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特開2024-132399水素炎イオン化検出器、堆積物除去方法、及び堆積物除去装置
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  • 特開-水素炎イオン化検出器、堆積物除去方法、及び堆積物除去装置 図1
  • 特開-水素炎イオン化検出器、堆積物除去方法、及び堆積物除去装置 図2A
  • 特開-水素炎イオン化検出器、堆積物除去方法、及び堆積物除去装置 図2B
  • 特開-水素炎イオン化検出器、堆積物除去方法、及び堆積物除去装置 図2C
  • 特開-水素炎イオン化検出器、堆積物除去方法、及び堆積物除去装置 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024132399
(43)【公開日】2024-10-01
(54)【発明の名称】水素炎イオン化検出器、堆積物除去方法、及び堆積物除去装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/626 20210101AFI20240920BHJP
   G01N 30/68 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
G01N27/626 A
G01N30/68 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023043141
(22)【出願日】2023-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100179969
【弁理士】
【氏名又は名称】駒井 慎二
(72)【発明者】
【氏名】中間 勇二
【テーマコード(参考)】
2G041
【Fターム(参考)】
2G041AA07
2G041CA04
2G041DA17
2G041EA03
2G041GA19
2G041GA20
2G041GA23
(57)【要約】
【課題】試料導入部の先端の測定対象試料の堆積状態を、測定対象試料が堆積していない元の状態に近づける。
【解決手段】水素炎イオン化検出器は、測定対象試料を導入する試料導入部を備え、前記試料導入部より導入された前記測定対象試料を、水素炎を用いてイオン化する試料イオン化部と、前記試料イオン化部の上方に配置され、試料イオン化部で生成されたイオンにより発生する電流又は光を検出する検出部と、前記試料導入部の前記水素炎側の先端に堆積する前記測定対象試料の堆積物を除去する除去部と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象試料を導入する試料導入部を備え、前記試料導入部より導入された前記測定対象試料を、水素炎を用いてイオン化する試料イオン化部と、
前記試料イオン化部の上方に配置され、試料イオン化部で生成されたイオンにより発生する電流又は光を検出する検出部と、
前記試料導入部の前記水素炎側の先端に堆積する前記測定対象試料の堆積物を除去する除去部と、
を備える水素炎イオン化検出器。
【請求項2】
前記除去部は、前記堆積物が凝固する前に、前記堆積物を除去する請求項1に記載の水素炎イオン化検出器。
【請求項3】
前記除去部は、前記測定対象試料をイオン化する処理が終了した時から所定時間経過した時に、前記堆積物を除去する請求項2に記載の水素炎イオン化検出器。
【請求項4】
前記除去部は、前記試料導入部の前記先端の内側及び外側の少なくとも一方の前記堆積物を除去する請求項1又は請求項2に記載の水素炎イオン化検出器。
【請求項5】
前記除去部は、前記試料導入部の内部の圧力を、前記測定対象試料をイオン化する処理を実行する場合の前記試料導入部の内部の圧力よりも高くすることにより、前記堆積物を除去する請求項1又は請求項2に記載の水素炎イオン化検出器。
【請求項6】
前記除去部は、
前記試料導入部の内部にガスを供給する供給部と、
前記前記試料導入部の内部の圧力が、前記測定対象試料をイオン化する処理を実行する場合の前記試料導入部の内部の圧力よりも高くなるように、前記供給部を制御する制御部と、
を備える請求項5に記載の水素炎イオン化検出器。
【請求項7】
前記除去部は、
前記試料導入部の内部にガスを供給する供給部と、
前記試料導入部の内部に供給するガスの単位時間当たりの流量が、前記測定対象試料をイオン化する処理を実行する場合に前記試料導入部の内部に供給するガスの単位時間当たりの流量よりも大きくなるように、前記供給部を制御する制御部と、
を備える請求項5に記載の水素炎イオン化検出器。
【請求項8】
前記供給部は、前記測定対象試料をイオン化するためのガスの供給ユニットとは異なるガス供給ユニットを備える、請求項6又は請求項7に記載の水素炎イオン化検出器。
【請求項9】
前記ガスは、前記測定対象試料をイオン化するためのガスである、請求項6又は請求項7に記載の水素炎イオン化検出器。
【請求項10】
前記試料イオン化部は、前記試料導入部の先端を含む空間を備え、
前記供給部は、
前記試料導入部に、測定対象試料と共にキャリアガスを供給する試料供給ユニットと、
前記試料導入部に、燃料ガスを供給する燃料ガス供給ユニットと、
前記試料導入部に、メイクアップガスを供給するためにメイクアップガス供給ユニットと、
の少なくとも1つを備え、
前記水素炎イオン化検出器は、前記空間に、補助ガスを供給する供給ユニットと、
を備える、請求項9に記載の水素炎イオン化検出器。
【請求項11】
前記供給ユニットは、前記補助ガスを、前記試料導入部の先端の外側の周囲に供給する、請求項10に記載の水素炎イオン化検出器。
【請求項12】
前記除去部は、前記試料導入部の前記先端に、前記先端部の外側からガスを噴き付けることにより、前記堆積物を除去する、請求項1又は請求項2に記載の水素炎イオン化検出器。
【請求項13】
前記除去部は、
前記ガスを噴射する噴射部と、
前記噴射された前記ガスを前記試料導入部の前記先端に案内する案内部と、
を備える請求項12に記載の水素炎イオン化検出器。
【請求項14】
前記案内は、前記検出部の内部を貫通する流路を備える、請求項13に記載の水素炎イオン化検出器。
【請求項15】
測定対象試料を導入する試料導入部を備え且つ前記試料導入部より導入された前記測定対象試料を水素炎によりイオン化する水素炎イオン化検出器における前記試料導入部の前記水素炎側の先端に堆積する前記測定対象試料の堆積物を除去する堆積物除去方法。
【請求項16】
測定対象試料を導入する試料導入部を備え且つ前記試料導入部より導入された前記測定対象試料を水素炎によりイオン化する水素炎イオン化検出器における前記試料導入部の前記水素炎側の先端に堆積する前記測定対象試料の堆積物を除去する除去部を備える堆積物除去装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の技術は、水素炎イオン化検出器、堆積物除去方法、及び堆積物除去装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の水素炎イオン化検出器(以下、FID:Flame Ionization Detectorという。)は、先端部において水素を燃焼させるためのノズルを備えている。ノズルは測定対象試料がノズルの先端まで移送されるための測定対象試料移送用流路と、試料移送用流路に燃料ガスである水素を供給するための水素供給用流路が設けられている。また、空気を助燃ガスとして供給するための助燃ガス供給口が設けられており、ノズルの先端部に水素を燃焼させるための助燃ガスが供給される。ノズルの先端部で水素が点火されて水素炎が形成され、流路から送られてきた測定対象試料が水素炎によって燃焼されてイオン化され、CHO+やC3H3+などのイオンが生成される。
【0003】
ノズルの上方に水素炎を囲むようにしてイオンコレクタが配置されている。
【0004】
水素炎により測定対象試料が燃焼してイオンが生成されると、ノズルとイオンコレクタの間にイオンの生成量に比例した電流が流れる。その電流を増幅器で増幅して検出することにより、測定対象試料に含まれる炭素数に比例した応答を得ることができる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】N.I.Wakayama, J.Appl.Phys,Vol.69(1991),P.2734
【非特許文献2】N.I.Wakayama, Chemical Physics Letters,Vol.185,No5,6(1991),P.44.9
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ノズルの先端は、ノズルの内部に水素炎が入らないよう0.1~1mm程度に狭くなっている。そのため、例えば、高濃度の測定対象試料や炭素数の多い測定対象試料の分析を高頻度で行うと、ノズルの先端に測定対象試料の堆積物が付着してノズルが詰まり、測定対象試料の水素炎への流速が予め定めた流速から変化し、正常な分析結果が得られなくなる。
【0007】
本開示の技術は、上記事実に鑑み成されたもので、試料導入部の先端の測定対象試料の堆積状態を、測定対象試料が堆積していない元の状態に近づけることができる水素炎イオン化検出器、堆積物除去方法、及び堆積物除去装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の技術の第1の態様の水素炎イオン化検出器は、測定対象試料を導入する試料導入部を備え、前記試料導入部より導入された前記測定対象試料を、水素炎を用いてイオン化する試料イオン化部と、前記試料イオン化部の上方に配置され、試料イオン化部で生成されたイオンにより発生する電流又は光を検出する検出部と、 前記試料導入部の前記水素炎側の先端に堆積する前記測定対象試料の堆積物を除去する除去部と、を備える。
