(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024132415
(43)【公開日】2024-10-01
(54)【発明の名称】紫外光照射装置
(51)【国際特許分類】
A61L 9/20 20060101AFI20240920BHJP
G02B 5/28 20060101ALI20240920BHJP
H01L 33/00 20100101ALI20240920BHJP
B01J 19/12 20060101ALI20240920BHJP
A61L 2/10 20060101ALN20240920BHJP
【FI】
A61L9/20
G02B5/28
H01L33/00 L
B01J19/12 C
A61L2/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023043165
(22)【出願日】2023-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】000102212
【氏名又は名称】ウシオ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】至極 稔
(72)【発明者】
【氏名】藤澤 繁樹
【テーマコード(参考)】
2H148
4C058
4C180
4G075
5F142
【Fターム(参考)】
2H148FA18
2H148GA01
2H148GA12
2H148GA61
4C058AA23
4C058BB06
4C058DD16
4C058KK02
4C058KK14
4C058KK28
4C180AA07
4C180AA10
4C180DD03
4C180HH19
4C180LL04
4G075AA03
4G075AA42
4G075CA33
4G075DA01
4G075EA02
4G075EB01
4G075EB32
4G075EB34
4G075EB35
4G075FB06
4G075FC04
5F142AA02
5F142AA81
5F142CB23
5F142DB12
5F142DB20
5F142GA31
5F142HA01
(57)【要約】
【課題】装置全体を大型化、複雑化することなく、人体に対して影響が極めて小さい紫外光をより多く出射できるとともに、利便性、汎用性、耐久性等に優れた紫外光照射装置を提供する。
【解決手段】紫外光を発する発光面を有する発光素子と、発光素子から出射された紫外光が入射される第一入射面と、入射した紫外光に含まれる光線のうちの少なくとも一部の進行方向を変換して出射する第一出射面とを有する光学系と、光学系から出射された紫外光が入射する、平面状の第二入射面を有し、紫外光の一部を透過し、他の一部を反射する、光学フィルタとを備え、第二入射面の法線方向に沿って光学フィルタから光学系に向かって進行し、第一出射面に入射する光線束を仮定した場合に、発光素子は、光学系の第一入射面から出射された光線束の少なくとも一部が、発光素子の発光面を拡張した平面上における発光面の外側の領域に照射される状態となる位置に配置されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
190nm以上240nm未満の波長範囲内に属する紫外光を発する発光面を有する発光素子と、
前記発光素子から出射された前記紫外光が入射される第一入射面と、入射した前記紫外光に含まれる光線のうちの少なくとも一部の進行方向を変換して出射する第一出射面とを有する、前記発光素子に対応して配置された光学系と、
前記光学系から出射された前記紫外光が入射する平面状の第二入射面を有し、前記第二入射面に入射した前記紫外光の一部を透過し、他の一部を反射する、光学フィルタとを備え、
前記光学フィルタで反射する光のうち、前記第二入射面の法線方向に沿って前記光学フィルタから前記光学系に向かって進行し、前記第一出射面に入射する光線束を仮定した場合に、前記発光素子は、前記光学系の前記第一入射面から出射された前記光線束の少なくとも一部が、前記発光素子の前記発光面を拡張した平面上における前記発光面の外側の領域に照射される状態となる位置に配置されていることを特徴とする紫外光照射装置。
【請求項2】
前記発光素子の前記発光面の最大幅をWとし、前記発光素子の前記発光面の法線方向に関する、前記発光素子の前記発光面の中心と前記第一入射面との離間距離をD1としたときに、前記発光素子と前記光学系とが下記(1)式を満たすように配置されていることを特徴とする請求項1に記載の紫外光照射装置。
D1/W < 5.0 ・・・(1)
【請求項3】
前記光学系は、前記第一入射面に入射した前記紫外光を、前記光学フィルタの前記第二入射面に向かうにつれて収束する光に変換して、前記第一出射面から出射することを特徴とする請求項1に記載の紫外光照射装置。
【請求項4】
前記光学系は、前記第一入射面に入射した前記紫外光を、前記光学フィルタの前記第二入射面に向かうにつれて発散する光に変換して、前記第一出射面から出射することを特徴とする請求項1に記載の紫外光照射装置。
【請求項5】
前記発光素子の前記発光面の中心が、前記光学系の光軸からずれていることを特徴とする請求項1に記載の紫外光照射装置。
【請求項6】
前記発光素子の前記発光面の最大幅をWとしたときに、前記発光素子の前記発光面の中心が、前記光学系の前記光軸からW/2以上ずれていることを特徴とする請求項5に記載の紫外光照射装置。
【請求項7】
前記光学フィルタの前記第二入射面の法線が、前記光学系の光軸に対して傾斜して配置されていることを特徴とする請求項1に記載の紫外光照射装置。
【請求項8】
前記光学フィルタの前記第二入射面に対する入射角ごとの透過率特性に関して、前記紫外光に対する透過率が50%となる入射角をαとし、前記発光素子の前記発光面の法線方向に関する、前記発光素子の前記発光面と前記第二入射面との離間距離をD2とし、前記発光素子の前記発光面の最大幅をWとし、下記(2)式により導出される角度をθとしたときに、
