(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024132411
(43)【公開日】2024-10-01
(54)【発明の名称】ねじ締め機
(51)【国際特許分類】
B23P 19/06 20060101AFI20240920BHJP
B25B 23/10 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
B23P19/06 Z
B25B23/10 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023043161
(22)【出願日】2023-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】000227467
【氏名又は名称】日東精工株式会社
(72)【発明者】
【氏名】安積 慶一
【テーマコード(参考)】
3C038
【Fターム(参考)】
3C038AA02
3C038BB01
(57)【要約】
【課題】ドライバビットを容易に着脱可能なねじ締め機を提供する。
【解決手段】
ワークWに螺入されるねじSと篏合可能なドライバビット18を回転駆動させる回転駆動源13と、前記回転駆動源13を支持するとともに前記ドライバビット18と平行に伸びるガイドロッド21が固定されたモータ台11と、前記ガイドロッド21に沿って摺動自在に構成された摺動台21と、前記摺動台21に固定されるとともに前記ドライバビット18の先端部を収容可能に構成されたスクリューガイド23を有し、前記回転駆動源13とドライバビット18との間には、ドライバビット18を着脱自在に保持する保持軸14が設けられ、前記保持軸14は、ドライバビット18との接続部分がモータ台11と摺動台21との間に位置するとともに、外部に露出していることを特徴とするねじ締め機による。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークに螺入されるねじと篏合可能なドライバビットを回転駆動させる回転駆動源と、
前記回転駆動源を支持するとともに前記ドライバビットと平行に伸びるガイドロッドが固定されたモータ台と、
前記ガイドロッドに沿って摺動自在に構成された摺動台と、
前記摺動台に固定されるとともに前記ドライバビットの先端部を収容可能に構成されたスクリューガイドを有するねじ締め機において、
前記回転駆動源とドライバビットとの間には、ドライバビットを着脱自在に保持する保持軸が設けられ、
前記保持軸は、ドライバビットとの接続部分がモータ台と摺動台との間に位置するとともに、外部に露出していることを特徴とするねじ締め機。
【請求項2】
前記スクリューガイドには、負圧発生手段が連続していることを特徴とする請求項1に記載のねじ締め機
【請求項3】
前記スクリューガイドに対する前記ドライバビットの相対位置を検出可能な検出手段を備えることを特徴とする請求項1に記載のねじ締め機。
【請求項4】
前記モータ台と前記摺動台との間には、摺動台をモータ台から離反する方向に押圧する押圧ばねが設けられていることを特徴とする請求項3に記載のねじ締め機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ねじを締結するねじ締め機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に開示されたねじ締め機のように、回転駆動源の駆動を受けて回転可能に構成されたドライバビットと前記ドライバビットを収容するスクリューガイドを備え、前記スクリューガイドには、負圧発生手段が接続されているものが知られている。このようなねじ締め機は、前記負圧発生手段が駆動することにより、スクリューガイドの下端開口部にねじを吸着保持できるため、ねじを所定の締結位置まで搬送できる等の利点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のねじ締め機は、スクリューガイドがドライバビットの全体を収容する構造であった。そのため、ドライバビットを交換する際、毎度スクリューガイドも取り外す必要があり、交換時間が長くなる等の問題を有していた。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みて創生されたものであり、ドライバビットを短時間で交換可能なねじ締め機の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために本発明は、ワークに螺入されるねじと篏合可能なドライバビットを回転駆動させる回転駆動源と、前記回転駆動源を支持するとともに前記ドライバビットと平行に伸びるガイドロッドが固定されたモータ台と、前記ガイドロッドに沿って摺動自在に構成された摺動台と、前記摺動台に固定されるとともに前記ドライバビットの先端部を収容可能に構成されたスクリューガイドを有するねじ締め機において、前記回転駆動源とドライバビットとの間には、ドライバビットを着脱自在に保持する保持軸が設けられ、前記保持軸は、ドライバビットとの接続部分がモータ台と摺動台との間に位置するとともに、外部に露出していることを特徴とする。