本開示の技術の第2の態様の堆積物除去方法は、測定対象試料を導入する試料導入部を備え且つ前記試料導入部より導入された前記測定対象試料を水素炎によりイオン化する水素炎イオン化検出器における前記試料導入部の前記水素炎側の先端に堆積する前記測定対象試料の堆積物を除去する。
本開示の技術の第3の態様の堆積物除去装置は、測定対象試料を導入する試料導入部を備え且つ前記試料導入部より導入された前記測定対象試料を水素炎によりイオン化する水素炎イオン化検出器における前記試料導入部の前記水素炎側の先端に堆積する前記測定対象試料の堆積物を除去する除去部を備える。
【発明の効果】
【0009】
本開示の技術は、試料導入部の先端の測定対象試料の堆積状態を、測定対象試料が堆積していない元の状態に近づけることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1の実施の形態の水素炎イオン化検出器の一例を示すブロック図である。
図2A】イオン化処理部の処理内容の一例を示す概念図である。
図2B】圧力上昇部の処理内容の一例を示す概念図である。
図2C】供給停止部の処理内容の一例を示す概念図である。
図3】イオン化処理及び除去処理の一例を示すフローチャート
図4】第2の実施の形態の水素炎イオン化検出器の一例を示すブロック図である。
図5】第3の実施の形態の水素炎イオン化検出器の一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本開示の技術の実施の形態を説明する。
[第1の実施の形態]
(構成)
第1の実施の形態の水素炎イオン化検出器10の構成を説明する。図1は、第1の実施の形態の水素炎イオン化検出器10の一例を示すブロック図である。図1に示すように、水素炎イオン化検出器10は、試料イオン化部10Aと、検出部10Bと、除去部40と、を備える。
【0012】
水素炎イオン化検出器10は、本開示の技術の「水素炎イオン化検出器」の一例である。除去部40は、本開示の技術の「堆積物除去装置」の一例である。
【0013】
試料イオン化部10Aは、ベース25内に定められる反応空間20に、測定対象試料を導入する試料導入部18を備え、試料導入部18より導入された測定対象試料を、水素炎30を用いて燃焼させてイオン化する。試料導入部18は、例えば、ノズルである。以下、試料導入部18をノズル18という。
【0014】
ノズル18には、試料供給流路22及び燃料ガス供給流路26が接続される。燃料ガス供給流路26には、メイクアップガス供給流路28が接続される。なお、メイクアップガス供給流路28は、ノズル18又は試料供給流路22に接続されてもよい。
【0015】
試料供給流路22には、圧力調節弁32を介して、試料供給部42が接続される。試料供給流路22には、試料供給部42から測定対象試料が供給され、測定対象試料の供給圧力が、圧力調節弁32により調整される。試料供給部42は、周知であるので詳細な説明は省略するが、一般的には、液体試料を気化させる試料気化室と、気化された試料を分離するカラムと、試料気化室で気化された試料をカラムに送り込むためのキャリアガスを供給するキャリアガス供給部と、を備える。キャリアガス供給部は、ボンベ及び流量調整部を備える。
【0016】
燃料ガス供給流路26には、圧力調節弁36を介して、燃料ガス供給部46が接続される。燃料ガス供給流路26には、燃料ガス供給部46から燃料ガスが供給され、燃料ガスの供給圧力が、圧力調節弁32により調整される。燃料ガスは、水素である。燃料ガス供給部46は、水素が圧縮された状態で充填された圧縮水素ボンベである。
【0017】
メイクアップガス供給流路28には、圧力調節弁38を介して、メイクアップガス供給部48が接続される。メイクアップガス供給流路28には、メイクアップガス供給部48からメイクアップガスが供給され、メイクアップガスの供給圧力が、圧力調節弁38により調整される。メイクアップガスは、測定対象試料を検出器10Bに素早く送るためのガスであり、例えば、窒素又はヘリウムである。メイクアップガス供給部48は、窒素が圧縮された状態で充填された圧縮窒素ボンベ又はヘリウムが圧縮された状態で充填された圧縮ヘリウムボンベである。
【0018】
以上のようにノズル18には、測定対象試料及びキャリアガスと、燃料ガスと、メイクアップガスと、が供給される。
【0019】
反応空間20には、補助ガス供給流路24が接続される。補助ガス供給流路24が接続される位置は、例えば、反応空間20の内側面の上下方向の中間の位置である。補助ガス供給流路24の向きは、補助ガス供給流路24の先端(即ち、反応空間20の内側面に接続される端)からの補助ガスが供給される方向が、ノズル18に向く向きである。補助ガス供給流路24には、圧力調節弁34を介して、補助ガス供給部44が接続される。補助ガス供給流路24には、補助ガス供給部44から補助ガスが供給され、補助ガスの供給圧力が、圧力調節弁34により調整される。補助ガスは、例えば、空気である。補助ガス供給部44は、空気が圧縮された状態で充填された圧縮空気ボンベ又はコンプレッサである。
【0020】
このように、空気が供給される反応空間20に水素が供給され、図示しない点火部により水素が点火され、水素炎30が形成される。試料供給流路22を介して供給された測定対象試料が、キャリアガス及びメイクアップガスにより水素炎30に供給される。これにより、測定対象試料が水素炎30により燃焼されてイオン化される。
【0021】
検出部10Bは、試料イオン化部10Aの上方(鉛直方向の上側)に配置される。検出部10Bは、水素炎30を囲むように配置され且つイオンの生成量に比例した大きさの電流を流すイオンコレクタ12と、イオンコレクタ12からの電流を増幅する増幅回路14と、を備える。イオンコレクタ12は、円筒状の電極であり、例えば、ステンレスにより構成される。検出部10Bは、試料イオン化部10Aで生成されたイオンにより発生する電流を検出する。電流の値は、測定対象試料に含まれる炭素数に比例する。
【0022】
ところで、ノズル18の先端の開口径は、内部に水素炎が入らないよう0.1~1mm程度である。そのため、例えば、高濃度の測定対象試料や炭素数の多い測定対象試料の分析(イオン化)を高頻度で行うと、ノズル18の先端に測定対象試料の全てが燃焼(イオン化)されず、堆積し、堆積物が形成される。
【0023】
ここで、堆積物には、第1に、凝固した測定対象試料、第2に、凝固しかかっている液状の測定対象試料、第3に、測定対象試料成分がある。ノズル18の先端に測定対象試料が付着するので、堆積物は、付着物でもある。また、本来、測定対象試料の全てがイオン化されるべきであるが、イオン化されず、ノズル18の先端に残留する。よって、堆積物は、残留物でもある。
【0024】
測定対象試料が堆積する領域は、ノズル18の先端、より具体的には、ノズル18の先端の内側及び外側の少なくとも一方である。
【0025】
上記のように、ノズル18の水素炎30側の先端に堆積物が形成され、ノズル18の先端が詰まり、測定対象試料の水素炎30への流速が予め定めた流速から変化し、正常な分析結果が得られなくなる。
【0026】
そこで、除去部40は、ノズル18の水素炎30側の先端に堆積する測定対象試料の堆積物を除去する。除去部40は、ノズル18の先端の内側及び外側の少なくとも一方の堆積物を除去する。なお、ノズル18の先端の内側とは、後述する試料供給流路22の側壁のうちノズル18の水素炎30側の先端の近傍を意味し、ノズル先端18の先端の外側とは、ベースの反応空間と接する面のうちノズル18の水素炎30側の先端の近傍を意味する。
【0027】
除去部40は、ノズル18の内部にガスを供給する供給部と、供給部を制御する制御部50と、を備える。
【0028】
供給部は、試料供給ユニット(22、32、42)と、燃料ガス供給ユニット(26、36、46)と、メイクアップガス供給ユニット(28、38、48)と、の少なくとも1つである。
【0029】
試料供給ユニット(22、32、42)は、試料供給流路22、圧力調節弁32、及び試料供給部42を備える。
【0030】
燃料ガス供給ユニット(26、36、46)は、燃料ガス供給流路26、圧力調節弁36、及び燃料ガス供給部46を備える。
【0031】
メイクアップガス供給ユニット(28、38、48)は、メイクアップガス供給流路28、圧力調節弁38、及びメイクアップガス供給部48を備える。
【0032】
制御部50は、コンピュータ52、入力部70、弁駆動部62~68、及び表示部72を備える。
【0033】
コンピュータ52は、プロセッサ54、NVM(Non-volatile memory)56、及びRAM(Random Access Memory)58を備えている。プロセッサ54、NVM56、及びRAM58は、バス60に接続されている。
【0034】
プロセッサ54は、DSP(Digital Signal Processor)、CPU(Central Processing Unit)、及びGPU(Graphics Processing Unit)を含む処理装置であり、DSP及びGPUは、CPUの制御下で動作し、画像に関する処理の実行を担う。ここでは、プロセッサ54の一例として、DSP、CPU、及びGPUを含む処理装置を挙げているが、これはあくまでも一例に過ぎず、プロセッサ44は、GPU機能を統合した1つ以上のCPU及びDSPであってもよいし、GPU機能を統合していない1つ以上のCPU及びDSPであってもよいし、TPU(Tensor Processing Unit)が搭載されていてもよい。