前記光学フィルタの前記第二入射面の法線と、前記光学系の前記光軸とのなす角度が、θ以上α未満であることを特徴とする請求項7に記載の紫外光照射装置。
θ = arctan(W/2D2) ・・・(2)
【請求項9】
前記発光素子の前記発光面の法線方向に関する、前記発光素子の前記発光面と前記第二入射面との離間距離をD2とし、前記発光素子の前記発光面の最大幅をWとし、下記(2)式により導出される角度をθとしたときに、
前記第二入射面上における前記紫外光の角度分布に関し、-2θ~+2θの角度範囲に含まれるピーク波長の成分が、前記第二入射面に入射する前記紫外光全体における70%以下であることを特徴とする請求項1に記載の紫外光照射装置。
θ = arctan(W/2D2) ・・・(2)
【請求項10】
前記第二入射面における角度分布において、-2θ~+2θの角度範囲に含まれる成分が、前記第二入射面に入射する前記紫外光全体における50%以下であることを特徴とする請求項9に記載の紫外光照射装置。
【請求項11】
前記光学フィルタの前記第二入射面に対する入射角ごとの透過率特性に関して、前記紫外光に対する透過率が50%となる入射角をαとし、前記光学フィルタの前記第二入射面に対して前記紫外光の入射角ごとに入射される放射束の量に関して、放射束の量がピーク量の10%となる入射角のうちの角度が大きい方の入射角をβとしたときに、前記発光素子、前記光学系、及び前記光学フィルタとが下記(3)式を満たすように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の紫外光照射装置。
|β| < α ・・・(3)
【請求項12】
前記発光素子の前記発光面に向かって見たときの前記発光面の周囲に、前記光学フィルタの前記第二入射面で反射され、前記光学系を透過して前記発光素子側に向かって進行する光を遮光する遮光部材を備えることを特徴とする請求項1~11のいずれか一項に記載の紫外光照射装置。
【請求項13】
前記遮光部材は、ヒートシンクが接続されており、かつ、前記発光素子が載置される基材とは離間した位置に固定されていることを特徴とする請求項12に記載の紫外光照射装置。
【請求項14】
前記光学フィルタは、波長が240nm以上300nm以下の範囲内に属する光に対し、透過率よりも反射率が高いことを特徴とする請求項1~11のいずれか一項に記載の紫外光照射装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外光照射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、紫外光を照射して菌やウイルスを不活化する技術が知られており、DNAが波長260nm付近に最も高い吸収特性を示すことから、多くの場合、低圧水銀ランプ等を光源とする波長が254nm付近の紫外光が利用されている。紫外光によって菌やウイルスを不活化する方法は、薬剤等を散布することなく、対象空間や対象物に紫外光を照射するだけで殺菌処理を行うことができるという特徴がある。
【0003】
紫外光には、人体に影響を及ぼすリスクが大きい波長帯域の紫外光と、人体に影響を及ぼすリスクが小さい波長帯域の紫外光が存在することが知られている。人体に影響を及ぼすリスクが大きい波長帯域は、例えば、上述したような、波長が254nm付近の紫外光が該当する。そこで、近年では、人体に影響を及ぼすリスクが小さい波長帯域の紫外光によって、空間内に存在する菌やウイルスを不活化するための方法や装置が検討されている。例えば、下記特許文献1には、人体への影響が極めて小さい波長帯域の紫外光を用いた殺菌装置(不活化装置)が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、新型コロナウイルス(COVID-19)感染症の流行により、作業者による清掃作業を要することなく、対象空間や対象領域の殺菌処理が可能である、紫外光を利用した殺菌装置が注目されている。そこで、対象空間や対象領域をより効率よく殺菌処理するため、人体に対する影響が極めて小さい紫外光がより多く出射される装置が求められている。
【0006】
なお、殺菌処理のための紫外光照射装置の設置が想定される場所は、人の居住空間のみならず、医療施設や実験施設、食品工場等、更には、駅やイベントホール等、多岐にわたる。このため、殺菌処理に用いられる上述したような紫外光照射装置は、紫外光の高出力化とともに、利便性、汎用性、耐久性等をも考慮した設計が求められている。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑み、装置全体を大型化、複雑化することなく、人体に対して影響が極めて小さい紫外光をより多く出射できるとともに、利便性、汎用性、耐久性等に優れた紫外光照射装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の紫外光照射装置は、
190nm以上240nm未満の波長範囲内に属する紫外光を発する発光面を有する発光素子と、
前記発光素子から出射された前記紫外光が入射される第一入射面と、入射した前記紫外光に含まれる光線のうちの少なくとも一部の進行方向を変換して出射する第一出射面とを有する、前記発光素子に対応して配置された光学系と、
前記光学系から出射された前記紫外光が入射する平面状の第二入射面を有し、前記第二入射面に入射した前記紫外光の一部を透過し、他の一部を反射する、光学フィルタとを備え、
前記光学フィルタで反射する光のうち、前記第二入射面の法線方向に沿って前記光学フィルタから前記光学系に向かって進行し、前記第一出射面に入射する光線束を仮定した場合に、前記発光素子は、前記光学系の前記第一入射面から出射された前記光線束の少なくとも一部が、前記発光素子の前記発光面を拡張した平面上における前記発光面の外側の領域に照射される状態となる位置に配置されていることを特徴とする。
【0009】
