助を行う。第2外力閾値は、例えば、駆動部のモータ出力の最大値である。
【0051】
なお、図8(C)に示すように、移動制御機能312は、操作者により外力とモータ出力との関係式を異なるものとして決定してもよい。移動制御機能312は、非力の操作者Bと剛力の操作者Aとで、同じ外力に対するモータ出力を変えるようにしてもよい。年齢や性別等の操作者情報により、操作者に応じて外力の限界が異なるからである。操作者A,Bの操作ハンドル12操作時の最大外力とモータの最大出力を用いて、外力とモータ出力との比例関係式を計算し、この比例関係式を用いて、モータ出力を制御する。
【0052】
上述したように、比例関係式は、操作者の種別(ID)や年齢や性別に応じて一義的に決められてもよいが、手動で変更できるようにしてもよい。図9は、比例関係式を変更するためのダイヤルつまみDを示す。例えば、ダイヤルつまみDは、操作ハンドル12に設けられる。操作者は、ダイヤルつまみDを適切に回すことにより、移動制御機能312は、パワーアシストにおける比例関係式を決定することができる。これにより、操作者が疲れているときにも少ない力で大出力の電動駆動を得ることができる。
【0053】
図5の説明に戻って、移動制御機能312は、外力の大きさが外力閾値未満になったか否かを判断する(ステップST13)。ステップST13の判断にてYES、つまり、外力の大きさが外力閾値未満になったと判断された場合、移動制御機能312は、オートポジショニングによる移動に切り替え(ステップST14)、ステップST3に戻る。なお、この際、移動制御機能312は、操作パネル12a上に、X線管11aの変更後の移動ルートを表示してもよい。ステップST12によるX線管11aの移動により、予め定められた移動ルートから変更されるので、移動制御機能312は、X線管11aの移動後の現在位置から目標位置までの最短ルート検索を行い、移動ルートを更新する。これにより、X線管11aの突然の動きに驚かされずに、操作者がストレスなくX線管11aを移動操作することができる。
【0054】
他方、図4に示すステップST5の判断にてNO、つまり、管球保持部11の現在位置と登録位置との距離が距離閾値未満と判断された場合、X線管11aは、登録位置付近まできている。移動制御機能312は、オートポジショニングモードを解除し、自動的に微調整モード(手動)による移動に切り替え(ステップST21)。そして、操作者は、X線管11aを最適位置にポジショニングする(ステップST22)。また、操作者が操作ボタン12bである微調整ボタンを押すことにより、オートポジショニングモードが解除され、自動的に微調整モードへの切り替えることも可能である。
【0055】
移動制御機能312は、微調整モードを終了するか否かを判断する(ステップST23)。微調整モードは、進行中の検査オーダが完了し、異なる検査オーダが送られてくるまで維持される。ポジショニングミスによる再撮影時のポジショニングを簡単にするためである。ステップST23の判断にてYES、つまり、微調整モードを終了すると判断される場合、撮影制御機能313は、検出器ユニット14,16に対して、受診者のX線撮影を実行させX線画像を生成し、それをディスプレイ33に出力したり、メモリ32に記憶したりする(ステップST24)。一方で、ステップST23の判断にてNOの間、ステップST23を繰り返す。
【0056】
なお、図4図6において、登録位置が、X線管11aのZ軸座標のみを含む場合について説明したがその場合に限定されるものではない。登録位置は、X線管11aのX軸座標と、Y軸座標と、Z軸座標と、回転角度とのうち少なくとも1つを含めばよい。例えば、登録位置が、X線管11aのY軸座標とZ軸座標とを含む場合、オートポジショニングにおいてX線管11aは登録位置に含まれるY軸座標かつZ軸座標に向かって斜めに移動するものとする。また、例えば、X線管11aの登録位置が、X線管11aのY軸座標と回転角度とを含む場合、オートポジショニングにおいてX線管11aは登録位置に含まれる回転角度に沿ってX線管11aを回転させながら、Z軸に沿って(図7(A),(B)と同様)、登録位置に含まれるZ軸座標に向かって移動するものとする。
【0057】
X線診断装置1によれば、操作ハンドル12への外力が、オートポジショニングによるX線管11aの移動方向とは異なる方向への閾値以上であるか否かに応じて、X線管11aのポジショニングを効率的に、かつ、効果的に行うことができる。
【0058】
なお、情報取得機能311は、情報取得部の一例である。移動制御機能312は、移動制御部の一例である。撮影制御機能313は、撮影制御部の一例である。
【0059】
以上説明した少なくとも1つの実施形態によれば、X線管のポジショニングを効率的に、かつ、効果的に行うことができる。
【0060】
いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、実施形態同士の組み合わせを行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0061】
1…X線診断装置
10…撮影装置
11…管球保持部
11a…X線管
12…操作ハンドル
12a…操作パネル
12b…操作ボタン
21…保持部駆動部
22…外力センサ
30…画像処理装置
31…処理回路
311…情報取得機能
312…移動制御機能
313…撮影制御機能
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9