【0035】
NVM56は、各種プログラム及び各種パラメータ等を記憶する不揮発性の記憶装置である。NVM56としては、例えば、フラッシュメモリ(例えば、EEPROM(Electrically Erasable and Programmable Read Only Memory))が挙げられる。
【0036】
RAM58は、一時的に情報が記憶されるメモリであり、プロセッサ54によってワークメモリとして用いられる。RAM58としては、例えば、DRAM(Dynamic Random Access Memory)又はSRAM(Static Random Access Memory)等が挙げられる。
【0037】
入力部70、弁駆動部62~68、及び表示部72は、バス60に接続される。
【0038】
入力部70は、キーボード及びマウスであり、ユーザからの指示を受け付け、受け付けた指示を示す信号をプロセッサ54に出力する。また、入力部70は、検出部10Bの増幅回路14により増幅された電流の値を受け付け、受け付けた電流の値を示す信号をプロセッサ54に出力する。
【0039】
弁駆動部62~68はそれぞれ、コンピュータ52による制御に従い、圧力調整弁32~38を駆動する。
【0040】
表示部72は、プロセッサ54の制御下で、各種情報をユーザに提示する。
【0041】
NVM56には、イオン化処理及び除去処理プログラム56Pが記憶されている。プロセッサ54は、NVM56からイオン化処理及び除去処理プログラム56Pを読み出し、読み出したイオン化処理及び除去処理プログラム56PをRAM48上で実行することによりイオン化処理及び除去処理を行う。プロセッサ54が、RAM58上で実行するイオン化処理及び除去処理プログラム56Pに従って、イオン化処理部54A、圧力上昇部54B、及び供給停止部54Cとして動作することによって、イオン化処理及び除去処理が実現される。イオン化処理及び除去処理は、ノズル18の内部の圧力が、測定対象試料をイオン化する処理を実行する場合のノズル18の内部の圧力よりも高くなるように、供給部を制御する処理である。
【0042】
図2Aは、イオン化処理部54Aの処理内容の一例を示す概念図である。図2Aは、イオン化処理部54Aの処理内容は、例えば、測定対象試料を、イオン化し、分析する処理である。具体的には、イオン化処理部54Aは、弁駆動部64を制御して圧力調整弁34を調整すること、弁駆動部66を制御して圧力調整弁36を調整すること、弁駆動部62を制御して圧力調整弁32を調整すること、及び弁駆動部68を制御して圧力調整弁38を調整することを行う。これにより、補助ガス供給部44からの空気が所定の圧力で反応空間20に供給され、空気が供給される反応空間20に、水素が供給され、点火部により水素が点火され、水素炎30が形成される。測定対象試料が、キャリアガスとメイクアップガスにより水素炎30に供給される。
【0043】
図2Bは、圧力上昇部54Bの処理内容の一例を示す概念図である。圧力上昇部54Bは、弁駆動部62、66、68を制御して圧力調整弁32、36、38を調整して、上記イオン化時より各供給するガスの圧力を上昇させる。
圧力上昇部54Bは、弁駆動部62、66、68の全てを制御しているが、本開示の技術は、これに限定されない。例えば、圧力上昇部54Bは、弁駆動部62、66、68の1つ又は2つを制御して、上記イオン化時より各供給するガスの圧力を上昇させてもよい。
【0044】
図2Cは、供給停止部54Cの処理内容の一例を示す概念図である。供給停止部54Cは、弁駆動部62~68を制御して圧力調整弁32~38を調整して、各ガスの供給を停止する。
【0045】
(作用)
次に、第1の実施の形態の水素炎イオン化検出器10の作用を説明する。本実施の形態では、イオン化処理及び除去処理は、ノズル18の先端の堆積物が凝固する前に、堆積物を除去する処理であり、具体的には、堆積物を除去する処理は、測定対象試料をイオン化する処理が終了した時から所定時間経過した時に実行される。なお、イオン化処理及び除去処理は、測定対象試料をイオン化し、分析している時に実行されてもよい。
イオン化処理及び除去処理の方法は、本開示の技術の「堆積物除去方法」の一例です。
【0046】
図3は、イオン化処理及び除去処理の一例を示すフローチャートである。イオン化処理及び除去処理は、例えば、図示しないイオン化処理開始処理ボタンの操作が行われる等、イオン化処理開始処理の開始命令が入力された時にスタートする。
【0047】
ステップ82で、イオン化処理部54Aは、イオン化処理を実行する。具体的には、上記のように、イオン化処理部54Aは、弁駆動部64を制御して圧力調整弁34を調整して、補助ガス供給部44からの空気を所定の圧力で反応空間20に供給する。イオン化処理部54Aは、空気が供給される反応空間20に、弁駆動部66を制御して圧力調整弁36を調整して、水素を供給し、点火部により水素を点火し、水素炎30を形成する。イオン化処理部54Aは、弁駆動部62を制御して圧力調整弁32を調整し且つ弁駆動部68を制御して圧力調整弁38を調整して、測定対象試料を、キャリアガスとメイクアップガスにより水素炎30に供給する。これにより、測定対象試料が水素炎30により燃焼されてイオン化される。イオンが生成されると、イオンの生成量に比例した大きさの電流がイオンコレクタ12から流れ、イオンコレクタ12からの電流が増幅回路14により増幅され、電流計等により得られた電流値が入力部70を介して、コンピュータ52入力され、電流値の大きさに対応する炭素数が分析されて表示部72に表示される。
【0048】
ステップ82のイオン化処理は、各測定対象試料について行われる。
【0049】
予定された全ての測定対象試料についてイオン化処理が終了すると、ステップ82のイオン化処理が終了し、イオン化処理及び除去処理はステップ84に進む。
【0050】
ステップ84で、圧力上昇部54Bは、イオン化処理が終了した時から第1の時間が経過したか否かを判断する。第1の時間は、イオン化処理によりイオン化し切れていない測定対象試料成分がノズル18の先端において凝固するまでの時間より短い予め実験等により定めた時間である。イオン化処理が終了した時から第1の時間が経過したと判断されなかった場合には、圧力上昇部54Bは、当該判断を、肯定判定となるまで実行する。イオン化処理が終了した時から第1の時間が経過したと判断された場合、イオン化処理及び除去処理はステップ86に進む。
【0051】
なお、第1の時間は0でもよい。即ち、ステップ84を省略してもよい。
【0052】
ステップ86で、圧力上昇部54Bは、ノズル18の内部の圧力を上昇させる。
【0053】
ここで、ノズル18の内部の圧力を上昇させるとは、ノズル18の内部の圧力を、イオン化処理時のノズル18の内部の圧力よりも上昇させることである。より具体的には、ノズル18の内部の圧力を上昇させるとは、ノズル18の内部の圧力を、イオン化処理時のノズル18の内部の圧力よりも高く且つノズル18の先端の内部の堆積物を除去するための予め定めた圧力に調整することである。圧力上昇部54Bは、圧力調節弁32、圧力調節弁36、及び圧力調節弁38の少なくとも1つを調整して、ノズル18の内部の圧力が、イオン化処理時のノズル18の内部の圧力よりも高く且つノズル18の先端の内側及び外側の少なくとも一方の堆積物を除去するための予め定めた圧力にする。ノズル18の内部の圧力が当該予め定めた圧力にするためには、圧力調節弁32、圧力調節弁36、及び圧力調節弁38の少なくとも1つ、例えば、これらの全ての圧力調節弁32、36、38を調整し、ノズル18に供給するキャリアガス、燃料ガス、及びメイクアップガスの全てのガスの単位時間当たりの流量を上昇させることにより、行う。キャリアガス、燃料ガス、及びメイクアップガスの単位時間当たりの流量の上昇により、ノズル18の先端の内側及び外側の少なくとも一方の堆積物に対して上方向の力が与えられる。
【0054】
以上のようにステップ86のノズル18の内部の圧力を上昇させる処理は、測定対象試料をイオン化する処理が終了した時から第1の時間(所定時間)経過した時に開始される。
【0055】
ところで、測定対象試料をイオン化する処理が終了した時から第1の時間経過した時では、ノズル18の先端周囲の温度は、イオン化処理時の温度に等しい。よって、ステップ86のノズル18の内部の圧力を上昇させる処理は、ノズル18の先端周囲の温度がイオン化処理時の温度と等しい状態の時に実行される。
【0056】
ステップ88では、供給停止部54Cは、ステップ86のノズル18の内部の圧力を上昇させる処理が開始された時から、第2の時間が経過したか否かを判断する。なお、第2の時間は、例えば、1秒である。なお、1秒に限定されず、1.5秒、1.7秒等でもよい。
【0057】
ここで、第2の時間は、上記のように圧力が上昇することにより、ノズル18の先端の内側及び外側の少なくとも一方に堆積した堆積物(即ち、成分又は液状の堆積物)が除去されるまでの予め実験等により定めた時間である。
【0058】
ステップ86のノズル18の内部の圧力を上昇させる処理が開始された時から第2の時間が経過したと判断されなかった場合には、供給停止部54Cは、当該判断を、肯定判定となるまで、実行する。ステップ86のノズル18の内部の圧力を上昇させる処理が開始された時から第2の時間が経過したと判断された場合には、イオン化処理及び除去処理は、ステップ90に進む。
【0059】