近年、波長が190nm以上240nm未満の紫外光は、人体に対する影響が極めて小さいが、菌やウイルスの不活化処理に有効な光(以下、「目的光」という場合がある。)であることが報告されている。
【0010】
LED(発光ダイオード)等の発光素子は、放電ランプ等と比較すると、狭小な発光スペクトルを示す光を出射する素子である。しかしながら、いかに狭小な発光スペクトルを示す光を出射する素子であったとしても、波長が190nm以上240nm未満の紫外光を出射する発光素子は、極僅かではあるが、不可避的に人体に対して有害な光(以下、「有害光」という場合がある。)を出射する。なお、有害光は、例えば、波長が254nm付近の波長域の光が相当する。
【0011】
このため、殺菌処理等に用いられる紫外光照射装置は、人体への影響をできる限り低減させるため、目的光を透過するとともに、有害光の強度を低減させる光学フィルタが設けられる場合が多い。
【0012】
光学フィルタは、第二入射面に入射した目的光を全て透過し、有害光を一切透過させない構成が理想的であるが、実際には、それぞれの波長帯域における透過率、及び反射率は、多くの場合、光学フィルタの第二入射面における入射角に依存する(
図4参照)。
【0013】
光学フィルタの上述したような特性により、従来では、光学フィルタの第二入射面に対しては、光ができる限り小さい入射角で入射するように光学系が設計される場合が多い。例えば、光学系がレンズであった場合、レンズから出射される光を平行光化するために、発光素子の発光面がレンズの焦点位置に配置される。
【0014】
上記の設計思想は、あくまで発光素子が点光源であることを前提とした考え方である。実際には、従来の構成においてレンズの焦点位置に位置しているのは、発光面の一点のみであり、発光面のほとんどがレンズの焦点位置から僅かながらにもずれている。
【0015】
そこで、本発明者は、鋭意検討により、上記構成によれば、発光素子から出射された紫外光のうちの、光学フィルタで反射されて発光素子へと戻る光(以下、「戻り光」という場合がある。)を低減できることを見出し、上記構成の紫外光照射装置を発明するに至った。
【0016】
上記紫外光照射装置は、
前記発光素子の前記発光面の最大幅をWとし、前記発光素子の前記発光面の法線方向に関する、前記発光素子の前記発光面の中心と前記第一入射面との離間距離をD1としたときに、前記発光素子と前記光学系とが下記(1)式を満たすように配置されていても構わない。
D1/W < 5.0 ・・・(1)
【0017】
上記紫外光照射装置において、
前記光学系は、前記第一入射面に入射した前記紫外光を、前記光学フィルタの前記第二入射面に向かうにつれて収束する光に変換して、前記第一出射面から出射するように構成されていても構わない。
【0018】
ここでの、「第二入射面に向かうにつれて収束する光」とは、光学フィルタの第二入射面上においてピーク照度に対して10%以上となっている領域の面積が、光学系の第二出射面上においてピーク照度に対して10%以上となっている領域の面積に対して0.8倍以下になることを言う。
【0019】
上記紫外光照射装置において、
前記光学系は、前記第一入射面に入射した前記紫外光を、前記光学フィルタの前記第二入射面に向かうにつれて発散する光に変換して、前記第一出射面から出射するように構成されていても構わない。
【0020】
ここでの、「第二入射面に向かうにつれて発散する光」とは、光学フィルタの第二入射面上においてピーク照度に対して10%以上となっている領域の面積が、光学系の第二出射面上においてピーク照度に対して10%以上となっている領域の面積に対して1.2倍以上になることを言う。
【0021】
上記紫外光照射装置は、
前記発光素子の前記発光面の中心が、前記光学系の光軸からずれていても構わない。
【0022】
さらに、上記紫外光照射装置は、
前記発光素子の前記発光面の最大幅をWとしたときに、前記発光素子の前記発光面の中心が、前記光学系の前記光軸からW/2以上ずれていても構わない。
【0023】
上記紫外光照射装置は、
前記光学フィルタの前記第二入射面の法線が、前記光学系の光軸に対して傾斜して配置されていても構わない。
【0024】
さらに、上記紫外光照射装置は、
前記光学フィルタの前記第二入射面に対する入射角ごとの透過率特性に関して、前記紫外光に対する透過率が50%となる入射角をαとし、前記発光素子の前記発光面の法線方向に関する、前記発光素子の前記発光面と前記第二入射面との離間距離をD2とし、前記発光素子の前記発光面の最大幅をWとし、下記(2)式により導出される角度をθとしたときに、
前記光学フィルタの前記第二入射面の法線と、前記光学系の前記光軸とのなす角度が、θ以上α未満となるように構成されていても構わない。
θ = arctan(W/2D2) ・・・(2)
【0025】
上記紫外光照射装置は、
前記発光素子の前記発光面の法線方向に関する、前記発光素子の前記発光面と前記第二入射面との離間距離をD2とし、前記発光素子の前記発光面の最大幅をWとし、下記(2)式により導出される角度をθとしたときに、
前記第二入射面上における前記紫外光の角度分布に関し、-2θ~+2θの角度範囲に含まれるピーク波長の成分が、前記第二入射面に入射する前記紫外光全体における70%以下となるように構成されていても構わない。
θ = arctan(W/2D2) ・・・(2)
【0026】
さらに、上記紫外光照射装置において、
前記第二入射面における角度分布において、-2θ~+2θの角度範囲に含まれる成分が、前記第二入射面に入射する前記紫外光全体における50%以下となるように構成されていても構わない。
【0027】
本明細書において第二入射面における入射角に関しては、光学系の光軸から離れる方向に進行する場合の入射角が正の角度、光軸に近づく方向に進行する場合の入射角が負の角度で表される。
【0028】
上記紫外光照射装置は、