なお、前記スクリューガイドには、負圧発生手段が連続していることが好ましい。また、前記スクリューガイドに対する前記ドライバビットの相対位置を検出可能な検出手段を備えることが好ましい。さらに、前記モータ台と前記摺動台との間には、摺動台をモータ台から離反する方向に押圧する押圧ばねが設けられていることが好ましい。
【発明の効果】
【0007】
本発明のねじ締め機によれば、保持軸とドライバビットとの接続部分が露出しているため、スクリューガイドを外すことなくドライバビットを容易に交換できる。結果、ドライバビットの交換時間が短縮化され、作業者の負担が低減する等の利点を有する。なお、スクリューガイドに負圧発生手段が連続しているため、ねじを吸着保持できる等の利点も有する。また、検出手段がスクリューガイドに対するドライバビットの相対位置を検出することにより、ワークWの上面に対するねじの頭部高さを算出できるため、締結完了時、ねじがワークに着座しているか高精度に確認可能等の利点も有する。さらに、スクリューガイドが押圧ばねによって付勢されているため、ねじ締め機より下方に締結箇所が位置する下締め以外においてもスクリューガイドが自重により摺動することなくねじを締結可能等の利点を有する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明に係るねじ締め機の構造を示す正面図である。
【
図2】本発明に係るねじ締め機の構造を示す側面図である。
【
図3】本発明に係るねじ締め機の構造を示す断面側面図である。
【
図4】
図3の状態から次の状態に移行した状態を示す断面側面図である。
【
図5】本発明に係るねじ締め機の構造を示す要部拡大一部断面側面図であり、(a)は
図3のA部を拡大図であり、(b)は(a)状態から次の状態に移行した状態を示す拡大図である。
【
図6】本発明に係るねじ締め機の他の実施形態の構造を示す断面側面図である。
【
図7】
図6の状態から次の状態に移行した状態を示す断面側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施例を図面に基づき説明する。
図1ないし
図4において10は、ねじSをワークWに締め付けるねじ締め機である。このねじ締め機10は、
図2に示すようにモータ台11を有しており、このモータ台11上には、中空筒状のハウジング12が載置されている。このハウジング12上には、回転駆動源の一例であるACサーボモータ13(以下、締結モータ13という)が配置されており、この締結モータ13は、その出力軸が下方を向き、前記ハウジング12内に挿通されるよう設置されている。この締結モータ13の出力軸には、一体に回転可能な保持軸14が連結されおり、この保持軸14は、前記前記ハウジング12より長く、当該ハウジング12を回転自在に貫通して下方に突出する長さに設定されている。
【0010】
前記保持軸14は、その下部に連結部141が形成されており、この連結部141の下面には、六角柱形状に構成された有底の保持孔142が形成されている。この保持孔142には、径方向に貫通する封入孔143が形成されているとともに、前記封入孔143の内部には、鋼球15が封入されており、封入孔143は、当該鋼球15が保持孔142の内周側に脱落しないようその内周側の開口部が当該鋼球15の直径より若干小さい径に構成されている。一方、鋼球15の直径は、封入孔143の長さ寸法より大きく構成されており、鋼球15は、封入孔143の外周側の開口部あるいは、内周側の開口部の何れか一方から常時はみ出るように構成されている。
【0011】
前記保持軸14には、前記封入孔143の外周側の開口部を閉鎖するスリーブ16が装着されている。このスリーブ16は、保持軸14に対して軸方向に移動可能に構成されており、押さえばね17によって常時上方に向かい付勢されている。このスリーブ16の内周面には、環状の逃がし溝161が形成されており、常時この逃がし溝161より下方が前記封入孔143の外周側の開口部を閉鎖するよう構成されている。前記鋼球15は、封入孔143の外周側開口部がこのスリーブ16によって封鎖されているため、
図5の(a)に示すように封入孔143の内周側の開口部から常時はみ出ている一方、