なお、ステップ88では、供給停止部54Cは、第2の時間よりも長い第3の時間が経過したか否かを判断してもよい。
【0060】
ステップ90で、供給停止部54Cは、ガスの供給が停止されるように、圧力調節弁32、圧力調節弁36、及び圧力調節弁38の少なくとも1つを調整する。
【0061】
(効果)
以上説明したように第1の実施の形態の水素炎イオン化検出器10は、ノズル18の内部の圧力をノズル18の先端の内側及び外側の少なくとも一方の堆積物を除去するための予め定めた圧力にする処理を、ノズル18の先端の内側及び外側の少なくとも一方に堆積した堆積物(即ち、成分又は液状の堆積物)が除去されるまでの時間、継続する。よって、水素炎イオン化検出器10は、ノズル18の先端の内側及び外側の少なくとも一方に堆積した堆積物を、吹き飛ばすことにより、除去することができる。従って、水素炎イオン化検出器10は、ノズル18の先端の測定対象試料の堆積状態を、測定対象試料が堆積していない元の状態に近づけることができる。よって、ノズル18の水素炎30側の先端に堆積物が形成され、ノズル18の先端が詰まり、測定対象試料の水素炎30への流速が予め定めた流速から変化し、正常な分析結果が得られなくなることを防止することができる。
【0062】
また、従来、ユーザは、ノズルの先端が詰まる毎にもしくはノズルの先端が詰まる前に水素炎イオン化検出器を停止し、水素炎イオン化検出器を分解してノズルを取り外してノズル先端の堆積物を除去するメンテナンスを行っていた。このように水素炎イオン化検出器を分解する必要があったため、分解前と分解後とでは、組み立て誤差により水素炎イオン化検出器の性能に若干差異が生じる共に、水素炎イオン化検出器のダウンタイムが長くなっていた。しかし、本実施の形態では、上記のようにノズル18の先端の堆積物を除去して詰まりを防止している。よって、メンテナンスが簡便になり水素炎イオン化検出器のダウンタイムを短くすることができると共に、ノズルのメンテナンスによる性能の変化(組み立て誤差による性能変化)も防止することができる。
【0063】
更に、第1の実施の形態の水素炎イオン化検出器10は、ノズル18の先端の内側に堆積した堆積物を、凝固する前に除去するので、除去しにくくなる前に堆積物を除去することができる。また、ノズル18の内部の圧力を上昇させる処理を、ノズル18の先端周囲の温度がイオン化処理時の温度と等しい状態の時に実行するので、除去しにくくなる前に堆積物を除去することができる。また、メンテナンス後の水素炎イオン化検出器10の復帰及び安定をより早く、水素炎イオン化検出器10のダウンタイムをより短くすることができる。
【0064】
また、第1の実施の形態の水素炎イオン化検出器10の除去部40の供給部は、測定対象試料のイオン化のための既存の供給部である。具体的には、除去部40の供給部は、試料供給流路22、圧力調節弁32、及び試料供給部42と、燃料ガス供給流路26、圧力調節弁36、及び燃料ガス供給部46と、メイクアップガス供給流路28、圧力調節弁38、及びメイクアップガス供給部48と、の少なくとも1つである。よって、第1の実施の形態は、測定対象試料のイオン化のための既存の供給部以外の新たな構成を追加しないで、測定対象試料の堆積物を除去することができる。従って、第1の実施の形態は、水素炎イオン化検出器10の大型化及びコストの増大を抑えることができる。
【0065】
なお、第1の実施の形態においては、ノズル18の先端の内側及び外側に堆積する測定対象試料成分を凝固までに除去するものとしたが、これに限られず、既に凝固した測定対象試料成分についても除去が可能である。この場合、既に凝固した測定対象試料成分の除去に十分なノズル18の内部の圧力と、その圧力の保持時間を実験等で定めればよい。
【0066】
[第2の実施の形態]
(構成)
次に、第2の実施の形態の水素炎イオン化検出器の構成を説明する。第2の実施の形態の水素炎イオン化検出器の構成は、第1の実施の形態の水素炎イオン化検出器の構成と同一の部分を有する。同一の部分には同一の符号を付してその説明を省略し、異なる部分のみを説明する。
【0067】
図4は、第2の実施の形態の水素炎イオン化検出器100の一例を示すブロック図である。
【0068】
第1の実施の形態では、供給部は、上記のように、試料供給流路22、圧力調節弁32、及び試料供給部42と、燃料ガス供給流路26、圧力調節弁36、及び燃料ガス供給部46と、メイクアップガス供給流路28、圧力調節弁38、及びメイクアップガス供給部48と、の少なくとも1つである。
【0069】
これに対し、第2の実施の形態では、図4に示すように、水素炎イオン化検出器100は、試料供給流路22、燃料ガス供給流路26、及びメイクアップガス供給流路28以外の他の流路102を介して、ノズル18の内部の圧力を上昇させるガスをノズル18の内部に供給する点で相違する。
【0070】
第2の実施の形態では、流路102を介してノズル18の内部に供給するガスは、特に限定されるものではなく、例えば、燃料ガス又はメイクアップガス等でもよい。
【0071】
ノズル18の内部に供給するガスが燃料ガスの場合には、圧力調節弁36及び燃料ガス供給部46(図1も参照)と同様の圧力調節弁及び燃料ガス供給部を備え、流路102に、燃料ガスを供給する。また、ノズル18の内部に供給するガスがメイクアップガスの場合には、圧力調節弁38及びメイクアップガス供給部48(図1も参照)と同様の圧力調節弁及び燃料ガス供給部を備え、流路102に、メイクアップガスを供給する。
【0072】
その他、流路102を、例えば、メイクアップガス供給流路28に接続させるようにしてもよい。圧力調節弁38及びメイクアップガス供給部38と同様の圧力調節弁及びメイクアップガス供給部を備え、流路102に、メイクアップガスを供給する。
【0073】
また、流路102を、例えば、燃料ガス供給流路26に接続させるようにしてもよい。圧力調節弁36及びメイクアップガス供給部46と同様の圧力調節弁及び燃料ガス供給部を備え、流路102に、燃料ガスを供給する。
【0074】
(作用)
第2の実施の形態のイオン化処理及び除去処理(ステップ86(図3参照))では、試料供給流路22、燃料ガス供給流路26、及びメイクアップガス供給流路28に代え、又は、試料供給流路22、燃料ガス供給流路26、及びメイクアップガス供給流路28と共に、流路102を介してガスをノズル18の内部に供給することにより、ノズル18の内部の圧力を上昇させる。
【0075】
(効果)
以上説明したように第2の実施の形態の水素炎イオン化検出器100は、ノズル18の先端の内側及び外側の少なくとも一方に堆積した堆積物(即ち、成分又は液状の堆積物)を除去することができる。従って、水素炎イオン化検出器100は、ノズル18の先端の測定対象試料の堆積状態を、測定対象試料が堆積していない元の状態に近づけることができる。なお、第2の実施の形態においても除去対象が凝固前の測定対象試料成分に限られず、既に凝固した測定対象試料成分であっても構わない。
【0076】
また、第2の実施の形態の水素炎イオン化検出器100は、測定対象試料をイオン化するための供給ユニットは別のガス供給ユニットを備えるので、測定対象試料をイオン化するためのガスの既存の供給ユニットの設定を測定対象試料のイオン化のままの設定にして、ノズル18の先端の測定対象試料の堆積状態を、測定対象試料が堆積していない元の状態に近づけることができる。
【0077】
[第3の実施の形態]
(構成)
次に、第3の実施の形態の水素炎イオン化検出器の構成を説明する。第2の実施の形態の水素炎イオン化検出器の構成は、第1の実施の形態の水素炎イオン化検出器の構成と同一の部分を有する。同一の部分には同一の符号を付してその説明を省略し、異なる部分のみを説明する。
【0078】
図5は、第3の実施の形態の水素炎イオン化検出器200の一例を示すブロック図である。図5に示すように、水素炎イオン化検出器200は、ガスを噴射する噴射部206と、噴射されたガスの圧力を調整する圧力調整弁204、イオンコレクタ12の内部を通り、先端がノズル18の先端の上部に位置し且つ圧力が調整された状態のガスをノズル18の先端の外側に案内する案内流路202と、を有する供給部を備える。
【0079】
なお、案内流路202は、イオンコレクタ12の内部を通り、先端がノズル18の先端の上部に位置することに限定されない。例えば、案内流路202は、試料イオン化部10Aの側面の挿通孔に挿通させ、案内流路202の先端をノズル18の先端の周囲に位置させてもよい。
【0080】
(作用)
第3の実施の形態では、第1の実施の形態と同様にイオン化処理及び除去処理を実行すると共に、供給部(202~206)は、ノズル18の先端に、当該先端部の外側からガスを噴き付けることにより、堆積物を除去する。ノズル18の先端に、当該先端部の外側からガスを噴き付けることは、イオン化処理及び除去処理の前又は後に行う。
【0081】
(効果)
以上説明したように第3の実施の形態の水素炎イオン化検出器200は、ノズル18の先端の内側及び外側に堆積した堆積物を除去することができる。従って、水素炎イオン化検出器200は、ノズル18の先端の測定対象試料の堆積状態を、測定対象試料が堆積していない元の状態に近づけることができる。
【0082】
[変形例]
(第1の変形例)
第1の実施の形態から第3の実施の形態では、補助ガス供給流路24が反応空間20に接続される位置は、例えば、反応空間20の内側面の上下方向の中間の位置である。補助ガス供給流路24の向きは、補助ガス供給流路24の先端(即ち、反応空間20の内側面に接続される端)からの補助ガスが供給される方向が、ノズル18に向く向きである。本開示の技術はこれに限定されない。