前記光学フィルタの前記第二入射面に対する入射角ごとの透過率特性に関して、前記紫外光に対する透過率が50%となる入射角をαとし、前記光学フィルタの前記第二入射面に対して前記紫外光の入射角ごとに入射される放射束の量に関して、放射束の量がピーク量の10%となる入射角のうちの角度が大きい方の入射角をβとしたときに、前記発光素子、前記光学系、及び前記光学フィルタとが下記(3)式を満たすように構成されていても構わない。
|β| < α ・・・(3)
【0029】
上記構成の紫外光照射装置は、従来構成の紫外光照射装置に比べて、発光素子から発せられた目的光をより多く出射できるとともに、戻り光の量が低減される。
【0030】
発光素子は、戻り光を吸収することで発熱し、作動中の温度が想定以上に高くなる場合がある。例えば、発光素子の一つであるLEDは、温度が高くなると供給される電力に対して発する光の量、すなわち、発光効率が低下する。また、発光素子は、点灯時の温度がより高くなると、熱によって劣化の進行が早くなる傾向がある。
【0031】
そこで、上記構成とすることで、紫外光照射装置は、発光素子への戻り光が低減されて、発光素子の発光効率の向上、及び長寿命化が実現される。なお、上記の各構成における効果については、「発明を実施するための形態」の欄で詳述される検証シミュレーションによって確認される。
【0032】
上記紫外光照射装置は、
前記発光素子の前記発光面に向かって見たときの前記発光面の周囲に、前記光学フィルタの前記第二入射面で反射され、前記光学系を透過して前記発光素子側に向かって進行する光を遮光する遮光部材を備えていても構わない。
【0033】
上記構成とすることで、発光素子に吸収される戻り光の量がより低減されるため、点灯時における発光素子の温度の上昇や、発光素子の短寿命化がさらに抑制される。
【0034】
上記紫外光照射装置において、
前記遮光部材は、ヒートシンクが接続されており、かつ、前記発光素子が載置される基材とは離間した位置に固定されていても構わない。
【0035】
遮光部材は、戻り光を吸収することで、少なからず発熱する。上記構成とすることで、遮光部材が戻り光を吸収することで発生した熱が、発光素子や発光素子が搭載された基板に伝達されにくくなり、発光素子の温度の上昇や、発光素子の短寿命化がさらに抑制される。
【0036】
上記紫外光照射装置において、
前記光学フィルタは、波長が240nm以上300nm以下の範囲内に属する光に対し、透過率よりも反射率が高くなるように構成されていても構わない。
【発明の効果】
【0037】
装置全体を大型化、複雑化することなく、人体に対して影響が極めて小さい紫外光をより多く出射できるとともに、利便性、汎用性、耐久性等に優れた紫外光照射装置が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1】紫外光照射装置の一実施形態の外観を模式的に示す図面である。
【
図2】紫外光照射装置の一実施形態の外観を模式的に示す図面である。
【
図3A】
図1に示す紫外光照射装置をY方向に見たときの断面図である。
【
図3B】
図1に示す紫外光照射装置をZ方向に見たときの断面図である。
【
図4】誘電体多層膜フィルタで構成された光学フィルタの透過率特性の一例を示すグラフである。
【
図5A】紫外光照射装置の一実施形態における、対応するLED及びレンズと、光学フィルタとを模式的に示した状態をY方向に見たときの図面である。
【
図5B】紫外光照射装置の一実施形態における、対応するLED及びレンズと、光学フィルタとを模式的に示した状態をZ方向に見たときの図面である。
【
図5C】仮想光線がLEDの外側に照射されるかどうかを確認する方法を模式的に示す図面である。
【
図6】紫外光照射装置の一実施形態における、対応するLED及びレンズと、光学フィルタとを模式的に示した状態をY方向に見たときの図面である。
【
図7】紫外光照射装置の一実施形態における、対応するLED及びレンズと、光学フィルタとを模式的に示した状態をY方向に見たときの図面である。
【
図8】紫外光照射装置の一実施形態における、対応するLED及びレンズと、光学フィルタとを模式的に示した状態をY方向に見たときの図面である。
【
図9】LEDと光学フィルタの位置関係、及び角度θについて説明する図面である。
【
図10】光学フィルタの第二入射面における角度分布の測定方法を模式的に示す図面である。
【
図11A】実施例1の光学フィルタの第二入射面における角度分布を示すグラフである。
【
図11B】実施例2の光学フィルタの第二入射面における角度分布を示すグラフである。
【
図11C】実施例3の光学フィルタの第二入射面における角度分布を示すグラフである。
【
図11D】実施例4の光学フィルタの第二入射面における角度分布を示すグラフである。
【
図11E】実施例5の光学フィルタの第二入射面における角度分布を示すグラフである。
【
図11F】実施例6の光学フィルタの第二入射面における角度分布を示すグラフである。
【
図11G】比較例の光学フィルタの第二入射面における角度分布を示すグラフである。
【
図12】各実施例、及び比較例のLED30の発光面30aにおける戻り光の角度分布を示すグラフである。
【
図13】波長が226nmの紫外光に対する光学フィルタの、透過率と入射角との相関性を示すグラフである。
【
図14】紫外光照射装置の別実施形態を模式的に示す図面である。
【
図15】
図14に示す紫外光照射装置をY方向に見たときの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、本発明の紫外光照射装置について、図面を参照して説明する。なお、以下の各図面は、いずれも模式的に図示されたものであり、図面上の寸法比や個数は、実際の寸法比や個数と必ずしも一致していない。
【0040】
[第一実施形態]
図1は、紫外光照射装置1の一実施形態の外観を模式的に示す図面であり、
図2は、紫外光照射装置1の一実施形態の、
図1とは異なる方向から見た場合の外観を模式的に示す図面である。また、
図3Aは、
図1に示す紫外光照射装置1をY方向に見たときの断面図であり、
図3Bは、
図1に示す紫外光照射装置1をZ方向に見たときの断面図である。
【0041】