図5の(b)に示すようにスリーブ16の逃がし溝161が封入孔143と連続した際、外周側の開口部からはみ出ることが可能となる。
【0012】
前記保持孔142には、締結工具の一例であるドライバビット18が装着されている。このドライバビット18の上端部は、保持孔142と嵌合可能な六角柱形状に構成されており、保持孔142に挿入されたドライバビット18は、上端部が保持軸14に嵌合することにより、保持軸14と一体に回転可能となる。これにより、前記締結モータ13の回転駆動力は、保持軸14を介してドライバビット18まで伝達されるため、ねじSを所定の締結トルクで締結可能となる。また、前記ドライバビット18の六角柱形状の途中には、
図5に示すように前記鋼球15と嵌合可能な抜け止め溝181が構成されている。このため、鋼球15がスリーブ16によって規制されている状態の時、当該鋼球15が抜け止め溝181に嵌合してドライバビット18を抜け止めする一方、前記スリーブ16の逃がし溝161が封入孔143と連続して鋼球15が封入孔143の外周側の開口部からはみ出し可能となった際、ドライバビット18と鋼球15との嵌合が解除されるため、ドライバビット18を保持孔142から容易に着脱可能となる。
【0013】
前記モータ台11の下面には、
図1に示すように前記ドライバビット18と平行に伸びる二本のガイドロッド19,19が固定されており、このガイドロッド19,19には、上下方向昇降自在に構成されたスライドブッシュ20,20が吊下されており、このスライドブッシュ20,20には、摺動台21が固定されている。また、前記スライドブッシュ20,20とモータ台11との間には、これらを離反する方向に付勢する押圧ばね22,22が設けられている。このため、摺動台21は、押圧ばね22,22の付勢を受けて下方に付勢されている一方、押圧ばね22,22を撓ませることにより、前記ガイドロッド19,19およびモータ台11に対して上下方向相対移動可能となる。
【0014】
また、前記摺動台21には、前記ドライバビット18を被覆するスクリューガイド23が設けられている。このスクリューガイド23は、前記ドライバビット18を収容可能に構成された略円筒形状部材であり、その下側開口部にねじSを収容可能な収容孔231が形成されている一方、その上側開口部は、ドライバビット18との間に設けられたオムニシール等、ドライバビット18の回転を許容する密閉部品24によって気密に密閉されている。また、前記スクリューガイド23には、これに連続するホース継手25を通じて真空ポンプ等の負圧発生手段が接続されている。これら構造により、負圧発生手段が駆動すると、スクリューガイド23の下側開口部である収容孔231から吸気され、結果当該収容孔231にねじSを吸着保持可能となる。
【0015】
また、前記モータ台11には、検出手段の一例として、接触式センサ26が装着されている。この接触式センサ26は、当該接触子261を前記摺動台21に向かい伸ばすよう配置されており、前記摺動台21には、前記接触式センサ26の接触子261と当接可能な押圧部品27が立設されている。また、摺動台21の上面およびモータ台11下面には、前記立設部品と平行に伸びるストッパ28、29が設けられている。
【0016】
なお、
図3に示すように本実施形態において、前記ストッパ28、29の距離D1は、前記押圧部品27と接触式センサ26の接触子261との距離D2より広く構成されており、締結時、前記押圧部品27が接触子261を圧壊しない範囲で撓ませるよう構成されている。また、前記前記スクリューガイド23の先端からドライバビット18の先端までの距離D3は、前記ストッパ28、29同士の距離D1より広く構成されており、正常な締結時は接触せず、なおかつストッパ28、29が当接した際にドライバビット18がスクリューガイド23の先端から突出しないよう構成されている。さらに、前記保持軸14とドライバビット18との接続部分から前記摺動台21までの距離D4は、前記ストッパ28、29同士の距離D1より広く構成されており、締結時、前記保持軸14と前記摺動台21が衝突しないよう構成されている。
【0017】
また、前記モータ台11には、作業者(図示せず)が把持可能な把持部30が固定されている。この把持部30には、締結モータ13を駆動させる駆動スイッチ301が設置されており、この駆動スイッチ301は、制御部に接続されている。この制御部には、前記締結モータ13および負圧発生手段が接続されており、前記駆動スイッチ301からの信号を受信すると、前記締結モータ13および負圧発生手段を駆動させるように構成されている。また、制御部には、前記接触式センサ26が接続されており、前記締結モータ13が所定の締付トルクを出力した際、前記接触式センサ26の出力値からねじ浮きの有無を検出するように構成されている。
【0018】