【0083】
例えば、補助ガス供給流路24が反応空間20に接続される位置は、反応空間20の内側面のノズル18の先端に対応する位置でもよい。補助ガス供給流路24の向きは、補助ガス供給流路24の先端(即ち、反応空間20の内側面に接続される端)からの補助ガスが供給される方向が、ノズル18の先端の外側に向く向きとしてもよい。
【0084】
これにより、補助ガスの単位時間当たりの流量の上昇によりノズル18の先端の堆積物に対して水平方向の力を与えることができる。
【0085】
そして、上記各実施の形態のように、キャリアガス、燃料ガス、及びメイクアップガスの単位時間当たりの流量の上昇により、ノズル18の先端の堆積物に対して上方向の力を与える。
【0086】
以上のように第1の変形例では、ノズル18の先端の堆積物に対して水平方向の力と上方向の力とが与えられる。よって、第2の変形例では、各実施の形態より、堆積物の除去効率を向上させることができる。
【0087】
(第2の変形例)
第1の実施の形態から第3の実施の形態では、ステップ86のノズル18の内部の圧力を上昇させる処理は、測定対象試料をイオン化する処理が終了した時から第1の時間(所定時間)経過した時、即ち、ノズル18の先端周囲の温度がイオン化処理時の温度と等しい状態の時に実行される。本開示の技術はこれに限定されない。例えば、ステップ86のノズル18の内部の圧力を上昇させる処理は、ノズル18の先端周囲の温度が室温の時、例えば、イオン化処理の開始前、又は、イオン化処理が開始後、ノズル18の先端周囲の温度が室温になるまでの時間が経過した時に、実行されてもよい。また、ステップ86のノズル18の内部の圧力を上昇させる処理が、ノズル18の先端周囲の温度が室温の時に実行される場合には、ノズル18の先端周囲の温度ヒータによりイオン化処理時の温度に温調されてもよい。
【0088】
(第3の変形例)
第1の実施の形態から第3の実施の形態のステップ86のノズル18の内部の圧力を上昇させる処理では、全ての圧力調節弁32、36、38が調整される。具体的には、ノズル18の内部の圧力がイオン化処理時のノズル18の内部の圧力よりも高く且つノズル18の先端の内部の堆積物を除去するための予め定めた圧力になるように、ノズル18に供給するキャリアガス、燃料ガス、及びメイクアップガスの全てのガスの単位時間当たりの流量が上昇される。本開示の技術はこれに限定されない。
【0089】
第1に、圧力上昇部54Bは、圧力調節弁32、36、38を切り替えて、1つ又は2つの圧力調整弁を調整して、キャリアガス、燃料ガス、及びメイクアップガスの1つ又は2つのガスの単位時間当たりの流量を上昇させる。
【0090】
例えば、圧力上昇部54Bは、まず、圧力調節弁32を調整して、キャリアガスの単位時間当たりの流量を上昇させる。次に、圧力上昇部54Bは、圧力調節弁36を調整して、燃料ガス及の単位時間当たりの流量を上昇させせる。最後に、圧力上昇部54Bは、圧力調節弁38を調整して、メイクアップガスの単位時間当たりの流量を上昇させる。
【0091】
また、圧力上昇部54Bは、まず、圧力調節弁32、36を調整して、キャリアガス及び燃料ガスの単位時間当たりの流量を上昇させる。次に、圧力上昇部54Bは、圧力調節弁36、38を調整して、燃料ガス及びメイクアップガスの単位時間当たりの流量を上昇させせる。最後に、圧力上昇部54Bは、圧力調節弁38、32を調整して、メイクアップガス及びキャリアガスの単位時間当たりの流量を上昇させる。
【0092】
第2に、圧力上昇部54Bは、圧力調節弁32、36、38の何れかを調整して、キャリアガス、燃料ガス、及びメイクアップガスの1つのガスの単位時間当たりの流量を上昇させる。
【0093】
例えば、圧力上昇部54Bは、圧力調節弁32を調整して、キャリアガスだけ、単位時間当たりの流量を上昇させる。この場合、圧力上昇部54Bは、第2の時間が経過するまで、キャリアガスの単位時間当たりの流量の上昇を連続又は断続させてもよい。
(第4の変形例)
第1の実施の形態から第3の実施の形態のノズル18の内部の圧力を上昇させる処理は、測定対象試料をイオン化する処理が終了した時から第1の時間(所定時間)経過した時に1回開始され、第2の時間が経過するまでに実行される。本開示の技術はこれに限定されない。
【0094】
例えば、ステップ86の処理の開始タイミングを、ユーザが、入力部70を介して指定したり指定したタイミングを変更したりしてもよい。
【0095】
また、例えば、ステップ86の処理の回数を、ユーザが、入力部70を介して指定したり指定した回数を変更したりしてもよい。
【0096】
更に、例えば、ノズル18の内部の圧力を上昇させる処理を継続して実行する時間を、ユーザが、入力部70を介して指定したり指定した時間を変更したりしてもよい。
【0097】
(第5の変形例)
本開示の技術は、水素炎イオン化検出器(FID)に限定されない。例えば、水素炎を使用したガスクロマトグラフ検出器であれば、FID以外の検出器、例えば、炎光光度検出器(FPD)、熱イオン化検出器(FTD)でもよい。なお、炎光光度検出器(FPD)は、測定対象試料をイオン化することにより発生する光を検出する。
【0098】
(その他の変形例)
上記実施形態では、NVM46にイオン化処理及び除去処理プログラム56Pが記憶されている形態例を挙げて説明したが、本開示の技術はこれに限定されない。例えば、イオン化処理及び除去処理プログラム56PがSSD、USBメモリ、又は磁気テープなどの可搬型のコンピュータ読取可能な非一時的記憶媒体に記憶されていてもよい。非一時的記憶媒体に記憶されているイオン化処理及び除去処理プログラム56Pは、水素炎イオン化検出器10、100、200のコンピュータ52にインストールされる。プロセッサ54は、イオン化処理及び除去処理プログラム56Pに従って、イオン化処理及び除去処理を実行する。
【0099】
また、ネットワークを介して水素炎イオン化検出器10、100、200に接続される他のコンピュータ又はサーバ装置等の記憶装置にイオン化処理及び除去処理プログラム56Pを記憶させておき、水素炎イオン化検出器10、100、200の要求に応じてイオン化処理及び除去処理プログラム56Pがダウンロードされ、水素炎イオン化検出器10、100、200にインストールされるようにしてもよい。
【0100】
なお、水素炎イオン化検出器10、100、200に接続される他のコンピュータ又はサーバ装置等の記憶装置、又はNVM46にイオン化処理及び除去処理プログラム56Pの全てを記憶させておく必要はなく、イオン化処理及び除去処理プログラム56Pの一部を記憶させておいてもよい。
【0101】
上記実施形態では、本開示の技術がソフトウェア構成によって実現される形態例を挙げて説明しているが、本開示の技術はこれに限定されず、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、又はPLD(Programmable Logic Device)を含むデバイスを適用してもよい。また、ハードウェア構成及びソフトウェア構成の組み合わせを用いてもよい。
【0102】
上記実施形態で説明したイオン化処理及び除去処理を実行するハードウェア資源としては、次に示す各種のプロセッサを用いることができる。プロセッサとしては、例えば、ソフトウェア、すなわち、プログラムを実行することで、イオン化処理及び除去処理を実行するハードウェア資源として機能する汎用的なプロセッサであるCPUが挙げられる。また、プロセッサとしては、例えば、FPGA、PLD、又はASICなどの特定の処理を実行させるために専用に設計された回路構成を有するプロセッサである専用電子回路が挙げられる。何れのプロセッサにもメモリが内蔵又は接続されており、何れのプロセッサもメモリを使用することでイオン化処理及び除去処理を実行する。
【0103】
イオン化処理及び除去処理を実行するハードウェア資源は、これらの各種のプロセッサのうちの1つで構成されてもよいし、同種または異種の2つ以上のプロセッサの組み合わせ(例えば、複数のFPGAの組み合わせ、又はCPUとFPGAとの組み合わせ)で構成されてもよい。また、イオン化処理及び除去処理を実行するハードウェア資源は1つのプロセッサであってもよい。
【0104】
1つのプロセッサで構成する例としては、第1に、1つ以上のCPUとソフトウェアの組み合わせで1つのプロセッサを構成し、このプロセッサが、イオン化処理及び除去処理を実行するハードウェア資源として機能する形態がある。第2に、SoC(System-on-a-chip)などに代表されるように、イオン化処理及び除去処理を実行する複数のハードウェア資源を含むシステム全体の機能を1つのIC(Integrated Circuit)チップで実現するプロセッサを使用する形態がある。このように、イオン化処理及び除去処理は、ハードウェア資源として、上記各種のプロセッサの1つ以上を用いて実現される。
【0105】
更に、これらの各種のプロセッサのハードウェア的な構造としては、より具体的には、半導体素子などの回路素子を組み合わせた電子回路を用いることができる。また、上記のイオン化処理及び除去処理はあくまでも一例である。従って、主旨を逸脱しない範囲内において不要なステップを削除したり、新たなステップを追加したり、処理順序を入れ替えたりしてもよいことは言うまでもない。
【0106】