(装置構成)
まず、紫外光照射装置1の構成について説明する。
図2に示すように、第一実施形態の紫外光照射装置1は、筐体2と、光取出し部4とを備える。そして、筐体2の内側には、
図3A及び
図3Bに示すように、紫外光L2を出射する光源部3と、光学部材6とが収容されている。なお、
図3A及び
図3Bにおいて示されている構成は、あくまで模式的に示された構成であって、それぞれの配置関係については、装置構成の説明の後に詳述される。
【0042】
以下の説明においては、
図1に示すように、光取出し部4の光出射面と平行な平面をYZ平面とし、YZ平面に対して直交する方向をX方向として説明する。なお、光学的な特性に関してY方向とZ方向とは特段区別されないが、説明の便宜のため、以下の実施形態においては、
図1、
図3A及び
図3Bに示すように、光取出し部4の主面が長方形を呈することとし、長手方向をZ方向として説明する。
【0043】
また、方向を表現する際に、正負の向きを区別する場合には、「+X方向」、「-X方向」のように、正負の符号を付して記載され、正負の向きを区別せずに方向を表現する場合には、単に「X方向」と記載される。
図1及び
図2に示す紫外光照射装置1においては、紫外光L1が取り出される方向が「+X方向」に対応する。
【0044】
図2に示すように、筐体2は、カバー部材2aと本体2bとを備える。カバー部材2aは、内側に収容される光源部3で発生する紫外光を、外側に取り出すための光取出し部4が設けられている。本体2bは、一対の給電端子(9a,9b)が設けられており、それぞれ対応する給電線(8a,8b)を介して外部電源(不図示)に接続される。
【0045】
筐体2は、カバー部材2aと本体2bとが組み合わせられて、光源部3を内側に収容するように構成されているが、例えば、カバー部材2aと本体2bとが回動部材によって連結されて、一体的に構成されていても構わない。
【0046】
光取出し部4は、
図3A及び
図3Bに示すように、紫外光L2を透過する基材5aと、基材5aの主面上に構成された、紫外光L2の一部を透過し、他の一部を反射する光学フィルタ5とを備える。第一実施形態における光学フィルタ5は、シリカ(SiO
2)層とハフニア(HfO
2)層とが積層されて構成された誘電体多層膜フィルタである。また、第一実施形態における基材5aは、石英ガラス製の板材である。
【0047】
図4は、誘電体多層膜フィルタで構成された光学フィルタ5の透過率特性の一例を示すグラフである。
図4に示すように、光学フィルタ5は、透過させたい波長帯域の光に対しては透過率が高く、透過させたくない波長帯域の光に対しては透過率が低くなるように構成される。なお、光学フィルタは、一般的に透過率と反射率が相対的な関係にあり、完全に透過する波長帯域は存在せず、入射した光の一部を透過し、他の一部を反射する性質を持つ。また、光学フィルタ5は、誘電体多層膜フィルタ以外にも、例えば、色ガラスフィルタを採用してもよく、
図4とは異なる透過率特性を示す光学フィルタを採用しても構わない。
【0048】
光源部3は、
図3A及び
図3Bに示すように、Y方向及びZ方向に配列された複数のLED30と、主面上に複数のLED30が載置されたLED基板31とを備える。第一実施形態におけるLED30は、ピーク波長が226nmである紫外光を出射する発光素子であって、LED基板31の主面31a上に、Y方向において3mm、Z方向において3mmの離間距離をそれぞれ設けて配列されている。なお、発光素子としては、LED30以外の素子、例えば、LD(レーザダイオード)を採用しても構わない。
【0049】
第一実施形態の光学部材6は、それぞれのLED30に対応して配置される複数のレンズ6aが一体的に構成された部材である。
【0050】
(配置関係)
次に、上述した紫外光照射装置1における、光源部3と、光学フィルタ5と、光学部材6との配置関係について説明する。より具体的には、光源部3に搭載されたLED30と、LED30に対応して配置されたレンズ6aと、光学フィルタ5との配置関係、及び当該配置関係に基づく紫外光照射装置1の光学的特性について説明する。
【0051】
図5Aは、紫外光照射装置1の第一実施形態における、対応するLED30及びレンズ6aと、光学フィルタ5とを模式的に示した状態をY方向に見たときの図面である。
図5Bは、紫外光照射装置1の第一実施形態における、対応するLED30及びレンズ6aと、光学フィルタ5とを模式的に示した状態をZ方向に見たときの図面である。
図5A及び
図5Bに示すように、第一実施形態においては、LED30の中心が、レンズ6aの光軸6d上に配置されている。
【0052】
図5A及び
図5Bにおいては、光学フィルタ5の第二入射面5bの法線方向であるX方向に沿って、レンズ6aの第一出射面6cに入射する仮想光線束Lxが、レンズ6aの第一入射面6bから出射されて集光する位置、すなわち、レンズ6aの焦点位置f
1に配置されたLED30pが仮想的に破線によって図示されている。一般的には、LED30pのように発光面30paは、レンズ6aの焦点位置f
1に位置するように設計される。
【0053】
しかしながら、第一実施形態においては、LED30の発光面30aの長手方向(第一実施形態におけるZ方向)の幅、すなわち、発光面30aの最大幅をWとし、LED30の発光面30aの法線方向であるX方向に関するLED30の発光面30aの中心と、レンズ6aの第一入射面6bとの離間距離をD1としたときに、LED30とレンズ6aとが、D1/W=1.875となるように配置されている。具体的には、D1が1.5mm、Wが0.8mmである。
【0054】
第一実施形態の構成によれば、光学フィルタ5の第二入射面5bに対して、紫外光L2の多くが小さい入射角で入射することになるため、結果として、目的光がより多く出射されることとなる。
【0055】
また、光源を光学系の入射面に近づけると、光学系が光線を捕捉できる立体角が大きくなる。このため、
図5A及び