次に上記のように構成されたねじ締め機10の作用を説明する。
前記把持部30を把持した作業者が前記駆動スイッチ301を押すと前記負圧発生手段および締結モータ13が駆動する。これにより、前記収容孔231から空気が吸気されるため、スクリューガイド23をねじSに接近させると、ねじSが収容孔231に吸引される。ねじSがスクリューガイド23内に吸着保持された後、作業者は、ワークWの上方までねじ締め機10を移動させた後、ねじ締め機10をワークWに押し付ける。これにより、ワークWと当接して停止するスクリューガイド23の内部をドライバビット18がワークWに向かって移動するため、ドライバビット18がスクリューガイド23内に収容されたねじSと当接してこれをワークWに向かい押圧する。結果、ねじSがワークWと当接する。この時、前記負圧発生手段と同時に締結モータ13も駆動しているため、ねじSは、ドライバビット18と一体に回転して、
図4に示すようにワークWに締結される。
【0019】
上記締結工程の途中で接触式センサ26の接触子261は、前記押圧部材に当接して所定の寸法撓む。このため、前記締結モータ13が所定の締付トルクを出力して停止した際、接触式センサ26の出力値からスクリューガイド23に対するドライバビット18の相対位置を算出される。これにより、接触子261の測定値からスクリューガイド23に当接するワークWの上面に対するドライバビット18に嵌合したねじSの頭部高さが算出され、ねじ浮きの有無を検出できる。
【0020】
なお、万一ねじSの収容忘れやワークWまで搬送する途中でねじSが脱落する等によって、スクリューガイド23内にねじSが収容されていない状態で締付動作を行った場合、前記モータ台11は、ストッパ28、29同士が当接するまで下降する。この時、前述のようにまた、前記前記スクリューガイド23の先端からドライバビット18の先端までの距離D3は、前記ストッパ28、29同士の距離D1より広く構成されているため、ドライバビット18がスクリューガイド23から突出することがなく、回転するドライバビット18によるワークWの破損が防止される。
【0021】
また、ねじ締め機10は、スクリューガイド23によってねじSを吸着保持するため、鉄以外からなるねじSや、磁石を嫌う電子機器付近に対しても使用できる。また、ドライバビット18と保持軸14とが外部に露出しているため、スクリューガイド23を外すことなくドライバビット18を容易に交換可能となる。さらに、保持軸14のスリーブ16を移動させて逃げ溝と封入孔143とを連続させることにより、前記鋼球15とドライバビット18との嵌合状態を解除可能なため、工具を使用することなく、より容易にドライバビット18を交換できる。しかも、ドライバビット18が連結されたモータ台11と、スクリューガイド23が連結された摺動台21との相対位置を検出手段によって測定するため、ワークWの上面を基準に高精度なねじ浮き検査ができる。
【0022】
なお、本発明に係るねじ締め機10は、前述したものに限定するものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。例えば、上記ねじ締め機10は、作業者が把持部30を把持する手動式のものに限定されず、
図6に示すようにモータ台11に把持部30の代わりに固定部31が設けられ、当該固定部31が従来既知の多関節ロボットや直進駆動源等の移動手段に固定されている自動式のねじ締め機100であっても良い。また、前記保持軸14は、締結モータ13側の基端部144とドライバビット18側の先端部145とが別部品で構成されていてもよい。特に前述のような自動式のねじ締め機100の場合、別部品で構成された基端部144に対して先端部145が軸方向に摺動自在に連結されるとともに、これらの間に当該連結部141を常時ワークW側に付勢する一方、連結部141が締結モータ13側に付勢された際、変形可能なクッションばね146が設けられていてもよい。このように構成されたクッションばね146が
図7に示すように撓むことにより、ねじSがワークWと接触した際に生じる衝撃が吸収され、ワークWの破損を防止できる。さらに、検出手段は、接触式センサ26に限定されず、近接センサや、光学センサ等の非接触式センサ26であっても何ら問題ない。
【符号の説明】
【0023】
10 … ねじ締め機
11 … モータ台
12 … ハウジング
13 … 締結モータ
14 … 保持軸
15 … 鋼球
16 … スリーブ
17 … 押さえばね
18 … ドライバビット
19 … ガイドロッド
20 … スライドブッシュ
21 … 摺動台
22 … 押圧ばね
23 … スクリューガイド
24 … 密閉部品
25 … ホース継手
26 … 接触式センサ
27 … 押圧部品
28 … ストッパ