以上に示した記載内容及び図示内容は、本開示の技術に係る部分についての詳細な説明であり、本開示の技術の一例に過ぎない。例えば、上記の構成、機能、作用、及び効果に関する説明は、本開示の技術に係る部分の構成、機能、作用、及び効果の一例に関する説明である。よって、本開示の技術の主旨を逸脱しない範囲内において、以上に示した記載内容及び図示内容に対して、不要な部分を削除したり、新たな要素を追加したり、置き換えたりしてもよいことは言うまでもない。また、錯綜を回避し、本開示の技術に係る部分の理解を容易にするために、以上に示した記載内容及び図示内容では、本開示の技術の実施を可能にする上で特に説明を要しない技術常識等に関する説明は省略されている。
【0107】
本明細書に記載された全ての文献、特許出願及び技術規格は、個々の文献、特許出願及び技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書中に参照により取り込まれる。
【0108】
[態様]
上述した各実施の形態は、以下の態様の具体例であることが当業者により理解される。
【0109】
(第1項)
測定対象試料を導入する試料導入部を備え、前記試料導入部より導入された前記測定対象試料を、水素炎を用いてイオン化する試料イオン化部と、
前記試料イオン化部の上方に配置され、試料イオン化部で生成されたイオンにより発生する電流又は光を検出する検出部と、
前記試料導入部の前記水素炎側の先端に堆積する前記測定対象試料の堆積物を除去する除去部と、
を備える水素炎イオン化検出器。
【0110】
第1項の水素炎イオン化検出器によれば、試料導入部の先端の測定対象試料の堆積状態を、測定対象試料が堆積していない元の状態に近づけることができる。
【0111】
(第2項)
前記除去部は、前記堆積物が凝固する前に、前記堆積物を除去する第1項に記載の水素炎イオン化検出器。
【0112】
第2項の水素炎イオン化検出器によれば、除去しにくくなる前に堆積物を除去することができる。
【0113】
(第3項)
前記除去部は、前記測定対象試料をイオン化する処理が終了した時から所定時間経過した時に、前記堆積物を除去する第2項に記載の水素炎イオン化検出器。
【0114】
第3項の水素炎イオン化検出器によれば、除去しにくくなる前に堆積物を除去することができる。
【0115】
(第4項)
前記除去部は、前記試料導入部の前記先端の内側及び外側の少なくとも一方の前記堆積物を除去する第1又は第2項に記載の水素炎イオン化検出器。
【0116】
第4項の水素炎イオン化検出器によれば、試料導入部の先端の内側及び外側の少なくとも一方の測定対象試料の堆積状態を、測定対象試料が堆積していない元の状態に近づけることができる。
【0117】
(第5項)
前記除去部は、前記試料導入部の内部の圧力を、前記測定対象試料をイオン化する処理を実行する場合の前記試料導入部の内部の圧力よりも高くすることにより、前記堆積物を除去する第1又は第2項に記載の水素炎イオン化検出器。
【0118】
第5項の水素炎イオン化検出器によれば、試料導入部の先端の内側の測定対象試料の堆積状態を、測定対象試料が堆積していない元の状態に近づけることができる。
【0119】
(第6項)
前記除去部は、
前記試料導入部の内部にガスを供給する供給部と、
前記前記試料導入部の内部の圧力が、前記測定対象試料をイオン化する処理を実行する場合の前記試料導入部の内部の圧力よりも高くなるように、前記供給部を制御する制御部と、
を備える第5項に記載の水素炎イオン化検出器。
【0120】
第6項の水素炎イオン化検出器によれば、試料導入部の先端の内側の測定対象試料の堆積状態を、測定対象試料が堆積していない元の状態に近づけることができる。
【0121】
(第7項)
前記除去部は、
前記試料導入部の内部にガスを供給する供給部と、
前記試料導入部の内部に供給するガスの単位時間当たりの流量が、前記測定対象試料をイオン化する処理を実行する場合に前記試料導入部の内部に供給するガスの単位時間当たりの流量よりも大きくなるように、前記供給部を制御する制御部と、
を備える第5項に記載の水素炎イオン化検出器。
【0122】
第7項の水素炎イオン化検出器によれば、試料導入部の先端の測定対象試料の堆積状態を、測定対象試料が堆積していない元の状態に近づけることができる。
【0123】
(第8項)
前記供給部は、前記測定対象試料をイオン化するためのガスの供給ユニットとは異なるガス供給ユニットを備える、第6又は第7項に記載の水素炎イオン化検出器。
【0124】
第8項の水素炎イオン化検出器によれば、測定対象試料をイオン化するためのガスの既存の供給ユニットの設定を測定対象試料のイオン化のままの設定にして、試料導入部の先端の測定対象試料の堆積状態を、測定対象試料が堆積していない元の状態に近づけることができる。
【0125】
(第9項)
前記ガスは、前記測定対象試料をイオン化するためのガスである、第6又は第7項に記載の水素炎イオン化検出器。
【0126】
第9項の水素炎イオン化検出器によれば、測定対象試料をイオン化するためのガスの既存の供給ユニットを用いて、試料導入部の先端の測定対象試料の堆積状態を、測定対象試料が堆積していない元の状態に近づけることができる。
【0127】
(第10項)
前記試料イオン化部は、前記試料導入部の先端を含む空間を備え、
前記供給部は、
前記試料導入部に、測定対象試料と共にキャリアガスを供給する試料供給ユニットと、
前記試料導入部に、燃料ガスを供給する燃料ガス供給ユニットと、
前記試料導入部に、メイクアップガスを供給するためにメイクアップガス供給ユニットと、
の少なくとも1つを備え、
前記水素炎イオン化検出器は、前記空間に、補助ガスを供給する補助ガス供給ユニットと、
を備える、第9項に記載の水素炎イオン化検出器。
【0128】
第10項の水素炎イオン化検出器によれば、測定対象試料をイオン化するためのガスの既存の供給ユニットを用いて、試料導入部の先端の測定対象試料の堆積状態を、測定対象試料が堆積していない元の状態に近づけることができる。
【0129】
(第11項)
前記供給ユニットは、前記補助ガスを、前記試料導入部の先端の外側の周囲に供給する、第10項に記載の水素炎イオン化検出器。
【0130】
第11項の水素炎イオン化検出器によれば、試料導入部の先端の外側の測定対象試料の堆積状態を、測定対象試料が堆積していない元の状態に近づけることができる。
【0131】
(第12項)
前記除去部は、前記試料導入部の前記先端に、前記先端部の外側からガスを噴き付けることにより、前記堆積物を除去する、第1又は第2項に記載の水素炎イオン化検出器。
【0132】
第12項の水素炎イオン化検出器によれば、試料導入部の先端の外側の測定対象試料の堆積状態を、測定対象試料が堆積していない元の状態に近づけることができる。
【0133】
(第13項)
前記除去部は、
前記ガスを噴射する噴射部と、
前記噴射された前記ガスを前記試料導入部の前記先端に案内する案内部と、
を備える第12項に記載の水素炎イオン化検出器。
【0134】
第13項の水素炎イオン化検出器によれば、試料導入部の先端の外側の測定対象試料の堆積状態を、測定対象試料が堆積していない元の状態に近づけることができる。
【0135】
(第14項)
前記案内は、前記検出部の内部を貫通する流路を備える、第13項に記載の水素炎イオン化検出器。
【0136】
第14項の水素炎イオン化検出器によれば、水素炎イオン化検出器の大型化を抑制することができる。
【0137】
(第15項)
測定対象試料を導入する試料導入部を備え且つ前記試料導入部より導入された前記測定対象試料を水素炎によりイオン化する水素炎イオン化検出器における前記試料導入部の前記水素炎側の先端に堆積する前記測定対象試料の堆積物を除去する堆積物除去方法。
化検出器。
【0138】
第15項の堆積物除去方法によれば、試料導入部の先端の測定対象試料の堆積状態を、測定対象試料が堆積していない元の状態に近づけることができる。
【0139】
(第16項)
測定対象試料を導入する試料導入部を備え且つ前記試料導入部より導入された前記測定対象試料を水素炎によりイオン化する水素炎イオン化検出器における前記試料導入部の前記水素炎側の先端に堆積する前記測定対象試料の堆積物を除去する除去部を備える堆積物除去装置。
化検出器。
【0140】
第16項の堆積物除去装置によれば、試料導入部の先端の測定対象試料の堆積状態を、測定対象試料が堆積していない元の状態に近づけることができる。
【0141】
(第17項)
前記除去部は、前記堆積物が凝固する前に、前記堆積物を除去する第16項に記載の水素炎イオン化検出器。
【0142】
第17項の水素炎イオン化検出器によれば、除去しにくくなる前に堆積物を除去することができる。
【0143】
(第18項)
前記除去部は、前記測定対象試料をイオン化する処理が終了した時から所定時間経過した時に、前記堆積物を除去する第17項に記載の水素炎イオン化検出器。
【0144】
第18項の水素炎イオン化検出器によれば、除去しにくくなる前に堆積物を除去することができる。
【0145】
(第19項)
前記除去部は、前記試料導入部の前記先端の内側及び外側の少なくとも一方の前記堆積物を除去する第16又は第17項に記載の水素炎イオン化検出器。
【0146】
第19項の水素炎イオン化検出器によれば、試料導入部の先端の内側及び外側の少なくとも一方の測定対象試料の堆積状態を、測定対象試料が堆積していない元の状態に近づけることができる。
【0147】
(第20項)
前記除去部は、前記試料導入部の内部の圧力を、前記測定対象試料をイオン化する処理を実行する場合の前記試料導入部の内部の圧力よりも高くすることにより、前記堆積物を除去する第16又は第17項に記載の水素炎イオン化検出器。
【0148】
第20項の水素炎イオン化検出器によれば、試料導入部の先端の内側の測定対象試料の堆積状態を、測定対象試料が堆積していない元の状態に近づけることができる。