図5Bに示すように、従来構成と比較して、第一実施形態の方が、LED30から出射された光をより多くレンズ6aの第一入射面6bに入射することになり、より多くの目的光を出射することができる。
【0056】
これは、LED30の発光面30aが、レンズ6aの焦点位置f
1からある程度ずれていることが要求される。具体的には、
図5A及び
図5Bに示すように、LED30は、X方向に沿って光学フィルタ5からレンズ6aに向かって進行し、レンズ6aの第一出射面6c全体に入射する仮想光線束Lxを仮定した場合に、レンズ6aの第一入射面6bから出射された仮想光線束Lxの少なくとも一部が、LED30の発光面30aを拡張した平面A1上における発光面30aの外側の領域に照射される状態となる位置に配置されていればよいことを意味している。
【0057】
上述の構成を満たしているかどうかについては、例えば、以下の方法によって確認される。
【0058】
図5Cは、仮想光線がLED30の外側に照射されるかどうかを確認する方法を模式的に示す図面である。上記構成を確認する方法は、
図5Cに示すように、指向性の高い光源S1(例えば、LDとコリメートレンズによる光源)から出射される光Ltを、レンズ6aの光軸6dに沿って進行するように光学フィルタ5が配置される位置に置き、光Ltをレンズ6aの第一出射面6cに入射させる。そして、第一出射面6c全体に光Ltが入射するように光源S1を動かし、LED30の発光面30aに入射しない光源S1の位置が存在するか否かを確認する。なお、
図5C出は、光源S1をY方向にのみ動かすように図示されているが、光Ltが第一出射面6c全体に入射するように、光源S1は、YZ平面上で動かされる。
【0059】
上述したように、光学フィルタ5を透過できる目的光が想定よりも少なくなってしまうのは、LED30が点光源ではないことによる。このため、第一実施形態の構成がより顕著となるのは、レンズ6aからLED30を見たときに、LED30が点光源と見なせない程に近い位置に配置されている場合であると推察される。このような観点から、LED30とレンズ6aとは、下記(1)式の関係を満たすように配置されることが好ましい。
D1/W < 5.0 ・・・(1)
【0060】
さらに、第一実施形態においては、光学系の一構成例としてレンズ6aを備えた構成で説明したが、光学系はレンズ6aでなくてもよく、例えば、プリズムであっても構わない。レンズ6a以外の光学系を搭載する場合においても、LED30の発光面30aが点光源ではなく面光源であることによれば、同様の考察により、光学フィルタ5から取り出される目的光の増加することとなる。
【0061】
ここで、
図5A及び
図5Bにおいて一点鎖線は、Z方向に進行する紫外光L2の領域の外縁に沿った軌跡である。そして、第一実施形態においては、光学フィルタ5の第二入射面5bにおける当該領域の面積が、第一出射面6cにおける当該領域の面積の1.3倍となるように構成されている。すなわち、第一実施形態は、レンズ6aが第一入射面6bに入射した紫外光L2を、光学フィルタ5の第二入射面5bに向かうにつれて発散する光に変換して、第一出射面6cから出射するように構成されている。
【0062】
[第二実施形態]
本発明の紫外光照射装置1の第二実施形態の構成につき、第一実施形態と異なる箇所を中心に説明する。
【0063】
図6は、紫外光照射装置1の第二実施形態における、対応するLED30及びレンズ6aと、光学フィルタ5とを模式的に示した状態をY方向に見たときの図面である。
図6に示すように、第二実施形態においては、LED30の発光面30aが、レンズ6aから見て、焦点位置f
1よりも遠い位置に配置されている。
【0064】
当該構成は、光学フィルタ5の第二入射面5bにおける当該領域の面積が、第一出射面6cにおける当該領域の面積の0.7倍となる構成である。すなわち、第二実施形態は、レンズ6aが第一入射面6bに入射した紫外光L2を、光学フィルタ5の第二入射面5bに向かうにつれて収束する光に変換して、第一出射面6cから出射するように構成されている。
【0065】
なお、第二実施形態においても、
図6に示すように、LED30は、X方向に沿って光学フィルタ5からレンズ6aに向かって進行し、レンズ6aの第一出射面6c全体に入射する仮想光線束Lxを仮定した場合に、レンズ6aの第一入射面6bから出射された仮想光線束Lxの少なくとも一部が、LED30の発光面30aを拡張した平面A1上における発光面30aの外側の領域に照射される状態となる位置に配置されている。
【0066】
[第三実施形態]
本発明の紫外光照射装置1の第三実施形態の構成につき、第一実施形態及び第二実施形態と異なる箇所を中心に説明する。
【0067】
図7は、紫外光照射装置1の第三実施形態における、対応するLED30及びレンズ6aと、光学フィルタ5とを模式的に示した状態をY方向に見たときの図面である。
図7に示すように、第三実施形態においては、LED30の発光面30aの中心が、レンズ6aの光軸6dからずれている。
【0068】
なお、光学フィルタ5の第二入射面5bによって反射された光、すなわち、戻り光がLED30へと戻りにくくする観点から、LED30の発光面30aの中心は、レンズ6aの光軸6dからW/2以上ずれていることが好ましい。
【0069】
また、第三実施形態においても、
図7に示すように、LED30は、X方向に沿って光学フィルタ5からレンズ6aに向かって進行し、レンズ6aの第一出射面6c全体に入射する仮想光線束Lxを仮定した場合に、レンズ6aの第一入射面6bから出射された仮想光線束Lxの少なくとも一部が、LED30の発光面30aを拡張した平面A1上における発光面30aの外側の領域に照射される状態となる位置に配置されている。
【0070】
[第四実施形態]
本発明の紫外光照射装置1の第四実施形態の構成につき、第一実施形態~第三実施形態と異なる箇所を中心に説明する。
【0071】
図8は、紫外光照射装置1の第四実施形態における、対応するLED30及びレンズ6aと、光学フィルタ5とを模式的に示した状態をY方向に見たときの図面である。
図8に示すように、第四実施形態においては、光学フィルタ5の第二入射面5bの法線5cが、レンズ6aの光軸6dに対して8°傾斜して配置されている。
【0072】
なお、LED30へと戻る戻り光を減らす観点から、光学フィルタ5の第二入射面5bに対する入射角ごとの透過率特性に関して、紫外光L2に対する透過率が50%となる入射角をαとし、X方向に関する、LED30の発光面30aと、光学フィルタ5の第二入射面5bとの離間距離をD2とし、LED30の発光面30aの長手方向における幅、すなわち、発光面30aの最大幅をWとし、上記(2)式により導出される角度をθとしたときに、光学フィルタ5の第二入射面5bの法線5cと、レンズ6aの光軸6dとの傾斜角度がθ以上α未満であることが好ましい。念の為に、上記(2)式を再掲する。
θ = arctan(W/2D2) ・・・(2)
【0073】
具体的には、
図13を参照して後述されるように、第四実施形態における角度αは、33°である。そして、第四実施形態においては、Wが0.8mm、D
2が29mmであり、角度θは、上記(2)式より0.03°となっている。すなわち、第四実施形態における光学フィルタ5の第二入射面5bの法線5cと、レンズ6aの光軸6dとの傾斜角度は、θ以上α未満を満たしていることがわかる。なお、光学フィルタ5の第二入射面5bの法線5cと、レンズ6aの光軸6dとは、傾斜していれば、必ずしも当該傾斜角度がθ以上α未満を満たしている必要はない。
【0074】
また、第四実施形態においても、
図8に示すように、LED30は、X方向に沿って光学フィルタ5からレンズ6aに向かって進行し、レンズ6aの第一出射面6c全体に入射する仮想光線束Lxを仮定した場合に、レンズ6aの第一入射面6bから出射された仮想光線束Lxの少なくとも一部が、LED30の発光面30aを拡張した平面A1上における発光面30aの外側の領域に照射される状態となる位置に配置されている。
【0075】
[第五実施形態]
本発明の紫外光照射装置1の第五実施形態の構成につき、第一実施形態~第四実施形態と異なる箇所を中心に説明する。
【0076】
第五実施形態は、X方向に関する、LED30の発光面30aと、光学フィルタ5の第二入射面5bとの離間距離をD2とし、LED30の発光面30aの長手方向における幅、すなわち、発光面30aの最大幅をWとし、上記(2)式により導出される角度をθとしたときに、第二入射面5b上における紫外光L2の角度分布に関し、-2θ~+2θの角度範囲に含まれるピーク波長の成分が、第二入射面5bに入射する紫外光L2全体における50%以下となるように構成されている。
【0077】
図9は、LED30と光学フィルタ5の位置関係、及び角度θについて説明する図面である。
図9に示すように、2θは、LED30の一端部から出射された光が、LED30の他端部に戻り光L3として入射する場合の角度に相当する。したがって、上記構成とすることで、LED30に入射する戻り光L3がより低減される。
【0078】
第五実施形態においては、Wが0.8mm、D2が29mmであり、焦点距離が12.5mmであるレンズ6aが、LED30から7.5mm離間した位置に配置されている。当該構成により、第五実施形態では、第二入射面5b上における紫外光L2の角度分布に関し、上記角度範囲に含まれる成分が、第二入射面5bに入射する紫外光L2全体における50%を下回るように構成されている。
【0079】
なお、光学フィルタ5の第二入射面5bによって反射された光、すなわち、戻り光がLED30へと戻りにくくする観点から、第二入射面5b上における紫外光L2の角度分布に関し、上記角度範囲に含まれる成分は、第二入射面5bに入射する紫外光L2全体における70%以下となっていることが好ましく、50%以下となっていることがより好ましい。
【0080】
また、第五実施形態においても、LED30は、X方向に沿って光学フィルタ5からレンズ6aに向かって進行し、レンズ6aの第一出射面6c全体に入射する仮想光線束Lxを仮定した場合に、レンズ6aの第一入射面6bから出射された仮想光線束Lxの少なくとも一部が、LED30の発光面30aを拡張した平面A1上における発光面30aの外側の領域に照射される状態となる位置に配置されている。
【0081】
[検証実験]
上記で説明した各構成につき、LED30から出射された紫外光L2のうち、どの程度の紫外光L2が光学フィルタ5によって反射されてLED30の発光面30aに戻るのかを検証を行ったので、以下、当該検証実験の詳細について説明する。
【0082】
(実施例1)
実施例1は、一つのLED30と、対応する一つのレンズ6aと、光学フィルタ5とが上述した第一実施形態の配置関係となるように構成されたサンプルである。なお、本検証では、
図10を参照して詳述されるように、光学フィルタ5は配置されない。
【0083】
(実施例2)
実施例2は、上述した第二実施形態の配置関係となるように構成されたサンプルである。
【0084】
(実施例3)
実施例3は、上述した第三実施形態の配置関係となるように構成されたサンプルである。
【0085】
(実施例4)
実施例4は、上述した第四実施形態の配置関係となるように構成されたサンプルである。
【0086】
(実施例5)
実施例5は、上述した第五実施形態の配置関係となるように構成されたサンプルである。
【0087】
(実施例6)
実施例6は、レンズ6aの焦点距離が16.3mmである点を除いて、実施例5と同じサンプルである。
【0088】
(比較例)
比較例は、LED30の発光面30aの中心をレンズ6aの焦点位置f1に配置した点を除いて、実施例1と同じである。
【0089】
(検証方法)
図10は、光学フィルタ5の第二入射面5bにおける角度分布の測定方法を模式的に示す図面である。光学フィルタ5の第二入射面5bにおける角度分布は、
図10に示すように、光学フィルタ5が配置される位置に、光学フィルタ5に代えてスリット板50を設置し、所定の角度ごとに対応する位置に配置された受光器51により光強度を測定することで取得した。