【0149】
(第21項)
前記除去部は、
前記試料導入部の内部にガスを供給する供給部と、
前記前記試料導入部の内部の圧力が、前記測定対象試料をイオン化する処理を実行する場合の前記試料導入部の内部の圧力よりも高くなるように、前記供給部を制御する制御部と、
を備える第20項に記載の水素炎イオン化検出器。
【0150】
第21項の水素炎イオン化検出器によれば、試料導入部の先端の内側の測定対象試料の堆積状態を、測定対象試料が堆積していない元の状態に近づけることができる。
【0151】
(第22項)
前記除去部は、
前記試料導入部の内部にガスを供給する供給部と、
前記試料導入部の内部に供給するガスの単位時間当たりの流量が、前記測定対象試料をイオン化する処理を実行する場合に前記試料導入部の内部に供給するガスの単位時間当たりの流量よりも大きくなるように、前記供給部を制御する制御部と、
を備える第20項に記載の水素炎イオン化検出器。
【0152】
第22項の水素炎イオン化検出器によれば、試料導入部の先端の測定対象試料の堆積状態を、測定対象試料が堆積していない元の状態に近づけることができる。
【0153】
(第23項)
前記供給部は、前記測定対象試料をイオン化するためのガスの供給ユニットとは異なるガス供給ユニットを備える、第21又は第22項に記載の水素炎イオン化検出器。
【0154】
第23項の水素炎イオン化検出器によれば、測定対象試料をイオン化するためのガスの既存の供給ユニットの設定を測定対象試料のイオン化のままの設定にして、試料導入部の先端の測定対象試料の堆積状態を、測定対象試料が堆積していない元の状態に近づけることができる。
【0155】
(第24項)
前記ガスは、前記測定対象試料をイオン化するためのガスである、第21又は第22項に記載の水素炎イオン化検出器。
【0156】
第24項の水素炎イオン化検出器によれば、測定対象試料をイオン化するためのガスの既存の供給ユニットを用いて、試料導入部の先端の測定対象試料の堆積状態を、測定対象試料が堆積していない元の状態に近づけることができる。
【0157】
(第25項)
前記試料イオン化部は、前記試料導入部の先端を含む空間を備え、
前記供給部は、
前記試料導入部に、測定対象試料と共にキャリアガスを供給する試料供給ユニットと、
前記試料導入部に、燃料ガスを供給する燃料ガス供給ユニットと、
前記試料導入部に、メイクアップガスを供給するためにメイクアップガス供給ユニットと、
の少なくとも1つを備え、
前記水素炎イオン化検出器は、前記空間に、補助ガスを供給する補助ガス供給ユニットと、
を備える、第24項に記載の水素炎イオン化検出器。
【0158】
第25項の水素炎イオン化検出器によれば、測定対象試料をイオン化するためのガスの既存の供給ユニットを用いて、試料導入部の先端の測定対象試料の堆積状態を、測定対象試料が堆積していない元の状態に近づけることができる。
【0159】
(第26項)
前記供給ユニットは、前記補助ガスを、前記試料導入部の先端の外側の周囲に供給する、第25項に記載の水素炎イオン化検出器。
【0160】
第26項の水素炎イオン化検出器によれば、試料導入部の先端の外側の測定対象試料の堆積状態を、測定対象試料が堆積していない元の状態に近づけることができる。
【0161】
(第27項)
前記除去部は、前記試料導入部の前記先端に、前記先端部の外側からガスを噴き付けることにより、前記堆積物を除去する、第16又は第17項に記載の水素炎イオン化検出器。
【0162】
第27項の水素炎イオン化検出器によれば、試料導入部の先端の外側の測定対象試料の堆積状態を、測定対象試料が堆積していない元の状態に近づけることができる。
【0163】
(第28項)
前記除去部は、
前記ガスを噴射する噴射部と、
前記噴射された前記ガスを前記試料導入部の前記先端に案内する案内部と、
を備える第27項に記載の水素炎イオン化検出器。
【0164】
第28項の水素炎イオン化検出器によれば、試料導入部の先端の外側の測定対象試料の堆積状態を、測定対象試料が堆積していない元の状態に近づけることができる。
【0165】
(第29項)
前記案内は、前記検出部の内部を貫通する流路を備える、第28項に記載の水素炎イオン化検出器。
【0166】
第29項の水素炎イオン化検出器によれば、水素炎イオン化検出器の大型化を抑制することができる。
【符号の説明】
【0167】
18 ノズル
10A 試料イオン化部
10B 検出部
40 除去部
50 制御部
図1
図2A
図2B
図2C
図3
図4
図5
【手続補正書】
【提出日】2024-03-11
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象試料を導入する試料導入部を備え、前記試料導入部より導入された前記測定対象試料を、水素炎を用いてイオン化する試料イオン化部と、
前記試料イオン化部の上方に配置され、試料イオン化部で生成されたイオンにより発生する電流又は光を検出する検出部と、
前記試料導入部の前記水素炎側の先端に堆積する前記測定対象試料の堆積物を除去する除去部と、
を備える水素炎イオン化検出器。
【請求項2】
前記除去部は、前記堆積物が凝固する前に、前記堆積物を除去する請求項1に記載の水素炎イオン化検出器。
【請求項3】
前記除去部は、前記測定対象試料をイオン化する処理が終了した時から所定時間経過した時に、前記堆積物を除去する請求項2に記載の水素炎イオン化検出器。
【請求項4】
前記除去部は、前記試料導入部の前記先端の内側及び外側の少なくとも一方の前記堆積物を除去する請求項1又は請求項2に記載の水素炎イオン化検出器。
【請求項5】
前記除去部は、前記試料導入部の内部の圧力を、前記測定対象試料をイオン化する処理を実行する場合の前記試料導入部の内部の圧力よりも高くすることにより、前記堆積物を除去する請求項1又は請求項2に記載の水素炎イオン化検出器。
【請求項6】
前記除去部は、
前記試料導入部の内部にガスを供給する供給部と、
前記試料導入部の内部の圧力が、前記測定対象試料をイオン化する処理を実行する場合の前記試料導入部の内部の圧力よりも高くなるように、前記供給部を制御する制御部と、
を備える請求項5に記載の水素炎イオン化検出器。
【請求項7】
前記除去部は、
前記試料導入部の内部にガスを供給する供給部と、
前記試料導入部の内部に供給するガスの単位時間当たりの流量が、前記測定対象試料をイオン化する処理を実行する場合に前記試料導入部の内部に供給するガスの単位時間当たりの流量よりも大きくなるように、前記供給部を制御する制御部と、
を備える請求項5に記載の水素炎イオン化検出器。
【請求項8】
前記供給部は、前記測定対象試料をイオン化するためのガスの供給ユニットとは異なるガス供給ユニットを備える、請求項6又は請求項7に記載の水素炎イオン化検出器。
【請求項9】
前記ガスは、前記測定対象試料をイオン化するためのガスである、請求項6又は請求項7に記載の水素炎イオン化検出器。
【請求項10】
前記試料イオン化部は、前記試料導入部の先端を含む空間を備え、
前記供給部は、
前記試料導入部に、測定対象試料と共にキャリアガスを供給する試料供給ユニットと、
前記試料導入部に、燃料ガスを供給する燃料ガス供給ユニットと、
前記試料導入部に、メイクアップガスを供給するメイクアップガス供給ユニットと、
の少なくとも1つを備え、
前記水素炎イオン化検出器は、前記空間に、補助ガスを供給する補助ガス供給ユニットと、
を備える、請求項9に記載の水素炎イオン化検出器。
【請求項11】
前記補助ガス供給ユニットは、前記補助ガスを、前記試料導入部の先端の外側の周囲に供給する、請求項10に記載の水素炎イオン化検出器。
【請求項12】
前記除去部は、前記試料導入部の前記先端に、前記先端の外側からガスを噴き付けることにより、前記堆積物を除去する、請求項1又は請求項2に記載の水素炎イオン化検出器。
【請求項13】
前記除去部は、
前記ガスを噴射する噴射部と、
前記噴射された前記ガスを前記試料導入部の前記先端に案内する案内部と、
を備える請求項12に記載の水素炎イオン化検出器。
【請求項14】
前記案内は、前記検出部の内部を貫通する流路を備える、請求項13に記載の水素炎イオン化検出器。
【請求項15】
測定対象試料を導入する試料導入部を備え且つ前記試料導入部より導入された前記測定対象試料を水素炎によりイオン化する水素炎イオン化検出器における前記試料導入部の前記水素炎側の先端に堆積する前記測定対象試料の堆積物を除去する堆積物除去方法。
【請求項16】
測定対象試料を導入する試料導入部を備え且つ前記試料導入部より導入された前記測定対象試料を水素炎によりイオン化する水素炎イオン化検出器における前記試料導入部の前記水素炎側の先端に堆積する前記測定対象試料の堆積物を除去する除去部を備える堆積物除去装置。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0034
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0034】
プロセッサ54は、DSP(Digital Signal Processor)、CPU(Central Processing Unit)、及びGPU(Graphics Processing Unit)を含む処理装置であり、DSP及びGPUは、CPUの制御下で動作し、画像に関する処理の実行を担う。ここでは、プロセッサ54の一例として、DSP、CPU、及びGPUを含む処理装置を挙げているが、これはあくまでも一例に過ぎず、プロセッサ54は、GPU機能を統合した1つ以上のCPU及びDSPであってもよいし、GPU機能を統合していない1つ以上のCPU及びDSPであってもよいし、TPU(Tensor Processing Unit)が搭載されていてもよい。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0041
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0041】
NVM56には、イオン化処理及び除去処理プログラム56Pが記憶されている。プロセッサ54は、NVM56からイオン化処理及び除去処理プログラム56Pを読み出し、読み出したイオン化処理及び除去処理プログラム56PをRAM58上で実行することによりイオン化処理及び除去処理を行う。プロセッサ54が、RAM58上で実行するイオン化処理及び除去処理プログラム56Pに従って、イオン化処理部54A、圧力上昇部54B、及び供給停止部54Cとして動作することによって、イオン化処理及び除去処理が実現される。イオン化処理及び除去処理は、ノズル18の内部の圧力が、測定対象試料をイオン化する処理を実行する場合のノズル18の内部の圧力よりも高くなるように、供給部を制御する処理である。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0072
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0072】
その他、流路102を、例えば、メイクアップガス供給流路28に接続させるようにしてもよい。圧力調節弁38及びメイクアップガス供給部48と同様の圧力調節弁及びメイクアップガス供給部を備え、流路102に、メイクアップガスを供給する。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0086
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0086】
以上のように第1の変形例では、ノズル18の先端の堆積物に対して水平方向の力と上方向の力とが与えられる。よって、第1の変形例では、各実施の形態より、堆積物の除去効率を向上させることができる。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0087
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0087】
(第2の変形例)
第1の実施の形態から第3の実施の形態では、ステップ86のノズル18の内部の圧力を上昇させる処理は、測定対象試料をイオン化する処理が終了した時から第1の時間(所定時間)経過した時、即ち、ノズル18の先端周囲の温度がイオン化処理時の温度と等しい状態の時に実行される。本開示の技術はこれに限定されない。例えば、ステップ86のノズル18の内部の圧力を上昇させる処理は、ノズル18の先端周囲の温度が室温の時、例えば、イオン化処理の開始前、又は、イオン化処理が開始後、ノズル18の先端周囲の温度が室温になるまでの時間が経過した時に、実行されてもよい。また、ステップ86のノズル18の内部の圧力を上昇させる処理が、ノズル18の先端周囲の温度が室温の時に実行される場合には、ノズル18の先端周囲の温度が、ヒータによりイオン化処理時の温度に温調されてもよい。
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0098
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0098】
(その他の変形例)
上記実施形態では、NVM56にイオン化処理及び除去処理プログラム56Pが記憶されている形態例を挙げて説明したが、本開示の技術はこれに限定されない。例えば、イオン化処理及び除去処理プログラム56PがSSD、USBメモリ、又は磁気テープなどの可搬型のコンピュータ読取可能な非一時的記憶媒体に記憶されていてもよい。非一時的記憶媒体に記憶されているイオン化処理及び除去処理プログラム56Pは、水素炎イオン化検出器10、100、200のコンピュータ52にインストールされる。プロセッサ54は、イオン化処理及び除去処理プログラム56Pに従って、イオン化処理及び除去処理を実行する。
【手続補正8】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0100
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0100】
なお、水素炎イオン化検出器10、100、200に接続される他のコンピュータ又はサーバ装置等の記憶装置、又はNVM56にイオン化処理及び除去処理プログラム56Pの全てを記憶させておく必要はなく、イオン化処理及び除去処理プログラム56Pの一部を記憶させておいてもよい。
【手続補正9】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0119
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0119】
(第6項)
前記除去部は、
前記試料導入部の内部にガスを供給する供給部と、
前記試料導入部の内部の圧力が、前記測定対象試料をイオン化する処理を実行する場合の前記試料導入部の内部の圧力よりも高くなるように、前記供給部を制御する制御部と、
を備える第5項に記載の水素炎イオン化検出器。
【手続補正10】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0129
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0129】
(第11項)
前記補助ガス供給ユニットは、前記補助ガスを、前記試料導入部の先端の外側の周囲に供給する、第10項に記載の水素炎イオン化検出器。
【手続補正11】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0131
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0131】
(第12項)
前記除去部は、前記試料導入部の前記先端に、前記先端の外側からガスを噴き付けることにより、前記堆積物を除去する、第1又は第2項に記載の水素炎イオン化検出器。
【手続補正12】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0135
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0135】
(第14項)
前記案内は、前記検出部の内部を貫通する流路を備える、第13項に記載の水素炎イオン化検出器。
【手続補正13】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0137
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0137】
(第15項)
測定対象試料を導入する試料導入部を備え且つ前記試料導入部より導入された前記測定対象試料を水素炎によりイオン化する水素炎イオン化検出器における前記試料導入部の前記水素炎側の先端に堆積する前記測定対象試料の堆積物を除去する堆積物除去方法。
【手続補正14】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0139
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0139】
(第16項)
測定対象試料を導入する試料導入部を備え且つ前記試料導入部より導入された前記測定対象試料を水素炎によりイオン化する水素炎イオン化検出器における前記試料導入部の前記水素炎側の先端に堆積する前記測定対象試料の堆積物を除去する除去部を備える堆積物除去装置。
【手続補正15】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0149
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0149】
(第21項)
前記除去部は、
前記試料導入部の内部にガスを供給する供給部と、
前記試料導入部の内部の圧力が、前記測定対象試料をイオン化する処理を実行する場合の前記試料導入部の内部の圧力よりも高くなるように、前記供給部を制御する制御部と、
を備える第20項に記載の水素炎イオン化検出器。
【手続補正16】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0161
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0161】
(第27項)
前記除去部は、前記試料導入部の前記先端に、前記先端の外側からガスを噴き付けることにより、前記堆積物を除去する、第16又は第17項に記載の水素炎イオン化検出器。
【手続補正17】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0165
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0165】
(第29項)
前記案内は、前記検出部の内部を貫通する流路を備える、第28項に記載の水素炎イオン化検出器。
【手続補正18】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図1
【補正方法】変更
【補正の内容】
図1