【0090】
なお、
図10において、スリット板50の中心からスリットが延びている側が、レンズ6aの光軸6dから離れる方向と規定した。
【0091】
そして、戻り光の分布は、上述の方法で得られた光学フィルタ5の第二入射面5bにおける角度分布から、光学フィルタ5の透過率特性(
図4参照)から得られる反射率、及び入射角特性による重み付けを行うことで算出した。
【0092】
(結果)
図11A~
図11Gは、各実施例、及び比較例の光学フィルタ5の第二入射面5bにおける角度分布を示すグラフである。また、
図12は、各実施例、及び比較例のLED30の発光面30aにおける戻り光の角度分布を示すグラフである。
図11A~
図11G、及び
図12に示すグラフは、縦軸が放射束[a.u.]、横軸が第二入射面5b、又はLED30の発光面30aに対する入射角[°]であり、比較例の光学フィルタ5の第二入射面5bにおける角度分布(
図11G)の放射束のピーク値を1として正規化されている。なお、
図11A~
図11Gにおいては、ピーク強度に対して10%となる角度β(正負に存在するが、絶対値が大きい方の入射角が対応する)が図示されている。
【0093】
上記結果によれば、実施例1~6は、比較例に対して、光学フィルタ5の第二入射面5bによって反射されて、LED30へと戻る戻り光の量(
図12に示す各グラフの積分値)が低減されていることが確認される。なお、実施例1~6における戻り光の量は、比較例における戻り光の量を1とした場合、下記表1のような相対値となった。
【0094】
【0095】
したがって、上述した紫外光照射装置1の第一実施形態~第五実施形態は、いずれも従来構成の紫外光照射装置1と比較して、より多くの目的光が出射されるとともに、LED30へと戻る戻り光の量が低減される。
【0096】
ここで、光学フィルタ5の第二入射面5bに対する入射角ごとの透過率特性に関して、紫外光L2に対する透過率が50%となる入射角をαとし、光学フィルタ5の第二入射面5bに対する紫外光L2の入射角ごとの放射束の量に関して、放射束の量がピーク量の10%となる入射角のうちの角度が大きい方の入射角をβとしたときに、LED30、レンズ6a、及び光学フィルタ5とが下記(3)式を満たすように構成されていることが確認される。
|β| < α ・・・(3)
【0097】
図13は、LED30が出射する紫外光L2の強度スペクトルにおけるピーク波長、すなわち、波長が226nmの紫外光に対する光学フィルタ5の、透過率と入射角との相関性を示すグラフである。なお、
図9に示すグラフは、波長が226nmの紫外光に対する光学フィルタ5の透過率の最大値を100として規格化されたグラフである。
図13に示すように、光学フィルタ5は、入射角が20°を超えてくると、当該波長の紫外光に対する透過率が徐々に低下する。そして、入射角が33°(角度α)で透過率が50%となり、50°を超えてくると、当該波長の紫外光は、ほとんど透過しなくなる。
【0098】
[別実施形態]
以下、別実施形態につき説明する。
【0099】
〈1〉
図14は、紫外光照射装置1の別実施形態を模式的に示す図面であり、
図15は、
図14に示す紫外光照射装置1をY方向に見たときの断面図である。なお、
図14は、本実施形態の構成を把握しやすいように、カバー部材2aと、光学部材6とが取り除かれた状態で図示されている。
【0100】
本実施形態における筐体2は、
図14及び
図15に示すように、本体2bに、LED30から出射された紫外光L2を透過しつつ、光学フィルタ5側からLED30側に向かって進行する戻り光L3の一部を遮光する遮光部材60を備える。
【0101】
さらに、本実施形態における筐体2は、
図15に示すように、本体2bに、光源部3とは離間しつつ、遮光部材60に接続されたヒートシンク61を備える。
図14及び
図15においては図示されていないが、本実施形態における筐体2には、ヒートシンク61から熱を吸収するための冷却風を取り込むための給気口、及び、ヒートシンク61から熱を吸収した冷却風を外側に排出するための排気口が設けられている。
【0102】
上記構成とすることで、光学フィルタ5の第二入射面5bによって反射されて、LED30側へと進行する戻り光L3が、よりLED30に到達し難くなる。また、本実施形態の紫外光照射装置1は、ヒートシンク61を備えていることで、遮光部材60が戻り光L3を吸収することで発熱し昇温してしまうことが抑制されて、筐体2内の温度の上昇が抑制される。
【0103】
また、ヒートシンク61が光源部3と直接接触していないことから、ヒートシンク61が遮光部材60から吸収した熱が光源部3に伝達されることが抑制されている。これにより、ヒートシンク61が光源部3と直接接触しているような場合と比較すると、光源部3の温度上昇が抑制されることになり、発光素子であるLED30の発光効率が向上され、さらには短寿命化が抑制される。
【0104】
なお、ヒートシンク61は、筐体2内の空間、LED30、又は遮光部材60の温度が、所定の温度以上とならないように配置されるものである。したがって、点灯動作時におけるこれらの温度が問題とならないような場合は、ヒートシンク61が搭載されていなくても構わない。
【0105】
〈2〉 上述した紫外光照射装置1が備える構成は、あくまで一例であり、本発明は、図示された各構成に限定されない。
【符号の説明】
【0106】
1 : 紫外光照射装置
2 : 筐体
2a : カバー部材
2b : 本体
3 : 光源部
4 : 光取出し部
5 : 光学フィルタ
5a : 基材
5b : 第二入射面
5c : 法線
6 : 光学部材
6a : レンズ
6b : 第一入射面
6c : 第一出射面
6d : 光軸
30 : LED
30a : 発光面
30p : LED
30pa : 発光面
31 : LED基板
31a : 主面
50 : スリット板
60 : 遮光部材
61 : ヒートシンク
A1 : 平面
L1,L2 : 紫外光
L3 : 戻り光